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関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  需要者 /  営業規模 /  商品等表示 /  他人の営業 /  類似性(類似) /  外観 /  呼称 /  観念 /  印象 /  記憶 /  連想 /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  適用除外 /  自己の氏名 /  不正の目的(不正競争の目的) /  法人成り /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  権利濫用(権利の濫用) /  侵害 /  著名表示(著名性) /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  競争関係 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 35028号 営業表示使用差止等請求事件
東京都渋谷区<以下略>
原告東 京急行電鉄株式会社
訴訟代理人弁護 士山田忠男
同 沢田訓秀 宮城県石巻市<以下略>
被告藤 久建設株式会社
訴訟代理人弁護 士小泉清則
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/09/30
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1被告は,その営業上の施設又は活動において「TOKYU」,「tokyu」の表示を営業表示として使用してはならない。
2被告は,表札,看板,印章,印刷物,ウェブアドレス「(略)」等において開設するウェブサイト,その他の営業表示物件から「TOKYU」,「tokyu」の表示を抹消せよ。
事案の概要
1 事案の要旨本件は,原告が,被告がウェブサイト(ホームページ)等で営業表示として使用する「TOKYU」及び「tokyu」の表示は,原告の周知又は著名な「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号又は2号)である「東急」の営業表示と類似のものであって,被告による上記表示の使用行為は同項1号又は2号の不正競争に該当すると主張して,同法3条に基づき,被告に対し,「TOKYU」又は「tokyu」の表示を営業表示として使用することの差止め等を求めた事案である。
2 争いのない事実(1)原告は,大正11年9月2日に設立された,鉄道事業等を目的とする株式会社(設立時の商号「目黒蒲田電鉄株式会社」)であり,昭和17年5月1日,商号を現商号の「東京急行電鉄株式会社」に変更した。
(2)原告及び原告を中核とする企業グループ(原告,その子会社,関連会社・財団法人等で構成される企業グループ,平成17年3月時点における企業数297社9法人。以下「東急グループ」という。)は,「東急」の表示を営業表示として使用し,鉄道,バスの交通事業,小売事業,レジャー・サービス事業,ホテル事業,不動産事業,建設製造業等の諸分野において営業活動を行っている。
3 争点本件の争点は,?@被告による不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争の成否(争点1),?A差止めの必要性(争点2),?B上記各号の不正競争について同法3条適用除外を定める同法19条2号の適用又は類推適用の有無(争点3),?C原告の本訴請求について権利の濫用の成否(争点4)である。
争点に関する当事者の主張
1 不正競争の成否(争点1)について(1) 原告の主張ア 「東急」の営業表示の周知性著名性(ア)原告は,昭和21年12月,球団「セネタース」を買収して株式会社東急ベースボール倶楽部を設立し,同球団の球団名を「東急フライヤーズ」に改称した。
「東急フライヤーズ」は,昭和22年4月から昭和28年までの7年間,プロ野球球団として試合を行った。戦後娯楽の少なかった,この期間,国民的人気スポーツである野球の試合結果は,新聞・ラジオなどのマスメディアを通じて全国的に報道され,「東急フライヤーズ」を通じて「東急」の名称は全国的に知れ渡った。
(イ)原告は,昭和24年5月16日に東京証券取引所に上場した後,東急グループ各社は一時14社(現在は10社)も上場し,以来全国紙,地方紙を問わず日々,株式欄において「東急」が原告及び東急グループの営業表示として使用されている。
また,前記第2の2(2)のとおり,原告及び東急グループは,「東急」の表示を営業表示として使用し,鉄道,バスの交通事業,小売事業,レジャー・サービス事業,ホテル事業,不動産事業,建設製造業等の諸分野において営業活動を行っている。
なお,「東急」の表示は,原告の商号である「東京急行電鉄株式会社」の略称に端を発している。
(ウ)したがって,「東急」の表示は,遅くとも原告が上場した昭和24年ころには,原告の営業表示として全国的に需要者の間に広く認識され,周知又は著名となっていたから,周知又は著名な「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号又は2号)に当たる。
イ 被告による「TOKYU」及び「tokyu」の営業表示の使用(ア) ウェブアドレス被告は,「(略)」等をウェブアドレスとするウェブサイトを開設し,ウェブアドレスのドメイン名「(略)」に続けて,ユーザーID「tokyu」を営業表示として使用している。
(イ) ウェブサイトにおけるEメールの宛先等被告は,上記ウェブサイト(ホームページ)等において,新築・庭造り・改修等の工事を誘引する広告として,写真・解説等で施工例を示すなどして情報を提供しているが,そのホームページ上部に「TOKYUCONSTRUCTION ON THE WEB」と表示し,Eメールの宛先として「(略)」を,被告の英語表記として「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」を,被告の著作権者の表示として「Tokyu Construction co.;ltd」などを使用して,「TOKYU」及び「tokyu」をそれぞれ自己の営業表示として使用している。
なお,上記英語表記等は,いずれも漢字で表記できるものであるから,これらが,被告の商号「藤久建設株式会社」の読み方としての使用であって営業表示としての使用ではない旨の被告の主張は失当である。
ウ 営業表示の類似性(ア) 外観,称呼「TOKYU」又は「tokyu」の語と「東急」の語とは,外観は異なるものの,「とうきゅう」という称呼が生じる点において同一である。
(イ) 観念「とうきゅう」という称呼を通じて観念される語としては,「東急」のほかに,「冬宮」,「投球」,「討究」,「淘宮」及び「等級」がある。
しかし,「とうきゅう」という称呼を通じて営業表示として観念される語は,「東急」だけである。その他の語は,「非営業的な語」であって営業表示として観念されるものではない。
したがって,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とは,称呼を通じて観念的に類似している。
(ウ) 小括上記(ア)及び(イ)に加えて,原告の「東急」の営業表示が著名性を獲得していること(前記ア(ウ))を合わせ考慮するならば,取引の実情のもとにおいて,取引者,需要者は,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とを全体的に類似のものと受け取るおそれがあるというべきであるから,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示は,「東急」の営業表示と「類似商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)又は「類似のもの」(同項2号)に当たる。
混同を生じさせる行為被告の顧客をはじめ社会一般は,被告が「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示を使用することにより,あたかも被告が原告の系列会社であるかのような印象を受ける。
したがって,被告による「TOKYU」及び「tokyu」の営業表示の使用は,被告の営業を原告及び東急グループの営業と混同させるおそれがあるものであり,「他人の営業混同を生じさせる行為」(不正競争防止法2条1項1号)に当たる。
このことは,原告と被告が競争関係にあるか否かによって左右されるものではない。
オ まとめ以上によれば,被告が「TOKYU」又は「tokyu」の表示を営業表示として使用する行為は,不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争に該当する。
(2) 被告の反論ア 「東急」の営業表示の周知性著名性の主張に対し原告主張の各事実は不知であるが,原告が営業表示として使用する「東急」の表示が全国的に著名であること自体は争わない。
イ 「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示の使用に対し原告主張の被告のウェブサイトにおける「TOKYU」及び「tokyu」の表示は,被告の商号「藤久建設株式会社」の読み方である「とうきゅうけんせつかぶしきかいしゃ」のうち,「とうきゅう」の部分をアルファベットで表示したものである。上記表示は「藤久建設株式会社」との漢字表示が主体であり,アルファベット表示は読み方としての位置づけにすぎず,独立の営業表示ではない。
ウ 営業表示の類似性の主張に対し「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とは,称呼は「とうきゅう」又は「トーキュー」という称呼が生じる点で同一であるが,外観類似していない。
称呼が同一であるからといって,被告の取引の相手方が被告の営業を原告又は東急グループの営業と取り違える要因はない。被告の営む建設・造園業の取引の相手方,需要者は,宮城県内近県の企業や石巻地域の企業,一般家庭等であり,建設・造園業という業態から初対面の者と面談することなく依頼を受けることはあり得ない。ましてウェブアドレス等のドメイン名だけで工事の依頼を受けることは想定できない。需要者は,少なくともウェブサイトの画面を閲覧し,そうすれば被告の事業が原告の事業であるなどと誤解することはない。
また,原告及び東急グループが「TOKYU」及び「tokyu」の表示を使用していることは,宮城県や東北地方においては著名ではなく,「TOKYU」及び「tokyu」の表示が原告及び東急グループの営業表示として,全国的に著名であるとはいえない。
したがって,「TOKYU」及び「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示について,取引の実情のもとにおいて,取引者,需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれはない。
混同を生じさせる行為の主張に対し被告と原告とは,業種も,営業規模も,活動区域も異なり,全く競争関係にはなく,誰もが相互の営業を混同することはない。
また,被告は,ウェブサイトにおいて原告主張に係る「TOKYU」及び「tokyu」の表示を使用したことによって,「東急建設株式会社」等の東急グループに属する企業と勘違いされたことはなく,間違いメールを受けたこともない。
オ まとめ以上によれば,原告が主張する被告の不正競争は成立していない。
2 差止めの必要性(争点2)について(1) 原告の主張原告は,被告の前記1(1)オの不正競争によって営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれがあるから(不正競争防止法3条),被告が「TOKYU」又は「tokyu」の表示を営業表示として使用することの差止め等の必要がある。
(2) 被告の反論被告は,平成20年2月14日以降,自社のウェブサイトにおいて,「TOKYU」及び「tokyu」の表示を使用していない。
また,仮に被告がウェブサイトにおいて原告主張に係る「TOKYU」及び「tokyu」の表示を使用したとしても,原告が営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれはない。
3 不正競争防止法19条1項2号の適用又は類推適用の有無(争点3)(1) 被告の主張ア被告の創業者であるAは,自分の氏名から「藤久」の2字をとり,昭和49年に「藤久建設」(とうきゅうけんせつ)を創業し,昭和51年に,これを会社組織として被告(商号・「藤久建設株式会社」)を創設した。なお,Aは,昭和42年に,実家が営む「株式会社伊藤材木店」から独立して,「藤久(とうきゅう)材木店」の屋号で材木店を開業し,さらに,昭和46年に,ペットショップ「ドッグセンター藤久(とうきゅう)」を創設した。
このように被告は,Aの個人営業が法人成りしたものであるから,Aが主張した場合と同じ保護が与えられるべきである。
イしたがって,仮に原告主張の被告による不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争が成立するとしても,被告は,自社の設立以来の名称をそのまま使用しただけであって,「自己の氏名」を「不正の目的でなく使用」(同法19条1項2号)した場合と同視できるから,上記不正競争について同法3条差止請求権の規定の適用除外を定める同法19条1項2号が適用又は類推適用されるべきである。
(2) 原告の反論被告の主張は争う。
氏名とは「氏」と「名」であるところ,原告が差止めの対象としているのは,Aの氏の「藤」と名の「久」を採った「藤久」の表示ではなく,「TOKYU」及び「tokyu」の表示であり,これらの表示が氏名に該当しないことは明らかである。
また,不正競争防止法19条1項2号の解釈として,先祖の氏名を用いることができるか,自然人の氏名を会社の商号の中に使用することが許されるか否かなどを論ずるまでもない。
4 権利の濫用の成否(争点4)について(1) 被告の主張ア被告代表者(B)の父であるA(昭和8年11月生まれ)が被告(商号・「藤久建設株式会社」)を創設した経緯は,前記3(1)アのとおりである。
イ前記1(2)イのとおり,被告の商号のうち,「とうきゅう」の部分をアルファベットで表示すると,「TOKYU」あるいは「tokyu」と表記できるので,被告は,ウェブサイトにおいて自社の設立以来の名称をそのまま使用しただけのことである。
一方で,原告の本訴請求が認められるとするならば,たまたま読み方が同じであるというだけで(被告にとっては「本名」であるが,原告にとっては「略称」である。),東京の超一流の大企業である原告は,地方で地道に仕事をしている会社である被告が「自分の社名を名乗る」ことさえ禁止できることとなり,その結果,被告が自己の社名(本名)を名乗る権利(名称権,人格権)を侵害するという極めて不当な結果となる。
ウ したがって,原告の本訴請求は,権利の濫用に当たり許されない。
(2) 原告の反論被告の主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点1(不正競争の成否)について(1) 「東急」の営業表示の著名性ア 認定事実前記第2の2の争いのない事実と証拠(甲1ないし8(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア)原告は,大正11年9月2日に設立された鉄道事業等を目的とする株式会社であり,昭和17年5月1日に商号を現商号の「東京急行電鉄株式会社」に変更した後,昭和21年12月,球団「セネタース」を買収して株式会社東急ベースボール倶楽部を設立し,同球団の球団名を「東急フライヤーズ」に改称した。「東急フライヤーズ」は,昭和22年4月から昭和28年までの7年間,プロ野球球団として試合を行い,その試合結果は,新聞,ラジオ等により全国的に報道され,「東急フライヤーズ」を通じて「東急」の名称は全国的に知れ渡った。
(イ)また,原告は,鉄道事業の拡充のほか,その沿線エリアの開発のための不動産事業,流通事業等や,ホテル事業,レジャー・サービス事業(観光事業),文化事業などに進出し,各事業部門に子会社,関連会社・財団法人等を設立し,これらの会社等の企業グループである東急グループを形成してきた。
すなわち,原告及び原告を中核とする東急グループは,昭和30年代に,北海道や上信越において,鉄道,バスの交通事業,ホテル事業,観光事業などに進出して事業拡大を図り,昭和40年代に,「多摩田園都市」の開発及び「田園都市線」の敷設を本格化させ,昭和50年代に,ホテル事業,流通事業を充実させ,海外の太平洋エリアにおいても,開発事業,ホテル事業,流通事業,観光事業を展開した。
さらに,東急グループは,昭和60年代に,カルチャー事業,クレジットカード事業,CATV(ケーブルテレビジョン)事業への進出,複合文化施設「東急文化村」の開業,東急総合研究所の設立なども行った。
そして,原告及び東急グループは,現在に至るまで,「東急」の表示を営業表示として使用し,交通事業,流通事業,レジャー・サービス事業,ホテル事業,不動産事業,建設製造業等の諸分野において営業活動を行ってきた。
平成17年3月時点において,東急グループは,297社9法人で構成され,そのうち,上場企業は,原告,株式会社東急レクリエーション,東急不動産株式会社,東急建設株式会社,世紀東急工業株式会社,株式会社東急ストア,東急ロジスティック株式会社,株式会社ながの東急百貨店,株式会社東急コミュニティー,東急リバブル株式会社及びシロキ工業株式会社の合計11社である。
(ウ)原告が昭和24年5月16日に東京証券取引所に上場した後,東急グループ各社も続いて上場し(上場企業は一時14社となったが,現在は前記(イ)の11社から東急ロジスティック株式会社(現商号・ティーエルロジコム株式会社)を除いた10社),以来,新聞(全国紙,地方紙等)の「株式欄」に,「東急」の表示又は「東急レク」,「東急不」等「東急」の文字部分を含む表示が原告又は上記上場各社(2社を除く。)の表示として使用されてきた。
イ 判断前記アの認定事実を総合すれば,「東急」の表示は,原告の営業表示として全国的に取引者,需要者の間に広く知られていることが認められるから,「他人の著名な商品等表示」(不正競争防止法2条1項2号)に該当するものと認められる。
(2) 被告による「TOKYU」,「tokyu」の表示の使用ア 認定事実証拠(甲9,10,乙1ないし11(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア)被告代表者(B)の父であるAは,昭和42年,実家が営む「株式会社伊藤材木店」から独立する際,自己の氏名の中央2字「藤久」を取り出して,屋号を「藤久材木店」とした。Aは,上記屋号の「藤久」の部分を「とうきゅう」と称し,上記屋号は「とうきゅうざいもくてん」と読まれていた。
その後,Aは,昭和49年,被告の前身である「藤久建設」を創業し,昭和51年8月30日に会社組織として,土木,建築工事の請負等を目的とする被告(商号・「藤久建設株式会社」)を設立した。
被告は,設立以来,宮城県石巻市及びその周辺の地域において,建物建築工事,ガーデニング工事等の請負等の取引を行ってきた。被告の商号は,「とうきゅうけんせつ」と読まれていた。
(イ)被告は,遅くとも平成19年12月18日当時までに,「(略)」等をウェブアドレスとするウェブサイト(ホームページ)を開設し,そのホームページ上に,上記「(略)」のほか,ページ上部に「TOKYU CONSTRUCTION ON THE WEB」,「藤久建設株式会社」の直下に「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」,被告のEメールアドレスとして「(略)」の表示をしていた。
イ 判断(ア)被告が開設した前記ア(イ)のホームページ(ウェブサイト)に表示された,ウェブアドレス「(略)」のドメイン名に続く,フォルダ名部分にユーザーIDとして表記された「tokyu」の表示及びEメールアドレス「(略)」のユーザー名(ユーザーID)部分の「tokyu」の表示は,営業の主体を識別する機能を有しているものと解されるから,被告は上記各「tokyu」の表示を営業表示として使用したものと認められる。
また,上記ホームページに表示された,ページ上部の「TOKYU CONSTRUCTION ON THE WEB」の表示は,「TOKYU CONSTRUCTION」の部分が営業の主体を表示するものであることが認められる。そして,「CONSTRUCTION」は建設を意味する普通名詞であることに照らすならば,「TOKYU CONSTRUCTION」のうち,その営業の主体を識別する機能を有する要部は「TOKYU」の部分であると解されるから,被告は,「TOKYU」の部分の表示を営業表示として使用したものと認められる。
(イ)一方で,前記ア(イ)のホームページに表示された,「藤久建設株式会社」の直下の「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」の表示については,「藤久建設株式会社」と「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」が近接して位置し,「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」の文字は「藤久建設株式会社」の文字の4分の1程度の大きさであること等に照らすならば,「藤久建設株式会社」の英訳として付加的に表示されたものと認められるから,「TOKYU CONSTRUCTION CO.,LTD」の「TOKYU」の部分のみを取り出して,被告が「TOKYU」の営業表示を使用しているものと認めることはできない。
なお,原告は,本訴において,被告に対し,表札,看板,印章,印刷物,ウェブサイト,その他の営業表示物件から「TOKYU」又は「tokyu」の表示の抹消を請求しているが(前記第1の2),ウェブサイトを除く,表札等の営業表示物件に「TOKYU」又は「tokyu」の表示を被告が営業表示として使用していたことについて,具体的な主張立証をしていない。
(ウ)以上によれば,被告は,自社のホームページにおいて,「TOKYU」及び「tokyu」の表示を営業表示として使用していたことが認められる。
(3) 営業表示の類似性ある営業表示が不正競争防止法2条1項2号にいう他人の営業表示と類似のものに当たるか否かについては,取引の実情のもとにおいて,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(最高裁判所昭和58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁参照)。
そこで,この判断基準に基づいて,被告が使用する「TOKYU」及び「tokyu」の営業表示が原告の「東急」の営業表示と「類似のもの」に当たるかどうかについて検討する。
外観「東急」の語は,漢字2字を横書きして成るのに対し,「TOKYU」の語は,欧文字の大文字5字を横書きして成り,「tokyu」の語は欧文字の小文字5字を横書きして成るから,「東急」の語と「TOKYU」又は「tokyu」の語は,外観において異なることは明らかである。
イ 称呼称呼についてみると,「東急」の語は,「とうきゅう」との称呼を生じるものと認められる。
一方,「TOKYU」又は「tokyu」の語は,ローマ字読み又は英語風の読みとして,「ときゅ」,「ときゅう」,「とうきゅう」等の称呼が生じるものと認められる。
したがって,「東急」の語と「TOKYU」又は「tokyu」の語は,「とうきゅう」の称呼が生じる点で共通する。
観念(ア)前記(1)認定のとおり「東急」の表示は原告及び東急グループの営業表示として著名であることに照らすならば,「東急」の語から原告及び東急グループの観念が生じるものと認められる。
(イ)一方,「TOKYU」又は「tokyu」の語は,欧文字5字から成るものであるが,特定の意味を表す英単語その他の外国語の単語として一般の辞書に掲載されていることの立証はされておらず,「TOKYU」又は「tokyu」の語自体が特定の意味内容を有するものと認めることはできない。
また,「東急」の表示は著名な営業表示ではあるものの,「東急」の語をローマ字表記又は英語風の表記をする場合には,「TOKYU」のほかに,「T (※Oの上に^)KYU」,「TOUKYOU」,「T (※Oの上に^)KY (※Uの上に^)」,「TOUK OUYUU」等の表記が可能であること(原告の広報誌(甲2)中にTo(※oの上に-)kyuTamagawaLi も,「■東急多摩川線()」との記載(39頁)がある。)に照らすならば,「東急」の表ne示が著名であるからといって直ちに「TOKYU」又は「tokyu」の語から原告及び東急グループの観念が生じるということはできない。
もっとも,?@原告が平成17年(2005年)11月に発行した「2005/2006TOKYUCORPORATION」と題する広報誌(甲2)中には,上段に「2005/2006」下段に「TOKYUCORPORATION」とした表記が複数の頁の各右上部分等にみられるほか,原告の「□英文名」として「TOKYUCORPORATION」(30頁)との記載があり,また,「TOKYUCORPORATION」の文字から構成される文字部分と図形部分が結合した原告の社紋(33頁)の記載があり,さらに,平成8年(1996年)2月に原告がインターネット上に開設したホームページのウェブアドレスのドメイン名として「(略)」(49頁)の記載があること,?A原告が平成17年(2005年)10月に発行した「THETOKYUGROUP2005/2006」と題する広報誌(甲3)中には,「たまプラーザ東急ショッピングセンター」の建物の写真(8頁)が掲載され,その建物上部の広告塔の壁面に「TAMAPLAZATOKYUSC」との表示が,「東急百貨店・東横店」の建物の写真(23頁)が掲載され,その建物の外壁に「Tokyu」の表示が,「東急ハンズ・渋谷店」の入口付近の写真(24頁)が掲載され,その入口に「TOKYUHANDS」の表示がされていることが認められる。
しかし,上記?@及び?Aを含む,甲2,3の記載内容及び表示内容によって,「TOKYU」又は「tokyu」の語から直接原告及び東急グループの観念が生じると認めることは未だ困難であるといわざるをえず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(ウ)a次に,「TOKYU」又は「tokyu」の語は,「ときゅう」等の称呼のほか,「とうきゅう」の称呼も生じることは前記イ認定のとおりであるので,この称呼に基づく観念について検討する。
甲16(広辞苑第四版)には,「とうきゅう」の読みを持つ見出し語として,「冬宮」(「ソ連,レニングラード(もとペテルブルグ)にある宮殿。」の意),「投球」(「(野球などで)球を投げること。また,その球。」の意),「討究」(「物事の道理・真相をたずねきわめること。」の意),「淘宮」(「淘宮術に同じ。」の意)及び「等級」(「?@上下の位。段階。階級。?A天体の光度を示す語。」の意)との記載があり,「とうきゅう」の称呼に基づいて上記各見出し語の意の観念が生じることが認められる。しかし,甲16には,「とうきゅう」の読みを持つ見出し語として,「東急」は記載されておらず,他にこれを示した辞典等の証拠は提出されていない。
もっとも,「東急」の表示は原告の著名な営業表示であることに照らすならば,「とうきゅう」という称呼に基づいて「東急」を想起あるいは連想し,ひいては原告及び東急グループを想起し得ることは認められるが,「とうきゅう」という称呼に基づいて想起し得る営業主体は,原告及び東急グループに限られるものではなく,全国の各地域ごとの取引の実情に応じて,原告及び東急グループ以外の営業主体を想起し得るものである。このように原告及び東急グループは「とうきゅう」という称呼に基づいて想起し得る営業主体の一つにとどまり,「TOKYU」又は「tokyu」の語から「とうきゅう」という称呼を通じて原告及び東急グループの観念が生じるとまで断ずることはできない。
bこれに対し原告は,「東急」の営業表示が著名であることを考慮すれば,「とうきゅう」という称呼を通じて営業表示として観念される語は「東急」だけであるから,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とは,称呼を通じて観念的に類似している旨主張する。
しかし,?@被告は,昭和51年8月30日に設立後,現在まで32年以上にわたり,「藤久建設株式会社」(読み方・「とうきゅうけんせつかぶしきかいしゃ」)の商号で,宮城県石巻市及びその周辺の地域において建物建築工事,ガーデニング工事等の請負等の取引を行っていること(前記(2)ア(ア))からすれば,石巻市及びその周辺の地域では,「とうきゅう」との称呼から営業主体としての被告を想起する者も相当数存在するものとうかがわれること,?A加えて,大分県大分市内では,東九興産株式会社が,約38年間営業活動を行い,その商号の「東九」の部分を「とうきゅう」と称していること(乙13,弁論の全趣旨),岩手県盛岡市内では,昭和63年に設立された株式会社とうきゅう商事が営業活動を行っていること(乙14,弁論の全趣旨),岡山県倉敷市内では,株式会社東久ストアが営業活動を行い,その商号の「東久」の部分を「とうきゅう」と称していること(弁論の全趣旨)に照らすならば,「とうきゅう」という称呼に基づいて想起し得る営業主体は,全国の各地域ごとの取引の実情に応じて,原告及び東急グループ以外のものも含まれることは明らかであるから,「とうきゅう」という称呼を通じて観念される営業表示が「東急」だけであるとの原告の主張は採用することができない。
(エ)以上によれば,本件証拠上,「東急」の営業表示と「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示とが観念において共通するとまで認めるに足りない。
エ 判断前記アないしウの認定事実を総合すれば,「東急」の営業表示と「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示とは,いずれも「とうきゅう」の称呼が生じる点で共通点を見いだし得るにすぎず,その外観においては明らかに異なり,その観念においても共通するとはいえないから,取引者,需要者が,「東急」の営業表示及び「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるとまで認めることはできない。
そうすると,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示は,「東急」の営業表示と「類似のもの」(不正競争防止法2条1項2号)に当たるものとは認められない。
(4) まとめ以上のとおり,「東急」の営業表示と「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示は類似するものと認められないから,被告が「TOKYU」及び「tokyu」の表示を営業表示として使用した行為は不正競争防止法2条1項2号の不正競争に該当せず,また,上記各営業表示が類似のものと認められない以上,その余の点を検討するまでもなく,被告の上記行為は同項1号の不正競争にも該当しないというべきである。
(5) 付言なお,事案にかんがみ,本件の審理の経過について付言する。
当裁判所は,第3回口頭弁論期日(平成20年4月10日)に一旦弁論を終結したが,「東急」の営業表示と「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示との類似性についての審理が尽くされていないものと考え,弁論を再開した。その上で,当裁判所は,当事者双方に上記各営業表示の類似性に関する主張立証を補充するよう釈明した後,第5回口頭弁論期日(同年8月28日)に,当事者双方に対し,上記釈明後に追加された主張立証以外に他に主張立証がないことを確認の上,弁論終結に至ったものである。
2 結論以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がないことに帰するから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 関根澄子
裁判官 古庄研
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