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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ17357不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  商標登録 /  登録商標 /  需要者 /  認知度 /  類似表示 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  類似性(類似) /  外観 /  呼称 /  観念 /  印象 /  記憶 /  連想 /  混同のおそれ(混同) /  営業の混同 /  出所の混同 /  表示の使用 /  誤認混同 /  差止請求(差止) /  ライセンス /  デザイン /  侵害 /  認知度 /  代理人 /  代表者 /  商品表示性 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  競争関係 / 
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事件 平成 18年 (ワ) 1080号 不正競争行為差止等請求事件
原告株式会社イーグル・イトガ
訴訟代理人弁護士森博行
被告株式会社イーグル・イチハラ
訴訟代理人弁護士三山峻司
同 西迫文夫
同 井上周一
同 金尾基樹
補佐人弁理 士井内龍二
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2007/02/15
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,大阪法務局平成17年6月7日受付をもってした設立登記中,「株式会社イーグル・イチハラ」の商号の抹消登記手続をせよ。
2被告は,看板,事務所ドア上の表示,名刺,パンフレットその他の営業表示物件から「株式会社イーグル・イチハラ」の表示を抹消せよ。
3被告は,その営業上の施設及び活動について,「株式会社イーグル・イチハラ」,「株式会社イーグルイチハラ」,別紙被告表示目録記載1(1),(2)及び2(1),(2)の各表示を使用してはならない。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用はこれを5分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
6この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1主文第1,第2項と同旨。
2被告は,その営業上の施設及び活動について「EAGLE」及び「イーグル」の文字を含む表示を使用してはならない。
第2事案の概要本件は,原告が,原告が販売する特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグ又は原告の営業を表示するものとして周知性を取得している「EAGLE」及び「イーグル」の表示(以下,「EAGLE」及び「イーグル」の表示を併せて「本件表示」という。)を使用している被告の行為が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して,同法3条に基づき,被告に対し,その商号の抹消登記手続,営業表示物件から「株式会社イーグル・イチハラ」の表示の抹消及び本件表示の使用差止めを求めた事案である。
1争いのない事実(1)当事者ア原告は,昭和58年6月1日に袋物の製造販売等を目的として,「株式会社イーグル・イトガ」の商号により設立された会社である。
イ被告は,平成17年6月7日に袋物の製造販売等を目的として,「株式会社イーグル・イチハラ」の商号により設立された会社であり,大阪法務局同日受付により設立登記を経由した。
(2)原告と被告の取扱商品原告と被告は,株式会社イーグル・オサダ(東京都豊島区所在。以下「オサダ」という。)から,同社が製造する特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグ(以下「オサダ製品」という。)を仕入れ,これを販売している(以下,オサダ製品のうち,原告が取り扱っているものを「原告商品」,被告が取り扱っているものを「被告商品」という。)。現時点におけるオサダ製品の主要品目を素材別・売れ筋順で列挙すると次のとおりである。
(素材) (標準価格帯)@アルパカ(ペルー産)20万円台Aパイソン(東南アジア産)20万円台Bシャーク(南太平洋近海産)20万円台Cオーストリッチ(南アフリカ産)40万円台Dエクシール(北欧産)30万円台Eコンビネーション(組み合わせ素材)30万円台Fホースヘアー(モンゴル産)30万円台Gクロコダイル(シンガポール産)90万円台(3)原告の表示原告は,原告商品の販売等,営業活動を行うに当たり,次の各表示を使用している。
ア「株式会社イーグル・イトガ」なる商号イ「株式会社イーグルイトガ」なる表示(以下「原告文字表示」という。)ウ別紙原告表示目録(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「E」の装飾文字を丸で囲んだロゴマークを「Eマーク」といい,別紙原告表示目録(1)(2)記載の各表示を併せて「Eマーク付き原告表示」という。)(4)被告の表示被告は,被告商品の販売等,営業活動を行うに当たり,次の各表示(以下,併せて「被告表示」という。)を使用している。
ア「株式会社イーグル・イチハラ」なる商号イ「株式会社イーグルイチハラ」なる表示(以下「被告文字表示」という。)ウ別紙被告表示目録1(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「IE」の文字を模したロゴマークを「IEマーク」といい,別紙被告表示目録1(1)(2)記載の各表示を併せて「IEマーク付き被告表示」という。)エ別紙被告表示目録2(1)(2)記載の各表示(以下,各表示中,「EI」の文字を模したロゴマークを「EIマーク」といい,別紙被告表示目録2(1)(2)記載の各表示を併せて「EIマーク付き被告表示」という。)2争点本件の争点は,被告表示の使用が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するかであり,具体的には次のとおりである。
(1)本件表示は,原告商品又は原告の営業を表示する「商品等表示」といえるか。
ア本件表示は,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当するか。(争点1)イ本件表示は,原告に帰属するものか。(争点2)(2)本件表示は,原告の商品等表示として周知性を有しているか。(争点3)(3)被告表示は,本件表示と類似するか。(争点4)(4)被告商品又は被告の営業を原告商品又は原告の営業と誤認混同するおそれがあるか。(争点5)第3争点に関する当事者の主張1争点1(本件表示の商品等表示性)について【原告の主張】(1)原告は,本件表示を原告の商号中に使用しているほか,原告の営業上の略称として使用し,また,商品概要書(甲5),パンフレット(甲6),カタログ(甲7),取扱説明書(甲8),品質保証書(甲9),値札タグ(甲10),商品プレート(甲11),収納用紙袋(甲12),収納用布袋(甲13)などにも表記して使用している。
したがって,本件表示は,原告商品又は原告の営業を表示するものであり,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当する。
(2)被告は,原告は本件表示を単独で使用しているわけではないと主張するが,否認する。原告は,次のとおり,「EAGLE」ないし「イーグル」を単独でも使用している。
ア現在使用中の文書において(ア)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年」(甲6)(イ)「EAGLEBAGGALLERY」(甲7)(ウ)「このたびはイーグル製品をお買い上げいただき,まことにありがとうございます。」(甲8)(エ)「EAGLELEATHERCOLLECTION」(甲10)(オ)「EAGLEBAGGALLERY」(表面),「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年」「EAGLELeatherCollection」「イーグルオリジナルブランド」「EAGLEオリジナルブランド」(以上,裏面)(以上,甲23)(カ)「EAGLEBAGGALLERY」(1頁目),「イーグルは,このように考えています。」(2頁目)(以上,甲24)イ過去に使用した文書において(ア)「EAGLETHEHIGHESTFASHIONBAGORIGINALCOLLECTION」,「イーグルオリジナルバッグ」(以上,甲20)(イ)「特殊素材のみを扱った最高級バッグのイーグルもおかげさまで30年」「イーグルは今花盛り」(以上,甲21)…【被告の主張】(1)原告は,「EAGLE」及び「イーグル」の文字表示(本件表示)を単独で使用しているわけではない。原告の表示の使用態様は必ずしも一定していないが,甲第5号証ないし第13号証及び第15号証のいずれを見ても,「EAGLE」の文字表示のみ,あるいは「イーグル」の文字表示のみからなる表示(本件表示)は使用されていない。主に使用されているのは,「株式会社イーグルイトガ」なる文字表示(原告文字表示)か,「EAGLE」に「Eマーク」を併記した表示(Eマーク付き原告表示)である。
(2)原告は,「EAGLE」又は「イーグル」がそれのみ使用されている例を挙げるが,例えば「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとして」(甲…6),「このたびはイーグル製品をお買いあげいただき」(甲8)との記載 …において,「イーグル」の名称は,原告の営業の略称というよりは,原告商品の製造者であるオサダの略称として使用されているものといえ,原告の主張に必ずしも沿うものではない。
また,甲第7号証のパンフレットや甲第10号証の値札タグには,その最も目立つ場所に「EAGLE」に「Eマーク」を併記した表示(Eマーク付き原告表示)が記載されており,識別力ある表示として使用されているのはむしろEマーク付き原告表示である。甲第20号証及び第21号証のパンフレットにも,識別力ある表示としてEマーク付き原告表示が使用されている。
(3)したがって,原告は,「EAGLE」ないし「イーグル」の文字表示を,それのみで原告商品又は原告の営業を表示するものとして使用しているとはいえず,本件表示は,単独では,不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」とはいえない。
2争点2(本件表示の帰属主体)について【被告の主張】(1)以下の事実から明らかなように,本件表示は,原告商品を表示するものではない。仮に,本件表示について商品表示性が認められるとしても,それは,古くから原告に対してオサダ製品を供給してきたオサダに関連するものである。
アオサダと原告との関係(ア)オサダは,古くから「長田商店」の名称で袋物の製造を手がけ,昭和47年12月に現社名で会社として設立され,現在まで婦人用バッグ等の製造を行っている。
原告代表者P1は,もともとオサダ製品の販売業者の社員であったが,昭和58年ころ独立して原告を設立し,以後オサダ製品の一販売業者として販売活動を行っている。
オサダは,爬虫類皮革製品の製造技術において長い伝統と消費者・取引業者から高い信頼を有しており,従前から「イーグルオサダ」のブランド名で自社製品を販売してきた。同社の関連会社である長田商事株式会社は,イタリアの名門業者フィリベルト・ディーニ社(以下「ディーニ社」という。)から,ディーニ社製バッグの日本における独占的な輸入代理店としての地位を与えられている。
オサダは,爬虫類皮革業者の全国団体である全日本爬虫類皮革産業協同組合(以下「JRA」という。)に登録し(登録番号191),自社製品にJRAの織りネームやJRAタッグ(それが付された製品が動物保護に関するワシントン条約を遵守した製造業者の手にかかる製品であることを示すもの)を付して販売業者に提供している。
オサダは,自社独自の販売スタッフを有しておらず,その製品の販売に関しては,原告のような販売業者に委ねられ,この販売業者から全国の問屋・小売店に対して販売されるという販売形式が行われてきた。
原告は,オサダ製品の一販売業者にすぎず,多いときでもオサダの売上げの3割程度の製品を販売していたにすぎない。
(イ)他方,原告が販売してきたバッグ等の商品は,最近に至るまですべてオサダ製品であった。しかし,原告は,これらオサダ製品に原告自身のJRA登録番号(337番)を付け替えて販売している。
乙第2号証の1ないし13及び甲第15号証は,ディーニ社製バッグを掲載した雑誌「世界の一流品大図鑑」の1987年版から2005年版までを抜粋したものであるが,いずれの版にも有名な「フィリベルトディーニ」の名称とそのブランド名及びブランド図形が主要な識別標として訴求されるように表記されている。また,各年版に使用されている図形商標を見ると,原告は,2002年までは「イーグルオサダ」の頭文字である「E」と「O」を模したマークを付して商品を販売していたことがわかる。
(ウ)以上のとおり,原告は,オサダの製造技術に対する信頼を不当に取り込もうとしているうえ,原告のものではあり得ない「EAGLE」及び「イーグル」の名称をあたかもそれらが古くから原告の商品ブランドであるかのように主張しているにすぎない。
イオサダと被告との関係(ア)被告代表取締役P2は,平成6年2月ころから,原告の外務員(外務員とは,原告と雇用関係にあるわけではなく,原告とは独立した地位で自ら得意先を開拓し,一切の経費も負担し,原告商品を販売する立場である。)として,原告商品を借り受けて販売していたところ,平成9年3月ころ,自ら開拓してきたすべての得意先を息子であるP3に譲って原告の外務員を辞し,自らは宝飾品販売業に専念した。
他方,P3は,同年4月にP2が設立した有限会社アレス(以下「アレス」という。)の代表取締役となり,原告商品の販売を行うようになった。
原告とアレスの関係は,販売委託契約関係である。
(イ)原告は,数年前から直轄営業部を設け,自社の営業社員を用いて直接小売店に対して営業を行うようになったが,これは,外務員が開拓した得意先を奪う「問屋飛ばし」として,従前からの取引先である問屋筋から取引を忌避され,近年その売上げを大幅に減らした。
平成17年に入ると,原告の銀行に対する返済が滞り,オサダに対する支払滞納額も多額に上ったことから,オサダから原告に対する売掛けによる商品の供給がストップした。
(ウ)アレスは,原告との話し合いの結果,原告商品の販売を行うことを止めた。他方,P2は,平成17年5月末ころ,P3とともにオサダの役員と話し合いを行い,オサダの了解を得て,同年6月に被告を設立して自ら代表取締役に就任した。そして,被告は,オサダ製品の販売を行うようになった。
(エ)以上のような経緯で,被告は,現在の会社名(被告商号)と,「EAGLEICHIHARA」の欧文字及びこの欧文字の「EAGLE」,「ICHIHARA」の頭文字をとった「E」と「I」を模したマークを併記した表示(IEマーク付き被告表示,EIマーク付き被告表示)を使用して,オサダの製造供給に係る被告商品を販売するようになった。
被告は,「イーグルイチハラ」の名称使用についてオサダに異議がないことを確認しており,そのことは原告も知っているはずである。また,被告が販売活動を行っている相手方は,被告が引き継いだアレスの得意先又はP2による宝飾品販売の取引先が中心である。
【原告の主張】(1)「イーグルオサダ」ブランドの不存在被告は,オサダが「長い伝統と消費者・取引業者から高い信頼を有しており,従前から『イーグルオサダ』のブランド名で自社製品を販売してきた」と主張する。しかし,このような伝統と信頼の形成は,「イーグル」の名称で販路を拡大してきた原告の尽力によるものである。また,「イーグル」の名称によるオサダ製品の販売は,原告とオサダとの約定により,原告のみがなし得るものとされてきた。「イーグルオサダ」なるブランド名は存在せず,被告の上記主張の趣旨は,ただ,オサダが自己の社名において製品を供給してきたというだけのことでしかない。
すなわち,日本の婦人ハンドバッグ業界においては,これまで国産ブランドはほとんど育ってこず,各小売店が製造業者に作らせたものを自社の商品として,自社の名称で販売しているのがほとんどであった。原告も,昭和50年代半ばころまでは,K1において,オサダから仕入れた商品をノン・ブランドで販売していたが,そのころ,品質の優れているオサダ製バッグを国産ブランド商品に育て上げようと考え,自社の社名に「イーグル」を冠してオサダの社名と統一し,以降,「イーグル」バッグのブランド確立を目指して,徹底した商品管理と完璧なアフターサービスを実行し,販路拡大に全力を投球してきた。
(2)原告とオサダの取り決めオサダの取引先は,原告を含め複数存在するが,原告のように店舗を保有せず,問屋・小売店との異業種提携販売方式により全国的な販売網を形成している業者は,原告以外には存在せず,他の取引先は,すべて店頭販売を行う小売店である。原告とオサダとの間では,そのような小売店には,原告に供給する製品と同じ物は供給せず,また「イーグル」ブランドは使用させないという取り決めが行われてきた。そして,実際にも,オサダは上記取り決めを守ってきたのであり,過去には,オサダが茨城や東京で原告商品と同一の製品を小売店に納品したこともあったが,原告の抗議によりその製品をオサダに引き取らせ,また仙台では,小売店が「イーグル」ブランドによる販売キャンペーンを行ったこともあったが,オサダの介入によりこれを中止させるに至ったのである。
(3)JRAタッグJRAタッグは,ワシントン条約に基づき適法に輸入された皮革を用いた日本製品であることを示すものである。原告は,これを独自に入手して「イーグル」ブランドの商品に取り付け,販路に供してきた。
すなわち,原告が販売する「イーグル」ブランドの商品は,原告の独占販売に係る商品であり,原告は,顧客の声を聞き,その要望を反映させた商品を供給するため,オサダに対しデザインやサンプルを提示し,あるいはオサダから試作品の提示を受け,そうして決定された商品の製造をオサダに発注し,出来上がった商品はすべて原告が引き取ってきたのであって,これらの商品はすべて原告の商品であり,これらの商品に関する限り,オサダはその製造工場という立場にあった。つまり,「イーグル」ブランド商品とは,まさしく自主企画商品(プライベート・ブランド)であり,それゆえJRAも,原告の専門メーカーとしての地位を承認し,登録番号337を付与したのであるし,オサダも,原告が製造依頼した商品には,いわゆる「止め商品」として,オサダの登録番号191のJRAタッグを取り付けない約束となっていたのである。
(4)ディーニ社原告は,ディーニ社の日本における専属販売代理権を持つ長田商事から独占的販売権を付与され,同社製バッグを販売してきたが,原告の売上総額に占めるその割合は1%あるかないかという程度である。にもかかわらず,原告が独占販売権を確保してきた理由は,舶来志向のある日本の顧客に対し,海外ブランドの発売者であることをアピールすることにより,自社の信用をより高めること,及び専ら舶来のブランド商品を対象としている雑誌「世界の一流品大図鑑」に発売者として表示されることにより,自社の名称を広く知らしめることにあった。
(5)オサダの売上に占める原告の割合オサダは小売販売を行っておらず,その売上は,原告のような異業種提携販売を全国展開する業者のほかは,地域販売を行う小売業者に対するものがすべてである。
平成9年以降のオサダの年間総売上額に占める原告の仕入額の割合は,およそ次のとおりである。
年度@原告仕入額Aオサダ総売上額比率(@/A)(百万円)(百万円)平成933072046%平成1020663033%平成1119659033%平成1223553044%平成1317758031%平成1418855034%平成1515448032%平成1618845042%(6)「止め」商品及び「自主企画」商品平成13年ころまでは,オサダにおいてサンプルを作製し,原告がその中から取扱製品を選んでこれを「イーグル」専用商品,すなわち「止め型」として,オサダは同製品を原告以外に供給せず,原告にのみ供給するという扱いが行われていた。しかし,そのような約束であるはずなのに,時折同じ商品が出回ったため,その都度原告が対処せざるを得なかったことや,オサダの製造工程にミスがあったため顧客から多数のクレームを受け,そのすべてを原告の全責任において引き受けざるを得なかったことから,これら多発する諸問題を解決するため,同年ころから専属デザイナーによる原告独自のデザイン開発に取り組むようになった。こうして,原告において新製品をデザインし,サンプルを製作し,製造工程を改良し,製作指導を行う,いわゆる「自主企画商品」が原告商品の主流を占めるようになっていった(ただし,現在は独自のデザイン製作を停止している。)。したがって,止め商品と自主企画商品とは,その意味合いは相違するが,少なくとも原告のみが取り扱う商品である点では変わりはない。
(7)以上のとおり,オサダの売上の5割ないし3割を原告が占め,これがオサダの生命線を成していたことに加え,商品の流通先も全く異なっていたことから,オサダも本件表示を原告のものであると認め,「イーグル」ないし「EAGLE」のプレートは原告のみが貼付することができることとして,オサダは原告以外に納入する製品に同プレートを貼付せず,自社のロゴマークも「OSADA」の表示の下に添えるように,小さく「EAGLE」と表示して気を遣い(甲34),さらには,他社から「大阪にイーグルという会社があるが,同社はオサダさんの関係ですか」と照会されても,オサダは「知らない」と答えるなど,長きにわたり,原告による本件表示の独占的使用を尊重し,配慮し続けてきたのである。
その結果,本件表示は,原告商品の名称として,また原告の略称として,異業種提携先企業ないし潜在的提携先企業の間で広く認識されるに至ったのである。
(8)商品等表示の帰属主体の判断は,「当該商標がだれの業務に係る商品を表示するものとして周知となるかは,製造元と販売店間でOEM契約が締結されたかどうかなど両者間の契約内容によって定まるわけではなく,当該商標の使用された商品に接した取引者,需要者が,だれの業務に係る商品であることを表示するものとして当該商標を認識するかによって定まる」(東京高判平成14年12月25判時1817号135頁)。
そうすると,オサダのP4専務の陳述する,「イーグルイトガ様以外の取引業者様に対して当社製品を販売するに当たり,『イーグル』ブランドを使用させないなどという取り決めを行ったとの事実はなく,無論そのような約定はありません」(乙7)との言い分を前提としても,原告がマーケットとしている異業種企業間においては,本件表示は原告のものとして周知されており,これがオサダの業務に係る商品の表示として認識している者など誰一人として存在しないのであるから,本件表示の帰属主体が原告であることは否定し難い事実ということができる。
よって,オサダ製品を「イーグル」ブランドに高めてきたのは原告であり,それゆえ「イーグル」ブランドは,製造者としてのオサダと発売者としての原告との共有財産であるといってもよいのであるが,今日においては,本件表示は,少なくとも原告がかつて開拓し,これからも開拓しようとしている異業種企業を対象マーケットとする限り,原告の専有財産であるといって過言ではなく,オサダにおいても,原告の許諾なき限り,これを使用することは許されないものと解される。
【被告の反論】(1)原告は,原告とオサダとの間において,原告以外の取引先に対しては「イーグル」ブランドは使用させないという取り決めが行われてきたとして,オサダはこの取り決めを守り,過去に原告商品と同一の製品を小売店に納品したが原告の抗議によりその製品をオサダに引き取らせたことがある旨主張する(【原告の主張】(2))が,否認する。原告から「安値で売られては困る。」とのクレームがあったため,オサダが自主的に自社製品の引き上げを行ったことはあるが,それは原告主張のような取り決めに基づくものではない。
(2)原告は,オサダにおけるオサダ製品の売上のうち原告への売上が3割から5割近くの割合を占めていたことや,原告の「自主企画商品」が原告商品の主流を占めていたことを挙げ,本件表示がオサダの商品等表示ではなく,自己の商品等表示として周知されていた旨主張する(【原告の主張】(5)(6))。しかし,周知性とは,需要者にとっての認識を指す概念である以上,原告が主張するような割合自体に意味があるわけではなく,むしろ原告商品が現実にどのような態様で販売されていたかが問題である。
ア原告商品の販売活動の実態について原告が自己の営業やその原告商品について行う宣伝活動は,そのほとんどが原告の従業員でない「外務員」という委託業者によって行われ,提携先企業との交渉や販売活動についても,原告の指示によるのではなく各外務員に一任されていた。「世界の一流品図鑑」や原告のパンフレット・カタログは,一般の消費者向けというよりも,主として原告の外務員が自己の得意先開拓に当たり,営業先に対して商品の説明を行うためのツールとして用いられていた。
原告は,平成13年以降は,「外務員」方式から徐々に直轄営業部による販売にシフトしていることを示す資料として甲第29号証を示すが,そこの直轄営業部の「得意先」として挙げられた中には,原告の下を離れた外務員から直轄営業部が引き継いだものが少なからず含まれ,また,「ヘルプ」(外務員の得意先との取引を,直轄営業部社員が外務員を代行して行ったにすぎないもの)までが挙げられている。他方で,原告の少数の直轄営業部社員の手によって需要者の間で原告に対する認知度が急速に高まっていったとする証拠はない。
とすれば,原告が主張するように,「本件表示がオサダの業務に係る商品の表示として認識している者など誰一人として存在し」ておらず,需要者が専ら原告の業務に係るものとして本件表示を認識していたといえるかどうかは,原告の外務員がどのような態様によって販促活動を行っていたかに関わることとなる。しかし,原告の主張・立証するところによっては,到底,需要者が専ら原告の業務に係るものとして本件表示を認識していたというような実態を認めることなどできない。
むしろ,外務員が販促ツールとして用いていた2001年版までの「世界の一流品図鑑」には,「フィリベルトディーニ」,「イーグルオサダ」の名が記載されており(乙2の1ないし9),また,原告のパンフレット・カタログ類を見ても,それらには「dini(フィリベルトディーニ)」の製造標が記載され,また「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年。」(甲6),「最高級の希少な素材を厳選し,洗練された職人の技が生み出す」(甲35の1),「高品質にこだわり洗練された職人により格調高く仕上げられた逸品」(甲35の2)等として,素材の高級感や製造者の技術に対する信頼(すなわち,これはフィリベルトディーニやオサダに対する信頼性に他ならない。)を強調した記載がその多くを占めている。
原告の外務員は,このようなツールを現実に使用して販促活動を行っていた。にもかかわらず,原告は,「本件表示は原告のものとして周知されており,これをオサダの業務に係る商品の表示として認識している者など誰一人として存在しない」などと強弁しているのである。
イ原告の「自主企画商品」について原告は,原告の「自主企画商品」が原告商品の主流を占めるようになっていたとも主張するが,かかる主張の根拠とされる資料(甲33の4)を見ると,2002年1月から2003年4月までの16か月間の原告の「自主企画商品」の売上個数は合計305個(269個+36個)にすぎない。これは,2002年1月から同年12月までの1年間の総売上個数として原告が主張する7048個の約4.3%にしか当たらない。
さらに言えば,上記資料に記載された「自主企画商品」の「売上総計」とは,売上上代(定価)を合計したものにすぎず,そこから値引き分や外務員への支払分を差し引いた現実の売上は,それより相当低い金額となるはずである。
そもそも,ハンドバッグを含むファッション業界においては,どの販売業者においても,かかる程度の少数の自主企画商品を取り扱っている事実については論を待たない。にもかかわらず,上記のごとき資料を挙げてなされる原告の主張は,牽強付会な主張というべきである。
3争点3(本件表示の周知性)について【原告の主張】以下の事実に照らし,本件表示は,原告の商品等表示として周知性を取得しているというべきである。
(1)原告の取引者等原告が専ら採用してきた原告商品の販売方法は,呉服・婦人服・寝具・宝飾・時計・図書など異業種の地方問屋・小売店と提携して,それらが主催する展示会や店舗催事に原告のインストラクターが同席することにより,また,小売店の顧客に対する外商販売に同インストラクターが同行することにより,並行販売を行うという方式である(甲5,3枚目)。そして,今日における提携先企業数は200社に達しており,その所在は,北は北海道から南は九州まで全国各地に拡がっている。これらに原告の取引先となり得る潜在的提携企業を加えると,呉服業界では問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書卸業界では6割,時計宝石卸業界では4割が,本件表示を原告商品の名称として,また,原告の略称として認識しているものと解される。
なお,原告商品は,主に中高年の富裕層を販売対象とする高級婦人ハンドバッグであるので,そのような特定層の消費者を「需要者」とみることもできるが,他方で,原告商品は,提携先企業に卸す形をとってその顧客に販売するものであるため,これを周知性判断の基準とすることに問題はない。
(2)売上実績平成9年以降の原告の売上実績及び売上個数の推移は,次のとおりである(1万円未満四捨五入)。
年総売上高売上個数直轄営業部売上高平成9年9億2661万円9231個-平成10年7億0817万円7024個-平成11年6億7315万円7049個-平成12年7億2920万円8730個-平成13年5億9821万円7636個5376万円平成14年5億6873万円7048個1億1860万円平成15年4億7687万円4999個1億2029万円平成16年4億9004万円5218個1億0984万円平成17年2億5675万円3503個1億1860万円なお,「総売上高」とは,提携先企業に対する卸売総額であり,消費者に対する小売総額ではない。「売上個数」には,メインとなるハンドバッグの外,小物類も若干含まれている。「直轄営業部」とは,平成13年以降設置されたものであるところ,それまでの原告の営業形態はすべて外務員委託方式であり,提携先企業との交渉や販売活動は各外務員に一任されていたのであるが,直轄営業部を設置してからは,自社営業社員が直接異業種問屋等と交渉し,インストラクターが同行販売する営業形態も採用するようになった。
上記のとおり,原告の売上高は近年低調基調にあり,特に平成17年は経営危機に遭遇したのであるが,自社営業方式を柱に据えることにより起死回生を図ることができ,現在はその危機を脱しつつある。したがって,平成17年1年間を除くと,原告は,少ない年でも金額にして5億円前後,個数にして5000個以上を売り上げてきたものであり,原告商品が購入層の限られる高級品であることに鑑みれば,上記取引先企業において,本件表示が原告の商品等表示として広く認識されていることは明らかである。
(3)本件表示の使用状況ア宣伝用表示物(ア)商品概要書(甲5)原告は,平成14年から平成15年までの間に,自社のロゴマークを現在のものに変更したが(乙2の10及び11参照),上記商品概要の初版はそのころ作製したもので,以降毎年改訂しながら現在も使用中である。
同書は,原告が異業種提携販売先を新規開拓する際に,初めて訪問する業者(地方問屋,大手小売店,メーカー販売会社等)に対し,取扱商品,販売方法,保証期間,メリット等を説明するために使用し,さらに,提携を開始した問屋において,その取引先である小売店に対し販売促進をかける際の案内文書としても使用される。なお,初版以降の総使用部数は約2万部であり,最新版である平成18年版の使用部数は約1000部である。
(イ)商品パンフレット(甲6,21,23)これらは,主に消費者向けのもので,異業種提携先企業が各種展示会や店舗催事を開催する際,その顧客に対し案内状と一緒に同封して発送する等して,集客用に使用される。その具体的使用状況は次のとおりである。
a甲21は,平成13年12月に作製され,使用部数は約3万部であるが,ロゴマークの変更に伴い,平成15年中に使用中止となった。
b甲23は,甲21に代わるものとして平成15年5月に作製され,現在までの使用部数は約5万部である。
c甲6は,平成16年2月に,大手家電業界専用のパンフレットとして作製され,約1000部配布したが,1年後に商品内容が変わったため使用を中止した。
(ウ)商品カタログ(甲7,20)これらは,主に提携先業者向けのもので,原告商品の詳細を説明するものとして使用される。その具体的使用状況は次のとおりである。
a甲20は,平成10年3月に作製され,使用部数は約3万部であるが,ロゴマークの変更に伴い,平成15年中に使用中止となった。
b甲7は,平成15年4月に作製され,現在までの使用部数は約1万部である。
(エ)インターネットホームページ(甲24)これは,平成13年に開設し,以降毎年更新している原告のホームページである。
イ商品に随伴する表示物(ア)取扱説明書(甲8)これは,商品の素材説明,使用上の注意を記入したもので,完成した製品の検品完了後,各バッグに収納する。現在のものは約5000枚配布しているが,過去のものを含めると,延べ配布枚数は約10万枚である。
(イ)品質保証書(甲9)これは,商品の保証期間及び保証内容等を説明するもので,使用状況は上記(ア)と同じである。
(ウ)商品タグ(甲10)これは,商品の値札であり,使用状況は上記(ア)と同じである。
(エ)商品プレート(甲11,25)これは,バッグの内側に装着し,イーグル・ブランドの商品であることを表示するものであり,甲25は平成8年から平成15年まで使用し,甲11は同年以降現在まで使用している。
(オ)商品収納用紙及び袋布(甲12,13)これは,平成15年以降使用している商品収納用品である。
【被告の主張】(1)原告が主張する「需要者」について原告は,本件において周知性の判断基礎となる需要者について,原告の取引者である提携先(ないし潜在的提携先)を「需要者」と見るべきと主張するが,そもそも,この「潜在的提携先」なる概念がいかなる業者を指すのか不明である。
仮に,原告が列挙する異業種について全国に存在する全ての業者を指すのであれば,それらの業者において本件表示が原告の商品等表示として周知されているとの証明はなされていない。また,原告が一度でも営業活動をする等,接触を図った業者を指すというのであれば,そのように自己に都合よく需要者を限定して周知性判断を行うことは許されない。
(2)原告が自己の主要取引業者として掲げる一覧資料(甲27)について原告は,本件表示が需要者に周知されている根拠として,173ある自己の主要取引先業者の名称を列挙した資料(甲27)を示す。しかし,これらの取引先の数は,原告が訴状別紙一覧表において示した120とその数が大きく異なっており,また,原告とそれら取引先との取引期間,取引数量についても明らかにされていない。そもそも原告が挙げる173の業者の中には,既に原告との取引を終えたもの,あるいはもともと僅かな取引しかない業者までが含まれ,さらに残りの取引先のうちの多くは,現実には外務員が一任されて接触してきたにすぎないものである。
また,原告は,上記資料に基づき,自己の主要取引先に他の潜在的提携企業を加えると呉服業界の問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書卸業界の約6割といった各業者の取引者が本件表示を原告の商品等表示として認識している旨主張する。しかし,例えば,原被告の本店が存在する大阪府内だけをとっても,電話帳に登録されている呉服卸業者が135件,呉服店が1160件,寝具製造卸業者が227件も存する(乙17)。これを見れば,原告の主張が極めて大仰な主張であることは明らかである。
(3)原告商品の売上実績について原告は,原告商品の売上高が年間5億円前後,個数にして5000個以上であったと主張し,損益計算書(甲14の各枝番)をその根拠として挙げる。
しかし,これは,ハンドバッグ以外の財布・ベルトといった小物類の売上も含んだ数値である。
また,損益計算書の示す数値は,原告の販売実績の実態を示すものではない。
けだし,原告が長年行ってきた営業形態は,専ら外務員委託方式によるものであるところ,外務員が顧客に対して販売した商品については,その代金が原告名義の銀行口座に振り込まれ,その中から原告の外務員に対する販売価格及び経費が引かれた残りが,外務員の受け取るべき利益として,外務員の口座に支払われる仕組みとなっていた。そのため,原告が損益計算書において自己の売上高として計上している金額は,外務員が受け取るべき利益をも含んだものとなっている(外務員への支払額は,販売費等の項目で費用換算されているものと思料される。)。したがって,原告の実際の販売実績は,原告の主張する売上高の何割かにすぎないと思料される。
したがって,原告の提出するいずれの資料によっても,本件表示が周知性を獲得しているとはいえない。
4争点(4)(類似性)について【原告の主張】(1)被告表示中,ブランド名称として意味のある要部は「EAGLE」及び「イーグル」であり,これは本件表示と全く同一である。
(2)被告は,「EAGLE」あるいは「イーグル」の表示を単独では使用せず,もっぱら「イーグルイチハラ」ないし「EIマーク」付きの「EAGLE」を使用していると主張する。
しかし,被告が日常の営業活動上,「EAGLE」ないし「イーグル」の表示を,「イチハラ」から切り離して単独で使用していないとの主張は,にわかに措信できない。たとえば,被告の営業社員が取引先宛に架電ないし面談するに際し,「イーグルイチハラの○○です。」と名乗るのではなく,「イーグルの○○です。」と名乗ることは大いにあり得ることであるし,むしろその方が自然ではないかと思われる。また,商品カタログやパンフレット類においても,書証として提出されている乙第5号証では,「EAGLE」や「イーグル」の表示が単独で使用されていないが,他の販促ツールにおいても同様であるとは必ずしも言い切れない。
したがって,被告の上記主張は,被告の商号及びロゴマークに関してのみ妥当する主張でしかない。
(3)また,被告は,被告標章「イーグルイチハラ」においてより識別性を有するのは「イチハラ」の部分であり,要部は「イーグル」ではなく「イチハラ」にあるから,「イーグル」の部分を要部として類否判断を行うのは相当でないと主張する。
なるほど,「イチハラ」は固有名詞としての特定人の氏を示すものであるから,営業主体を識別する表示としては,「イチハラ」に要部があると解することも可能であろう。
しかし,商品の出所(ブランド性)を識別する表示としては,「イチハラ」には何の意味もないのであって,まさしく「イーグル」ないし「EAGLE」が要部であると解するほかはないのである。
(4)被告は,本件表示がウィークマークであると主張するが,同概念の意義が,それ自体の顕著性は弱く,特定商品または特定役務に継続的に使用された結果,二次的な出所表示機能を取得することによって,不正競争防止法上の商品等表示として(商標法上の商標として),保護を受けることになった商品等表示(又は商標)と定義されるものである限り,まさしく本件表示はウィークマークであるということができる。
(5)商品等表示の類否判断は,「取引の実情のもとにおいて取引者又は需要者が両者の外観・称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似したものと受け取られるおそれがあるか否かを基準として判断すべき」ものである(最判昭和58年10月7日民集37巻8号1082頁他)。本件表示は,需要者である異業種提携先企業において周知となっているところ,本件表示と被告表示とを対比すれば,上記取引先需要者らが時間と場所を異にして見聞きした場合,その呼称に基づく印象記憶連想から,両者を全体的に類似したものと受け取られるおそれがあることは明白である。特に本件においては,原告と被告とは,取扱商品及び取引先市場において競争関係にあるため,商品または営業主体が同一であると混同するおそれのみならず,原告と被告との間に経済上・組織上何らかの関係があるのではないかと混同するおそれも多分にあるのであって,そのような観点からも類似性が認められるべきである。
【被告の主張】(1)被告が使用している標章は,「EAGLE」又は「イーグル」の文字表示のみからなるものではない。被告が使用している標章は,「株式会社イーグルイチハラ」の文字表示(被告文字表示)あるいは「IEマーク」又は「EIマーク」に「EAGLE」を上段にし「ICHIHARA」を下段にして併記したもの(IEマーク付き被告表示,EIマーク付き被告表示)である。
被告表示は,「イーグルイチハラ」と区切ることなく記され,また呼称上もよどみなく一連に発音される以上,これを一体表示として捉え,本件表示との類似性を判断するのが相当である。
また,被告表示のうち,「イーグル」の語は極めて識別性の薄いウィークマークであるのに対し,「イチハラ」は,被告代表者の氏を片仮名表記に替えただけの固有名詞であるから,両語を比較すると,被告表示においてより識別性を有するのが「イチハラ」の部分であることは明らかである。
したがって,本件における表示の類否判断は,本件表示と「イーグルイチハラ」の間で行われるべきであり,後者においては「イチハラ」の部分が独自の識別性を有すること,さらに欧文字の「IEマーク」又は「EIマーク」が付され,本件表示との誤認の危険を防止する手立てがなされている点に鑑みれば,表示が類似するという結論は導き得ないはずである。
(2)また,次のような,同一又は類似表示の登録状況を踏まえても,本件表示と被告表示が類似しないことは明らかである。
ア原告は,「EAGLE」又は「イーグル」の文字表示について登録商標を有しているわけではない。
イ「Eagle」の文字標章からなる商標が,昭和60年にK2本店によって「かばん類,袋物,化粧道具(但し,くしを除く)」を指定商品として登録されている(登録第1739715号)。
「EAGLE」又は「イーグル」を含む商標は,指定商品が同一又は類似する範囲で,現時点で調査しただけでも48件登録されている。商標の先願主義からすれば,先に登録されたものと同一又は類似の後願の商標登録は認められないはずである。したがって,「EAGLE」又は「イーグル」の文字を含む多数の商標が類似する指定商品の範囲内で登録されているという事実からは,次のような類否判断がなされていると考えられる。
(ア)「EAGLE/イーグル」の文字標章については,一つが登録されればその後の登録は認められない。
(イ)上記の語を含むいわゆる合成語あるいは結合表示については,「EAGLE/イーグル」がディクショナリーワードであることにも起因して「EAGLE/イーグル」の識別力を小さく解釈し,「EAGLE/イーグル」を除くその他の部分に識別力の発揮する要素ありとして全体としての類似性は否定される。
(ウ)文字に図形を結合させる場合も,(イ)とほぼ同様である。
ウ被告が登録出願した「イーグルイチハラ」の商標,及び「EIマーク」の下に,「EAGLE」を上段にし「ICHIHARA」を下段にして併記した商標について,いずれも平成18年6月9日に商標登録がなされた。
5争点5(誤認混同のおそれ)について【原告の主張】被告は,本件表示を自己の営業又は被告商品を表示するものとして使用し,原告の提携先企業の一部を対象に売り込みを図っており,被告商品はオサダから供給されているので,原告商品と同一ないし類似するため,需要者において,原告と被告とが同一の営業主体であるか,又は両者間に系列関係など密接な関係が存在すると誤信するとともに,被告の営業または被告商品をもって,原告の営業または原告商品と混同するおそれが多分にある。
【被告の主張】争う。
前述のとおり,仮に,本件表示について商品表示性が認められるとしても,それは,古くから原告に対してオサダ製品を供給してきたオサダに関連するものであるから,オサダからオサダ製のバッグ類の供給を受けてこれを「イーグルイチハラ」として被告が販売する行為は,何ら商品主体の混同を生じせしめるものではない。
第4争点に対する当裁判所の判断1争点1(本件表示の商品等表示性)について(1)証拠(甲6,7,11,20,21,23,25,35の1・2,乙2の10・11,7)及び弁論の全趣旨(とりわけ,被告代表者は平成6年から9年まで,被告取締役P3は平成9年から平成17年まで,原告商品の販売を行っていたか又は原告商品の販売を行う会社の代表者であったから,原告商品に関する商品プレートやカタログ・パンフレット類について,被告はよく把握しているものと思われるが,下記のものについては,原告の主張する使用時期等について具体的な反論反証をしていない点)によれば,次の事実が認められる。
ア商品プレート(甲25)高級バッグの分野では,「Eagle」ないし「EAGLE」のロゴ入りプレートが付された「イーグル」ブランド商品が,昭和時代から存在する。
原告は,昭和時代から,上記「イーグル」ブランド商品を販売していた。これが原告商品である。甲第25号証のプレートは,原告商品に平成8年から平成15年まで付されていたものであり,これには,「E」と「O」を模したロゴマーク(以下「EOマーク」という。)の下に「EAGLE」の記載があり,更に小さく「TOKYO・OSAKA」との記載がある。
イ商品プレート(甲11)上記プレートは,原告商品に平成15年以降付されているものであり,これには,Eマーク付き原告表示の下に「EXCELLENTBAGCOMPANY」の記載がある。
ウパンフレット(甲35の1)上記パンフレットは,原告が平成4年ころに作成使用していたものであり,これには次のような記載がある(なお,同パンフレットは原告の電話番号の大阪の市内局番が3桁であるから,これが4桁になった平成11年1月より前の作成であることは外見から明らかである。)。
(ア)「EAGLESPECIALCOLLECTION」(イ)「E」を□で囲んだマークの右横に「株式会社イーグル イトガ」エパンフレット(甲35の2)上記パンフレットは,原告が平成8年ころに作成使用していたものであり,これには次のような記載がある。
(ア)装飾文字の「EAGLESuperSelection」(イ)「EOマーク」の右横に「EAGLE」(ウ)「株式会社イーグルイトガ」オカタログ(甲20)上記カタログは,原告が平成11年ころに作成使用していたものであり,これには次のような記載がある(なお,原告は,平成14(2002)年ころには「EOマーク」を使用していたが,平成15(2003)年にはこれをやめ,「Eマーク」の使用を開始したところ(乙2の10・11),上記カタログには,「EOマーク」が記載されているから,平成14年以前の作成であると認められる。)(ア)「EAGLE」,「EOマーク」の右横に「EAGLE」(イ)「イーグルオリジナルバッグ」(ウ)「イーグル独自の自然仕上げ」,「イーグルならではの逸品」,「イーグルオリジナル加工」(エ)「イーグルだけが取り扱って」,「TPOに合わせて・・・イーグルで,お選びください」カパンフレット(甲21)上記パンフレットは,原告が平成13年ころから作成使用していたものであり,これには次のような記載がある。
(ア)「EAGLE」,「EOマーク」の右横に「EAGLE」(イ)「イーグルは今花盛り」(ウ)「特殊素材のみを扱った最高級バッグのイーグルもおかげさまで30年。」キパンフレット(甲23)上記パンフレットは,平成15年ころから作成使用されているものであり,これには次のような記載がある(なお,上記カ(ウ)の記載と下記(ウ)の記載が類似していることから,甲第21号証のパンフレットに続くものとして作成されたものと認められる。)。
(ア)「EAGLEBAGGALLERY」(表紙)(イ)Eマーク付き原告表示(表紙下部,裏表紙,裏面左下)(ウ)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年。」(裏面左)(エ)「EAGLELeatherCollection」(裏面上)(オ)「イーグルが扱う各素材は条約に沿った正規の手続きで輸入しております。」(裏面中下)(カ)「イーグルオリジナルブランド」(裏面右上)クパンフレット(甲6)上記パンフレットは,原告が平成16年2月ころ作成したが,商品内容の変更に伴い1年後に使用を中止したものである。同パンフレットには,次のような記載がある。
(ア)Eマーク付き原告表示(表紙上部)(イ)「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとしておよそ30年。」(表紙下部)(ウ)「Eマーク」(裏面上部)(エ)「EAGLE」の下に「EXCELLENTBAGCOMPANY」(裏面下部)ケカタログ(甲7)上記カタログは,原告が平成15年ころ作成し,現在も使用しているものである。同カタログには,次のような記載がある。
(ア)「EAGLEBAGGALLERY」(表紙を含む各頁)(イ)「株式会社イーグルは,特殊皮革素材のみを取り扱ったバッグの専門メーカーとしておよそ30年」(4頁)(ウ)Eマーク付き原告表示(表紙下部,5頁の目次の上部)(エ)Eマーク付き原告表示の下に「EXCELLENTBAGCOMPANY」(裏表紙)(オ)「株式会社イーグルイトガ」(裏表紙下部)(2)以上のとおり,被告が設立された平成17年6月7日までに,「イーグル」及び「EAGLE」という商品等表示(本件表示)が,原告のパンフレット,カタログ及び原告商品において使用されていたことが認められる。
(3)被告は,原告は「EAGLE」及び「イーグル」を単独で使用しているわけではないと主張するが,これら表示が単独で使用されている例のあることは,上記(1)のとおりである。
被告は,識別力ある表示として使用されているのはEマーク付き原告表示であると主張する。しかし,Eマーク付き原告表示は,「EAGLE」に「Eマーク」が併せて使用されているにすぎず,不可分一体のものではない。したがって,需要者は,Eマーク付き原告表示のうち,本件表示部分を独立して認識し得るから,前記認定の「EAGLE」及び「イーグル」の各表示が商品等表示としての識別性を失うものではない。
(4)したがって,本件表示は,いずれも不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当する。
2争点2(本件表示の帰属主体)について(1)被告は,「EAGLE」又は「イーグル」が単独で使用されている例として原告が挙げるもののうち,「イーグルは特殊素材バッグの専門メーカーとして」(甲6)等の記載における「イーグル」は,オサダの略称として使用さ…れている,オサダは従前から「イーグルオサダ」のブランドで自社製品を販売してきたなどとして,本件表示は原告商品を表示するものではない旨主張するので,以下検討する。
(2)証拠(甲3,33の1ないし4,34,乙2の5ないし9,4の1・2,6,7)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
アオサダオサダは,古くから袋物の製造を手がけていた「長田商店」が,昭和47年12月に法人化したものであり,ハンドバッグ等,爬虫類皮革製品の製造卸売業を営んでいる。
平成18年4月現在,オサダは,代表取締役を含め役員5名,従業員は正社員4名及びパート社員2名で構成されている。オサダの取引先(オサダ製品の販売業者)は,原被告を含め,大小併せて数十社ある。
オサダの関連会社である長田商事株式会社は,イタリアの高級バッグメーカーとして著名なディーニ社から,同社製のバッグの日本における独占的な輸入代理店としての地位を与えられている。
オサダは,爬虫類皮革業者の全国団体である全日本爬虫類皮革産業協同組合(JRA)に登録し(登録番号191),JRAの織りネームやJRAタッグ(ワシントン条約に基づき適法に輸入された皮革を用いた日本製品であることを示すタッグ)を自社製品に取り付け,販売業者に提供している。
イ原告とオサダの関係原告代表者P1は,昭和58年ころまでオサダ製品の販売業者の社員であったが,当時,日本の婦人ハンドバッグ業界においては,国産ブランドはほとんど育っておらず,各小売店が製造業者に作らせたものを自社の商品として,自社の名称で販売するのが大半であった。P1は,品質の優れているオサダ製品を国産ブランド商品に育て上げようと考え,昭和58年にオサダの商号「株式会社イーグル・オサダ」から「イーグル」を取り,これに自身の氏である「イトガ」を併記した商号「株式会社イーグル・イトガ」により,原告を設立した。原告の販売するバッグは,上記長田商事株式会社の輸入に係るディーニ社製のものが約1%ある他は,すべてオサダ製品である。
ウ原告の販売方法原告は,店舗を保有せず,また,平成13年までは独自の営業社員を有せず,外務員に販売を委託する方法を採用していた。すなわち,原告は,呉服・婦人服・寝具・宝飾・時計・図書など異業種の地方問屋・小売店と提携し,外務員は,これら問屋・小売店が主催する展示会や店舗催事に参加して販売を行い,提携先企業との交渉や販売活動も各外務員が行っていた。原告は,平成13年に「直轄営業部」を設置し,それ以降は,自社営業社員をインストラクターとして上記展示会や店舗催事に同席させ,また,小売店の顧客に対する外商販売に同インストラクターを同行させる方式も併せて採用している。原告の提携先企業は170社以上に達しており,北は北海道から南は九州までほぼ全都道府県に拡がっている。
エオサダの売上に占める原告の割合オサダは小売販売を行っておらず,被告がオサダ製品を扱うようになるまでは,原告以外の取引先(販売先)は,すべて地域販売を行う小売業者であった。
平成9年以降のオサダの年間総売上に占める原告の仕入額の割合は,およそ次のとおりであった。
年度@原告仕入額Aオサダ総売上額比率(@/A)(百万円)(百万円)平成933072046%平成1020663033%平成1119659033%平成1223553044%平成1317758031%平成1418855034%平成1515448032%平成1618845042%オ原告商品とオサダ製品との関係原告は,オサダから仕入れたオサダ製品をそのまま販売するほか,オサダにサンプルを作製させ,その中から取扱商品を選び,これを「止め型」商品として「イーグル」ブランドで販売していた。この種の「止め型」商品は,ハンドバッグ類を含め,ファッション業界において珍しいものではなく,製造業者は,各販売業者の「止め型」商品については,他の販売業者に対してこれを販売することはないものとされている。
ところが,原告の「止め型」商品については,過去にこれが市場に出回ることがあったため,原告は,平成13年ころ,専属デザイナーにより原告独自のデザイン開発,すなわち原告の「自主企画」商品の開発に取り組むようになり,原告において新製品をデザインし,サンプルを作製し,製造工程を改良して,製作指導を行い,そのうえでオサダが同製品を製造する方法を採用したこともあった。しかし,原告は,その後この方法によるデザイン開発は取り止めた。
原告は,これら「止め型」商品及び「自主企画」商品を「イーグル」ブランドで販売し,オサダとは別に独自にJRAに登録し(登録番号337番),これら「イーグル」ブランドの原告商品にJRAタッグを付している。
カオサダは,過去に,茨城や東京で原告の取り扱う商品と同一の製品を他の小売店に納品したことがあったが,その際,原告から抗議を受けて,販売先からこれを回収したことがあった。また,過去に,仙台では,小売店が「イーグル」ブランドによる販売キャンペーンを行ったことがあり,オサダが介入してこれを中止させたこともあった。
キオサダは,原告商品については「EAGLE」のロゴ入りの商品プレートを付してこれを原告に提供しているが,少なくとも原告が本件表示を自らの負担でパンフレット等に付し始めたころ(証拠上認定できるのは前示のとおり平成4年ころ)以降,平成17年の被告設立までは,原告以外の他の取引先に対して販売する製品には,同プレートを付していたものがあったとは認められない(なお,上記カの事例の製品に同プレートが付されていた可能性はあるが,明らかではない。)。
クオサダは,「世界の一流品大図鑑」の平成8年(1996)版から平成13(2001)年版にかけて,ディーニ社の「SOLEAGENT」として掲載されているが,その表示は「EOマーク」と「EAGLEOSADACO.,LTD」であり,現在のオサダのロゴマークは,「OSADA」と「EAGLE」の組合せからなり,「EAGLE」の表示は,「OSADA」の表示の下に小さく,添えられるように配置されている。すなわち,オサダは,自社を単に「EAGLE」「イーグル」と表示したことがあるとは認められない。(乙2の5ないし9)ケ「世界の一流品大図鑑」では,平成8(1996)年版から平成13(2001)年版にかけて,ディーニ社製品の紹介には,「SOLEAGENT」のオサダのほか,発売元として原告が記載されていたが,平成14年(2002)版には,発売元として,「EOマーク」と「EAGLE」を表示して原告が,平成15(2003)年版から平成17(2005)年版にかけては,発売元としてEマーク付き原告表示とともに原告が,それぞれ記載されている(甲15,乙2の5ないし12)。このような変更が,オサダが知らない間に行われたとは考えられないから,少なくとも平成14年ころ以降,オサダは,原告が「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク付き原告表示を使用することを容認していたものと推認される。
コ前記1(1)認定に用いた原告のパンフレット,カタログ及び原告商品において,オサダの社名は,全く表示されていない。
(3)上記認定事実を前提として,前記1(1)認定に係る本件表示の意味を検討する。
ア前記1(1)のうち,オ(エ)は,メーカー又は販売者を指すもの,キ(ウ)(オ),ク(イ),ケ(イ)はメーカーを指すものと解されるが,それ以外は,「イーグル」ブランドの商品表示と理解する方が自然である。
上記メーカーが何を指すか検討する。例えば,前記1(1)ケ(イ)のカタログ(甲7)4頁における「株式会社イーグル」は,同カタログ裏表紙下部の「株式会社イーグルイトガ」とは社名が異なるから,販売者である原告と関連の深い「株式会社イーグル」というメーカーが存在するという趣旨に読むのが自然なように思われる。また,その「株式会社イーグルは,特殊皮革素材のみを取り扱ったバッグの専門メーカーとしておよそ30年」は,同カタログが平成15(2003)年ころの作成で,オサダの設立が昭和47(1972)年,原告の設立が昭和58(1983)年であることからして,この「株式会社イーグル」をオサダと考える方が整合性がある。したがって,上記メーカーは,オサダを指す可能性がある。
しかし,他方で,「イーグル」ブランドは,少なくとも平成4年以降被告が設立されるまでは,オサダが製造し原告が販売しているもの(原告商品)のみであった。そして,本件表示が記載された原告のパンフレット,カタログ及び原告商品において,オサダの社名は,全く表示されておらず,オサダは,自ら「イーグル」の営業表示を用いたこともなく,原告が「イーグル」の称呼の生じる表示である「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク付き原告表示を使用することを容認していたのである。
以上の事実によれば,仮に,前記1(1)オ(エ),キ(ウ)(オ),ク(イ),ケ(イ)の「イーグル」をメーカーであるオサダを指すものと解したとしても ,「イーグル」ブランド商品,すなわち商品表示である「EAGLE」「イーグル」(本件表示)は,原告商品のメーカーであるオサダと,販売者である原告の共同の商品表示として使用されていたものというべきである。
ちなみに,前記1(1)ア認定のとおり,原告商品に平成8年から平成15年まで付されていた商品プレートには「EAGLE」のほかに「TOKYO・OSAKA」の記載があるが,証拠(甲32)及び弁論の全趣旨によれば,オサダは,本店(東京都豊島区)以外に事業所を有しておらず,原告は,東京に事業所を有していないことが認められる。そうすると,上記「TOKYO・OSAKA」は,オサダ(東京)・原告(大阪)を指すようにも思われるところである。
イ乙第7号証には,@オサダは,昭和47年の設立当初より「Eagle」のロゴ入りプレートが付された「イーグル」ブランド商品を販売している,A前記(2)カの「イーグル」ブランドの他社からの商品引き上げ等は,販売価格が原告のそれよりも安かったことによるトラブルであって,「イーグル」ブランドを他社に販売しないという約束が原告との間にあったわけではないとの記載がある。しかし,@は,仮にそうだとしても,その販売量も不明であり,しかも,少なくとも平成4年ころ平成17年までは,原告商品以外に「イーグル」ブランドは存在しなかったのであるから,そのころに用いられた本件表示が販売者である原告をも出所として示しているとする妨げとなるものではない。また,Aも,仮にそうだとしても,前記(2)カの「イーグル」ブランドの製品は,結局のところ他社からオサダが引き上げてしまったのであるから,理由はどうであれ,原告商品以外に「イーグル」ブランドが存在しなかったことに変わりはなく,前記(3)アの認定に反するものではない。
(4)なお,営業表示としての本件表示については,後記のとおり周知性が認められないから,その帰属主体についてはここでは判断しない。
3争点3(周知性)について(1)証拠(甲14の1ないし12,27ないし33)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告商品及び被告商品の市場(ア)原告商品の販売先原告は,呉服・婦人服・寝具・宝飾・時計・図書など異業種の地方問屋・小売店と提携して,これら異業種の業者に対して原告商品を卸売しており,原告商品の販売先は,これら異業種の地方問屋・小売店である。
(イ)被告商品の販売先被告商品の販売先も,上記異業種の地方問屋・小売店である。
(ウ)したがって,本件表示の周知性は,上記異業種の地方問屋・小売店について判断されるべきである(以下,原告商品と被告商品が対象とする市場を「本件市場」という。)。なお,原告商品と被告商品の最終需要者は,中高年の富裕層である。
イ原告の取引先(提携先企業)原告の取引先である異業種の地方問屋・小売店は,北は北海道から南は九州まで,ほぼ全都道府県に拡がっており,その数は,170社以上に上る。
ウ原告商品の売上げ(ア)原告の売上げは,平成5年は約2億9000万円,平成6年は約3億1000万円,平成7年は約4億円,平成8年は約5億5000万円であった。このうち99%近くが原告商品の売上げである。
(イ)平成9年以降の原告の売上実績及び売上個数の推移は,次のとおりである(1万円未満四捨五入)。
年総売上高売上個数直轄営業部売上高平成9年9億2661万円9231個-平成10年7億0817万円7024個-平成11年6億7315万円7049個-平成12年7億2920万円8730個-平成13年5億9821万円7636個5376万円平成14年5億6873万円7048個1億1860万円平成15年4億7687万円4999個1億2029万円平成16年4億9004万円5218個1億0984万円平成17年2億5675万円3503個1億1860万円なお,「総売上高」とは,提携先企業に対する卸売総額であり,消費者に対する小売総額ではない。「売上個数」には,メインとなるハンドバッグの外,小物類も若干含まれている。
(ウ)上記認定によれば,原告商品の売上高は,近年低下傾向にあり,特に平成17年は売上が相当落ち込んでいるものの,平成17年1年間を除くと,平成8年以降は,年間金額にして5億円前後,個数にして5000個以上が販売されていることが認められる。
エ本件表示の使用状況前記1(1)のうち,商品プレートは,原告商品すべてに付されているものである。また,パンフレットは提携先企業から原告商品の最終需要者向けに発送されるものであって,取引者需要者に広く頒布され,カタログは,提携先企業及びその見込み客に広く頒布されて,いずれも原告商品の購入等を検討してもらうものである。
(2)商品表示としての周知性の有無ア上記認定事実によれば,原告の取引先(提携先企業)である地方問屋・小売店は170社以上に上るところ,原告は,各業種におけるその割合について,呉服業界では問屋の約9割,小売店の約8割,寝装卸業界及び教科書卸業界では6割,時計宝石卸業界では4割と主張する。
原告の主張する数字を裏付ける的確な証拠はない。しかし,原告商品及び被告商品が特殊皮革素材の婦人用高級ハンドバッグで,その売れ筋商品の価格帯が20万円台から90万円台であり,これら商品の最終需要者は中高年の富裕層であることからすると,本件市場は,極めて限定されたものということができる。したがって,原告の取引先には,上記各業種に属するすべての業者が含まれるのではなく,上記各業種に属する業者の中でも,原告商品の最終需要者たる中高年の富裕層を顧客とする業者に限られる。このことに加えて,原告の取引先がほぼ全都道府県に存在することを併せ考えると,原告の主張する上記数字は,大仰な数字とは言い切れない。
しかも,上記は,原告が取引をした相手にすぎず,販売員等が見込客として営業をかけたが,取引が成立しなかった相手は含まれていないが,ほぼ全都道府県の170社と契約を成立させようとすると,営業をかけた数は,更に相当多いものと推測される。また,取引先・見込客等の同業者間で,原告商品やそのブランド(「イーグル」ブランド)についての情報が流通していることも十分に考えられるところである。
そうすると,原告商品は,本件市場において,業種によっては4割から8,9割といっても大仰とは言い切れないような数の業者を取引先とし,原告はこれら取引先に対し,少なくとも年間5億円前後,個数にして5000個以上の商品プレート付きの商品を10年近くにわたって販売しており,これら業者より更に相当多くの業者にパンフレット,カタログが配布されているのであるから,本件表示は,被告が設立された平成17年6月7日までに,本件市場において,原告商品の商品表示として周知性を有しており,その周知性は現在まで継続していると認められる。そして,前示のとおり,原告商品の商品表示たる本件表示は,オサダと原告の両者の出所を示すものとして使用されていたから,本件表示は,オサダと原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものというべきである。
イ被告は,@原告が主張する「潜在的提携先」なる概念が不明である,A原告が自己の主要取引業者として掲げる一覧表(甲27)では,原告の取引先とされた業者との取引期間,取引数量が明らかでなく,また,既に原告との取引を終えた者等も含まれているし,各業界の取引者における周知性を示す割合として原告が主張する数字は大仰なものである,B原告商品の売上実績は損益計算書(甲14の各枝番)を根拠とするものであるが,そこには,ハンドバッグ以外の小物類の売上も含まれているし,外務員の受け取るべき利益も含まれており,原告の販売実績の実態を示すものではない旨主張する。
しかし,被告の主張は採用できない。その理由は次のとおりである。
(ア)@について@については,「潜在的提携先」なる概念を用いずとも,前示のとおり,原告商品及び被告商品が対象とする市場を観念することがでる。
(イ)Aについて甲第27号証で原告の取引先とされる業者の中に,取引期間が短く,取引数量の少ない業者や,既に原告との取引を終えた者等が含まれているとしても,本件表示の使用状況からすれば,本件表示に周知性があるとの前記判断を左右するものではない。
(ウ)Bについて周知性の有無は,原告商品の売上高又は原告の利益の大小に直接関わるものではなく,売上高から推認される取引回数ないし取引機会の頻度に関わるものである。したがって,前記認定の原告商品の売上高に小物類のそれが含まれており(なお,小物類の価格は,ハンドバッグに比べれば,格段に低額であると考えられ,売上高の大半はハンドバッグによるものであることが容易に推認される。),また,売上高に外務員の受け取るべき利益が含まれているとしても,そのことによって本件表示に周知性があるとの前記判断を左右するものではない。
(3)営業表示としての周知性の有無ア証拠(甲15,乙2の10ないし12)によれば,原告は,「世界の一流品大図鑑」の平成14(2002)年版から平成17(2005)年版に,「EOマーク」と「EAGLE」,又はEマーク付き原告表示を,原告の営業表示として使用していたことが認められる。
イしかし,前記1(1)ケ(イ)のカタログ(甲7)4頁においてメーカーとされている「株式会社イーグル」は,オサダを指す可能性があることは前示のとおりであり,このことからみて,メーカー(オサダ)を指すか,又はその可能性がある前記1(1)オ(エ),キ(ウ)(オ),ク(イ),ケ(イ)の「イーグル」について,原告の営業表示として使用されている立証があったとすることはできない。また,前記1(1)の本件表示の中には,営業表示の意味も含まれているように思われるものもないではないが,それが原告を指すのかオサダを指すのかが明確でない。
ウ甲第8ないし第10号証,第12,第13号証には,Eマーク付き原告表示が使用されている。しかし,これらは,「イーグル」ブランドを表示する商品表示とも解されるうえ,使用開始時期も明らかでなく,そのために頒布数も不明であって,本件表示が原告の営業表示として,周知性を認めるに足りるほど使用されていたと認定するに足りるものではない。
また,証拠(甲24)によれば,平成18年8月22日の原告のホームページにおいて,「イーグルは,このように考えています。」との記載があることが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,原告のホームページは,平成13年に開設されたものの,毎年更新しているというのであるから,その使用開始時期が明らかではなく,原告の営業表示としての周知性判断の資料とすることはできない。
エそうだとすると,本件表示が原告の営業を表示するものとして使用されていると認められるのは,前記アに掲げた程度であり,期間も短いから,原告の取引先ないし本件市場の需要者(前記異業種の地方問屋・小売店)おいて,本件表示が原告の営業表示として広く認識されるに至っていると認定するには足りない。
オしたがって,本件表示は,原告の営業を表示するものとしては未だ周知性を獲得しているとは認められない。
4争点4(類似性の有無)について(1)本件表示と被告の商号(株式会社イーグル・イチハラ)との類否本件表示からは,「イーグル」の称呼が生じる。
被告の商号において「株式会社」が商標の要部となり得ないことは明らかである。そして,被告の商号は,「イーグル」と「イチハラ」の間に「・」を挟んで両者を分離しているから,「・」の前の部分から「イーグル」の称呼を生じ,全体として,本件表示と類似する。
(2)本件表示と被告文字表示(株式会社イーグルイチハラ)との類否被告の商号において「株式会社」が商標の要部となり得ないことは前示のとおりである。そして,「イーグルイチハラ」のうち,「イチハラ」は,よくある氏を連想させる。他方,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を有していることからすれば,本件市場における需要者(前記異業種の地方問屋・小売店)が被告文字表示に接した場合,「イーグル」に着目し,「イチハラ」は氏であるとみて「イーグル」の称呼を生じる。
このことからすれば,被告文字表示は,本件表示に類似する。
(3)本件表示と,IEマーク付き被告表示及びEIマーク付き被告表示との類否ア被告表示目録1(1)記載の表示は,黒で二段書きにされた「EAGLE」「ICHIHARA」の文字に対して,「IE」の文字を模した図柄は背景となっているにすぎず,色も異なる。このため,被告表示目録1(1)記載の表示は,上記二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じる。
このことからすれば,被告表示目録1(1)記載の表示は,全体としてみても本件表示に類似するものと認められる。
イ被告表示目録1(2)記載の表示は,二段書きにされた「EAGLE」「ICHIHARA」の文字に対して,上部に「IE」の文字を模した図柄があるものの,上記二段書き部分が「EAGLE」「ICHIHARA」であるのに,図柄部分がなぜ「IE」なのか,両者の関係が明確でないため,必ずしも全体がひとまとまりとは限らず,図柄部分と文字部分が分離して理解される余地がある。このことに,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を有していることをも考慮すれば,被告表示目録1(2)記載の表示は,文字二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じるものというべきである。
このことからすれば,被告表示目録1(2)記載の表示は,全体としてみても本件表示に類似するものと認められる。
ウ被告表示目録2(1)記載の表示は,二段書きにされた「EAGLE」「ICHIHARA」の文字に対して,左側に「EI」の文字を模した図柄があるものの,両者が不可分一体として理解されるものでもない。このことに,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を有していることをも考慮すれば,被告表示目録2(1)記載の表示は,文字二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じるものというべきである。
このことからすれば,被告表示目録2(1)記載の表示は,全体としてみても本件表示に類似するものと認められる。
エ被告表示目録2(2)記載の表示は,黒で二段書きにされた「EAGLE」「ICHIHARA」の文字に対して,上部に「EI」の文字を模した図柄があるものの,色も異なるから,両者が不可分一体として理解されるものでもない。このことに,「イーグル」が原告商品の商品表示としての周知性を有していることをも考慮すれば,被告表示目録2(2)記載の表示は,文字二段書きの上段部分から「イーグル」の称呼を生じるものというべきである。
このことからすれば,被告表示目録2(2)記載の表示は,全体としてみても本件表示に類似するものと認められる。
(4)なお,被告は,商標の登録状況を踏まえても本件表示と被告表示が類似しないことは明らかであると主張するが,本件においては,2個の商標の表示を静的かつ形式的に対比して決するのではなく,本件表示が周知であることを始めとする取引の実情に照らして判断すべきものであるから,商標の類否の判断と必ずしも一致するものではない。したがって,被告の上記主張は採用できない。
5争点5(誤認混同のおそれ)について前示のとおり,本件表示は,オサダと原告の商品等表示として需要者の間(1)に広く認識されている。そうすると,被告が,本件市場において,本件表示と類似する被告表示を使用した場合,本件表示の主体の1人である原告の営業と被告の営業との間に何らかの関係があるとの誤認混同が生じるおそれがある。
(2)被告は,オサダからオサダ製品の供給を受けてこれを「イーグルイチハラ」として被告が販売する行為は,商品主体の混同を生じさせるものではないと主張する。
しかし,本件において問題とすべきは,バッグという商品の出所の混同ではなく,営業の混同である。これを敷衍すると,本件表示は,オサダと原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されていることは前示のとおりである。
そして,本件表示の主体が,オサダと原告の製造販売共同体である(両者が別々に使用することはできない)のか,両者それぞれであるのか(両者が別々に使用する余地がある)はさておき,そのいずれであるにしても,被告がこれに類似する表示を使用した場合に,被告の営業と,オサダあるいは原告の営業との混同(本訴において問題は原告の営業との混同)を生じさせる。すなわち,被告が販売している被告商品は,オサダ製品であっても,その営業主体である被告は,オサダあるいは原告と関係があるわけではなく,単にオサダから製品を仕入れて販売しているにすぎないのに,営業主体間に関係があるという誤認混同が生じるおそれがあるのである。
(3)なお,前記2認定の事実からすれば,本件表示について,オサダ又は原告の一方が,他方の承諾なしに,第三者に対してライセンスする権原があるとは認めがたいが,オサダからのライセンスについての主張はされていないから,この点についての認定の必要はない。
6差止めの必要性について以上によれば,被告に対しては,被告商号の抹消登記手続,被告文字表示の抹消を命ずるとともに,被告表示の使用差止めを命ずべき必要性が認められる。
なお,被告が販売しているのは,婦人用高級ハンドバッグ(その他にあるとしても若干の小物類)のみであるから,被告商号の抹消登記手続を行うことは,不正競争防止法3条2項にいう「侵害の停止又は予防に必要な行為」に当たるというべきである。
原告は,本件表示を含む表示一切の使用の差止めを求めるが,本件表示を含む表示であっても,その記載態様によっては,本件表示に類似しないものも考え得るところである。このような類似性を欠く表示の使用は,不正競争防止法2条1項1号に該当しないことは明らかである。そして,被告が,被告表示以外に,本件表示に類似する表示を使用していると認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件表示を含む表示のうち,被告表示以外の表示については,差止めの必要性は認められない。
7結論以上によれば,原告の請求は,主文第1ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,主文第2項(表示の抹消)の仮執行は相当でないから付さないこととして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 西理香
裁判官 村上誠子
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