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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ27454不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  顧客吸引力(グッドウィル) /  周知性 /  広く認識 /  需要者 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  他人の営業 /  類似性(類似) /  外観 /  混同のおそれ(混同) /  先使用 /  誤認混同 /  商品の形態(商品形態) /  差止請求(差止) /  弁護士費用 /  デザイン /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 /  損害額 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 11136号 不正競争行為差止等請求事件
岡山県倉敷市<以下略>
原告海 洋建設株式会社
訴訟代理人弁護 士田野壽
同 妹尾直人
訴訟代理人弁理 士森寿夫大阪市<以下略>
被告旭化成マリンテック株式会社 東京都港区<以下略>
被告旭 化成建材株式会社
上記両名訴訟代理人弁護士新保克芳
同 高崎仁
同 大久保暁彦
同 井上彰
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/10/23
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求(主位的請求)(「 」。) 1被告旭化成マリンテック株式会社 以下 被告旭化成マリンテック というは,別紙被告製品目録1記載の人工魚礁(以下「被告製品」という )の販売 。
についての営業に関し,又はその使用する宣伝,広告及び説明用パンフレット類に,別紙被告製品目録1説明書記載の商品形態を使用してはならない。
2被告旭化成マリンテックは,被告製品に係る宣伝,広告及び説明用パンフレット類を廃棄せよ。
3被告旭化成建材株式会社(以下「被告旭化成建材」という )は,被告製品 。
を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
4被告旭化成建材は,被告製品,並びに,これに係る宣伝,広告及び説明用パンフレット類を廃棄せよ。
5被告らは,原告に対し,連帯して800万円及びこれに対する被告旭化成マリンテックについては平成18年7月1日から,被告旭化成建材については平成18年10月11日から,各支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)1被告らは,原告に対し,連帯して800万円及びこれに対する平成19年3月15日から各支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等本件は,原告が,主位的には,原告が製造・販売する別紙原告製品目録記載の魚礁(以下「原告製品」という )の形態は商品等表示として周知のもので 。
あり,被告製品の形態は原告製品の形態とほぼ同一であるとして,被告旭化成マリンテックが被告旭化成建材の業務委託を受けて行った被告製品の販売促進活動,及び,被告旭化成建材による被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当すると主張し,被告旭化成マリンテックに対し,被告製品の販売についての営業に関し,又はその使用する宣伝等に被告製品の形態を使用することの差止め,被告製品に係る宣伝,広告及び説明用パンフレットの廃棄,並びに損害賠償を,被告旭化成建材に対し,被告製品の製造,販売等の差止め,被告製品とその宣伝,広告及び説明用パンフレットの廃棄,並びに損害賠償を求め,予備的に,被告旭化成建材による別紙被告製品目録2記載の商品名の製品(以下「被告製品21M型」という )の製造, 。
販売,及び,被告旭化成マリンテックによる被告製品21M型の販売促進活動は,原告の有していた後記の特許権を侵害すると主張して,被告らに対し損害賠償を求めた事案である。
1前提となる事実等(当事者間に争いのない事実,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1)当事者原告は,潜水工事の請負,魚礁場の設計及び製造業等を目的とする株式会社であり,平成6年ころから原告製品を製造・販売している。
被告旭化成マリンテックは,被告旭化成建材の子会社で,人工魚礁,浮魚礁・浮桟橋等の海洋土木事業用強化プラスチック・金属・コンクリート製品の製造,販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。
被告旭化成建材は,建築材料の製造及び販売,人工魚礁及び浮魚礁,浮桟橋等の海洋構築物の設計,製造,販売及び施工管理等を目的とする株式会社である。
(2)原告製品の形態原告製品は,別紙原告製品目録及び同目録説明書記載のとおり,円筒形状をした樹脂製カゴ(メッシュパイプ)内にカキ殻などの貝殻を充填して貝殻入りの通水性ケースとし,当該通水性ケースを複数個用いて,コンクリート製の基礎枠体上に立設した鋼材フレーム製の構造物内に適宜間隔をおいて配置してなる人工魚礁である。
(3)原告の有していた特許権原告は,次の特許権を有していた(甲16の1,2。以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許 ,請求項2の特許発明を「本件特許発明」 」という。。)ア特許番号第1943699号イ発明の名称人工魚礁の構築方法及び人工魚礁ウ出願日昭和61年6月18日エ公告日平成6年10月5日オ登録日平成7年6月23日カ請求項の記載本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。本判決末尾添付の特許公報参照)の特許請求の範囲の請求項2の記載は,次のとおりである。
「樹脂製又は鋼製の通水性のケース(1)内にカキ殻(2)を充填してカキ殻入りの通水性ケース(1)とし,該通水性ケース(1)を複数個集合して壁又は柱を構築すると共に,鋼製又はコンクリート製の枠体(3),板体又はブロック体の構造物で補強結合してなる人工魚礁」キ構成要件本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件A」のように表記する。。)A樹脂製又は鋼製の通水性のケース(1)内にカキ殻(2)を充填してカキ殻入りの通水性ケース(1)とし,B該通水性ケース(1)を複数個集合して壁又は柱を構築すると共に,C鋼製又はコンクリート製の枠体(3),板体又はブロック体の構造物で補強結合してなるD人工魚礁(4)被告製品の形態被告製品は,別紙被告製品目録1説明書添付の図面表示のとおりであり,円筒形状をしたFRP製の蛇籠内にホタテ貝殻を底部側の一部に充填しつつ,その上下端部に鍔状のコンクリート板を設けて貝殻入りの通水性蛇籠ユニットとし,当該通水性蛇籠ユニットを複数個用いて鋼材フレーム製の構造(, ,, )。 物内に適宜間隔をおいて配置してなる人工魚礁である 甲3 4 乙5 6(5)被告らの行為被告旭化成マリンテックは 平成3年2月16日 旭化成工業株式会社 以 ,,(下「旧旭化成工業」という )から,同社が製造する人工魚礁の販売支援業 。
務(製品の販売業務,販売店の管理業務,その他上記各業務に関連し旧旭化成工業が指示する業務)について,業務委託を受けた。旧旭化成工業は,平成13年1月1日に商号を変更し,旭化成株式会社となり,平成15年10月1日,会社分割により,同社の人工魚礁の製造・販売業務は,被告旭化成建材に承継された。以後,被告旭化成マリンテックは,被告旭化成建材のために,被告製品を含む同社製造に係る人工魚礁について,上記販売支援業務を行っている(乙1,2 。)被告旭化成建材は,平成18年2月ころから,その製造に係る被告製品について,島根県,新潟県,青森県などに対して販売の申出をし,現在までに少なくとも,青森県に対して被告製品のうち最も大きなタイプであるAS魚礁21M型(被告製品21M型)1基を販売した。その売上高は,約3000万円で,これにより,被告旭化成建材は,少なくとも600万円の利益を得た。
2争点(1)被告らの行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか(争点1 。)(2)先使用(不正競争防止法19条1項3号 (争点2))(3)被告製品21M型は,本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点3 。)(4)本件特許は無効とされるべきものか(争点4 。)(5)損害額(争点5)第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告らの行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか )について。
〔原告の主張〕(1)原告製品の形態が周知の商品等表示であることア原告製品は,カキ殻などの貝殻を充填した通水性ケースを複数個用いて鋼製フレーム製の構造物内に適宜配置するという極めて特異な形態を有し,この点において商品等表示性を獲得しており,その要部は,カキ殻などの貝殻を充填した通水性ケースにある。フレーム部分における構造の類似性を云々する意義は乏しい。
上記のような通水性ケースをフレーム内に適宜配置するという特徴的な形態を当業界で初めて採用したのは原告であり,また,原告は,本件特許を取得し,多年に渡って独占的に原告製品を製造・販売し,その結果,原告製品は,需要者間において貝殻魚礁の代表製品として広く認識された。
, , 原告の豊富な実証実験により 通水性ケースの効用が広く認められた結果その形態自体が原告のブランドとして取引関係者に広く認知されたのである。
原告製品の形態が極めて特徴的であることに加え,以上の事実を考慮すると,原告製品の形態それ自体が,二次的出所表示機能を取得し,商品等表示性を獲得していることは明らかである。
なお,被告らが,原告製品の形態に特異性がないという主張の根拠として挙げる,?@株式会社中山製鋼所(以下「中山製鋼所」という )の「ス 。
リースターリーフ」には通水性ケースは配置されておらず 「増殖機能を ,備えた複合礁」及び「貝殻活用型増殖礁」には販売実績がなく(この点は争いがない,?A旧旭化成工業による通水性ケースを用いた人工魚礁の 。)製造・販売も立証がなく,?B旧旭化成工業の貝殻入り通水性ケースを用いた人工魚礁( なまこ礁 )は,いずれも上面が解放され,扁平な籠内に 「」貝殻を投入したいわゆる蛇籠と称されるものにすぎないのに対し,原告製品には開放部分がなく,両者間に類似性はない上 「なまこ礁」の販売は ,昭和60年度までにとどまっており,なお限定的な使用であるというほかなく,原告製品の形態の商品等表示性を減殺するほどのものではない。ま, (「」。) た被告らが挙げる?C株式会社神鋼建材工業以下神鋼建材というの人工魚礁についても,通水性ケースが使用されているかは不明である。
以上のとおり,上記?@ないし?Cのいずれも被告らの主張を裏付けるもので。, , はない 付言するに 原告製品が多くの事業主体で採用されている要因は原告独自のノウハウである潜水による効果確認を繰り返し実施してきたことにある。
イ原告は,原告製品を平成6年ころから製造・販売するとともに,独自のノウハウである潜水による効果確認を繰り返し実施してきた結果,その有効性が広く認められており,また,需要者である水産庁や各地の地方公共団体,漁業協同組合等に対する営業資料送付,展示会などのイベントへの出品,マスメディアの利用など,旺盛な宣伝活動により,貝殻魚礁の代表製品として広く知られ,現在,24の都道府県の公共事業において6000基以上採用され,水産白書にも写真が掲載されている。したがって,原告製品の形態は,商品等表示として広く周知性を獲得している。
(2)原告製品の形態と被告製品のそれが類似し,混同を生じさせるものであることア 原告製品の形態の要部は,前記のとおりであり,被告製品の形態はこれと類似する。
混同とは広義の混同をいい,広義の混同には,商品等表示について両者間に使用許諾が存在する関係ではないかという誤信も含まれる。需要者である官公庁においてこのような誤信を招くおそれは十分認められる(現に被告の営業の相手である複数の官公庁から原・被告間の権利関係に関する問合せがきている。。)〔被告らの主張〕(1)原告製品の形態が周知の商品等表示でないことア原告製品の形態は,貝殻を充填した通水性ケースだけでなく,鋼製フレームからも構成されている以上,鋼製フレーム部分に関しても類似性を議論すべきである。形態の類似性が問題となる以上,自他識別機能が生じる「形状」から要部性を判断すべきであり,貝殻を充填した通水性ケースの効用から要部性を判断すべきでない。
フレーム内に通水性の貝殻の入ったケースを複数個用いることは,貝殻魚礁としては当然の選択であって,それ自体が商品等表示になり得る「商品の形態」ではない。
しかも,人工魚礁に樹脂製の通水性を有する筺体を使用するのは,?@中山製鋼所が,昭和62年3月ころまでに製造していた「スリースターリー」, 「 」, フ平成5年12月ころまでに製造していた 増殖機能を備えた複合礁「貝殻活用型増殖礁」に既に採用されていた。また,旧旭化成工業は,?A通水性ケースの形状,配置等は大きく異なるものの,原告の本件特許取得より前の昭和54年ころまでに通水性ケースを用いた人工魚礁を製造・販売し,?B昭和59年11月ころまでに通水性ケースにカキ殻を充填した魚礁( なまこ礁 )を製造,販売していた。さらに,?C昭和63年12月 「」ころには,神鋼建材の製造に係る,人工魚礁に通水性ケースを用いた「神鋼増殖礁(200型 」が存在していた。?Bの「なまこ礁」は,貝殻が充 )填され,かつ円柱形という構成をとっている点で,原告製品とその基本的構成は共通している。したがって,貝殻を充填した通水性ケースを適宜配置することは,原告製品に限った特徴ではない。
イ原告製品の形態の周知性は否認し争う。
(2)原告製品の形態と被告製品のそれは類似せず,混同を生じさせるものでないことア被告製品と原告製品とは,通水性ケースの形状(大きさ ・材質,通水 )性ケースの配置・ユニット,貝殻の充填量等が相違しており,ただ,貝殻が入っているという点だけが共通しているにすぎず,形態は類似しない。
また,鋼製フレームの形態についてみると,被告が既に販売した被告製品のような,鋼製フレームが3段階に重なる構造のものは,原告製品にはない。
イ原告製品の形態と被告製品のそれとが大きく異なる以上,そこから原・被告間の関係又は権利関係に対する誤信が生じないことは明白である。
また,人工魚礁の販売は,県から人工魚礁の開発依頼を受けた製造及び販売業者が,その設計をし,内容を県に対して説明した後,建設会社をして試験設置を行い,その結果を県に報告した上,県が,当該機種の人工魚礁を設置する旨の決定を行い,水産庁から設置許可を受けた後,県が実施する入札手続に応札した建設会社に対して,当該人工魚礁を販売するという手続で行うものである。したがって,人工魚礁の販売は,通常の一般消費者が自ら製品の機種を決定し,購入する場面と状況が異なる。機種決定権を有する関係者は,魚礁効果の検討をする等の高度の専門的知識を有する県の職員等であり,製品の形態,特徴等に関して高度の注意力を有し,被告製品であることを認識して購入を決定しているのであるから,被告製品を他者の製品と誤認して購入することはなく,混同のおそれはない。
2争点2(先使用(不正競争防止法19条1項3号 )について )〔被告らの主張〕原告製品の製造・販売以前に,被告旭化成建材は,貝殻入り通水性ケースを利用したFRP-AK型なまこ礁を製造・販売し,現在までに56基を販売している。したがって,被告旭化成建材が貝殻を充填した円柱形の通水性ケースを備えた魚礁を製造・販売することは,不正競争防止法19条1項3号に該当する。
〔原告の主張〕原告製品と「なまこ礁」とは類似性はない上,不正競争防止法19条1項3号にいう「使用」は,開始時からの継続を要求されるところ 「なまこ礁」の ,販売は昭和60年度までにとどまっているから,先使用は成立しない。
3争点3(被告製品21M型は,本件特許発明の技術的範囲に属するか )に。
ついて〔原告の主張〕(1)被告製品21M型の構成被告製品21M型の構成は,高さ7mの円筒形状をしたFRP製の蛇籠の上下端部に鍔状のコンクリート板を設けて通水性蛇籠ユニットとし,この通水性蛇籠ユニットを複数個用いて柱を構築すると共に,鋼材フレームで補強結合した後,蛇籠内にホタテ貝殻を底部に高さ約1.4m入れてなる人工魚礁である。
(2)構成要件Aについてア被告製品21M型の構成と構成要件Aを比較すると,両構成は,樹脂製で通水性のあるケース内に貝殻を充填する点において共通するものの,?@ケース内に充填する貝殻がカキ殻かホタテ貝殻か,?A貝殻の充填量,?B上下端部に鍔状のコンクリート板が設けられているか否かなどの差異がある。
?@については,本件特許発明においてカキ殻を用いるのは,原告代表者の居住地域において最も多く廃棄されている貝殻がカキ殻であり,ホタテ貝殻は北海道にしか存在しなかったことによるものであり,本件特許明細書に照らして,ケース内に充填する貝殻がカキ殻のみに限定されるべき特段の理由はないから,均等物としてホタテ貝殻も含まれる。
?Aについては,本件特許発明では,通水性ケース内に貝殻を隙間なく満たすことが必須の要件とはされていない。一部分の充填であっても,本件特許発明の目的である良好な生活環境の提供は図られるし,通水性ケースのユニットを製造することで魚礁全体の構築が容易となる本件特許発明の作用効果も損なわれない。
?Bについては,被告製品21M型の通水性ユニットの上下端部に鍔状のコンクリート板が設けられているのは,FRP線条材を組んで円筒形にしただけでは無底で貝殻を充填することができないことや,魚礁全体としての重量を確保するためであって,本質的には樹脂製の通水性ケースであることに相違はない。
よって,被告製品21M型は構成要件Aを充足する。
イなお 被告らが上記?@について指摘する平成6年1月7日付け意見書 乙 , (15の5。以下「本件意見書」という )は,平成5年10月18日付け 。
拒絶理由通知書において 「多数の樹脂製の筺体を立体的に連結し,鉄棒 ,で補強した」先行発明及び「底引網等が引っかからないように角錐台等の形状にする」先行発明の存在を指摘されたことに対する文脈で述べたにすぎず,意識的にホタテ貝殻を除外する趣旨とは解されない。加えて,カキ殻を用いることで「多数の穴が形成されて生物が親しんで生活の場とし易く」なることや 「多数の居住穴を形成する」といった本件特許発明の特 ,徴は,カキ殻そのものに穴があることを述べるものではなく,積み重ねられたカキ殻同士の間に大小多くの隙間が確保される旨主張したものである。平坦なホタテ貝殻といえども,蛇籠内に充填するとホタテ貝殻同士の間には多数の穴が生じる。カキ殻をホタテ貝殻に置き換えても本件特許発明の作用効果を奏することは明らかである。以上に加え,カキ殻かホタテ貝殻かの相違点は本件特許発明における本質的部分でないこと,カキ殻をホタテ貝殻に置き換えることは,ともに海産加工段階で大量に発生する廃棄物である以上,人工魚礁に携わる当業者たる被告らにおいて,被告製品21M型の製造時,容易に想到できたはずであること,貝殻を充填した通水性ケースを複数個集合して柱等を構築して鋼製の枠体等で補強結合した被告製品21M型の構造は,本件特許発明に係る出願時の公知技術でないことを併せ考えれば,ホタテ貝殻入りの通水性ケースを用いた被告製品21M型は,本件特許発明の均等物といい得る。
また,上記?Aの「充填量」についても 「充填 (あいた所につめてふ ,」さぐこと)は必ずしも全体にわたってなされる必要がないことは 「一部,充填」の語が何ら抵抗なく使用されていることからも明らかである。被告ら自身が 「旭化成建材の漁港場施設」と題するパンフレットにおいて, ,「鋼製とFRP素材を組み合わせたハイブリッド魚礁です ・・・貝殻や 。
間伐材を充填して増殖機能を高めます「3.ホタテ貝殻の充填」と記 」,載している。
さらに,被告らは,上記?Bについて,コンクリート板の内容物の流出防止効果を挙げて通水性蛇籠ユニットとの一体性を強調し 「樹脂製又は鋼 ,製の」通水性ケースに該当しないと主張する。しかし,本件特許発明は,人工魚礁そのものに関する発明であるから,その製作手順などの方法的な記載は物としての人工魚礁の構成を特定する上では格別の意味を持たない。本件特許発明の「鋼製又はコンクリート製の枠体(3),板体又はブロック体の構造物」は,構成要件AでなくCに記載されているものの,これは専ら製作手順による特定がされているにすぎず,物としての完成形態においては,全体として人工魚礁を補強結合する機能を有している。被告製,, 品21M型における鍔状のコンクリート板もまた その完成形態において人工魚礁を補強結合する機能を有しているのであるから,構成要件Cに該当し,したがって,それ以外のFRP製蛇籠部分は,構成要件Aの「樹脂」 。, , 製又は鋼製の 通水性ケースに該当する また 被告らの仕様書によると通水性蛇籠の上端の鍔状のコンクリート板の中央には大きな開口部が見受けられ,これが通水性蛇籠の内容物の流出防止を主たる目的として付されたものとは考え難い上,通水性蛇籠の拡大図においてコンクリート板が記載されておらず,被告ら自身コンクリート体を通水性蛇籠と機能的に一体の構成部分とはとらえていない。
(3)構成要件Bについてア被告製品21M型は,通水性蛇籠ユニットを複数個用いて柱を構築しており,構成要件Bを充足する。
本件特許発明の「複数個集合して」は,通水性ケースを縦方向に2個積上結合して柱とする場合(第1図,第3図)に限られず 「枠体(3)を構 ,成している多数本のフレームの2本置きにカキ殻が入った通水性のケース(1)を柱状に取付け」た構造(第5図)も想定されているので,被告製品21M型のように複数個のユニットを独立して用いて柱を構築した構造も含まれる。
イ本件特許発明の実施例の第4図,第5図は通水性ケースを複数個独立して配置したものであることは明らかであり,また,特許請求の範囲の「複数個集合する」は出願当初から記載されていることなどからすれば,出願経過を理由として通水性ケースを「複数個集合して 「壁又は柱を構築す 」る」ことに限定する解釈はなし得ない。以上に加え,本件特許発明の詳細な説明の欄の記載も総合的に斟酌すれば 「通水性ケース(1)を複数個集 ,」,「 」 合して とは複数の通水性ケースを用いて1個の人工魚礁を構成することと解するのが合理的であり,各通水性ケースが独立配置されることを妨げるものではない。
(4)構成要件Cについて被告製品21M型は (通水性蛇籠ユニットを)鋼材フレーム製の構造物 ,内に適宜間隔をおいて配置してなるものである。通水性蛇籠ユニットの上下端部に鍔状のコンクリート板が設けられているのは 「コンクリート製の板 ,体で補強結合してなる」にも相当する。したがって,被告製品21M型は,構成要件Cを充足する。
(5)小括以上に加え,被告製品21M型が人工魚礁(構成要件D)であることには争いがないから,被告製品21M型は本件特許発明の技術的範囲に属する。
〔被告らの主張〕(1)被告製品21M型の構成被告製品21M型の構成は,高さ約7メートルの円筒形状をしたFRP製の蛇籠の上下端部に鍔状のコンクリート板を設けて通水性蛇籠ユニットとし,この通水性蛇籠ユニットを,鋼材フレーム製の構造物内に適宜間隔をおいて複数個配置した後,その蛇籠内にホタテ貝殻を底部に高さ約1.4メートル分入れてなる人工魚礁である。
(2)構成要件Aについてア「樹脂製又は鋼製」の通水性ケースに該当しないこと被告製品21M型の通水性蛇籠の上下端部には鍔状のコンクリート板が設けられ,これらと一体となって通水性ケースが構成されている。本件特許発明は 「樹脂製又は鋼製の通水性ケース」と「鋼製又はコンクリート ,製の枠体」という組み合わせを選択し,後者によって強度付与と海流による流出防止という目的を達成するものであり,通水性ケース自体がコンクリート体によって流出防止の効果を発揮する被告製品21M型のような構成は対象外である。
なお,上端の鍔状のコンクリート板は,内容物の流出防止を目的として付されたものではなく,むしろその開口部は魚が入ってくる場所として機能している。海流等によって通水性ケースが流されないように鋼製フレームに固定させるコンクリート板は,被告製品21M型における通水性蛇籠ユニットの構成物であることに変わりはない。また,通水性蛇籠の拡大図にコンクリート板が設けられていないのは,通水性蛇籠に入れるホタテ貝殻の量を示すために便宜的に蛇籠部分のみを拡大したからであり,これをもってコンクリート体が通水性蛇籠と一体であることを否定できるものではない。
イ「カキ殻入りの」通水性ケースに該当しないこと構成要件Aで通水性ケース内に充填するのはカキ殻であり,被告製品21M型で通水性蛇籠に充填されているのはホタテ貝殻である。原告は,カキ殻の均等物としてホタテ貝殻も含まれると主張する。
しかし,原告は,拒絶理由通知に対する本件意見書(乙15の5)において 「カキ殻を充填してなる魚礁は稚タコの絶好の隠れ場であり,外敵 ,からの防衛効果が大で・・・カキ殻は飼料生物培養基質としても優れており・・・」と述べ,また,引例と対比して「いずれもカキ殻を利用したものではなく,かつカキ殻を充填した通水性ケースを壁や柱全体の構成部材としたものではない」と述べて,カキ殻を用いたことが本件特許発明の本質的部分であることを強調している。これは,本件特許発明の本質に基づき 「カキ殻」に意識的に限定しているものにほかならない。本件特許明 ,細書にも「カキ殻は自然に存在する素材であってしかも多数の穴が形成されて生物が親しんで生活の場とし易く 「餌料となる生物が親和性を持ち 」易く,かつ,多数の居住穴を形成することにある」と説明されている。本件特許発明はカキ殻の多数の穴に着目したものであって,ホタテ貝のよう, 。, な平坦な貝殻 それ自体に穴を有しない貝殻は想定されていない 原告はこの穴は,積み重ねられたカキ殻同士の間の穴,すなわち大小多くの隙間が確保されることを意味するという。しかし,かかる趣旨であれば,中に充填するものは,何も貝殻でなくてもよく,このように権利範囲を無限定なものとする原告の主張は失当である。ホタテ貝殻が「カキ殻」の均等物であるとの主張は成り立たない。
ウカキ殻を「充填して」に該当しないこと「充填」とは「あいた所につめてふさぐこと」を意味する。本件特許明細書では 「充填」の言葉どおり,通水性ケース全体にカキ殻が詰められ ,ている。これに対し,被告製品21M型は,7mの通水性ケースの底部側1.4m程度にホタテ貝殻を入れるものである。これは,通水性ケース内の大部分を,ホタテ貝殻に繁殖した餌生物を目当てに集まってきた魚類の住処にするためにあえて空所にしているのである。被告製品21M型の通水性ケースにはホタテ貝殻が「充填」されていない。
(3)構成要件Bについて本件特許発明の特許請求の範囲は,度重なる拒絶理由通知を受けて何度も補正され,出願当初の「通水性ケース(1)を複数個集合して」は「通水性ケース(1)を複数個集合して壁又は柱を構築する」となった(乙15の8。特許公報の図4,図5はもはや本件特許発明の実施例ではない )もので,本 。
件特許発明においては,通水性ケースをそのまま単に壁又は柱とすればよいというものではなく 「複数」の通水性ケースを集合させて壁や柱全体の構 ,成部材とすることに本質的な機能があるとしている。これに対し,被告製品21M型の通水性ケースは,鋼材フレーム製の構造物内に適宜間隔をおいて複数個独立して配置したものであって,鋼製フレーム自体で人工魚礁に必要な強度を確保しており,通水性蛇籠ユニットに「柱」としての機能を持たせていないから 「複数個集合して 「壁又は柱を構築する」ものではない。 ,」原告は 「複数個集合する」は出願当初から記載されているなどと主張す ,る。しかし,出願当初の請求項は,通水性ケースを複数個集合させたとしても,それによって「壁又は柱」を構築することを予定していない。その後の度重なる補正によって 「複数個集合して 「壁又は柱を構築する」とする ,」ことに限定されたものであるから,出願経過から限定解釈はなし得ないという原告の主張は失当である。
(4)小括以上のとおり,被告製品21M型は本件特許発明の構成要件A及びBを充足しないから,その余の点について述べるまでもなく,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
4争点4(本件特許は無効とされるべきものか )について 。
〔被告らの主張〕特開昭50-142389号公報(乙16。以下「乙16公報」といい,これに開示されている発明を「乙16発明」という )には 「プラスチック製 。,枠組魚礁の隙間へ,網製容器を設け,その内部へ貝殻のような藻類が根付きやすいカルシウム質物体を収納した魚礁」が開示されており 「この発明は,プ ,ラスチック製の魚礁の隙間へ,かきの貝殻のように餌生物が繁殖して附着しやすい物体を収めた網容器を設けた・・・」と記載されている。
乙16発明と本件特許発明との差異は,枠体の材質が,乙16発明は樹脂製であり,本件特許発明は鋼製又はコンクリート製である点にある。しかし,枠体をいかなる材質で構成するかは当業者であれば適宜選択できることであり,そこに超えるべき技術的障壁は存在しない。また,乙16公報の図面上は1個の通水性ケースしか記載されていないものの,通水性ケースを収納すべき場所が9か所ある同図の枠体において,通水性ケースを1個に限るものでなく,同図は他の通水性ケースを省略していることは明らかである。
そして,特公昭50-15717号公報(乙17。以下「乙17公報」といい,これに開示されている発明を「乙17発明」という )には,通孔を有す 。
るプラスチック製の筐体(通水性ケースに相当)を多数立体的に連結した魚礁が開示され,その第4図には,かかる筐体を複数個集合させ,壁又は柱としている魚礁が開示されている。
したがって,本件特許発明は,乙16発明及び乙17発明に基づき,当業者が容易に想到し得たものであるから,無効にされるべきものである(特許法29条2項 。)〔原告の主張〕乙16発明は,カキ殻の餌生物繁殖性に注目してはいるものの,魚礁の全体形状としてはいまだ十分な配慮がなされているとはいえず,本件特許発明とは構成が本質的に異なる。
また,乙17発明は,カキ殻を利用したものではなく,かつ,カキ殻を充填した通水性ケースを壁や柱全体の構成部材としたものではない点で本件特許発明とはおよそその構成を異にするものである。
さらに,本件特許発明に係る人工魚礁は,上記のような構成により,潮流の大小に対する適合性を持ち,激しい潮流を緩和し,カルマン流などの複雑な渦流が起こり,また,潮流の方向変化に対しても壁や柱の構成によって常に内部が幼稚仔の保育場として確立され,その内部がマダコや魚の幼稚仔の絶好のかくれ家,餌の捕食場となり,極めて優れた増殖効果が得られるもので,このような作用効果において,前記乙16及び乙17発明は到底及ばない。人工魚礁の作用効果は,実際に海底に沈設してみないと不明な部分が多く,原告は,潜水を業とし,沈設した魚礁に対する魚の生息状況を逐一観察した上で,ようやく本件特許発明に想到したものである。
したがって,当業者が乙16発明及び乙17発明から容易に本件特許発明に想到することができるものではない。
5争点5(損害額)について〔原告の主張〕被告旭化成マリンテックが被告製品の販売促進活動をし,その結果被告旭化成建材が被告製品を製造 販売することによって 同被告は 前記第2の1(5) ,,,のとおり少なくとも600万円の利益を得た。
また,原告が本件訴訟を追行するために必要な弁護士費用は200万円を下らない。
よって,原告は,被告らに対し,主位的には,被告らの不正競争行為,予備的には特許権侵害行為による損害の賠償として,連帯して800万円の支払いを求める(不正競争防止法5条2項,特許法102条2項,民法709条,719条1項 。)〔被告らの主張〕, , 原告の主張のうち 被告旭化成マリンテックが被告製品の販売促進活動をし被告旭化成建材が被告製品を製造,販売することによって,同被告が600万円の利益を得たことは認め,その余は否認し争う。
第4当裁判所の判断1争点1(被告らの行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するか )について。
(1)商品の形態商品等表示性について不正競争防止法2条1項1号が,他人の周知な商品等表示と同一又は類似商品等表示を使用することを不正競争行為と定めた趣旨は,上記の使用行為により,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し,もって,周知な商品等表示が有する営業上の信用を保護することにある。
商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品等の形態が,同号にいう「商品等表示」として保護されることになると解すべきである。なお,商品の形態における独自の特徴について補足すれば,この独自の特徴とは,商品の機能に由来するものであることから,ただちに独自の特徴を有することを否定されるべきではないものの,その形態が他の同種の商品と比べ,需要者等の感覚に端的に訴える独自の意匠的特徴を有し,需要者等が一見して特定の営業主体の商品であることを理解することができる程度の識別力を備えたものであることが必要であると解すべきである。この意味で,単に商品の機能に由来する形態の場合,独自の意匠的特徴を有し,出所表示機能を備えた商品表示とはなりにくいことが多いということはできるであろう。
(2)原告製品の形態の商品等表示性についてア証拠(甲1,2の1ないし12,5ないし9,11,12,13の1ないし13,14,15の1及び2,17ないし52,乙3,4,8,9,10の1及び2,11ないし13)及び弁論の全趣旨によれば,第2の1記載の事実のほか,以下の事実が認められる。
)原告製品の形態は,第2の1(2)記載のとおりであるが,鋼材フレーaム製の構造物の形状,及び当該構造物への通水性ケースの取付け方は,具体的な設置場所,使用目的,対象とする魚介類の種類等によって様々に異なる(甲1 。))原告製品及び被告製品のような人工魚礁の需要者は,水産庁,各地のb地方公共団体,漁業協同組合等である。人工魚礁の製造・販売業者が人工魚礁を販売する場合,おおむね,地方公共団体から人工魚礁の開発依頼を受けて,人工魚礁の設計をし,その内容を当該地方公共団体に対し説明した後,人工魚礁を試験設置し,その効果等に関する試験結果を当該地方公共団体に報告する。その後,当該地方公共団体は,その報告等を基に当該人工魚礁を設置する旨の決定をし,水産庁に対し,設置許可申請をし,設置許可がされた場合,製造・販売業者は,当該人工魚礁の購入者として当該地方公共団体の実施する入札手続において応札した建設会社に対し,当該人工魚礁を販売し,当該建設会社は,指定された海域に当該人工魚礁の設置を行う。地方公共団体が上記設置許可申請を行う際には,当該人工魚礁に関する選定理由書(性能,特徴,設置地区への適応性等を記載 ,品質検査証,構造計算書,設計図面,数量計算書 )()。 及び蝟集効果調査報告書等の資料を添付することとされている 乙8)原告は,原告製品の効果について調査を繰り返し実施し,原告製品のc購入先等となる,国の機関,地方公共団体,漁業協同組合などに,原告製品のパンフレットとともに原告製品の実証試験の実施状況を記載した, , , 論文集 原告製品の使用実績等を配布したり 原告製品の効果について日本水産学会の大会等において発表するなどして,原告製品について宣伝してきた(甲2の1ないし12,甲5ないし9,17ないし52 。)原告製品のパンフレット(甲1)には,原告製品が貝殻を利用したもので,リサイクルを推進し,生態系サイクルを活性化し,魚介類に餌場,隠れ場,産卵場を提供し,餌料生物が増加するとともに魚が多く集まることなどが記載され,原告製品を用いた海洋牧場のイメージ図が示された上,増殖場造成等の目的及び設置海域に最適な形状に製作可能であるとして,別紙原告製品目録説明書添付図面に記載されているような各種の原告製品の全体形状が示されている。また,原告が配布している「シェルナースNEWS (甲2の1ないし12)には,実際に設置・使用 」されている原告製品の効果に関する調査事例の紹介や新規開発された原告製品の紹介などが掲載されている。
)原告製品は,TVニュースや新聞記事等にも取りあげられたことがあd, (, り 平成15年度及び平成16年度の水産白書にも紹介された 甲1112,13の1ないし13,15の1及び2 。TVニュースの内容は )本件証拠上明らかでないものの,新聞記事の内容は,主に原告製品の効果への期待や魚介類の蝟集効果の高さが実証されたこと等を報道するものである(甲13の1ないし13 。また,水産白書における原告製品 )の紹介は,バイオマス(再生可能な,生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)の利活用,資源の循環的利用の例として挙げるもので,原告名は表示されていない(甲15の1及び2 。))原告製品は,平成6年の販売開始から平成17年までの間に,全国2e4の都道府県の公共事業において,6000基以上採用された(甲14 。))原告製品の販売開始以前に,鋼製の枠体に通水性ケースを配置した人f工魚礁としては,?@中山製鋼所が昭和62年3月ころから製造したもの(乙3,4 ,?A神鋼建材が昭和63年12月ころから製造していたも )の(乙9,12)がある。しかし,そのうち貝殻を詰めた通水性ケースを鋼製の枠体に配置した人工魚礁は,中山製鋼所が平成5年ころに製造した貝殻活用型増殖礁のみであり,これは試験礁で設置実績は1県のみであった(乙3,4 。また,貝殻活用型増殖礁に用いられた通水性ケ )ースの形態の詳細は不明であるが,角形のバスケットであり,原告製品のそれとは異なる(乙4 。)また,被告旭化成建材(その前身である旧旭化成工業を含む )は,。
昭和52年ころから,通水性ケースを用いた人工魚礁(AK魚礁)を販。, , 売している そのうち カキ殻入りの通水性ケースを用いたものとして昭和57年ころから59年ころまでの間販売された「FRPAKナマコ礁 (なまこ礁)があるが,その販売先は広島県のみで,販売数は合 」計56基であった(乙10の1及び2,11,13 。また,なまこ礁 )に用いられている通水性ケースの形態は,太く短い円柱状で,少なくとも上端が開放され,編み目も粗く,原告製品の通水性ケースの形態とは異なる(乙11 。)イ以上によれば,原告製品の形態は,鋼材フレームの形状と,同フレーム製構造物へのカキ殻入り通水性ケースの取付方が,設置場所,使用目的,対象とする魚介類の種類により様々に異なるものであることは,上記認定のとおりであるから,その形態の全体的特徴を捉えにくいものである。また,複数のカキ殻入り通水性ケースを鋼材フレーム製構造物内に適宜配置する,との原告が主張する形態の特徴も,その人工魚礁としての目的,機能,効用に由来するものであって,原告製品の意匠的特徴というよりは機能的特徴であり,需要者が一見して特定の営業主体の製品であることを理解し得る自他識別力のあるものということはできないこと,及び,上記認定のとおり,人工魚礁の取引の実情が,製品のデザイン性というよりは,専ら製品の機能,効用,効果を重視して製品を選択するものであることからすれば,原告が原告製品の形態の特徴及び要部と主張するものは,原告製品の構造的,機能的な特徴を表したものにすぎず,需要者(人工魚礁を新規に採用,購入,設置する者)としても,貝殻を詰めた通水性ケースという形態に着目して原告製品を採用ないし購入するわけではなく,貝殻を詰めた人工魚礁としての原告製品の機能,人工魚礁としての魚介類の蝟集効果の高さ(しかも,従前の設置例によって示された効果のみならず,試験設置によって実証された効果)等に着目して原告製品を選択しているものと認められる(原告自身も,原告製品が多くの事業主体で採用されている要因は,原告独自のノウハウである潜水による効果確認を繰り返し実施してきたことにあると主張しているところである。。)よって,原告が主張する原告製品の特徴は,それ自体が顧客吸引力を有する周知商品表示であると認めることはできず,不正競争防止法2条1項1号にいう周知商品等表示であるということはできない。
(3)原告製品の形態と被告製品の形態との類似性について上記(2)で判断したところによれば,被告らの行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当しないことは明らかであるが,さらに付言するに,原告製品の形態と被告製品の形態とは,類似し,混同を生じさせるものとは認められない。
, , すなわち 原告が原告製品の形態の要部であると主張する通水性ケースは直径数十センチ,長さ約1ないし2メートルと推認される細長い筒状のもので,その両端は閉塞されており,ケース自体の編み目は,枡目状で,ケース内に充填された貝殻が外部に流出しない程度に細かいものであり,ケース全体に貝殻が充填されている(甲1)のに対し,被告製品のFRP製蛇籠は,直径約1.4ないし1.6m,高さ(長さ)約7メートルの太い円筒形状のもので,その両端は開放されており,蛇籠の編み目は,らせん状で,粗く,蛇籠それ自体によっては内部に入れたホタテ貝殻の流出は防げないもので,更にメッシュ状のものを使用してホタテ貝殻を入れており,ホタテ貝殻が入れられているのは蛇籠の下部のみであり,蛇籠の上部,中部は,何も充填されない空間となっている(甲3,4,乙5,6 。)以上のとおり,原告の主張する要部を前提としても,原告製品に用いられている貝殻入り通水性ケースと被告製品のホタテ貝殻入り蛇籠とは,その外観,形状において大きく異なるものであるから,被告製品の形態が原告製品の形態に類似し,混同を生じさせるものと認めることはできない。このような外観・形状の具体的な差異を捨象して両製品の形態の類似性を認めるのは 「貝殻入り通水性ケース」としての機能,効果を有するものであれば類 ,似性を認めるに等しく,不正競争防止法2条1項1号が,需要者が一見して特定の営業主体の商品であることを理解することができる程度の識別力を備えた独自な特徴を有する形態に化体された営業上の信用を保護するものであることに鑑み,適切ではない。
(4)小括よって,被告旭化成マリンテックによる被告製品の販売促進活動及び被告旭化成建材による被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当しない。
2争点3(被告製品21M型は,本件特許発明の技術的範囲に属するか )に。
ついて(1)被告製品21M型の構成証拠(乙5,6)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品21M型は,人工魚礁であり,その構成は,以下のようなものであると認められる。
ア高さ約7mの円筒形状をした樹脂製(FRP製)の蛇籠の上下端部に鍔状のコンクリート板を設けて通水性蛇籠ユニットとする。上記蛇籠は,螺旋状の枠材からなり,上端部に設けられたコンクリート板には魚の入り口となり得る開口部があり,下端部に設けられたコンクリート板は蛇籠の下側開放端部を閉塞する構造となっている。上記蛇籠の底部高さ約1.4m分には,ホタテ貝殻が,メッシュ状の円筒部材を介して入れられ,ホタテ貝殻入りの通水性蛇籠ユニットとされている。
イ被告製品目録2添付の図面のとおり,鋼材フレーム製の構造物が設けられ,その中に,上記通水性蛇籠ユニットが複数個,適宜間隔をおいて(すなわち,1個ずつ独立して)配置された後,その蛇籠内に上記アのとおりホタテ貝殻が入れられている。
(2)被告製品21M型は構成要件Aを充足するかについてア上記のとおり,被告製品21M型の通水性蛇籠には 「カキ殻」でなく ,「ホタテ貝殻」が入れられており,被告製品21M型は,構成要件Aを文言上充足しないことは明らかである。
原告は,被告製品21M型の「ホタテ貝殻」は構成要件Aの「カキ殻」の均等物であると主張する。
しかし,本件特許発明において,カキ殻を用いることは,次に述べるとおり,本件特許発明の所定の効果を得るために不可欠な事項,すなわち本件特許発明の本質的事項であると解される。
)本件特許明細書には,以下の記載がある(本件特許明細書の【従来のa技術【発明が解決しようとする課題【作用】欄参照 。 】, 】,)?@従来の人工魚礁の主なものは 素焼製タコ壺や合成樹脂製のもの レ , (ジタリーフ ,鋼製枠体にフーティングを設けたり,タコ壷を取り付 )けたものであるものの,これらのうちの素焼製タコ壺には,機械的強度や耐久性等に難点があり,他の従来の人工魚礁は,生物が親和性をもつための構造となっておらず,移動防止,強度等が不十分で,しかも海流による流出防止対策が講じられていないなどの難点を有している。
?Aまた,カキ殻の餌生物繁殖性に注目してこれを利用した魚礁(乙16発明)は,これを利用した魚礁としての全体形状にいまだ十分な配慮がされていないものである。
?Bそこで,本件特許発明においては,生物になじみやすい素材の検討と,底引網漁法がなされたり潮流が急な場所でも安定に設置できる構造の人工魚礁を検討し,生物が親和性を持ちやすいカキ殻を樹脂製又は鋼製の通水性ケース内に充填し,この通水性ケースを複数個集合して壁又は柱を構築し,鋼製又はコンクリート製の枠体,板体,又はブロック体の構造物で補強結合してなる人工魚礁としたものであり,通水性ケースの内部のカキ殻は自然に存在する素材であってしかも多数の穴が形成されて生物が親しんで生活の場とし易いという作用がある。
)そして,本件特許明細書に記載された実施例は,いずれも通水性ケーbスにカキ殻を充填したものである。ケース内にカキ殻を充填した主な理由は,上記のとおり,餌料となる生物が親和性を持ちやすく,かつ,多数の居住穴を形成することにある。そのことを約3か月間海底に沈設した本件特許発明の人工魚礁に棲息している甲殻類の棲息量と従来より用いられている石ころが充填されている沈着稚ダコの採集籠を3か月間沈設して棲息している同甲殻類の量とで比較すると,本件特許発明のそれは従来の採集籠のそれの約2.2倍であり,これを餌料とするマダコ稚仔に良好な生活環境を提供していることが明らかとなったものである(本件特許明細書の【実施例】欄参照 。))本件特許発明の人工魚礁は,以上のような構造であるから,魚貝類のc産卵等の繁殖に適し,多量に発生した稚魚等をいかに多く成長させるかという問題点を解決して快適な生活環境を提供することができるとされている(本件特許明細書の【発明の効果】欄参照 。))以上の本件特許明細書の記載から明らかなように,本件特許発明は,dカキ殻がもつ特質に着目してなされたもので,カキ殻を通水性ケース内に収容することによって所定の効果を得ようとするものであり,通水性ケース内に入れるものをカキ殻とすることは,本件特許発明の本質的事項であるというべきである。
イこのことは,本件特許の出願経過からも裏付けられる。
原告は,本件特許の出願当初の明細書から,その特許請求の範囲において,通水性ケースに充填するものを「カキ殻」としている(乙14 。こ)の出願については,乙16公報を引用して,通水性のケース内に貝殻を充填してなる人工魚礁は公知であるとして拒絶理由通知がされたため(乙15の1 ,原告は,乙16発明に「通水性ケース内にカキ殻を充填してな )る人工魚礁」は記載されているものの,同発明には枠体の隙間に通水性ケースをどのような形状に組み付けるかについての記載はないと記載した意見書を提出している(乙15の2 。確かに,上記意見書における原告の )意見は,本件特許発明は,通水性ケースの組付け方について特徴がある旨述べたものではあるものの,本件特許発明の本質が通水性ケースの組付け方のみにあり,通水性ケースに充填するものが「カキ殻」であるかどうかは本件特許発明の本質と関わりなく,その他の種類の貝殻でもよいというのであれば,あえて「カキ殻」に限定せず,乙16発明のように「貝殻」などと記載することも可能であったはずである。また,その後,乙17公報を引用して,樹脂製の通水性を有する筺体に貝殻等のカルシウム質物体を収納し海草類の繁茂を促すとともに集魚効果を高めるようにすることは,本出願前周知であるとしてされた再度の拒絶理由通知(乙15の4)に対し,原告は 「カキ殻は餌料生物培養基質としても優れており,他の ,生物の付着や浮泥の堆積等でもあまり劣化せず,長年月を経ても餌料生物が多いことも立証されています。このように優れたカキ殻を・・・」と述べた上,拒絶理由に引用された例は「いずれもカキ殻を利用したものではな」いなどと記載した本件意見書を提出している(乙15の5 。)以上の出願当初の明細書の記載及び出願経過における原告の意見書における記載に鑑みれば,原告は,出願当初から,通水性ケース内に充填するものとして「カキ殻」を用いることをも本件特許発明の本質としていたものと解される。
ウ原告は,本件特許明細書の「多数の穴が形成されて」という記載は,カキ殻そのものに穴が形成されていることを述べたものではなく,積み重ねられたカキ殻同士の間に生じる隙間のことを述べたものであると主張する。しかし 「穴」には 「向こうまで突き抜けた所」という意味のほか ,,に 「くぼんだ所」という意味もあり(広辞苑第5版 ,これと,カキ殻 , )については,飼料となる生物が親和性を持ちやすく,多数の居住穴を形成する,との上記アに挙げた本件特許明細書の記載を総合考慮すれば,上記「」,「」 , の多数の穴とは多数のくぼんだ所という意味に解すべきであり原告主張のような意味に解釈することはきわめて不自然である。仮に,原告主張のように「多数の穴」が通水性ケース内部に積み重ねられたもの同士の間の隙間をいうものであり,積み重ねると隙間があく形状のものであればカキ殻でなくてもよいというのならば,本件特許明細書に,上記アに挙げたようなカキ殻の優れた効果を強調した記載をするとは考え難いのである。
エ本件特許発明の「カキ殻」は,上記認定のとおり,被告製品に用いられているホタテ貝殻と比較すると,表面の凹凸が激しく,大小様々な多数の「穴 (くぼんだ所)を有するものであり,このことから考えても,本件 」特許発明の「カキ殻」と被告製品21M型の「ホタテ貝殻」との上記差異は,本件特許発明の本質的部分に係るものである。
オ以上によれば,構成要件Aの「カキ殻」を「ホタテ貝殻」に置き換えることによっては,本件特許発明の目的も,同一の作用効果も奏することができないものであることは明らかであって,被告製品21M型の「ホタテ貝殻」と構成要件Aの「カキ殻」との差異は,本件特許発明との本質的な差異であるというべきである。
よって,被告製品21M型の構成は,構成要件Aと均等なものであると解することはできない。
(3)小括被告製品21M型は,その余の構成要件について判断するまでもなく,本件特許発明の技術的範囲に属するものではない。
第5結論以上によれば,被告旭化成マリンテックによる被告製品の販売促進活動及び被告旭化成建材による被告製品の製造・販売等の行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当せず,また,被告製品21M型に係る上記被告らの行為は,原告の有していた本件特許権を侵害するものでもない。
よって,原告の請求は,いずれも理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 間史恵
裁判官 古庄研
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