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事件 |
平成
15年
(ワ)
6580号
損害賠償請求事件
平成 16年 (ワ) 6175号 同請求事件 |
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原告(反訴被告) 株式会社ファイン 訴訟代理人弁護士 丸山英敏 同 白井正明 同 白井典子 被告(反訴原告) 株式会社再春館薬品 被告 株式会社ユーワ 被告(反訴原告)株式会社再春館薬品、被告株式会社ユーワ訴訟代 理人弁護士 鹿内コ行 同 片岡理恵子 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2004/12/16 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告(反訴原告)株式会社再春館薬品は、原告(反訴被告)に対し、150万円及びこれに対する平成15年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告(反訴被告)の被告(反訴原告)株式会社再春館薬品に対するその余の請求及び被告株式会社ユーワに対する請求をいずれも棄却する。 3 被告(反訴原告)株式会社再春館薬品の反訴請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを5分し、その2を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告(反訴原告)株式会社再春館薬品の負担とする。 5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 本訴 (1) 本訴請求の趣旨 ア 被告(反訴原告)株式会社再春館薬品(以下「被告再春館薬品」という。)及び被告株式会社ユーワ(以下「被告ユーワ」といい、被告再春館薬品及び被告ユーワを合わせて「被告ら」という。)は、原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し、各自1億円及びこれに対する平成15年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ 訴訟費用は被告らの負担とする。 ウ 仮執行宣言 (2) 本訴請求の趣旨に対する答弁 ア 原告の請求をいずれも棄却する。 イ 訴訟費用は原告の負担とする。 2 反訴 (1) 反訴請求の趣旨 ア 原告は、別紙原告商品目録記載の商品を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し若しくは輸入してはならない。 イ 原告は、別紙原告商品目録記載の商品を廃棄せよ。 ウ 原告は、被告再春館薬品に対し、5881万1309円及びこれに対する平成16年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ 訴訟費用は原告の負担とする。 オ 仮執行宣言 (2) 反訴請求の趣旨に対する答弁 ア 主文第3項同旨 イ 訴訟費用は被告再春館薬品の負担とする。 |
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当事者の主張
1 本訴請求原因 (1) 当事者 ア 原告は、総合ビタミン剤、ハトムギ加工食品、清涼飲料水、乳製品(発酵飲料)、お茶(ハトムギ茶、緑茶、紅茶)の製造販売などを業とする株式会社である。 イ 被告再春館薬品は、薬局の経営、医薬品の製造、輸入及び販売、ビタミンなどの栄養素を補給した栄養補助食品の製造及び販売などを業とする株式会社である。 被告ユーワは、外国からの食料品の輸入、食料品及び日用雑貨等の販売、薬局、調剤及び医薬品の販売などを業とする株式会社である。 被告再春館薬品の代表者と被告ユーワの代表者は親族である。 (2) 原告商品の販売 原告は、平成14年11月下旬から別紙原告商品目録記載の商品(以下「原告商品」という。)を販売し、平成15年1月9日、テレビで、中華人民共和国江蘇省鎮江市原産の米酢である「香醋」が紹介された後、急激に売上げを伸ばした。 (3) 被告商品の販売 被告らは、平成14年6月から別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を販売していた。 (4) 競争関係 原告は、香醋を原料とする清涼飲料水である原告商品を販売し、被告らは、香醋である被告商品を販売しているから、原告と各被告は、不正競争防止法2条1項14号にいう「競争関係」にある。 (5) 形態模倣の有無 ア 原告商品、被告商品の形態 原告商品及び被告商品の形態を文言により特定すると、別紙特定原告案記載のとおりである。 イ 形態の比較 (ア) 原告商品の形態と被告商品の形態を比較すると、次のとおりである。 a パッケージ @ パッケージの材質及び大きさについて 原告商品と被告商品のパッケージはいずれもボール紙製の縦長の直方体(底面は正方形)であるが、それは瓶の大きさに合わせての収納の仕方から見て当然の帰結であり、形態の比較判断の対象にすることは相当ではない。 パッケージの大きさは、原告商品は高さが25.3cm、横が7cmであり、被告商品は高さが25cm程度、横が7.5cmである。 原告商品も被告商品も、パッケージの大きさは瓶の大きさに合わせているため、容量500mlの瓶を収納するパッケージの大きさはほぼ近似しており、他社の同種商品の場合も同じであり、その点の形態は収納する瓶の形態と大きさに依存しており、それを形態の比較判断の対象にすることは相当でない。 A パッケージの基調となる色彩について 原告が製造販売している商品のデザインは、いずれも赤と黄が基調となっているところから、原告商品のパッケージの上部は赤色、中央と下部は淡いむらをもたせた赤色を枠とし、その中に主要な白色部分が形成されているものであり、赤色部分が正面と背面で50%程度以下、側面では20%程度であり、白色部分が目立つ。これに対し、被告商品は、パッケージの下地かつ基調となっている色は文字と図柄部分を除いてほとんどが赤色で、この赤色が消費者に強い印象を与えている。 原告商品は、白色の下地の上に、黒色の文字と赤色の文字を配し、赤色の下地の上に白で縁取りした斜めに記載した黒色文字と黄色の飾り絵が印刷されているのに対して、被告商品は、赤色の下地の上に黒色、黄色、白色及び紫色で文字ないし飾り絵が印刷されている。 B パッケージの正面と裏面の図柄について 原告商品は、正面と裏面は同一であるが、被告商品は、前面の「美味」(漢字)の部分が裏面では「おいしい」(ひらがな)であり、漢字とひらがなの点で異なる。 C 「美味」、「香醋」の記載について 原告商品は、正面と裏面の赤色枠の中央やや上寄りの場所に、金色の枠に囲まれた隅きりのある長方形の白色の下地部分に強調された大きな黒色太文字の縦書きで2文字の漢字「香醋」の文字が記載され、「香醋」の読みが「こうず」である旨の縦書きのひらがなの小文字が記載されている。そして、その上に横書きで2文字の漢字「美味」の文字が記載されている。その「香醋」の右横に小さい赤色の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載され、同市の原産の香醋を使用している製品であることを明記している。 これに対して被告商品は、正面の中央やや上寄りの場所に、小さな丸型の白色の下地囲みをバックに、大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載され、この上部赤色部分に「香醋」の文字よりやや小さい大きさの縦書きの黒色文字の漢字2文字「美味」の文字が記載されているが、「香醋」の読み方の記載はない。背面も同様であるが、この上部赤色部分に「香醋」の文字よりやや小さい大きさの縦書きの黒色文字のひらがな4文字「おいしい」の文字が記載されている。そして、「美味」、「おいしい」の右横に小さい字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と産地名が黒文字で記載され、その横に縦長の黄色地に、黒文字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されている点で、原告商品と配置関係が異なり、この点で、原告商品と被告商品は顕著に異なる。 なお、原告商品は清涼飲料水であるから、そのまま飲むもので、 「おいしく」飲みやすい。被告商品は「香醋」そのものであって飲みにくく、「おいしい」とはいえない。被告商品の「美味」、「おいしい」は実態を反映していない。実際にアミノ酸を加えていないのに「配合」と記載するのは表示違反である。 D パッケージの正面、裏面の他の図柄について 原告商品は、正面及び背面の赤色下地の上下2部分に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる絵柄の「龍」が黄色で描かれ、上部には「ファイン」と黒色で製造販売業者名を明記している。 これに対し、被告商品は、正面及び背面の基調である赤色下地の上に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる絵柄「鳳凰」が2匹白色で描かれているところから、相違が明確であり、この点で原告商品と被告商品は顕著に異なる。 原告商品も被告商品も商品の内容量である「500ml」という記載があるが、それは数量の表示が欠かせないことによるものであり、また、被告商品には「本格醸造」と付記されているが、その点は、同一性判断のための比較の要件とすべきではない。 また、原告商品の正面及び背面の各下部には、白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にした10文字程度の「17種の豊富なアミノ酸」、 「天然の豊富なクエン酸」、「お料理に!ドリンクに!」という短いキャッチコピーが3行斜めに記載されているのに対し、被告商品には、正面及び背面の各下部に、白抜きの上に赤文字の「おいしく」、黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にした「りんごジュースに」、「スポーツドリンクに」、「ドレッシングに」、「ぎょうざに」の4ないし9文字程度の短いキャッチコピーが横書きで複数行記載されているが、前者は成分表示が主であり、後者は使用方法についての記載であり、内容が異なり、その相違は明白に区別することができ、この点において顕著に異なる。被告商品は、成分表示について正面及び背面に、紫色抜きで白色文字で「アミノ酸は黒酢よりも豊富」及び「更に注目のクエン酸も含有」と「香醋」の成分を宣伝している。 E 「鎮江」原産の「香醋」の歴史の記載等について 原告商品と被告商品には、香醋の歴史についての記載があるが、 香醋を紹介する上で欠かせない記載であり、その存在を比較判断の対象にすることは相当でない。原告商品と被告商品とで、歴史の記載の表現は異なる。 「お召し上がり方」については、原告商品は清涼飲料水でそのまま飲むのが原則で、酸味が強く感じられる場合についてのみ注意書きをしている。 それに対し、被告商品は「香醋」そのものであって飲みにくく、「おいしい」とはいえないので、薄めて飲むか、ジュース、スポーツドリンクなどに入れて飲むことを明記しており、この点において顕著に異なっている。 F 成分表示等について 原告商品は、財団法人日本食品分析センターの分析に係る含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸」の組成表を明記しているが、被告商品にはそのような「栄養成分表示」、「アミノ酸組成」は記載されていない。なお、商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造者名等)は原告商品にも被告商品にも記載されているが、これは法律の規制上当然のことであり、同一又は類似の根拠とはならない。 G 絵模様について 原告商品は、パッケージの上下と隅きりのある長方形の白色の下地部分の枠に緑と青の絵模様を配置してあるが、被告商品にはそれはなく、この点において顕著に異なっている。 b 瓶 @ 瓶の大きさ 瓶がボルドー型ワインボトル型であること、容量が500mlであることは同様であるが、原告商品と被告商品の瓶は、型の形状が異なる。 原告商品の瓶は、本体、キャップとも、原告が平成10年8月ころからノンアルコールワインであるペリナ赤ワインに使用し、その後ペリナザクロワイン、ペリナブルーベリーワインなどに使用しているものと同じであり、「香醋」専用に製造したものではない。キャップは、原告商品はアルミ製であるが、被告商品はプラスチック製であり、原告商品の方が高級感があり、原告商品の瓶は原告が独自に製造してきた日本製の瓶であり、被告商品の中国製の瓶の模倣ではない。 A 瓶のラベルの大きさ 瓶のラベルの大きさは、500ml瓶の場合、ほぼ同じ大きさであり、原告商品のラベルの大きさは、同一の瓶を使用した他の商品のラベルと同じであって、ラベルの大きさが同じであることは、同一又は類似の根拠とはならない。 B ラベルの絵柄 貼られているラベルは基本的にはパッケージの正面の図柄と同様であり、原告商品は淡い赤色が枠下地になっており、上部に「ファイン」と製造販売業者名が明記され、その左上と右下に中国を連想させる絵柄の「龍」が黄色で描かれているのに対し、被告商品は赤色が基調かつ下地になっているが、赤色下地にはパッケージに表示された鳳凰の図柄が存せず、この点において原告商品と顕著に異なっている。 C ラベルの正面中央 原告商品のラベルの正面中央部分には、金色の枠に囲まれた隅きりのある長方形の白色部分に大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載され、その上には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色文字の横書きの漢字2文字「美味」の文字が記載されており、この「香醋」が目を引くように記載されている。また、ラベルの上下と隅きりのある長方形の白色の下地部分の枠に緑と青の絵模様を配置してある。 被告商品のラベルの正面中央部分には、下地として丸型の白色囲みをバックに敷くことによって強調された大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が、この丸型の上には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色文字の漢字2文字「美味」の文字が記載されている。 D ラベルの正面右上 原告商品のラベルの正面の白色部分内の右上の箇所には、小さい文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載され、同市が原産の香醋を使用している旨明示されているのに対し、被告商品のラベルの正面から見て右上の赤色部分には、小さな字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と黒文字で記載され、その記載内容が異なるとともにその横に縦長の黄色地に黒字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されており、色彩の配置が異なり、この点において顕著に異なる。 E ラベルの側面 被告商品のラベルの側面には、商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)と「お召し上がり方」の記載しかないが、原告商品にはほかに財団法人日本食品分析センターの分析に係る含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸」の組成表を記載してある。 F 内容物 内容物は、原告商品が清涼飲料水、被告商品が「香醋」そのものである。 (イ) 形態の類似の有無 上記(ア)記載のとおり、被告商品と原告商品は、パッケージ、瓶のラベルの図柄、色彩等が異なっており、形態は類似していない。 ウ 形態模倣の有無 上記イ(イ)記載のとおり、被告商品と原告商品は、形態が類似していないから、原告商品は被告商品の形態を模倣した商品に該当せず、原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争には該当しない。 (6) 被告再春館薬品による虚偽事実の告知、流布 ア 事実の告知、流布 (ア) 被告再春館薬品は、原告に対し、平成15年3月4日ころ、原告商品が被告商品の形態を模倣した商品であり、原告商品の販売は不正競争防止法上の不正競争に該当するとし、原告商品の製造を中止するように要求する同月3日付け警告書(以下「平成15年3月3日付け警告書」という。)を送付した。 (イ) 被告再春館薬品は、平成15年3月8日ころ、原告の取引先である株式会社ツルハ、株式会社ダイエー、株式会社龍生堂、株式会社サンドラッグ、株式会社カワチ薬品、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヒノミ薬品、株式会社ハックキミサワ、セガミメディック株式会社、株式会社グリーンクロスコア、株式会社太陽に対し、「事務連絡」と題する平成15年3月7日付け書面(以下「平成15年3月7日付け事務連絡」という。)を、同月3日付け警告書の写しを添付して送付した。同月7日付け事務連絡には、原告商品は模倣品であると認識しており、同月3日付け警告書記載のように、原告商品の販売の中止を要求し、場合によっては法的手続を取る所存である旨が記載されていた(以下、被告再春館薬品が原告の取引先に対して平成15年3月3日付け警告書の写しを添付して同月7日付け事務連絡を送付したことを、被告再春館薬品の「事務連絡送付行為」という。)。 (ウ) 被告再春館薬品の事務連絡送付行為は、原告による原告商品の販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当することを告知又は流布したことに該当する。 イ 虚偽事実 前記(5)ウ記載のとおり、原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争には該当しないから、原告による原告商品の販売が同不正競争に該当するということは、虚偽の事実に該当する。 ウ 信用毀損 原告による原告商品の販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当しないにもかかわらず同不正競争に該当するという虚偽の事実は、原告の営業上の信用を害する。 エ 不正競争、不法行為 被告再春館薬品の事務連絡送付行為は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布に該当し、不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する。また、不正競争に該当しないとしても、不法行為に該当する。 (7) 被告ユーワによる虚偽事実の告知、流布 ア 事実の告知、流布 (ア) 被告ユーワは、平成15年3月7日ころ、原告の取引先に対し、原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当する旨述べて、 原告商品の購入を取りやめるように働きかけた(以下、被告ユーワが平成15年3月7日ころ、原告の取引先に対し、原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当する旨述べたことを、被告ユーワの「通告行為」という。) (イ) 被告ユーワの通告行為は、原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当することを告知又は流布したことに該当する。 イ 虚偽事実 前記(5)ウ記載のとおり、原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当せず、その他の不正競争にも該当しないから、原告による原告商品の販売が不正競争に該当するということは、虚偽の事実に該当する。 ウ 信用毀損 原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当しないにもかかわらず不正競争に該当するという虚偽の事実は、原告の営業上の信用を害する。 エ 不正競争、不法行為 被告ユーワの通告行為は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布に該当し、不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する。また、不正競争に該当しないとしても、不法行為に該当する。 (8) 故意過失 ア 前記(6)エ記載の不正競争、不法行為を行うにつき、被告再春館薬品には故意又は過失があった。 イ 前記(7)エ記載の不正競争、不法行為を行うにつき、被告ユーワには故意又は過失があった。 被告らは、被告再春館薬品が材料(香醋)不足のために増産はもとより生産もできなかったにもかかわらず、原告商品の売上げが急増したことから、原告に対しては商品形態模倣商品と警告し、原告の取引先に対しては事務連絡送付行為及び通告行為を行ったものであり、被告らには故意過失があり、違法性も免れない。 (9) 営業上の利益の侵害 ア 被告再春館薬品による前記(6)エ記載の不正競争により、原告の営業上の利益が侵害された。 イ 被告ユーワによる前記(7)エ記載の不正競争により、原告の営業上の利益が侵害された。 (10) 共同不法行為 被告再春館薬品の前記(6)エ記載の不正競争、不法行為と、被告ユーワの前記(7)エ記載の不正競争、不法行為は、共同不法行為を構成する。 (11) 損害 ア 逸失利益 (ア) 原告が原告商品の販売により得た売上げ、利益、1日当たりの利益は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為の前においては、次のとおりであった。 期間 売上げ 利益 1日当たりの利益 平成15年1月 1494万8232円 388万6540円 12万7390円 同年2月 3312万7390円 861万3121円 30万7611円 同年3月1日 ないし同月5日 868万6050円 225万8373円 45万1674円 (イ) 原告が原告商品の販売により得た売上げ、利益、1日当たりの利益は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為の後においては、次のとおりであった。 期間 売上げ 利益 1日当たりの利益平成15年3月6日ないし同月31日694万8980円 180万6734円 6万9489円 同年4月 549万4682円 142万8617円 4万7620円 同年5月 454万6972円 118万2213円 3万8135円 同年6月 591万8298円 153万8757円 5万1291円 同年7月 621万7620円 161万6581円 5万2147円 同年8月 355万5600円 92万0445円 2万9821円 同年9月 496万4702円 129万0823 円 4万3027円 (ウ) 原告が原告商品の販売により得る利益は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為があったことにより、1日当たり40万円減少したから、原告は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為により、1日当たり40万円の得べかりし利益を失った。 原告は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為がなければ、平成15年3月6日から少なくとも1年間、従前どおりの利益を得られていたから、原告は、被告らの不正競争又は不法行為により、少なくとも1億4600万円(40万円×365日=1億4600万円)の得べかりし利益を失うという損害を受けた。 イ 信用毀損 原告は、約30年間にわたり、既に販売を取りやめたものを含めて300種類以上の健康食品を販売しており、原告の商品は全国の百貨店、薬店、スーパー等で販売されている。原告は、被告らの不正競争又は不法行為により、これまで築いてきたブランドイメージが傷つけられ、信用が毀損された。信用毀損による損害は、金銭に換算すると3000万円を下らない。 ウ 損害額 原告が被告らの不正競争又は不法行為によって被った損害は、逸失利益1億4600万円と信用毀損による損害3000万円の合計1億7600万円を下らないが、原告は、そのうち1億円を請求する。 (12) 結論 よって、原告は、被告らに対し、不正競争防止法2条1項14号、4条又は民法709条、710条、719条に基づき、各自1億円及びこれに対する不正競争、不法行為の後である平成15年7月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 本訴請求原因に対する認否 (1) 本訴請求原因(1)(当事者)ア、イの事実は認める。 被告再春館薬品の代表者と被告ユーワの代表者は親族であるが、各々独立して別個の業務を行っている。 (2) 本訴請求原因(2)(原告商品の販売)の事実のうち、原告が原告商品を平成15年2月23日以降販売していたこと、同年1月9日、テレビで、中華人民共和国江蘇省鎮江市原産の米酢である「香醋」が紹介されたことは認めるが、その余は不知。 (3) 本訴請求原因(3)(被告商品の販売)の事実は認める。 (4) 本訴請求原因(4)(競争関係)は認める。 (5)ア 本訴請求原因(5)(形態模倣の有無)ア(原告商品、被告商品の形態)は争う。 後記3(1)ア記載のとおり、原告商品及び被告商品の形態は、別紙特定被告案記載のように、文言により特定される。 イ 本訴請求原因(5)イ(形態の比較)(ア)、(イ)は争う。 後記3(1)イ(イ)記載のとおり、原告商品の形態と被告商品の形態は酷似している。 ウ 本訴請求原因(5)ウ(形態模倣の有無)は争う。 後記3(1)カ記載のとおり、原告が原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当する。 (6)ア 本訴請求原因(6)(被告再春館薬品による虚偽事実の告知、流布)ア(事実の告知、流布)(ア)ないし(ウ)は認める。 イ 本訴請求原因(6)イ(虚偽事実)は争う。 後記3(1)カ記載のとおり、原告が原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当するから、原告による原告商品の販売が同不正競争に該当するということは、真実であり、虚偽の事実に該当しない。 ウ 本訴請求原因(6)ウ(信用毀損)は争う。 エ(ア) 本訴請求原因(6)エ(不正競争、不法行為)は争う。 被告再春館薬品の事務連絡送付行為は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布に該当せず、不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当しない。また、不法行為にも該当しない。 (イ) 競争者の行為が不正競争防止法上の不正競争に該当することを、その競争者の取引先に告知することは、後日行われる訴訟により、競争者の行為が不正競争防止法上の不正競争に該当しないと判断されたとしても、告知者において、 告知行為の当時、不正競争に該当しないことを認識していたか、又はこれを認識しないことに過失があり、かつ告知の内容、態様が公序良俗に反するなど特段の事情があるときでない限り、違法性を帯びることはない。 本件において、仮に、後日行われる訴訟により、原告による原告商品の販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当しないと判断されたとしても、被告再春館薬品は、事務連絡送付行為の当時、不正競争に該当しないことを認識していたということはないし、これを認識しないことに過失もなく、かつ告知の内容、態様が公序良俗に反するなど特段の事情も存在しない。したがって、被告再春館薬品の行った告知行為が違法性を帯びることはない。 (7)ア 本訴請求原因(7)(被告ユーワによる虚偽事実の告知、流布)ア(事実の告知、流布)(ア)の事実は否認し、(イ)は争う。 イ 本訴請求原因(7)イないしエは争う。 (8) 本訴請求原因(8)(故意過失)ア、イは争う。 (9) 本訴請求原因(9)(営業上の利益の侵害)ア、イは争う。 (10) 本訴請求原因(10)(共同不法行為)は争う。 (11) 本訴請求原因(11)(損害)アないしウは争う。 3 反訴請求原因 (1) 不正競争 ア 原告商品、被告商品の形態 原告商品及び被告商品の形態を文言により特定すると、別紙特定被告案記載のとおりである。 イ 形態の比較 (ア) 原告商品の形態と被告商品の形態を比較すると、次のとおりである。 a パッケージの同一点又は類似点 @ 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、ボール紙製の縦長の直方体(底面は正方形)の箱形パッケージである。 A 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、そのサイズは、高さが25cm程度、底面の縦と横は同じ長さで、ともに7cm程度である。 B 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、パッケージの下地かつ基調となっている色は赤色で、この赤色が消費者に強い印象を与えており、この赤色の下地の上に黒色、黄色、白色で文字ないし飾り絵が印刷されている。 C 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面の中央やや上寄りの場所に、下地として白色囲みをバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載されており、その上には「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色文字の漢字2文字「美味」の文字が記載されており、この「美味 香醋」がパッケージの中で最も消費者の目を引く部分となっている。 D 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その背面の中央やや上寄りの場所にも、下に白色囲みを敷くことによって強調された大きな黒色太文字の縦書漢字2文字「香醋」の文字が記載されている。 E 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その上面の中央に、大きな黒色太文字の横書漢字2文字「香醋」の文字が記載され、その脇には「香醋」の文字より小さい大きさの黒色文字の横書漢字2文字「美味」の文字が記載されている。 F 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面の各右上の箇所に、小さい文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市」と記載され、同市が原産の香醋である旨明示されている。 G 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面の中央部付近に、「香醋」の読みが「こうず」である旨示すべく、縦書きのひらがなで「こうず」とふりがなが記載されている。 H 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面に、中央の「香醋」の文字を引き立てるように、基調である赤色下地の上に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる絵柄(龍又は鳳凰)が描かれている。 I 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面の右下に、小さい字で黒色文字の横書算用数字と英語で、商品の内容量である「500ml」との記載がある。 J 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面に、「アミノ酸」及び「クエン酸」の名称を挙げて「香醋」の効能を宣伝している。 K 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面の各下部には、白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にした9文字程度の短いキャッチコピーが複数行記載されている。 L 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その一方の側面に、「香醋」が「鎮江」原産の古い歴史を有するものであり、もち米がカメの中で熟成発酵されて製造されるものであり、健康に良いものであること等を述べた説明書の文章、並びに「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることが記載されている。 M 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、上記Lの側面とは反対側の側面に、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸」の表、及び商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)が記載されている。 N 被告商品のパッケージも原告商品のパッケージもともに、その正面及び背面には、高級感を醸し出すべく若干量の金箔が使用されている。 b 容器(瓶)の同一点又は類似点 @ 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶であって、その形は、底面は円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型である。 A 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、その大きさは、高さが25cm程度、底面の直径が7cm程度である。 B 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、その容量は500mlである。 C 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶の胴体部分は円筒型で、胴体部分の中央部分には瓶に沿って紙製のラベルが貼られている。 D 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶に貼られているラベルの大きさは、横(円筒の周囲)が16cm、縦(高さ)が9cm程度である。 E 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶に貼られているラベルの色は、赤色が基調かつ下地になっている。 F 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶に貼られているラベルの正面中央部分には、下地として白色囲みをバックに敷くことによって強調された大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載されており、その上には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色文字の漢字2文字「美味」の文字が記載されており、この「美味 香醋」がラベルの中で最も消費者の目を引く部分となっている。 G 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶のラベルの正面から見て右上の箇所に、小さい字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市」と記載され、同市が原産の香醋である旨明示されている。 H 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、瓶に貼られているラベルの側面には、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名称及びその量を表記した「アミノ酸」の表、商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)、及び「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることが記載されている。 I 被告商品の容器も原告商品の容器もともに、内容物は黒色液体である。 (イ) 被告商品と原告商品は、上記のように同一の形態的特徴を多数有しており、他方、形態の相違点は極めて微細な箇所にすぎないから、実質的に同一の形態といえる。 ウ 発売の先後 被告商品は平成14年6月から販売され、原告商品は原告の主張によっても同年11月から販売されたから、原告が、被告商品の存在を知り、その形態及びデザインに着想を得て原告商品の開発、販売を開始したことは明らかである。 エ デザイン作成の経緯 原告商品の包装箱及びラベルのデザイン作成の経緯を立証するために原告が提出したデザイン履歴資料(甲第28号証)には、@デザイン開始日時が平成14年(2002年)10月23日午後4時50分で、第3案の終了日時が同日の午前10時05分になっていること、A一般にデザインの制作手順は、包装箱のデザインを作成してからラベルのデザインを作成するものであるが、原告商品については逆になっていること、B原告商品と同じく原告の商品である「もろみ酢」のデザイン履歴資料(甲第27号証)ではいくつかのデザインを作成してその中から最終的な案を決めているのに対し、原告商品のデザイン履歴資料では、背景色を変えただけなど簡単な案を3種類しか提示していないこと、など不自然な点があり、デザイン履歴資料のとおり原告商品がデザインされたとはいえない。 オ 模倣の有無 前記イ(イ)記載のとおり、原告商品の形態と被告商品の形態が酷似していること、前記ウ記載のとおり、原告が被告商品の存在を知り、その形態及びデザインに着想を得て原告商品の開発、販売を開始したこと、前記エ記載のとおり、原告商品が原告の提出したデザイン履歴資料のとおりデザインされたとはいえないことから、原告商品は、被告商品の形態を模倣した商品に該当する。 カ 不正競争 したがって、原告が原告商品を販売することは、不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当する。 (2) 故意過失 上記(1)カ記載の不正競争を行うにつき、原告には故意又は過失があった。 (3) 営業上の利益の侵害 原告による前記(1)カ記載の不正競争により、被告再春館薬品の営業上の利益が侵害された。 (4) 損害 ア 原告の受けた利益 (ア) 原告が平成15年1月から同年9月までの9か月間に原告商品の販売により得た売上げは9440万8526円、利益は2454万2204円であり、1か月当たりの利益は272万6911円である。 (イ) 原告は、原告商品の販売により、平成14年11月下旬から平成16年5月末までの19か月間に、5181万1309円(272万6911円×19か月=5181万1309円)の利益を得た。 イ 弁護士費用 被告再春館薬品は、反訴の訴訟追行を弁護士に委任せざるを得なかったものであり、原告の不正競争と相当因果関係にある損害としての弁護士費用は、700万円である。 ウ 損害額 被告再春館薬品が原告の不正競争によって被った損害は、原告の受けた利益5181万1309円と弁護士費用700万円の合計5881万1309円である。 (5) 結論 よって、被告再春館薬品は、原告に対し、不正競争防止法2条1項3号、 4条、5条2項に基づき、5881万1309円及びこれに対する不正競争の後である平成16年6月9日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 4 反訴請求原因に対する認否 (1)ア 反訴請求原因(1)(不正競争)ア(原告商品、被告商品の形態)は争う。 前記1(5)ア記載のとおり、原告商品及び被告商品の形態を文言により特定すると、別紙特定原告案記載のとおりである。 イ(ア) 反訴請求原因(1)イ(形態の比較)(ア)、(イ)は争う。 前記1(5)イ(イ)記載のとおり、被告商品の形態と原告商品の形態は類似していない。 (イ) パッケージと瓶の大きさ及び形態について 500ml瓶の大きさの瓶を入れるパッケージの寸法は、当然それに合うパッケージの大きさになり、何らの特異性はない。しかも、原告が使用する500ml瓶は規格品であり、原告においては平成10年8月ころから製造設備を設けてワインなどの容器として製造し、かつこの500ml瓶専用の無菌充填設備を設置して稼働させているものである。そして、この瓶は「香醋」の瓶に限らず、原告の商品である各種ワイン、もろみ酢、果汁の瓶にも使用しており、中国産の瓶を使用している被告より以前に、原告が日本で製造し、利用している瓶である。また、原告商品の瓶のラベルのサイズは、他の商品の瓶に使用しているラベルと同一サイズである。 (ウ) パッケージとラベルの色について 原告の販売している商品のパッケージとラベルは、食品に使用している基礎色である赤と黒、黄、白、青の色を使用しており、その中でも赤系統が多い。原告商品は赤と白が基調であるが、被告商品は赤が基調であり、しかも、原告商品の赤と被告商品の赤は色調が異なる。中国の香醋について、赤は通常用いられている色であり、原告商品が赤を使用していることをもって、被告商品の色彩を模倣したとはいえない。 (エ) 「美味」、「香醋」の文字について 原告は、「美味香醋」は普通名称であると思料し、平成15年3月17日、清涼飲料水を指定商品として、「美味香醋」という商標を商標登録出願した。しかし、この商標は、「美味香醋」の文字を普通に用いられる方法で書しており、「美味」は味がよいことを意味し、「香醋」は江蘇省鎮江産の米を原料とする香り高い酢の意味であり、取引者、需要者は、「味がよい香醋」の意味に理解し、 単に商品の原材料を表示するにすぎないものである。そのため、その商標登録出願は、商標法3条1項3号により拒絶査定を受けた。 (オ) 原告商品は、全体として、被告商品と図柄、色彩及び構図によって峻別することができ、被告商品と酷似しておらず、形態模倣に該当しない。 ウ 反訴請求原因(1)ウ(発売の先後)のうち、被告商品が平成14年6月から販売されたことは認め、その余は争う。 エ 反訴請求原因(1)エ(デザイン作成の経緯)は争う。 原告商品のデザインは、デザイン履歴資料(甲第28号証)のとおりに作成された。ただし、甲第28号証の4枚目の「デザイン終了日時」の「2002.10.23」は、「2002.10.28」のミスタイプである。 オ 反訴請求原因(1)オ(模倣の有無)は争う。 カ 反訴請求原因(1)カ(不正競争)は争う。 (2) 反訴請求原因(2)(故意過失)は争う。 (3) 反訴請求原因(3)(営業上の利益の侵害)は争う。 (4)ア(ア) 反訴請求原因(4)(損害)ア(原告の受けた利益)(ア)の事実は認める。 (イ) 反訴請求原因(4)ア(イ)の事実は否認する。 被告再春館薬品は材料(香醋)不足のために被告商品を生産することができなかったから、不正競争と被告再春館薬品の損害との間に因果関係はない。 イ 反訴請求原因(4)イ(弁護士費用)は争う。 ウ 反訴請求原因(4)ウ(損害額)は争う。 理 由1 本訴請求原因(1)(当事者)ア、イの事実は、当事者間に争いがない。 2 本訴請求原因(2)(原告商品の販売)の事実のうち、原告が原告商品を少なくとも平成15年2月23日以降販売していたこと、同年1月9日、テレビで、中華人民共和国江蘇省鎮江市原産の米酢である「香醋」が紹介されたことは、当事者間に争いがない。 3 本訴請求原因(3)(被告商品の販売)の事実は、当事者間に争いがない。 4 本訴請求原因(4)(競争関係)は、当事者間に争いがない。 5 本訴請求原因(5)(形態模倣の有無)、反訴請求原因(1)(不正競争)について検討する。 (1) 反訴請求原因(1)ウ(発売の先後)のうち、被告商品が平成14年6月から販売されたことは、当事者間に争いがない。 (2) 被告商品の形態 検甲第3、第4号証、乙第1号証、第2号証の1、第3号証の1によれば、 被告商品の形態は、次のとおりであると認められる。 ア パッケージ (ア) ボール紙製の縦長の直方体(底面は正方形)の箱形のパッケージである。 (イ) 箱形パッケージのサイズは、高さが25cm程度、底辺の横と縦は同じ長さで、ともに7cm程度である。 (ウ) パッケージの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色で、この赤色の下地の上に、黒色、黄色、白色、紫色で、文字又は飾り絵が印刷されている。 (エ) 正面の中央やや上寄りの場所に、丸型の白色の囲み(囲みの外周の内側に赤色の線によって円が描かれている。)をバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(明朝体)が記載されており、その上部には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの縦書きの黒色の漢字2文字「美味」の文字(毛筆体)が記載されている。丸型の白色の囲みは、「香醋」の文字よりもやや小さく、「香醋」の文字の上下の一部は、白色の囲みを若干はみ出し、赤色の下地にかかっている。 (オ) 背面の中央やや上寄りの場所に、丸型の白色の囲み(囲みの外周の内側に赤色の線によって円が描かれている。)をバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(明朝体)が記載されており、その上部には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの縦書きの黒色のひらがな4文字「おいしい」の文字(毛筆体)が記載されている。 (カ) 上面の中央に、大きな黒色太文字の横書漢字2文字「香醋」の文字が記載され、その上部には「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色の横書漢字2文字「美味」の文字が記載され、更にその上に横長の白地に赤色の小さな文字で「中国直輸入品」と記載されている。 (キ) 正面及び背面の各右上方の箇所に、やや小さい縦書きの黒色文字の漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と記載され、その横に縦長の黄色地に、黒色文字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されている。 (ク) 正面及び背面の中央のやや下付近に、縦書きのひらがなで「こうず」と記載されている。 (ケ) 正面及び背面の中央の「香醋」の文字の下方に、基調である赤色下地の上に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる3羽の「鳳凰」の飾り絵が白色で描かれている。 (コ) 正面及び背面の左方部分に、紫色の縦長長方形に白抜きの文字で、 「アミノ酸は黒酢よりも豊富」、「更に注目のクエン酸も含有」と記載されている。 (サ) 正面及び背面の一番下に、黒色文字の横書きで「本格醸造 500ml」と記載されている。 (シ) 正面及び背面の各下部には、キャッチコピーとして、白抜きの上に赤色文字の横書きで「おいしく」と記載され、黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にして「りんごジュースに」、「スポーツドリンクに」、「ドレッシングに」、「ぎょうざに」と記載され、その下に白抜きの上に赤色文字の横書きで「なんでもOK!」と記載されている。 (ス) 一方の側面に、「香醋」が「鎮江」原産の古い歴史を有するものであり、もち米がカメの中で熟成発酵されて製造されるものであり、健康に良いものであること等を述べた説明書の文章、並びに「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることなどが記載されている。 (セ) 他方の側面に、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸含有量」の表、及び商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)が記載されている。 (ソ) 正面及び背面には、高級感を醸し出すべく若干量の金箔が使用されている。 イ 瓶 (ア) 瓶の形は、底面は円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型である。 (イ) 瓶の大きさは、高さ25cm程度、底面の直径は7cm程度である。 (ウ) 瓶の容量は、500mlである。 (エ) 瓶の胴体部分は円筒型で、胴体部分の中央部分には瓶に沿って紙製のラベルが貼られている。 (オ) 貼られているラベルの大きさは、横(円筒の周囲)が16cm、縦(高さ)が9cm程度である。 (カ) 貼られているラベルの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色である。 (キ) ラベルの正面中央部分には、丸型の白色の囲み(囲みの外周の内側に赤色の線によって円が描かれている。)をバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(明朝体)が記載されており、その上部には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの縦書きの黒色の漢字2文字「美味」の文字(毛筆体)が記載されている。丸型の白色の囲みは、「香醋」の文字よりもやや小さく、「香醋」の文字の上下の一部は、白色の囲みを若干はみ出し、赤色の下地にかかっている。 (ク) ラベルを正面から見て右上方の箇所に、やや小さい縦書きの黒色文字の漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と記載され、その横に縦長の黄色地に、黒色文字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されている。 (ケ) ラベルの側面には、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸含有量」の表、商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)、及び「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることなどが記載されている。 (コ) 瓶の内容物は、黒色液体である。 (3) 原告商品の形態 検甲第1、第2号証、乙第1号証、第2号証の2、第3号証の2によれば、 原告商品の形態は、次のとおりであると認められる。 ア パッケージ (ア) ボール紙製の縦長の直方体(底面は正方形)の箱形パッケージである。 (イ) 箱型パッケージのサイズは、高さが25cm程度、底辺の横と縦は同じ長さで、ともに7cm程度である。 (ウ) パッケージの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色であるが、正面の中央やや上寄りの場所に、隅きりのある縦長長方形の白色の囲みがあり、面積でみると、赤色部分は、正面及び背面で全体の50%程度、側面で全体の20%程度である。赤色の下地の上に、白で縁取りした黒色文字と黄色の飾り絵が印刷されている。 (エ) 正面の中央やや上寄りの場所に、隅きりのある縦長長方形の白色の囲みがあり、その囲みをバックに敷き、強調された大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(毛筆体)が記載され、この上に横書きで漢字2文字「美味」の文字(明朝体)が記載されている。「美味」及び「香醋」の文字は、白色の囲みの中に記載されている。 (オ) 背面の中央やや上寄りの場所に、隅きりのある縦長長方形の白色の囲みがあり、その囲みをバックに敷き、強調された大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(毛筆体)が記載され、その上に横書きで漢字2文字「美味」の文字(明朝体)が記載されている。 (カ) 上面の中央に、白色の囲みの中に大きな黒色太文字の横書漢字2文字「香醋」の文字が記載され、その左横には「香醋」の文字より小さい大きさの黒色文字の横書漢字2文字「美味」の文字が記載され、白色の囲みの上方に、「ファイン」という製造販売業者名が黒色文字で記載されている。 (キ) 正面及び背面の白色の囲みの中に「香醋」の文字の右横に小さい赤色文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載されている。 (ク) 正面及び背面の白色の囲みの中の「香醋」という大きな2文字の文字間に、小さな縦書きのひらがなで「こうず」と記載されている。 (ケ) 正面及び背面の白色の囲みの左上と右下に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる「龍」の飾り絵が黄色で描かれている。 (コ) 正面及び背面の白色の囲みの上方に、「ファイン」という製造販売業者名が黒色文字で記載されている。 (サ) 正面及び背面の右の一番下に、黒色文字の横書きで「500ml」と記載されている。 (シ) 正面及び背面の各下部には、キャッチコピーとして、白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にした「17種の豊富なアミノ酸」、「天然の豊富なクエン酸」、「お料理に!ドリンクに!!」と記載されている。 (ス) 一方の側面に、「香醋」が「鎮江」原産の古い歴史を有するものであり、もち米がカメの中で熟成発酵されて製造されるものであり、健康に良いものであること等を述べた説明書の文章、並びに「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることなどが記載されている。 (セ) 他方の側面に、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸組成」の表、及び商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)が記載されている。 (ソ) 正面及び背面には、高級感を醸し出すべく若干量の金箔が使用されている。 (タ) パッケージの上下端と隅きりのある縦長長方形の白色の囲みの枠に沿って、緑と青の絵模様が配置されている。 イ 瓶 (ア) 瓶の形は、底面は円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型である。 (イ) 瓶の大きさは、高さ25cm程度、底面の直径は7cm程度である。 (ウ) 瓶の容量は、500mlである。 (エ) 瓶の胴体部分は円筒型で、胴体部分の中央部分には瓶に沿って紙製のラベルが貼られている。 (オ) 貼られているラベルの大きさは、横(円筒の周囲)が16cm、縦(高さ)が9cm程度である。 (カ) 貼られているラベルの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色である。 (キ) ラベルの正面の中央に、隅きりのある縦長長方形の白色の囲みがあり、その囲みをバックに敷き、強調された大きな黒色太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字(毛筆体)が記載され、その上に横書きで漢字2文字「美味」の文字(明朝体)が記載されている。「美味」及び「香醋」の文字は、白色の囲みの中に記載されている。 (ク) 正面の白色の囲みの中に「香醋」の文字の右横に小さい赤色文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載されている。 (ケ) 正面の白色の囲みの上方に、「ファイン」という製造販売業者名が黒色文字で記載されている。 (コ) 正面の白色の囲みの左上と右下に、中国を連想させる「龍」の飾り絵が黄色で描かれている。 (サ) ラベルの側面には、含有されている各栄養成分の名前及びその量を表記した「栄養成分表示」の表、含有されている各アミノ酸の名前及びその量を表記した「アミノ酸組成」の表、商品表示(名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法等)、及び「お召し上がり方」との題の下、飲用にも調味料にも使用されることなどが記載されている。 (シ) ラベルの上下端と隅きりのある縦長長方形の白色の囲みの枠に沿って、緑と青の絵模様が配置されている。 (ス) 瓶の内容物は、黒色液体である。 (4) 対比の対象部分 原告商品及び被告商品は、いずれも瓶がパッケージに包装されたものである。甲第51号証、乙第6号証の1ないし7によれば、パンフレット、ちらしには、原告商品及び被告商品のパッケージ又は瓶の正面の写真等が掲載されていることが認められ、弁論の全趣旨によれば、店舗において原告商品又は被告商品が販売される場合も、顧客にパッケージ(又は場合によっては瓶の正面)が見えるようにして棚などに陳列されるものと認められる。そうであるとすると、取引者又は需要者は、取引に当たって、原告商品又は被告商品の全体の形状とともに、パッケージ又は瓶の正面の態様に注目し、それを重視して商品を識別するものと認められる。 したがって、原告商品と被告商品の形態が実質的に同一といえるかどうかを検討するに当たっては、パッケージ及び瓶の全体の形状と、それらの正面における態様を重視して対比すべきである。 (5) 類似点 原告商品と被告商品は、パッケージ及び瓶の全体の形状と、それらの正面における態様において、次のとおり類似していることが認められる。(以下、各類似点は、例えば「類似点@」のように、番号をもって特定する。) ア パッケージについて (ア) 類似点@(パッケージの形状、寸法) ボール紙製の縦長の直方体(底面は正方形)の箱形のパッケージであり、箱形パッケージのサイズは、高さが25cm程度、底辺の横と縦は同じ長さで、ともに7cm程度である。 (イ) 類似点A(パッケージの基調色) パッケージの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色で、赤色の下地の上に、黒色、黄色、白色で、文字又は飾り絵が印刷されている。 (ウ) 類似点B(パッケージの「香醋」等の文字) 正面の中央やや上寄りの場所に、白色の囲みをバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載されており、その上部には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色の漢字2文字「美味」の文字が記載されている。 (エ) 類似点C(パッケージの原産地表示) 正面の右上方に、縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」であることが記載されている。 (オ) 類似点D(読みがな) 正面に、縦書きのひらがなで「こうず」と記載されている。 (カ) 類似点E(飾り絵) 正面に、基調である赤色下地の上に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる想像上の動物の飾り絵が描かれている。 (キ) 類似点F(内容量) 正面の一番下に、黒色文字の横書きで「500ml」と記載されている。 (ク) 類似点G(アミノ酸等の記載) 正面に、「アミノ酸」、「クエン酸」の文字が記載されている。 (ケ) 類似点H(キャッチコピー) 正面下部には、白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にしたキャッチコピーの文字が記載されている。 (コ) 類似点I(金箔) 正面には、高級感を醸し出すべく若干量の金箔が使用されている。 イ 瓶について (ア) 類似点J(瓶の形状、寸法) 瓶の形は、底面は円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型であり、瓶の大きさは、高さ25cm程度、底面の直径は7cm程度であり、瓶の容量は、500mlである。 (イ) 類似点K(ラベルの寸法等) 瓶の胴体部分は円筒型で、胴体部分の中央部分には瓶に沿って紙製のラベルが貼られており、貼られているラベルの大きさは、横(円筒の周囲)が16cm、縦(高さ)が9cm程度である。 (ウ) 類似点L(ラベルの基調色) 貼られているラベルの下地の色で、全体の基調となっている色は赤色である。 (エ) 類似点M(ラベルの「香醋」等の文字) ラベルの正面中央部分には、白色の囲みをバックに敷くことによって強調された大きな太文字の縦書きで漢字2文字「香醋」の文字が記載されており、その上部には、「香醋」の文字よりやや小さい大きさの黒色の漢字2文字「美味」の文字が記載されている。 (オ) 類似点N(ラベルの原産地表示) 正面の「香醋」の文字の右横に、縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」であることが記載されている。 (カ) 類似点O(内容物) 瓶の内容物は、黒色液体である。 (6) 相違点 原告商品と被告商品は、パッケージ及び瓶の正面における態様において、次のとおり相違していることが認められる。(以下、各相違点は、例えば「相違点@」のように、番号をもって特定する。) ア パッケージについて (ア) 相違点@(パッケージの色) 被告商品のパッケージの正面は、その面積の大部分が赤色であるが、原告商品のパッケージの正面は、隅きりのある縦長長方形の白色の囲みが大きな面積を占めることから、赤色部分は全体の50%程度にとどまる。 (イ) 相違点A(パッケージの「香醋」の文字のバック) 被告商品のパッケージの正面の「香醋」の文字のバックは、丸型の囲み(囲みの外周の内側に赤色の線によって円が描かれている。)であり、この丸型の囲みは、「香醋」の文字よりもやや小さく、「香醋」の文字の上下の一部は、白色の囲みを若干はみ出し、赤色の下地にかかっている。これに対し、原告商品のパッケージの正面の「香醋」の文字のバックは、縦長長方形の白色の囲みであり、「香醋」の文字は白色の囲みの中に記載されている。 (ウ) 相違点B(パッケージの「美味」の文字の書体) 被告商品のパッケージの「美味」の文字は縦書きの毛筆体であるのに対し、原告商品のパッケージの「美味」の文字は横書きの明朝体である。 (エ) 相違点C(パッケージの「香醋」の文字の書体) 被告商品のパッケージの「香醋」の文字は明朝体であるのに対し、原告商品のパッケージの「香醋」の文字は毛筆体である。 (オ) 相違点D(パッケージの原産地表示) 被告商品のパッケージは、正面の右上方に、やや小さい縦書きの黒色文字の漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と記載され、その横に縦長の黄色地に、黒色文字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されている。これに対し、原告商品のパッケージは、白色囲みの中に「香醋」の文字の右横に小さい赤色文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載されている。 (カ) 相違点E(読みがな) ひらがなで「こうず」と記載されている位置は、被告商品のパッケージでは、正面の中央やや下付近であるが、原告商品のパッケージでは、白色の囲みの中の「香醋」という大きな2文字の文字間である。 (キ) 相違点F(パッケージの飾り絵) 被告商品のパッケージの正面では、中央の「香醋」の文字の下方に、3羽の「鳳凰」の飾り絵が白色で描かれているのに対し、原告商品のパッケージの正面では、正面の白色の囲みの左上と右下に、「龍」の飾り絵が黄色で描かれている。 (ク) 相違点G(紫色の表示) 被告商品のパッケージの正面の左方部分には、紫色の縦長長方形に白抜きの文字で、「アミノ酸は黒酢よりも豊富」、「更に注目のクエン酸も含有」と記載されているが、原告商品には、紫色に白抜きの文字による表示はない。 (ケ) 相違点H(パッケージの製造販売業者名) 原告商品のパッケージは、正面の白色の囲みの上方に、「ファイン」という製造販売業者名が黒色文字で記載されているが、被告商品のパッケージには、 このような製造販売業者名の記載はない。 (コ) 相違点I(キャッチコピー) 被告商品のパッケージの正面の下部には、キャッチコピーとして、白抜きの上に赤色文字の横書きで「おいしく」と記載され、黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にして「りんごジュースに」、「スポーツドリンクに」、「ドレッシングに」、「ぎょうざに」と記載され、その下に白抜きの上に赤色文字の横書きで「なんでもOK!」と記載されている。これに対し、原告商品の正面の下部には、キャッチコピーとして、白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にした「17種の豊富なアミノ酸」、「天然の豊富なクエン酸」、「お料理に!ドリンクに!!」と記載されている。 (サ) 相違点J(パッケージの絵模様) 原告商品のパッケージの上下端と隅きりのある縦長長方形の白色の囲みの枠に沿って、緑と青の絵模様が配置されているが、被告商品のパッケージには、 そのような絵模様はない。 イ 瓶について (ア) 相違点K(ラベルの「香醋」の文字のバック) 被告商品のラベルの正面の「香醋」の文字のバックは、丸型の囲み(囲みの外周の内側に赤色の線によって円が描かれている。)であり、この丸型の囲みは、「香醋」の文字よりもやや小さく、「香醋」の文字の上下の一部は、白色の囲みを若干はみ出し、赤色の下地にかかっている。これに対し、原告商品のラベルの正面の「香醋」の文字のバックは、縦長長方形の白色の囲みであり、「香醋」の文字は白色の囲みの中に記載されている。 (イ) 相違点L(ラベルの「美味」の文字の書体) 被告商品のパッケージの「美味」の文字は縦書きの毛筆体であるのに対し、原告商品のパッケージの「美味」の文字は横書きの明朝体である。 (ウ) 相違点M(ラベルの「香醋」の文字の書体) 被告商品のパッケージの「香醋」の文字は明朝体であるのに対し、原告商品のパッケージの「香醋」の文字は毛筆体である。 (エ) 相違点N(ラベルの原産地表示) 被告商品のラベルは、正面の右上方に、やや小さい縦書きの黒色文字の漢字で「中国江蘇省鎮江市産」と記載され、その横に縦長の黄色地に、黒色文字で「アミノ酸がバランス良く配合」と記載されている。これに対し、原告商品のラベルは、白色囲みの中に「香醋」の文字の右横に小さい赤色文字の縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載されている。 (オ) 相違点O(ラベルの飾り絵) 原告商品のラベルの正面には、正面の白色の囲みの左上と右下に、 「龍」の飾り絵が黄色で描かれているが、被告商品のラベルの正面には、そのような絵は描かれていない。(相違点M) (カ) 相違点P(ラベルの製造販売業者名) 原告商品のラベルは、正面の白色の囲みの上方に、「ファイン」という製造販売業者名が黒色文字で記載されているが、被告商品のラベルには、このような製造販売業者名の記載はない。 (キ) 相違点Q(ラベルの絵模様) 原告商品のラベルの上下端と隅きりのある縦長長方形の白色の囲みの枠に沿って、緑と青の絵模様が配置されているが、被告商品のラベルには、そのような絵模様はない。 (7) 類否 ア(ア)a 類似点A(パッケージの基調色)のとおり、原告商品と被告商品は、パッケージの下地の色で、全体の基調となっている色が赤色である点では類似する。しかし、相違点@(パッケージの色)のとおり、被告商品のパッケージの正面は、その面積の大部分が赤色であるのに対し、原告商品のパッケージの正面は、 隅きりのある縦長長方形の白色の囲みが大きな面積を占めることから、赤色部分は全体の50%程度にとどまる。したがって、原告商品のパッケージは、下地が赤色であるとしても、正面においては、白色の印象も相当程度強く、大部分が赤色である被告商品のパッケージとは色彩の点で印象が大きく異なる。 b 検甲第1号証、第3号証、乙第1号証、第2号証の1、2、第3号証の1、2によれば、原告商品及び被告商品のパッケージの正面においては、「香醋」の文字が非常に大きく記載されていることから、「香醋」の文字とその周りが、取引者又は需要者の注意を最も強く引くところであると認められる。 「香醋」の文字の周りについては、相違点A(パッケージの「香醋」の文字のバック)のとおり、バックが異なり、相違点C(パッケージの「香醋」の文字の書体)のとおり、「香醋」の文字の書体が異なり、更に、相違点J(パッケージの絵模様)のとおり、原告商品にのみ絵模様がある。このような違いがあることから、被告商品は、中国風であるが、現代的でシャープな雰囲気を有するのに対し、原告商品は、中国の伝統を受け継いだ古風な雰囲気を有しており、これによって、原告商品と被告商品は、パッケージの正面の印象が大きく異なるというべきである。 c さらに、前記(6)ア認定のとおり相当数の相違点があるから、原告商品と被告商品のパッケージは、その全体の形状及び正面における態様について、印象が大きく異なるというべきである。 (イ) 検甲第2号証、第4号証、乙第1号証、第3号証の1、2によれば、 原告商品及び被告商品の瓶の正面においては、ラベルの正面が取引者又は需要者の注意を引くと認められ、さらに、ラベルの正面においても、パッケージの正面(前記(ア)b)と同様に、「香醋」の文字とその周りが、取引者又は需要者の注意を最も強く引くところであると認められる。そして、相違点K(ラベルの「香醋」の文字のバック)のとおり、バックが異なり、相違点M(ラベルの「香醋」の文字の書体)のとおり、「香醋」の文字の書体が異なり、更に、相違点Q(ラベルの絵模様)のとおり、原告商品にのみ絵模様があるという違いがあることから、パッケージの正面(前記(ア)b)と同様に、原告商品と被告商品は、ラベルの正面の印象が大きく異なるというべきである。 さらに、前記(6)イ認定のとおり相当数の相違点があるから、原告商品と被告商品の瓶は、その全体の形状及び正面における態様について、印象が大きく異なるというべきである。 イ ところで、原告商品と被告商品には、類似点も存在することから、それらの点に関して検討する。 (ア)a 原告商品と被告商品は、類似点@(パッケージの形状、寸法)のとおり、パッケージの形状、寸法がほぼ同じである。しかし、パッケージは瓶に合わせて製作されており、後記(イ)aのとおり、瓶の形状、寸法が同じ(類似点J)であるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえないから、そのような瓶に合わせて製作されたパッケージの形状、寸法が類似点@のように同じであったとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 b 原告商品と被告商品は、類似点A(パッケージの基調色)のとおり、 パッケージの下地の色で、全体の基調となっている色が赤色である点で共通するが、甲第37号証及び弁論の全趣旨によれば、食品、特に中国産のものについては、赤色を基調色としたものが少なくないことが認められるから、類似点Aが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。また、同じく赤色を基調としていても、前記ア(ア)、(イ)認定のとおり、原告商品と被告商品は、正面の印象を異にする。 c 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点B(パッケージの「香醋」等の文字)のとおり、「香醋」及び「美味」の文字が記載されている点で共通する。しかし、甲第53、第54号証及び弁論の全趣旨によれば、「香醋」は、中国江蘇省鎮江市産の米を原料とする香り高い酢の名称であり、「美味」は、味が良いことを示す形容詞であることが認められる。したがって、「香醋」及び「美味」の文字が記載されていることにより、取引者又は需要者は、原告商品及び被告商品の内容物又は原材料が「味の良い香醋」であると理解するにとどまり、類似点Bが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 d 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点C(パッケージの原産地表示)のとおり、正面の右上方に、縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」であることが記載されている点で共通する。しかし、弁論の全趣旨によれば、原産地名を商品名とともに表示することは、食品等において少なくないことが認められ、乙第3号証の3ないし8、10、11によれば、「香醋」の他社製品についてみても、商品名の下に「中国雲南省禄豊産香醋」と記載されているもの(乙第3号証の3)、商品名の上に「鎮江の」と記載されているもの(乙第3号証の4、11)、商品名の下に「中国(江蘇省の鎮江)」と記載されているもの(乙第3号証の5)、商品名の右上方に「中国鎮江市の黒酢」と記載されているもの(パッケージはなく、瓶のみ。乙第3号証の6)、商品名が「鎮江香醋」というもの(パッケージはなく、瓶のみ。乙第3号証の6ないし8)、商品名の左下方に、「中国江蘇省鎮江市原産香醋使用」と記載されているもの(乙第3号証の10)が存在することが認められる。また、弁論の全趣旨によれば、商品名の右上方に原産地名を表示することも特に珍しいことではないと認められ、上記のとおり、「香醋」の他社製品のうちにも、商品名の右上方に「中国鎮江市の黒酢」と記載されているもの(乙第3号証の6)が存在する。また、相違点D(パッケージの原産地表示)のとおり、原告商品と被告商品は、原産地表示の文言や表示の態様が異なっている。したがって、類似点Cが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 e 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点D(読みがな)のとおり、正面に、縦書きのひらがなで「こうず」と記載されている点で共通する。しかし、弁論の全趣旨によれば、「香醋」の「醋」という文字は、我が国において一般に余りなじみのない漢字であること、なじみのない漢字を用いた商品名に読みがなを振ることは少なくないことが認められ、乙第3号証の3、5、6、9、10、11によれば、「香醋」の他社製品についてみても、「こうず」などの読みがなを商品名とともに表示したものが多数存在することが認められる。したがって、類似点Dが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 f 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点E(飾り絵)のとおり、 正面に、基調である赤色下地の上に、下地の赤色が透けて見えるくり抜き絵の描き方で、中国を連想させる想像上の動物の飾り絵が描かれている点で共通する。しかし、相違点F(パッケージの飾り絵)のとおり、飾り絵の題材(被告商品は「鳳凰」であるのに対し、原告商品は「龍」である。)、色、数、表示箇所が異なるから、類似点Eが認められるとしても、原告商品と被告商品の飾り絵は、印象を大きく異にするというべきである。 g 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点F(内容量)のとおり、 正面の一番下に、黒色文字の横書きで「500ml」と記載されている点で共通する。しかし、弁論の全趣旨によれば、パッケージの正面の一番下に内容量を記載することは、食品等において少なくないことが認められ、乙第3号証の3、4、10、11によれば、「香醋」の他社製品についてみても、パッケージの正面の一番下の方に内容量を表示したものが複数存在することが認められる。したがって、類似点Fが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 h 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点G(アミノ酸等の記載)のとおり、正面に、「アミノ酸」、「クエン酸」の文字が記載されている点で共通する。しかし、アミノ酸、クエン酸は、「香醋」に含有されている成分であるから、それらを表示することは、被告商品のみの特徴であるとはいえない。また、 「アミノ酸」、「クエン酸」の文字は、被告商品においては、相違点G(紫色の表示)のとおり、パッケージの正面の左方部分の紫色の縦長長方形に白抜きの文字で記載されており、原告商品には、そのような紫色に白抜きの文字による表示はない。他方、「アミノ酸」、「クエン酸」の文字は、原告商品においては、相違点I(キャッチコピー)のとおり、正面の下部の黒丸を文頭にしたキャッチコピーの中に記載されている。したがって、原告商品と被告商品では、記載態様が異なるから、類似点Gが認められるとしても、それによって、原告商品と被告商品が印象を同じくするとはいえない。 i 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点H(キャッチコピー)のとおり、正面下部に白抜きの上に黒色文字の横書きで、黒丸を文頭にしたキャッチコピーの文字が記載されている点で共通する。しかし、相違点I(キャッチコピー)のとおり、被告商品には赤色文字のキャッチコピーが記載されているのに対し、原告商品には赤色文字のキャッチコピーは記載されておらず、また、キャッチコピーの記載内容も、原告商品と被告商品で異なる。したがって、類似点Hが認められるとしても、それによって原告商品と被告商品が印象を同じくするとはいえない。 j 原告商品と被告商品のパッケージは、類似点I(金箔)のとおり、正面に、高級感を醸し出すべく若干量の金箔が使用されている。しかし、原告商品と被告商品のいずれについても、使用されている金箔は少量であるから、正面を見た場合に金箔の存在が強い印象を与えることはない。したがって、類似点Iが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 (イ)a 原告商品と被告商品の瓶は、類似点J(瓶の形状、寸法)のとおり、瓶の形が、底面は円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型であり、瓶の大きさが、高さ25cm程度、底面の直径は7cm程度であり、瓶の容量が、500mlである点で共通する。また、類似点K(ラベルの寸法等)のとおり、瓶の胴体部分が円筒型で、胴体部分の中央部分に瓶に沿って紙製のラベルが貼られており、貼られているラベルの大きさが、横(円筒の周囲)16cm、縦(高さ)9cm程度である点で共通する。 しかし、甲第51号証、乙第3号証の12及び弁論の全趣旨によれば、底面が円形で、若干いかり肩気味のボルドー型ワインボトル型という瓶の形態は、瓶の形態としてはありふれたものであり、原告商品及び被告商品以外に、容量が異なるものの、同様の形態の瓶を使用した「香醋」が販売されていたこと、原告は、原告商品を発売する前から、原告商品の瓶と同一の形態、寸法の瓶をノンアルコールワイン等に使用していたこと、原告商品及び被告商品の瓶のラベルの大きさは、瓶の大きさを基にすればありふれたものであることが認められる。また、乙第3号証の7、8、12、第4号証によれば、原告商品及び被告商品と瓶の形態は異なるものの、高さが約25cmの瓶を使用した「香醋」が販売されていることが認められる。これらの認定事実によれば、類似点Jが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 b 原告商品と被告商品の瓶は、類似点L(ラベルの基調色)のとおり、 ラベルの下地の色で、全体の基調となっている色が赤色である点で共通するが、前記(ア)bと同様の理由により、原告商品と被告商品は、正面の印象を異にする。 c 原告商品と被告商品の瓶は、類似点M(ラベルの「香醋」等の文字)のとおり、ラベルに「香醋」及び「美味」の文字が記載されている点で共通する。 しかし、前記(ア)cと同様の理由により、類似点Mが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 d 原告商品と被告商品の瓶は、類似点N(ラベルの原産地表示)のとおり、ラベルの正面の右上方に、縦書漢字で「中国江蘇省鎮江市産」であることが記載されている点で共通する。しかし、前記(ア)dと同様の理由により、類似点Nが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 e 原告商品と被告商品の瓶は、類似点O(内容物)のとおり、瓶の内容物が黒色液体である点で共通する。しかし、「香醋」は黒色液体であり、乙第3号証の1ないし12によれば、「香醋」の他社製品も、すべて瓶の内容物が黒色液体であることが認められるから、類似点Oが認められるとしても、原告商品は、被告商品の特徴的部分において被告商品と類似しているとはいえない。 (ウ) 乙第3号証の1ないし12によれば、原告商品と被告商品は、「香醋」の商品の中においては、他社製品に比べ、類似点が多いと認められる、しかし、不正競争防止法2条1項3号にいう「他人の商品の形態を模倣した商品」に該当するためには、当該商品の形態が他人の商品の形態と実質的に同一なものでなければならない。そして、前記(ア)、(イ)認定のとおり、各類似点の存在を前提としても、原告商品の形態は、被告商品の特徴的部分において被告商品の形態と類似しているとはいえない上、両商品の形態には相当数の相違点が存在し、前記ア(ア)、 (イ)認定のとおり、原告商品と被告商品は、パッケージ及び瓶の全体の形状とそれらの正面における態様について、印象が大きく異なる。したがって、原告商品と被告商品のパッケージ及び瓶の全体の形状とそれらの正面における態様は、これを実質的に同一ということはできない。 ウ 原告商品と被告商品において重視されるべきパッケージ及び瓶の全体の形状とそれらの正面における態様の相違からすれば、これに他の部分の形態を総合考慮しても、やはり、両商品の形態を実質的に同一ということはできない。 (8) 形態模倣の有無 ア 上記(7)ウ認定のとおり、原告商品と被告商品は、形態が実質的に同一とはいえないから、原告商品は、被告商品を模倣した商品とは認められない。 イ 前記(1)記載のとおり、被告商品が平成14年6月から販売されたことは、 当事者間に争いがなく、原告商品の販売開始時期は、原告の主張によっても同年11月であるから(本訴請求原因(2))、原告商品の販売の開始は、被告商品の販売の開始よりも後であると認められる。このことから、被告らは、原告が被告商品の存在を知り、その形態及びデザインに着想を得て原告商品の開発、販売を開始したと主張する。また、原告は、原告商品のデザインはデザイン履歴資料(甲第28号証)のとおりに作成されたと主張するが、被告再春館薬品は、同デザイン履歴資料に不自然な点がある旨主張する。 しかし、仮に原告が被告商品の存在を知り、その形態及びデザインに着想を得て原告商品の開発、販売を開始し、また、デザイン履歴資料と異なる経過で原告商品のデザインを行ったとしても、前記(7)ウ認定のとおり、原告商品と被告商品は形態が実質的に同一とはいえないから、原告商品は、被告商品の形態を模倣した商品とは認められないというべきである。 (9) 不正競争防止法2条1項3号の不正競争の成否 上記(8)イ認定のとおり、原告商品は、被告商品の形態を模倣した商品とは認められないから、原告商品の販売は、不正競争防止法2条1項3号の不正競争には該当しない。 6 本訴請求原因(6)(被告再春館薬品による虚偽事実の告知、流布)について検討する。 (1) 本訴請求原因(6)ア(事実の告知、流布)(ア)ないし(ウ)は、当事者間に争いがない。 (2) 本訴請求原因(6)イ(虚偽事実)について検討する。 前記5(9)認定のとおり、原告商品の販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争には該当しないから、原告による原告商品の販売が同不正競争に該当するということは、虚偽の事実に該当する。 (3) 本訴請求原因(6)ウ(信用毀損)について検討する。 不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当する行為は、同法に基づく差止め、損害賠償の対象となる違法行為であるから、原告による原告商品の販売が同法2条1項3号の不正競争に該当しないにもかかわらず同不正競争に該当するという虚偽の事実は、原告の営業上の信用を害するものと認められる。 (4) 本訴請求原因(6)エ(不正競争、不法行為)について検討する。 ア 以上によれば、被告再春館薬品の事務連絡送付行為は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布に該当し、不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当するというべきである。 イ(ア) 被告らは、競争者の行為が不正競争防止法上の不正競争に該当することを、その競争者の取引先に告知することは、後日行われる訴訟により、競争者の行為が不正競争防止法上の不正競争に該当しないと判断されたとしても、告知者において、告知行為の当時、不正競争に該当しないことを認識していたか、又はこれを認識しないことに過失があり、かつ告知の内容、態様が公序良俗に反するなど特段の事情があるときでない限り、違法性を帯びることはないと主張する。 (イ) しかし、事業者が営業を行うに当たって、営業上の信用は極めて重要であるところ、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、 又は流布する行為(不正競争防止法2条1項14号の不正競争)は、競争関係にある事業者の営業上の信用を直接的に毀損する行為であるから、事業者間の公正な競争を害する典型的な違法行為というべきである。したがって、公正な競争を確保するという不正競争防止法の目的からして、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布が認められれば、それは不正競争として同法に基づく差止めの対象となり、それについて少なくとも過失が認められる場合には、損害賠償の対象となると解すべきである。 競争関係にある者の行為が不正競争防止法上の不正競争に該当しないにもかかわらず、不正競争に該当するということは、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実に該当する。したがって、その告知又は流布が認められる場合には、それは不正競争として不正競争防止法に基づく差止めの対象となり、それについて少なくとも過失が認められるならば、損害賠償の対象となるというべきである。その場合に差止め、損害賠償を求めるに当たって、告知又は流布を行った者に、不正競争に該当しないことの認識まで必要であるとし、又は過失とともに公序良俗違反等の特段の事情を必要とする旨の被告らの主張は、採用することができない。 7 本訴請求原因(7)(被告ユーワによる虚偽事実の告知、流布)について検討する。 (1) 本訴請求原因(7)ア(事実の告知、流布)について検討する。 原告は、被告ユーワが、平成15年3月7日ころ、原告の取引先に対し、原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当する旨述べて、 原告商品の購入を取りやめるように働きかけた(被告ユーワの通告行為)と主張する。 甲第11号証、第21号証によれば、原告の従業員であるAが、平成15年5月13日、ヒノミ薬品の担当者から、「被告ユーワの営業担当者が、原告商品を返品し、爾後原告商品を取り扱わないようにするよう述べていた」旨聞いたことが認められる。また、甲第14号証によれば、Aが、同年9月24日、コバショウ、 サミットの担当者から、「被告ユーワの営業担当者が、取引先で、『原告商品がまがい物を使っている』と述べている」旨聞いたことが認められる。そして、ここでいう「まがい物を使っている」ということの意味は、甲第42号証及び弁論の全趣旨によれば、中国江蘇省鎮江市原産の本物の香醋を使用していないという意味であると推認される。しかし、これらの証拠によっては、被告ユーワが、同年3月7日ころ、原告の取引先に対し、原告による原告商品の販売が不正競争防止法に定める不正競争に該当する旨述べたと認めることはできないから、被告ユーワの通告行為があったと認めることはできず、他に、被告ユーワの通告行為があったことを認めるに足りる証拠はない。 (2) 原告の被告ユーワに対する請求は、被告ユーワの通告行為があったことを前提とするものであるが、前記(1)認定のとおり、被告ユーワの通告行為があったことは立証されていないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告ユーワに対する請求は、理由がない。 8 本訴請求原因(8)(故意過失)アについて検討する。 原告商品と被告商品は、類似点もあるが(前記5(5))、相違点も相当数存在し(前記5(6))、全体の印象も異なっていたから(前記5(7)ア)、被告再春館薬品は、原告商品が被告商品の形態を模倣したものでないことを認識することができたものと認められる。したがって、不正競争防止法2条1項14号の不正競争(前記6(4)ア)を行うにつき、被告再春館薬品には故意又は少なくとも過失があったものと認められる。 9 本訴請求原因(9)(営業上の利益の侵害)アについて検討する。 弁論の全趣旨によれば、被告再春館薬品による不正競争防止法2条1項14号の不正競争により、原告の営業上の利益が侵害されたものと認められる。 10 本訴請求原因(11)(損害)について検討する。 (1) 原告は、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為の前後における売上げ、利益を比較し、被告再春館薬品の事務連絡送付行為及び被告ユーワの通告行為によって、1日当たり40万円の得べかりし利益を失ったと主張する。 甲第10、第11号証、第13ないし第26号証によれば、原告従業員の報告書等の中には、被告再春館薬品の事務連絡送付行為の後に原告商品の販売数量が減少した旨の記述があることが認められる。しかし他方、上記各証拠によれば、被告再春館薬品の事務連絡送付行為の後も原告商品の取扱いを継続する取引先もあったことが認められる。また、乙第7号証の1ないし29によれば、被告従業員の報告書中には、原告商品が販売されたことによって被告商品の販売数量が減少した旨の記述があることが認められ、原告商品と被告商品は市場において競合しており、 その販売数量の増減には、価格、取引先の経営方針、消費者の嗜好など様々の要因が影響していたことが推認される。したがって、原告商品の販売数量の減少があったとしても、それが被告再春館薬品の事務連絡送付行為のために減少したと認めるに足りる証拠はなく、また、被告再春館薬品の事務連絡送付行為がなかったとしたならば、原告商品の販売数量が従前どおりであるか又は増加していたと認めるに足りる証拠もないというべきであり、原告が被告再春館薬品の事務連絡送付行為によって得べかりし利益を失ったと認めることはできない。 (2) 被告再春館薬品は、本訴請求原因(6)ア(イ)(前記6(1)のとおり、当事者間に争いがない。)のとおり、原告の取引先11社に対し、事務連絡送付行為に及んだものであり、これにより、原告の信用は毀損されたものと認められ、その損害は、金銭に換算すると、150万円と認めるのが相当である。 (3) したがって、原告は、被告再春館薬品の不正競争により、150万円の損害を被ったものと認められる。 11 以上によれば、原告は、被告再春館薬品に対し、不正競争防止法2条1項14号、4条に基づき、150万円及びこれに対する不正競争の後である平成15年7月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ、本訴請求のうち被告再春館薬品に対するその余の請求及び被告ユーワに対する請求は、いずれも理由がないというべきである。 12 反訴請求について検討する。 前記5(9)認定のとおり、原告商品の販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争には該当しないから、その余の点について判断するまでもなく、被告再春館薬品の反訴請求は、いずれも理由がない。 13 よって、原告の本訴請求は、被告再春館薬品に対し、150万円及びこれに対する平成15年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、本訴請求のうち被告再春館薬品に対するその余の請求及び被告ユーワに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、 被告再春館薬品の反訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山田知司 |
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裁判官 | 中平健 |
裁判官 | 守山修生 |