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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ18360損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
平成20ネ10051損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成17ネ2866不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ11437不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 需要者 /  他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  印象 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  差止請求(差止) /  因果関係 /  デザイン /  ただ乗り(フリーライド) /  競業関係 /  代理人 /  代表者 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  損害賠償 /  販売数量 / 
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事件 平成 19年 (ネ) 10063号 不正競争行為差止等請求控訴事件
平成 19年 (ネ) 10064号 同附帯控訴事件
控訴人・附帯被控訴人株式会社イーダム (以下「控訴人」という。)
訴訟代理人弁護士安原正之,佐藤治隆,小林郁夫, 鷹見雅和
同弁理士 安原正義
補佐人弁理士大西育子
被控訴人・附帯控訴人株式会社アルページュ (以下「被控訴人」という。)
訴訟代理人弁護士山崎雅彦,神尾明彦
同弁理士 高橋康夫
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/01/17
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
2控訴審における訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人(本件控訴)( )原判決中,下記( )ないし( )に係る控訴人敗訴部分を取り消す。
124( )被控訴人は,原判決別紙物件目録2及び4記載の衣服を製造し,販売し, 2販売のために展示し又は輸入してはならない。
( )被控訴人は,被控訴人所有の前項記載の衣服を廃棄せよ。
3( )被控訴人は,控訴人に対し,更に206万0957円及びこれに対する平 4成18年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
( )訴訟費用は1審,2審を通じ被控訴人の負担とする。
52被控訴人(本件附帯控訴)( )原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
1( )控訴人の請求をいずれも棄却する。 2( )訴訟費用は1審,2審を通じ控訴人の負担とする。 3第2事案の概要1事案の要旨本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が製造,販売等する被告商品AないしDが不正競争防止法2条1項3号にいう商品の形態模倣するものであるとして,同法3条1項に基づく上記商品の製造等の差止め及び同法4条に基づく損害賠償等を請求したところ,原判決が,被告商品A及びCについて,製造等の差止め及び損害賠償の請求(予備的主張の損害の全額)を認容し,被告商品B及びDについて,控訴人の請求を棄却するなどしたため,被告商品B及びDに係る部分について,控訴人が控訴するとともに,被告商品A及びCに係る部分について,被控訴人が附帯控訴し,原判決のそれぞれの上記敗訴部分の判断を争っている事案である。控訴人は,原判決において認容された被告商品A及びCに関する損害賠償額については,不服を申し立てていない。
なお,原判決における略称を本判決においても使用する。
2争いのない事実等及び争点原判決「事実及び理由」欄「第2事案の概要等」のとおり(ただし,原判決7頁の13行目及び14行目を削除し,15行目の?Fを と,18行目の?Gを?Fと訂正する。)であるから,これを引用する。
3争点に関する当事者の主張次のとおり,当審における主張を追加するほか,原判決「事実及び理由」欄「第3争点に関する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。
( )争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正 1競争行為に該当するか)の被告商品Bに関する判断について(控訴人控訴部分)ア控訴人の主張(ア)実質的同一性のある商品が前後して製造販売され,かつ,後の商品の製造業者が前の商品の形態に接し,これをまねる機会がある場合,後の商品は前の商品に依拠して製造されたとするのが自然であり,経験則にも合致する。
原判決は,被控訴人が,被告商品Bの製造前に原告商品2の形態について知る機会があったことや両商品の実質的同一性を認めながら,被告先行商品の存在から,被控訴人の模倣性を否定したが,この判断は,レースの形態という一般人が最も目につきやすい特徴の同一性を軽視したものであり,誤りである。原告商品2及び被告商品Bのようなシンプルな形態の被服においては,レースの形態がその商品の全体的印象又は美観に与える最も重要な要素である。
被控訴人は,被告先行商品を有していたが,前面にロゴが付されたり,レースが背面に付されていて,また,付されているレースも被告商品Bとは全く異なる印象を与える大型のレースである(乙25の1,2)。ノースリーブのシャツの襟刳りにレースを施したという点では共通しても,付されたレースが異なれば,異なる印象を与えるものである。
この点について,原判決は,被告商品Bの製造時には被告先行商品に用いられたレースは入手できなくなっていたことなど,被控訴人従業員の陳述書(乙68)を引用して判断しているが,レースの選択肢がないということは誤りであるし,被告商品AないしDのすべてについて,自らデザインしたものである旨を述べている被控訴人の従業員の陳述書に全く信用性がないことは明らかである。
(イ)原判決は,被控訴人の模倣体質を看過している。
被控訴人の商品には,本件訴訟の対象である4つの商品(被告商品AないしD)だけでなく,スカートとパンツとの違いはあるが,腰回りの特徴(リボン,ボタン,ポケットの形態)が全く同じで,服飾関係の専門業者が誤って,控訴人に対して送付するほど控訴人の商品と似通っている商品も存在し(甲22の1ないし4,甲23の1ないし4),同商品につき,被控訴人は,控訴人からの模倣の指摘により,市場に出さなかったのであり,被控訴人が模倣の認識を有していたことは明らかである。控訴人が把握できた商品だけでも5つの商品において形態が酷似することは,偶然ではあり得ず,被控訴人が常習的に控訴人の商品を模倣していたことは明らかである。
イ被控訴人の主張(ア)控訴人は,原判決は,レースの形態の同一性を軽視したものである旨主張する。
しかし,原告商品2及び被告商品Bに使用されているレースは,いずれも協和レースから市販されていたレースであり,V字型という形態とその大きさから,もっぱら襟割りのV字型の開口部に施すことを想定しているものであって,被告商品Bは,レース使いの流行の中,供給できるものとして2種類くらいしか提案されなかったものの中から選択した市販のレースを本来の施し方に沿って,何ら独創的な特徴を一切有しない定番のノースリーブ(タンクトップ)に使用したものにすぎない。
レースの形態の共通性を理由として,依拠性が認められるのは相当でないし,これを施した商品についての実質的同一性を認めるべきではない。
被告商品Bに使用されている市販のレースのデザイン(意匠)につき,控訴人に何らの独占的使用権があるわけではないし,控訴人がレースの形態(デザイン)に資金・労力を投下したものでもない。そして,襟割りにしか使用されることが想定されていない市販のレースを,独創的な特徴を一切有しないノースリーブ(タンクトップ)の襟割りに使用することは,ノースリーブ自体の繊細な寸法を除けば,商品開発に時間や労力を必要とするわけではないから,不正競争防止法の趣旨からしても,レースのデザインの同一性が,商品全体の同一性の決め手となるものではない。
(イ)控訴人は,原判決が,被告商品Bの原告商品2に対する依拠性を否定したのは不当である旨主張する。
しかし,控訴人の展示会は,原則として,あらかじめ招待状が配布された各地の販売業者しか入場できず,招待状なしに競業関係にある同業者が入場できるものでないところ,控訴人の展示会に被控訴人が招待されたことはないし,招待状なしに出席した事実は何ら立証されていない。また,原告商品がインターネットに掲載されていたことも立証されていないし,仮に,個人のホームページに原告商品の写真が掲載されていたとしても,それを被控訴人が知る機会は限りなくゼロに等しい。
しかも,当時レース使いが流行となっており,被控訴人も以前からレースをいろいろな方法で女性服に使用していたものである。
(ウ)控訴人は,5つの商品において,控訴人の商品と被控訴人の商品の形態が酷似していることから原告商品2と被告商品Bが酷似している旨主張するが,酷似しているか否かが問題となっているときに,酷似していることを前提に論理を展開するのは,結論の先取りであり,誤りである。
また,若い女性向のファッションは流行性,一過性があり,似通った商品が極めて多数のメーカーから縫製作業により手工業的に提供される。しかも,酷似しているとされる被告商品は,カタログや広告といった発行時を示す資料の確保の困難性から,当時ありふれた形態であったことについて立証ができなかったものにすぎない。
(エ)原判決は,若干のシルエットの相違は同一性の判断に実質的な影響を与えないとする。
しかし,若い女性向けファッションにおいて,着用時の全体的な印象が大きく左右されることから,全体的なシルエットの相違は,最も重要な形態の相違である。
被控訴人は,有名モデルが被控訴人のブランド商品を着用した際のシルエットを重視して,ファッション雑誌やテレビなどの媒体と連動して膨大な宣伝広告費をかけている(乙115,52,72,116から119)。
原告商品2は,いわゆる寸胴のラインからなり,だぶだぶに着用するもので,全体の印象も直線を基調とし,コンセプトは,ラフでカジュアルなものである。他方,被告商品Bは,寸胴,直線状ではなく,身体のラインに沿って体の線を強調して細身に見える流麗なラインを形成するシルエットで,女性らしさをより強調するデザインである。被告商品Bのシルエットは,デザイン指示書で寸法を決めるに当たり,モデルが似合うかわいらしい繊細なシルエットを意識して,時間と労力をかけた独自の成果である。
若い女性向けファッションの取引者,需要者において,最も重要な要素である基本的なシルエットが相違する両商品を同一と感じることはない。控訴人の主張は,商品開発に費用のかかるシルエットの相違を無視して,特別に商品開発に費用のかからない既製のレースの形態の同一性だけを根拠とするものであり,不当である。
( )争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正2競争行為に該当するか)の被告商品Dに関する判断について(控訴人控訴部分)ア控訴人の主張(ア)原判決は,原告商品4と被告商品Dとの形態につき,それらの実質的同一性を否定したが,この判断は,細部にこだわる余り,形式的対比に陥っているもので,通常人の美的感覚からはほど遠いものであって,商品間の対比を誤っており,また,被控訴人が有する模倣傾向ともいうべき体質をも看過している。
原告商品4と被告商品Dの基本形状は同一であり,また,原告商品4の最も顕著な特徴である,身頃下の部分及び両袖(前腕部)に透かしレース部分が付されている点においても同一である。
原判決は,被告商品Dの背面上部に透かしレースの部分がないこと,そのため後身頃下のレース部分が原告商品4よりもやや上にあり,後身頃における生地と透かしレース部分とのバランスが異なるものとなっていることを挙げ,両商品の背面部の印象が実質的に異なると判示し,また,原告商品4においてはウエスト部分がゆったりと太めになっており袖は比較的長いのに対し,被告商品Dにおいてはウエスト部分がやや細身で袖が比較的短いとする。
しかし,これらの相違点は,いずれもわずかな改変に基づくものであり,着想が容易であること,背面のレースを付さないというにすぎず,背面上部のレースを付さなくても全体的な印象に変化はないこと,ウエスト部分の太細及び袖のわずかな長短は最も重要な特徴である身頃下の部分及び両袖(前腕部)に透かしレース部分があることと比較すれば軽微な差異であること等を総合的に判断すると,商品全体から見てこのような差異はささいな相違にとどまると評価されるべきである。したがって,原告商品4と被告商品Dとは実質的に同一の形態というべきである。
(イ)原告商品4には,カラーバリエーションがあり,ピンク,グリーン,グレーの3色の商品がある。被告商品Dにも,カラーバリエーションがあり,白,ラグ,ラズベリー,ターコイズ,黒の5色の商品がある。
原判決は,「原告商品4はグレーの地に白色のレースが施されており,地とレースの色のコントラストがさほど強くないのに比べ,被告商品Dは,ピーコック地に白色レースが施されており,地とレースの色のコントラストが強く」との対比判断をしたが,これは,ごく一部の商品を取り出して行ったものにすぎず,白色地に白色のレースを施した被告商品Dも存在するから,地とレースの色のコントラストの強弱によって,原告商品4と被告商品Dの実質的同一性を否定した原判決の判断は誤りである。
(ウ)原告商品4は,平成17年5月24日〜26日開催の展示会に出品されたもので(甲16の2),同年9月中旬に小売店に卸販売したものである(甲21の4)から,被控訴人には,デザインを行う前に原告商品4へアクセスする可能性が十分存在した。
この点,被控訴人は,同年5月27日に発売したものの素材をニットに替え,同年7月ころ,一緒に,被告商品Dもデザインした旨主張する。しかし,被控訴人が独自にデザインしたとする被告商品Dは,上記の商品とは全く異なるデザインの流れをくむものである。被告商品Dにおいてのみ背面のレースを付さなかったことは,原告商品4を模倣する際に,反論する余地を残すため,あえて完全な模倣を避けたものとも受け取れる。被告商品Dを被控訴人が独自にデザインしたとする根拠は全く希薄であって,その弁解の信用性は極めて低い。
イ被控訴人の主張(ア)控訴人は,原告商品4と被告商品Dの実質的な同一性を否定した原判決の判断を争う。
しかし,不正競争防止法2条1項3号は,商品のアイディアの創作的価値を問わずに,「模倣」行為を禁止している以上,「模倣」は,単なる「類似」ではなく「酷似」である必要があるとともに,先行開発者の開発努力は保護に値する程度のものである必要があり,意匠法との体系的解釈からも,「酷似」の内容である「実質的同一性」の有無は,厳格に評価すべきである。とりわけ,業界全体で流行を創出して似通ったファッションが一時期に大量に流通する女性ファッション界において,実質的同一性の判断を緩やかに評価することはファッション界の実情に反する。
(イ)原告商品4と被告商品Dとの実質的な同一性がないことは明白である。
両商品は,原告商品4の特徴的な部分である背面における透かしレース部分の配置と生地のバランスに相違点があり,地とレースのコントラストも相違する。両商品は,ウエスト部がゆったりしているか細身であるか,袖の長さにも相違があり,同一性はない。
そして,カーディガンの基本形状やカーディガンなどの各種衣服にレースを施すことはありふれていたものであり,間接対比観察をもって,ありふれた部分は小さく評価され特徴のある部分は大きく評価される意匠法における類似判断の考え方によっても,原告商品4と被告商品Dは,類似性すらない。控訴人主張のように実質的同一性の有無を緩やかに解すると,被控訴人が被告商品Dの先行商品として製造販売していた商品(乙46の1から乙50,乙69等)と原告商品4との間にも,実質的同一性があることになる。透かしレースを使用した商品は,レースを透かし状に縫いこむという着想自体に独創性があり,そのヒントは海外の商品が先行し(乙45の1等),それを春夏物に取り入れたのは,被控訴人が先行している。しかも,透かしレースは,その着想よりも,その縫製が困難な商品であり,被控訴人は,独自に被告商品Dの製造についての開発の努力をしており,控訴人の開発努力にただ乗りする関係にはない。
(ウ)控訴人は,被控訴人が原告商品に対してアクセスの可能性が十分あった旨主張するが,原告商品4が販売されたのは,平成17年9月中旬であるのに対し,被告商品Dのデザイン指示書が作成されたのは,同年7月27日であるから,模倣の機会はなかった。
原判決は,控訴人の展示会に出品されていたことを理由に知る機会があったと認定するが,被控訴人は,控訴人から,控訴人の展示会に招待されたことはなく,招待状なしに被控訴人がその展示会に出席した事実も,原告商品がインターネット上で実際に掲載されていた事実も何ら立証されていないことは,被告商品Bについてと同様であり,被告商品Dが原告商品4に依拠していないのは明らかである。
( )争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正3競争行為に該当するか)の被告商品Aに関する判断について(被控訴人附帯控訴部分)ア被控訴人の主張(ア)被告商品Aは原告商品1に依拠したものではない。
原判決は,控訴人の展示会が平成17年8月23日から8月25日に開催されたことを理由に,被告商品Aは原告商品1に依拠したものと判断しているが,誤りである。平成17年11月1日の販売開始前に,原告商品1の形態を被控訴人が知り得る可能性,機会はなかった。
控訴人の展示会は,専ら販売業者を対象とする閉鎖的なものであり,準備手続期日において,控訴人の従業員自ら,招待状がない者は入場できないことを認めていた。原判決は,被控訴人が上記展示会に入場した事実や原告商品1が上記展示会に出展された事実を何ら具体的に認定することなく,事実上不可能な展示会への出席の可能性を認定し,抽象的な可能性があったことを根拠に,依拠したと認定した。
また,原判決は,インターネット等を通じて,展示会に出品された商品について知り得たと判断しているが,原告商品1がインターネットを通じ公開された具体的な事実も指摘していない不合理な判断である。
(イ)原告商品1と被告商品Aは,レース業界の4分の1程度のシェアを占める協和レースが前開きの胴回り用に開発した幅広の既成のレースをたまたま採用したこと,この種幅広のレースは数種類しかなかったところ,この種のレースは面積が大きいために全体として似通った印象となったことから,近似する印象を与えるにすぎない。原告商品1の開発,販売前に,女性ファッション界においてレース使いが大きな流行となっていて,原告商品1もこの潮流下における商品であり,自ら開発したものではない既成レースの当然に想定された使用方法の採用をもって,被告商品Aが原告商品1に依拠したと認定することは妥当ではない。
イ控訴人の主張被控訴人の主張を争う。
( )争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正4競争行為に該当するか)の被告商品Cに関する判断について(被控訴人附帯控訴部分)ア被控訴人の主張(ア)原判決は,原告商品3の形態において特徴的な点は,長袖,前あき金属ファスナー止めのフード付きパーカーで,裾及び袖口の内側から突出するようにレース編み布地が付されていること,左胸部に黒色のワンポイント飾りがあること等であり,これらは,これまでの他の商品にみられるありふれたものではなく,創作的なデザインであるとしたが,誤りである。
平成17年8月26日の原告商品3の販売開始以前に,多数の業者が,上記の各点の特徴を有する多数の商品を製造販売し,各種ファッション雑誌に掲載されて,流通していた(乙120ないし133)。
すなわち,原告商品3の販売開始以前から,女性用衣服の外着や内着の裾,袖あるいは襟など各所にレースをあしらった,レース使いの商品が流行し,女性ファッション界の一潮流となっていた。また,パーカーは,本来防寒用の衣料から発展した商品で,長袖,前あき金属ファスナー止めのフード付きで,フードを止めるリボン(ヒモ)がついているのが基本形状であるし,レース付きのパーカーは控訴人の創作によるものではない。そして,汚れが目立たず,パンツや上着との組合せが容易なグレー色はパーカーの基本色であったし,ジャンパーやパーカーなどの外着の左胸部にワンポイント飾りを付することも,ありふれたデザイン手法であった。
そして,原告商品3の形態における特徴的な点とされる,長袖,前あき金属ファスナー止めのフード付きパーカーで,裾及び袖口の内側から突出するようにレース編み布地が付されて,左胸部に黒色のワンポイント飾りがあるといった各特徴を備える商品が原告商品3の展開以前より存在していて,それらの商品は,上記特徴の全部を必ずしも同時に有してなるものではないが,ファッション雑誌は,その性格上,特に際立った目新しい商品のみを掲載するのであって,市場に流通するすべて商品が掲載されるものではないし,原告商品3は,これらに示された各要素を当たり前の手法で組み合わせたにすぎない。
同時期に似通った商品が,多種,多様に出回るのが若い女性ファッションの特徴であるから,ありふれたものであるか否かは,このような女性ファッション界の実情,業界における取引業者や,その需要者である若い女性のファッション感覚を基礎として判断されなければならず,格別の特徴がない,業界では当たり前とされていたデザインについて,同一性の幅をむやみに広げて,簡単に模倣と認めるべきではない。
また,意匠法に比して,不正競争防止法2条1項3号においては,商品形態の創作性を問わずに,「模倣」行為を禁止している以上,「模倣」を定義した「実質的同一性」は単なる「類似」ではなく「酷似」である必要があり,創作性がない形態を基礎として,酷似を緩やかに判断すべきではない。原告商品3は,公知の態様を当たり前の方法で組み合わせたものにすぎないから,その展示,商品販売の開始以前において,ありふれた形態からなるものであったことは明らかであり,原告商品3に創作非容易性がないことからすれば,流行に起因した抽象的な構成要素の共通をもって,緩やかに実質的同一性を認めるべきではない。
さらに,商品形態模倣の判断に際しては,両商品の同種商品が通常有する形態ではない具体的形態が同一又は酷似するか否かを判断すべきであり(東京地裁平成9年3月7日判決・判例時報1613号134頁参照),この準則をファッション業界に適用するに当たっては,流行の潮流に起因して,特定の時期に同種商品の通常有する形態である基本的流行形態が共通することに重きが置かれるべきでなく,流行に起因する形態ではない具体的形態が同一又は酷似するか否かを判断すべきである。
(イ)原判決は,被控訴人が提出した証拠(乙38ないし乙3,検乙1ない4し乙5)が,ありふれた形態であることの裏付けとなるものではないとする。
被控訴人は,応訴者として,突然に訴えが提起されて初めて収集に着手し得るから,商品販売,開発時の商品を過去にさかのぼって入手することというのは本質的に不可能な立証活動を要求するものである。ファッション雑誌は,すべての商品,すべての形態が掲載していない。そして,製造者,販売者が異なるレース付きのパーカーについて,一流の販売店,製造元の商品を含んで5種類も入手し得たことは,今回新たに提出した新証拠の存在とあいまって,レース付きのパーカーは,現在から原告商品3の販売開始以前に至るまで,一貫して,ありふれた形態であったことを示すものである。
(ウ)原告商品3と被告商品Cは,レースの取り外しができる点で異なる。
原判決は,被告商品Cのレース及びワンポイント飾りは取り外しができるのに原告商品3には取り外しができない相違点があることを認めながら,これは機能を付加したものであって商品の形態においての相違点とはいいがたいとして,両商品の実質的同一性を肯定したが,誤りである。
被告商品Cは,袖口のレースと裾口のレースがボタン留めで取り外し可能であって,袖と裾の各レースを付けた状態と付けない状態の組合せにより,4通りの形態を一着で着回しでき,それぞれがバランスのとれた魅力あるデザインであり,さらに,上記各形態の各々において,ワンポイント飾りを取り外し可能としたことにより,8通りの形態を楽しめる商品であることを根本的な特徴とする商品である。つまり,被告商品Cは,需要者において,袖口及び裾口の各レースの着脱,ワンポイント飾り(ワッペン)着脱の組合せにより,場面に応じた着回し(形態)を楽しむことが通常の用法として予定されていて,そのうち,袖口及び裾口のレースを両方とも装着した形態以外は,原判決が同一性があるとする原告商品3の特徴を欠くものであって,両者の形態に同一性はない。また,袖口及び裾口のレースを両方とも装着した形態でも,ボタン止めした着脱できるレースか否かは,被告商品Cのみにある基本的な特徴点であるから,経済的な着回しを可能にする外観的な特色を有する別の商品となり,この点の相違は,原告商品3にはない,基本的な構成要素の相違である。
したがって,レースの着脱可能性の相違点は,単なる機能の付加にとどまらず,レースを付けたときの外観上の相違をもたらしうる重要な相違点であり,知覚によって認識することができる商品の外部の形状に差異を生じさせるものであって,商品の基本的性格の相違であり,不正競争防止法2条4項に定める商品の形態の相違にほかならず,被告商品Cと原告商品3の形態は同一ではない。
また,はみ出すレースの長さ,面積の相違は,正面,背面からみたときの印象を相違ならしめている。原告商品3と被告商品Cを対比した写真で明らかな黒色のレースの面積の広狭は,レースが着脱可能なことに由来する。
(エ)原告商品3と被告商品Cは,シルエットが異なる。
原判決は,原告商品3と被告商品Cの相違点について,若干のシルエットの違いは同一性の判断に影響を与えるものではないと判示している。
しかし,若い女性向けの被服においては,身幅の相違などによるシルエットの相違が,需要者が知覚によって認識することができる商品の外部の形状に相違をもたらすとともに,商品のブランドイメージや商品価値に差異をもたらす。
原告商品3は,身幅が広めで上着としての着用に限られるところ,被告商品Cは,インナー(内着)として,その上にさらに重ねてコートやジャンパーをも着用できるデザインであって,その使用目的,ファッション計画などが根本的に相違する。
これを若い女性の観点でみれば,原告商品3は丈が短く10代後半を中心とするギャル向け商品であるに対し,被告商品Cは細身の着丈の長いシルエットであって,上記よりは年長のOLが通勤などに着回して使えるものであって,実際の市場において,需要者にとり,原告商品3と被告商品Cが代替可能な商品の関係にあるものではないし,同一の商品と誤解されることも想定されない。
(オ)原告商品3と被告商品Cは,ワンポイント飾りが異なる。
原判決において,左胸部のワンポイント飾りについて,原告商品3と被告商品Cにおいて,抽象的に存在が共通する特徴とされたが,ワンポイント飾りの形態自体の差異が失念されている。
両商品におけるワンポイント飾りは,その有無や配置に独創性があるわけではなく,デザイン上の特徴は,専らワンポイント飾りの形状のみにあり,商品の購入者や商品に接する者は,その形状に最も注目し,これを最重要の要素としてとらえる。
原告商品3の蝶状に固着されたリボンと,被告商品Cの豪華で手の込んだエンブレムとは,その形状が全く相違するものであって,これらを抽象化して同一性ありとする原判決は,女性ファッションの現実を全くわかっていない。
そして,特殊なロゴを使用した被告商品Cのワッペンの創作,生産は,原告商品3における単なるリボンの蝶結びと異なり,ワッペン自体の商品開発に時間や費用を要するもので,商品開発に時間と費用を要する商品形態の改変に当たる。
(カ)被告商品Cは原告商品3に依拠していない。
レース使いは,女性ファッションの一大潮流として流行していたものであり,前開きフード付きのパーカーも定番商品であった。原告商品3も,定番のパーカーに流行のレースをあしらったものであり,流行の潮流の中にあった。
そして,原告商品3と,基本的シルエットが相違し,着脱可能なレースという機能の相違を考慮して総合的に考察すれば,被告商品Cは,当時のレース流行の潮流の下で,定番商品であるパーカーにレースを付したものとして開発されたものであり,無関係に開発されたものが,パーカーとして基本的な形態であったため,当時の流行のレース使いの潮流の下で,たまたま原告商品3と多少近似するデザインになったというにすぎない。
(キ)不正競争防止法2条1項3号は,他人が市場において商品化するために資金・労力を投下した成果の模倣が極めて容易に行い得る事態を念頭において立法化されたものであり,仮に,後行者の商品が先行者の商品に依拠して商品化したものとされたとしても,後行者が商品化のために資金・労力を投下して新たに形態を案出している場合には,先行者の開発費用にただ乗りしたという関係にはなく,先行者の商品と後行者の商品との間には,実質的同一性,依拠した関係は認められない。
仮に,被控訴人が,原告商品3に依拠して商品を開発したものとされたとしても,レースを着脱可能とすることは,その着想に時間を要するだけでなく,レースをボタン留めにするための加工や,ボタン留め位置や個数などを決めるに当たり,商品開発に格別の時間と労力を要するものであるし,デザイン指示書に寸法を細かく指示することにより,衣服のシルエットを指定することには,商品開発のために時間や費用を投下しなければできないし,被告商品Cのワンポイントの形態も,被被控訴人が,独自に開発したものである。
したがって,レースの着脱可能性の有無やデザイン指示書により細かく採寸されたシルエット等は,商品開発に時間と費用を要するもので,被告商品Cの開発,製造に当たって,原告商品3の存在により節減できる費用は想定されず,被告商品Cが先行者の開発費用にただ乗りしたという関係にはない。
イ控訴人の主張(ア)被控訴人は,証拠(乙120〜133)を提出して,原告商品3がありふれた形態である旨主張する。しかし,上記証拠により,パーカー,Gジャン又はキャミソールにレースを付したものがあったことは認められるが,特定の形態を有するパーカーにレースをパーカーの裾及び袖口部分の両方に内側から突出するように結合させた形態はみられず,原告商品3の特徴をすべて備えた商品は存在していない。原告商品3の形態は,特徴ある形態を有するものとしてファッションに厳しい需用者間において人気となったのであり,ありふれた形態ではない。被控訴人が,パーカーと,従来商品の一部分であるレース,金属ファスナー,ワンポイント等を適宜に組み合わせて原告商品3の形態がありふれた形態であると主張すること自体,原告商品3の形態が存在していなかったことによる。
(イ)原告商品3と被告商品Cの形態の実質的同一性について,被控訴人は,被告商品Cのレース及びワンポイント飾りが取外しできることをもって,実質的同一性を否定する。
しかし,被告商品Cの客観的形状は,グレーのフード付きパーカーであること,フードに付した紐はレースと同系の色であること,前あきの金属ファスナーを設けたこと,袖口及び裾に黒色のレース飾りを付したこと,さらに左胸にワンポイントを設けていることであり,原告商品3の形状及び色彩,質感と同一である。異なるのは左胸のワンポイントの模様が異なっている程度である。被告商品Cのレース及びワンポイント飾りを取り外し可能な機能は,原告商品3の形態を有した上で,二次的に取り外し機能を付加したにすぎないものであるから,被告商品Cの形態が原告商品3のそれと実質的同一性を否定する理由とならない。
また,被控訴人は,被告商品Cと原告商品3のシルエットの違いが実質的同一性に影響を及ぼす旨主張するが,被告商品Cが,原告商品3の形態を模倣している以上,両商品の身幅が多少異なっていても,形態の実質的同一性に何ら影響を与えるものではない。
さらに,被控訴人は,原告商品3の特徴を左胸のワンポイント飾りの形状のみである旨主張する。しかし,フード付きパーカーにレースを付ける際,パーカーの色調,レースを付する部位,パーカーの色彩と取り付けるレースの色彩との関係,レースの模様及び長さ並びにこれらの結合に関し需要者の購買層及び好みなど検討する項目は多数あり,控訴人は,これら項目の検討に時間と労力を費やして特徴的形態を有する原告商品3をデザインするに至ったものであるし,フード付きパーカーにその裾及び袖口にレース飾りを付した形態は,ありふれた形態として存在していない。したがって,原告商品3の特徴がワンポイント飾りの模様のみであるとする被控訴人の主張は誤りである。そして,ワッペンの模様はフード付きパーカーの全形態からすると,その一部においてわずかな違いにすぎない。
(ウ)被控訴人は,被告商品Cは,原告商品3に依拠せず,無関係に開発された旨主張する。しかし,被告商品Cの形態は,原告商品3の形態と同一であり,これに依拠して模倣したことは明白である。被控訴人が今回新たに提出した上記証拠(乙120〜133)は控訴審になってから入手した雑誌の記事であるから,これらを参考にして新たに被告商品Cを開発したことはあり得ない。被控訴人は,平成17年9月ころ被告商品Cのデザインを企画したと主張するが,そのような客観的証拠は何ら提出しないし,被告商品Cを平成17年12月8日に発注したことが明白である(乙61の1)ところ,原告商品3の販売時期を考慮すると,時期的にも,被控訴人は,原告商品3の形態に依拠して被告商品Cを作ったものである。
(5)争点2(損害の発生及びその額)についてア被控訴人の主張原判決は,損害の発生について,控訴人には,当初受注分以上に商品を製造・販売する能力がなかったとか,契約その他の制限があるために,当初受注分以上に原告商品を製造・販売することが不可能であったとの事情の存在がうかがわれないとする。
しかし,損害の発生については控訴人に主張立証責任があるところ,控訴人は,当初に量産された原告商品を完売した後に,原告商品を更に製造・販売する能力,可能性があったことにつき,具体的な主張・立証を行っていない。控訴人の商品生産は,受注生産方式であって,展示会における注文数について,製造を発注して店頭で販売するものであり,女性ファッションのシーズンや流行を考えれば,販売開始後の追加発注の可能性はない。したがって,被告商品の販売によって,原告商品の販売数量が影響を受ける可能性はなく,被控訴人の販売と控訴人の損害との因果関係はない。
原審においては,損害の発生につき,控訴人に対し被控訴人の主張に対する再反論が促されていたにもかかわらず,控訴人からの再反論がなかったことは,当初の量産終了後,控訴人が,追加の受注を受けて原告商品の追加生産をする能力,可能性がなかったことを示すし,控訴人代表者の陳述書(甲28)は,量産後は追加の発注を予定していないことを示し,控訴人提出の発注書(甲17)は,追加のオーダーが極めて例外で,本来の発注期間(展示会終了後3日間)終了後,実際の量産開始前の数日間しか予定されていないことを示す。
イ控訴人の主張被控訴人は,控訴人において原告商品を製造・販売する能力がなかった旨主張する。しかし,控訴人が,発注期間後追加のオーダーを受けないことを示す証拠は存在せず,需要者は,被告商品がなければ,当然,原告商品を発注し購入し,控訴人がこれに応じ当該数量を製造・販売したことは容易に推測される。
第3当裁判所の判断当裁判所の判断も,当審における当事者の主張に照らし,以下のとおり付加するほか,原判決の第4の1ないし3のとおり(ただし,原判決49頁13行目の「また,」から同19行目の「異なるものとなっている。」までを除く。)であるから,これを引用する。
1争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか)の被告商品Aに関する判断について(被控訴人附帯控訴部分)原判決は,控訴人の展示会が平成17年8月23日から開催されたことや被控訴人がインターネット等を通じて展示会に出品された商品を知り得ることなどを挙げて,被控訴人は,原告商品1に依拠して被告商品Aをデザインし,製造販売したと判断したのに対し,被控訴人は,控訴人の展示会は閉鎖的なものであること,原告商品1がインターネットを通じ公開された具体的な事実について指摘していないことなどを挙げて,被告商品Aは,原告商品1に依拠してデザインされたものでない旨主張する。
しかし,原告商品1は,平成17年8月23日から25日までの間開催された展示会に出品され,同年11月1日から販売されたところ,被控訴人のデザイナーから下請けメーカーに対するデザイン指示書の作成は同年11月17日であり,平成18年1月12日から被告商品Aが販売されている。
そして,控訴人の展示会は,顧客である卸売業者等を招待して行うものではあるが,招待状がない者でも入場できないわけではないことが記載された証拠(甲28)があるだけでなく,入場者数がごく少人数で,一人一人の入場者の身元を厳密に確認し,また展示内容を秘密にする義務を負わせているものとは認められないから,直接,又は,入場者が撮影した商品の写真をインターネットその他によって得るなどして間接に,被控訴人は,原告商品1に接する機会があったといえるのであり,そのことに,原告商品1と被告商品Aは実質的に同一であることや,被告商品Aの販売時期等を考えると,被告商品Aは,原告商品1に依拠してデザインされたものであると認めることが相当である。
被控訴人は,控訴人の展示会が閉鎖的である旨主張するが,上記のとおり,展示会の性質等を考慮しても,被控訴人が展示会の商品に接する機会がなかったとはいえないし,また,原告商品1がインターネットを通じ公開された具体的な事実を示す証拠がないとしても,直接又は間接に,被控訴人が原告商品1に接する機会があったといえることは上記のとおりであり,原告商品1と被告商品Aが実質的に同一であることなど上記の事実に照らせば,原告商品1がインターネットを通じ公開されたことが具体的に認められなくとも,上記認定を左右するものではない。
また,被控訴人は,原告商品1と被告商品Aは,レース業界の4分の1程度のシェアを占める協和レースが前開きの胴回り用に開発した幅広の既成のレースをたまたま採用したところ,女性ファッション界においてレース使いが大きな流行となっていて,原告商品1もこの潮流下における商品であり,自ら開発したものではない既成レースの当然に想定された使用方法の採用をもって,被告商品Aが原告商品1に依拠したものと認定することは妥当ではない旨主張する。
しかし,既成のレースを使用しても同一の形態の商品が開発されるとは限らないのであり,上記のとおり,原告商品1と被告商品Aは実質的に同一であることや,被告商品Aの販売時期等を考えると,被告商品Aは,原告商品1に依拠してデザインされたものであると認めることが相当であり,被控訴人が主張する既成のレースの使用やレースを使うことが流行であったことなどが,上記認定を左右するものではない。
したがって,被告商品Aが原告商品1に依拠してデザインされたものでないことをいう被控訴人の主張は採用できない。
2争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか)の被告商品Bに関する判断について(控訴人控訴部分)( )原判決は,原告商品2と被告商品Bが実質的に同一であると判断したのに1対し,被控訴人は,両商品に使用されているレースがいずれも協和レースから市販されていたレースであること,そのレースを本来の施し方に沿って,定番のノースリーブに使用したことなどから,レースの形態の共通性を理由として両商品の同一性が認めることはできない旨主張し,また,原告商品2と被告商品Bのシルエットが異なるとして,両商品が同一でない旨主張する。
不正競争防止法は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を禁止するところ,「模倣」とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい(同法2条5項),「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様等をいう(同条4項)。そして,商品の外部の形状等が同一であれば,同一の形態の商品とされるのであって,市販品を利用して作り出された形態が,具体的事実関係により,他人の商品に依拠したものではないなどとされることがあるとしても,外部の形状等が同一であるにもかかわらず,商品に市販品を使用したことによって,直ちに商品の形態の同一性が否定されるものではなく,被控訴人の主張は採用できない。なお,ノースリーブのノースリーブのシャツのV字型の開口部にレースを施すことは,商品の機能を確保するための不可欠な形態(同法2条1項3号括弧書)ではない。
また,洋服のシルエットが相違することにより,商品の形態の同一性が否定されることはあるが,シルエットの異なる度合いなども考慮し,その相違が商品の全体的形態に与える影響によって,形態の同一性を判断すべきところ,本件においては,原告商品2と被告商品Bについては,袖がなく(ノースリーブ),襟刳りが幅広でV字状に開いたシャツであり,生地は,白色で,身丈方向に縞模様状の凹凸があり,V字状の襟刳り部分に協和レース製の同じ白いレース編み布地を付しているという同一ないし共通点があるのに対し,シルエットに影響する相違点は,基本形状について,原告商品2は,全体が大きく長くゆったりとし,上から下まで同じ周囲のいわゆる寸胴型のデザインであるのに対し,被告商品Bは,全体が小さく短くほっそりとしていて,ウエスト部分が細くなっているというものである。そして,上記相違について,その程度を考慮すると,上記のような同一ないし共通点があり,それが商品の特徴的な点であるノースリーブのシャツの原告商品2と被告商品Bにおいて,上記の相違は,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見るとささいな相違にとどまると評価することが相当である。
したがって,原告商品2と被告商品Bの形態が同一でないことをいう被控訴人の主張は採用できない。
( )原判決は,被告先行商品の存在を理由に,被告商品Bは,原告商品2に依2拠したものでないとしたのに対し,控訴人は,被告先行商品が被告商品Bとは異なる印象を与えるものであること,被控訴人に模倣体質があることを挙げて,被告商品Bが原告商品2に依拠してデザインされたものである旨主張する。
確かに,被告先行商品と被告商品Bをみると,被告先行商品は,シャツの前面にロゴが付され,レースを襟ぐりの背面に施したものであるのに対し,被告商品Bは,シャツの前面にロゴを付すものではなく,レースを襟ぐりの前面に施したものであり,また,両商品に付されているレースは同じではないから,両商品には異なる点がある。
しかし,被告先行商品と被告商品Bは,シンプルなノースリーブのシャツの襟ぐりにレースを付していることで共通していて,被告商品Bに付されたレースは,被告商品Bの製造当時に,協和レースによって市販されているものであったこと,そのレースは,その形状から襟ぐりに施すことが考えられるものであったこと,ロゴの有無はその他のデザインとの関係で変更をすることが容易であることなどを考慮すると,被控訴人が,シンプルなノースリーブのシャツの襟ぐりにレースを付した被告先行商品を既に開発していたとき,市販されているレースを同様のノースリーブのシャツの襟ぐりに設け,被告商品Bをデザインすることが可能であったといえるのであり,被告商品Bが,原告商品2に依拠しているものであると認めることはできない。
また,被控訴人の商品には,被告商品A及びCのように,控訴人の商品の形態模倣していると認められるものもあるのであるが,そのことによって,被控訴人の商品がすべて他人の商品の形態を模倣しているものとなるものではなく,被控訴人の商品の中で,他人の商品の形態を模倣したものの割合も不明であり,他人の商品の形態を模倣した商品が存在していることを根拠として,被告商品Bにつき,原告商品2に依拠していると認めることはできない。
したがって,被告商品Bが原告商品2に依拠してデザインされたものであることをいう控訴人の主張は採用できない。
3争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか)の被告商品Cに関する判断について(被控訴人附帯控訴部分)( )原判決は,原告商品3の形態として,長袖,前あき金属ファスナー止めの1フード付きパーカーで,裾及び袖口の内側から突出するようにレース編み布地が付されていること,左胸部に黒色のワンポイント飾りがあることであり,これらは他の商品に見られるありふれたものでないとしたのに対し,被控訴人は,それらの特徴を備える商品は原告商品3以前に存在し,原告商品3は,それらの要素を当たり前の手法で組み合わせたにすぎず,原告商品3と被告商品Cとに実質的に同一性がない旨主張する。
しかし,不正競争防止法2条1項3号の規定によって保護される商品の形態とは,商品全体の形態である。そして,上記のような原告商品3の商品全体の形態について,原告商品3の前に,これと同様の形態が存在したとは認められず,また,同様の形態が存在しないことからも,その組合せが個性を有しないというものではないから,このような原告商品3の形態は,他の商品に見られるありふれたものではない。
被控訴人は,その個々の部分を取り上げて,それらの特徴を備える商品が存在したことやそれを当たり前の手法で組み合わせたものにすぎないとするのであるが,ここで問題となるのは,商品全体の形態が同一であるかどうかであり,個々の要素がありふれたものであることやその組合せが容易であるか否かではないから,ありふれた要素を当たり前の手法で組み合わせたにすぎないことに基づき原告商品3と被告商品Cとに実質的に同一性がないとする被控訴人の主張は,失当である。
( )被控訴人は,原告商品3と被告商品Cはレースの取外しができる点で異な2り,実質的に同一でない旨主張する。
被告商品Cは,袖口と裾口のレースがボタンによって取外し可能であると認められる。しかし,不正競争防止法において,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部の形状等及びその形状に結合した模様等をいう(不正競争防止法2条4項)ところ,被告商品Cにおいて,袖口及び裾口のレースを付けることは,需要者による通常の用法に従った使用ということができるのであるから,袖口及び裾口のレースを付けた状態の形状等を被告商品Cの形態ということができる。
被控訴人は,被告商品Cは,袖口及び裾口のレースが取り外しでき,レースを付けたもの以外は商品の形態に同一性がないことをいうのであるが,レースを付けた状態が通常の用法に従った使用であるといえる以上,その形態を被告商品Cの形態ということができ,被告商品Cのレースが取り外しできることによって,被告商品Cが,袖口及び裾口にレースを付けた上記形態を有するといえなくなるものではないから,被控訴人の主張は上記認定判断を左右するものではない。
なお,被控訴人の主張中には,はみ出すレースの長さ,面積の相違から,原告商品3と被告商品Cが実質的に同一でないと解される部分もあり,確かに,裾のレース部分について,原告商品3においては,衣服丈の下端部から下に約2センチメートル突出しているのに対し,被告商品Cにおいては,衣服丈の下端部から下に約3.8センチメートル突出しているのであるが,原告商品3と被告商品Cとの全体の形態を比較したとき,この相違は,その小ささからも,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見るとささいな相違にとどまると評価することが相当である。
( )被控訴人は,原告商品3と被告商品Cはシルエットが異なり,実質的に同3一でない旨主張する。
前記のとおり,洋服のシルエットの相違について,シルエットの異なる度合いなども考慮し,その相違が商品の全体的形態に与える影響によって,形態の同一性を判断すべきである。
原告商品3と被告商品Cは,長袖,前あき金属ファスナー留めのフード付きパーカーであり,生地は灰色であり,フードは黒いリボンで窄めることができ,衣服丈の下端部内側から数センチメートル突出するように,胴の周方向に黒色のレース編み布地が付され,両袖下端部内側から突出するように,袖の周方向に黒色のレース編み布地が付され,左胸部に黒色のワンポイント飾りが施されている点で共通する。
他方,被控訴人が主張するシルエットに関する部分については,原告商品3の方が身幅が広めで丈が長く,裾レースの突出量が被告商品Cの方が約1.8センチメートル長いなどの違いがあり,これらにより原告商品3と被告商品Cのシルエットは異なると認められる。
ここで,原告商品3と被告商品Cは,どちらも,上着として使用できるフード付きパーカーであって,身幅,丈の違い等の上記相違について,その程度を考慮すると,上記のような共通点があり,それが商品の特徴的な部分であるといえるフード付きパーカーの原告商品3と被告商品Cにおいて,上記相違点は,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見るとささいな相違にとどまると評価することが相当である。
また,被控訴人は,原告商品3は身幅が広めで上着としての着用に限られ,丈が短く10台後半を中心とする商品であるのに対し,被告商品Cはインナーとしてその上に更に重ねてコートやジャンパーも着用でき,細身の着丈の長いシルエットであって,10代後半より年上のOLなどが着回して着用できるものなど,使用目的などが異なり,代替可能な商品の関係にあるものではない旨主張する。
しかし,本件においては,商品の形態の同一性が問題となっていて,被控訴人が主張するシルエットの違いを考慮しても,商品の特徴的な部分の同一性から,原告商品3と被告商品Cの形態が実質的に同一であると認められることは上記のとおりであり,被控訴人主張は,上記認定判断を左右するものではない。
( )被控訴人は,原告商品3と被告商品Cはワンポイント飾りが異なり,実質4的に同一でない旨主張する。
しかし,ワンポイント飾りを付すか否かなどと比べ,そのワンポイント飾りの内容を相違させることは容易に着想できるものであり,改変の程度も,商品全体の形態との比較で小さな改変といえるものであり,ワンポイント飾りの内容の相違は,わずかな改変であって商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体からみてささいな相違にとどまると評価することが相当であるから,ワンポイント飾りが異なることを根拠として原告商品3と被告商品Cが実質的に同一でないことをいう被控訴人の主張は採用できない。
( )被控訴人は,被告商品Cは,原告商品3と無関係に開発されたものが,パ5ーカーとして基本的な形態であったため,当時の流行のもと,たまたま近似するデザインになったにすぎないとして,被告商品Cは原告商品3に依拠していない旨主張する。
しかし,原告商品3は,平成17年5月24日から26日までの間に開催された展示会に出品され,同年8月26日から販売され,被告商品Cは,同年12月22日から販売されたものである。
そして,当時洋服にレースを使うことが流行していたとしても,被告商品Cの形態が決して単純なものとはいえないこと,同商品のデザインがされる過程を裏付ける書証がないことに,被告商品Cの販売前に,被控訴人が原告商品3に接する機会があったこと,原告商品3と被告商品Cが実質的に同一といえるものであることを考慮すれば,被告商品Cは,原告商品3に依拠したものと認められる。
さらに,被控訴人は,不正競争防止法の趣旨から,仮に,後行者の商品が先行者の商品に依拠して商品化したものと認定したとしても,後行者が商品化のために資金・労力を投下して新たに形態を案出している場合には,先行者の開発費用にただ乗りしたという関係にはなく,先行者の商品と後行者の商品との間には,実質的同一性,依拠した関係は認めらず,被告商品Cの開発,製造に当たって,原告商品3の存在により節減できる費用は想定されず,被告商品Cが先行者の開発費用にただ乗りしたという関係にはない旨主張する。
しかし,被告商品Cは,原告商品3と実質的に同一の形態であり,それに依拠していると認められるから,被控訴人は先行者の開発した形態を利用しているといえるのであり,被控訴人の主張は採用できない。
4争点1(被告商品の製造・販売等は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか)の被告商品Dに関する判断について(控訴人控訴部分)( )原判決は,原告商品4と被告商品Dの形態の実質的同一性を否定したのに1対し,控訴人は,両商品の基本的形状は同一であること,原告商品4の最も顕著な特徴である見頃下の部分及び両袖(前腕部)に透かしレース部分が付されていることが同一であること,相違点はいずれもわずかな改変に基づくものであることなどを挙げて,原審の判断が誤りである旨主張する。
しかし,レースが付されている長袖カーディーガンにおいて,レースをどこに付すかや後身頃における生地とレース部分とのバランスは,商品の形態に変化を与える重要な要素といえるものであり,原告商品4と被告商品Dは,背面部における透かしレース部分の配置と生地とのバランスに顕著な相違があり,原告商品4と被告商品Dは,形態が実質的に同一であるということはできない。
控訴人は,原告商品4の最も顕著な特徴が被告商品Dにみられ,背面上部のレースを付さなくても全体的な印象に変化はないことなどをいう。しかし,原告商品4と被告商品Dが,カーディーガンの見頃下の部分や両袖に透かしレース部分が付されている点において共通しているとしても,そのような部分にレースを施すこと自体が保護されるのではなく,原告商品4の具体的な形態が保護されるのであり,レースが付されている長袖カーディーガンにおいて,背面上部にレースを付すか否かや後身頃における生地とレース部分とのバランスの顕著な相違は,商品の形態に変化を与えるものということができ,原告商品4と被告商品Dの形態が実質的に同一であるとはいえない。
( )原判決は,原告商品4の地とレースの色のコントラストがさほど強くない2が,被告商品Dはそのコントラストが強いと判断したのに対し,控訴人は,原告商品にも被告商品にもカラーバリエーションがあり,コントラストの強弱によって原告商品4と被告商品Dの実質的同一性を否定したことは誤りである旨主張する。
確かに,証拠(乙63の2,3,乙76の16,19,23)によれば,被告商品Dには,カラーバリエーションがあり,地とレースの色のコントラストは,そのカラーバリエーションによって異なるともいえるが,原告商品4と被告商品Dの地とレースの色のコントラストの強弱を考慮しなくとも,前記( )のとおり,レース1の施し方の顕著な違いなどから,原告商品4と被告商品Dの形態は,実質的に同一とはいえないものである。
したがって,原告商品4と被告商品Dの実質的同一性を否定できないことをいう被控訴人の主張は採用できない。
5争点2(損害の発生及びその額)について被控訴人は,被控訴人の販売と控訴人の損害との因果関係がない旨主張し,その根拠として,控訴人代表者の陳述書(甲28)は,量産後は追加の発注を予定していないことを示し,また,発注書(甲17)は,追加のオーダーが極めて例外で,本来の発注期間(展示会終了後3日間)終了後,実際の量産開始前の数日間しか注文が予定されていないことを示すとする。
しかし,それらの証拠によって,控訴人が,一般的に展示会の直後に注文を受け付けていたことなどが認められるとしても,当初受注後に,控訴人が新たに原告商品を製造・販売することが,契約上又は事実上,不可能であったとの事情を認めることはできないのであり,被控訴人の販売と控訴人の損害との間に因果関係がないことをいう被控訴人の主張は理由がない。
その他,被控訴人は,原審における訴訟経過などをいい,被控訴人の販売と控訴人の損害との間に因果関係がないことをいうが,被控訴人主張のような訴訟経過があるとしても,前記引用に係る原判決の第4の2( )及び上記説示に照らし,被控2訴人の主張を採用することができない。
6以上によれば,控訴人による本件控訴及び被控訴人による本件附帯控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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