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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ11138不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード デザイン /  代理人 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  営業上の情報 /  営業秘密 /  2条1項4号 /  2条1項5号 /  損害賠償 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 27846号 損害賠償等請求事件
東京都港区<以下略>
原告ジャパンスーパーバザール ネットワーク株式会社
同訴訟代理人弁護士安川幸雄 東京都千代田区<以下略>
被告株式会社ジュエリー・フオンド
同訴訟代理人弁護士茅根煕和
同 春原誠
同 和田健児 千葉市美浜区<以下略>
被告乙2
同訴訟代理人弁護士中久保満昭
同 古原暁
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/09/30
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告らは,原告に対し,連帯して金11億4840万6348円及びこれに対する被告株式会社ジュエリー・フオンドにつき平成19年12月21日から,被告乙2につき同月22日から,支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
22被告株式会社ジュエリー・フオンドは,別紙名簿目録記載の顧客名簿を一切使用又は開示してはならない。
3被告乙2は,別紙名簿目録記載の顧客名簿を一切使用又は開示してはならない。
4被告乙2は,原告に対し,別紙名簿目録記載の顧客名簿の一切の媒体を引き渡せ。
第2事案の概要本件は,原告において,第三者から購入して取得した別紙名簿目録記載の顧客名簿(以下「本件名簿」という。)が不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当し,被告乙2がこれを不正に取得し,被告株式会社ジュエリー・フオンド(以下「被告会社」という。)がこれを不正に利用したなどと主張して,それぞれ,被告会社の行為については同法2条1項5号又は6号の不正競争に該当し,被告乙2の行為については同法2条1項4号の不正競争に該当することを理由に,被告らに対し,連帯して損害賠償金11億4840万6348円及びこれに対する不正競争行為のあった後(訴状送達の日の翌日)である,被告会社については平成19年12月21日から,被告乙2については同月22日から,支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払と,本件名簿の使用又は開示の禁止等を求める事案である。
1前提となる事実(1)当事者等原告は,「1.衣服、装身具及び服飾雑貨の輸入、製造、加工、販売及び輸出2.繊維原料及び糸、生地、織物等の繊維製品の輸入、加工、販売及び輸出3.毛皮及び皮革並びに外衣、襟巻等の毛皮・皮革製品の輸入、製造、加工、販売及び輸出4.スポーツ用品、タオル・浴室用品等の日用品雑貨及び化粧小物の輸入、製造、加工、販売及び輸出5.美術品、工芸品、
時計及び宝飾品の輸入、加工、販売及び輸出6.寝具及び寝装品の輸入、
3製造、加工、販売及び輸出7.家具調度品、室内装飾品及び壁紙等の室内装飾用資材の輸入、製造、加工、販売及び輸出8.生花及び生花関連商品の製造、加工及び販売9.食品、飲料、健康食品の製造、加工及び販売10.古物の売買11.商品券の売買12.第1号乃至第11号記載の物品又はその包装、外装に関するデザインの企画並びに商標の使用権の取得及び再使用権の許諾・運用13.前期〔ママ〕各号に付帯又は関連する一切の業務」を目的とする株式会社であり,平成17年9月28日に「有限会社ビエンクラッセ」として設立され,その後,商号変更と組織変更により,現在の「ジャパンスーパーバザールネットワーク株式会社」となった。(弁論の全趣旨)被告会社は,貴金属,服飾,雑貨等の販売を業とする株式会社である。
(原告と被告会社との間で争いのない事実,弁論の全趣旨)株式会社ビソーニ(以下「訴外会社」という。)は,服飾,ファッション,時計,貴金属,バッグ等の有名ブランド特選品の展示会販売等を業とする株式会社であった。(原告と被告会社との間で争いのない事実,弁論の全趣旨)被告乙2は,訴外会社のもと社員であって(争いのない事実),営業推進部長であったが,平成16年9月30日付けで訴外会社から解雇された(原告と被告乙2との間で争いのない事実,弁論の全趣旨)。
(2)訴外会社の破産訴外会社については,東京地方裁判所において,平成16年3月18日に民事再生手続が開始され(同庁平成16年(再)第60号),同年8月18日に再生計画が認可されたものの,平成17年9月20日に手続廃止となり,同年10月19日に破産手続が開始された(同庁平成17年(フ)第19400号)。(争いのない事実,甲11の1〜甲12の2,弁論の全趣旨)(3)本件名簿の売買4訴外会社は,平成17年8月17日,Aに対し,本件名簿を代金200万円で売却した(以下「第1売買」という。)。(甲10の1,弁論の全趣旨)第1売買の契約書(「顧客名簿及びその入出力機材売買契約書」,甲10の1)には,次の記載がある。
第1条株式会社ビソーニ(以下甲という)はA(以下乙という)に対し下記の甲の保有するすべての顧客名簿及びそれを入出力する為の機器一式を売り渡すことを約し、乙はこれを買い受ける。
記平成17年8月末日時点に甲の保有するすべての顧客名簿。(ここでいう顧客名簿とは、顧客様の住所氏名、郵便番号、性別、メールアドレス、お買い上げ情報および他のデータ上のすべての情報を指す)及び機器一式第2条売買の条件は下記のとおりとする。
(1)代金総額金弐佰萬円支払条件引渡し時に現金にて支払い。
(2)引渡し所有権移転引渡しをもって完了とする。」その後,Aは,平成17年9月1日,設立準備中の原告の前身会社(有限会社ビエンクラッセ)に対し,本件名簿を代金250万円で売却した(以下「第2売買」という。)。(甲10の2,弁論の全趣旨)第2売買の契約書(「顧客名簿及びその入出力機材売買契約書」,甲10の2)には,次の記載がある。
第1条A(以下甲という)は有限会社ビエンクラッセ(以下乙という)に対し下記の甲の所有するすべての顧客名簿およびそれを入出力する為の機材一式を売り渡すことを約し、乙はこれを買い受ける。
記5平成17年9月5日時点に甲の所有するすべての顧客名簿(ここでいう顧客名簿とは、顧客様の住所氏名、郵便番号、性別、メールアドレス、お買い上げ情報および他のデータ上のすべての情報を指す)および機器一式第2条売買条件は下記のとおりとする。
(1)代金総額金弐佰伍拾萬円支払い条件引き渡し時に現金にて支払い。
(2)引き渡し所有権移転引き渡しをもって完了とする。」2判断すべき事項(1)本件名簿が不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当するか否か(2)原告の主張の要旨ア本件名簿は,別紙名簿目録末尾ただし書記載のホストコンピュータとリンクするパソコンによって,名簿の追加,訂正,変更等の管理がされ,これに接続するラインプリンタによって宛名ラベルのプリントアウトがされる(これらのパソコンとプリンタを,以下「本件機器」という。なお,第1売買の「入出力する為の機器一式」及び第2売買の「入出力する為の機材一式」とは,本件機器を指す。)ものであり,本件名簿と本件機器とは一体をなしている。
イ訴外会社において,本件名簿の管理者(責任者)と本件機器の取扱者は,それぞれ特定の者に固定されており,バックアップ用のフロッピー等の情報媒体は,訴外会社の社内倉庫に管理され,民事再生の申立て以降,取扱者の机の鍵付きの引出しに管理されて,その鍵は取扱者のみが所持していたものの,本件機器の取扱いの際にパスワードの設定はされていなかった。
訴外会社の社内では,本件名簿にマル秘の指定がされており,訴外会社の他の従業員が本件名簿を参照する場合は,顧客情報を必要とする理由を明らかにし,取扱者に画面上の表示をさせるにとどめ,例外的にプリントアウトをするときには管理者の許可を要していた。
6原告においては,本件名簿の管理者(責任者)と本件機器の取扱者を同一人に固定し,情報媒体は社内の耐火金庫に管理され,本件機器の取扱いにはパスワードを設定している。このほか,原告の社内では,本件名簿にマル秘指定をして,その重要性等を従業員に徹底しており,原告の他の従業員が本件名簿を参照する場合の方法は,訴外会社のときと同様である。
また,バザールのダイレクトメールを発送するため,発送業者に業務を委託するに際しては,原告は,訴外会社の時代と同様,発送業者に対し,本件名簿の情報自体は交付せず,宛名シール・ラベルのみ1セットずつを交付しており,発送業者において,バザール開催案内等を詰めた指定封筒にこれを貼付して発送することになる。
ウなお,訴外会社は,平成17年9月20日に再生手続廃止となり,同年10月19日に破産手続開始に至った。訴外会社の代表取締役Bら関係者は,訴外会社の主催で「ビソーニスーパーバザール」を開催することが不可能であったため,別の形でその開催を継続することを模索し,受け皿会社として,原告の前身会社を設立することとした。他方,訴外会社とその受け皿会社である原告にとって,最も重要な本件名簿については,訴外会社の従業員にも知られることなく(知られた場合,万一の漏洩の危険性も危惧されたため),これを移管することが必要であった。
そこで,Bの信頼のおける友人であったAに対し,訴外会社から第1売買がされた。その際,BとAとの間で,?@本件名簿と本件機器が営業秘密であり,その内容を開けてはならないこと,?A受け皿会社(原告の前身会社)の設立準備ができ次第,譲渡すること,?BもしAのもとで漏洩された場合に責任を追及すること,が確認された。そして,その後,Aから設立準備中の原告の前身会社に第2売買がされたものである。
エしたがって,本件名簿については,営業秘密としての秘密管理性を肯定することができる。
7第3当裁判所の判断1本件名簿の営業秘密該当性について不正競争防止法2条6項によれば,「『営業秘密』とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」であり,このうちの「秘密として管理されている」といえるためには,当該情報が客観的に秘密として管理されていると認識することができる状態にあることが必要である。
そこで,本件名簿についてこの秘密管理性の有無を検討すると,本件名簿は,もともと訴外会社において作成,管理され,これが第1売買と第2売買を経て,原告が管理するに至ったものであるから,?@訴外会社における秘密管理性,?A第1売買の買主であるAにおける秘密管理性,?B原告における秘密管理性がそれぞれ問題となり得る。
原告は,訴外会社における本件名簿の管理について,管理者と取扱者を特定の者に固定し,バックアップ用の情報媒体を鍵付きの引出し等に管理し,マル秘指定をして一般従業員のアクセスを制限していたなどと主張する。しかしながら,原告は,本件訴訟の審理において,訴外会社のもとにおける本件名簿の管理状況の手がかりとなる資料が残っていない旨を述べており,原告において,原告の上記主張を裏付ける証拠を準備することができなかったものである。
そして,仮に,訴外会社における秘密管理性が認められたとしても,次に,第1売買の買主であるAにおける秘密管理性が問題となる。この点について,原告は,BとAとの間で,?@本件名簿と本件機器が営業秘密であり,その内容を開けてはならないこと,?A受け皿会社(原告の前身会社)の設立準備ができ次第,譲渡すること,?BもしAのもとで漏洩された場合に責任を追及すること,が確認されたなどと主張する。
しかしながら,本件名簿の第1売買の契約書には,このような営業秘密であることを前提とした条項は存在せず,同契約書は,単なる名簿とその機材の売8買契約書というほかないものであって,この点は,第2売買の契約書も同様である。このほか,本件名簿がAのもとで営業秘密であることを前提として管理されていたと理解し得るような客観的な証拠はない。
以上のとおりであるから,本件名簿については,原告のもとで,秘密管理性などの営業秘密の要件を充たしているか否かを検討するまでもなく,原告が本件名簿を取得する以前の時点において,営業秘密としての秘密管理性を充たしていたことの立証がないものというほかない。
2結論したがって,原告の請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
追加
9名簿目録原告の管理,保管する下記の44万0588件分(ただし,平成19年10月3日時点)の顧客名簿記ステータス1172件/自「C」至「(有)D」ステータス21万6482件/自「E」至「F」ステータス318万7363件/自「G」至「H」ステータス423万6571件/自「I」至「J」計44万0588件ただし,もとの作成者の株式会社ビソーニにおいて,IBM社製「AS400アドバンテージ」(「磁気ディスク装置010-0027559」,「磁気テープ装置001-0046672」,「システム装置300-00A7194」)をホストコンピュータとして作成された顧客名簿
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子