関連ワード | 周知性 / 信義則 / 同一の表示 / 表示の使用 / 先使用 / 不正の目的(不正競争の目的) / 差止請求(差止) / 権利濫用(権利の濫用) / 代表者 / |
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事件 |
平成
2年
(ネ)
3118号
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1991/07/04 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
本件控訴を棄却する。 控訴費用は、控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
一 控訴人1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の本訴請求を棄却する。 3 被控訴人は、別紙目録記載の被控訴人の各営業所における営業上の施設又は活動に「ジェットスリムクリニック」の表示を使用してはならない。 4 被控訴人は、右各営業所の看板、広告物その他の営業表示物件から「ジェットスリムクリニック」の表示を抹消せよ。 5 訴訟費用は、第一審、二審とも本訴、反訴を通じて全部被控訴人の負担とする。 二 被控訴人 主文と同旨 |
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当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正等をするほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。 一 原判決七枚目裏六行目の次に、 「仮に「ジェットスリム浜松駅南クリニック」の表示をその営業所において使用しているのが、控訴人自身ではなく、加盟店であるとしても、それは、控訴人が加盟店契約に基づき加盟店をして使用させているものであるから、控訴人もその表示の使用につき差止請求の相手方となりうるものである。」を加える。 二 原判決八枚目裏一一行目の「「ジェットスリム浜松駅南クリニック」及び」を削り、同九枚目表二行目の次に、 「「ジェットスリム浜松駅南クリニック」の表示は加盟店が使用しているものであり、控訴人が使用しているものではない。」を加える。 三 原判決一〇枚目裏六行目の次に、 「このことは、被控訴人は、その各店舗の開店にあたって、営業に必要な会員手帳、日計表等を控訴人から買い取り、これを使用していること、広告用のチラシも控訴人から買い取っていること、被控訴人代表者Aは、昭和五九年九月に開催された控訴人の中部地区加盟店オーナー会議に出席し、加盟店は本部である控訴人にロイヤルティを支払うべき旨の発言をしていることに照らしても明らかである。」を加える。 四 原判決一三枚目表六行目の次に、 「3 仮に、被控訴人が控訴人との間の加盟店契約に基づき「ジェットスリムクリニック」の表示を使用しているのではないとしても、控訴人の静岡県内における右表示の使用行為は、不正競争防止法2条1項4号の規定に該当するから、被控訴人は控訴人に対し右表示の使用差止を請求することはできない。すなわち、控訴人は、右表示を使用して、梅田店、千種店を開店した後、被控訴人に対して静岡県内において右表示の使用を許諾し、更にその後、計画どおり、次々と全国展開を目指してフランチャイズ制を採用して、直営店及び加盟店を開設し、それに伴い巨額の費用を投じて、全国的にテレビ、週刊誌、新聞等に著名なタレントを用いた広告宣伝を行い、全国的な周知性の取得に努めたのであるから、控訴人の右表示の使用が、被控訴人が使用する静岡県内において現実になされていない場合であっても、 その後、控訴人が同地域において右表示を使用する場合には、不正競争防止2条1項4号による先使用の抗弁が認められるべきである。 4 仮に先使用の抗弁が認められないとしても、被控訴人の使用する右表示が静岡県内において周知性を取得したのは、控訴人の右広告宣伝の効果が大きく、静岡県内において痩身美容に関心のある女性は、右表示は、控訴人が全国的に実施するフランチャイズ制によるグループ全体の営業表示と認識し、被控訴人の経営する各店舗を控訴人の加盟店と思って利用していることは十分に考えられるところであるから、被控訴人に静岡県内において右表示を排他的に使用することができる権利を認めるべきではなく、被控訴人の本件差止請求は、信義則又は公平の原則に反し、権利の濫用であり、許されない。」を加える。 五 原判決一三枚目裏六行目の「事実」の次に、「のうち、被控訴人が、その各店舗の開店にあたって、営業に必要な会員手帳、日計表等を控訴人から買い取り、これを使用していること、広告用のチラシも控訴人から買い取っていること、被控訴人代表者Aが、昭和五九年九月に開催された控訴人の中部地区加盟店オーナー会議に出席し、ロイヤルティを支払うべき旨の発言をしたことは認め、その余」を加える。 六 原判決一三枚目裏九行目の次に、 「3 抗弁3は争う。控訴人は、静岡県内で「ジェットスリムクリニック」という表示を全く使用していなかったものであり、先使用の抗弁は認められない。 4 抗弁4は争う。」を加える。 |
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証拠関係(省略)
理 由一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は理由があり、控訴人の反訴請求は理由がないと考えるが、その理由は、次のとおり付加、訂正等をするほか、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。 1 原判決一九枚目表七行目に「被告」とあるのを「前者の加盟店」と、同八行目に「及び」とあるのを「の、被告が」に改める。 2 原判決一九枚目裏二行目に「被告が」とあるのを「右各店舗において」と改め、同一一行目の「被告が」の次に、「直営店及び加盟店により」を加える。 3 原判決二〇枚目裏八行目の次に、 「被控訴人が、その各店舗の開店にあたって、営業に必要な会員手帳、日計表等を控訴人から買い取り、これを使用していること、広告用のチラシも控訴人から買い取っていること、被控訴人代表者Aが、昭和五九年九月に開催された控訴人の中部地区加盟店オーナー会議に出席し、ロイヤルティを支払うべき旨の発言をしたことは当事者間に争いはなく、控訴人は、このことを理由に、控訴人と被控訴人との間に控訴人主張の加盟店契約が成立した旨主張する。 しかし、会員手帳等及びチラシの買取りの点は、原審における証人Bの証言及び被控訴人代表者本人尋問の結果によれば、被控訴人が痩身美容器「ジェットスリマー」を控訴人から買受けた際被控訴人の営業上の便宜から会員手帳等やチラシを併せて買取ったものと推認され、しかも被控訴人が控訴人からチラシを買い取ったのは開店後の短期間であって、その後は被控訴人の方で独自に広告用のチラシ等を作成したが、これに対して控訴人は何ら異議を申し立てることなく、その後の被控訴人店舗の開店に際しても被控訴人に営業に必要なジェットスリマー等の機械を供給していることが認められるのであり、被控訴人が加盟店契約に基づくチラシの買取義務を負い、この義務を履行したものとは直ちに認められない。また、被控訴人代表者Aが中部地区オーナー会議に出席したとの点についてみるに、原審における被控訴人代表者本人尋問の結果及び当審における証人Cの証言によれば、右会議は、 中部地区の加盟店のオーナーの間に控訴人から実質的にロイヤルティ徴収の手段とするために買取義務を課せられているチラシの値段が高すぎるとの不満が高まったため開催されたものであるところ、被控訴人が店舗を展開している静岡県は中部地区に属しないものであることが認められるのであるが、そのような会議に被控訴人代表者Aが出席して、加盟店はロイヤルティを支払うべきとの控訴人を擁護する発言をしたことは、被控訴人が加盟店の一員であることの根拠になるというより、控訴人から最初に高価なジェットスリマー等の機械をリースして静岡県において店舗展開したことから、控訴人のパートナー的な気持ちでいたとの原審における被控訴人代表者の供述を自然なものとして受け取ることができるのである。 そして、原審における控訴人、被控訴人各代表者本人尋問の結果及び当審における証人Cの証言によれば、控訴人が最初に加盟店契約につき契約書を作成したのは、昭和五九年二月、名古屋のジェットスリム新瑞クリニックとの間においてであるが、被控訴人はその後も控訴人からジェットスリマー等の機械をリースしてジェットスリム藤枝クリニック、ジェットスリム富士クリニックと店舗を展開していったにもかかわらず、加盟店契約書の作成は要求されていないことが認められるのである。 以上のことからすれば、控訴人代表者Dの内心の意思としては、被控訴人の店舗を自己の加盟店と考えていたということはありうるが、控訴人と被控訴人との間に控訴人主張の加盟店契約が締結されたものとまでは認めることができない。」を加える。 4 原判決二〇枚目裏一〇行目の次に、 「6 次に、抗弁3について判断するに、そもそも、不正競争防止法2条1項4号の規定する先使用の抗弁は、現実に、ある者が、ある地域において、不正競争の目的なくしてある営業の表示を使用している場合には、その後、その地域において他の者の使用するそれと紛らわしい営業の表示が周知となっても、当該ある者の営業の表示の使用が認められ、当該他の者から営業の表示の使用の差止めを請求されることはないとするものであり、他の者の営業の表示が周知性を取得する以前に、その地域においてその営業の表示を使用していたことが必要であるところ、控訴人は、被控訴人の使用により「ジェットスリムクリニック」の表示が静岡県内において周知となった際、同地域においてその表示を使用していなかったものであるから、控訴人が先使用の抗弁を主張することができないことは明らかである。 控訴人は、控訴人が被控訴人に対し、「ジェットスリムクリニック」の表示を使用することを許諾し、また、フランチャイズ制による全国展開によりその表示の全国的な周知性の取得に努めたので、控訴人の右表示の使用が、被控訴人が使用する静岡県内において現実にされていない場合であっても、その後、控訴人が同地域において右表示を使用する場合には、先使用の抗弁が認められるべきであると主張するが、原審における証人Bの証言によれば、被控訴人の「ジェットスリムクリニック」の使用が控訴人からの申し入れに基づくことは認められるものの、控訴人のいう許諾に基づくことを認めるに足る証拠はないのみならず、その主張自体、控訴人の独自の見解に基づくものであり、採用の限りではない。 よって、抗弁3は理由がない。 7 次に抗弁4につき判断するに、前認定のとおり、静岡県内において被控訴人自身、自らの費用をもって広告宣伝に努め、その表示の周知性を獲得したものであり、仮に、控訴人が自己の利益のためにした全国的な広告宣伝の効果が寄与していることがあるとしても、被控訴人が、控訴人が静岡県内において直営店又はフランチャイズ制による加盟店により被控訴人の営業の表示と同一の表示を使用することによる取引上に混乱その他の不利益を甘受しなければならない理由はなく、それを排除するため控訴人に対してその表示の使用の差止めを請求することは、正当な権利行使であり、控訴人の権利の濫用の抗弁は理由がない。」を加える。 5 原判決二〇枚目裏一一行目に「6」とあるのを「8」と改める。 6 原判決二一枚目表二行目の次に、 「これに対し、控訴人は、浜松駅南店において「ジェットスリムクリニック」の表示を使用しているのは控訴人ではなく加盟店であるから、控訴人に対しその表示の使用の差止請求をすることはできない旨主張する。 しかし、前認定のとおり、控訴人は、「ジェットスリムクリニック」との表示を使用して直営店を拡大していくかたわら、痩身美容店のフランチャイズの全国展開を計っていったものであるが、当審における証人Cの証言により成立を認めることができる乙第二五号証によれば、控訴人は、その過程の中で、昭和六二年九月二一日、訴外金田濶との間で、加盟店(金田)は加盟に際し、本部(控訴人)に対し、 加盟登録料一五〇万円、ノウハウ料一〇〇万円及び教育料五〇万円を支払うとともに毎月一〇万円のロイヤルティを支払い、本部は、加盟店に対し営業に必要な機械をリースにより供給するとともに加盟店が本部の指示するところに従い「ジェットスリムクリニック」の名称や商標マークを使用することを許諾し、加盟店は営業を行う場合は本部の指定する商標マーク、ロゴ等営業の象徴となるべきものを使用しなければならず、広告にあたっても本部の作成するチラシ等を使用しなければならないことを内容とする加盟店契約を締結し、加盟店においてその加盟店契約に基づいて「ジェットスリム浜松駅南クリニック」との表示を使用していることを認めることができる。 右認定事実によれば、控訴人は、加盟店契約に基づき加盟店を傘下に収め、自己の直営店とともに一つの統一的な営業組織体を形成してこれを統率し、その営業の表示として直営店及び傘下の加盟店において統一的に「ジェットスリムクリニック」の表示を使用しているものであり、加盟店の店舗の看板等に掲げられ、又はその広告宣伝の媒体に掲げられる右表示は、その加盟店を標章するのみならず、控訴人が統率する右営業組織体をも標章するものであり、そのような機能を果たさせるために控訴人が加盟店に右表示の使用を義務づけているものであるから、その加盟店のみならず本部たる控訴人自身もこれを使用しているものと認めることができるものである。したがって、本件の場合、被控訴人は、控訴人に対し、浜松駅南店における「ジェットスリム浜松駅南クリニック」の表示の使用の差止め及び営業物件からの右表示の抹消を請求することができるというべきである(その被控訴人勝訴の判決は加盟店に効力を及ぼすものではないが、控訴人自身も浜松駅南店における「ジェットスリム浜松駅南クリニック」の表示を使用しているものと認められる以上、その請求に利益がないとはいえない。)。 よって、控訴人の主張は理由がない。」を加える。 二 以上によれば、被控訴人の控訴人に対する浜松駅南店及び静岡駅前店における「ジェットスリムクリニック」との表示の使用の差止めと右各店舗における看板、 広告物その他の営業表示物件からその表示の抹消を求める被控訴人の請求を認容し、控訴人の反訴請求を棄却した原判決は相当であり、控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法95条、89条を各適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判官 | 竹田稔 |
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裁判官 | 春日民雄 |
裁判官 | 佐藤修市 |