審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ14972不正競争行為差止等請求事件 平成17ワ22496損害賠償等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
関連ワード | 差止請求(差止) / 原状回復 / 不当利得 / 著名表示冒用行為(2条1項2号) / 代理人 / 相当な対価(相当の対価) / 著名表示冒用行為(2条1項2号) / 損害賠償 / |
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事件 |
平成
18年
(ネ)
10032号
不正競争行為差止等・損害賠償等請求控訴事件
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控訴人フルセル株式会社 訴訟代理人弁護士大津卓滋,原田活也,前田修弥,黒崎祥 被控訴人日本マクドナルド株式会社 訴訟代理人弁護士鹿児嶋康雄,金井高志,笹原直和 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/09/27 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1控訴人の当審における新たな請求を棄却する。 2前項の請求に関する訴訟費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人(1)被控訴人は控訴人に対し,2億1461万6052円及びこれに対する平成18年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)前項の請求に関する訴訟費用は被控訴人の負担とする。 2被控訴人主文同旨第2事案の概要被控訴人(原審本訴原告・反訴被告。以下「原告」という。)は控訴人(原審本訴被告・反訴原告。以下「被告会社」という。)との間で,平成8年6月1日,フランチャイズ契約(以下「本件FC契約」という。)を締結し,原告は原審本訴被告A(以下「被告A」という。)及び原審本訴被告B(以下「被告B」という。)との間で,本件FC契約から生ずる被告会社の債務を被告A及び被告Bが連帯保証する契約を締結していた。 原審における本訴請求は,@フランチャイザーである原告がフランチャイジーである被告会社に対し,本件FC契約に基づき,未払ロイヤルティ料等の支払を求めるとともに,連帯保証人である被告A及び被告Bに対し,連帯保証契約に基づき,同額の支払を求める請求,A本件FC契約の解除に伴う原状回復請求権に基づき,原告が被告会社に対し,リース物件の引渡しを求める請求及びB本件FC契約の解除により,被告会社が著名な原告の標章を使用することが不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為に該当するとして,同法3条に基づき,被告会社に対し,原告の標章の使用の差止め等を求める請求である。 原審における反訴請求は,C被告会社が原告に対し,原告の営業政策が本件FC契約の債務不履行に当たるとして,民法415条による損害賠償請求権に基づき,損害の一部(平成17年1月から6月分)として1185万3685円の支払を求める請求及びD原告が受領した営業権の対価のうち,契約解除後の約20年間分については,原告が法律上の原因がなく利得したものであると主張して,不当利得返還請求権に基づき,1億6333万円の支払を求める請求である。 原審は,原告の本訴請求をいずれも認容し,被告会社の反訴請求をいずれも棄却したため,被告会社,被告A及び被告B(以下,この3名をまとめて「被告ら」という。)は,これを不服として控訴を提起した。 当審において,原告は原判決主文第1項から第3項までに係る請求について訴えを取り下げ,被告会社はこれに同意した。また,第3回弁論準備手続期日(平成19年6月12日)おいて,被告会社は原判決主文第4項についての控訴を,被告らは同第5項についての控訴をいずれも取り下げた。さらに,当審において,被告会社は,原審における反訴請求(上記C及びD)に代えて,新たな請求(前記第1の1(1))について審理判断を求める訴えの交換的変更を行い,原告はこの変更に同意した。 以上の経緯により,当審における審理判断の対象は,被告会社の原告に対する新たな請求(前記第1の1(1))のみである。 1被告会社の新たな請求についての請求原因(1)本件売買契約の無効による不当利得返還請求ア原告は被告会社との間で,平成8年5月31日,福岡新天町店(以下「本件店舗」という。)における原告所有の@有形固定資産を1616万9697円,A無形固定資産を2億1461万6052円で原告が被告会社に売り渡し,B原告が負担する残存リース料債務361万7640円を被告会社が引き受ける契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した(甲第50号証)。 イ本件売買契約中,無形固定資産の売買については,以下のとおり原告が被告会社に対して優越的な地位にあることを濫用して,原告に本件売買契約を締結させたものであるから,公序良俗に反するものである。 本件店舗は,原告が直営店として経営していたものであるが,店舗に使用する建物は,株式会社新天町商店街公社(以下「新天町公社」という。)から株式会社九州長崎屋(以下「長崎屋」という。)が賃借し,原告に転貸しているものであった(乙第101号証)。ところが,平成5年4月ころ,長崎屋からの原告に対する上記転貸が無断転貸に当たるとして問題となり,長崎屋は原告との上記賃貸借契約を解除することとなった(乙第102号証)。 しかし,新天町公社は,本件店舗の新規賃借人について地元企業優先の意向を有していたため(乙第103号証),被告らが原告のフランチャイジーとなって本件店舗の営業を行うこととし,同年7月10日,長崎屋,原告及び被告らの間で合意が成立した(乙第104号証)。そして,被告会社が原告のフランチャイジーとなるまでの間,原告が本件店舗における営業を継続することができるように,同日付けで原告と被告らは,委託販売契約を締結し,原告は本件店舗における売上金の10パーセントを被告らに支払うことを約した(甲第12号証)。 被告らは,フランチャイジーとなって本件店舗の営業を行うため,7億5000万円で本件店舗の賃借権を買い取った(乙第110号証)が,この資金の融資を受けていたため,上記売上金の10パーセント相当額は,借入金の返済額に足りず,毎月300万円から400万円の赤字が発生した。被告らは,フランチャイズ契約の締結を望んだが,原告はフランチャイジーとしての審査があるとの理由で,上記委託販売契約のまま約2年半が経過した。 この間,被告らは,追加の融資を受けるなどして凌ぎ,フランチャイズ契約締結の見通しがついた平成8年2月20日,原告は,フランチャイズ契約締結の条件として,本件店舗の無形固定資産を2億1461万6052円で被告会社が原告から買い取ること(上記アA)を提示した(乙第105号証)。 そのため,被告会社は,選択の余地なくこの条件を受け入れるしかなかった。 ウよって,本件売買契約は公序良俗違反により無効であり,不当利得返還請求権に基づき,原告は無形固定資産の対価として支払った分2億1461万6052円及びこれに対する平成18年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 (2)買戻の債務不履行(履行請求)仮に,本件売買契約が公序良俗違反により無効と認められない場合においても,本件FC契約が終了したのであるから,原告は,「固定資産等の買戻に関する覚書」(乙第100号証。以下「覚書」という。)に基づき,本件店舗の無形固定資産を買い戻す義務がある。 覚書第1項の「乙が甲に対し本契約第2条第1項第1号記載の営業場所を賃貸し,甲が賃借する契約が成立すること」との条件については,平成18年5月12日,被告会社が株式会社新天町エステート(以下「新天町エステート」という。)に対し,本件店舗の賃借権を譲渡し(乙第97号証),原告が新天町エステートから本件店舗を賃借する契約(乙第96号証)が締結されているから,実質的に条件が成就している。 (3)被告会社が本件店舗の価値を維持したことによる不当利得返還請求仮に,買戻条項の条件が成就していないとしても,被告会社が本件店舗で営業していた間,店舗の価値を維持したから,前記(2)のとおり,原告が本件店舗の営業実績を再度承継した以上,原告は被告会社に対し,その対価を不当利得として支払うべきである。 2請求原因事実に対する認否及び原告の反論(1)本件売買契約の無効による不当利得返還請求についてア本件売買契約を締結した事実は認める。 イ本件売買契約締結に際し,原告が被告会社に対して優越的な地位にあることを濫用して,無形固定資産の売買についての契約を締結させたことはなく,公序良俗に反する事情はない。 そもそも,優越的地位の濫用は,フランチャイジーに対するフランチャイザーのように,継続的取引関係に立った後に問題となるものである。本件売買契約は,従来,原告が直営店として経営していた本件店舗をフランチャイズ店に転換するに際し,本件FC契約締結の前日,締結されたものであり,継続的取引関係が生ずる前であるから,優越的地位の濫用は問題にならない。 被告会社の主張する「赤字」については,事実の証明がないし,赤字が事実であったとしても,被告会社の経営上の見込み違いに起因するものである。 (2)買戻の債務不履行(履行請求)について原告が被告会社との間で覚書(乙第100号証)を締結したことは認める。 しかし,その条項中の「乙が甲に対し本契約第2条第1項第1号記載の営業場所を賃貸し,甲が賃借する契約が成立すること」との条件は成就していない。 また,本件FC契約は,被告会社によるロイヤリティ支払義務の債務不履行によって解除されたのであるから,覚書第2項但書の場合に該当し,原告に買戻の義務はない。 (3)被告会社が本件店舗の価値を維持したことによる不当利得返還請求について被告会社の主張は,根拠が不明で,それ自体失当である。本件FC契約が終了した場合については,契約書(甲第1号証)20条1項4号に定められており,原告がのれん代等の無体財産に対する対価を支払う必要がないから,被告会社の主張する対価については,支払義務のないことが明示されている。 第3当裁判所の判断1本件売買契約の無効による不当利得返還請求について(1)本件売買契約の締結は,当事者間に争いがなく,その経緯は次のとおりであると認められる。 本件店舗は,原告が直営店として経営していたものであるが,店舗に使用する建物は,新天町公社から長崎屋が賃借し,原告に転貸しているものであったが,平成4年末ころ,長崎屋の上記転貸が無断転貸に当たるものとして新天町公社から問題とされた(乙第1及び第101号証)。しかし,上記無断転貸問題の解消後も本件店舗での営業を希望する原告の意向を実現するため,新天町公社と原告による直接の賃貸借契約の締結の方法又は大渕観光株式会社(以下「大渕観光」という。)が新天町公社と賃貸借契約を締結する方法の二つの希望が長崎屋から新天町公社に伝えられた(乙第102号証)。 これに対し,新天町公社から地元企業を優先させたい旨の意向が示されたため(乙第103号証),平成5年7月10日,長崎屋と原告は,建物賃貸借契約を一旦合意解約し,長崎屋は大渕観光に新天町公社の株式を譲渡し,その名義書換手続が完了するまで長崎屋と原告が従来と同一内容の建物賃貸借契約を締結した上で,大渕観光が原告との間で委託販売契約を締結し,同委託販売契約は上記名義書換手続完了日から発効することとする旨の合意が成立した(乙第104号証)。上記委託販売契約は,大渕観光及び被告Aと原告との間で締結され,大渕観光及び被告Aが原告に,本件店舗においてハンバーガーその他の飲食物を販売することを委託するもので,原告は本件店舗における売上金の10パーセントを大渕観光及び被告Aに支払って直営店としての営業を続けるものであった(甲第12号証)。また,上記委託販売契約においては,将来,大渕観光及び被告Aが原告の「ライセンシー」として営業をする目的であることが記載され,平成6年12月1日以降,そのための「トレーニング」を受け,原告が「ライセンシーとして適格であると」判断するまでは,原告が直営店として営業を継続することが特約されていた。 被告Aは,平成5年8月24日,7億5000万円で長崎屋から本件店舗の賃借権を譲り受ける契約を締結し,新天町公社もこれを承諾した(乙第110号証)。 平成8年2月20日,原告は被告Aに対し,フランチャイズ契約締結の条件を提示した(乙第105号証)。その内容は,同年6月1日から本件店舗を原告の直営店からフランチャイズ店に移行させるものとし,本件店舗の店舗資産を直近12か月(平成7年2月1日から平成8年1月31日まで)の総売上に55パーセントを乗じた額で原告が被告Aに売却することなどが含まれていた。その後,原告は被告会社との間で,平成8年5月31日,本件売買契約を締結し(甲第50号証),その翌日付けで本件FC契約を締結した(甲第1号証)。 (2)被告会社は,長崎屋から本件店舗の賃借権の譲渡を受けるために支払った対価の7億5000万円については,資金の融資を受けており,上記委託販売契約による売上金の10パーセント相当額は,借入金の返済額に足りず,毎月300万円から400万円の赤字が発生し,フランチャイズ契約の早期締結を望んだが,原告はフランチャイジーとしての審査があるとの理由で,上記委託販売契約のまま約2年半が経過し,この間,被告らは,追加の融資を受けるなどして凌ぎ,フランチャイズ契約締結の見通しがついた時点で本件売買契約という条件を提示されたため,被告会社は,選択の余地なくこの条件を受け入れるしかなかったとして,原告による優越的地位の濫用があったと主張する。 甲第50号証によれば,本件売買契約において,「無形固定資産」とは,「営業権すなわち得意先または仕入先関係,営業上の秘訣,販売の機会,経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいう。」とされている。本件FC契約は,被告会社が原告のフランチャイジーとして新規に店舗の営業を開始するものとして締結されたものではなく,原告の直営店として営業されてきた実績のある本件店舗を直営店からフランチャイズ店に転換するものであるから,本件売買契約は,原告が直営店として営業してきたことによって形成した上記の無形固定資産を被告会社に売却し,被告会社はこの資産を継承し,利用して本件店舗における営業を行うことができ,フランチャイズ店の新規開店よりもはるかに効率的かつ早期に安定的な経営の実現が見込まれるものと推測される。したがって,被告会社が相当の対価で無形固定資産を取得するのは,十分に経済的に合理性のあることであって,本件全証拠を検討しても被告会社に不当に不利益な内容であることを認めるに足りる証拠はない。 被告会社は,委託販売契約による売上金の10パーセント相当額は,長崎屋から本件店舗の賃借権の譲渡を受けるために支払った対価のための借入金の返済額に足りず,毎月300万円から400万円の赤字が2年半も続いたというが,この事実を的確に裏付けるに足りる証拠はない上,委託販売契約の契約期間は大渕観光及び被告Aと新天町公社との賃貸借契約締結日から10年間とされ(甲第12号証第11条),原告のフランチャイジーとなるための「トレーニング」は,平成6年12月1日以降に開始される(同号証特約事項2)から,原告のフランチャイジーとなることができるのは,最短でも委託販売契約の締結から約1年5か月経過後であることは明らかである。 しかも,その間,大渕観光及び被告Aは本件店舗における営業努力をすることなく,本件店舗の売上金の10パーセント相当額を得られるのである(同号証第4条,第5条)。したがって,仮に,被告会社のいう「赤字」が発生したとしても,それは,本件店舗の賃借権の譲渡を受ける対価のために用意した資金の調達方法に起因するものであって,原告の地位や行動とは何ら関係がない。 のみならず,本件売買契約が締結されたのは,本件FC契約締結の前日であり,本件売買契約締結の時点では,原告は被告会社と継続的取引関係に立っておらず,フランチャイザーの地位を優越的な地位として利用したものでないことは明らかである。また,上記委託販売契約の内容からすれば,この契約は,原告にとって,本件店舗における営業継続に必須のものであり,本件店舗の売上金の10パーセント相当額は,実質的には本件店舗の賃料に相当するものであったことが認められる。これらの事実によれば,本件売買契約締結の時点において,原告が被告会社に対し優越的な地位にあったものということはできない。 さらに,乙第1号証によれば,被告会社は,「本件店舗の営業権」を原告に売却し,その売却代金をロイヤルティ未払分に充当するよう交渉をしてきたことが認められ,控訴理由書においても,被告会社は,本件FC契約の終了とともに本件売買契約も解除されていると主張しており,いずれも本件売買契約が有効に成立したことを前提とする主張をしていたものである。 (3)以上のとおり,本件売買契約締結に際し,原告が被告会社に対して優越的な地位にあることを濫用して,契約を締結させたことはなく,公序良俗に反する事情を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 2買戻の債務不履行(履行請求)について原告は,仮に,本件売買契約が公序良俗違反により無効と認められない場合においても,本件FC契約が終了したのであるから,原告は,覚書に基づき,本件店舗の無形固定資産を買い戻す義務があると主張する。また,覚書第1項中の条件は,平成18年5月12日,被告会社が新天町エステートに対し,本件店舗の賃借権を譲渡し(乙第97号証),原告が新天町エステートから本件店舗を賃借する契約(乙第96号証)が締結されているから,実質的に条件が成就していると主張する。 乙第100号証によれば,覚書は,本件FC契約締結と同じ日に締結されたもので,本件FC契約が終了したときの被告会社の資産の処理に関するものであることが認められる。覚書第1項の「本契約終了後,乙が甲に対し本契約第2条第1項第1号記載の営業場所を賃貸し,甲が賃借する契約が成立することを条件として,甲は営業場所に存する乙の全資産を現状有姿のまま甲の計算による定率簿価価格で買い取るものとする。」とは,本件FC契約が終了し,フランチャイザーとフランチャイジーの関係が解消されたとしても,原告と被告会社間で本件店舗の建物の賃貸借契約が締結されることによって,原告が直営店に戻すなどして本件店舗における営業を継続することができるという利益が保証される場合には,本件店舗に残る被告会社の全資産を買い取るとの趣旨に解される。 そこで検討するに,上記覚書第1項にいう「乙の全資産」に本件売買契約の対象である無形固定資産が含まれるか否か,これが肯定されるとして,「甲の計算による定率簿価価格」が被告会社の請求する金額と一致するか否かについては更なる検討が必要ではあるが,この点はさておくとして,上記趣旨からすれば,覚書第1項の条件は,被告会社が賃貸人,原告が賃借人である本件店舗の賃貸借契約が成立したときに限られ,被告会社から本件店舗の賃借権が第三者に譲渡され,その第三者と原告との間で賃貸借契約が成立した場合を含まないと解すべきである。乙第96及び第97号証によれば,平成18年5月12日,被告会社は本件店舗の賃借権を新天町エステートに譲渡し,原告は新天町エステートから本件店舗を賃借する契約を締結したのであるから,被告会社の主張する事実によって覚書第1項の条件が成就したということはできない。 また,本件FC契約は,被告会社によるロイヤリティ支払義務の債務不履行によって解除された(甲第8号証の1及び2)のであるから,覚書の第2項但書の「本契約の終了が本契約第18条もしくは第19条による解除」によって終了した場合に該当し,原告に買戻の義務はない。 以上のとおり,いずれの見地からみても,覚書に基づき原告が本件店舗の無形固定資産その他の本件店舗における被告会社の資産を買い戻す義務はない。 3被告会社が本件店舗の価値を維持したことによる不当利得返還請求について原告は,仮に,買戻の条件が成就していないとしても,被告会社が本件店舗で営業していた間,店舗の価値を維持したから,原告が本件店舗の営業実績を再度承継した以上,原告は被告会社に対し,その対価を不当利得として支払うべきであると主張する。 被告会社の主張は,法的根拠が不明であるが,前記2のとおり,被告会社は本件店舗の賃借権を新天町エステートに譲渡して投下資本の回収を図ったのであって,本件店舗の営業実績を原告に承継させる行為を行ったとはいえない。 原告が本件店舗の営業実績を承継して営業することが可能となったのは,原告が新天町エステートから本件店舗を賃借する契約を締結することができたからであり,被告会社の行為によるものではない。 被告会社が民法上の不当利得返還請求権に基づく主張をしていると解したとしても,甲第1号証の第20条1項4号によれば,本件FC契約が終了した場合については,原告がのれん代等の無体財産に対する対価を支払う必要がないと定められており,被告会社の主張する対価については,支払義務のないことが明示されている。 4結論以上によれば,控訴人の新たな請求には理由がない。よって,この請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中信義 |
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裁判官 | 古閑裕二 |
裁判官 | 浅井憲 |