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事件 昭和 49年 (ワ) 2092号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1976/04/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者双方の申立
一 原告1 原告に対し、被告株式会社中井商店は、金二〇〇万円及びこれに対する昭和四九年四月一四日から支払ずみまで年五分の割合による金員、被告有限会社宮金商店は、金六〇万円及びこれに対する同月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員、被告【A】は、金六〇万円及びこれに対する同月一四日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
二 被告ら主文と同旨の判決を求める。
請求の原因
一 原告は、玩具の製造販売を主として行つている会社である。
二 被告らは、いずれも玩具の卸販売を行つている会社ないし個人業者である。
三 原告は、東映株式会社(以下「訴外会社」という。)から、同会社が制作して著作権を保有し、毎日放送をキーステーシヨンとしてNETテレビ、九州朝日放送、北海道テレビ、広島ホームテレビ、名古屋放送、高知放送、沖縄テレビをはじめとする日本国内約二五のテレビ放送局を通じ、毎週一回三〇分番組として、主として幼児向けに、昭和四六年四月ころ以降放映された「仮面ライダー」の題名のテレビ映画に登場して活躍する昆虫の形態にヒントを得て創作された特異な姿に変身する「仮面ライダー」と呼ばれる主人公及び昭和四八年二月ころ以降右テレビ映画の続物として放映された「仮面ライダーV3」の題名のテレビ映画に登場して活躍する「仮面ライダーV3」と呼ばれる主人公の形状を模した軟質性のビニール製人形を独占的に製造し、これに当該主人公の名を付して独占的に販売することの許諾を受け、別紙第一目録記載の人形「仮面ライダー」(以下「原告仮面ライダー」という。)については、右許諾を受けた昭和四六年七月初旬ころ以降、別紙第二目録記載の人形「仮面ライダーV3」(以下「原告仮面ライダーV3」という。)については、右許諾を受けた昭和四八年一月中旬ころ以降、それぞれ製造して販売しているところ、これら原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3は、その形態が特異であつたのもさることながら、その発売以前からすでに爆発的人気を呼び、視聴率も平均二〇パーセント台の高率に達して日本全国の幼児、児童をはじめとする老若男女にまで広く親しまれていた前記テレビ映画、あるいは、これを漫画になおして掲載発売されていた児童用雑誌等による宣伝力に支えられ、発売とともに売行好調の人気商品となり、たちまちにして、その形態自体が、これを独占的に製造販売している原告の商品人形であることを示す表示として日本全国に認識されるに至つた。
四 被告らは、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3に人気があるのに着目し、原告の製造販売したのではない大、中、小の三種からなる別紙第三録記載の人形「仮面ライダー」(以下「被告仮面ライダー」という。)を昭和四六年一二月ころから、また、大、中、小の三種からなる別紙第四目録記載の人形「仮面ライダーV3」(以下「被告仮面ライダーV3」という。)を昭和四八年四月ころからそれぞれ他から仕入れて発売しはじめ同年八月ころまでの間に、両者を、被告株式会社中井商店(以下「被告中井商店」という。)においては、有限会社小栗商店、鬼怒食品株式会社、(幸保商店等に対し少くとも一〇万円、被告有限会社宮金商店(以下「被告宮金商店」という。)においては、有限会社山崎博商店等に対し少くとも三万個、被告【A】においては、細谷商店、桜井商店、株式会社高橋商店等に対し少くとも三万個販売したが、被告仮面ライダーの形態は、原告の商品たることを示す表示として周知の原告仮面ライダーのそれと、また、被告仮面ライダーV3の形態は、原告の商品たることを示す表示として周知の原告仮面ライダーV3のそれと、それぞれ類似していたので、需要者はもとより取引業者にも、被告仮面ライダーが原告仮面ライダーであると、また、被告仮面ライダーV3が原告仮面ライダーV3であると、それぞれ混同され、これにより、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の販売量が減少し、原告は、営業上の損害を被るに至つた。
五 そこで、被告らは、その前記不正競争防止法第1条第1項第1号該当の不正競争行為により原告が被るに至つた右損害を賠償する義務があるところ、原告の右損害額は、被告らが被告仮面ライダー及び被告仮面ライダーV3の販売によつて得た利益の額、すなわち、被告中井商店については、販売一個につき平均金二〇円の割合による金二〇〇万円、被告宮金商店及び被告【A】については、各前同割合による金六〇万円に等しいものである。
六 よつて、原告は、損害賠償として被告らに対し前記損害及びこれらに対する各本件訴状送達の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、すなわち、請求の趣旨第一項掲記のとおりの金員の支払を求める。
答弁及び被告らの主張
一 答弁請求原因第一、二項の事実は認める。
同第三、四、五項の事実は否認する。
同第六項は争う。
二 主張1 原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3は、過去に度々現われては消え去つて行つた数々のテレビ漫画映画等に登場した主人公等と、その発想、形態等において酷似していて、その形態に独創性も顕著性もなく、その形態自体により自他商品識別の機能を果し得る商品表示とは到底なり得ない性質のものであることもさることながら、そもそも、その形態が極めて低級俗悪で、年端も行かない幼児、学童にとつては甚だ非教育的でさえあり、良俗にも反するため、著作権はもとより意匠権、商標権等による保護も到底受けられない性質のものであつて、このような保護される期間に限定のある権利としても保護されないような形態につき、もし、不正競争防止法にいう著名な商品表示としての保護を与えるならば、これを際限なく保護することにもなつて、著しく合理性を欠くに至ることが明らかであるから、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態をもつて原告の商品たることを示す表示とし、これにつき不正競争防止法による保護を与えることはできないものである。したがつて、被告らが販売したもののなかに、原告の製造販売したものでない被告仮面ライダー及び被告仮面ライダーV3がかりに含まれていたとしても、被告らに不正競争防止法第1条第1項第1号該当の不正競争行為があつたとの非難を受ける筋合はない。
2 原告は、大手の玩具製造販売業者であるところ、それが大資本を背景にして金力で原告主張のテレビ映画についての権利を取得した訴外会社と提携し、被告らのような零細業者を排除し、前記のように、俗悪にして、非教育的でさえある仮面ライダー及び仮面ライダーV3を不当な高価で独占的に販売し、暴利を挙げようとしているのであつて、無体財産権の行使については、いわゆる独禁法の適用がないとされてはいるものの、原告の右所為が同法の根本精神に反することは明らかであるし、また、被告らは、いわゆる食玩業界に属する業者であつて、一時の流行を追つて一時期に大量生産され、氾濫するに至つた在庫商品を引取り、自己の名の口紙を付して再包装のうえ、二次問屋や小売店に販売し、主として土産品店などの店頭で販売させる役割を果しているものであり、その取扱い商品の出所については、一々詮索しないですむとの商慣習が永年にわたつて行われており、原告も玩具の製造販売業者としてこのような慣習を容認し、被告らのような食玩業者による自己商品の在庫整理を期待していたものである。したがつて、このような諸般の事情によれば、被告らの取扱つた商品中に、たまたま原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3でない被告仮面ライダー及び被告仮面ライダーV3があつたとして、これを理由に損害賠償の請求を求める原告の本訴請求は、権利の濫用にも該当し、許されないものである。
証拠(省略) 理 由一 請求原因第一、二項の事実は当事者間に争いがない。
二 原告は、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の各形態が原告の商品たることを示す表示として広く日本全国に認識されている旨主張するので、以下この点について検討すると、証人【B】(第一回)の証言により各真正に成立したものと認められる甲第二、三号証、第一七号証、原告主張のとおりのものであると認められる検甲第二号証、足裏に「バンダイ」の文字が附してあるので株式会社バンダイ(以下「バンダイ」という。
)の取扱つた商品であると認められる検甲第一号証に証人【B】(第一回)及び同【C】の各証言(各一部)を総合すれば、つぎのとおりの事実を認めることができる。
訴外会社は、「仮面ライダー」の題名のテレビ映画及び「仮面ライダーV3」の題名のテレビ映画を制作し、前者を昭和四六年四月以降、後者を前者に続き昭和四八年二月以降テレビ局を通じて全国に放映したところ、幼児、児童を中心とする層に非常な人気を博して稀にみる高い視聴率を示し、前者に登場して活躍する「仮面ライダー」と呼ばれる主人公及び後者に登場して活躍する「仮面ライダーV3」と呼ばれる主人公は、その放映とともにたちまちにして広く日本全国に知られるに至つた。
ところで、右主人公である「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」は、いずれも改造人間であるとされ、平時は人間の姿でいるが、いつたん有事の場合には、
上半身が特にある種の昆虫を連想させるような姿に変身し、超人的能力を発揮しつつ縦横無尽に活躍するものとして描かれていたが、訴外会社は、前記テレビ映画の著作権者として、右のように変身して活躍する「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」の姿を玩具をはじめとする商品に応用する権利を保有するとして、このいわゆる商品化権の管理及び行使を東映動画株式会社(以下「東映動画」という。)に委託した。
そこで、東映動画は、右委託の趣旨に則り、昭和四六年五月ころバンダイに対し、前記のように、当時すでに放映が開始されていた「仮面ライダー」の題名のテレビ映画に主人公として登場活躍していた「仮面ライダー」の姿に似せて軟質性のビニール及び硬質性のプラスチツクを素材とする人形を製造し、これを販売する権限を附与したが、間もなく同年七月ころバンダイに附与していた右商品化権のうち、軟質性のビニールを素材として製造するものであつて、比較的低廉な小売値で販売するものの商品化権をバンダイから外し、これをその子会社ともいうべき原告に附与したうえ、同年一〇月八日原告との間に文書をもつてその旨の正式の契約を締結し、また、昭和四八年一月ころ原告に対し、前記のように近く放映が開始される運びになつていた「仮面ライダーV3」の題名のテレビ映画に主人公として登場活躍する「仮面ライダーV3」の姿に似せて軟質性のビニールを素材とする人形等を製造し、これを販売する権限を附与したうえ、同年二月一日原告との間に文書をもつてその旨の正式の契約を締結した。
こうして、原告は、前記「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」につき商品化の許諾を受けると、早速その製造販売に乗り出し、「仮面ライダー」については、小売値が金三〇〇円、金二〇〇円、金一〇〇円とされる大、中、小三種類の軟質性のビニール製原告仮面ライダーを、「仮面ライダーV3」については、前同三種類の軟質性のビニール製原告仮面ライダーV3をそれぞれ製造し、その背中ないし左足裏に「石森プロ」、「毎日放送」、「東映」の文字を附するとともに、右足裏に原告名である「ポピー」の文字を附し、かつ、商品化につき許諾のあることを示す訴外会社の証紙を貼着して販売したところ、そのころ放映されていた前記テレビ映画の人気に支えられ、たちまちにして好調な売行を示し、原告仮面ライダーは、発売開始の昭和四六年七月から昭和四七年暮ないし昭和四八年初ころまでの間金三億円を超す売上となり、また、原告仮面ライダーV3は、発売開始の昭和四八年一月から昭和四九年初ころまでの間原告仮面ライダーに劣らぬ売上があり、いずれも発売の直後から人気商品となり、前者については、昭和四六年一〇月以降、後者については昭和四八年夏ころ以降、訴外会社から商品化についての許諾を得ないまま製造された類似品が市場に出回るようになつていた。
しかしながら、前記テレビ映画の主人公である「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」につきこれを人形として商品化することを許諾された業者は、原告以外にも前記バンダイをはじめとする数業者があり、バンダイは、硬質性のプラスチツク製の人形仮面ライダー及び仮面ライダーV3並びに小売値が金五〇〇円とされ、
原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3よりやや大型の軟質性のビニール製の人形仮面ライダー及び仮面ライダーV3を、また、他の業者は、小売値が金二、〇〇〇円程度とされる金属製の人形仮面ライダー及び仮面ライダーV3を、さらに、
他の業者は、金属性のオートバイに乗つた軟質性のビニール製の人形仮面ライダー及び仮面ライダーV3をそれぞれ独自に製造販売していた。なお前記テレビ映画「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」の商品化権の対象となつていた商品の種類は前記人形を含めて一五〇種類くらいあつた。
以上の事実が認められるのであつて、右認定の事実によれば、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3は、日本全国に放映され極めて人気を博していたテレビ映画に登場する主人公の姿を模して作られた人形であつたため、その売行は好調であつたが、原告と同じように、右テレビ映画に登場する主人公である「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」につき商品化の許諾を受け、その姿を模した人形を製造販売している業者が原告以外に数名あり、かつ人形以外にも商品化の許諾を得て商品化された商品が多種類あつたのであるから、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態が特に原告の商品たることを示す表示として広く認識されるに至つていたということはできない。もつとも、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の右足裏には、原告名をあらわす「ポピー」の文字が附され、また、原告以外の業者の人形製品は、原告製品の素材である軟質性のビニールと異り、硬質性のプラスチツク又は金属を素材として作られ、あるいは、原告製品のような人形単体と異り、オートバイに乗つた姿として作られているが、原告商品に附された「ポピー」の文字は、その附された場所及びその文字の大きさからみて容易に人目につかないものであるのみならず、原告製品には、なお「石森プロ」、「毎日放送」、
「東映」の文字も附されている関係上、原告商品の出所を原告として示す作用を殆んど果していないと考えられ、また、原告製品も原告以外の業者の製品も同じものを模して作られた人形であつて、その形態に格別の差異があらわれるとみられない以上、その素材等に前記のような差異があつたとしても、この程度のことは、原告製品を他の業者の人形製品と区別する徴表となり得るものとも考えられない。それのみならず、バンダイは、原告製品よりやや大型であるとはいえ、原告製品と同じ軟質性のビニール製の人形「仮面ライダー」及び「仮面ライダーV3」を製造販売しているのであるから、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態が、原告の商品たることを示す表示として広く認識されるに至つていることは、ますますいい難い。
そして、証人【B】(第一回)、同【C】の各証言中、右認定に反する趣旨の部分は、右認定事実に照らしそのまま直ちに信用できず、他に、右認定を左右し原告主張のように、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態が、原告の商品たることを示す表示として広く認識されるに至つていることを肯定できる証拠はない。
三 以上説明のとおりであり、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態は、不正競争防止法第1条第1項第1号にいう同法施行の地域内において広く認識された原告の商品たることを示す表示とはいえないから、これがそのような表示であることを前提とする原告の本訴請求は、爾余の点について判断を加えるまでもなくその理由がない。よつて、これを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。
追加
第一目録添付写真に示す軟質性ビニール製「仮面ライダー」人形。
<11939-001><11939-002>第二目録添付写真に示す軟質性ビニール製「仮面ライダーV3」人形。
<11939-003><11939-004>第三目録添付写真に示す軟質性ビニール製「仮面ライダー」人形。
<11939-005><11939-006>第四目録添付写真に示す軟質性ビニール製「仮面ライダーV3」人形。
<11939-007><11939-008>
裁判官 高林克巳
裁判官 小酒禮
裁判官 木原幹郎