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関連ワード 類似性(類似) /  外観 /  意匠登録 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害賠償 / 
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事件 平成 4年 (ネ) 344号
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裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 1993/07/20
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 控訴人らの被控訴人【A】に対する控訴をいずれも棄却する。
二 控訴人らの被控訴人破産者橋本製袋株式会社破産管財人【B】に対する破産債権確定請求をいずれも棄却する。
三 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
申立
一 控訴人ら1 原判決を取り消す。
2 被控訴人【A】は、控訴人井関農機株式会社に対し、原判決別紙被告物件目録記載の籾袋を生産し、販売し、拡布し、輸出してはならない。(なお、控訴人井関農機株式会社は、破産者橋本製袋株式会社に対する原判決別紙被告物件目録記載の籾袋の生産、販売、拡布、輸出の差止請求については、当審においてこれを取下げた。)3 被控訴人【A】は、控訴人井関農機株式会社に対し金三〇〇〇万円、控訴人日本パディバック工業会に対し金二〇〇万円及び右各金員に対する昭和六三年三月一日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
4 (当審における新請求) 神戸地方裁判所明石支部平成四年(フ)第四四号破産事件における破産者橋本製袋株式会社に対する控訴人井関農機株式会社の破産債権が金三〇〇〇万円、控訴人日本パディバック工業会の破産債権が金二〇〇万円であることを、各確定する(控訴人らは、破産者橋本製袋株式会社に対する金員支払請求〔原判決の事実及び理由第一の二〕を、同会社が当審係属後の平成四年六月一六日午前一〇時神戸地方裁判所明石支部において破産宣告を受け、その債権調査期日で控訴人らの届出破産債権につき破産管財人が異議を述べたことに伴い、本件訴訟につき破産管財人を相手方として受継申立を行い、かつ、破産債権確定請求に訴えを変更したものである。)。
5 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人【A】主文第一、第三項と同旨三 被控訴人破産者橋本製袋株式会社破産管財人主文第二、第三項と同旨
事案の概要
一 事案の概要は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決四頁七行目の「甲六二」を「甲六〇、六二」と訂正し、同五頁四行目の「穀粒袋」の次に「1」を、同一〇行目の「チャック」の次に「3」を、各加える。
2 同一五頁末行の「被告らの行為」を「破産者橋本製袋株式会社及び被控訴人【A】の行為」と、同一六頁一行目の「被告橋本製袋株式会社(以下「被告会社」という。)」を「破産者橋本製袋株式会社(以下「破産会社」という。)」と、各改めるとともに、同行以降の前記引用部分中に「被告会社」とあるのは、これをすべて「破産会社」と改める。
3 同一六頁二行目末尾の「三一」を「一三」と改め、同三行目の「株式会社である」の次に「が、平成四年六月一六日午前一〇時、神戸地方裁判所明石支部において破産宣告を受け(同支部平成四年(フ)第四四号)、破産管財人に被控訴人【B】(以下「被控訴人破産会社管財人」という。)が選任され、現在、破産手続が進行中である」を加え、同四行目の「現在の」を「右破産宣告当時の」と、同一八頁三行目の「九日」を「一九日」と、同二〇頁五行目の「販売している」を「販売していたが、前記のとおり平成四年六月一六日午前一〇時破産宣告を受けた」と、各改める。
4 同二一頁九行目と一〇行目との間に「(もっとも控訴人らは、右@の『内側に折り曲げて縫着され』及びCの『外側に折り返して縫着され』との記述は、縫着の方法でしかなく、形態とは重要な関係はないから、誤りであり、またE中の『逆台形』は、『矩形〔逆台形もしくはその類似範囲内の正方形〕』とすべきであると主張する。)」を加える。
5 同二一頁一一行目を「1 控訴人井関の被控訴人【A】に対する差止請求」と、同二二頁六行目を「2 控訴人井関の被控訴人【A】に対する損害賠償請求及び被控訴人破産会社管財人に対する破産債権確定請求」と、各改め、同一一行目の「理由に、」の次に「被控訴人【A】に対しては、」を加え、同行の「請求。」を「損害賠償請求、債権調査期日に異議を述べた被控訴人破産会社管財人に対しては、同額の破産債権確定請求。」と改め、
同二四頁六行目を「3 控訴人工業会の被控訴人【A】に対する損害賠償請求及び被控訴人破産会社管財人に対する破産債権確定請求」と改め、同九行目の「理由に、」の次に「被控訴人【A】に対しては、」を加え、同行の「内金請求。」を「内金二〇〇万円につき損害賠償請求、債権調査期日に異議を述べた被控訴人破産会社管財人に対しては、同額の破産債権確定請求。」と、同二六頁七行目の「被告ら」を「破産会社及び被控訴人【A】」と、各改める。
争点に対する判断
次のとおり付加訂正するほかは、原判決二六頁一〇行目から同五六頁七行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
一 右引用部分中に「被告会社」とあるのは、すべて「破産会社」と改める。
二 原判決二七頁四行目の「逆台形」を「矩形(逆台形もしくはその類似範囲内の正方形)」と改め、同三〇頁二行目と三行目との間に「(なお、控訴人らは右原告籾袋の形態に関し、(一) Cの『外側に折り返して縫着され』ていることは@の『内側に折り曲げて縫着され』ていることと共に、縫着の方法でしかなく『形態』の特定要素とはなり得ない旨、及び(二) Eの補強片の形態につき前記引用の原判決の記述は誤りである旨主張するが、右(一)の点は、なるほど縫着の方法に由来するものではあっても、その結果において外観上の識別機能を備えているのであるから、これを『形態』の特徴の一つに捉えることに誤りはないし、(二)の点では、控訴人らの主張が『商品表示としての原告籾袋の形態〔訴状別紙(一)の一の記載〕』として、原判決別紙(一)AないしD及び同(二)AないしCの各図面に示される形態に限らず〔右図示形態に限れば、明らかに『逆台形』であって、前引用の原判決記述に誤りはない〕、前記のとおり『矩形〔逆台形もしくはその類似正方形を含む〕』であるものとなされていることは了解し得るが、そのように補強片の形態の範囲を広げることは、かえって補強片が縫着されていることの前記機能的意味合いを強める〔補強片の具体的形状に格別の意味がない〕こととなって、前記認定を左右するに足る主張とはなり得ない。)」を加え、
同三三頁四行目の「販売をしていた」から同五行目の「含まれていた。)。」までを、「販売をしていたもので、しかもその中には破産会社及びその前身の橋本商事株式会社が製造し、直接又はテザック等を通じてクボタに販売していた原告籾袋(一)と同一の形態の籾袋も含まれていた。」と、同一一行目の「乙一九の1〜4」を「乙一四、一九の1〜4」と、同三六頁五行目の「示されていること」を「示されていることからして、少なくとも、その当初のころ製造、販売された原告籾袋とされる籾袋の中には、原告籾袋の形態のうちC(底部三つ折り二重環縫い)、D(下部角部斜め縫い合わせ)を具備しないものが相当数含まれていたものと思われる。また、補強片(原告籾袋の形態E)に関しても、前記のパーツリストに図示の補強片は逆台形であるが」と、同行の「c」を「イ」と、同一〇行目の「d」を「ロ」と、各改め、同三七頁二行目末尾の「e」から同八行目の「以降であること、」までを削除し、同行の「f」を「ハ」と、同一一行目の「していること、」を「していることに照らすと、当初から逆台形に統一されていた訳ではなく、正方形の補強片も存し、これが逆台形に統一されたのは、昭和五三年ころ以降と認められる。」と、各改め、同行の「g」から同三九頁二行目まで及び同四二頁一〇、一一行目をいずれも削除する。
三 同四三頁末行の次に行を改めて次のとおり加える。
「(当審における控訴人らの付加的主張) もともと破産会社ないし被控訴人【A】は、控訴人工業会グループの一角を占める下請業者であったところ、その締結していた下請関係についての契約(甲一七〜一九、二〇の1)は、本件意匠及びクボタ意匠の実施許諾契約の性格を有し、破産会社ないし被控訴人【A】は、右各意匠権の実施として、原告籾袋を下請生産してきた。即ち、破産会社ないし被控訴人【A】は、その下請生産する原告籾袋が、本件意匠及びクボタ意匠の類似範囲内にあることを承認してきたものである。従って、これと同一形状の被告籾袋が本件意匠及びクボタ意匠と類似することは当然である。
ところが原判決は、被告意匠の構成として認定したうちの、
形状とは無関係の折り方や縫い方に関する部分であり、かつ、指摘・説明がなければ気づかないような微細部分である、袋の上辺が外側に折り返され2条の縫い目により縫着されている点(原判決認定の被告意匠の構成c)、袋の下辺の折り返し縁がまとめて背面側に折り返される等して1条の縫い目により縫着され、左右に縫糸の余端糸がみられる点(同構成f)が、看者の注意を強くひく部分であるとして、
類似性を否定したもので、その判断は明白な誤りである。また、侵害物件の構成のうち登録意匠と相違する部分があっても、その部分が既存の公知意匠に照らして新規部分でないときは、その部分を重視すべきではないところ、前記相違点は、被告意匠が製造販売された以前から一般に用いられているありふれた構成であり、何ら目新しいものではないから、この点からしても、前記相違点の存在をもって、本件意匠及びクボタ意匠との類似関係を否定するのは誤りである。」四 同五二頁二行目から同四行目までを次のとおり改める。
「(五) 控訴人らの当審における付加的主張について 破産会社ないし被控訴人【A】が、控訴人井関、販売実施権者との間で締結していた下請関係についての契約(甲一七〜一九、二〇の1)は、本件意匠及びクボタ意匠の実施許諾契約の性格を含むものであり、破産会社ないし被控訴人【A】は、
右契約に従い、原告籾袋を下請生産してきたものであるから、その限りでは、破産会社ないし被控訴人【A】は、その下請生産する原告籾袋が本件意匠及びクボタ意匠の類似範囲内に含まれることを承認してきたかのごとくである。しかし、被控訴人【A】は、本件意匠及びクボタ意匠と現に破産会社ないし被控訴人【A】が下請生産していた原告籾袋とではその形状が大幅に相違することから、本件意匠及びクボタ意匠の類似範囲内に含まれるとは認識していなかった旨供述していることに加え、現に後記争点2(二)に対する判断で認定のとおり、被控訴人【A】は、I・K・Sに対し、その下請生産する原告籾袋に関し、袋の開口部上部端縁の折り返しを外折れとする(前記被告意匠の構成c)仕様変更を申し入れ、
これを控訴人井関との契約関係に基づいて下請生産する籾袋として採用することを申入れ、一度はその内諾を得ている(即ち、右契約に基づき下請生産されるものに、厳密には本件意匠及びクボタ意匠の類似範囲内に含まれないものでも、これを排除するものではないことが当事者間に了解されていた。)こと、一方で、【C】において、これにつき実用新案登録出願及び意匠登録出願をしていることにも照らすと、形式的には、破産会社ないし被控訴人【A】は、控訴人井関との前記下請関係についての契約に基づき原告籾袋を下請生産してきたものとはいえ、そのことから、実質的にも原告籾袋が本件意匠及びクボタ意匠の類似範囲内に含まれることを承諾してきたものとは認めがたく、他にこれを認めるに足る確たる証拠もない。
また、前示認定のとおり、本件意匠及びクボタ意匠(その各類似意匠も含め)における袋本体の下辺部の構成とそれによる形状は、いずれも折り返し不要の底部シームレスの袋であるか、折り返し縁が袋内側に折り返されている構成による形状を示すものと認められるところ、本件意匠が出願された昭和四一年当時はもとよりクボタ意匠が出願された昭和四三年当時にあっても、籾袋として一般的であったのは底部シームレスのものであったもので、被告意匠のような構成fを採用するものはいまだ一般的にはなっていなかったこと(被控訴人【A】)、即ち、底部シームレスの袋の場合にあっては、籾袋本体部分を原糸から織り上げるに際し、これを二重にして筒状チューブとし、これに一定感覚でドビー又はジャガード織等の織着帯を設けることにより、この部分を切断するだけで縫製することなしにこれを下辺部とする籾袋とすることができる利点がある反面、その反復使用により底部の織着帯がほつれ、その荷重及び衝撃による強度に不安がある等の難点があったため、底部がシームレスの袋に関しても底縫いがなされるようになり、さらに昭和四三年ころ以降から、長期の使用や衝撃にも耐え得る袋本体底部の縫製方法として二重環縫いの籾袋への導入が図られ、
これにより籾袋本体部分を原糸から織り上げるに際し織着帯を設けることなく筒状に織り上げ、これ(エンドレスチューブ)を切断し、縫製時にその底部を二重環縫いによって縫い合わせる方法によって、底部シームレスの袋より強度的にも優れた籾袋の生産が可能となって以降初めて、籾袋において、被告意匠のような構成fを備える形状の籾袋が出現したものであること(乙八、検乙一二の1、2、被控訴人【A】)、被告意匠の構成cに関しても、従来の内折りでは、開閉時にファスナーがひっかかり、また、内折り部分に籾が残るといった難点を解決するとともに、縫製の合理化を図る方法として、昭和六一年ころ被控訴人【A】がこれを考案し、採用されるに至った形状であり(甲四九、乙五〜七、被控訴人【A】)、いずれも、
本件意匠及びクボタ意匠(その各類似意匠も含め)にはなかった新規な形状と認められる。そして右構成c、fは、袋本体の開口部及び底部の形状であり、正面及び背面の上辺及び下辺部に表れる模様であるところ、籾袋という物品の性質上、前示認定のとおり右部分の形状及び模様は、その使用時及び流通時に看者、取扱者のもっとも注意をひく部分であると認められるから、被告意匠の構成c、fをもって、
意匠とは無関係の折り方や縫い方に関する部分で、かつ、指摘・説明がなければ気づかないような微細部分であり、また、その構成はありふれたもので、何ら目新しいものではないものとすることはできない。
以上のとおりで、控訴人らの当審における付加的主張はこれを採用できず、他に前記認定を左右するような主張・立証はない。」五 同五五頁八行目の「二〇の6〜10、」及び同五六頁八行目から同末行までを削除し、同七行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「四 以上によって明らかなとおり、控訴人らが主張する不正競争防止法違反、意匠権侵害及び本件下請契約生産契約違反の事実はいずれもこれを認めることができないから、控訴人らの請求はその余について判断するまでもなく、いずれも理由がない。」
結論
よって、控訴人らの請求はいずれも失当としてこれを棄却すべきものであるから、
控訴人からの被控訴人【A】に対する控訴はこれを棄却し、当審における新請求である控訴人らの被控訴人破産会社管財人に対する破産債権確定請求はこれを棄却することとし、当審における訴訟費用の負担につき民訴法95条89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 潮久郎
裁判官 山崎杲
裁判官 上田昭典