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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ネ2866不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成16ワ10351不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成16ワ18090不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  商標登録 /  需要者 /  特段の事情 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  類似商品 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  過失 /  逸失利益 /  利益額(利益の額) /  デザイン /  侵害 /  著名表示(著名性) /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  代理人 /  代表者 /  善意無重過失 /  請求権者 /  商品表示性 /  混同のおそれ(混同) /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  2条1項5号 /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 /  販売数量 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 13847号 不正競争行為差止等請求事件
原告 ゴールドフラッグ株式会社
訴訟代理人弁護士 松本司 緒方雅子
補佐人弁理士 森義明
被告 株式会社ダイショウコーポレーション
訴訟代理人弁護士 中嶋邦明
訴訟代理人弁理士 東尾正博 田川孝由
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2006/01/23
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,1422万8864円及びこれに対する平成15年12月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求の趣旨
1 被告は,別紙イ号物件目録記載の商品を輸入・販売してはならない。
2 被告は,前項の商品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,1673万9840円及びこれに対する平成15年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は,米国企業が製造販売するブラジャーの日本国内における独占的販売権者である原告が,同じくブラジャーを輸入・販売する被告に対し,@被告のブラジャーの形態は原告のブラジャーの形態を模倣したものである(不正競争防止法2条1項3号),A原告のブラジャーの形態は,原告の出所を表示する商品表示として周知性及び著名性を有するところ,被告の商品の形態は原告のブラジャーの形態と類似し,原告の商品と混同のおそれがある(不正競争防止法2条1項1号及び2号),として,(ア)上記1,2号及び同法3条1項に基づき被告のブラジャーの輸入・販売の差止め,(イ)上記1,2号及び同法3条2項に基づき被告のブラジャーの廃棄,(ウ)主位的に上記3号,予備的に上記1,2号及び同法4条に基づき被告のブラジャーの販売によって原告が被った1673万9840円の損害賠償及びこれに対する不正競争行為の後である平成15年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
2 前提事実(証拠を掲記しないものは争いがないか弁論の全趣旨により容易に認められるものである。) 1 原告は,平成15年1月30日,米国カリフォルニア州法人の「Bragel International Inc.」(以下「ブラジェル社」という。)との間で,同社の開発,販売に係るブラジャー(商品名:NuBra。以下「原告商品」という。)について,原告を日本国内における独占販売権者とする旨の契約を締結し(甲2),同月中の得意先へのサンプル販売の後,翌2月から一般向けに同商品を輸入,販売した。
原告商品の形態は,別紙原告商品目録添付写真のとおりである。
2 被告は,平成15年6月下旬ころ,別紙イ号物件目録添付写真のブラジャー(商品名:Natural Bra。以下「被告商品」という。)を輸入し,同年7月ころに合計8320個販売した。
3 なお,本件のうち,不正競争防止法2条1項3号関係では,過去の被告の行為による損害賠償請求のみが問題とされていることから,不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成17年法律第75号)附則2条により,同改正前の不正競争防止法が適用される。以下,同号関係で法文を摘示する際は,同改正前のものである。
また以下では,不正競争防止法の適条を示すときには,法律名を省略することがある。
3 争点 (1) 不正競争防止法2条1項3号関係 ア 原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態か。
イ 被告商品の形態は原告商品の形態模倣したものか。
ウ 原告商品は,最初に販売した日から3年を経過したものか。
エ 被告は,被告商品を輸入する時に,被告商品の形態が原告商品の形態模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか。(12条1項5号) オ 原告は,不正競争によって営業上の利益侵害された「他人」(4条)に該当し,損害賠償請求をなし得る地位にあるか。
(2) 不正競争防止法2条1項1号関係 ア 原告商品の形態は周知な商品表示か。
イ 被告商品は原告商品と類似し,混同のおそれがあるか。
(3) 不正競争防止法2条1項2号関係 ア 原告商品の形態は著名な商品表示か。
イ 被告商品は原告商品と類似するか。
(4) 全請求共通 被告の故意又は過失の有無及び原告の損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(通常有する形態)について 【被告の主張】 原告は,原告商品の形態の特徴として,@使用者の左右乳房上に独立して置かれる2個のカップよりなり,A肩ひも(ショルダーストラップ),横ベルト等身体に装着する部材がなく,B各カップの内側には粘着層を備えているとの点を主張している。
しかしながら,(ア)実開昭57-44110号公報(乙1及び2),(イ)実開平1-177212号公報(乙3及び4),(ウ)実開平3-45911号公報(乙5及び6),(エ)特開平11-323616号公報(乙7)には,上記@ないしBの形態を具備したブラジャーが開示されている。
また,(オ)争点(1)ウで指摘するとおり,従前,ブラジェル社が「NuBra」商標を出願する際に使用証明として添付した写真に係る商品(乙21)が存在した。
したがって,原告商品の形態は,ブラジャーの形態として新規なものではなく,この種の粘着式のブラジャーが「通常有する形態」であるにすぎない。
【原告の主張】 被告の主張は争う。
(1) 原告商品は,別紙原告商品目録記載のとおりであって,通常のブラジャーが有しない次の新規な形態を有している。
@ 使用者の左右乳房上に独立して置かれる2個のカップよりなり A 肩ひも(ショルダーストラップ),横ベルト等身体に装着する部材がなく B 各カップの内側には粘着層を備えている (2) 不正競争防止法2条1項3号(以下,単に「3号」ということがある。)の保護の対象となる商品形態は,その模倣によって競争上の不公正が生じると評価し得るような競業価値を備えた商品形態であることが必要であると解されているものの,特許法でいうところの新規性・進歩性や創造性を具備しなければならないことを意味するものではない。この点,原告商品は,肩ひもや横ベルト等の部品を何ら用いることなく乳房に直接カップを粘着させるという従来のブラジャーとは全く形態の異なるブラジャーである。
また,不正競争防止法が規制するのは「商品形態」であるから,単なるアイデアにとどまる場合には,3号の保護の対象とはならない。あくまで商品の「形態」という外観をとる必要があるのである。被告が争点(1)アに関する被告の主張の(ア)ないし(エ)で指摘する従前のブラジャーの中で,商品化されて市場に流通しているものはせいぜい乳首を覆い隠す乳頭キャップ,いわゆるニップレス程度であって,その他のものはアイデア段階にとどまっているに過ぎず,3号で保護されるべき「商品形態」に当たらない。そしてニップレスは,乳首を隠すことを目的とするものであり,その外観も機能効用も原告商品とは全く異なるものである。
また,被告の主張の(オ)に係る商品は,争点(1)ウに関する原告の主張のとおり,実際に商品化はされていないものである。
2 争点(1)イ(模倣性)について 【原告の主張】 被告商品は,原告商品と同じく,争点(1)アに関する原告の主張(1)の@ないしBの形態を有している。
また,原告商品は,ストラップ及び横ベルトがなく,また何ら部品を使用することなく乳房に直接粘着させる従来には存在しなかった構造のブラジャーであり,原告が日本国内で販売を開始するや,原告商品は女性の間で大変な好評を博し,インターネットやテレビ,雑誌等でも頻繁に紹介され,特に若い女性の間では知らない者がいないほどの商品となり,ブラジャーの世界で革命的ともいえる現象を引き起こした。
このような事情に鑑みれば,被告商品は原告商品の形態模倣したものである。
【被告の主張】 否認する。
3 争点(1)ウ(3年経過)について 【被告の主張】 ブラジェル社は,商標「NuBra」を米国特許商標庁に2001(平成13)年12月3日に商標登録出願したが,その際,同商標の最初の使用の日について,@何れかの国での最初の使用の日(FIRST USE ANYWHERE DATE)は1999年(平成11年)3月1日,A州際通商上の最初の使用の日(FIRST USE IN COMMERCE DATE)は2000年(平成12年)3月1日であると主張し,その使用を証する見本(SPECIMEN)として,原告商品を収納した包装用容器に商標「NuBra」が表示されていることを示す写真と原告商品の着用状態を示す写真を提出した。
したがって,原告商品は,ブラジェル社によって1999年(平成11年)3月1日には販売され,2000年(平成12年)3月1日からは州際通商(他州又は外国との取引)までされていたのであるから,被告が被告商品を輸入販売した平成15年6月当時は,原告商品が最初に販売された日から既に3年を経過していた。
【原告の主張】 (1) ブラジェル社が原告商品を最初に販売したのは,2002年(平成14年)10月である。
(2) 被告が指摘するブラジェル社の商標登録出願に関する経緯は次のとおりである。
同出願は,米国商標法上の「使用に基づく出願」であったため,使用証明(specimens)として,当時ブラジェル社が販売していたブラジャーである「Gel Bra」に縫いつけられていたシリコンパッドのみを取り出し,同パッドに粘着材を塗着したものをモデルに着用させた写真を使用証明として提出した。当時,ブラジェル社は,既存商品として「Amazing Breast Enhancer」という普通のブラジャーの裏面ブラカップ内に挿入するためのシリコン製の互いに独立したパッドを販売していたところ,このパッドのカップ内面に粘着シリコンを塗着する商品アイデアを有していた。そして,この商品が商品化できたら「NuBra」として販売したいとの思いが先立ち,これ自体を商標登録しておけば,現実に商品化した際に使用できるとの素人的な発想のもと,上記出願をおこなったのである。つまり,商品が完成する前に商標を出願しようとしたのであるが,米国は使用主義に依拠しているため,「NuBra」の商標を登録するためには,使用証明が必要であり,それ故,既存商品であるGel Braのパッドを加工して出願をおこなったのである。
その後,米国特許商標庁から,上記使用証明(出願書類に添付した写真)には商標登録出願している「NuBra」のロゴが記載されていないこと等を理由に,使用証明として不適切であるとして,タグや商品パッケージなどの提出を求められた。しかしながら,ブラジェル社は,原告商品が商品として完成しておらず,商品化もしていなかったため,米国特許商標庁が要求する適切な使用証明を送付することは不可能であった。そのため,原告商品のアイデアの元となっていた「Amazing Breast Enhancer」のパッケージに画像処理を施し,「NuBra」の商標を張り付けた写真を審査官に対して電子メールで送付した。もっとも,上記電子メールが審査官に届かなかったため,上記出願に対する米国特許商標庁からのオフィス・アクション(日本の拒絶理由通知に相当)に対応できず,2002年9月9日には取下げ扱いとなったのである。
したがって,被告指摘のような,商標登録出願時に原告商品が米国で販売されていた事実は存在しない。
4 争点(1)エ(善意無重過失)について 【被告の主張】 被告がイ号物件の輸入をしたのは,平成15年6月下旬頃である。また,原告商品及びその形態は,この当時においては,わが国において周知ではない。したがって,仮に被告商品の形態が原告商品の形態模倣したものであるとしても,被告はそのこと知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失はない。
よって,被告による被告商品の輸入販売行為については,12条1項5号により,3条ないし5条の適用が除外される。
【原告の主張】 争う。
5 争点(1)オ(請求主体性)について 【原告の主張】 (1) 原告は,原告商品について日本国内における独占販売権を有する者であるから,不正競争によって営業上の利益侵害された「他人」(4条)に該当する。
(2) 被告は,自ら商品を開発した者でない独占販売権者は,3号の保護を受けないと主張する。
ア しかし,開発者が開発利益を回収する方法は,自ら商品を販売することによって利益を得る場合ばかりではない。自らは製造販売せず,他者に製造を許諾したり独占販売権を設定したりすることで開発経費を回収することも考えられるのである。また,開発者が外国企業のように日本国内での提訴を困難ならしめる事情がある場合は,形態模倣行為は放置されることになるが,立法者が,このような結果を積極的に肯定しているとは考えられない。
本件で,開発者であるブラジェル社が原告に独占販売権を設定したのは,我が国の下着業界で実績があり,国内の販売ルートを有している原告に独占販売権を設定することで,自己の開発商品ヌーブラの日本国内での販売をめざし,この販売により開発に要した費用・労力の回収を図ろうとしたのであるが,被告のような解釈では日本国内で販売ルートを持たないブラジェル社の商品形態保護に関する利益は確保されない。実際,ブラジェル社は,日本国内に関係法人はおろか,事務所さえ有しておらず,人員も配置されていない関係上,模倣行為の調査等は困難であるし,また,法体系も異なる日本において提訴することは困難な事情があったのである。しかも,3号に基づく請求権は,最初に販売された日から起算して3年という短期間の請求権であるから,なおさらである。つまり,本件提訴は,事実上,原告しかできないという状況にある。
イ 他方,独占販売権者も開発者とは別の独自の利益を有する。すなわち,販路の開拓・拡大のための資本の投下という負担のほかに,独占販売契約特有の一定の販売数量の確保という負担等がある。
本件においても原告は開発者であるブラジェル社より,年間の一定数量の販売を契約継続の条件とされているのであるから,形態模倣行為を停止させる独自の利益を有している。本件においても,原告は原告自身の利益確保のために本件提訴をしたのであって,ブラジェル社の利益を代弁しているわけではない。ただ,原告自身の利益を確保することは,開発者であるブラジェル社の利益を保護することになり,3号の趣旨に合致すると主張しているのである。
ウ 加えて,元々,形態模倣行為自体が差止請求及び損害賠償請求の対象となる違法行為であるから,その請求が開発者からなされようが,独占販売権者からなされようが,模倣者の側からみれば変わりがあるわけではない。逆に,開発者のみが請求権者であるという解釈を採用するなら,模倣者は,自らの行為,事情とは関係なく,望外の利益を得ることになる。すなわち,開発者が自ら販売せず,他者に独占製造権又は独占販売権を設定している場合は,4条に基づく損害賠償請求もその額は5条1項侵害者利益ではなく,3項に基づく使用料相当額に限定されることになる。模倣者にとって開発者が自ら販売していないという偶然の事情によって限定された損害賠償義務しか負担しないことになる。
エ 以上の原告の主張に対して,開発者であるブラジェル社に代わって,原告が3号に基づく提訴をするのは,弁護士代理の原則並びに訴訟信託の禁止を潜脱するとの反論があるかもしれない。しかしながら,原告は前述したように独自の利益に基づき請求しているのであって,ブラジェル社の利益に基づき請求しているわけではない。また,原告代理人は弁護士であり,かつ,ブラジェル社には前記のような訴訟追行を困難ならしめる事情があるから,弁護士代理の原則並びに訴訟信託の禁止の制限を回避,潜脱するおそれがなく,かつ,これを認める合理的必要がある場合といえる。
オ また条文上も,不正競争防止法2条1項3号に基づく差止請求権者は,「不正競争によって営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれがある者」(3条ないし5条)とされているだけで,開発者に限定されているわけではない。
カ 以上より,被告の主張は失当である。
仮に独占販売権者一般につき,上記解釈が無理であるとしても,外国の開発者の開発商品を日本国内で独占的に販売する等の特段の事情がある場合は,該独占販売権者に3号に基づく請求権が認められるべきである。
【被告の主張】 (1) 3号の趣旨は,先行者が資金や労力を投下して考案,開発した商品の新規形態を,後行者が模倣して自らの商品とすることが市場競争上の不公正な行為であるから,これを規制することにある。したがって,同規定の保護を受け,損害賠償を請求することができる者は,先行者である考案,開発者に限られるから,この先行者から単に商品を輸入販売する者は,同規定の保護を受けることはできない。
ところで,原告商品は,ブラジェル社によって考案され,原告は,平成15年1月30日のブラジェル社との契約によって原告商品の日本における独占的販売権者となり,同年2月1日から原告商品の輸入販売を開始している。したがって,原告は,原告商品の単なる輸入販売業者であるにすぎず,原告商品の考案,開発には何の関与もしていない。
したがって,仮にブラジェル社が原告商品の考案者,開発者として同法の保護を受け得るとしても,単なる輸入販売業者であるにすぎない原告は同法の保護を受けることはできない。
(2) 原告は,3号の立法趣旨について,開発者の商品形態開発のために投資した費用・労力の回収を容易ならしめるため,模倣者の模倣行為を禁止したものであることを前提として,本件では開発者であるブラジェル社は,日本における独占販売権を有する原告による原告製品の販売を介して,その開発費用・労力の回収をすることができるのであるから,原告も同規定の保護を受けなければ,開発者であるブラジェル社の保護は図れない旨主張する。
しかしながら,3号の趣旨は,原告の前提とする開発者の「商品形態開発のために投資した費用・労力の回収を容易ならしめるため」のものではなく,「模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場において競合することを不正競争として規制すること」にある。
このように,同規定の趣旨は,原告主張のように商品形態開発者の開発費用等の回収を容易なからしめるためのものではなく,開発費用等をかけない模倣者の模倣行為を不正競争とすることよって,開発者利益を保護することにあるから,原告商品の開発者でない原告は3号による請求主体ではない。
(3) 原告は,独占販売権者として開発者とは異なった独自の利益を有するとし,原告自身の利益確保のために本件提訴をした旨主張する。
しかし,3号はこのような開発者以外の者の独自の利益まで保護するものでないことは上述のとおりである。
(4) また,原告は,日本における独占販売権者である原告にも3号による請求権がある理由として,開発者にのみ3号による請求権があるとすれば,開発者が自ら開発商品を販売するか,他社に独占販売権等を認めているかによって,開発者が模倣者に請求できる損害賠償の額が相違するのは公平を欠く旨主張し,また,開発者であるブラジェル社は外国企業であるから,同社による提訴が困難である旨主張している。
しかしながら,開発者が他人の模倣によって被る損害は,場合によって様々であるから,一律に論ずることができないのは当然であり,また,外国企業であっても原告適格はあるから,原告主張の上記理由は成り立たない。
6 争点(2)ア(周知商品表示性)について 【原告の主張】 (1) 原告商品は,争点(1)アに関する原告の主張のとおり,通常のブラジャーが有しない新規な形態を有している。
また,原告商品は,平成14年10月から米国及び台湾で販売されるや大好評を得た商品であるが,平成15年2月1日より日本国内で販売開始された際にも大ヒットした商品である。このことは,全国のデパートや下着店で話題の商品として売り場の最前列に陳列され,テレビの情報番組でも「今大ブームの商品」として取り上げられ,また女性誌のみならず「AERA」「日経トレンディ」などの雑誌,新聞等でも頻繁に紹介されたことからも裏付けられる(甲3の1ないし16)。
したがって,原告商品の形態は,原告の出所表示として周知性を獲得している。その時期は,初めてテレビで紹介されたのは平成15年3月6日であるが,これらマスコミでの紹介が商品の大ヒットより少し遅れることを考慮すれば,遅くとも平成15年3月であるといえる。
(2) 被告は,同種商品や並行輸入品の存在を指摘する。
しかし,商品名「ヌーブラ」(乙10,18,19)を除くいずれの商品も,原告商品の模倣品にすぎない以上,模倣品が多数流通しているからといって,被告の行為が正当化されるはずがない。
原告商品と同一形態のブラジャーが市場に多数流通し始めたのは,いずれも原告商品が大ヒットしたことに乗じたものである。すなわち,原告商品が人気商品となったのはその特異な形態ゆえであるところ,複数の業者が原告商品の模倣品を製造・販売して利益を得ようとしたため,原告商品と同一形態のブラジャーが多数出回ったのである。模倣品を取り扱う各業者は,原告商品の形態模倣するのはもちろんのこと,キャッチコピーや包装箱のデザイン,商品名に至るまで,需要者に原告商品と誤認混同を生ぜしめる販売政策をとっている。被告は商品形態模倣者であり,その商品の販売行為は不正競争行為として差止め及び損害賠償請求の対象となる行為であるから,他に多数模倣品が存在するからといって,原告商品が通常有する形態であり,よって出所表示機能を有しないとする被告の主張は本末転倒である。
また,並行輸入品が販売されるのは,原告商品が著名だからこそである。
並行輸入品が販売され始めたのは,原告商品が我が国で爆発的なヒット商品となった後であり,これを知った業者が,独断で輸入を開始したものである。既に周知・著名であり,特に積極的な営業活動をしなくても利益を得られることが確実であると見越したからこそ,並行輸入をおこなう業者があらわれたのである。いわば,並行輸入は当該商品が周知・著名であることの裏返しといえる。また,ブラジェル社は原告に対し我が国における独占販売権を付与し,並行輸入を防ぐ最大の努力をするとしており,積極的に並行輸入を認めているわけではない。
したがって,被告の上記主張は全く当を得ないものである。
(3) 被告は,原告商品につき,原告名が商品の取扱者として必ずしも常に大きく記載されているわけではないことを根拠に,出所が原告であることの出所表示としては認識されていないと主張する。
しかしながら,商品形態出所表示機能を有する場合は,具体的に誰が出所であるかまでを需要者に認識させる必要はない。つまり,本件商品形態の商品の出所が原告であるゴールドフラッグ株式会社であることまで需要者に認識させることではない。出所はあの商品形態の商品を販売している者との抽象的な認識で足りるものである。
したがって,被告の上記主張は失当である。
【被告の主張】 (1) 原告商品の形態は,同種ブラジャーが通常有する形態であるにすぎないことは,争点(1)アに関する被告の主張のとおりである。
(2) また,市場には,原告商品と同一形態のブラジャーとして,平成15年夏ころの時点で,「ユーブラ」(乙8),「ラ・ブラ」(乙9),「ヌーブラ」(乙10。原告商品の並行輸入品と思われる。),「ファンシーブラ」(乙11),「ユーブラ」(乙12),「アンブラ」(乙13),「ユーブラ」(乙14),「ラ・ブラ」(乙15),「アンブラ」(乙16),「Beauty Bra」(乙17),「ヌーブラ」(乙18),「ヌーブラ」(乙19),「ヌーブラ」(検乙2。原告商品の並行輸入品と思われる。)が販売されていた。
したがって,原告商品の形態によっては,ブラジェル社の「ヌーブラ」と他の同種商品との出所を識別することはできず,またブラジェル社の「ヌーブラ」のうち,原告取扱いに係るものと原告以外の者の取扱いに係るものとを識別することもできないから,原告商品の形態は,2条1項1号にいう周知な商品等表示ではない。
(3) ブラジェル社製のブラジャー「ヌーブラ」を採り上げた新聞雑誌の記事(甲3の1ないし16)には,この商品の形態や使用法,商標「NuBra」「ヌーブラ」,製造元である米国のブラシェル社等が記載されていても,商品の取扱者として原告が必ずしも常に大きく記載されてはいない。
また,同種商品を含めて,記事や広告等に販売者として記載されたものは,@原告商品以外の同種商品であって,原告以外の者が取扱者として記載されているもの,A原告商品であって,取扱者の記載がないもの,B原告商品であって,原告以外の者が取扱者として記載されているもの,C単に原告の略称「ゴールドフラッグ」のみが記載されているもの,D原告(その略称を含む)が日本総代理店,輸入代理店,輸入総代理店又は総代理店として記載されているものがあり,この種のブラジャーが新聞雑誌等に取り上げられているとしても,その形態は同種商品の出所を識別する出所表示として認識されていないし,ましてや出所が原告であることの出所表示としては広く認識されるにはいたっていない。
また,原告商品は,包装用紙製外箱の表の面に商標「NuBra」が大きく印刷され,裏面には「Bragel International Inc.」と製造元が明瞭に印刷されているのに対して,原告の商号はこの外箱に直接には記載されず,外箱に貼付した小さなラベルに輸入元として表示されているにすぎない。
このように,原告商品以外の同種商品も広く出回ているばかりでなく,原告以外の者もブラジェル社製の原告商品を日本に適法に輸入販売している。したがって,原告は日本における一輸入販売業者として認識されているにすぎず,原告商品の形態が原告の商品を示す出所表示として認識されているものではなく,不正競争防止法2条1項1号における原告商品の商品主体は原告ではないから,原告は同法3条及び4条差止め等及び損害賠償の請求の主体となり得ない。
7 争点(2)イ(混同のおそれ)について 【原告の主張】 被告は,原告商品と同一形態の被告商品を販売しているが,原告商品と同様に「ストラップも横ベルトもなく乳房に直接粘着し,自然な形で乳房を大きく形良く見せることのできるブラジャー」であることを宣伝文句とし,「話題のブラジャー」として販売している。
原告のもとには,一時模倣品を購入したにもかかわらず原告商品を購入したと誤信した需要者から苦情が殺到していた。
したがって,原告商品の形態の特殊性は,包装箱等の記載及び商品名の相違を凌駕し,需要者の間で出所の誤認混同が生じていることは疑いの余地がない。
【被告の主張】 否認する。
8 争点(3)ア(著名商品表示性)について 争点(2)アに関する当事者の主張に同じ 9 争点(3)イ(類似性)について 争点(2)イに関する当事者の主張に同じ10 争点(4)(故意又は過失の有無及び損害額)について 【原告の主張】(5条1項) (1) 被告には,原告商品の形態模倣した被告商品を販売したことにつき,故意又は過失があった。
(2) 原告の単位利益額は,次のとおりである。
ア 原告商品の平均売上単価 (ア) 期間 平成15年1月から平成16年12月まで (イ) 売上高 ●●●●●(別紙「売上表」のとおり) (ウ) 売上数 ●●●●●個(別紙「売上表」のとおり) (エ) 平均売上単価 ●●●●●円 イ 原告商品の平均経費単価 (ア) 期間 アに同じ (イ) 仕入額 ●●●●●円(別紙「仕入実績・輸入経費」のとおり) (ウ) 輸入経費 ●●●●●円 (エ) 販売促進費 ●●●●●円(別紙「販売促進費」のとおり) 原告商品は,爆発的にヒットしたがゆえにテレビや雑誌からの取材攻勢を受けたのであって,上記金額以外に一般的に必要とされる費用を投じて販売促進活動を行う必要がなかった。
(オ) その他経費 合計●●●●●円 a 運送経費 ●●●●●円 原告商品の販売開始前1年間の原告の運送費と販売開始後1年間の原告の運送費を比較し,増加分をすべて原告商品の運送費として算定した。
・●●●●●円(H15年の増加分)÷●●●●●個(H15年の売上個数)=●●●●●円(平均運送費) ・●●●●●円×●●●●●個(H15.16年の売上個数)=●●●●●円(合計運送費) なお,平成16年以降は,新たに発売したヌーブラエアライトに要した運送費が混在しているため,比較対象外とし,平成15年と同14年の比較のみで平均運送費を算出した。
b 取扱説明書の印刷代 ●●●●●円 取扱説明書の平均単価は●●●●●円である(甲8)。平成15年8月31日までの発注数量は●●●●●枚であるところ,上記費用は上記aに含まれている。それゆえ,取扱説明書に要した経費のうち別途控除すべきものは以下のとおりである。なお,同年8月をもって有限会社エイムアドシステムとの取引は終了している。
・●●●●●個(売上総数)-●●●●●個(既計上分)=●●●●●個(未計上分) ・●●●●●円(平均単価)×●●●●●個(未計上分)=●●●●●円(別途計上すべき金額) c 倉庫保管料 ●●●●●円 原告は,当初,梱包作業等も自社従業員がおこなっていた。これらの作業も含めて外部に委託したのは平成15年10月以降であるが,その単価は●●●●●円である。それゆえ,倉庫保管料等に要した費用は以下のとおりである。
●●●●●円(平均単価)×●●●●●個(H15.10〜H16.12の売上数量)=●●●●●円(倉庫保管等の経費) d シリアルナンバー ●●●●●円 原告は,平成16年2月頃から,原告商品にシリアルナンバーを貼付しており,この平均単価は●●●●●円である(甲19)。よって,シリアルナンバーに要した費用は以下のとおりである。
●●●●●円(単価)×●●●●●個(H16.2〜12迄の売上個数)=●●●●●円(シリアルナンバー経費) e 送金手数料 ●●●●●円 平均送金手数料は1回あたり●●●●●円前後であった(甲20)。そのため,送金手数料に要した費用は以下のとおりとなる。
●●●●●円(平均手数料)×●●●●●回(送金回数)=●●●●●(送金手数料合計) (カ) 仕入個数 ●●●●●個(別紙「仕入実績・輸入経費」のとおり) (キ) 平均経費単価 ●●●●●円(((イ)+(ウ)+(エ)+(オ))÷(カ)) ウ 原告の単位利益額 ●●●●●円(ア-イ) (2) 被告商品の販売個数は●●●●●個であるから,原告の損害額は●●●●●円(●●●●●円×●●●●●個)となる。
(3) 被告の主張に対する反論 ア 単位利益額算定のベースとする期間について 原告商品の販売開始時期は第12期中の平成15年2月であるが,平成16年4月に販売を開始したヌーブラエアライトの最販期は同年4月から7月であったために,ヌーブラエアライト関連の仕入れ,販売促進費・広告宣伝費等々の費用が,第13期である平成16年2月,3月に発生した。そのため,第13期にはヌーブラエアライトに要した費用が多数含まれている。それゆえ,被告が主張するように第13期のみをもって原告商品の経費を算定することは相当でない。
例えば,原告商品は商品毎に箱詰めされた形で輸入していたが,ヌーブラエアライトは原告が箱詰めをおこなっていた。このため,第13期では,ヌーブラエアライト用の箱詰めの加工賃と倉庫保管料が荷造発送費として計上され,また包装箱代が計上されている。
イ 仕入単価について 仕入単価については,原告はインボイスの記載金額を支払っているのであり,この点に関する被告の主張は無意味である。なお,被告が指摘する12ドル台や13ドル台の単価については,キャンペーンで2個購入に対して1個プレゼントということがあったため,単価で計算すると2個分の値段で3個の仕入れをおこなったことになるからである。
ウ 販売促進費について 被告は,第12期及び第13期の決算書に販売促進費が計上されていないことを不可解であると主張するが,これは科目の振り分けが異なるだけのことで,それらの期においては,広告宣伝費の中に含まれていただけのことである。この広告宣伝費の中に,原告が主張している販売促進費が計上されている。原告商品は,再三主張するように,爆発的にヒットしたがゆえにテレビや雑誌からの取材攻勢を受けたのであって,一般的に必要とされる費用を投じ販売をおこなう必要がなかったのである。
エ 運送費について 原告が主張する原告商品の運送費は,被告が指摘する決算書上の「荷造運賃」とは内容が完全に同じではなく,後者には前者以外のものも含まれている。
オ 人件費について 被告が指摘する月額●●●●●万円は,サポートダイヤルに対応するための外注費であり,外注契約は平成15年8月に終了した。それ以降も,サポートダイヤル業務は継続したが,通信販売業務を新たに外注したことはないから,人件費は増大していない。
カ 原告の販売能力について 被告は原告に販売余力がなかったと主張する。しかし,原告商品が一時期品不足だったのはブラジェル社の製造が追いつかなかったことに起因するものであるところ,ブラジェル社は設備投資をおこなって増産体制を整えることは容易であり,ブラジェル社は原告商品の製造・販売をおこなう潜在的能力は備えていた。
ということは,ブラジェル社から日本国内における独占販売権を与えられている原告にも,原告商品を販売する潜在的能力を有していたのであり,被告の販売数量相当数について原告が損害を蒙ったことは明らかである。
キ 原告が被告商品の販売量の全部を販売することができない事情について 被告は,類似品の存在を指摘する。しかし,類似品とは模倣品のことであり,模倣品の販売行為は被告同様,不正競争行為として禁じられている行為である。かかる模倣品の販売数量相当数について原告が損害を蒙ったことは明らかであるから,模倣品の販売によって原告の損害が減殺されることはない。
【被告の主張】 原告の主張は争う。
(1) 被告には,被告商品を販売するにつき,故意又は過失がない。
(2) 原告は,5条1項の規定に基づいて,原告の平均利益単価に被告の販売個数を乗じた額を,原告の損害額であると主張する。
しかし,5条各項の規定は,市場独占的な製造販売によって開発者が得られる利益や第三者に対する使用許諾によって得られる利益をいい,この開発者から商品を購入して販売する流通経路の各業者の損害額をも含んだものではない。したがって,原告が,開発者であるブラジェル社とは異なった独自の独占販売権者としての損害の賠償を求めている本件訴訟においては,5条1項の規定を適用することはできない。
また仮に,同条1項の損害額が開発者の損害額のみならず流通経路の各業者の損害額をも含んだものであるとするならば,原告の損害額は,この規定による推定額から開発者であるブラジェル社の損害額等を控除しなければならないのは当然である。
(3) 原告が主張する原告商品の単位利益の額は争う。
ア 算定ベースとする期間について 原告は,算定ベースの期間を平成15年1月から平成16年12月までとしている。しかし,被告による被告商品の輸入販売は,平成15年6月の2回である。そして被告商品が,その後の流通経路の中で原告商品の売上げに影響を与えた期間は,この種商品の最終消費者が購入に至る平均的な期間として大目に考えても平成15年6月から1年程度とみるのが相当である。
また,この平成15年6月から1年の間は,原告の第13期(平成15年6月1日から平成16年5月31日まで)に重なるから,原告の決算書類に基づく逸失利益の算定をする上でこの第13期を対象とすることが相当でもある。
イ 売上額について 第13期の原告商品の売上高は,●●●●●円である。また,売上数は●●●●●個である。
ウ 仕入額について (ア) 仕入個数(輸入個数)について 原告が主張する別紙「仕入実績・輸入経費」のうち,2004年5月7日の輸入枚数●●●●●枚は●●●●●枚(Invoice#1904896,甲9の69)の誤りである。
したがって,第13期の仕入個数は,●●●●●枚となる(別紙「13期輸入一覧表」)。
(イ) 仕入単価について 原告は,ヌーブラ仕入額の算出に当り,平成15年1月から平成16年12月までの各インボイス記載の金額(Invoice Sum)を単純に合計して,仕入金額に計上している。
しかしながら,原告提出のインボイス(甲9)の中では,各輸入時の原告商品の単価を●●●●●ドルとするものが極めて多く,これを最頻値ということができる。また,この最頻値の前後●●●●●ドル程度の変化を示すものも少数あるが,中には突如●●●●●ドル台や●●●●●ドル台のものが出現し,その後単価はいったん●●●●●ドルに戻り,また●●●●●ドル台の最安値のものが出現したかと思えば,一転して単価●●●●●ドルの高値となっているが,この単価の極端な変動については理由が不明である。
したがって,各インボイス記載の輸入合計額(Invoice Sum)を単純に合計して仕入金額に計上する原告の上記主張は不正確であり,原告商品の輸入単価は,その最頻値である●●●●●ドルと原告主張の為替レートである1ドル=●●●●●円を適用して,●●●●●円とすべきである。
(ウ) 仕入額について 上記に従うと,原告商品の第13期の仕入額は,合計●●●●●円となる(●●●●●枚×●●●●●円=●●●●●円)。
エ 輸入経費について 上記に従い,別紙「仕入実績・輸入経費」から第13期の輸入経費を抽出すると,別紙「13期輸入一覧表」のとおり,合計●●●●●円となる。
オ その他経費について (ア) 原告は限定的な経費のみを控除する。しかし,原告商品の販売の増加に伴い,変動費も当然増加するから,この変動費を経費に組み入れなければ真実の逸失利益の算定はできない。
原告の第13期(平成15年6月1日〜平成16年5月31日)の「販売費及び一般管理費内訳書」(甲16)に記載の各項目及び額のうち,変動費の項目は別紙「13期の変動費一覧表」記載のとおりであり,その総額は●●●●●円である。
他方,原告の第13期の売上高合計は●●●●●円であり,このうち原告商品の売上高は,別紙「売上表」から●●●●●円であるから,第13期の売上高合計のうち原告商品の売上高合計が占める割合は,●●●●●%である。
したがって,原告商品の売上げに要した経費総額は,上記変動費の総額の●●●●●%であると推定されるから,これを算出すると●●●●●円となり,この額を控除すべきである。
そうすると,原告商品の第13期の利益総額は,●●●●●円(●●●●●円-●●●●●円=●●●●●円)となるから,これを総売上数である●●●●●個で除した単位利益額は,●●●●●円となる。
そして,被告商品の売上数は●●●●●個であるから,原告の逸失利益(ただし以下の(4)及び(5)を考慮する前のもの)は,●●●●●円(●●●●●枚×●●●●●円=●●●●●円)となる。
(イ) その他の経費の各項目については,次の問題点がある。
a 販売促進費について 原告は,販売促進費として平成15年3月10日から同年8月31日までの期間のものを控除している。
しかし,同期間は原告の第12期から第13期にまたがるものであるが,それらの期の決算書では,販売促進費が計上されておらず,不可解である(他方,14期では計上されている。)。
また,原告が販売促進費として控除対象とするものは,上記期間のものであるにすぎず,原告が算定ベースとする平成15年1月から平成16年12月までの期間の約4分の1に満たず,不合理である。
b 運送費について (a) 原告は,原告商品の販売開始前過去1年間の輸送費と販売開始後の1年間の輸送費を比較して,増加分を原告商品の輸送費として算定したとする。しかし,ここにいう「輸送費」とは,原告のすべての取扱商品の輸送費のことをいうものであるにもかかわらず,その数字は,原告の決算書上の「荷造運賃」ないし「荷造発送賃」と一致せず,不合理である。
(b) 次に,原告が平成15年の増加分として挙げる●●●●●円は,平成15年3月から平成16年2月までの前年同月に対する増加した運送費の合計額であるのに対して,平成15年の売上個数として挙げる●●●●●個は,平成15年1月から同年12月までのものであるから,原告の算出は,その対比時期を2ヶ月ずらした不当なものである。
また,増加した運送経費の合計額算出(甲18)に際しては,平成15年4月及び5月は前年同月より輸送経費が減少しているのであるから,この減少分は無視しなければならないにもかかわらず,増加分に加える誤りを犯している。
(c) さらに,原告主張の平成15年の各月の増加分と原告主張の同年各月の販売本数を比較すると,別紙「原告主張の運送経費等一覧表」に示すとおり,各月の販売本数の増減と増加分の増減との間には何の関連性もなく,また,原告主張の平均運送費●●●●●円は取引界の常識的にも低すぎる。したがって,原告主張のように増加分をもって,平成15年の原告商品の輸送費と仮定することに無理がある。
(d) 仮に原告のように原告商品の販売開始後の1年間を運送経費の算定ベースとするのであれば,原告の第13期(平成15年6月から平成16年5月までの1年間)の決算書類に記載の「荷造発送費」(●●●●●円)を算定ベースとするのがより簡明であり,正確,適切である。第13期における原告のヌーブラの販売本数●●●●●個は,全体の販売本数●●●●●個の●●●●●%を占め,算定ベースとして十分であるからである。そして,第13期の原告の売上高に占める原告商品の売上高は●●●●●%であり,第13期における原告全体の「荷造発送費」は●●●●●円であるから,原告商品に要した運送費は●●●●●円である(●●●●●円×●●●●●%=●●●●●円)。よって,第13期の原告商品の平均運送費は●●●●●円となる(●●●●●円÷●●●●●個=●●●●●円)。
c 支払手数料について (a) 原告の送金手数料の主張のうち,1回当たりの送金手数料が●●●●●円前後であるとの点については,証拠として提出された甲第20号証の送金計算書はその日付から原告主張の平成15年1月から平成16年10月までのものではなく,また,送金回数が●●●●●回であることの証拠もない。
(b) 原告の第13期の支払手数料は●●●●●円であり(甲16),同期の売上高に占める原告商品の売上高の割合は●●●●●%であるから,原告商品に関する第13期の支払手数料の合計額が仮に売上高の割合に対応すると仮定すれば,●●●●●円である(●●●●●円×●●●●●%=●●●●●円)。
この支払手数料には,ブラジェル社に対する送金手数料が含まれるが,その他に,国内の銀行での仕入先や売先に対する各種の振込手数料,クレジット手数料,代引手数料,取立手数料,パソコン関係のサービス手数料等,雑多な手数料が含まれると考えられる。
例えば,原告の販売した原告商品のうちには不良品も含まれ,返金の事実がある(甲11)。この返金は継続した卸売りであれば次回売上額から差引きすれば足りるが,原告が行っている消費者個人に対する1回限りの通信販売では差引きは考えられないから,個人顧客には返金しなければならないのにもかかわらず,この送金手数料は一切計上されていない。
このように,原告の主張では,支払手数料としてブラジェル社に対する送金手数料以外のものが控除されておらず,不合理である。
d 人件費について 原告は,有限会社エイムアドシステムに対して平成15年3月から同年8月までの6か月間に限って原告商品の販売促進を依頼したとし,この販売促進費の中に休日通販受付業務の「事務局人件費」として同年6月,7月,8月に各々1か月当たり●●●●●万円を計上している(別紙「販売促進費」)。そして,同社との取引は同年8月に終了したとし,以降一切原告商品に関して人件費は計上していない。
しかしながら,その後も原告は一般消費者個人に対する通信販売業務,その他の販売業務を継続しているのであるから,この業務に対する原告会社の社員の人件費が必要なことは明らかである。
その額については,上記1か月●●●●●万円が休日●●●●●日分に相当するものとし,平日の人件費が休日の●●●●●%であるとすれば,人件費は,休日日額が●●●●●万円,平日日額がその●●●●●%である●●●●●円となる。そして,年間の平日営業日を●●●●●日(月間の営業日●●●●●日)とすれば,ヌーブラに関する原告の1年間の受注関連の人件費は,●●●●●万円である(●●●●●円×●●●●●日=●●●●●円)。
この数字は,第13期の原告の人件費(給与手当及び雑給。賞与は除く。)である●●●●●円の●●●●●%となり,同期の原告全体の売上高に対する原告商品の占める上記割合●●●●●%に照らして,常識的な適切なものである。
キ ヌーブラエアライトの経費について 原告が平成16年4月から販売を開始したという「ヌーブラエアライト」は,原告商品と同一の形態をし,軽量である点で相違するにすぎないから,原告商品や被告商品の代替となるものである。したがって,仮に被告による被告商品の販売がなかったとしたら,被告商品の販売枚数のすべてが,「ヌーブラ」の販売に直結するのではなく,「ヌーブラエアライト」にも流れることは明らかである。
したがって,原告商品の単位利益額を算定する際には,ヌーブラエアライトについての経費も控除すべきである。
(4) 原告の販売能力について 原告は原告商品の販売につき,慢性的な品不足に悩まされており,欠品続きであった。したがって,原告には被告の販売個数分の本件商品の販売余力はなかった。
(5) 原告が被告商品の販売量の全部を販売することができない事情について(5条1項ただし書) 原告商品は,ブラジェル社の製品であり,原告以外にも,並行輸入品として国内販売がなされ,また同種商品が販売がされている。したがって,仮に原告に販売余力があるとしても,被告商品の販売個数分は,原告のほか,並行輸入業者や同種商品の販売業者にも分散して販売されるのであるから,原告が全量販売することはない。
そして,平成15年12月15日号の「日経ビジネス」誌(甲3の15)によれば,同年に「国内では正規輸入品(希望小売価格1万2000円)だけで21万個,並行輸入品や類似商品を合わせると50万個以上が売れたと見られる。」と推定されているから,原告の市場に占める割合は,約5分の2である。したがって,原告の販売できたであろう数量は,被告の販売個数分(8320個)の5分の2である,3328個である。
争点に対する当裁判所の判断
1 不正競争防止法2条1項3号に基づく請求について (1) 争点(1)ア(通常有する形態)について ア 検甲1号証によれば,原告商品の形態は次のとおりであると認められる。
(ア) 基本的形態 a 独立した左右2個のカップから成るブラジャーである。
b 肩ひも,横ベルト等の身体に装着する部材が全くない。
c 2個のカップの相対する部分に両カップを連結するフロントホックが設けられている。
d 左右2個のカップは,いずれも眼鏡のレンズを逆さにしたような形状をしている。
(イ) 具体的形態 a 全体に肉厚で,ブヨブヨして,すぐに形が崩れる柔らかい質感を有している。
b カップは,表面及び裏面とも全体に肌色のシリコンを薄いビニールで包んだような半透明上の膜で覆われ,周辺部ほど肌色が薄くなり,表面には細かな皺が寄る。
c カップの裏面は,粘着層に由来する光沢がある。
イ 被告は,原告商品の形態は,その販売に先立って公開された乙第1ないし7号証の公開実用新案広報及び公開特許公報に記載されたブラジャーにおいて既に採用されているもので,「同種の商品が通常有する形態」にすぎないと主張する。
しかし,乙第1及び2号証に記載の乳頭キャップ,第5及び6号証に記載の使い捨て用ブラジャー並びに乙第7号証に記載の粘着パッドは,いずれもブラジャーにおける2個のカップの相対する部分に両カップを連結するフロントホックが設けられておらず,前記原告商品の基本的形態cを具備しない。また,乙第3及び4号証に記載のブラジャーは,原告商品の基本的形態をすべて具備するものの,このブラジャーは布製とされているから,原告商品の具体的形態を具備するものでないと認められる。また,ブラジェル社が「NuBra」商標を出願する際に提出した使用証明に係る商品(乙21)も,後に争点(1)ウで述べるとおり,ブラジャーにおける2個のカップの相対する部分に両カップを連結するフロントホックが設けられておらず,前記原告商品の基本的形態cを具備しない。
したがって,被告が指摘する点によっては,原告商品の形態のすべてが「同種の商品が通常有する形態」であるとはいえず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(2) 争点(1)イ(模倣性)について 検甲2号証によれば,被告商品の形態は,上記原告商品の形態と,その基本的形態のみならず具体的形態まで含めて同一といえるほど酷似していると認められる。
そして,このような両者の形態の同一性に加え,原告商品が米国及び台湾で販売された後に日本で販売され(弁論の全趣旨),さらに日本で販売されてから数か月後に被告商品が輸入・販売されたこと,それら以前に被告商品が販売されたことを窺わせる証拠が何らないことを併せ考えると,被告商品の形態は,原告商品の形態に依拠して作られたものと推認するのが相当である。
したがって,被告商品の形態は,原告商品の形態模倣したものと認められる。
(3) 争点(1)ウ(3年経過)について ア 証拠(甲4,乙21)によれば,次の事実が認められる。
ブラジェル社は,2001(平成13)年12月3日,米国特許商標庁に対し,「NuBra」の商標登録出願をしたが,この際,「通商上の使用」について「あり」とし,「使用見本」として,バストアップするためにNuBraを直用しているモデルの写真を提出した。また,出願書類において,「いずれかの国での最初の使用の日(FIRST USE ANYWHERE DATE)」として「1999(平成11)年3月1日」と,「通商上の最初の使用の日(FIRST USE IN COMMERCE DATE)」として「2000(平成12)年3月1日」と記載した。そのうえで,同社副社長のP1が,宣誓の上,署名した。
その後同社は,2002(平成14)年11月14日,同商標の出願手続過程において,米国特許商標庁に対し,使用見本の追加として,NuBra商品のパッケージと中身の写真を提出した。
イ この事実によれば,ブラジェル社は,「NuBra」という商標を使用したブラジャーで,上記出願手続において使用見本として提出した写真に写っているものを,平成11年3月1日又は平成12年3月1日に米国において最初に販売したものと認められる。
この点について原告は,争点(1)ウに関する原告の主張のとおり,ブラジェル社は,上記商標登録出願当時,NuBra商標を使用した商品を販売していなかったにもかかわらず,既存の商品に加工ないし画像加工を施して使用見本の写真を提出したもので,実際の最初の販売日は2003(平成15)年10月だと主張し,甲第5ないし7,12及び13号証を提出する。
しかし,この主張は,ブラジェル社が米国特許商標庁に対して,副社長の宣誓の上で記載した前記出願書類の内容に反するものであって,信用することができない。
ウ もっとも,ブラジェル社が上記商標登録出願手続において提出した使用見本の写真2枚(@出願当初に提出した使用見本の写真は甲第14号と同一であると認められる。また,A後に追加で提出した使用見本の写真のうちパッケージの写真は甲第5号証添付の写真に写っているものと同一であると認められる。)を見ると,まずAの写真については,そこに写っているブラジャーが原告商品の基本的形態を具備するものか否か定かでなく,また,商品自体の写真(甲第4号証及び乙第21号証中のもの)を見ると,少なくとも2個のカップの相対する部分に両カップを連結するフロントホックが設けられておらず,原告商品の基本的形態cを具備しないことが認められる。また@の写真についても,同様に原告商品の基本的形態cを具備しないことが認められる。
そして,フロントホック自体は小さな部材ではあるが,これが存在する場合には,両カップが連結された状態で乳房に装着される形態となり,加えてブラジャーとしていわゆる「寄せて上げる」効果が生じるのに対し,これが存在しない場合には,両カップが連結されない状態で乳房に装着される形態となるのであり,両者はその基本的形態において異なる。
そうすると,ブラジェル社が上記のとおり平成11年3月1日又は平成12年3月1日に米国において最初に販売したと認められる「NuBra」の形態は,本件の原告商品と実質的に同一の形態であるとはいえないから,原告商品の形態の保護期間の始期が平成11年3月1日又は平成12年3月1日であるとは認められない。
したがって,原告商品の形態の保護期間の始期が平成11年3月1日又は平成12年3月1日であることを前提に,そこから3年が経過したとする被告の主張は採用できない。
(4) 争点(1)エ(善意無重過失)について ア 被告代表者の陳述書(乙20)によれば,被告代表者が原告商品を知ったのは,平成15年4月ころであると認められる。
また,「女性セブン」平成15年6月12日号(甲3の1)では,「噂のブラで谷間作ってみました」との見出しの下,3頁にわたって原告商品を紹介する記事が掲載された。そこでは,「どんなにセクシーな服を着ても絶対に見えず,しっかり谷間をメイクする”究極のブラ”として,主婦,OLから銀座のホステスまで世の女性に話題沸騰中の”ヌーブラ”」と記載され,原告の代表取締役の「現在は月に5万個売れています」との発言が掲載されたことが認められる。
イ このように原告商品は,平成15年6月の時点で,著名な一般女性誌に3頁にわたる紹介記事が掲載され,そこでは「噂のブラ」とか,「主婦,OLから銀座のホステスまで世の女性に話題沸騰中」と記載されていたのであるから,少なくとも業界内ではそれ以前から話題になっていたものと推認される。そして,被告代表者は,輸入前の平成15年4月の時点で原告商品を知っており,しかも原告商品と被告商品との形態は同一なのであるから,被告は,被告商品を輸入するに際し,被告商品の形態が原告商品の形態模倣したものではないかとの疑問を当然抱くべきであり,また,その疑問を払拭するに足りる調査を行ってしかるべきであったといえる。
この点について被告代表者は,@輸入先から被告商品の売込みを受けたときには,日本の大手通信販売業者の動向やメーカーについて調査したところ,メーカーはブラジェル社以外に台湾にもあることや,大手通信販売業者は欠品対策として,同じ商標を使用しながら適宜メーカーを変更していることを知った,Aこれらの大手通販業者が被告商品と同種形態のブラジャーの販売をするのを知って,被告も被告商品を輸入販売することにしたと陳述する(乙20)。しかし,@についてはこのことを裏付ける証拠がない。また,そもそも被告は,ブラジェル社や,同社と独占販売権契約を締結した原告に照会をしていない点において,当然行うべき調査を怠ったものといえる。
したがって,被告が被告商品を輸入するに当たり,少なくともその形態が原告商品の形態模倣したものであることを知らなかったことについて重大な過失がないとはいえない。
(5) 争点(1)オ(請求主体性)について ア 3号が,他人の商品形態を模倣した商品の販売行為等を不正競争行為とする趣旨は,先行者の商品形態模倣する後行者は,先行者が商品開発に要した時間,費用や労力を節約でき,しかも商品開発に伴うビジネスリスクを負うことも回避できることから,後行者と先行者との間に競争上著しい不公平が生じるが,このような後行者の行為は,他人が資金や労力を投下した成果を盗用するものとして競争上不正な行為であるという点にある。この趣旨からすると,3号により先ず保護の対象とされるべきは,形態を模倣された商品を開発,商品化して市場に置くに当たり,自ら費用や労力やリスクを負担した者(すなわち開発者)である。そして3号は,開発者が,一定期間,当該商品形態を用いた市場利益を独占することを保護し,それにより開発者が商品開発に要した種々の負担を回収することを可能にしようとするものであるということができる。
ところで,開発者が開発に係る商品を市場展開する形態は,自己の手において販売を行うものに限られず,様々な形態があり得,その中には,一定地域について,当該商品の独占的販売契約を締結し,同時に開発者自身は当該地域において当該開発商品の取引活動を行わないという義務を負うことにする場合がある。このような場合,独占的販売権を認められた者は,結果として,当該地域における当該開発商品の市場利益を独占できる地位を得ることになるが,独占的販売権者が有するこのような独占的地位ないし利益は,後行者が模倣行為を行うことによってその円満な享受を妨げられる性質を有するものである。そして,この独占的地位ないし利益は,前記のような3号が保護しようとした開発者の独占的地位に基礎を有し,いわばその一部が分与されたものということができるから,第三者との関係でも法的に保護されるべきものというべきである。
また,独占的販売権者は,独占権を得るために,開発者に対し,当該開発商品を流通段階で取り扱う単なる販売者には課されない相応の負担(最低購入量の定めなど)を負っているのが常であり,開発者は商品化のための資金,労力及びリスクを,商品の独占の対価の形で回収し,独占的販売権者はそれらの一部を肩代わりしていることになるから,独占的販売権者を保護の主体として,これに独占を維持させることは,商品化するための資金,労力を投下した成果を保護するという点でも,3号の立法趣旨に適合するものである。
さらに法文を見ても,不正競争防止法は,2条1項において「不正競争」を定義し,同項3号では,他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争とし,差止請求の主体について,3条1項において,「不正競争によって営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれがある者」としており,損害賠償請求の主体については,4条において,不正競争により「営業上の利益侵害」された者を損害賠償請求の主体として予定しているものと解され,例えば特許法100条1項差止請求の主体を「特許権者又は専用実施権者」としているのとは異なった規定の仕方をしている。したがって,独占的販売権者も,3号所定の不正競争によって営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれがある者に該当すると解したとしても,文言上の妨げはないというべきである。
以上の点を考慮すると,独占的販売権者の有する独占的地位ないし利益は,3号によって保護されるべき利益であると解するのが相当であり,独占的販売権者も3号により保護される主体たり得るものと解するのが相当である。
もっとも3号は,その主要な要件が,「形態の模倣」という比較的簡易な要件であり,安易に適用を拡大すると,かえって自由な市場活動が妨げられるおそれがあるとも考えられる。しかし,まず3号の保護を受け得る者は,商品化を行った開発者のほかには,独占的販売権者のように独占的地位を有する者に限られ,開発者が商品化した形態の商品を単に販売する者のように独占的地位を与えられない者については,他にも同列の販売者が存することから,模倣行為によって直ちに自己の営業上の利益が害されたとはいえないため,3号の保護を受け得ないと解するべきである。そうすると,このように限定した範囲で3号の保護の主体を考えるならば,上記のような弊害を生ずることはないというべきである。
また,独占的販売権者も3号の保護主体となると解したとしても,独占的販売権者が訴訟上3号に基づく権利を行使するためには,先行者が商品化したこと,及びそのような先行者から独占的販売権を与えられたことを主張立証しなければならず,先行者が訴訟上3号に基づく権利を行使する場合に比べて,商品化の点について主張立証責任が軽減されるわけではないから,この点からも,3号の適用範囲が安易に拡大されることはないといえる。
イ 本件での原告については,独占販売権契約書(甲2)によれば,@契約期間は2年間とされ,A各年ごとに年間購買量が定められ,これに満たない場合にはブラジェル社は契約を解除することができ,B同契約は,契約期限内にすべての条件を満たした場合のみ,自動的に2年間延長されることとされ,Cブラジェル社は並行輸入を防ぐ最大の努力をするものとする,とされていることが認められる。
これらのうち,Cの条項からすると,上記独占販売権契約においては,単に原告が原告商品の日本における独占的販売権を有する以外に,ブラジェル社自身も日本における販売活動をしないことが前提とされ,加えてブラジェル社は並行輸入を防ぐための最大の努力をすることまで約定しているのであるから,原告の日本における独占的地位が最大限保障されているといえる。また,@ないしBの条項からすると,原告は,年間購買量を定めることにより,独占権を得るために販売不振のリスクを負担しているものということができる。
これらの契約内容からすると,原告は,独占的販売権者として,3号の保護を受け得るものというべきである。
なお本件では,上記Cの契約条項にもかかわらず,相応の並行輸入が行われたものと認められるが(甲3の15),上記Cの条項や並行輸入というものの性質からして,原告の独占的地位を否定し得るほどのものであったとは考え難いから,並行輸入が行われたことをもって,前記判断は左右されない。
ウ 以上によれば,本件における被告による被告商品の販売行為は,原告に対する関係で,3号所定の不正競争行為を構成するというべきである。
(5) 争点(3)(損害額)について ア 争点(1)エで述べたことからすると,被告には,被告商品を輸入販売するに際し,被告商品の形態が原告商品の形態模倣したものであることについて,過失があったものと認められる。
したがって,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求をすることができる。
イ この場合の損害額の算定について,被告は,不正競争防止法5条1項は,開発者から商品を購入して販売する流通経路の各業者の損害額をも含んだものではないとして,同項の適用を否定する主張をする。
しかし,先に争点(1)オで述べたように,原告は,日本における原告商品の独占的販売権者として,独自に3号による保護を受けると解するべきであり,3号の保護を受け得ない単なる流通業者と同視することはできない。また,原告は,地域こそ日本国内に限られているものの,原告商品を販売することによる市場利益を独占し得る地位にある点で開発者自身と変わるところはない。
したがって,本件における原告の損害額の算定についても,不正競争防止法5条1項の適用があると解するのが相当である。そして,このように解した場合でも,ブラジェル社の損害は,原告の仕入費用の一部として原告の売上額から控除されるから,ブラジェル社と原告との二重請求を認めることにはならない。
そこで以下,同項による損害額を算定する。
ウ 原告の販売能力について (ア) 後掲証拠によれば,原告商品の雑誌での紹介について,次の事実が認められる。
a 原告商品は,平成15年7月の時点で,「爆発的な人気で,ランジェリーショップではすでに入手困難」と紹介された(雑誌「MISS」7月号。甲3の5)。
b 続いて8月になると,「あまりの人気にどこでも品切れ。まるっきり手に入らないブラジャーがある。」と紹介されるに至った(雑誌「AERA」8月18-25日号。甲3の7)。
c さらに9月ないし10月に発売された雑誌でも,夏ころのことについて,「アメリカでの製造が追いつかず,都内大手百貨店では,約1000人が予約待ちとなる騒ぎとなった。」とされ,同年5月以降は輸入限界が続いていることを示すグラフが掲載された(雑誌「DIME」10月2日号。甲3の10)。
d しかし12月ころになると,「夏頃はどこに行っても拝めなかった「ヌーブラ」も今はだいぶ入手しやすくなりました」と紹介されるようになった(「Can Can」12月号,甲3の11)。
(イ) 以上の事実によれば,原告商品は,平成15年7月ころから,ブラジェル社の製造が追いつかずに欠品状態となり,夏中はその状態が続いたが,遅くとも同年12月ころには欠品状態は解消されたことが認められる。
この事実からすると,確かに被告商品が販売された平成15年7月の時点で原告が被告商品と同数の原告商品を追加的に販売することは,不可能な状態であったといえる。しかし,原告商品は,締め付け感がないとか,肩や背中の露出した衣服の下にも着用できるとか,バストアップ効果があるという機能ないし効用の面で消費者から好評を得ていたこと(甲3の各号)からすると,消費者の需要は,少なくとも欠品状態が解消した後である同年12月末ころまでは存続したと考えられる。換言すれば,被告商品を購入した消費者は,もし被告商品が販売されていなかった場合には,同年12月末ころまで入荷待ちをして原告商品を購入した可能性を否定できないのである。そして,同年12月末ころまでには,原告は被告商品の販売数程度の原告商品を追加的に販売することが可能であったと考えられるから,被告商品の販売数は,原告の原告商品の販売能力を超えているため販売することができなかったものがあると認めることはできない。
エ 原告商品の単位利益額について (ア) 単位利益額の算定ベースとする期間について 5条1項は,3号の場合を念頭に置くと,模倣商品が販売されなかったとしたとした場合に,その代わりに先行者が先行商品を追加的に販売することによって得られたであろう利益を逸失利益として算定する規定であるから,先行商品の単位利益額の算定ベースとする期間も,模倣商品の代わりに先行商品が販売できたであろうと考えられる期間に応じて設定するのが合理的である。
そして,先にウで検討したことからすると,原告は,被告商品が販売された平成15年7月以降,同年12月末ころまでには,被告商品と同数程度の原告商品を追加的に販売することが可能であったと考えられるから,本件では,平成15年7月から同年12月までの6か月間(以下「本件算定期間」という。)を原告商品の単利利益額の算定ベースとして採用するのが相当である。
(イ) 本件算定期間中の原告商品の単位売上額について 甲第11号証及び弁論の全趣旨によれば,原告商品の平成15年1月から平成16年12月までの各月の売上状況は,別紙「売上表」のとおりであると認められる。それによれば,本件算定期間中の原告商品の売上数は●●●●●個,売上金額は●●●●●円と認められるから,単位売上額は●●●●●円となる。
(ウ) 本件算定期間中の原告商品の単位費用額について a 仕入関係費用について (a) 仕入費及び輸入経費について 甲第9号証の23ないし47によれば,本件算定期間中の仕入れ(輸入)状況は,別紙「本件算定期間中の輸入状況」のとおりであると認められ,それによれば,仕入数は●●●●●個,仕入額は●●●●●ドル(1ドル=113.57円の為替レートで,●●●●●円),輸入経費は●●●●●円である。したがって,単位仕入額は,●●●●●円,単位輸入経費額は●●●●●円となる。
なお被告は,単位仕入額については最頻値である●●●●●ドルを採用するよう主張するが,単位仕入額は原告が実際に支払った金額に基づいて算定すべきものであるから,この主張は採用できない。
(b) ブラジェル社への送金手数料について 甲第20号証によれば,原告が,平成17年6月1日にUFJ銀行を通じて●●●●●ドルを送金した際に要した手数料は,●●●●●円であったことが認められるが,原告の本件算定期間中の各回の送金額は,別紙「本件算定期間中の輸入状況」のとおり,上記送金額よりも少額であると認められる。そうすると,一般には,同じ金融機関の場合,送金額が少額になるのに送金手数料が多額になるとは考え難いから,特に反対証拠も提出されていない以上,送金手数料額が平均して●●●●●円前後であったとする原告の主張を採用するのが相当である。
そして,上記別紙によると,本件算定期間中の送金回数は,インボイスの枚数と同数であり,●●●●●回と認められる。したがって,本件算定期間中の送金手数料は,●●●●●円となり,仕入れ1個当たりの単位送金手数料額は,●●●●●円となる。
b 販売関係費用について (a) 販売促進費について 甲第8号証の各号によれば,原告は,平成15年8月31日まで,別紙「販売促進費」記載の活動を有限会社エイムアドシステムに外注したことが認められる。したがって,本件算定期間の販売促進費は,別紙「販売促進費」の「2003/7/31」欄と「2003/8/31」欄のとおりと認められるが,販売促進費中の取扱説明書の印刷費用(税抜きで●●●●●円,税込みで●●●●●円)は,後記の「取扱説明書の印刷費」で計上すべきものであるから,これを控除し,合計●●●●●円(税抜き。税込みで●●●●●円)となる。
被告は,原告の第13期の決算書中に「販売促進費」の項目がないのが不合理であると主張するが,上記販売促進費の中には,別紙「販売促進費」記載のとおり,種々の性質を有する費用が混在していると認められるから,決算書上「販売促進費」として計上されていないからといって直ちに不合理であるとはいえない。
(b) 運送費について 原告は,原告商品の販売前の各月に原告が支出した運送費と,原告商品の販売後の各月に原告が支出した運送費を比較(甲18)して,その差額が原告商品の販売に要した運送費であると主張する。しかし,被告が別紙「原告主張の運送経費等一覧表」で主張するように,各月の原告商品の販売本数と上記差額との間には,何ら相関性が認められない。また,原告の主張は,原告販売後に増加した運送費は,すべて原告商品の販売に要したものであるとの前提に立つものと解されるが,そのような事情を窺わせる証拠も何ら提出されていない。したがって,原告の上記算定方法は採用できない。
そして他に,原告商品の販売に要した運送費を厳密に認定し得る証拠はないから,本件では,本件算定期間が属する決算期(第13期:平成15年6月から平成16年5月)の決算書(甲16)上の「荷造発送費」である●●●●●円を基に,同期における原告商品の売上高(別紙「売上表」によれば●●●●●円)の原告全体の売上高(甲第16号証によれば●●●●●円)に対する割合である●●●●●%と,本件算定期間(6か月間)が同期全体期間(12か月間)に占める割合である●●●●●%を加味して,●●●●●円(●●●●●×●●●●●×●●●●●)とするほかはないというべきである。
(c) 取扱説明書の印刷代について 甲第8号証及び弁論の全趣旨によれば,取扱説明書の印刷は,平成15年8月31日までは,別紙「販売促進費」のとおり,有限会社エイムアドシステムに外注し,その平均単価は●●●●●円であり,この期間のものは同別紙中に記載されているが,それ以後は他社に発注するようになったことが認められる。
したがって,本件算定期間中の取扱説明書の印刷代は,一部当たり●●●●●円とするのが相当である。
(d) 倉庫保管料等について 弁論の全趣旨によれば,原告は,当初,発送のための倉庫保管,梱包作業等も自社従業員が行っていたが,平成15年10月以降は外部に委託し,その単価は●●●●●円であることが認められる。そして,別紙「売上表」によると,本件算定期間のうち平成15年10月から12月までの原告商品の売上数は●●●●●個であるから,本件算定期間中に要した倉庫保管料等は●●●●●円であると認められる。
(e) シリアルナンバーについて 原告はこれを費用に計上しているが,弁論の全趣旨によると,これは本件算定期間より後に要するようになったものであると認められるから,これを経費として計上することは相当でない。
(g) 支払手数料について 被告は,原告が原告商品の販売に関して支払う手数料には,ブラジェル社への送金手数料のほかに種々のものがあるはずであるとし,特に一般消費者から返品を受けるときの返金の振込手数料について言及する。
しかし,被告も,これらの手数料がどのような事情で原告の負担となるのか,また返金の振込手数料については返品に伴って返金まで発生するのか,また売主が返金手数料を負担するのが通常なのか等の点について具体的に主張していないから,特に費用として控除すべきものとは認められない。
(h) 人件費について 被告は,従前,原告が有限会社エイムアドシステムに外注していた販売促進費の中に休日通販受付業務があったから,この業務を原告自ら行うようになった平成15年9月以降は人件費が増大したはずだと主張する。
しかし,仮に休日通販受付業務を原告自らが行うことになって,原告の人件費が増大したとしても,それはもともと本件算定期間中の原告商品の販売を行うために既に支出されているもので,被告商品の販売数程度を追加的に販売することによって追加的に必要となるものとは考え難いから,この人件費を控除すべき費用として計上することはできない。
c まとめ (a) 以上によれば,まず,仕入関係費用については,単位仕入額は,●●●●●円,単位輸入経費額は●●●●●円,単位送金手数料額は●●●●●円で,合計●●●●●円となる。なお,仕入関係費用というものは,原告商品の仕入れに関して発生するものであるから,原告商品1個当たりの単位額を算定するに当たっては,上記のとおり総額を仕入数で除することとするのが相当である。
次に販売関係費用を見ると,これらの費用は,原告商品の販売に関して発生するものであるから,原告商品1個当たりの単位額を算定するに当たっては,原告主張のような仕入数ではなく,販売数で除することとするのが相当である。そして,先に認定したように,販売関係費用については,@販売促進費が●●●●●円,A運送費が●●●●●円,B取扱説明書の印刷代が1部当たり●●●●●円,C倉庫保管料等が●●●●●円であるから,原告商品1個当たりの単位額は,@,A及びCの合計額である●●●●●円を本件算定期間中の原告商品の販売数である●●●●●個で除した●●●●●円にBの●●●●●円を加えた●●●●●円となる。
したがって,原告商品の単位費用額は,上記合計の●●●●●円となる。
(b) なお被告は,原告商品の単位費用額について,別紙「13期の変動費一覧表」記載の項目の費用を控除すべきであると主張する。
しかし,先に述べたように,5条1項は,模倣商品が販売されなかったとしたとした場合に,その代わりに先行者が先行商品を追加的に販売することによって得られたであろう利益を逸失利益として算定する規定であるから,そこでの単位利益額を算定する際に控除すべき費用は,原告商品を追加的に販売するに当たって追加的に必要になったと認められるものに限るのが相当である。そして,本件では,原告商品の本件算定期間中の売上数は●●●●●個であるのに対し,被告商品の販売数はその約●●●●●%に当たる●●●●●個にすぎないから,先に認定したもの以外に原告商品を追加的に販売するのに追加的に必要となった費用はないというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
また被告は,本件での原告の単位利益額を算定するに当たっては,ヌーブラエアライトの経費も考慮すべきであると主張するが,ヌーブラエアライトは本件算定期間では未だ販売されるに至っていない上,同商品が原告商品と形態が同一であると認めるに足りる証拠もないから,この被告の主張も採用できない。
(エ) 原告商品の単位利益額について 以上より,原告商品の単位利益額は,単位売上額である●●●●●円から単位費用額である●●●●●円を控除した,●●●●●円となるところ,原告の主張する単位利益額は●●●●●円であるから,この限度で認めることとする。
オ 原告が被告商品の販売量の全部を販売することができない事情について (ア) 甲第3号証の15によると,雑誌「日経ビジネス」12月15日号において,「あなたの知らないヒット商品」の4位として原告商品が紹介され,そこでは,「今春登場し,国内では正規輸入品…だけで21万個,並行輸入品や類似商品も合わせると50万個以上が売れたと見られる。」との記載があることが認められる。
そして被告は,このように並行輸入品や類似商品が多数存在し,販売されたことから,原告は被告商品の販売量の全部を販売することができなかったはずであると主張する。
(イ) しかしまず,類似商品については,被告が指摘する乙8号証以下の商品を見る限り,いずれも原告商品の形態模倣した商品である疑いが濃厚なものであり,仮にそれらが原告商品の形態模倣商品である場合には,それら商品は市場で販売することを許されないものなのであるから,それらそれら類似品が存在することをもって,原告が被告商品の販売量の全部を販売することができなかった事情とすることはできない。
したがって,被告は,それら類似商品の存在をもって,原告が被告商品の販売量の全部を販売することができなかった事情であるとするためには,それら類似品が原告商品の形態模倣品ではないことを主張立証する必要があるが,本件ではこのことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,類似品の存在を理由とする被告の主張は採用できない。
(ウ) 次に並行輸入品について検討すると,これについては,先に認定したように原告とブラジェル社との間の独占販売権契約では,ブラジェル社は並行輸入を極力防止する義務を負っているが,実際に並行輸入された場合に,その販売が違法であるということはできない。そして,原告商品と並行輸入品とは,同じブラジェル社の製造した同一商標・同一品質のものなのであるから,被告商品が販売されなかった場合には,その需要の一部は並行輸入品の購入へと向かうと考えるのが合理的である。したがって,並行輸入品の存在は,原告が被告商品の販売量の全部を販売することができなかった事情であるということができる。
そして,現実に並行輸入品がどれくらい販売されていたのかは証拠上明らかではないが,上記「日経ビジネス」誌によれば,並行輸入品と類似品の合計で,原告商品を上回る販売量があったとされており,並行輸入品は正規ルートである原告商品に較べて一般に廉価である(乙19でもそのようにいえる)から,決して無視し得ないものであったとはいえる。しかし他方,@並行輸入品は真正品ではあるものの,輸入としては非正規のルートを通じて販売されるものであることから,日本での販売ルートもインターネットを通じたようなものに限られ(乙19もそうである),一般消費者のアクセスのしやすさや購入に当たっての安心感において,正規の販売ルートである原告商品や,乙第8号証以下で見られるような大手通信販売業者によって販売される類似商品とは,大きな格差があると考えられること,A前記のとおりブラジェル社は日本への並行輸入を防ぐ最大の努力をする義務を負っていることからして,さほど大きな販売力があったとは考えられない。これらを勘案すると,本件においては,原告は,被告商品の販売量のうちの15%を販売することができなかったと認めるのが相当である。
カ まとめ 以上によれば,原告は,単位利益額●●●●●円に,被告商品の販売数である●●●●●個の●●●●●個を乗じた●●●●●円の損害賠償を請求することができる。
なお,その余の●●●●●%である●●●●●個については,5条3項2号に基づき,原告が被告商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を請求することができるかが問題となる。しかし,5条3項2号は,形態模倣行為によって営業上の利益侵害された者の,得べかりし商品形態使用許諾料を損害として把握するものであるから,同規定が適用されるためには,営業上の利益侵害された者が第三者に対して商品形態を使用許諾する権限を有していることが前提となると解される。そうすると,本件では,ブラジェル社と原告との間の独占的販売権契約(甲2)によっても,原告に原告商品の商品形態を第三者に使用許諾する権限が与えられていたとは認められず,他にこのことを認めるに足りる証拠もないから,本件では,原告は上記●●●●●個について,5条3項2号に基づく損害賠償を請求することはできない。 2 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求について (1) 争点(2)ア(周知商品表示性)について ア 後掲証拠によれば,次の事実が認められる。
(ア) 原告商品の新聞及び雑誌での紹介について a 原告商品は,我が国においては,平成15年2月から一般消費者向けに販売されたが,同年の「女性セブン」6月12日号において,「噂のブラで谷間作ってみました」との見出しの下,3頁にわたって原告商品を紹介する記事が掲載された。そこでは,「どんなにセクシーな服を着ても絶対に見えず,しっかり谷間をメイクする”究極のブラ”として,主婦,OLから銀座のホステスまで世の女性に話題沸騰中の”ヌーブラ”」と記載され,原告の代表取締役の「現在は月に5万個売れています」との発言が掲載された。(甲3の1) b 雑誌「CAZ」6月23日号において,原告商品は,1頁の中に,他の8種類の商品と共に紹介された。(甲3の2) c 雑誌「DIME」2003年7月3日号において,「真夏のオンナは磨きこんだ”背中”が眩い」との見出しの下,他の7種類の商品ないしサービスと共に原告商品が紹介された。(甲3の3) d 雑誌「bear’s up」7月号において,6個のプレゼント商品の一つとして掲載された。(甲3の4) e 雑誌「MISS」7月号において,「肌見せNG立ち直りGOODS」として,他の3種類の商品と共に紹介された。(甲3の5) f 8月12日の毎日新聞夕刊(大阪本社版)1面の「’03夏写 かんさい経済」欄において,原告商品が紹介され,「この夏の大ヒットは,米国生まれの『ヌーブラ』」,「輸入代理店の『ゴールドフラッグ』(東大阪市)は,『3月の輸入開始以来,全国で売り切れ続出』。高島屋大阪店では,7月末までの4カ月で3250個が売れた。今は予約販売。類似品も出回っている。」との記載がある。(甲3の6) g 雑誌「AERA」8月18-25日号において,「ヌーブラどこにもなし」との見出しの下,原告商品の関する1頁の記事が掲載された。そこでは,「あまりの人気にどこでも品切れ。まるっきり手に入らないブラジャーがある。その名は『ヌーブラ』。今年2月の発売以来,10万本以上売れた。」との記載がある。(甲3の7) h 9月24日の「繊研新聞」において,2003年春夏百貨店レディスバイヤーズ賞の話題賞として,原告商品が選ばれて掲載された。(甲3の8) i 雑誌「日経トレンディ」10月号において,原告商品が,他の3種類の女性向け商品と共に紹介された。(甲3の9) j 雑誌「DIME」10月2日号において,原告商品が,他の6種類の女性向け商品と共に紹介された。そこでは,「『ヌーブラ』は,…アメリカでの製造が追いつかず,都内大手百貨店では,約1000人が予約待ちとなる騒ぎとなった。いずれの高級品にも,今はより低価格な類似品が現れている。しかし,それを寄せ付けないだけの高機能が支持され,ヒットを続けている。」との記載がある。(甲3の10) k 雑誌「Can Can」12月号において,原告商品が,他の6種類の女性向け商品と共に紹介された。そこでは,半年で10万枚の大ヒットと記載されている。(甲3の11) l 雑誌「日経トレンディ」12月号において,原告商品が「Best 30 for 2003」の17位として紹介された。そこでは,「ユニークなブラジャーとしてテレビ番組が紹介したところ,あっという間にヒット。8月までに10万本以上が売れた。」「ピーク時には百貨店で購入の予約待ちをする客が100人に及び,多数の類似品が出回った。」との記載がある。(甲3の12) m 12月4日の「日経MJ」において,原告商品が「2003年ヒット商品番付」の前頭に位置付けられて紹介された。(甲3の13) n 雑誌「TOKYO 1週間」12月23日号において,「流行りモノ グッズ部門」の1位として,原告商品が紹介された。そこでは,「現在までの販売数は21万個」との記載がある。(甲3の13) o 雑誌「日経ビジネス」12月15日号において,「あなたの知らないヒット商品」の4位として原告商品が紹介された。そこでは,「今春登場し,国内では正規輸入品…だけで21万個,並行輸入品や類似商品も合わせると50万個以上が売れたと見られる。」との記載がある。(甲3の15) p 雑誌「女性セブン」12月18日号において,他の商品と共に原告商品が紹介された。(甲3の16) (イ) 原告商品の類似品について a 通信販売誌である「ナイスミセス」(カタログ有効期限平成15年9月20日)に掲載された「ユーブラ」(乙8) b 通信販売誌である「essflora」2003年秋冬号に掲載された「ラ・ブラ」(乙9) c 通信販売誌である「CE・PI・ET」2003年冬号に掲載された「ファンシーブラ」(乙11) d DPI日本会議通信販売カタログ(平成15年12月ころ)に掲載された「ユーブラ」(乙12) e 東急百貨店の通信販売カタログ(2004新春号)に掲載された「アンブラ」(乙13) f 通信販売誌である「まるごと生活館」(カタログ有効期限平成16年5月31日)に掲載された「ユーブラ」(乙14) g 通信販売誌である「CE・PI・ET」2004年夏号に掲載された「ラ・ブラ」(乙15) h 東急百貨店の通信販売カタログ(2004初夏号)に掲載された「アンブラ」(乙16) i 平成15年に株式会社丸隆が発行した商品企画書に掲載された「Beauty Bra」(乙17) (エ) 並行輸入品について 平成16年5月の時点で,AMC社が原告商品の並行輸入品を販売していた(乙19)。
イ 以上に基づき判断する。
(ア) 原告商品は,平成15年2月の日本国内での一般消費者向けの販売開始後,同年6月より前に既に話題となり,夏物衣料の販売が本格的に始まる同年6月ころからは何度もマスメディアに取り上げられ,同年8月ころには製造が追いつかず,大手百貨店では予約待ちの状態となったことからすると,原告商品は短期間に集中的に需要者の間に浸透していったものといえる。
(イ) 他方,原告商品が話題になるに伴い,よく似た類似品が販売されるようになり,8月に入ると,類似品が出回っていることも新聞で記載されるようになったこと(前記ア(ア)f)からして,類似品の数も増大したものと推認されるうえ,同時に並行輸入品も出回るようになり,平成15年末時点では,原告を通した原告商品の売上げが約21万個であるのに対し,類似品と並行輸入品を合わせた売上げが約29万個と(前記ア(ア)o),類品品と並行輸入品の売上量が原告を通じた原告商品の売上量を上回る事態となり,これら類似品や並行輸入品の販売は平成16年以降も行われていると認められる。
そして,これらの類似品の形態は,原告商品とよく似ており(先に述べたように形態模倣品ではないかと疑われる),商品形態のみでは容易に識別することができないものであったと推認される(なお,これら類似品が仮に形態模倣品であったとしても,原告商品の形態の周知商品表示性を検討する局面では,需要者の認識が現実的にどうであるかが問題なのであるから,先に損害額を検討した局面とは異なり,考慮に入れることに妨げはない。)。そうすると,上記のような類似品の流通量も併せ考慮すると,原告商品の形態が,特定の出所を示す商品表示として周知性を獲得したとは認められない。
また,並行輸入品については,この流通には原告は介在していないから,これが原告の商品であるとはいえず,この商品形態が原告の出所を表示するものとはいえないところ,並行輸入品の商品形態は,当然ながら原告商品のものと同一である。そして,上記のように並行輸入品の流通量も相当程度のものがあったと考えられることからすると,原告商品の形態が,原告の出所を示す商品表示としての周知性を獲得したとも認められない。
先に認定した雑誌の記事の中には,平成15年10月の時点で,原告商品は,低価格の類似品が出回る中でもそれを寄せ付けないだけの高機能が支持されてヒットを続けているとの記載があるが,類似品の形態が原告商品の形態とよく似ている以上,このような消費者からの支持の差は,商品性能の差に基づくものであると考えられ,その識別は,商品形態ではなく,商品名によって行われているものと考えるのが相当である。
(ウ) したがって,原告商品の商品形態が,原告の出所を表示する周知な商品表示であるとは認められない。
オ 以上より,原告の不正競争防止法2条1項1号に基づく請求は,その余について判断するまでもなく理由がない。
3 不正競争防止法2条1項2号に基づく請求について 先に2で述べたところからすると,原告商品の商品形態が原告の出所を表示する著名な商品表示であるとは認められないから,原告の不正競争防止法2条1項2号に基づく主張は,その余について判断するまでもなく理由がない。
4 よって,原告の本件請求は,主文掲記の限度で理由があるから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 守山修生
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