関連審決 |
取消2000-31423 無効2002-35289 無効2003-35064 |
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関連ワード | 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) / 周知性 / 広く認識 / 商標登録 / 登録商標 / 需要者 / 商品等表示 / 類似性(類似) / 混同のおそれ(混同) / 営業の混同 / 出所の混同 / 表示の使用 / 先使用 / 不正の目的(不正競争の目的) / 差止請求(差止) / 権利濫用(権利の濫用) / ライセンス / デザイン / ただ乗り(フリーライド) / 侵害 / 代理人 / 混同のおそれ(混同) / 商品形態模倣行為(2条1項3号) / 損害賠償 / |
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事件 |
平成
16年
(ネ)
745号
不正競争行為差止等請求控訴事件
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控訴人 東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁護士 伊藤真 補佐人弁理士 野原利雄 被控訴人 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャ パン 訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳 同 古木睦美 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/12/21 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 控訴人 主文同旨 2 被控訴人 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
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事案の概要
本件は,1950年代以前に米国で人気を博したオートバイのメーカーに由来する,「Indian」又は「Indian Motocycle」などのブランドの使用を巡る紛争である。被控訴人は,遅くとも平成6年5月には,被控訴人とそのライセンシーが衣類その他の商品に付して使用している別紙原告表示目録1ないし3記載の各表示(原告各表示)が,その取引者・需要者の間に周知であり,控訴人が別紙被告標章目録1ないし17記載の各標章(被告各標章)を付した衣類等の商品を製造販売するなどした行為が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たるとして,控訴人に対し,同行為の差止め及び損害賠償を請求している。 原判決は,被控訴人の原告各表示は,平成6年5月ころ,平成7年6月ないしは10月ころ,あるいは平成8年においても,被控訴人(原告)の商品等表示として周知であったとは認められないものの,平成12年10月ころには,若年男性向けのいわゆるアメリカンカジュアル系のブランドファッション市場において,被控訴人の商品等表示として,需要者の間に広く認識されたものと認められ,被告各標章は原告各表示に類似するから,控訴人の被告各標章を使用する行為は被控訴人の商品と混同を生じさせる行為に該当するとして,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たるものと認め,また,控訴人が主張した先使用の抗弁については,控訴人が被告各標章を「不正の目的でなく使用し」(同法12条1項3号)たとは認められないと判断し,控訴人に対し,不正競争行為の差止めと損害賠償(請求の一部)を命じたものである。控訴人は,これを不服として,控訴を提起した。 当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」,「第3 争点に関する当事者の主張」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 当裁判所も,上記の「原告各表示」,「被告各標章」のほか,「原告表示1,2,3」,「被告標章1,2・・・17」,「原告商標」,「被告商標」,「オリジナル・インディアン社」,「訴外ザンギ」,「訴外カジヤ」,「訴外サンライズ」,「訴外マルヨシ」,「訴外西澤」などの語を,原判決の用法に従って用いる。ただし,原判決が「米国インディアン社」と略称した,訴外ザンギが設立した米国法人「Indian Motocycle Co.,Inc.」は「ザンギ・インディアン社」という。 なお,その余の会社名については,株式会社,有限会社を含む正式名称ではなく,略称を用いる。 1 控訴人の当審における主張の要点 (1) 被控訴人の商品等表示としての原告各表示の周知性について (ア) 原判決は,「原告各表示は,平成12年10月ころには,原告の商品等表示として周知性を獲得した。」と判断した。しかし,原告各表示と被告各標章中の「Indian Motorcycle」とは,平成7年当時から併存状態にあり,双方ともに周知性を獲得していない。被控訴人の被服等についてのライセンシーであった訴外西澤,プランニングジャパン,ギャロップは,平成12年10月ころ,いずれもライセンシー事業から撤退しており(倒産を含む),各商品分野における被控訴人らの販売実績は僅かなものにすぎないのである。 (イ) オリジナル・インディアン社は,1901(明治34)年創業の米国オートバイメーカー「INDIAN MOTO(R)CYCLE CO.,INC.」であり,原告各表示と同一ないし類似の表示を使用して操業し,同表示(以下,オリジナル・インディアン社が使用していた商品表示を「米国インディアンブランド」という。)が米国及び日本などにおいて周知となっていたものの,1953(昭和28)年に操業を停止し,その後解散し,以後,その関係者を含めていかなる事業活動もしていない。 訴外ザンギが設立したザンギ・インディアン社は,社名,本店所在地及び社章のいずれも消滅したオリジナル・インディアン社と全く同一であるものの,同社とはいかなる関係もない会社である。ザンギ・インディアン社は,オートバイの製造も,その開発準備行為もしないまま,設立後まもなく倒産している。ザンギ・インディアン社は,投資家から資金を集めてこれを詐取するため,オリジナル・インディアン社と同一の会社であるかのように装い,あるいは,同社と何らかの関係又は継続性があるかのように装った,営業活動の実体のない会社であった。 訴外ザンギは,オリジナル・インディアン社及び同社商標に関連して国内外200人にも及ぶ人々から金員を詐取したとして,平成8年6月5日に逮捕され,米国マサチューセッツ地区連邦地方裁判所により「投獄90か月,百万ドルを超える詐取金等の返還支払を命ずる」旨の判決を受けたものである。 (ウ) 被控訴人は,訴外カジヤが,ザンギ・インディアン社から日本をテリトリーとする米国インディアンブランドを使用し商標登録する権利を譲り受け,被控訴人が,訴外カジヤから,日本において同ブランドを使用し,商標登録する権利及び原告商標に係る商標権を譲り受けた,と主張する。しかし,オリジナル・インディアン社とザンギ・インディアン社とは何の関係もないことは上記のとおりであるから,仮に,訴外カジヤがザンギ・インディアン社から日本をテリトリーとする米国インディアンブランドを使用し,商標登録する権利を有効に譲り受けたとしても,オリジナル・インディアン社の周知著名であった米国インディアンブランドを使用し,商標登録する権限を有するということはできない。控訴人も被控訴人も,オリジナル・インディアン社とは無関係の法人であり,この点に関しては,両社は同等であって,オリジナル・インディアン社が存続時に使用していた米国インディアンブランド又はそれを原型・起源とする商標を,被服等の商標として採択使用することについて,どちらか一方が正当な使用者で,他方が不正な使用者であるとか,一方が他方を冒用したとかといった関係にたつものではない。双方の商標の採択動機やその原型・起源が同じであったということにすぎない。 (2) 被告各標章と原告各表示との類否について 被告各標章中,少なくとも,一連の英文字「Indian Motorcycle」を要部とする被告標章4,6,8,10,14ないし17は,原告表示1及び2とは類似しない。 (3) 商品又は営業の混同のおそれ 控訴人が使用している被告標章4,6,8,10,14ないし17及び「Indian Motorcycle」又は「INDIAN MOTORCYCLE」商標と,原告表示1及び2とは類似しないのであるから,少なくとも,控訴人の上記各標章の使用と原告表示1及び2との関係においては,商品又は営業の混同のおそれはない。そして,控訴人が被告商標及び「Indian Motorcycle」又は「INDIAN MOTORCYCLE」商標を長年使用してきた結果,現在では,これらは控訴人の商品等表示として周知となっており,被控訴人らが被告商標に類似する商標を被服等について使用する行為は,被告商標に係る商標権(登録第2634277号,指定商品第17類(被服,その他本類に属する商品)。以下「被告商標権」という。)の侵害行為であるとともに,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するのであるから,仮に,控訴人によるこれらの商標の使用が,被控訴人との間で出所の混同を生じさせるおそれがあったとしても,これにつき,控訴人が非難されなければならない理由はない。 (4) 商標権行使の抗弁(予備的主張) 控訴人が有する被告商標権は,平成3年11月5日に出願され,平成6年3月31日に設定登録されているのであり,この被告商標及びこれと同一性がある「Indian Motorcycle」又は「INDIAN MOTORCYCLE」商標の使用は,商標法上の商標権の専用使用権の正当な権利行使であって,違法性はない。 (5) 先使用の抗弁(予備的主張) 原判決は,控訴人による被告各標章の使用は,原告各表示の周知性に便乗(フリーライド)することを目的とした不正な使用であるから,不正競争防止法12条1項3号で規定する先使用には該当しない,と判断した。 しかし,控訴人が被告各標章の使用を開始する前に,フリーライドの対象となる周知ないし著名な商標そのものが存在しないのであるから,特別な事情がない限り,控訴人による被告各標章の使用が,不正の目的で使用されたと認定される余地はないはずである。また,被控訴人らがオリジナル・インディアン社と何らかの関係や継続性があったとする事情もないことからすれば,控訴人が被告各標章を「不正の目的でなく使用した」(同法12条1項3号)ものであることは明らかである。 控訴人は,昭和40年に設立された株式会社であり,その前身となる「テーラー東洋」及び「港商社」の時代から数えると,60年近くの歴史を持つ老舗アパレルメーカーである。控訴人は,アメリカンカジュアル衣料専門業者としては日本でも有名であり,原判決がいうような「ブランドビジネスの専門業者」ではない。 原判決は,控訴人が,米国の代表的な一般紙「The Daily News」及び「U.S.A. TODAY」において,「インディアン」ブランド復活の動きが報じられた時から約4か月が経過した平成3年(1991年)11月5日に,被告商標を出願していることを「不正の目的でなく使用した」ことを否定する根拠に挙げる。 これは,原判決が,上記米国一般紙の記事を読んだ控訴人が,被控訴人らに買い取らせることを目的に被告商標を日本で出願したものと判断したことにほかならない。しかしながら,著名なファッション情報誌あるいはアメリカンカジュアル衣料の専門誌であるならばまだしも,日本人が購入する手段さえ明らかではない米国で発行された一般英字紙を,控訴人が日々購読しているのは当たり前であるかのような原判決の判断は,あまりにも実際とかけ離れたものといわざるを得ない。 控訴人は,平成2年の終わりころに,控訴人の評判を知った数百人からなる米国のヴィンテージバイクの愛好家団体から,彼らのバイクジャケットを作るよう依頼されたのが被告商標を採択するきっかけとなったのである。 (6) 権利の濫用(予備的主張) 被控訴人による原告各表示の使用は,控訴人の被告商標権を侵害するものである。 このような不法行為によって形成された事実状態を根拠にした不正競争防止法に基づく被控訴人の各請求は,権利の濫用に当たるものであり,法の基本原理からして許されるべきではない。 2 被控訴人の当審における主張の要点 (1) 被控訴人らの商品等表示としての原告各表示の周知性について (ア) 原告各表示は,訴外マルヨシが被控訴人のライセンシーである訴外サンライズから原告各表示のライセンスを受けた平成6年5月,あるいは,訴外西澤が被控訴人から同様に革製ジャケット等について,原告各表示のサブライセンスを受け,また,控訴人が被告各標章の使用を開始した平成7年前半,あるいは,被控訴人から同様に原告各表示のサブライセンスを受けたのが訴外西澤のほかに,兼松日産農林(マッチ),元林(ライター),三竹産業(皮革製財布)に拡大し,控訴人が被告各標章を使用した革製ジャケット等の販売を開始した平成8年中ころには,被控訴人(及びそのライセンシーグループ)の商品等表示として,取引者・需要者に広く認識され周知であった。 (イ) ザンギ・インディアン社は,米国インディアンブランドにブランドとしての新たな価値を付与した。訴外カジヤは,ザンギ・インディアン社から,日本における米国インディアンブランドを用いたライセンス事業をする権利を対価を支払って取得した。被控訴人は,訴外カジヤからそのライセンス事業をする権利の譲渡を受けたものである。なお,被控訴人は,ライセンス事業のほかに,ザンギ・インディアン社から米国インディアンブランドのジャケット,Tシャツ,帽子等を輸入してその販売もしていた。 (2) 被告各標章と原告各表示との類否について 控訴人の主張は争う。 (3) 商品又は営業の混同のおそれについて 控訴人は,米国でオリジナル・インディアン社の復活が報じられるや,すかさず被告商標を出願し,その登録を得,被控訴人により,米国インディアンブランドのライセンス事業が開始されるや,すかさず被告各標章を使用したジャケット,Tシャツ,帽子,革製ジャケット等の輸入販売を開始したものであり,被控訴人とそのライセンシーグループの業務との混同が生じることは明らかである。 (4) 商標権行使の抗弁(予備的主張)について 控訴人の主張は争う。 (5) 先使用の抗弁(予備的主張)について 控訴人の主張は争う。 (6) 権利の濫用(予備的主張)について 控訴人は,被控訴人による米国インディアンブランドを用いたライセンス事業を妨害する目的で被告商標を出願し,その登録を得たものである。被告商標の登録は,公正な競業秩序を害するものであり,公序良俗に反するものであるから,無効とすべきものである。 |
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当裁判所の判断
当裁判所は,被控訴人の請求は,いずれも理由がないから,棄却すべきものであると判断する。その理由は,次のとおりである。 1 被控訴人の商品等表示としての原告各表示の周知性について (1) 以下の各項の括弧内に記載した各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) オリジナル・インディアン社は,1901年(明治34年),ジョージ・エム・ヘンディーが,設計者のオスカー・ヘドストロムを迎えて,マサチューセッツ州スプリングフィールドに設立したオートバイのメーカーである。オリジナル・インディアン社は,1911年のイギリスのマン島のレースや,1937年の第1回デイトナビーチでのレースで優勝するなどして,その品質とデザインにより,米国はもとよりヨーロッパや日本でも,ハーレー・ダヴィッドソンと並んで有名なオートバイのメーカーとなった。オリジナル・インディアン社の商号は,当初は,「ヘンディー・マニュファクチュアリング・カンパニー」であったが,1923年(大正12年)に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に変更された。 オリジナル・インディアン社のオートバイには,主に,特徴ある書体の筆記体の「Indian」(インディアンロゴ・原告表示1と同じである。),羽根飾りを冠した右向きのインディアンの酋長の図形(「右向きのインディアンの図形」)に「インディアンロゴ」を配したもの(ヘッドドレスロゴ・原告表示2と同じである。)が商標として使用され(その他に「左向きのインディアンの図形」や活字体の欧文字「INDIAN」や「インディアンロゴ」と類似した筆記体の「Indian」等も使用された。これらの商標が「米国インディアンブランド」である。),これらの米国インディアンブランドは,オリジナル・インディアン社の製造販売するオートバイの商標として米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。 また,「Indian Motocycle」,「インディアンモトサイクル」は,オリジナル・インディアン社の略称として,米国はもとより,ヨーロッパや日本においても広く知られ,周知性を獲得していた。 しかし,オリジナル・インディアン社は,経営不振のため,1953年(昭和28年)に操業を停止し,後に解散した。もっとも,オリジナルインディアン社の中古のオートバイは,同社が解散した後も,一部の愛好者には人気があり,ジェームズ・ディーン,マーロン・ブランドなどが愛用し,また,スティーブ・マックウィーンがそのビンテージバイクを収集していたことでも知られている。 (甲4,5,146,乙68ないし70。訳文がないものについては,写真や図柄部分を証拠とした。以下同じ。) (イ) 訴外ザンギは,1990年(平成2年)6月4日,指定商品を「米国19類二輪自動車(U.S.019Motorcycles)」とする米国の登録商標「INDIAN」(登録番号0921459,出願1970年3月25日,以下「インディアン米国登録商標」という。)について,当時,2分の1の共有持分権を有していた訴外Aとの間で,その設立する新会社によりオリジナル・インディアン社のオートバイを復活させ,これを製造販売する,との共同事業を行うことを約束して,同商標について4分の1の持分権の譲渡を受け(対価は1ドルであった。),1992年(平成4年)1月ころには,同商標について,訴外Aともう一人の共有者である訴外Bから残余の持分も取得することになり,これをザンギ・インディアン社の単独名義で登録した。ただし,インディアン米国登録商標の最初の登録者であるインディアン モトサイクル インク(Indian Motorcycles, Inc)(1424 Tanager Way Los Angels,CA 90069)とオリジナル・インディアン社とが何らかの関係がある会社であることを認めるに足りる証拠はない。すなわち,上記商標の出願日は,オリジナル・インディアン社が解散してから10数年が経過した後のものであり,上記登録者の本店所在地がロスアンジェルスであることからすれば,上記登録者とオリジナル・インディアン社との関係は全く不明なものといわざるを得ない。(乙22,23) (ウ) 訴外ザンギは,1990年(平成2年)6月ころには,解散消滅したオリジナル・インディアン社と同一の商号「Indian Motocycle Co.,Inc.」で,所在地をオリジナル・インディアン社と同じくマサチューセッツ州のスプリングフィールドとして,ザンギ・インディアン社(Indian Motocycle Company Inc.)を設立した。(乙22) (エ) ザンギ・インディアン社は,オリジナル・インディアン社とは全く関係のない別法人であったものの,訴外ザンギによるザンギ・インディアン社の設立は,「「インディアン」の復活」として米国の一般紙「The Daily News」1991年(平成3年)7月1日号及び「U.S.A. TODAY」同年7月5日号により報じられた。(甲6,7) (オ) 訴外ザンギは,オリジナル・インディアン社のオートバイを復活させるため,多数の投資家から資金を集め,1992年(平成4年)6月ころ,コネチカット州において,被服や装身具の製造販売のためのIndian Motocycle Apparel and Accessories Co.,Inc.と,オリジナル・インディアン社のオートバイを復活させるためのIndian Motocycle Manufacturing Co.,Inc.の二つの会社を設立した。(乙22) (カ) 訴外カジヤは,米国インディアンブランドのブランドとしての将来性に着目し,平成3年(1991年)12月,ザンギ・インディアン社との間で,米国インディアンブランドに関する日本におけるすべての権利(日本において出願し,商標登録を得る権利及び第三者に同商標をライセンスする権利)を譲り受ける旨の契約を締結した。 訴外カジヤは,上記権利の譲渡を受け,平成4年(1992年)2月,特許庁に対し,旧施行令別表17類等を指定商品として原告表示3に係る商標(原告商標)について商標登録出願をした。 (甲10,11) (キ) 訴外ザンギが,オリジナル・インディアン社を復活させ,1993年(平成5年)7月4日には,第1号車を発表するとのニュースは,日本でも,平成5年1月29日付けの二輪車新聞に発表された。(甲257) (ク) 雑誌「BRUTUS」の平成5年1月1日/15日合併号から平成5年11月15日号まで,21回にわたり,オリジナル・インディアン社に関する紹介と,同社が訴外ザンギが設立したザンギ・インディアン社により復活し,1993年(平成5年)7月4日には,その新車が発表されること,ザンギに関する詳しい紹介記事,及び,同年7月4日を過ぎても新車が発表されなかったこと,さらに,その後発表されたものは,アメリカ・ヴァージニア州レストンという町にあるレンジャー・インターナショナル社製のオフロード用のバイクで最高時速が僅か64キロというものであり(平成5年10月1日号),当時から既に訴外ザンギについてよからぬ噂が流れていたこと(同年11月15日号)などが,訴外C(設立当時の被控訴人の取締役である。)により報告されている。(甲13,245) (ケ) 訴外カジヤは,平成5年6月3日,広告宣伝等の業を営む訴外サンライズとの合弁により,被控訴人を設立し,その代表取締役に就任した。訴外カジヤは,原告表示3について商標登録を受け,その後,同商標に係る商標権(以下「原告商標権」という。)を被控訴人に譲渡した。(甲10,11,13) 平成5年7月24日付けの繊研新聞及び日経流通新聞には,被控訴人が,オリジナル・インディアン社のライセンス供与を行っている会社として紹介され,衣料品,雑貨についてそのライセンス事業を行うこと,オリジナル・インディアン社が訴外ザンギにより再建されたことなどが報じられた。(甲16,17) (コ) 雑誌「POPEYE」1993年(平成5年)11月10日号に,「1940年代,アメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したバイクメーカーがインディアン・モトサイクル社」であり,そのロゴグッズは,「アメリカを象徴するトレードマークのひとつとして,‥‥‥未だに根強いインディアン・マニアを持つほどの存在」であること,「そのインディアン社が,実に40年の歳月を経て・・・フィリップ・ザンギの手によって復活した」ことなどが記載された記事が掲載された。(甲18) (サ) 被控訴人のライセンシーである訴外サンライズは,平成6年初め,訴外マルヨシとの間で,バッグについて,原告各表示(米国インディアンブランド)のサブライセンス契約を締結した。訴外マルヨシは,平成6年5月中旬展示会を行い,原告各表示のバッグへの使用を開始した。 訴外サンライズは,平成7年,訴外西澤と,革製ジャケット及び革製ズボン(パンツ)について,原告各表示(米国インディアンブランド)のサブライセンス契約を締結した。訴外西澤は,平成7年10月から平成8年1月にかけて,原告各表示を使用して「GETON!」,「Massimo」,「Hot.Dog PRESS」,「FINEBOYS」などの若者向け服飾雑誌に宣伝広告をし,革製ジャケット及び革製ズボンを販売した。 平成6年,7年,8年に発行された上記のような若者向けの雑誌や「旬刊ファンシー」,「繊研新聞」などの業界紙における被控訴人,訴外マルヨシあるいは訴外西澤の宣伝広告及び米国インディアンブランドに関する紹介記事を見ると,オリジナル・インディアン社がアメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したバイクメーカーであること,そのオリジナル・インディアン社が40年の歳月を経て復活したこと,あるいは,Indian商標が伝説的なアメリカンバイクブランドとして知られていることなどが記載されている。 被控訴人とそのライセンシーグループによる上記の各宣伝広告及び業界紙における被控訴人のライセンス事業の紹介記事は,被控訴人が,ザンギ・インディアン社からオリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドのライセンスを受けて,日本国内における原告各表示のライセンス事業を行い,衣類,雑貨などの販売を開始したと理解される内容のものであり,被控訴人独自のブランドとしての原告各表示を宣伝広告しているものと理解し得るものではない。 (甲21,26,27,33ないし43) (シ) 一方,控訴人は,被控訴人が平成5年6月3日に設立される前の平成3年11月5日に,被告商標の登録出願をし,平成6年(1994年)3月31日その設定登録を受けた。(甲8,9) 控訴人は,その後,カナダ国の「INDIAN MOTORCYCLE」の商標権者であるINDIAN MANUFACTURING LTD.(以下「カナダインディアン社」という。)と提携し,平成7年(1995年)5月ころから,同社の商品であり,「Indian」と「Motorcycle」あるいは「Indian」と「MOTORCYCLE」の文字を2段書きにしたもの,あるいはこれにインディアンの絵や様々な図柄などを組合せた被告各標章が付された革製ジャケット,Tシャツ,帽子等を輸入して,その販売を開始し,同時に,「POPEYE」,「FINEBOYS」,「monoコレクション」,「Boon」などの若者向け服飾雑誌などにおいて,その宣伝広告を開始した。なお,控訴人の同宣伝広告においても,被告各標章がオリジナル・インディアン社にちなんだブランドであることが強調されている。(甲28ないし31,52ないし54,56,乙4,6ないし9,11ないし14,51,58,66(枝番は省略する。以下同じ。),67) (ス) 訴外ザンギは,多数の投資家から資金を集めたものの,オートバイの開発製造などの本来の事業活動をほとんど行わず,これらの資金を高級車や高級時計の購入,自宅の賃料,自分や家族のための個人的な生活費に費やしており,その結果,ザンギ・インディアン社は,オリジナル・インディアン社のオートバイを復活させることなく倒産した。 訴外ザンギは,ザンギ・インディアン社及び米国インディアン登録商標に関連して国内外200人にも及ぶ人々から金員等を詐取したとの詐欺行為等の容疑で,1996年(平成8年)6月5日ころ逮捕され,拘禁された。そして,訴外ザンギは,1997年(平成9年)12月19日,米国マサチューセッツ地区連邦地方裁判所により,同詐欺罪により有罪とされ,投獄90か月(7年6月)に処せられるとともに,百万ドルを超える弁償金等の支払を命ずる旨の判決を受けた。 (乙20ないし22,37ないし39) (セ) 被控訴人及びそのライセンシーは,訴外ザンギが詐欺容疑で逮捕された後の平成8年12月以降平成10年ころまでの,「繊研新聞」,「日本袋物鞄情報」などの業界紙や「Begin」,「LEGFASHION」などの若者向け雑誌における原告各表示の宣伝広告においても,オリジナル・インディアン社のオートバイの写真を掲載したり,ビンテージバイクブランドであることを強調したりして,相変わらずオリジナル・インディアン社との関連性を強調する宣伝広告を継続している。もっとも,被控訴人が,オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドのライセンスを受けて,日本国内における原告各表示のライセンス事業を行っていると理解される従前の広告と異なり,オリジナル・インディアン社と被控訴人との関係については,やや抽象的な記載となっているものもある。ただし,訴外ザンギが,前記のとおり,詐欺罪で有罪の判決を受け,ザンギ・インディアン社がオリジナル・インディアン社を承継する会社ではないことが明らかになったにもかかわらず,被控訴人が米国インディアンブランドのライセンスを受けていることを前提とした記載がなされているものもあり,被控訴人がオリジナル・インディアン社の正当な承継者からのライセンシーであるかのような従前の宣伝広告の内容を訂正する趣旨のものはなく,全体として従前の宣伝広告を継続する内容となっている。(甲70ないし83,93) (ソ) 被控訴人及び訴外サンライズのライセンシーは,平成9年ころ,訴外西澤(レザーウエア),三竹産業(バック・ベルト),ギャロップ(皮革グローブ等),元林(ライター),兼松日産農林(マッチ),プランニングジャパン(ニット・カットソー)であり,平成10年にはこれに丸石自転車(自転車),福井めがね工業(眼鏡フレーム),ライフギアコーポレーション(シューズ)も加わり,平成12年には,オーエイチプラン(ジャンパー,パンツ等)が加わったものの,訴外西澤は平成11年4月ころに,ギャロップは平成11年3月ころに,それぞれライセンシーではなくなっている。また,平成14年においては,レジスト(ジュエリー),エンポリオ(皮革バッグ)が加わったものの,丸石自転車がライセンシーではなくなっている。ライセンシーについては,その後も変動があり,平成16年においては,上記ライフギアコーポレーション(シューズ),元林(ライター),兼松日産農林(マッチ)が残り,他はライセンシーではなくなり,新たに,ジック(自転車),アートハウス(ドッグ・ウエア),ヤング産業(カバン,袋物,衣料)がライセンシーとなっている。(甲80,84,86,89〜92,94,98ないし101,103ないし106,147,乙71) (タ) 被控訴人は,その直営店を,平成10年には東京に開設し,その後,福岡と久留米にも開設し,さらに平成14年9月には神戸に開店し,また,その後仙台にも開設している。(甲95,96,105,106,166,244,259) (チ) 被控訴人とそのライセンシーは,平成12年には,「雑誌東京ストリートニュース!」,「Lightning」,「BOYS RUSH」,「men's egg」などの若者向けの雑誌に,「インディアン モトサイクル」との表示や原告各表示の宣伝広告を継続し,従前より宣伝広告を掲載する雑誌の数や宣伝広告の回数は増えているものの,比較的小さなほとんど目立たない広告の数も多くなっている(1頁の中に,小さなスペースの宣伝広告が多数掲載され,他のショップや他のブランドの広告と混在しているものも多く,これらについては,消費者に対する宣伝効果はあまり期待できないものが多い。)。(甲148〜227) (ツ) 被控訴人とそのライセンシーグループの売上金額については,これを認めるに足りる的確な証拠はない。すなわち,平成14年5月に被控訴人の取締役に就任したDの同年7月31日付けの陳述書において「小売値ベースで15億円である」と記載され,同人の平成16年10月4日付けの陳述書において「小売値ベースで20数億円」と記載されている(甲232,259)ものの,売上金額について客観的な証拠を提出しこれを立証することは困難なことではないにもかかわらず,売上に関する客観的な証拠の提出がないこと,及び,原告各表示を使用した商品としては,革ジャンパー等の衣類が重要な商品の一つであると考えられるところ,その主力商品である衣類についてライセンシーがたびたび交替していること(訴外西澤やギャロップが平成11年にはライセンシーではなくなり,プランニングジャパンやオーエイチプランと交替するなどし,また,平成16年にはプランニングジャパンやオーエイチプランもライセンシーではなくなっている。)からすれば,上記陳述書の記載のみをもって,その売上げ金額と認定することはできない。 (テ) なお,被控訴人らは,原告表示3に係る原告商標権に基づき東京地方裁判所に商標権侵害差止の仮処分命令の申請をし(平成8年(ヨ)第22126号事件),同裁判所は,平成8年12月16日,控訴人に対し,被告各標章の使用の中止を命ずる仮処分決定を発したものの,特許庁は,平成14年2月28日,原告商標の登録を無効とする旨の審決をし,東京高等裁判所が,その審決取消訴訟において,審決の結論を維持し,同判決が,最高裁判所の平成15年6月12日付けの上告不受理決定により確定したことにより,同商標の登録の無効が確定したため,同仮処分決定はその根拠を失った。(甲48,乙71) また,被控訴人は,原告表示1に係る登録商標(登録番号第4022987号,指定商品第25類「被服,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」)を有していたところ,控訴人から同商標登録を無効とする旨の審判請求がなされ(無効2002-35289),平成15年8月8日,同審判請求が成り立たないとの審決がなされたものの,同審決に対する取消訴訟が東京高等裁判所に提起され(平成15年(行ケ)第422号),同裁判所は,平成16年5月11日,同審決を取り消す,との判決を言い渡したため,現在,同無効審判請求事件が特許庁に係属中である。(乙63) さらに,被控訴人は,原告表示2中のインディアン図形に係る登録商標(登録第4116047号,)を有していたが,特許庁は,平成16年7月27日,同商標の指定商標品中「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着」についての登録を無効とするとの審決(無効2003-35064号)をした(乙76)。 なお,被告商標の登録を商標法51条1項の規定に基づき取り消すとの審決(取消2000-31423)に対する審決取消訴訟(平成15年(行ケ)第181号)において,東京高等裁判所は,平成15年11月28日,同審決を取り消すとの判決をし,同判決確定後の平成16年8月31日,被告商標の登録を取り消すとの審判請求が成り立たないとの審決がなされた。また,被告商標権については,商標法4条1項7号,8号,15号等を理由とした無効審判請求が数件提起されているが,いずれも無効不成立との審決が確定している。(乙26,53,54,56) (2) 以上に認定した事実によれば,被控訴人(及びそのライセンシーグループ)の商品等表示として,原告各表示が周知であると認めることはできない。その理由は次のとおりである。 (ア) オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドは,1953年(昭和28年)当時,「Indian Motorcycle」又は「INDIAN MOTORCYCLE」がオリジナル・インディアン社の略称として,「Indian」又はインディアン図形商標がオリジナル・インディアン社の製造販売に係るオートバイ等を表示するものとして,米国のみならず我が国やヨーロッパにおいても周知であったと認められるものの,同社は,1953年に操業を停止し,後に解散しており,同社がその後現在に至るまで営業活動を行ったことをうかがわせる証拠は存在しない。したがって,オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドは,少なくとも平成2年(1990年)ころにおいては,衣類・被服の需要者である一般消費者間においては周知であったと認めることはできない(ただし,オリジナル・インディアン社のオートバイの中古品は,同社が解散した後も,長期間,オートバイ愛好者間で人気を維持していたこと,ザンギ・インディアン社によるオリジナル・インディアン社の復活には,マスコミが注目するほどであり,そのため,ザンギ・インディアン社に投資をし,被害を受けた者も少なからずいたことからすれば,米国インディアンブランドは,オリジナル・インディアン社解散後も,長期間にわたり,オートバイの愛好者間においては,依然として忘れられてはおらず,周知性のあるブランドであったといってもよく,このことからすれば,革ジャンパーなどのオートバイ愛好者が身につける衣類などの分野においても,仮に同社が復活し,その活動を開始すれば,たちまちその周知性を獲得し得るという意味における潜在的な周知性があることは否定できないところである。)。 米国の一般紙「The Daily News」1991年(平成3年)7月1日号及び「U.S.A TODAY」同年7月5日号に,ザンギ・インディアン社が設立され,それが「オリジナル・インディアン社の復活」として報じられたものの,その設立者である訴外ザンギは,多数の投資家との間で新たにオリジナル・インディアン社のオートバイを復活させ,これを製造販売することを約束し,多額の資金を集め,訴外Aらから米国インディアン登録商標も譲り受けながら,オートバイ等の製造などの本来の事業活動をほとんど行わず,集めた資金を私的目的に浪費し,米国マサチューセッツ地区連邦地方裁判所において,詐欺罪により有罪に処せられ,投獄されたものである。これらの経緯からすれば,ザンギ・インディアン社は,投資家から資金を集めてこれを詐取するため,オリジナル・インディアン社と同一会社であるかのように,あるいは,同社と何らかの関係又は継続性があるかのように装ったにすぎない会社であり,これがオリジナル・インディアン社の周知著名であった米国インディアンブランドの正当な承継者とは到底いえない。 したがって,訴外カジヤがザンギ・インディアン社から日本をテリトリーとする米国インディアンブランドに関する権利を有効に譲り受けたものとしても,ザンギ・インディアン社がオリジナル・インディアン社の周知著名であった米国インディアンブランドの使用権限を有するということはできないのであるから,訴外カジヤから原告各表示に係る権利を譲り受けた被控訴人及びそのマスターライセンシーの訴外サンライズからライセンスを受けた訴外西澤,訴外マルヨシその他のライセンシーがオリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドの使用権限を有しないことも明らかである。 (イ) 被控訴人とそのライセンシーは,平成5年ころから,原告各表示を使用してその宣伝広告を開始したものの,その宣伝広告の内容は,ハーレー・ダヴィッドソンと人気を2分したオートバイメーカーであるオリジナル・インディアン社が,訴外ザンギの手により40年の歳月を経て復活したこと,すなわち,被控訴人とそのライセンシーらが,オリジナル・インディアン社の正当な承継者であるザンギ・インディアン社からライセンスを受けて,米国インディアンブランドである原告各表示を使用した事業を開始した,というものである。そして,被控訴人とそのライセンシーらは,訴外ザンギが詐欺罪で逮捕された1996年(平成8年)12月以降も,オリジナル・インディアン社のオートバイの写真を掲載したり,ビンテージバイクブランドであることを強調したりして,オリジナル・インディアン社との関連性を強調しており,訴外ザンギが,詐欺罪で有罪の判決を受け,ザンギ・インディアン社がオリジナル・インディアン社を承継する会社ではないことが明らかになった後も,被控訴人がオリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドのライセンスを受けていることを前提とした従前の広告の内容を訂正することもなく,いわゆるビンテージバイクブランドであることを強調する内容の宣伝広告を継続している。 (ウ) 被控訴人とそのライセンシーグループ全体の売上が証拠上明らかではないことは前記のとおりである。そして,被控訴人のライセンシー事業の主力商品の一つは,革製のジャンパー,ブーツ,バックなどの衣服,身の回り品であるが,それらのライセンシーである訴外マルヨシ,訴外西澤,ギャロップあるいはオーエイチプランが比較的短期間のうちにライセンス事業から撤退していることは,被控訴人と訴外サンライズによるライセンス事業が,その主力商品においても必ずしも順調に進んでいたわけではなく,その販売実績がさしたるものではなかったことを推認させるものである。 (エ) 以上によれば,被控訴人は,オリジナル・インディアン社の承継者であるとされていたザンギ・インディアン社から米国インディアンブランドのライセンスを受け,日本においてその旨宣伝広告し,ライセンス事業を開始したものの,そのライセンス事業の途中で,訴外ザンギが逮捕され,詐欺罪で投獄90か月の有罪判決を受け,ザンギ・インディアン社がオリジナル・インディアン社を正当に承継する会社ではないことが明らかとなった後も,そのままライセンス事業を継続し,従来からの宣伝広告を訂正することもなく継続したものであり,結局,被控訴人とそのライセンシーは,もともとオリジナル・インディアン社からその米国インディアンブランドを使用する権利のライセンスを受けていないにもかかわらず,そのような宣伝広告をしていたものであるから,そのライセンス事業における信用の形成は,オリジナル・インディアン社の商品等表示である米国インディアンブランドによるものであって,被控訴人が,不正競争防止法における周知商品主体としての保護を受け得ることになるということはできない(このことは,仮に,オリジナル・インディアン社が復活して,その事業を開始し,日本における周知性を回復すれば(オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドが衣服等の分野においても潜在的な周知性を有していることからすれば,このことが困難なことではない。),控訴人の事業活動も,被控訴人の事業活動も,いずれもオリジナル・インディアン社との関係では,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するものとなることからも明らかである。)。すなわち,被控訴人のライセンス事業において,原告各表示は,あくまでも復活したオリジナル・インディアン社のライセンス商品であることを表示するものとして用いられているものであって,オリジナル・インディアン社を離れて,被控訴人独自の商品等表示として用いられるものではないから,そのライセンスがオリジナル・インディアン社に由来する正当なものでない以上,オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドを用いた原告各表示をもって,被控訴人の商品等表示を示すものということはできないのであり,被控訴人の商品等表示として周知性を取得し得るものではないというべきである。 したがって,被控訴人(及びそのライセンスグループ)が使用する原告各表示は,被控訴人(及びそのライセンスグループ)の商品等表示として,取引者・需要者間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 結論 以上によれば,被控訴人の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないことが明らかである。そこで,被控訴人の本訴請求を一部認めた原判決を取り消し,被控訴人らの本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,民事訴訟法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 佐藤久夫 |
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裁判官 | 設樂隆一 |
裁判官 | 若林辰繁 |