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事件 平成 18年 (ワ) 4933号 不正競争行為差止等請求事件
埼玉県川口市<以下略>
原告ア クアクロス株式会社
訴訟代理人弁護 士秋山佳胤神奈川県横浜市<以下略> (商業登記簿上の住所)神奈川県横浜市<以下略>
被告株 式会社レーベン販売
訴訟代理人弁護 士又市義男
同 南かおり
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/09/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙被告製品目録記載の製品を製造,販売してはならない。
2被告は,別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,1050万円及びこれに対する平成18年3月30日から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等本件は,原告が,原告の製造・販売する耳かきの形態は原告の商品等表示として周知・著名なものになっており,被告が,原告製品の特徴的形態と酷似する耳かきを製造,販売したことは,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の不正競争行為に該当するとして,被告の製品の製造,販売の差止め,被告の製品の廃棄及び損害賠償を求めた事案である。これに対し,被告は,原告の製品の形態は,原告の商品等表示として周知・著名なものになっているものではないし,被告製品の形態は,原告製品の形態と同一若しくは類似ともいえないなどと主張して争っている。
1前提となる事実(当事者間に争いのない事実,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)( ) 当事者1原告は,新商品の研究開発,企画,立案等を業とする株式会社である。
,,,,,, 被告は 食器類 インテリア用品 工芸品 家庭用雑貨 衣料品等の設計企画,製造,販売等を業とする株式会社である。
( )原告製品2原告は,別紙原告製品目録記載の耳かき(以下「原告製品」という )を。
製造・販売している。原告製品の形態は,同目録記載のとおりで,その先端は,弾性を有する金属製の線材を螺旋状に加工したスパイラルヘッドである(検甲1 。)( )被告製品3被告は,別紙被告製品目録記載の耳かき(以下「被告製品」という )を。
製造・販売している。被告製品の形態は,同目録記載のとおりである(検甲2 。)2本件における争点( ) 被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争1行為に該当するか(争点1 。)( ) 損害額(争点2)2第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為に該当するか )について。
( ) 原告1ア原告製品の形態が周知又は著名な商品等表示であること)特別顕著性a従来の耳かきは,竹製で,その先端(耳垢をとる部分)の形状はいわゆる小さなスプーン型のものがほとんどであった。これに対し,原告製品の先端は 「弾性を有する金属製の線材を螺旋状に加工したスパイラ ,ルヘッド」であることを特徴とし,従来製品と明確に識別し得る独特の形態的特徴を有している。なお,原告製品の形態は,被告のいう「旧形状 (甲4,5)も「新形状」も「弾性を有する金属製の線材を螺旋状 」に加工したスパイラルヘッド」との特徴的な部分の変更は一切なく,商品の形態の同一性を維持しているものである。
原告製品は,このような既存の耳かきとしての常識を覆す極めて独創的・特徴的かつ審美的な形態ゆえに,発売と同時に各所で話題となり,1280円(消費税別)という耳かきとしては今までになかった高価格な値段設定にもかかわらず,後記のとおり大ヒット商品になり,大きな売上げを記録した。また,原告製品は,平成11年,グッドデザイン賞(Gマーク)を受賞し,原告自身が宣伝費をかけなくても,その話題性から,多数のテレビ番組,新聞,書籍,雑誌等で好意的に取り上げられた。このように,原告製品が従来製品と全く違う極めて特徴的な形態を有していることは,商品の形態自体が極めて強い識別力を有することを意味するのであり,当然,見る者にも一度見たら忘れない強い印象を与え,周知商品表示性を基礎付ける強い理由になるものである。
)長期間の継続的独占的使用b原告製品は,平成11年3月に,東急ハンズにて販売を開始し,東急ハンズ全店,ランキンランキン全店において,耳かき部門で販売数,売上高1位を占めており,平成16年度は,東急ハンズ新宿店において,耳かき以外の製品も含めた全取扱いアイテムの売上高上位ベスト10に入り(甲72 ,西武ロフトにおいても,ロフト全店の耳かき部門にお )ける売上本数,売上高で1位を占めている(甲75 。また,大手卸・)販売店「木屋」においても,平成12年より全国100店舗以上の有名百貨店で原告製品を定番として取り扱っているが,販売開始以来現在まで,耳かきとしては異例の月500個以上出荷し,ヒット商品としてその販売数を維持している(甲73 。さらに 「紀伊國屋「三省堂 , ),」,」「有隣堂」等(全国157店舗)への出荷数量は,現在,耳かきとしては異例の月4400個を超えている(甲76 。その販売数は,発売以 )来平成17年9月までの6年6か月間で累計40万1216本を記録し,また,累計販売額も5億1355万7200円を記録している(甲86 。))まとめc前記のとおり,原告が,極めて特徴的な形態を有し,強い識別力を有している原告製品を,平成11年3月以降,長期間継続して独占して販売してきた実態,強力な宣伝広告等に基づいて使用されてきた実態に照らし,原告製品の形態は,遅くとも,被告が被告製品の販売を開始したと主張する平成14年9月の時点において,日本国内の耳かきの取引業者,耳かきを好んでする需要者に対して,周知商品表示性を獲得しており,また,被告製品の販売が開始された平成17年9月の時点においても,日本国内の耳かきの取引業者,日常的に耳かきをする需要者に対して,周知商品表示性を獲得しており,それは現在においても変わるところはない。
イ原告製品と被告製品の形態の類似性)先端の形状の類似a被告製品の先端の形状は,弾性を有するステンレス製の線材を螺旋状に加工したスパイラルヘッドを有する点で原告製品と共通するだけでなく,先端螺旋状の最上部より下方右回りに螺旋状に加工し,軸(芯)に巻き回し,固定され,その固定した根本の支持によって先端は上下前後左右360度可動可能となり,外耳道の表皮にその弾力性を発現している点でも同一である。
)先端のサイズの類似b螺旋形状の最上部より軸に巻き回した根本までのサイズ(いずれも約),, (., 10o及び 最も膨らんだ螺旋部のサイズ 原告製品が約4 2o被告製品が約4.5o)においても,極めて類似している。
)形状がもたらす効果の同一性c被告製品は,原告製品の先端の形状を模倣することにより,耳垢を螺旋の内側に保持するという効果さえ同一にしている。
)形態の相違点(被告の主張に対する反論)d原告製品と被告製品とは,その形態に以下のような相違がある。しかし,これらは,いずれも些細なものであり,特徴的部分が類似していることに影響を与えるものではない。
@柄部の形状の差異柄の部分は,要するに棒状であれば足り,この点で,原告製品の柄と被告製品の柄に差異はない。耳かきの形状で,需要者に認識される重要部分は,耳をかく先端であるから,柄の形状の差異は,類似性を否定する理由にはならない。
A先端の微妙な差異先端の内部にある芯の長さは,原告製品のほうが短い。しかし,いずれの製品も,外側の弾性金属線材の螺旋形状の部分が,外観需要者印象を与える部分であって,それが全く共通しているのに対し,芯は,螺旋状の線材に半ば隠れているもので,需要者に与える印象にほとんど影響を与えない。
また,原告製品,被告製品のいずれも,ワイヤー部分の先端の直径は,ワイヤー部分の最大の直径(中央の直径)よりも減少している。
被告製品のほうが,若干この減少の程度が大きいものの,これはごく僅かな差異であり,従来のスプーン型の耳かきに比べれば,ほとんど無視できる微細な違いに過ぎない。
B一重螺旋と二重螺旋との差異(被告の主張に対する反論)螺旋が一重か二重かは,需要者において外観上ほとんど区別し得るものではなく,類否の判断に影響を与えるものではない。
Cワイヤーの直径の差異(被告の主張に対する反論)原告製品のワイヤーの太さは0.3oであるのに対し,被告製品のそれは0.4oであるが,需要者がかかる違いを計測しかつ認識して耳かきを選ぶことはあり得ず,外観上,需要者に与える印象に何ら影響を与えるものではない。
)まとめe以上の原告製品の形態の極めて強い周知商品表示性と,原告製品と被告製品との類似性により,取引者及び需要者において,被告製品を原告会社のものあるいは原告会社と何らかの関係があるものと混同するおそれがあることは明らかである。
( ) 被告2ア原告製品の形態が周知又は著名な商品等表示でないこと)特別顕著性a原告製品の形態は,周知又は著名な商品等表示ではない。耳かきの先端の形状は,従来から様々であり,スプーン型のものが多数を占めてはいたものの,先端にワイヤーを螺旋状に巻いた耳かき,ネジ式の形状を, 。 有する耳かき 円盤を複数枚重ねた形状の耳かき等が存在するのである)長期間の継続的・独占的使用 b原告製品が広く広告宣伝されてきたことはない。
イ原告製品と被告製品の形態の類似性)被告製品は,弾力性を有する金属製の線材を有している点で原告製品aと共通しているものの,両製品の先端には,以下の差異がある。
@原告製品の先端は,根本から先端にかけてラッパ状の末広がりであるのに対し,被告製品の先端は,中央部分が太い繭状である。
A被告製品の先端には根元部分から先端までの芯があり,綿棒等と同様に周りに巻いたワイヤーが芯によって支えられていることを特徴としているのに対し,原告製品の先端は,耳垢に接する部分が360度自由に回転することからその部分においては芯が存在しない(してはならない)ことを特徴とする。
, , B被告製品の先端は ワイヤーが一方向のみの一重に巻かれているが原告製品の先端は左右双方から交差するように二重螺旋の構造となっている。
., . C被告製品のワイヤーは直径0 4o 原告製品のワイヤーは直径03oである。0.3oでは柔らかすぎて被告製品の先端には使用できず,0.4oは二重螺旋とするには固すぎる。
)また,前記のように,種々の形態の耳かきが販売されていることからbしても,原告製品と被告製品が誤認混同をきたすとの原告の主張に理由はない。
2争点2(損害額)について( )原告1被告は,平成17年9月ころから現在まで,少なくとも被告製品を3万本製造販売している(甲57 。原告製品1本あたりの利益額は,約350円 )である。
よって,原告は被告に対し,上記の被告の譲渡数量に原告製品1本あたりの利益額を乗じた1050万円を,損害賠償として請求する(不正競争防止法5条1項 。)( )被告2原告の主張を否認し争う。
第4当裁判所の判断1争点1(被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為に該当するか )について。
( )商品の形態商品等表示性について1不正競争防止法2条1項1号が,他人の周知な商品等表示と同一又は類似商品等表示を使用することを,同項2号が,他人の著名な商品等表示と同一又は類似商品等表示を使用することを,それぞれ不正競争行為と定めた趣旨は,上記の使用行為により,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し(1号 ,又は,著名な商品等表示に化体された他人の高い信用,名声,評判に )より商品や営業の売上げを促進させる顧客吸引力へのただ乗り行為を防止し(2号 ,もって,周知又は著名な商品等表示が有する営業上の信用を保護 )することにある。
商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品等の形態が,上記各号にいう「商品等表示」として保護されることになると解すべきである。
( )原告製品の形態の商品等表示性について 2ア原告製品の形態の特徴について, ,, 原告製品の形態は 別紙原告製品目録記載のとおりであり その先端は弾性を有する金属製の線材を螺旋状に加工したスパイラルヘッドである。
原告製品の先端は,発売当初は螺旋状の部分が一重螺旋であり,芯も螺旋状の部分には出ていなかった(甲4,5)が,後に二重螺旋になり,芯の先端が螺旋状の部分の内部に出ている形状(乙1)になるなど,細部で変更された部分がある。また,原告製品の販売単価は,1280円(税別)のもの,2000円(税別)のもの(甲86)と数種類あるものの,いずれも,弾性を有する金属製の線材を螺旋状に加工したスパイラルヘッドを有するものであることに変わりはない。
従来の耳かきは,竹製で,その先端(耳垢をとる部分)の形状は,スプーン状のものが多く,そのほかに,ネジ状(スクリュー状)のもの,円板, , を複数枚重ねた形状のもの ループ状に曲げた金属製の線材を重ねたもの綿棒状のもの,電動掃除機型のもの,ライト付きのもの,内視鏡付きのものなど様々なものがある。しかし,先端に金属製の線材を螺旋状に巻き付けた形状のものは,原告製品と被告製品のほか,2製品(乙6の3・7,())(, ,,, 乙9 乙6の7と同じ製品しか見当たらない 甲1 5 10 1213,15,16,26,32,35ないし38,40,41,43,46,53ないし55,78ないし80,82ないし84,89,乙6の1ないし9,乙7,8,9 。しかも,上記2製品はいずれも,螺旋状に巻 )いた線材の両端が芯に巻き付いており,ネジ状のものに類する形態であるのに対し,原告製品は,螺旋状の部分の根本のみが芯と接するもので,このような形態は原告製品及び被告製品のほかに見当たらない上(但し,被, 。), 告製品は 螺旋状の部分の先端近くまで芯があるのが原告製品と異なる上記2製品の販売開始は,平成15年ないし平成16年と,原告製品の販売開始後である(乙6の3・7,弁論の全趣旨 。)また,原告製品は,後記のとおり,テレビ番組等で紹介されているが,クイズ形式で商品を紹介するテレビ番組において,出演者や街頭の通行人に原告製品を示して,これが何かと質問したところ,クイズ形式による商品紹介という番組の形式ゆえに,物珍しさや意外性等を強調するために制作者による作為が施されていることは考えられるとしても,耳かきであると回答した者はなかった(別紙「テレビ番組一覧表」記載の平成13年10月21日放送の「新体感クイズTVタッチアンサーズ (甲1)及び平」成17年1月17日放送の「朝は楽しく! (甲78。」))以上の事実を考え併せれば 原告製品の先端の形態は 他の同種商品 耳 ,,(かき)とは異なる独自の特徴を有しているものと認められる。
イ原告製品の売上げ及び宣伝広告について)原告製品は,平成11年3月1日に販売が開始され,当初は,東急ハaンズ池袋店で販売されていた。原告は,その後,新宿,横浜,名古屋等全国の東急ハンズのほか,日本橋三越本店,伊勢丹浦和店,そごう大宮店等のデパート,木屋,丸善,ロフト,サライの店 「王様のアイディ,」( ) , ア平成12年当時で全国15店舗 のようなアイデア商品の専門店一部のコンビニエンスストア,渋谷駅構内や福岡市天神地下街等のランキンランキン,その他紀伊國屋書店,三省堂書店,有隣堂書店等の書店でも原告製品を販売するなど販路を拡大し,東急ハンズや木屋などによる通信販売でも販売している(甲3,7ないし9,11,12,18,22,24ないし28,33,34,36,38,39,44,46,47ないし53,65,70ないし73,75,76,80,81 。)上記販売開始後平成18年7月31日までの間の原告製品の販売本数は以下のとおりである(甲86 。被告製品の販売開始は平成14年9 )月ころであるが(乙4,弁論の全趣旨 ,原告製品の販売開始から,被 )告製品の販売開始時までの間の原告製品の販売本数は,16万0071本であり,平成18年7月までの間の販売本数は,55万1985本である。
平成11年3月〜12年3月1万2250本平成12年4月〜13年3月4万0543本平成13年4月〜14年3月5万1827本平成14年4月〜15年3月7万2072本平成15年4月〜16年3月7万0552本平成16年4月〜17年3月11万8148本平成17年4月〜18年3月12万8353本平成18年4月〜18年7月5万1985本原告製品は,東急ハンズ全店,ランキンランキン全店において,耳かき部門で販売数及び売上高1位となり,平成16年度は,東急ハンズ新宿店において,耳かき以外の製品も含めた全取扱い商品の売上高上位10位以内に入り(甲72 ,ロフトにおいては,ロフト全店の耳かき部 )門における販売数及び売上高で1位を占めている(甲75 。木屋にお)いては,平成12年から全国100店舗以上の有名百貨店で原告製品を定番商品として取り扱っており,販売開始以来現在まで,月500本以上を出荷し(甲73 ,さらに,書店への出荷数量は,現在,月440 )0本超である(甲76 。)b)原告製品は,その販売開始以後,新聞,雑誌,テレビ番組等で何度か取り上げられている。
原告製品を紹介した新聞・雑誌等の発売日ないし掲載日,その名称,媒体の種別,発行ないし発売元,発行部数,販売地域等(全国か特定の地域か,一般に市販されているか特定の会員にのみ頒布されるものか等 ,当該記事に記載された販売先,当該記事に原告製品の形態が紹介 )されているか否か及びその紹介の方法(原告製品の写真が付いているか否か等 ,当該記事に原告名が紹介されているか否かは,別紙掲載雑誌 )等一覧表に記載したとおりである(なお,同表の発行部数,販売地域等欄が空欄のものは,これらについて不明なもの,同表の紹介した販売先欄,原告名の表示等欄が空欄のものは,当該記事において販売先や原告名が記載されていないものである(甲3ないし55,70,79, 。)80,82ないし84,89,90,弁論の全趣旨 。)また,原告製品を紹介したテレビ番組の放送日,番組名,放送局名,放送開始時間,放送地域,紹介内容等は,別紙テレビ番組一覧表のとおりである(なお,同表の開始時間欄,放送地域欄,内容等欄が空欄のものは,これらについて不明なものである(甲1,69,78,弁論 。)の全趣旨 。)その他,原告製品は,ラジオ番組でも 「ぱっと見,耳かきに見えな ,い ・・・螺旋状・・・」のもの(平成13年3月3日放送「谷五郎の 。
旅は続くよ (山陽放送「先っぽ,ばねのよう・・・柔らかいスパ 」)),イラルヘッド (平成13年11月14日放送「沢木久雄のとりたてラ 」ジオ (SBS静岡ラジオ )などと紹介された(甲2 。 」) )ウ原告製品の形態の周知性著名性についてa)耳かきが日本全国どの家庭にも存在する日用品であること,また,一般の消費者は耳かきを薬屋(ドラッグストア ,雑貨屋あるいはコンビ )ニエンスストアなどで購入することを考えると,本件における原告製品の形態の周知性著名性は,日本全国における一般消費者を需要者として,また,一般の薬屋,雑貨屋,コンビニエンスストアなどを取引者として考えるのが相当である。
)原告製品の売上げは,上記認定のとおり,販売開始以降少しずつ伸びbているものの,その販売本数は平成14年9月までで累計16万0071本,平成18年7月までで累計55万1985本であり,その数は日本全国の一般消費者の数あるいは日本全国の世帯数を考慮すると多いと。, ,, はいえない また 原告製品を取り扱っているのは 前記認定のとおり東急ハンズ等の専門店,デパート,一部の大手書店等であり,原告製品を一般の薬屋,雑貨店あるいは一般のコンビニエンスストアなどで広く取り扱っていることを認めるに足りる証拠はない。
)原告製品については,原告による宣伝広告はほとんどなされていないc(雑誌サライの平成18年5月18日号の裏表紙広告(甲81)等がある程度である。しかし,原告製品が耳かきとしては,独特な機能・ 。)形状を有していることから,別紙掲載雑誌等一覧表のとおり,これを紹介する記事がときおり新聞・雑誌等に掲載されている。その記事は,平成12年から平成16年にかけて,年に数回程度,平成17年以降は年に10数回程度掲載されており,そのうち,毎日新聞家庭欄(平成12年6月,400万部,甲3 ,毎日新聞朝刊(平成14年9月,400 )万部,甲14 ,日経夕刊(平成15年7月,約163万部,甲24 , ) )朝日新聞be(平成16年10月,800万部,甲33 ,産経新聞朝)刊(平成17年12月,220万部,甲53 ,朝日新聞be(平成1 )8年6月,甲83)は,日刊新聞の全国版であることからすれば,これらの紹介記事が,原告製品について相応の宣伝広告の効果を奏するものであることは否定し得ないところである。しかし,このうち,上記日経夕刊や産経新聞朝刊には,その形態を端的に認識しうる原告製品の写真は掲載されていない。また,その余の新聞記事には,原告製品の写真が掲載されているものの,大きくても約4ないし6p四方程度の小さなものである。また,これらの記事は,1,2年に1回程度のものであり,その間,原告自身による宣伝広告がほとんどなされないことは前記のとおりである。さらに,新聞以外の雑誌等の紹介記事についても,別紙掲載雑誌等一覧表記載のとおりであり,これらの雑誌は,いずれも,全国で販売されているものの販売数が少ないもの,特定の販売地域において販売されているにすぎないもの(甲19,22,26,36,37,38 ,頒布対象者が会員に限定されているもの(甲9,28,90)及 )びその内容等から購読者が限定されると思われるもの(甲8,16,17,29)などがあるにすぎず,その購読者が限られていること,並びに,雑誌等による原告製品の紹介記事の多くは,複数の耳かきを対比しながら同時に紹介するものであり,原告製品のみを紹介するものではないこと(甲5,10,12,13,15,16,29,32,35ないし38,40,41,43,46,53ないし55,79,80,82ないし84,89)からすれば,これらの紹介記事による原告製品の形態の宣伝広告の効果はあまり期待し得ないものである。
原告自身がほとんど原告製品の宣伝広告をしていないことを考え合わせると,新聞・雑誌等のこれらの紹介記事により,原告製品の形態が広く一般の需要者及び取引者に知られているということは困難である。
)原告製品を紹介等しているテレビ番組についてみると,別紙テレビ番d組一覧表のとおり,そもそも視聴者が少ないことが容易に推測される深夜ないし早朝(23時半以降7時まで)に放映されているものが28件中17件を占めている上,ほか2件(BS朝日及びスカイパーフェクトTV)は契約者のみが視聴できるものであり,さらに1件はUHF(MXテレビ)である。そして,深夜ないし早朝放映のものの中には通信販,, 売番組も相当数含まれていることを考慮すると これら20件の番組はいずれもその視聴者の数はかなり少ないものと推認される。なお,原告は,多数の者がテレビ番組を視聴していることを示す証拠として視聴率データ報告書(甲69)を提出するものの,同報告書自体に,世帯視聴率データから視聴者数を推計することは薦めない旨記載されていることからすれば,原告が主張する視聴者数は必ずしも信用性のある数値ではない。
また,別紙テレビ番組一覧表中の上記以外の8件のテレビ番組については,@)平成15年1月16日9時21分日本テレビ放映の「情報ツウ (関東・札幌 ,A)同年12月12日9時55分関西テレビ放映の 」)「痛快!エブリディ (関東 ,B)平成16年11月25日21時TB 」)S放映の「金曜日のスマたちへ (全国 ,C)平成17年1月17日8 」)時13分テレビ東京放映の「朝は楽しく! (関東 ,D)平成18年3 」)月6日8時30分TBS放映の「はなまるマーケット (全国 ,E)同」)年3月14日8時テレビ朝日放映の「スーパーモーニング (全国 ,」)F)同年3月18日8時40分フジテレビ放映の「ベリーベリーサタデー (全国)及び,G)同年3月30日福岡放送放映の「めんたいワイ 」ド (北部九州)がある。これらのテレビ番組の中には,原告製品を好 」意的に紹介するものもあることは否定できない(別紙テレビ番組一覧表参照 。)しかし,前記テレビ番組のうち,平成13年10月21日放送の「新体感クイズTVタッチアンサーズ」においては,街頭で複数の通行人に対し,原告製品を示して,それが何かと尋ねても,全員が耳かきである旨答えられず,原告製品を知らなかったことが放送されており,この番組は,クイズ形式で新製品を紹介するものであることから,原告製品の物珍しさ,新規性等を強調するために,編集段階において番組制作者側の作為が加えられていたことはあり得るとしても,このような番組において原告製品がクイズの対象として登場すること自体からも,平成13年10月の段階において,大多数の者が原告製品の形状を知らなかったことを推認させるものである。加えて,上記C)の番組のように,ゲスト4名及び通行人60名に原告製品を見せて,何の商品かを質問をしたところ,耳かきであると回答できる者がいなかったこと,すなわち,平成17年1月ころにおいて,原告製品の形態を見て耳かきであることすら分からない者が多数いたことを明らかにしている番組も存在しているのである。この番組が原告製品を発明品として紹介する番組であったため,その編集過程において,原告製品を耳かきと答えた通行人をカットするなどの作為が加わっている可能性があることを考慮したとしても,多くの人が原告製品の形態から耳かきであることすら想像し得なかったことは否定し得ず,このことからすれば,平成17年においても,原告製品の形態が商品等表示として需要者及び取引者間に周知,著名であったと認めることは困難であるといわざるを得ないのである。
なお,原告製品を採り上げた前記ラジオ番組は,言語による説明であって,原告製品の形態を端的に認識しにくい上,いずれも特定の地方においてのみ放送されたものであるにすぎない。
)上記のような事実にかんがみれば,原告製品は,平成11年3月からe販売され始めたものであり,未だ長期間継続的かつ独占的に使用されてきたものとはいえず,また,短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されてきたものともいうことができず,その形態は,被告製品の販売開始時のみならず,現在においても,日本全国の取引者及び需要者広く認識されているものと認めることはできない。
不正競争防止法2条1項1号及び2号は,前記のとおり,周知又は著名な商品等表示が有する営業上の信用を保護することをその趣旨とし,商品の形態が,その出所を表示するものとして,その需要者及び取引者間で広く認識されている場合に 「商品等表示」として上記各号の保護 ,を受けることとなるものである。これに対し,弾性を有する金属製の線材を螺旋状に加工した原告製品の形態は,耳かきとしての機能と密接に関連しているものであり,螺旋状の部分が弾性を有し,従来のスプーン型の耳かきのように点ではなく,線で,かつ,全方向で耳に接する構造とされ,また,線材の太さも,細すぎると痛みを伴い,太いと耳垢がとりにくくなるということから,現在の太さ(0.3o)にされたもので(, , ,,,,,,)。 ある 甲1 8 9 16 19 28 33ないし35 39 78そして,スプリングのような弾力を持つ螺旋状の先端が全方向で当たる構造であるため,耳への当たりが柔らかで,痛みがなく,使用感が心地良いということが,原告製品の宣伝の際の売り文句となり,試用した者を惹き付けるポイントともなっているのであり,上記のような原告製品の形態は,専らこのような使用感,耳かきとしての機能との関連で紹介されている(甲1,3ないし11,14,15,17ないし19,22ないし25,27,29ないし31,37,38,40,42ないし46,49ないし55,78,81ないし83,89,90 。このよう)な事情にかんがみれば,需要者,すなわち日本全国の一般消費者において,原告製品を選択し購入する場合,その心地よさなどの使用感や効率よく耳垢をとることができるかなどの機能性が重要な役割を果たしているものと推認されるのであり,原告製品を購入する動機を直ちに不正競争防止法2条1項1号及び2号が保護している周知あるいは著名商品等表示営業上の信用と結び付けることは短絡にすぎよう。
原告製品のような商品の保護は,その構成あるいは機能については,特許法あるいは実用新案法による法定期間内の保護が,また,斬新なデザインについては意匠法による法定期間内の保護が認められ得るとしても,不正競争防止法2条1項1号及び2号による保護を認め,その新規な構成あるいは機能ないしデザインを半永久的に独占的に保護をする結果となることは,他の知的財産権の保護とのバランスからみても相当ではないというべきである。
エよって,原告製品の形態を,不正競争防止法2条1項1号及び2号における周知商品等表示とも,著名な商品等表示とも認めることはできない。
2結論以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 間史恵
裁判官 荒井章光