• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 需要者 /  外観 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  差止請求(差止) /  損害額の推定(損害額と推定) /  利益額(利益の額) /  代理人 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 /  販売数量 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 20年 ( ) 1637号 不正競争行為差止等請求事件
原告株 式会社サンコー
訴訟代理人弁護 士牛田利治坂昌樹 畠山和大
訴訟代理人弁理 士河野登夫河野英仁 岡田充浩
被告レック株式会社
訴訟代理人弁護 士野末寿一宮田逸江
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2008/07/17
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙被告製品目録記載の便座シートを販売してはならない。
2被告は原告に対し,200万円及びこれに対する平成19年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言第2事案の概要等1事案の概要本件は,日用雑貨の製造,販売等を行う原告が,自己の商品の形態模倣した商品を製造販売する被告の行為は不正競争防止法2条1項3号に基づく不正競争行為に該当すると主張して,被告に対し,同法3条に基づく販売の差止めを求めるとともに,同法4条に基づく損害賠償として200万円及びこれに対する不法行為の後である平成19年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
末尾に証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いが 2争いのない事実等(ない。) 当事者原告は,日用雑貨の製造,販売,輸入等を目的とする株式会社である。
被告は,日用雑貨品の製造販売等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
 原告製品原告は,遅くとも平成18年8月下旬ころから,別紙原告製品目録記載の便座シート(以下「原告製品」という。)を製造販売している。
 被告製品被告は,平成19年10月25日から,別紙被告製品目録記載の便座シート(以下「被告製品」という。)を販売している。
3争点 被告製品は,原告製品の形態を模倣したものか(争点1)。
 損害額(争点2)第3争点に関する当事者の主張1争点1について【原告の主張】 原告製品の形態ア原告製品は,便座シートであって,便座の形に添ったブーメラン形をなし,左右対称形の物1対を販売単位とするものである。
イ不織布からなる基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている。
ウ便座シート内側の湾曲部には,約2?pの切り目が6か所設けられている(以下,原告製品におけるこれら切り目を「内側切り目」という。)。
エ基布の表面には貼着用樹脂が塗着されており,2ないし3?o幅の細い凸状部が,約2?o幅の凹部を隔てて多数形成されている。
 被告製品の形態ア被告製品は,便座シートであって,便座の形に添ったブーメラン形をなし,左右対称形の物1対を販売単位とするものである。
イ不織布からなる基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている。
ウ基布の裏面には貼着用樹脂が塗着されており,約1.5?p幅の太い凸状部が,約2?o幅の凹部を隔てて多数形成されている。
 原告製品と被告製品の形態の対比ア共通点原告製品及び被告製品は,便座シートである点,便座の形に添ったブーメラン形である点,基布の表面にふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている点,裏面には多数の凸状部が設けられている点において共通している。
イ相違点 原告製品においては,内側切り目が設けられているが,被告製品においては,同切り目は設けられていない。
 原告製品においては,裏面に「2ないし3?o幅の」多数の凸状部が約2?o間隔で直線状に設けられているが,被告製品においては,凸状部の幅が約1.5?pである。
 原告製品の形態上の特徴点原告製品は,便座シートで初めて基布にアクリルボアを採用したものであり,その表面のふかふかした厚手のアクリルボアにより,外観及び触感において従来製品と比べて著しく優れている。よって,原告製品において,「基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている点」が,形態上の特徴点である。
この点,被告製品は,「基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている」という原告製品における形態上の特徴点を備えている。
 相違点の評価ア内側切り目被告製品においては内側切り目が存在しないが,同切り目は,内側湾曲部に約2?pの長さで6か所設けられているにすぎず,装着時には便座の内側に入り込む位置にあり,かつ微細であるため,あまり目立たず,基布の表面におけるふかふかした厚手のアクリルボアの外観,触感に比べ,形態上,従たる地位しか占めていない。
被告製品は,原告製品の形態から切り目を除去したものにすぎず,この改変は容易であり,また被告が特に費用をかけて意義のある改変を行ったものではない。また,被告が独自に資本投下を行い,商品形態を形成したということもない。
イ裏面の凸状部被告製品の裏面の凸状部は,原告製品の凸状部よりも幅広であるが,裏面は見る者の注意を引かない部分である。また,被告製品の太い凸状部のパターンは,原告の他の便座シートに従来多用されてきたものと同様である。
 模倣の意図ア被告製品は原告製品が市場に出荷された約1年後に販売が開始されたものであり,被告製品の形態は原告製品に依拠して採用されたものである。
イ原告は,平成19年6月か7月ころまでI社に原告製品を卸していたところ,被告が被告製品を同社に売り込んだことから,同社は原告製品に代えて被告製品を購入するようになった。
ウ被告は,被告製品以外にも,原告のアイデア商品(キャラクターをつけた消臭シート,便器の隙間テープ等)に追随し,模倣的な行為を行ってきている。
 以上のとおり,被告製品の形態は,原告製品の形態と実質的に同一であり,被告製品の形態は原告製品の形態を模倣したものである。
【被告の認否・反論】 原告製品の形態について認める。
ただし,「原告製品のシートの幅は全体的に広い。」との点を原告製品の形態として加えるべきである。
 被告製品の形態について認める。
ただし,「被告製品のシートの幅は全体的に狭く,細長い形状をしている。」との点を被告製品の形態として加えるべきである。
 原告製品と被告製品の形態の対比についてア共通点について原告製品及び被告製品が,いずれも便座シートであること,便座の形に添ったブーメラン形であること,便座シート表面がふかふかした厚手のアクリルボアであることについて共通することは認める。
しかし,便座シート裏面の形態は,その凹凸から構成される縞模様の間隔,凹部と凸部の幅において著しく異なっている。よって,裏面の形状が共通しているとの点は否認する。
イ相違点について認める。
ただし,原告が主張する各相違点に加えて,原告製品と被告製品とは,シート幅が広いか狭いかという点においても相違している。
 原告製品の形態上の特徴点について原告は,基布にアクリルボアを融着した点が原告製品の特徴であると主張する。しかし,アクリルボアという素材自体は,ありふれた素材であり,便座シートへの採用も容易である。よって,便座シート表面にアクリルボアを採用したことは,原告製品を特徴付けるような形態とはいえない。
 相違点の評価についてア内側切り目について争う。
原告製品の内側切り目は,従来のありふれた形態の便座シートと異なる点であり,原告製品の特徴となる重要な形態である。原告は,平成16年5月7日に,便座シート湾曲部内側に切り目を備えた構成について実用新案として出願しており,また原告製品のパンフレットにおいても,「切り込みニュータイプ(実用新案登録済)」として強調し,添付されている説明文でも,項を別にして特別に説明を行っている。
かかる事実は,原告製品の形態の特徴が,内側切り目にあることを如実に示している。
他方,被告製品には,内側切り目がないのであるから,原告製品の特徴的な形態を備えていない。
イ裏面の凸状部について争う。
便座シート裏面の凹凸からなる縞模様も,幅が著しく異なっており,同一の形態とはいい難い。
ウ相違点の追加原告製品と被告製品との間には,シートの幅にも相違点があり,外観を異にしている。
エしたがって,原告製品と被告製品には,明確な相違点があり,両者を同一の形態とする原告の主張には無理がある。
 模倣の意図について否認ないし争う。
原告製品と被告製品は実質的同一性を欠き,被告製品は原告製品を模倣したものではない。
2争点2(損害額)について【原告の主張】平成18年10月中旬から平成20年1月10日までの被告製品の販売数量は1万枚であり,被告の利益額は1枚当たり200円である。
よって,被告は,上記期間中,形態模倣の不正競争行為により200万円(1万枚×200円=200万円)の利益を得たので,不正競争防止法5条2項により,これが原告の損害額と推定される。
【被告の主張】否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1争点1(被告製品は,原告製品の形態を模倣したものか)について 原告製品の形態証拠(検甲1及び検証の結果)によれば,原告製品の形態は,以下のとおりと認められる。
A便座の形に沿ったブーメラン形をなしており,左右対称形の物1対をなしている。
B不織布からなる基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている。
C内側の湾曲部には,約2?pの切り目が6か所設けられている。
D基布の表面には貼着用樹脂が塗着されており,2ないし3?o幅の細い凸状部が約2?o幅の凹部を隔てて多数形成されている。
E便座シートである。
 被告製品の形態証拠(検甲2及び検証の結果)によれば,被告製品の形態は,以下のとおりと認められる。
a便座の形に沿ったブーメラン形をなしており,左右対称形の物1対をなしている。
b不織布からなる基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている。
c基布の裏面には貼着用樹脂が塗着されており,約1.5?p幅の太い凸状部が約2?o幅の凹部を隔てて多数形成されている。
d便座シートである。
 原告製品と被告製品の形態の実質的同一性の有無アそこで原告製品と被告製品とを対比するに,原告製品と被告製品は,?@便座の形に沿ったブーメラン形をなしており,左右対称形の物1対をなしている点,?A不織布からなる基布の表面に,ふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている点,?B基布の裏面には貼着用樹脂が塗着されており,凸状部が凹部を隔てて多数形成されている点,?C便座シートである点において共通している。他方,原告製品と被告製品の形態は,?@原告製品には,内側の湾曲部に約2?pの切り目が6か所設けられているのに対し,被告製品には,このような切り目はない点,?A原告製品では,裏面の凸状部の幅が2ないし3?oであるのに対し,被告製品では,裏面の凸状部の幅は約1.5?pである点で異なっていることが認められる。
イ上記認定のとおり,原告製品は,基本的形状としては便座シートとしてありふれたブーメラン形をなしているところ,その内側の湾曲部に約2?pの切り目が6か所設けられている(内側切り目)のに対し,被告製品にはそのような切り目はないという相違点が存在する。上記内側切り目は包装袋を通しても比較的明瞭に視認することができるものであって(検甲1及び検証の結果),またその包装袋(甲1)に掲載されている装着写真を見ることにより,需要者において,当該内側切り目によって便座の内側まで便座シートで覆うことができると認識すると考えられる。このような内側切り目は,原告が実用新案登録出願した考案,すなわち「各便座に対して便座の上面部の露出量を少なくすることができる大きさに形成された便座シートを便座の上面部に載置した場合,便座の内周側となる部分が大き過ぎるときは,スリット間の部片を便座側へ押付けることにより該部片を便座に接着することができ,着座感を損なうことなく便座の内周部内空間が便座シートによって狭くなるのを防ぐことができるようにする」との課題を解決するため,「便座の上面部の左側位置及び右側位置に載置する一対であり,便座の内周側となる縁に複数のスリット11を設け,その下面に接着層を設けて,便座の内周側となる部分が大き過ぎるとき,スリット11間の部片を便座側へ押付けることにより該部片を便座に接着するようにした」(乙3の「登録実用新案公報」1頁の【要約欄】)考案について実用新案登録(第3105081号)を得ており(乙3),その特徴は外部から視認できる新規な形態上の特徴と把握できるものである。さらに,原告製品に同封されている「ベンザシートの装着説明書」(乙6)にも,内側切り目について,「座っていただくとベンザシート内側の切り込み部分が便座内側をカバーして,お尻へのひんやり感を防ぎます」と説明されていること,原告製品のカタログ(乙1)にも,「切り込みニュータイプ(実用新案登録済)」と記載されており,原告製品の販売に当たって内側切り目及びその効果が強調されていることが認められる。これらの事実からすれば,原告は,原告製品に設けられた内側切り目を原告製品の特徴として強調しており,他方,需要者も,原告製品の購入を検討するに際し,内側切り目を意識し,その効用を予想するものと考えられ,原告製品における内側切り目は,商品購入の際の重要な考慮要素となるものと認められる。
この点,原告は,内側切り目について,装着時には便座の内側に入り込む位置にあり,かつ微細であるためあまり目立たず,形態上従たる地位しか占めていないと主張する。しかし,原告製品を使用する際には,内側切り目の部分が便座の内側に入り込むことになるものの,かといって装着時に当該部分が死角になって見えなくなるわけではなく,内側切り目により,便座の内側まで便座シートが貼り付いて覆っているということは明らかといえる。
以上の事実に照らすと,原告製品における内側切り目は,原告製品の全体的な形態の中にあって顕著な独自の特徴的な形態をもたらしているものと認められる。
ウこれに対し,原告は,基布の表面にふかふかした厚手のアクリルボアが融着されている点が,原告製品の形態上の特徴であると主張する。
なるほど,証拠(検甲1及び検証の結果)によれば,原告製品の基布表面にはふかふかした肌触りの良い触感の素材が用いられていることが認められ,原告が原告製品を販売する以前に販売していた便座シート(乙2,検甲3及び検証の結果)と比較しても,その肌触りの良さは相当程度向上していると認められる。また,原告製品が販売される以前に,同様の素材を便座シートに採用した商品があったことは証拠上窺えないから,原告製品にこのようなふかふかした触感を生む素材が融着されていることは,原告製品の特徴の一つをなすものといい得る。
しかし,原告製品と素材が異なる便座シート(検甲3)と原告製品とを比較しても,両者の素材の違いを外観上明確に認識することはできない。
したがって,原告が主張するように,基布の表面にふかふかした厚手のアクリルボアが融着されていることは,原告製品の機能上(使用感)の特徴をなすものとはいえても,形態上の顕著な特徴をなすとは認められない。
なお,原告製品と被告製品との間には,上記認定の共通点?@があるが,そもそも便座シートは便座の上に貼り付けて使用するものである以上,その形状は便座の形状に制約されるものであり,便座の形状には「洗浄暖房型」,「O型」,「U型」の3種類程度しかなく(甲1の1頁下段),しかもこれらは相互に大きく異なるものでもないことからすると,便座シートの全体的な形状である共通点?@に形態上の特徴を見出すことはできない。
エ以上によれば,被告製品には,原告製品の形態上の顕著な特徴である内側切り目が全く設けられていないから,その他の原告製品の形態上の共通点を考慮しても,原告製品と被告製品とが,実質的に同一の形態であると認めることはできない。
以上から,被告製品は,原告製品の形態を模倣した商品であるとは認められない。
2結論よって,原告の請求はその余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
  • この表をプリントする