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関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  営業地域 /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  誤認混同 /  不正の目的(不正競争の目的) /  差止請求(差止) /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) / 
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事件 平成 20年 (ワ) 6054号 不正競争行為差止等請求事件
堺市(以下略)
原告株式会社青雲荘
訴訟代理人弁護士藤田修輔 藪野恒明 町野承子 堺市(以下略)
被告青 雲産業株式会社
訴訟代理人弁護士原健二
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/09/17
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,その営業上の活動に「青雲」の文字を含む表示を使用してはならない。
2被告は,看板,店舗・事務所表示,広告その他の営業に使用する一切の施設又は物品に「青雲」の文字を含む表示を使用してはならない。
3被告は,原告に対し,大阪法務局堺支局昭和59年4月3日受付をもってした被告の設立登記中「青雲産業株式会社」の商号の抹消登記手続をせよ。
4被告は,その本店に所在する看板,店舗・事務所表示その他の営業物件から「青雲」の表示を抹消せよ。
第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,?@主位的に,被告が周知営業表示たる原告の商号(株式会社青雲荘)と類似する商号(青雲産業株式会社)を使用して原告の営業と混同を生じさせており,かかる被告の行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するとして,同法3条に基づき,?A予備的に,被告が不正の目的をもって原告と誤認されるおそれのある商号を使用しているとして,会社法8条に基づき,被告の使用する上記商号の抹消登記手続,原告の上記商号と被告の上記商号に共通する「青雲」の文字を含む表示の使用差止め及び看板等の営業物件からの「青雲」の表示の抹消を求める事案である。
1争いのない事実( )原告は,昭和45年12月12日に設立されたビジネスホテル業,レスト1ラン,喫茶業などの業務を行う株式会社であり,設立以来 「株式会社青雲 ,荘」をその商号(以下「原告商号」という )としている。 。
(2)被告は,昭和59年4月3日に設立された旅館及びビジネスホテルの経営,給食事業その他の業務を行う株式会社であり,設立以来 「青雲産業株式会 ,社」をその商号(以下「被告商号」という )としている。 。
(3)原告代表者A(以下「A 」という )と被告代表者B(以下「B 」とい ’。 ’う )は兄弟である(A’が三男,B’が二男 。 。 )(4)原告は,被告設立時,被告が「青雲産業株式会社」の商号を使用することを許諾した(許諾に当たり原告主張の後記条件が付されたか否かについては争いがある。。)2争点( )不正競争防止法3条(2条1項1号)に基づく請求-主位的請求-につい1て(争点1)ア原告商号の周知性の有無(争点1-1)イ原告の営業との誤認混同の有無(争点1-2)ウ原告が被告に被告商号の使用を許諾した際に条件を付したか,被告がその条件に違反したか(争点1-3)( )会社法8条に基づく請求-予備的請求-について2被告が不正の目的をもって被告商号を使用しているか(争点2)第3争点に関する当事者の主張1争点1-1(原告商号の周知性の有無)について【原告の主張】原告は,昭和45年12月12日の設立以来,堺市内を中心としてビジネスホテルの経営を続け,堺市臨海地域のプラント工場の作業員やプラント工場の建設工事が行われる際の建設作業員に対する宿泊施設の提供を主として行ってきた。その結果,原告商号は,少なくとも堺市及びその周辺部において,大規模プラント工場を経営する大手企業やプラント施設の建設を受注する大手建設会社に強く認知されるようになり,周知性を獲得した。
また,原告は,平成11年ころから,青森県東部(太平洋岸)沿岸部において営業活動を行っており,遅くとも平成13年ころには同地域とりわけ国策会社であり,青森県下で最大の企業である日本原燃株式会社が本社を置き,かつ,その主力業務であるウラン濃縮及び使用済核燃料再処理工場を置く青森県上北郡六ヶ所村地区において,宿泊施設提供事業者としての原告が使用する原告商号は周知性を獲得した。
【被告の主張】原告商号がその経営するホテル周辺で知られているとしても,一地方において広く知られているとは到底いえず,プラント工場を経営する会社や大手建設会社にとって周知であるとはいえない。青森県東部沿岸部において原告商号が周知性を獲得したという点も否認する。
2争点1-2(原告の営業との誤認混同の有無)について【原告の主張】被告は,堺市周辺部において,原告商号のうち識別性の強い「青雲」という文字を用いた「青雲産業株式会社」という商号を使用し,原告と同一の営業を行っている。
また,被告は,その会社案内である経歴書(甲3,以下「本件経歴書」という )に,被告が原告から分社したかのような,また,被告代表者B’が原告 。
の専務取締役に就任したことがあるなどの虚偽の記載をし,原告と密接な関係があるかのように装い,本件経歴書を原告の取引先に配布して宿泊業の受注勧誘を行っている。
このように,被告は,原告商号と類似する被告商号を使用して,原告の営業と混同を生じさせているものである。
【被告の主張】B’は,当時の原告代表者のC(A’及びB’の母。以下「C 」とい’う )から専務取締役の資格を与えられて全国各地で原告の営業活動をしてい 。
たものであるし,被告は青雲グループの一つとして発足したものであるから,本件経歴書に虚偽の記載などない。
また,被告は,本件経歴書を原告の取引先に配布して宿泊業の受注勧誘を行ったことはない。
3争点1-3(原告が被告に被告商号の使用を許諾した際に条件を付したか,被告がその条件に違反したか)について【原告の主張】原告は,被告設立時,被告商号を使用することを被告に許諾したが,その際,?@原告の中心業務である宿泊に関する業務(取引先の従業員の宿泊に伴う食事の提供などの賄い業務も含む )は行わない,?A原告が既に営業を行っていた 。
大阪府,兵庫県などの地域では営業活動を行わないという条件を付した。
しかるに,被告は,平成元年10月ころ,上記条件に違反して,大阪南港の関西電力発電所の建設工事に伴う同社職員の宿泊契約を受注しようとしたものである。
【被告の主張】被告代表者のB’は,被告設立時,C’から,A’は堺市内でホテル営業を行い,B’は堺以外で仕事をするという営業地域に関する指示を受けただけであり,原告が主張するような条件が付されたことはなかった。
4争点2(被告が不正の目的をもって被告商号を使用しているか)について【原告の主張】前記2(争点1-2)で主張したとおり,被告は,虚偽記載のある本件経歴書を営業活動の宣伝用パンフレットとして配布し,あたかも被告が原告又は原告の一部であるかのような誤信を取引先に生じさせている。このような被告の営業活動は,被告の営業を原告の営業と誤認混同させようとする意図に基づいてなされたものであるから,被告は,会社法8条にいう不正の目的をもって原告商号と誤認されるおそれのある被告商号を使用している。
【被告の主張】被告は,昭和59年4月の設立時から現在まで公然かつ平穏に被告商号を使用しているものであり,不正の目的はない。
第4当裁判所の判断1争点1-3(原告が被告に被告商号の使用を許諾した際に条件を付したか,被告がその条件に違反したか)についてまず,主位的請求(争点1)について判断するが,事案にかんがみ,争点1-3から判断する。
( )証拠(甲12,乙40,42,原告代表者,被告代表者B及び各項末尾に1掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
アC’は,昭和38年4月から,堺市内において簡易旅館「青雲荘」を営むようになり,昭和45年12月12日にこれを法人化して原告を設立し,その代表取締役に就任した。
イA’は,昭和43年ころから,C’が経営していた簡易旅館「青雲荘」の仕事に専念するようになり,原告設立後の昭和53年1月にはC’とともに原告の代表取締役に就任した。
ウB’は,昭和49年7月ころから原告に入社して,主として地方回りの営業をしていたが,昭和58年ころ,新しく会社を立ち上げることを考えるようになった。
エB ,A ,C ,C’の夫G(以下「G 」という,G ・C’夫婦の ’’’ ’。)’四男D(以下「D 」という,長女E及びB’の妻Fは,昭和59年3 ’。)月1日,被告を設立するための発起人となって発起人会を開催し,全員一致により,被告の商号を「青雲産業株式会社 (被告商号)とすること, 」被告の事業目的を旅館及びビジネスホテルの経営,レストラン及び喫茶店の経営,給食事業,土地・建物の管理業務,前各号に附帯する一切の事業とすることを可決し,同月26日には同じ内容の被告の定款を作成した。
なお,被告の商号を青雲産業株式会社とすることはC’の考えによるものであった。
そして,同年4月2日に開催された被告の創立総会において,B ,A’’及びG’が取締役に,C’が監査役にそれぞれ選任され,同日に開催された被告の取締役会において,B’が代表取締役に選任された。また,被告の発行する株式の総数400株のうち100株を発行し,30株をB’が,A ,G ,C ,D’らその余の発起人が各10株をそれぞれ引き受 ’’’けた (乙1,2の1・2・4・6) 。
オその後,被告が業務を行うについて原告から異議が出たことはなかった。
( )前記争いのない事実( )のとおり,原告は,被告設立時,被告の商号を青2 4雲産業株式会社とすることを許諾したものである。
原告は,被告が被告商号を使用するにあたっては,?@原告の中心業務である宿泊に関する業務(取引先の従業員の宿泊に伴う食事の提供などの賄い業務も含む )は行わない,?A原告が既に営業を行っていた大阪府,兵庫県な 。
どの地域では営業活動を行わないという条件が付されていたと主張する。
しかし,上記?@の条件が付されていたことについては,これを認めるに足りる証拠はない(A’自身 「C’は独立するにあたり,同様の業務をする ,ことを認め」と,被告の業務の種類を限定することを内容とする条件が付されていなかったことを認める旨の供述をしている〔甲12。かえって,〕。)原告代表者のA’も発起人として記名押印している被告設立時の発起人会議事録(乙2の1)及び被告の定款(乙1)のいずれにも,被告の事業目的について,その冒頭部分に「旅館及びビジネスホテルの経営」と明記されているところ,仮に,?@の条件が付されたとすれば,被告の定款等の事業目的から宿泊に関する業務を除外すれば足りるのに,上記のように事業目的が明記されていることは,被告商号の使用許諾に当たり,設立時に?@の条件が付されていなかったことを強く推認させるものというべきである。
次に,上記?Aの条件に関して,A’は,被告設立時,C’から 「青雲荘 ,のやってる地域では,青雲産業はしない」と聞いたと供述する(A’作成の陳述書[甲12]にも同趣旨の記載がある。しかし,A’の上記供述は 。)C’からの伝聞にすぎず,その内容の正確性には少なからず疑問がある。また,被告の営業地域を限定するという重要な内容にもかかわらず,その旨を記載した書面等は作成されておらず,A’の供述を裏付ける客観的な証拠はない。さらに,被告代表者のB’は,C’からは堺市内ではホテル・旅館業をしないようにという趣旨の話があったにすぎないと供述していることに照らしても,A’の上記供述を直ちに採用することはできないというべきである。また,そもそもA’の上記供述は,上記のとおりC’からの伝聞でその正確性には疑問があり,C’とB’との間でどのような話合いがなされたのか,とりわけ,被告が営業地域を限定することが青雲産業株式会社という商号の使用を許諾することの条件になっていたのかという点は不明であり,原告が主張する上記?Aの条件の存在を裏付けるものともいえない。そして,他に,原告が被告商号の使用許諾にあたって上記?Aの条件を付したことを認めるに足りる証拠もない。
( )以上によれば,被告は,原告の許諾に基づいて被告商号を使用しているも3のと認められるから,争点1-1(原告商号の周知性の有無)及び同1-2(原告の営業との誤認混同の有無)について判断するまでもなく,被告による被告商号の使用が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するとはいえない。したがって,原告の主位的請求には理由がない。
2争点2(被告が不正の目的をもって被告商号を使用しているか)-予備的請求-について( )会社法8条にいう「不正の目的」とは,他の会社の営業と誤認させるなど1して,他の会社と不正に競争する目的など,不正な活動を行う積極的な意思を有することを要するものと解される。
この点,原告は,被告において,被告が原告から分社したかのような,また,B’が原告の専務取締役に就任したことがあるなどの虚偽の記載をした本件経歴書を原告の取引先に配布して宿泊業の受注勧誘を行っており,このような被告の営業活動は,被告の営業を原告の営業と誤認混同させようとする意図に基づいてなされたものであるから,被告が不正の目的をもって被告商号を使用していると主張する。
( )しかし,上記1で認定・説示したとおり,被告は,その設立時に青雲産業2株式会社の商号の使用を原告から許諾されたものであり,被告において,原告の営業と誤認させる目的などの不正な活動を行う積極的な意思に基づいて被告商号の使用を開始したと認めることは到底できない。
そして,原告が「不正の目的」を基礎づけるものとして主張する本件経歴書は,B’の職歴の箇所に「平成19年4月同社相談役就任」と記載されていることからすれば,平成19年4月以降に作成されたことが明らかであるが,被告は,昭和59年4月の設立時から本件経歴書が作成されるまでの20年以上もの長期間にわたって原告の許諾に基づいて被告商号の使用を続けてきたものであり,その間に不正の目的を有していたことを裏付けるような事情もうかがえず,原告から被告商号の使用について異議が述べられた形跡もない( )また,本件経歴書の記載内容について検討するに,確かに,証拠(甲3)3によれば,本件経歴書には,被告の会社沿革の箇所に「昭和38年月青 4雲荘を創業「昭和43年12月社名を株式会社青雲荘に変更する, 。」, 。」「昭和59年4月株式会社青雲荘の地方営業部門を独立させ青雲産業株式会社を設立 」などの記載があること,B’の職歴の箇所に「昭和49年7 。
月株式会社青雲荘入社「昭和51年4月同社専務取締役就任」など 」,の記載があること,表紙写真の被告の会社建物の背景に原告の会社建物が写っているなど,被告が原告の関連会社であることを示すような記載があることが認められる。
しかし,上記1で認定したとおり,被告は,B’に加え,C’やA’その他のH家の親族が発起人となり,原告から原告商号と共通する青雲の文字を含む青雲産業株式会社の商号の使用を許諾されて設立された会社であるところ,C’の夫のG’は青雲興産株式会社(当初の商号は太陽興産株式会社)の代表取締役を,C’の四男のD’は青雲給食株式会社の代表取締役をそれぞれ務めているように,H家の親族が代表者を務める会社の商号には「青雲」の文字が使用されている(弁論の全趣旨 。そうすると,原告と被告と )の間には資本関係がないとしても,H家の親族が経営するいわば青雲グループの一員として被告が設立されたと捉えることにも合理的な理由がないとはいえず,本件経歴書に上記のような原告の設立経緯など原告と被告が関連会社であることを示すような記載があるとしても,これを虚偽記載であると断ずることはできない。したがって,本件経歴書中の上記記載をもって,被告において,原告と誤認させるなど不正な活動を行う積極的な意思に基づいて被告商号を使用していると推認することはできない。なお,本件経歴書中,B’が原告の取締役に就任したことがあるという記載内容の真偽は明らかではないが,仮にこの点の記載が事実と異なるとしても,これはB’の過去の職歴に関する記載にすぎない上,上記のとおり本件経歴書は被告商号の使用開始から20年以上も経過した後に作成されたものであることからすれば,このような記載のみをもって,被告が不正な活動を行う積極的な意思に基づいて被告商号を使用していると推認することはできないというべきである。
そして,他に,被告が「不正の目的」をもって被告商号を使用していることを認めるに足りる証拠はない。
( )したがって,被告が会社法8条にいう不正の目的をもって被告商号を使用4しているとは認められないから,原告の予備的請求も理由がない。
第5結語以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人
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