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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21ワ16809損害賠償請求事件 平成21ワ33956損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成19ワ11899不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ10470不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  登録商標 /  需要者 /  商品等表示 /  類似性(類似) /  外観 /  印象 /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  技術的思想 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  因果関係 /  ライセンス /  侵害 /  特別顕著性 /  代理人 /  代表者 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  秘密保持義務 /  有用性 /  非公知性 /  商品表示性 /  混同のおそれ(混同) /  営業秘密 /  2条1項7号 /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  保有者 /  品質等誤認表示(誤認) /  競争関係 /  営業誹謗 /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  販売数量 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 8486号 不正競争行為差止等請求事件
原告株式会社パシフィックウエーブ
原告ジ ェイスリープ株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士池田崇志 上田一比古 本田建二 東原直樹
同 訴訟代理人弁理 士石川克司
同 補佐人弁理 士尾崎雄三
被告日 本ジェル株式会社
訴訟代理人弁護 士柳誠一郎
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/01/19
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原 告 ら の 請 求 を い ず れ も 棄 却 す る 。
2 訴 訟 費 用 は 原 告 ら の 負 担 と す る 。
事実及び理由
全容
第1請求の趣旨1被告は,別紙被告商品目録1記載の「ピタ・マットレス」を製造し,販売し,販売のために展示し,輸出し,又は輸入してはならない。
2被告は,前項記載の「ピタ・マットレス」及びその製造用金型を廃棄せよ。
3被告は,別紙被告商品目録2記載の「ピタ・シートクッション」を製造し,販売し,販売のために展示し,輸出し,又は輸入してはならない。
4被告は,前項記載の「ピタ・シートクッション」及びその製造用金型を廃棄せよ。
5被告は,別紙顧客情報目録記載の顧客名簿を,その営業上の活動に使用又は開示してはならない。
6被告は,前項記載の顧客名簿の写しを廃棄せよ。
7被告は,別紙著作物目録記載の図を使用してはならない。
8被告は,前項記載の図を掲載したカタログ及びパンフレット類を廃棄せよ。
9被告は,原告らに対し,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を,同目録記載の方法で,同目録記載の新聞に掲載せよ。
10被告は,原告株式会社パシフィックウエーブに対し,6000万円及びこれに対する平成20年7月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11被告は,原告ジェイスリープ株式会社に対し,4000万円及びこれに対する平成20年7月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
12訴訟費用は被告の負担とする。
13第10項及び第11項について仮執行宣言第2事案の概要1当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない )。
1当事者()ア原告株式会社パシフィックウエーブ(以下「原告パシフィックウエーブ」という )は,ベッド,マットレスの輸出入及び製造販売などを目的 。
とする株式会社である。
原告ジェイスリープ株式会社(以下「原告ジェイスリープ」という )。
は,ベッド,マットレス,寝装寝具品及び家具の製造,販売,賃貸及び輸出入などを目的とする株式会社である。
原告ジェイスリープは,平成16年8月に設立された株式会社(設立当初は有限会社)であり,当時原告パシフィックウエーブの営業担当者であったAが代表取締役に就任した。
イ被告は,医療,介護その他の福祉に用いる寝装具の一般販売及びフランチャイズ方式による販売などを目的とする株式会社である。
2原告らによるマットレス,クッションの販売()アインテリジェル商品の販売原告パシフィックウエーブは,平成11年10月から,立体格子型グミ状ジェルを素材とする商品を「インテリジェル」という商品名で販売した(以下,この商品を「インテリジェル商品」といい,その素材となるジェル部材を「インテリジェル部材」という。インテリジェル部材の形態 。)は,縦長四角柱の空間が格子上に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈するもので,各格子空間の平面視形状は正方形である(甲42の1〜10 。)イ原告ジェイスリープは,平成16年9月から 「ジェルトロンマットレ ,ス (以下「原告商品1」という )及び「ジェルトロンクッション (以 」 。 」下「原告商品2」といい,これらを併せて「原告各商品」ともいう。また,原告各商品の素材となるジェル部材を「ジェルトロン部材」という )の。
販売を開始した。
原告商品1の形態は,別紙原告商品目録1添付の写真1ないし4のとおりであり,原告商品2の形態は,別紙原告商品目録2添付の写真1ないし4のとおりである(なお,原告各商品のどちらが表面であり,どちらが裏面であるかについては後記第3の1のとおり争いがある。。)また,ジェルトロン部材の形態は,別紙原告商品目録1の部分拡大図1ないし3のとおりであり,インテリジェル部材の上記各格子空間に,同空間の一方から高さ5分の1程度までの位置にわたって,平面視十字型の補強部が加えられている。
3被告によるマットレス,クッションの販売 ()ア被告は,平成15年4月1日,原告パシフィックウエーブとの間で,インテリジェル商品に係る取引契約(同日締結の覚書に係る付随的合意を含む )を締結した(以下「本件取引契約1」といい,その契約書〔甲5〕 。
を「本件取引契約書1」という。本件取引契約書1では,原告パシフ 。)ィックウエーブが被告に対し,マットレス,パッド,枕,座布団,クッション等のインテリジェル商品の介護福祉用品における販売について,日本国内における独占的販売権を与えるものと定められていた(3条,6条,「取引契約についての覚書 〔甲5〕の1条,2条 。 」)本件取引契約書1には,以下の定めがある(以下の「甲」は被告を,「乙」は原告パシフィックウエーブを,それぞれ示す。。)「第17条(禁止行為)甲は乙の承諾無くして次の行為をしてはならない。
?本契約に基づき知り得た商品に関する情報は乙の営業秘密であることを認識し,これを他に漏洩する行為?乙及び商品の信用を毀損する行為?ジェラスティックR等の成型品と同じかあるいは酷似する構造を有する素材を利用した他社の製品を取り扱う行為」「第22条(秘密保持義務)甲及び乙は本契約及び個別契約に基づき又は関連して知り得た相手方の秘密情報につき第三者に開示漏洩しないものとする 」。
イ被告は,平成17年10月11日,原告ジェイスリープ(当時の商号は「ジェイスリープ有限会社 )との間で,ジェルトロン商品に係る取引基 」本契約を締結し(以下「本件取引契約2」といい,その契約書〔甲6〕を「本件取引契約書2」という,これに基づき,ジェルトロン部材を使 。)用したマットレス等の商品を「ジェルビー」という商品名で販売した(甲78 。なお,本件取引契約書2では,本件取引契約書1とは異なり,原 )告ジェイスリープが被告に独占的販売権を与える旨の定めはなかった。
本件取引契約書2には,以下の定めがある(以下の「甲」は被告を,「乙」は原告ジェイスリープを,それぞれ示す。。)「第8条(新製品の開発)1甲は,商品等を利用した物品(以下 「新製品」という)の開発を ,行う場合又は第三者をして開発を行わせる場合には,事前にその旨を乙に対し書面で通知し,乙の書面による承諾を得ることを要する 」。
第16条(禁止行為)甲は,乙の事前の書面による承諾なく,次の各行為をしてはならない。
?商品等との誤認混同を防止する措置を講じることなく,商品等と同じあるいはこれと酷似する構造を有し,同じあるいは酷似する素材を利用した他社製品を取り扱う行為」「第17条(秘密保持義務)甲及び乙は,本契約継続中及び本契約終了後,本契約あるいは個別契約に基づき又はこれらに関連して相手方から開示を受け又は知り得た情報につき,第三者に開示し又は漏洩し,あるいは目的以外に使用してはならない 」。
ウ被告は,平成18年4月 「ピタ・シートクッション (以下「被告商 , 」品2」という )の製造販売を開始し,同年9月には「ピタ・マットレ 。
ス (以下「被告商品1」といい,被告商品2と併せて「被告各商品」と 」もいう )の製造販売を開始した。なお,被告は,被告各商品の販売に当 。
たって,あらかじめ原告らの承諾を得なかった。
被告商品1の形態は,別紙被告商品目録1添付の写真1ないし4のとおりであり,被告商品2の形態は,別紙被告商品目録2添付の写真1ないし3のとおりである。また,被告各商品の素材となる部材(以下「ピタ部材」という )の形態は,別紙被告商品目録1添付の部分拡大図1ないし 。
3のとおりである。
4本件取引契約2の解除()ア原告ジェイスリープは,平成18年12月15日,被告に対し,被告による被告商品1の販売が本件取引契約2に違反するとして,10日以内に是正内容を示す資料等の送付を求める旨の書面を送付した(乙3 。)イ原告ジェイスリープは,平成18年12月26日付けの書面(そのころ被告に到達した )において,被告に対し,同月15日の書面到達から1 。
0日間が経過した同月25日をもって,本件取引契約2を解除する旨の意思表示をした(乙4 。)5本件書面の配布()被告は,平成18年12月 「お客様各位」と題する書面(甲72:以下 ,「本件書面」という )を株式会社トーカイ,株式会社ヘルスケア,有限会 。
社エイジング等多くの取引先に郵送で送付した。
本件書面には,以下の記載(以下「本件書面記載」という )がある。。
「PITAシリーズは従来のジェルビーとは生産方法が異なります。具体的には立体格子状ジェルの生産方法を注入方式から,インジェクション方式に変更し,生産効率を大幅に高めることに成功しました。ジェルビー商品と比較し30%強の価格ダウンとなっております。高度な工業生産であるため品質が安定し,且つ耐久性もアップしております。勿論本来の床ずれ防止機能は同等であります 」。
6カタログの説明図()ア平成13年11月に発行された原告パシフィックウエーブのインテリジェル商品に係るカタログ(甲90)の2頁右上部には,インテリジェル商品の説明図として,マットレス(3つに区分され,各区分ごとに異なった彩色がなされている )の上に模式化された人が,頭を右側にして仰向け 。
に横たわっている図(以下「原告説明図」という )が掲載された。。
イ平成18年9月に発行された被告の被告各商品に係るカタログ(甲74)において,被告商品1の説明図として,別紙著作物目録記載の図(以下「被告説明図」という )が掲載された。。
2原告らの請求原告らは,?周知の商品表示である原告各商品の形態類似する被告各商品を製造販売する被告の行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たるとともに本件取引契約1の第8条1項及び第17条6号並びに本件取引契約2の第8条1項及び第16条4号に違反すること,?本件取引契約1に基づいて原告パシフィックウエーブが被告に対して自らの営業秘密である顧客名簿及びジェルの製法を開示したが,被告はこれを不正目的で使用しており,かかる被告の行為が不正競争防止法2条1項7号の不正競争に当たり,また被告がこれらを第三者に開示する行為が本件取引契約1の第17条1号及び第22条並びに本件取引契約2の第17条に違反すること,?本件書面記載の通知が原告らの営業上の信用を害するものであり,被告の本件書面の配布行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争に当たるとともに本件取引契約1の第17条2号及び本件取引契約2の第16条1号に違反すること,?被告説明図が原告説明図に係る原告パシフィックウエーブの著作権(著作権法21条の複製権)を侵害すること,以上をそれぞれ主張して,被告に対して以下の請求をしている。
【原告パシフィックウエーブの請求】1不正競争防止法3条1項に基づく被告商品1及び被告商品2の製造販売等()の差止め並びに同条2項に基づく同商品及び製造用金型の各廃棄(上記?関係)2不正競争防止法3条1項に基づく顧客名簿の使用等の差止め及び同条2項()に基づく顧客名簿の廃棄(上記?関係)3不正競争防止法14条に基づく謝罪広告の掲載(上記?関係)()4著作権法112条1項に基づく被告説明図の使用の差止め及び同条2項に ()基づくカタログ等の廃棄(上記?関係)5不正競争防止法4条,民法709条及び民法415条に基づき,損害賠償()の一部として6000万円及び本件訴状送達の日の翌日である平成20年7月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記?〜?関係)【原告ジェイスリープの請求】1不正競争防止法3条1項に基づく被告商品1及び被告商品2の製造販売等()の差止め並びに同条2項に基づく同商品及び製造用金型の各廃棄(上記?関係)2不正競争防止法14条に基づく謝罪広告の掲載(上記?関係)()3不正競争防止法4条,民法709条及び民法415条に基づき,損害賠償 ()の一部として4000万円及び本件訴状送達の日の翌日である平成20年7月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記?,?及び?関係)3争点1不正競争防止法2条1項1号に係る請求()…………… ア原告各商品の商品形態に係る周知商品表示性(争点1-1)…………………………………………………………… イ類似性 (争点1-2)…………………………………………………… ウ混同のおそれ (争点1-3)………………………………… エ営業上の利益侵害の有無等 (争点1-4)……………………………………………………… オ被告の故意 (争点1-5)………………………………………………………… カ損害の額 (争点1-6)2不正競争防止法2条1項7号に係る請求()……………… ア顧客情報の営業秘密性及び不正使用の有無(争点2-1)………… イジェルの製法の営業秘密性及び不正使用の有無(争点2-2)………………………………………………………… ウ損害の額 (争点2-3)3不正競争防止法2条1項14号に係る請求()…………………………… ア本件書面記載の営業誹謗行為性 (争点3-1)………………………………………………………… イ損害の額 (争点3-2)4本件取引契約1及び同2に係る債務不履行に係る請求()……………… ア本件取引契約1に係る債務不履行の有無等(争点4-1)……………… イ本件取引契約2に係る債務不履行の有無等(争点4-2)………………………………………………………… ウ損害の額 (争点4-3)5著作権侵害に係る請求()…………………………………… ア原告説明図の著作物性等 (争点5-1)………………………………………………………… イ損害の額 (争点5-2)第3争点に関する当事者の主張1争点1-1(原告各商品の商品形態に係る周知商品表示性)【原告らの主張】1原告各商品の商品形態の特徴()ア原告各商品の形態原告商品1の形態(ア)原告商品1の形態は,別紙原告商品目録1(添付写真1ないし4)のとおりである。
すなわち,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈する。各格子空間の平面視形状は正方形であり,一辺の長さは25?,高さは45?である。各格子空間を形成する壁の厚さは全周が等しく形成され,3.2?である。各格子空間の表面側は開放され,裏面側は,底部から高さの5分の1の位置にわたって平面視十字形の補強部が形成される。
なお,原告商品1には,上記平面視十字形の補強部が裏面にある「ジェルトロンボトムタイプ」と同補強部が表面にある「ジェルトロントップタイプ」の2種類があり,被告が,ジェルビーとして販売していたマットレスは,ジェルトロンボトムタイプである。
原告商品2の形態(イ)原告商品2の形態は別紙原告商品目録2のとおりである。
すなわち, 縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈する。各格子空間の平面視形状は正方形であり,一辺の長さは25?,高さは30?である。各格子空間を形成する壁の厚さは全周が等しく形成され,3.2?である。
各格子空間の表面側は開放され,裏面側は,底部から高さの5分の1の位置にわたって平面視十字形の補強部が形成される。
イ原告各商品の特徴原告商品1の特徴(ア)原告商品1は,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈し,各格子空間の平面視形状が正方形であり,各格子空間の表面側は開放されているところに形態上の特徴がある。
原告商品2の特徴(イ)原告商品2は,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてザブトン形状を呈し,各格子空間の平面視形状が正方形であるところに形態上の特徴がある。
インテリジェル商品等との関係(ウ)被告は,原告各商品とインテリジェル商品とは全く別物と捉えているが,原告各商品はインテリジェル商品と形態上の同一性を保ちながら発展してきた商品である。すなわち,立体格子状ジェルという原告各商品の本質的部分及び外観上の形態において,インテリジェル商品と原告各商品とは全く同一である。
被告が指摘する「アイソフレックス」という商品が販売された時期は平成16年8月であるが,同時期には,既に原告各商品の形態的特徴が広く知られていた。また 「アイソフレックス」のマットレスの販売価 ,格は34万円,クッションの販売価格は3万5000円であり,マットレスの重量が25?から30?と重過ぎるため,ほとんど販売されなかった。
同じく被告が指摘するフランスベッド株式会社の「こんにゃくマットレス」は,立体格子状ジェルを有するものの,その平面視形状はダイヤ型であり,原告各商品の平面視形状(正方形)とは形態が異なる。また,同商品のジェルの形状は外観から見ることができない。
同じく被告が指摘する「サイバークッション」という商品については,平成14年には販売が中止されている。
このように,上記原告各商品の特徴を有する商品は,原告各商品と被告商品以外にはない。
ウ原告各商品の形態の意義原告各商品は,マットレス及びクッションの素材として優れた弾性,感触,通気性を有し,一般の使用者はもとより,介護分野において使用した場合であっても褥瘡を起こさないという機能を有するものであり,機能と外観上の特徴的な形態が密接不可分である。
よって,原告各商品の需要者がその外観を見れば,床ずれ防止機能及び体圧分散機能を期待できる商品であるとの認識につながるから,その形態が商品選択の基準の一つになる。
2原告各商品の商品形態周知性()ア原告パシフィックウエーブによる使用原告パシフィックウエーブは,平成11年3月,日本で最初に立体格子状のジェルマットレスを一般市場向けに発表し,同年10月に販売を開始してからこの形状と素材を基本として,現在に至るまで継続的に使用している。
イインテリジェル商品及び原告各商品の販売数量及び売上額インテリジェル商品のマットレスと原告商品1の販売数量は,平成11年(ただし11月,12月のみ)が65台,平成12年が796台,平成13年が957台,平成14年が1244台,平成15年が2428台,平成16年が1677台,平成17年が1060台,平成18年が954台,平成19年が720台,平成20年が750台で,総数は1万0651台である。同販売数のうち,トップタイプ販売開始後の平成17年ないし同20年のトップタイプの販売数は1831台,ボトムタイプの販売数は1653台である。
インテリジェル商品のクッション及び原告商品2の販売数量は,平成12年(ただし8月以降)が224個,平成13年が729個,平成14年が1795個,平成15年が3896個,平成16年が3916個,平成17年が3928個,平成18年が3174個,平成19年が1616個,平成20年が2004個で,総数は2万1282個である。
原告各商品の売上額は,平成15年は1億9675万5582円,平成16年は1億3284万1307円,平成17年は9600万2325円である。
ウ原告各商品の販売店舗数原告らは,原告各商品を,全国の介護用品の取扱店舗及び寝具専門店に販売している。その販売先は,約110社,約130店舗に上る。
エインターネット等を通した原告各商品の販売原告各商品はインターネットを通して多数の業者によって販売されている(甲21の1〜11 。)オカタログ等の頒布原告らは,原告各商品を掲載したカタログ及びパンフレット(甲13の1〜6)を作成し,これを原告各商品の取扱業者等に頒布した。
カチラシの配布原告各商品は,原告各商品を取り扱う販売店等による宣伝広告チラシ等に掲載されることにより,宣伝広告活動が行われており,その数量は計り知れない(甲19の1・2,甲22の1〜3 。)キ雑誌等とのタイアップ原告パシフィックウエーブは,株式会社白夜書房発行の「アローチャンス (平成16年4月増刊号甲23)や,株式会社公募ガイド社発行の 」「月刊プレゼントfan (平成16年1月号甲24)等にインテリ 」ジェル商品をプレゼント商品として提供した。
原告ジェイスリープは,住生活リアルティ株式会社発行の「Reera(リエラ(平成19年7-8月号甲25)や毎日新聞大阪本社発行 )」の「毎日CREY(クレイ(平成18年9月号甲26の1)等に, )」ジェルトロン部材を使用した枕等をプレゼント商品として提供した。
ク展示会等への出展原告パシフィックウエーブは,平成12年ころから 「福祉機器展」(ア) ,(財団法人保健福祉広報協会主催)に原告各商品を出展し(甲27〜30 ,平成13年ころから 「東京国際家具見本市 (社団法人国際家具 ),」産業振興会主催)に原告各商品を出展している。
原告パシフィックウエーブは,平成11年4月2日に東京ビッグサイ(イ)トで開催された「第25回日本医学会総会医学展示・博覧会 (日本」医学会主催甲4 ,平成16年9月7日から10日に東京ビッグサイ )トで開催された「第58回東京インターナショナルギフト・ショー秋2004 (株式会社ビジネスガイド社主催甲36の1〜3)に, 」それぞれ原告各商品を出展した。
原告ジェイスリープは,平成18年3月14日から17日に東京ビッ(ウ)グサイトで開催された「国際ホテル・レストランショー (社団法人日」本能率協会等主催甲37の1・2 ,平成18年4月5日から7日に )同所で開催された「インターナショナルホームファッションフェア2006 (株式会社ビジネスガイド主催甲38の1〜3 ,平成19 」 )年4月12日から14日にインテックス大阪で開催された総合福祉展「バリアフリー2007 (大阪府社会福祉協議会主催甲34の1〜 」3 ,平成19年3月15日から18日にパシフィコ横浜で開催された )「ボートショー2007 (社団法人日本舟艇工業会主催甲39の1 」〜4 ,平成19年5月29日から31日に都立産業貿易センターで開 )催された「快眠環境展2007 (甲35)に,それぞれ原告各商品を 」出展した。
ケ講演(セミナー)等の実績原告パシフィックウエーブ代表者(日本睡眠環境学会会員でもある )。
は 「快眠環境展2007「バリアフリー2008 (平成20年4月 ,」, 」25日〜27日 ,日本睡眠環境学会主催の「第23回睡眠環境シンポジ )ウム (平成17年11月25日)及び「第24回睡眠環境シンポジウ 」ム (平成18年10月26日)において,セミナーを開催し,原告各商 」品を紹介した。
コ雑誌,新聞,テレビなどでの紹介原告各商品は,業界雑誌である「ホームリビング」(株式会社アイク(ア)発行甲42の1〜10「寝装リビングタイムス (株式会社日本寝 ), 」装新聞社発行甲32,甲43の1・2「インテリアタイムス (株 ),」式会社インテリアタイムス社発行甲44)及び「日本醫療衞生新聞」(甲45)において頻繁にとりあげられた。
原告各商品は,日本工業新聞(甲46 ,神戸新聞(甲47の1〜 (イ) )4 ,シティリビング(甲48の1・2 ,大阪新聞(甲49 ,信州日 ) ))報(甲50 ,南信州新聞(甲51 ,両丹経済新聞(甲52)等にお ))いても紹介された。
テレビ東京ワールドビジネスサテライトの「トレンドたまご (平成(ウ) 」18年5月16日)に原告パシフィックウエーブ代表者が出演し,原告各商品が全国に放映された(甲53の1・2 。その他,日本テレビの )「未来予報2011 (平成18年7月13日)及び読売テレビ放送の 」「なるトモ! (平成18年8月30日)においても,原告各商品が放 」映された(甲54の1・2,甲55の1・2 。)「大ヒット商品はこれだ!」という書籍(甲56 ,光文社発行の(エ) )「BRIO(ブリオ(平成19年11月号,甲57 ,講談社発行の )」 )月刊「KING(キング(平成19年4月号,甲58 ,エステティ )」 )ックTBCの会員誌である「crostyle (平成18年冬号,甲59の1 」・2 ,学習研究社発行の「FYTE(フィッテ(平成18年9月号, ) )」甲60 ,リクルート社発行の「R25 (平成18年6月号,甲6 ) 」1 ,株式会社ケーシーシー発行の「金沢情報 (平成13年8月22 ) 」日,甲62 ,株式会社北隆館発行の「地域ケアリング (平成14年 ) 」7月号,甲63 ,徳間書店発行の「グッズプレス (平成20年4月 ) 」号,甲64)において,原告各商品やジェルトロン部材を用いた枕が紹介された。
原告パシフィックウエーブは,株式会社アイク発行の「ホームリビン(オ)グ」や「アンビエンテ (甲65 ,神戸新聞や海上自衛新聞(甲6 」)6)等を通じて宣伝広告活動を行なった。
サ以上により,遅くとも平成18年4月までには,原告各商品の形態は,それのみで原告各商品の出所を表示する形態として,需要者の間に広く認識されていた。少なくとも,寝具やマットレス及びクッションの取扱者や介護福祉業界においては,原告各商品の形態がその出所を表示する機能を有するものとして広く認識されている。
【被告の主張】1原告各商品の商品形態の特徴について()ア原告各商品の形態原告商品1の表面側の格子空間が開放されており,表面側の格子の一(ア)辺の長さが25?,高さが45?であって,裏面側に「平面視十字形の補強部」が形成されていることは否認する。原告商品1は「平面視十字形の補強部」が表面とされており,その格子の一辺の長さは12.5?である。また,原告商品1の高さは45?ではなく43?である。
原告商品2の表面側の格子空間が開放されており,表面側の格子の一(イ)辺の長さが25?であって,裏面側に「平面視十字形の補強部」が形成されていることは否認する。原告商品2は「平面視十字形の補強部」が。 表面として使用されており,その格子の一辺の長さは12.5?であるイ原告各商品の特徴について原告各商品とインテリジェル商品との関係(ア)原告らが原告各商品の特徴として主張する立体格子状ジェルは,インテリジェル部材において既に採用されていた形態である。また,インテリジェル商品と原告各商品とは,商品名も販売時期も販売元も異なる別個の商品である。したがって,インテリジェル商品の形態が,全く別の商品である原告各商品の出所を表示することなどあり得ない。
原告らは,原告各商品がインテリジェル商品と形態上の同一性を保ちながら発展したものであるとも主張するが,これは,原告ら自身が原告各商品の形態特別顕著性がないことを自認しているに等しい。また,インテリジェル部材は,格子の一辺の長さが25?であるのに対して,原告各商品のジェルトロン部材は,格子の一辺の長さが12.5?であるから,インテリジェル商品と原告各商品との間に形態上の同一性など存在しない。仮に,原告らが主張する「ジェルトロンボトムタイプ」なるものが実在するとしても,インテリジェル商品には原告各商品に見られる平面視十字形の補強部分がないのであるから,形態上の同一性など存在しない。
原告各商品の特別顕著性(イ)前記のとおり,原告各商品の形態である立体格子状ジェルの形状は,原告各商品が発売される以前からインテリジェル商品として販売されていたし,原告各商品が発売されると同時に被告も同じく「ジェルビー」として原告各商品と同じ形態の商品の販売を開始し,以後,被告商品の発売まで,その販売を続けた。
また,原告ジェイスリープが原告各商品を発売する以前から,エア・ウォーター株式会社が立体格子状ジェルを使用した「アイソフレックス」という商品名のマットレスとクッションを日本国内で販売していたし(乙6の1,2 ,フランスベッド株式会社も「こんにゃくマットレ )ス」と称して立体格子状ジェルを使用したマットレスを平成17年9月から販売していた(甲68,乙7 。インターネットでは,原告パシフ )ィックウエーブがインテリジェル部材を輸入していた米国イージーシート社製の立体格子状ジェルクッションが「サイバークッション」という名称で通信販売されていた(乙8 。)このように,立体格子状ジェルの形状は,原告らが独占していたわけではなく,同じ外観の他社商品が常に存在したのであるから,立体格子状ジェルの形状に特別顕著性がないことは明らかである。
原告各商品は形態によって識別されていない(ウ)原告各商品は,販売されたり広告宣伝されたりする際に,必ず「ジェルトロン」という商品名が伴っており,商品名もロゴマークも原告ジェイスリープの社名も伴わずに原告各商品の形態のみが広告されたり展示されたりすることはない。
また,原告商品1の小売価格(9万9800円〜20万1000円)及び原告商品2の小売価格(8000円〜2万3100円)は,いずれも同種商品と比べて非常に高価であり,原告ら自身,原告各商品の床ずれ防止機能等を強調しており,その機能性をセールスポイントとしている。このように,原告各商品において,需要者が商品選択の基準とするのは機能と価格であって,原告各商品の形態を商品選択の基準とすることはあり得ない。
よって,原告各商品の形態に係る商品表示として原告らが主張する立(エ)体格子状ジェルの形状は,不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当しない。
2原告各商品の商品形態周知性について()ア原告パシフィックウエーブによる使用原告パシフィックウエーブが日本で最初に立体格子状のジェルマットレスを一般市場向けに発表したことは不知。同原告が,この形状と素材を基本として,現在に至るまで継続的に使用しているとの点は争う。
イ原告各商品の販売数量被告が平成16年10月から平成18年3月までの1年6か月間に販売したジェルビーマットレスは772台にすぎないのであるから,同期間に原告ジェイスリープが被告以外に販売した原告商品1の台数はこれを下回ると推測される。
また,同期間に被告が販売したジェルビークッションは4842個にすぎないから,同期間に原告ジェイスリープが販売した原告商品2の個数はこれを下回ると推測される。
そうすると,原告各商品の販売数量は日本全国において販売されるマットレスやクッションの数量に比して極めて微々たるものでしかないから,一般消費者に対してはもとより,家具業界や介護用品業界においても,原告各商品には周知性がない。このように原告各商品自体が周知でない以上,原告各商品の立体格子状ジェルの形状が需要者に周知ではないことは明らかである。
ウ原告各商品の販売店舗数不知。
エインターネット等を通じた原告各商品の販売不知。ただし,原告らが摘示するウェブページのうち,インテリジェル商品を掲載するもの(甲21の5・9)や,平面視十字型の補強部を表面として使用するもの(甲21の1・3・6〜8・10・11)がある。
オカタログ等の頒布認める。ただし,原告らのカタログやパンフレットに掲載されている原告各商品は,平面視十字形の補強部が表面として使用されている。
カチラシの配布原告各商品が原告各商品を取り扱う販売店等による宣伝広告チラシ等に掲載されていることは不知。ただし,原告らが摘示するチラシのうち,インテリジェル商品を掲載するもの(甲19の2,22の1)や,ジェルトロン部材を使用した枕(甲22の2 ,平面視十字型の補強部を表面とし )て使用するもの(甲22の3)がある。
チラシの数量が計り知れないものであることは否認する。
キ雑誌等とのタイアップ不知。ただし,原告らが摘示する雑誌等には,原告各商品ではなくインテリジェル商品が掲載されているもの(甲23,24 ,ジェルトロン部)材を使った枕が掲載されているもの(甲25,26の1 ,立体格子状ジ)ェルが読み取れないもの(甲25 ,平面視十字型の補強部が表面として )使用されているもの(甲26の1)がある。
ク展示会等への出展の実績原告パシフィックウエーブが原告各商品を福祉機器展に平成12年こ(ア)ろから毎年出展していることは否認する。仮に平成12及び同13年に原告パシフィックウエーブが同展示会に出展したとしても,原告各商品を紹介したわけではない(原告各商品の発売前である。。)また,原告パシフィックウエーブが東京国際家具見本市に平成13年ころから出展していることは不知。
原告パシフィックウエーブが「第25回日本医学会総会医学展示・(イ)博覧会」及び「第58回東京インターナショナルギフトショー秋2004」に原告各商品を出展したことは否認する。これらに出展されたのはインテリジェル商品である。
原告ジェイスリープがバリアフリー2007に出展したことは認める(ウ)が,その余は不知。
ケ講演(セミナー)等の実績不知。
コ雑誌,新聞,テレビなどでの紹介原告らが摘示する雑誌等には,インテリジェル商品を紹介するもの(甲32,42〜46,47の1〜4,49〜51,62,63,65 ,ジ)ェルトロン部材を使用した枕を紹介するもの(甲53の1・2,54の1・2,56〜58,60,61,64,66)がある。なお 「寝装リビ,ングタイムス」は記事掲載の際に広告出稿を求める新聞であって,それに掲載される記事(甲32,43の1・2)は事実上の有料パブリシティである。
サ以上のように,原告各商品の形態は,原告各商品の商品表示として需要者の間で広く認識されているとはいえない。
2争点1-2(被告各商品と原告各商品との類似性)【原告らの主張】1原告各商品の形態()原告各商品の形態は,前記1【原告らの主張】(1)アのとおりである。
2被告各商品の形態()ア被告商品1の形態被告商品1の形態は,別紙被告商品目録1のとおりである。
すなわち,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈する。各格子空間の平面視形状は正方形であり,一辺の長さは25?,高さは50?である。各格子空間を形成する壁の厚さは全周が等しく形成され,3.2?である。
各格子空間の表面側は開放され,裏面側は,表面側と同様に開放された部分と,中心に丸孔の形成された底壁を有する部分が交互に配置される。
イ被告商品2の形態被告商品2の形態は,別紙被告商品目録2のとおりである。
すなわち,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されてザブトン形状を呈する。各格子空間の平面視形状は正方形であり,一辺の長さは25?であり,高さは一定ではなく,臀部と大腿部の形状に対応した緩やかな凹部が形成されている。各格子空間を形成する壁の厚さは全周が等しく形成され,3.2?である。
各格子空間の表面側は開放され,裏面側は,中心に丸孔の形成された底壁を有する部分がランダムに配置され,残りは表面側と同様に開放された部分により構成される。
3原告各商品と被告各商品との類似性()被告各商品は,いずれも原告各商品と同様に,立体格子型グミ状ジェルを素材としており,被告各商品の形態は原告各商品の形態と極めて類似している。
すなわち,原告各商品と被告各商品とは,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に縦横に多数並べて配置されて成り,各格子空間の平面視形状は正方形であり,各格子空間の表面側が開放されているという基本的な構成において共通する。
これに対し,原告商品1の裏面側(ボトムタイプ)は,底部から高さの5分の1の位置にわたって平面視十字形の補強部が形成されているのに対して,被告商品1の裏面側は,表面側と同様に開放された部分と,中心に丸孔の形成された底壁を有する部分が交互に配置される点において相違する。しかし,それは両商品を上からある程度の至近距離でよく観察した場合にのみ気付くものであり,通常の観察においては,各格子空間の平面視形状が正方形であるという立体格子状ジェルであるとの印象需要者に強く印象づけるものである。
また,被告商品2には,臀部と大腿部の形状に対応した凹凸があり,上から見た場合,中心に丸孔の形成された格子がランダムに配置された底壁が見えるのに対し,原告商品2は,高さが均一であり,上から見ると底壁がなく格子が開放されているという相違点がある。しかし,縦長四角柱の空間(格子空間)が格子状に多数並べて配置されており,各格子空間の平面視形状が正方形であるという原告商品2の形態上の本質的な特徴は同一であり,その結果,原告商品2と被告商品2を見た需要者に同一のものと認識させる。
【被告の主張】1原告各商品の形態()原告各商品の形態に係る被告の主張は,前記1【被告の主張】(1)アのとおりである。
2被告各商品の形態()ア被告商品1の高さは50?ではなく45?である。その余の形態は認める。
イ被告商品2の形態は認める。
3原告各商品と被告各商品の対比()ア立体格子状ジェルの相違点原告各商品の立体格子状ジェルは,正方形の格子の一辺の長さが12.5?であるのに対して,被告各商品は25?であるから,原告各商品とは格子の大きさにおいて異なり,需要者にも異なる印象を与える。
イ原告商品1と被告商品1との相違点被告商品1を上から見ると,縦横とも一つおきの格子の中心に丸孔の形成された底壁が見えるのに対して,原告商品1を上から見ると底壁がなく全ての格子が開放されているという相違点がある。
また,被告商品1のうち「ピタ・マットレスコンフォタイプ」は3分割のセグメントのうち,両端の2つが立体格子状ジェルではなくウレタンであるから,この点でも原告商品1とは外観が明らかに異なる。
ウ原告商品2と被告商品2との相違点被告商品2の高さは均一でなく,臀部と大腿部の形状に対応した凹凸があり,上から見ると中心に丸孔の形成された格子がランダムに配置された底壁が見えるのに対して,原告商品2の高さは均一であり,上から見ると底壁がなく全ての格子が開放されているという明白な相違点がある。
4よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態類似しない。
()3争点1-3(混同のおそれ)【原告らの主張】1上記のように原告各商品の形態と被告各商品の形態とは極めて類似してい()る上,グミ状ジェルを素材としている点においても共通する。
したがって,専門的な知識のない寝具等の一般消費者が混同するのは当然のこと,この分野の専門家である福祉器具業界,介護機器分野における取引業者においても,原告各商品と被告各商品とを誤認混同するおそれがある。
2また,マットレスの販売方法についても,原告商品1では,マットレスを()三分割し,人間の寝姿に対して頭肩部(ショルダー・ポジション ,腰お尻)部(ヒップ・ポジション ,脚部(レッグ・ポジション)の3つの部分に分 )割し,各ポジションごとに硬さの異なる着色されたセグメントを用意し,BMI値(体格指数)に基づいて組み合わせを決定し,注文者の体格に応じたマットレスをオーダーメイドで販売しているところ,被告商品1の販売方法も同様である。
3このように,商品形態のみならず,商品の販売方法までもが共通すること()から,需要者において,原告各商品と被告各商品とを誤認混同するおそれがある。
【被告の主張】1被告商品1の販売の過程()ア被告商品1は介護用品であるところ,病院及び老人介護施設が被告商品1を購入する場合には介護用品問屋から購入するのであり,介護用品問屋が被告商品1と原告商品1を混同することはない。
また,病院等が介護用品問屋から購入する際,デモ(試用)を経ずに購入することは皆無であるし,病院等にデモ機を貸し出す際には,多くの場合,被告担当者が出向いて説明を行っている。しかも,その試用期間は短くても2,3週間,長い時には6か月程度にも及ぶ。
病院等は,このような経緯で被告商品1を購入するに至るのであるから,被告商品1を原告商品1と混同することはあり得ない。
イ在宅介護を受ける高齢者が被告商品1を利用する場合,介護保険を利用するため,自ら被告商品1を購入することはほとんどなく,介護用品の販売・レンタルを行う介護ショップが購入して利用者にレンタルするのであり,介護ショップが被告商品1を原告商品1と混同することはない。
また,要介護認定を受けている高齢者が介護保険を利用して介護用品を利用する際には,各高齢者を担当するケアマネージャーがカタログ等を基にプランを策定するのであり,ケアマネージャーが被告商品1を選定した場合でも,デモを経て被告商品1のレンタルを決める。その際,ケアマネージャー又は介護ショップは,被告が用意する申込用紙をファックスしてデモ機の貸出しを申し込むのであり,ケアマネージャーが被告商品1を原告商品1と混同することはない。
上記試用期間は,短くても1週間程度,長い場合には6か月にも及ぶことがある上,デモ機を配送する際にも,近距離であれば被告担当者が持参することもあり,宅配便を利用して配送する場合も,その後,被告担当者が利用者宅を訪問して商品説明を行うことも少なくない。
このような経過においては,利用者本人が被告商品1を原告商品1と混同したままレンタルを希望することはあり得ない。
2被告商品2の販売の過程()被告商品2も介護用品として販売又はレンタルする場合には,被告商品1とほぼ同様の販売経過を辿るのであり,取引者・需要者が被告商品2を原告商品2と混同することはない。
被告商品2は,デパート等の一般小売店にも販売しているが,当該小売店が被告商品2を原告商品2と混同することはあり得ない。また,一般小売店で消費者が被告商品2を購入する場合,被告商品2には「PITA「ピ」,タ・シートクッション」と大書された箱に入って陳列されているから,被告商品2を原告商品2と混同したまま購入することはあり得ない。
3以上のとおり,取引者・需要者が被告各商品を原告各商品と混同するおそ()れや,その出所を混同するおそれがないことは明らかである。
4争点1-4(営業上の利益侵害の有無)【原告らの主張】被告が被告各商品を製造販売した時点で,原告パシフィックウエーブは,約1億4000万円の研究開発費を投じている。他方,被告は何らの研究開発費を投じることなく,原告各商品と類似形態の被告各商品を原告各商品の価格よりも30%程度安くして販売した。
これにより,平成18年9月の原告らの売上げは前月比約230万円減少し,同年10月には前月比約160万円の減少となった。
よって,被告による被告各商品の製造販売によって,原告らの営業上の利益侵害されている。
【被告の認否】不知ないし争う。
5争点1-5(被告の故意)【原告らの主張】被告は,被告各商品を販売する前に原告各商品を販売していたのであるから,被告各商品の販売により原告らに損害が発生することを知っていた。
【被告の主張】争う。
6争点1-6(損害の額)【原告らの主張】1被告商品1の販売による損害()被告は,平成18年9月から平成20年2月までの間,被告商品1を2000台販売した。
原告らは,一般小売店に対し,原告商品1を1台当たり7万5900円の卸売価格で販売しており,製造原価の2万7814円を差引くと1台当たりの利益は4万8086円となる。
よって,不正競争防止法5条1項に基づき,原告商品1の1台当たりの利益(2万7814円)に被告商品1の販売台数(2000台)を乗じた9617万2000円が,被告商品1の販売によって原告らが受けた損害となる。
2被告商品2の販売による損害()被告は,平成18年4月から平成20年2月までの間,被告商品2を4万6000個販売した。
原告らは,原告商品2を一般小売店に対し,1個当たり7507円の卸売価格で販売しており,製造原価の3021円を差引くと1個当たりの利益は4486円となる。
よって,不正競争防止法5条1項に基づき,原告商品2の1個当たりの利益(4486円)に被告の販売個数(4万6000個)を乗じた2億0635万6000円が,被告商品2の販売によって原告らが受けた損害となる。
3原告パシフィックウエーブと原告ジェイスリープの損害()原告各商品の利益のうち,原告パシフィックウエーブの利益は56%,被告ジェイスリープの利益は44%である。したがって,原告パシフィックウエーブの損害は,1億6941万5680円(\96,172,000×56%+\206,356,000×56%)であり,原告ジェイスリープの損害は1億3311万2320円(\96,172,000×44%+\206,356,000×44%)である。
【被告の主張】被告各商品の販売数量は否認し,その余は不知。
7争点2-1(顧客情報の営業秘密性及び不正使用の有無)【原告パシフィックウエーブの主張】1顧客情報の営業秘密性()以下のとおり,別紙顧客情報目録の情報(以下「本件顧客情報」という )は,原告パシフィックウエーブの営業秘密である。 。
秘密管理性原告パシフィックウエーブは,本件顧客情報を施錠された書庫に保管(ア)しており,コンピュータで管理している情報については,担当者のみしかアクセスすることができないようにファイル名を複雑にして管理している。
被告パシフィックウエーブの従業員就業規則第3章服務規律11条5(イ)号には,遵守事項として,会社及び取引先等の機密を漏らさないことが規定されている。
本件取引契約1の第17条1号は,被告が原告パシフィックウエーブ(ウ)の承諾なく同契約に基づいて知り得た商品に関する情報を他に漏洩する行為を禁止している。また,同契約第22条においても,秘密保持義務を定められている。
よって,本件顧客情報は秘密として管理されたものである。
(エ)イ非公知性本件顧客情報は,原告パシフィックウエーブが平成11年4月から平成14年8月までの間に,その営業活動を通して獲得してきたものであり,特に,その担当者名については,一般には知られていないものである。
有用性本件顧客情報は,効率的に営業するために有用な情報である。
2被告の不正使用()原告パシフィックウエーブは本件顧客情報を被告に開示したが,当該情報は,被告が原告各商品を販売するためにのみ利用が許されていたものである。
それにもかかわらず,被告は,被告各商品の宣伝等のために,本件顧客情報を使用した。
3よって,被告の本件顧客情報の使用は,不正競争防止法2条1項7号の不()正競争に当たる。
【被告の主張】1顧客情報の営業秘密性()ア秘密管理性について前記原告パシフィックウエーブの主張(1)ア(ア)及び(イ)は不知。
同(ウ)について,後記12【被告の主張】(1)のとおり,本件取引契約1は,被告が原告ジェイスリープと本件取引契約2を締結したことにより終了したから,本件取引契約1への抵触は問題とならない。
同(エ)は争う。
非公知性及び有用性について原告パシフィックウエーブが被告に開示したのは別紙顧客情報目録の顧客名簿ではなく,乙第16号証のリストである(これには本件顧客情報に掲げられた事業者のうち株式会社ニッシン自動車工業が記載されていない。
以下「乙16リスト」という。。)乙16リストに記載されているのは介護関連事業者(介護ショップ,介護用品問屋等)の単なる名称,住所と連絡先でしかなく,それらは誰でも入手できる公然の情報である。特に,本件顧客情報にも含まれる株式会社日本メディケアサポートに在籍していた被告代表者にとっては,全て極めて容易に入手できる情報であった。
しかも,原告パシフィックウエーブが被告に乙16リストを交付した時点で実際に原告パシフィックウエーブと取引があったのは,同リストに記載のある37の介護関連事業者のうちのごく一部にすぎない。
したがって,乙16リストに掲載された業者は,原告パシフィックウエーブの取引先や顧客の一覧でも立体格子状ジェルを利用した介護用品の購入実績がある介護関連事業者の一覧でもなく,単に公知の情報を列挙したものにすぎない。
よって,乙16リストに掲載された情報は公知であり,有用性もない。
2被告の不正使用()否認する。原告パシフィックウエーブは,被告が本件顧客情報を不正使用したと主張しながら,被告が実際にそれをどのように不正使用したのかについて具体的な主張をしておらず,何ら事実に基づかないものである。
8争点2-2(ジェルの製法の営業秘密性及び不正使用の有無)【原告らの主張】1営業秘密の内容()原告らは立体格子状ジェル商品を製造しているところ,ジェル製品を製造する際に使用している樹脂は 「セプトン4055 (以下「本件樹脂」と ,」いう )である(以下,ジェル製品の上記製法に関する上記情報を「本件製 。
法情報」という。。)2本件製法情報の営業秘密性()ア秘密管理性本件製法情報を含むジェルの製法に関する資料については,原告パシフィックウエーブの代表者のみが施錠できる書庫において管理されており,同人の許可なく誰も接することができないものである。
その余の秘密管理性に関する主張は,本件顧客情報におけるもの(前記。 7【原告パシフィックウエーブの主張】(1)ア(イ)及び(ウ))と同じであるイ非公知性本件製法情報は一般には知られていない。
被告は,立体格子状ジェルに本件樹脂が使われることは公知であると主張するが,原告各商品に本件樹脂が使われていることは公知ではない。
有用性グミ状ジェルは,使用する樹脂の内容を知ることができれば,同等品を模倣することが極めて容易であることから,本件製法情報は極めて有用な情報である。
3被告の不正使用()原告パシフィックウエーブ代表者は,平成14年ころ,被告代表者及び被告従業員に本件製法情報を開示し,同16年にはビデオの映像を見せて説明した。
本件製法情報は,原告各商品を販売するためにのみ利用することが許されていたものであるにもかかわらず,被告は,原告パシフィックウエーブの承諾なく本件製法情報を利用し,平成17年夏ころには被告各商品の製造計画に着手し,その後,被告各商品の製造販売に至った。
4よって,被告の上記行為は不正競争防止法2条1項7号の不正競争に該当()する。
【被告の主張】1本件製法情報の営業秘密性について()本件樹脂が立体格子状ジェルの製造に使用され得る樹脂の一つであることは,平成13年9月に公表された公表特許公報(乙30)で開示されている公知の事実である。したがって,本件製法情報は営業秘密たり得ない。
その余は否認ないし争う。
2被告の不正使用について()被告は被告各商品に本件樹脂を使用しておらず,本件製法情報を使用していない。
9争点2-3(損害の額)【原告パシフィックウエーブの主張】1被告商品1の販売による損害()被告は,平成18年9月から同20年2月までの間,被告商品1を2000台販売した。被告商品1の小売価格は9万9750円であり,平均卸率を55%,利益率を卸価格の50%とすると,1台当たりの利益は2万7431.25円となる。
よって,不正競争防止法5条2項に基づき,被告商品1の1台当たりの利益(2万7431.25円)に,被告の販売台数(2000台)を乗じた5486万2500円が,原告パシフィックウエーブの受けた損害となる。
2被告商品2の販売による損害()被告は,平成18年4月から同20年2月までの間,被告商品2を4万6000個販売した。被告商品2の小売価格は8400円であり,平均卸率を55%,利益率を卸価格の50%とすると,1個当たりの利益は2310円となる。
よって,不正競争防止法5条2項に基づき,被告商品2の1個当たりの利益(2310円)に被告の販売個数(4万6000個)を乗じた1億0626万円が,原告パシフィックウエーブの受けた損害である。
3以上より,原告パシフィックウエーブが被告の不正競争防止法2条1項7()号の不正競争行為により受けた損害の額は1億6112万2500円となる。
【被告の主張】全て否認する。
10争点3-1(本件書面記載の営業誹謗行為性)【原告らの主張】1本件書面記載について()本件書面記載では,生産方法を注入方式からインジェクション方式に変更し生産効率を高めたことのみで,30%強の価格ダウンのみならず,品質の安定,耐久性のアップ及び同等の床ずれ防止機能をもたらした旨記載されている。これは,原告各商品の生産方法が被告各商品の生産方法より劣るために,原告各商品が被告各商品と比較して価格が高い上に品質が安定していない,耐久性が劣る,といった事実を指摘するものにほかならない。
しかし,以下のとおり,これは明らかに虚偽の事実であり,原告らの営業上の信用を害するものである。
2生産方法について()原告各商品の生産方法は,単純な無圧力の注入方式ではなく,インジェクション方式に改良を加えた原告ら独自のものであり,本件書面記載のような生産方法ではない。
被告は,生産効率を上げることにより,価格を引き下げることができたと主張するが,原材料価格や研究開発費等を抜きにして,生産効率を高めるだけで30%もの価格ダウンを実現することは不可能である。原材料の違いや,原告パシフィックウエーブがこれまで投資してきた研究開発費の差が価格に反映しているのであり,被告は,原告らの製造ノウハウを無断で利用することにより,価格を安くすることができたのである。
したがって,生産方法の変更のみで30%もの価格ダウンに成功したとする本件書面記載の事実は明らかに虚偽である。
3原告各商品の品質・機能について()ア素材・材料の強度原告らが,財団法人化学物質評価研究機構に原告各商品と被告各商品の引張,引裂試験を依頼した結果,以下の検査結果を得た。
「引張強さ」について,原告各商品の試験片は被告各商品の試験片に(ア)比べて,少なくとも約3.5倍以上の強さがある。
「切断時伸び」について,原告各商品の試験片は被告各商品の試験片(イ)に比べて,約2倍近くの伸びを有する。
「引裂強さ」について,原告各商品の試験片は被告各商品の試験片に(ウ)比べて,約2倍前後の強さがある。
上記検査結果からすれば,原告各商品が被告各商品に比べて素材の強度に優れていることは明らかである。
イ「へたり」について原告らは,生命体睡眠環境開発研究所において,原告各商品と被告各商品の「へたり (長期の圧縮変形を受けた場合に弾性体に残る変形をい 」う )について試験した。 。
その結果,原告各商品では,加圧後のILD値(50%の圧縮変形における反発力をいう )が,加圧前に比べて何ら変化がないのに対して,被 。
告各商品は2.2ポイント減少している。すなわち,被告各商品は「へたり」が大きく(反発力が弱まる ,同じ荷重をかけた場合に,被告各商品 )は大きく変形し,沈み込むことになり,底つき感が高まる。そうすると,血行不良を生じ,褥瘡に至る可能性が高まる。また,格子状のクッションでは,沈み込みによる変形のために穴が塞がり通気性が低下し,ムレが生じ,褥瘡が生じやすくなることになる。
ウこのように,被告各商品が,原告各商品に比較して品質が安定し耐久性がアップし,同等の床ずれ防止機能を有するとは到底いえない。
4上記のように,本件書面記載は,原告各商品及び被告と競争関係にある原()告らの信用を毀損する虚偽のものである。被告は,本件書面を株式会社トーカイ,株式会社ヘルスケア,有限会社エイジング等多くの取引先に郵送で送付し,本件書面記載を通知することにより原告らの営業上の信用を害した。
かかる被告の行為は,不正競争防止法2条1項14号の不正競争に当たる。
【被告の主張】1本件書面記載について()本件書面記載における「ジェルビー」はあくまでも被告が被告の名前で販売する被告の商品だったのであり,需要者に「日本ジェルの商品」と認識されていたものである。したがって,本件書面で述べられている被告各商品(PITA)とジェルビーとの比較は,いわゆる「当社比」であって,第三者である原告らの営業上の信用を害するおそれのあるものではない。
2生産方法について()本件書面記載のうち,原告各商品の生産方法を注入方式と記載したのは,原告パシフィックウエーブ代表者から「ジェルを金型に充填する際に圧力をかけていない「金型を温めてジェルを流し込んでから金型を冷やして取 」,り出す「ジェルビーは生産性が低い。1時間に3,4枚しか作れない。 」,だから安くできない 」と聞いたからであり,事実である。 。
したがって,原告各商品の生産方法が注入方式である以上,本件書面記載の生産方法に係る部分は虚偽ではない。
仮に,原告各商品の生産方法が注入方式ではないとしても,注入方式だと指摘されることによって原告らの営業上の信用が害されるわけではないから,いずれにしても,不正競争には当たらない。
3生産効率について()本件書面記載のうち 「生産効率を大幅に高めることに成功しました」と ,の部分は事実である。すなわち,原告商品1に使われるジェルセグメントの生産速度は,マットレス用セグメント(1台のマットレスに3枚使用される )にして1時間当たり約5枚である。これに対し,被告商品1に使われ 。
るマットレスのセグメント(同じく1台のマットレスに3枚使用される )。
の生産速度は1枚3分であり,1時間当たり20枚(原告各商品の4倍)である。
また,本件書面記載のうち 「立体格子状ジェルの生産方法を注入方式か ,ら,インジェクション方式に変更し,生産効率を大幅に高めることに成功しました。ジェルビー商品と比較し,30%強の価格ダウンとなっております 」という記述は,被告各商品の価格がジェルビーよりも大幅に下がった 。
ことをアピールするものであり,その価格ダウンが生産方法の変更による生産効率の向上のみを理由とするという意味でないことは明らかである。ただ,ジェルビーと被告各商品の価格差の相当部分が上記生産効率の向上に由来することは事実である。
したがって,本件書面記載のうち 「生産効率を大幅に高めることに成功 ,しました。ジェルビー商品と比較し,30%強の価格ダウンとなっております 」という部分は虚偽ではなく,原告らの営業上の信用も害さない。 。
4品質・耐久性について ()本件書面記載のうち 「品質が安定し,且つ耐久性もアップしておりま ,す」という部分は,以下のとおり,歪み試験の結果と耐オゾン試験の結果に基づいたものであり,虚偽ではない。
ア歪み性能被告にジェルの材料を供給しているアロン化成株式会社が,財団法人化学物質評価研究機構にて「繰返し圧縮残留ひずみ試験」を被告各商品とインテリジェル商品につき依頼したところ,被告各商品の厚さ低下率は0.。 1%であり,原告各商品の厚さ低下率である0.3%より好結果であったただし,0.1%というのは,被告各商品の高さにして0.045?であり,誤差の範囲ともいえる。
そこで,被告は0.1%という結果をもって被告各商品の歪み性能が原告各商品より明らかに優れていると主張するつもりもないが,少なくとも原告各商品と同等であることは間違いがない。
イ耐オゾン性耐オゾン性とはオゾンに曝されることによる変質の程度のことである。
立体格子状ジェルマットレスは,ある利用者のレンタルが終了する度に次の利用者へのレンタルのために介護用品事業者が必ず消毒するが,その消毒の方法としては容易さや殺菌力の高さ等からオゾン消毒の普及率が高い。
そのため,立体格子状ジェルマットレスの耐オゾン性が低いと,長期間にわたって繰り返し使用することができない。
耐オゾン性を,財団法人化学物質評価研究機構が試験したところ,被告各商品はオゾンに一定時間曝露しても異状が生じなかったのに対して,原告各商品は亀裂が発生して後に破損に至り,また表面に粘着性が生じた。
したがって,被告各商品は耐オゾン性が原告各商品より格段に優れており 「品質が安定し,且つ耐久性もアップして」いるのである。 ,ウ原告らの主張について原告らは,引張試験と引裂試験の結果をもって,原告各商品が被告各商品に比べて素材の強度に優れていると主張する。しかし,実際に使用される場面において,立体格子状ジェルマットレスに強く引っ張る力や強く引き裂く力が働くことなどないのであるから,これらの試験の結果は,立体格子状ジェルマットレスの耐久性を評価する上では無意味である。
また,原告らは,ILD値なるものの試験結果をもって,被告各商品が原告各商品に比べて「へたり」が大きいと主張するが,この試験を実施したという生命体睡眠環境開発研究所は原告パシフィックウエーブ代表者自身が代表を務める組織であり,客観性・中立性が確保されておらず,その結果には信用性がない。しかも 「ILD値」なるものは,その指標とし ,ての信頼性が一般的に承認されているものでもない。
よって,原告らの主張は,被告各商品の耐久性が劣ることを示すものではない。
5床ずれ防止機能について()被告商品1の床ずれ防止機能は原告商品1と少なくとも同等であり,あるはそれ以上であるから,本件書面記載の「勿論本来の床ずれ防止機能は同等であります」という記述は虚偽ではない。
すなわち,西川リビング株式会社が実施した体圧分散性比較試験の結果,特にベッドを30度起こした場合に利用者のお尻にかかる圧力において,被告商品1の方が原告商品1より大幅に小さいことが示されている。この試験結果より,被告商品1の床ずれ防止機能が少なくとも原告商品1と同等か,原告商品1より優れていることが明らかである。
11争点3-2(損害の額)【原告らの主張】被告の行為は,原告らの営業上の信用を害するものであり,これによる損害は,原告らそれぞれにつき500万円を下らない。
【被告の主張】否認する。
12争点4-1(本件取引契約1に係る債務不履行の有無等)【原告パシフィックウエーブの主張】1本件取引契約1に係る債務不履行の有無()ア前記2【原告らの主張】のとおり,被告が開発したとする被告各商品は原告各商品と酷似しており,原告各商品における技術を利用して生産されたことが明らかである。また,インテリジェル部材及びジェルトロン部材と酷似する構造を有する素材を利用していることも明らかである。
したがって,被告が原告パシフィックウエーブから事前の書面による承諾を得ずに被告各商品を開発し販売する行為は,本件取引契約1の第8条1項及び第17条6号に違反する。
イ前記7【原告パシフィックウエーブの主張】のとおり,被告は,原告パシフィックウエーブの承諾を得ないまま,本件取引契約1に基づいて知った同原告の営業秘密である本件顧客情報を自ら利用した。
また,前記8【原告らの主張】のとおり,被告は,原告らの営業秘密である本件製法情報を新潟県の工場に利用させている。
かかる被告の行為は,いずれも本件取引契約1の第17条1号及び第22条に違反する。
ウ前記10【原告らの主張】のとおり,被告は,本件書面を配布することにより原告パシフィックウエーブ及び原告各商品の信用を毀損したのであり,かかる被告の行為は本件取引契約1の第17条2号に違反する。
2合意解約の成否について(被告の主張に対する反論)()原告らと被告は,立体格子状ジェルの成型品の供給元を原告パシフィックウエーブから原告ジェイスリープに変更するため,原告ジェイスリープと被告との間で本件取引契約2を締結したが,本件取引契約1を解消するという合意はしていない。
なお,本件取引契約1の条項中には,本件取引契約2の締結により実質的に意味を失ったものもあるが,原告ジェイスリープが製造したジェルトロン部材を原告パシフィックウエーブが預かり,原告各商品を製造した上,原告ジェイスリープに納入し,原告ジェイスリープがこれを被告に供給していたのであり,本件取引契約1を存続させる意味はあったし,原告パシフィックウェーブはその意思も有していた。
【被告の主張】1本件取引契約1の合意解約()以下のとおり,本件取引契約1は,本件取引契約2の締結により合意解約された。
ア本件取引契約1は,原告パシフィックウエーブが被告にインテリジェル商品を継続的に販売することを目的とするものであったところ,原告パシフィックウエーブがインテリジェル部材の輸入元である米国エディゾーン社との取引を解消したのに伴って,原告パシフィックウエーブから被告へのインテリジェルの販売は終了し,代わって原告ジェイスリープが被告にジェルトロン部材を販売することになった。
イ上記の経緯で,被告は原告ジェイスリープと本件取引契約2を締結したのであり,本件取引契約2の締結により本件取引契約1は存在意義を失った。すなわち,被告と原告パシフィックウエーブが製品供給元を原告ジェイスリープに切り替えることを合意した時点で,被告と原告パシフィックウエーブの間で,被告と原告ジェイスリープの新たな契約の締結を停止条件として被告と原告パシフィックウエーブの本件取引契約1を解約する旨の合意が成立した。
ウしたがって,本件取引契約2が締結されたことにより,本件取引契約1は合意解約されたのであり,その後になされた被告の行為が本件取引契約1に抵触することはあり得ない。
2本件取引契約1に係る債務不履行の有無()否認ないし争う。
13争点4-2(本件取引契約2に係る債務不履行の有無等)【原告ジェイスリープの主張】1前記2【原告らの主張】のとおり,被告は,原告ジェイスリープの承諾を()得ることなく原告各商品と酷似した被告各商品を開発したものであり,原告各商品に現れた技術・特徴を採用し,原告各商品を利用したといえるから,かかる被告の行為は本件取引契約2の第8条1項に違反する。
また,被告は,原告各商品との誤認混同を防止する措置を講じることなく,原告各商品と酷似した被告各商品を販売したのであり,かかる被告の行為は,本件取引契約2の第16条4号に違反する。
2前記7【原告パシフィックウエーブの主張】のとおり,被告は,原告パシ()フィックウエーブの承諾を得ないまま,本件取引契約1に基づいて知った同原告の営業秘密である本件顧客情報を自ら利用した。
また,前記8【原告らの主張】のとおり,被告は,原告らの営業秘密である本件製法情報を新潟県の工場に利用させている。
かかる被告の行為は,いずれも本件取引契約2の第17条に違反する。なお,原告ジェイスリープは,原告パシフィックウエーブから上記情報を適法に開示されているので,原告ジェイスリープも営業秘密保有者である。
3前記10【原告らの主張】のとおり,被告は,本件書面を配布することに()より原告ら及び原告各商品の信用を毀損したのであり,かかる被告の行為は,本件取引契約2の第16条1号に違反する。
【被告の主張】1本件取引契約の解除()本件取引契約2は,被告ジェイスリープによって平成18年12月25日をもって解除された。よって,その後の被告の行為が本件取引契約2に抵触することはあり得ない。
2本件取引契約2の第8条1項違反について()本件基本契約2の第8条1項において,原告ジェイスリープの事前の書面による承諾を要求されているのは,同原告の製造する立体格子状ジェル又はそれを使用して同原告が製作したマットレス等を利用した新たな物品の開発であるところ,被告各商品は,同原告の製造する立体格子状ジェル,すなわちジェルトロン部材を利用した物品ではないから,同項の適用対象ではない。
よって,被告各商品の製造販売は,同項によって禁止されていなかった。
3本件取引契約2の第16条4号違反について()ア本件取引契約2の第16条4号が禁止するのは 「商品等と同じあるい ,はこれと酷似する構造を有し,同じあるいは酷似する素材を利用した他社製品を取り扱う行為」を「商品等との誤認混同を防止する措置を講じることなく」行うことであるところ,被告は,被告各商品の商品名を,原告各商品の商品名「ジェルトロン」と全く類似しない「ピタ」とし,この商品名と共に被告の会社名である「日本ジェル」を強調して被告各商品を広告宣伝して販売しており,需要者が両商品を混同したり,その出所を混同することはない。
このように,被告は「誤認混同を防止する措置」を十分に講じているから,被告各商品が第16条4号の「他社製品」に当たるか否かにかかわらず,被告各商品の製造販売は同号に違反しない。
イまた,前記2【被告の主張】のとおり,被告各商品の構造は原告各商品の構造と異なる上,その素材も原告各商品のものとは異なることから,被告各商品の製造販売は同号の「商品等と同じあるいはこれと酷似する構造を有し,同じあるいは酷似する素材を利用した他社製品を取り扱う行為」にも該当しない。
4本件取引契約2の第17条及び同第16条1号違反について()否認ないし争う。
詳細は前記7,8及び10の各【被告の主張】のとおりである。
14争点4-3(損害の額)【原告らの主張】被告が,被告各商品を販売した平成18年度から原告らの販売数量は減少しており,被告各商品の製造販売によって原告らに損害が発生した。
よって,原告らは,前記6,9及び11の各【原告らの主張】記載の額の損害を受けたのであり,民法415条に基づき,被告に対し,同額の損害賠償請求権を有する。
【被告の主張】否認ないし争う。
15争点5-1(原告説明図の著作物性等)【原告パシフィックウエーブの主張】1原告説明図は,一目で原告各商品の特長を伝えるために原告パシフィック()ウエーブ代表者が作成したものであり,以下の4つの特徴を有する。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルの格子形状を表現した。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルそれぞれに彩色を施している。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルを組み合わせたものを立体的に表現している。
??ないし?の特長を表現したマットレスの上に人が仰向けに横たわり,肩部,臀部,脚部に対し,3分割された立体格子型グミ状ジェルがどのように対応しているかが表現されている。
2被告は,原告説明図の著作物性を争うが,人が寝ている状態は,横向き縦()向きがあり,人それ自体の描き方やカーブの描き方等色々あり得る。また,マットレスについても縦じま格子状を細かく描いたり,単に2本線を入れて3分割であることを単純に示す等いろいろ書き方があり得る。
したがって,原告各商品の目的に従えば,およそ原告説明図のようにしかならないものではなく,原告説明図には創作性がある。
3被告説明図は原告説明図と酷似しているにもかかわらず,被告は故意にこ()れをカタログに掲載することにより,原告パシフィックウエーブの著作権(複製権)を侵害した。
【被告の主張】1原告パシフィックウエーブ代表者が原告説明図を作成したことは不知。
()2原告説明図は,横に3分割されたマットレスの上に人が寝ている状態を分 ()かりやすく示すことを目的として作成されたものと解されるが,その目的に沿って図を作成すればおよそ原告説明図のようにしかならないのであって,工夫の余地はほとんどない。したがって,原告説明図に創作性があるとはいい難く,著作物には当たらない。
よって,仮に原告説明図が原告パシフィックウエーブ代表者の作成に係るものだとしても,原告説明図に係る著作権侵害はあり得ない。
3その余の主張は否認ないし争う。
()16争点5-2(損害の額)【原告パシフィックウエーブの主張】原告パシフィックウエーブの著作権侵害により原告パシフィックウエーブが受けた損害の額を著作権法114条1項に基づいて算定すると,前記6【原告らの主張】における算定と同様,1億6941万5680円(マットレスにつき5385万6320円,クッションにつき1億1555万9360円)となる。
【被告の主張】被告各商品の販売数量は否認し,その余は不知。
なお,被告は被告説明図を販売したわけではないから,著作権法114条1項適用の前提を欠く。
第4当裁判所の判断1争点1-1(原告各商品の形態に係る周知商品表示性)について1はじめに()原告らは,原告各商品の形態をもってその商品表示であると主張する。商品の形態は,それ自体として,直ちに当該商品の出所を表示するものではないが,当該商品の形態が他の商品とは異なる独自の特徴を有しており,かつ,その形態が特定の者によって長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも極めて強力な宣伝広告活動や圧倒的な販売実績等があって,需要者において当該形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっている場合には,当該商品等の形態をもって,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」として,同法の保護の対象となると解される。
そこで,かかる観点から,原告らが主張する原告各商品の形態が周知商品表示性を獲得しているかどうかについて検討する。
なお,本件において原告ジェイスリープが販売している原告各商品(ジェルトロンマットレス及びジェルトロンクッション)と原告パシフィックウエーブが販売していたインテリジェル商品との関係について,被告は,上記両商品の商品名や販売時期,販売元が異なっており,別個の商品であると主張する。しかし,不正競争防止法が同法2条1項1号所定の行為を不正競争行為としているのは,商品の出所の誤認混同を防止するためであるから,仮に商品名や販売元等が形式的に異なっていたとしても,両商品の出所が実質的に同一であり,かつ両商品に共通する形態において商品名や販売元等による商品表示を凌駕するほどの商品表示性が認められ,その結果,両商品に共通の形態が同一の出所を示すものとして需要者広く認識されているのであれば,出所の誤認混同を防止するために,同号の規定を適用する余地もあるというべきである。したがって,原告各商品のほか,インテリジェル商品の形態に周知商品表示性があると認められるかどうかについても併せて検討する必要がある。
2原告各商品及びインテリジェル商品の形態上の特徴について()ア原告らは,原告各商品及びインテリジェル商品(以下,併せて「原告各商品等」という )の形態について,縦長四角柱の空間(格子空間)が格 。
子状に縦横に多数並べて配置されてマット形状を呈し,各格子空間の平面視形状は正方形であり,各格子空間の表面側が開放されている形態(以下,この形態を「立体格子状形態」という )に特徴があると主張する。 。
そこで,このような立体格子状形態が他の商品とは異なる独自の形態的特徴ということができるか否かについて検討する。
イ証拠(乙6の1)によれば,平成16年8月において,エア・ウォーター株式会社が,立体格子状形態を有する「アイソフレックス」というクッションを販売していたことが認められる。また,証拠(乙6の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商品の販売開始(平成16年9月)前に,同社が立体格子状形態を有するマットレスを販売していたことが認められる。
他方で,弁論の全趣旨によれば,これら商品は,販売不振により平成19年5月をもって販売を終了したことが認められる。
証拠(乙7)によれば,平成17年10月ころ,フランスベッド株式会社が「こんにゃくマットレス」という商品を販売していたことが認められる。また,証拠(甲68)によれば,同商品の形態は,縦長四角柱を斜め45度方向に配列するものであり,一見するとダイヤ型に見えるものの,見る角度を変えれば縦長四角柱を縦横に配列しているようにも見えるのであるから,立体格子状形態と評価することも可能であり,少なくともこれと類似するものであることは明らかである。
証拠(甲85,乙8)によれば,平成14年当時,株式会社テクノトレードは,立体格子状形態を有する「サイバークッション」という商品を販売していたが,原告パシフィックウエーブ代表者の指摘により,同年,販売を終了したこと,株式会社テクノトレードは,平成20年にも同商品を販売したが,これは同社の情報伝達上の不備により在庫(14個)の販売がなされたものであり,原告パシフィックウエーブ代表者の指摘により,直ちに販売が中止されたこと,その際に販売された同商品は3個であることが認められる。
ウ以上からすると,被告各商品の販売開始時点(平成18年4月)において,マットレスやクッションに立体格子状形態そのものが採用された商品(アイソフレックス)や,立体格子状形態と類似する形態が採用された商品(こんにゃくマットレス)が販売されていたのであり,マットレスやクッションに立体格子状形態を用いること自体が原告各商品に特別顕著な特徴であるとは認め難い。ただし,上記認定のとおり 「アイソフレック,ス」は販売不振により平成19年5月には販売を終了していること 「こ,んにゃくマットレス」の販売数量が不明であることにかんがみれば,原告各商品等の販売数量や宣伝広告いかんによっては,立体格子状形態に周知商品表示性を認める余地もないではないので,以下,さらにこの点について検討することとする。
3原告各商品等の形態に係る周知性について()ア原告商品1の販売数量について証拠(甲94,原告パシフィックウエーブ代表者本人)及び弁論の全(ア)趣旨によれば,インテリジェル商品のマットレス(以下「インテリジェルマットレス」という )及び原告商品1の販売数量は,以下の表のと 。
おりであると認められる(平成11年については11月及び12月のみ。。)【インテリジェルマットレス・原告商品1の販売台数】 (単位:台)平成11年平成12年平成13年平成14年平成15年6579695712442428平成16年平成17年平成18年平成19年平成20年16771060954720750なお,上記販売台数には原告らの被告に対する販売台数も含まれていることから(原告パシフィックウエーブ代表者本人 ,被告は,当該台)数を原告商品1の販売台数として含めるべきではない旨主張する。しかし,被告は原告ジェイスリープからジェルトロン部材を使用した商品を仕入れ,これを「ジェルビー」という商品名で販売していたのであり,被告の販売した「ジェルビー」の出所が原告らであるとも見得るのであるから,ここではひとまず被告が販売した「ジェルビー」の販売台数も原告商品1の販売台数に含めて検討することとする。
インテリジェルマットレス及び原告商品1はベッド用のマットレスで(イ)あり,一般消費者も使用するものであること,原告ジェイスリープのカタログには,一般消費者向けのもの(甲13の1〜4・6)も存在することからすれば,インテリジェルマットレス及び原告商品1の需要者は,基本的には一般消費者であると認められる。この点,証拠(乙26の1・2)によれば,全日本ベッド工業会に加盟する会社が我が国で生産した普通ベッド(マットレスとベッドフレームが対になったもので,療養ベッド用マットレスを除く )の台数は,以下の表のとおりであること 。
が認められる。
【普通ベッドの生産台数】 (単位:台)平成11年平成12年平成13年平成14年平成15年1,57,12061,463,0021,358,7451,141,0881,008,030平成16年平成17年平成18年平成19年平成20年904,744937,770997,8701,003,020823,060上記生産台数には,海外から輸入されて国内で販売されたマットレスの台数は含まれておらず,その具体的な台数は不明であるが,証拠(乙26の2)には 「東南アジアよりの輸入の増加に伴い,国内の生産に ,ついては,非常に厳しい状況となっています 」と指摘されていること 。
からすれば,相当数に上ることが窺える。また,上記(ア)のインテリジェルマットレス及び原告商品1の販売台数には,介護分野に販売された販売台数が含まれており,そのうち,どの程度が一般消費者に販売されたのかについては不明であるが,少なくとも上記(ア)の販売台数を超えることはない。
そこで,とりあえず,これら販売台数を前提として,我が国で販売された一般消費者向けのマットレスに対するインテリジェルマットレス及び原告商品1の販売台数の比率を算出すると,別紙販売台数対比表のとおりであり,最も比率が大きい年(平成15年)でも0.24%にすぎないことが認められる。
他方,証拠(甲13の4・5)によれば,原告商品1は「床ズレ防止(ウ)用マットレス」と称し,介護保険適用福祉用具としても販売されており,かかる分野における需要者(例えば介護事業者等)にとって周知となっていることも,一応考えられる。この点,証拠(乙26の1・2)によれば,全日本ベッド工業会に加盟する会社が我が国で生産した療養ベッド用マットレスの台数は,以下の表のとおりであることが認められる(上段がスプリングのマットレスで,下段がそれ以外のマットレスである。。)【療養ベッド用マットレスの生産台数】(単位:台)平成11年平成12年平成13年平成14年平成15年37,91642,24734,06536,31831,081394,349428,755348,335359,717365,543平成16年平成17年平成18年平成19年平成20年10,76713,06010,16014,1008,640375,694339,780254,880169,550222,290上記生産台数には,上記(イ)で認定したとおり,相当数に上ると考えられる海外から輸入されたマットレスの台数は含まれていないが,少なくとも上記生産台数については,我が国で療養ベッド用マットレスとして販売されたものと認められる。
また,同じく上記(イ)で認定したとおり,上記(ア)の販売台数のうち,どの程度が介護分野で販売されたのかは不明であるが,少なくとも上記(ア)の販売台数を超えることはないので,とりあえず,上記販売台数を前提として,我が国で販売された療養ベッド用マットレスに対するインテリジェルマットレス及び原告商品1の販売台数の比率を算出すると,別紙販売台数対比表のとおりであり,最も比率が大きい年(平成15年)でも0.61%にすぎないことが認められる。
以上のとおりであるから,最も原告らに有利な上記方法で算定したと(エ)しても,インテリジェルマットレス及び原告商品1の販売台数は,一般消費者はもとより,介護事業者等の介護分野の需要者においてさえも,僅かと評価せざるを得ないのであり,インテリジェルマットレス及び原告商品1の形態の周知性を基礎づけるには到底足りないというべきである。
イ原告商品2の販売数量について証拠(甲94,原告パシフィックウエーブ代表者本人)及び弁論の全(ア)趣旨によれば,インテリジェル商品のクッション(以下「インテリジェルクッション」という )及び原告商品2の販売数量は,以下の表のと 。
おりであると認められる(平成12年については8月以降のみ。また,これら販売数量には,原告らが被告に販売したものも含まれる。。)【インテリジェルクッション・原告商品2の販売数量】 (単位:個)平成12年平成13年平成14年平成15年平成16年2247291,7953,8963,916平成17年平成18年平成19年平成20年3,9283,1741,6162,004原告商品2の需要者は,一般消費者であると考えられるところ,我が (イ)国で販売されるクッションの数については,これを窺い知ることができる証拠はない。
しかし,クッションは,商品の性質上,ベッド用マットレスよりもはるかに大量に販売されていることが経験則上明らかであり,それにもかかわらず,インテリジェルクッション及び原告商品2の販売数量は,インテリジェルマットレス及び原告商品1のせいぜい4倍程度であるから,この程度の販売数量をもって,インテリジェルクッション及び原告商品2の周知性を基礎づけることは到底できないというべきである。
ウ宣伝広告について原告らが主張する原告各商品等の宣伝広告のうち,カタログやチラシの配布は,その総数が不明であり,雑誌等とのタイアップについても,平成16年から同19年にかけて4回しかなく,また,いずれもインテリジェル又はジェルトロンの枕についてのものである(甲23〜26 。)展示会への出展については,その一部に争いがあるものの,仮に原告らの主張を前提としても,原告らは多数の出展者のうちの1社として出展したにすぎず,原告らの展示場の広さも他社とさほど変わらない(甲27の2,28の2,29の1,30の2,33の2,33の4,34の2,35の2,37の1,39の1 。また,出展会における原告パシフィック )ウエーブ代表者によるセミナーも,他のいくつかあるセミナーの1つにすぎない(甲40の1・2,41の1・2 。)他にも,原告らは,原告各商品等が新聞や雑誌等で紹介されたことを主張するが,新聞については,業界紙(甲42の1〜10,43の1・2,44,45)や地方紙(甲46〜52)が主であり,紹介の態様としても,立体格子状形態が明確に掲載されていないものもある上(甲42の2・5・6・8・9・10,43の1・2,44,45,46,47の1・2,48の1,49 ,掲載回数としても,原告らが主張するインテリジェル )商品の販売開始時(平成11年11月)から被告各商品の販売開始時(平成18年4月)までの期間に比べると,必ずしも多いとはいい難い。また,テレビ放映については,いずれも被告各商品が販売された後のものであり(甲53〜55 ,書籍や雑誌についても,ほとんどは被告各商品の販売 )が開始された後のものである上(甲56〜61,64 ,原告各商品等そ)のものではなく,ジェルトロン部材を用いた枕を紹介するものも多く含まれている(甲53,54,56〜58,60,61,64 。)以上のとおり,宣伝広告の観点から検討しても,原告各商品等について強力な宣伝広告活動があったとは認められず,被告各商品の販売開始時における原告各商品等の立体格子状形態の原告らの商品表示としての周知性を基礎づけるには足りないというべきである。また,同形態が被告各商品の販売開始後に上記周知性を獲得したと認めることもできない。
エよって,原告各商品等の立体格子状形態が原告らの商品表示として需要者の間で広く認識されていたと認めることはできない。
4小括()以上のとおり,原告各商品等の立体格子状形態に周知商品表示性を認めることはできない。したがって,不正競争防止法2条1項1号該当性に関するその余の争点について判断するまでもなく,被告による被告各商品の製造販売が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するとは認められず,これに基づく原告らの請求には理由がない。
2争点2-1(顧客情報の営業秘密性及び不正使用の有無)について1営業秘密性(秘密管理性)について()本件顧客情報について不正競争防止法2条6項にいう営業秘密の要件としての秘密管理性が認められるためには,少なくとも,これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理されている実体があることが必要である。
しかし,本件では,被告が本件顧客情報の秘密管理性を争っているにもかかわらず,原告パシフィックウエーブは,本件顧客情報を施錠された書庫に保管していたことや,コンピュータで管理している情報についてはファイル名を複雑にして管理していたことを述べる同原告代表者の陳述書(甲100)を提出し,また,同原告代表者が当事者尋問において「私どもの会社におきまして,書庫に顧客名簿を入れ,かぎが掛かるようにして管理をしておりました」との供述を援用するにとどまり,これを裏付ける証拠を何ら提出しない。そして,他に上記陳述記載及び供述を裏付ける証拠は全くないから,これらの陳述記載等のみから,たやすくその内容を真実と認めることはできないというべきである。
したがって,本件顧客情報が秘密として管理されていたとは認められないから,本件顧客情報は不正競争防止法2条6項にいう「営業秘密」に当たらない。
2不正使用の有無について()被告による本件顧客情報の使用の有無について,被告は原告パシフィックウエーブから受け取った情報の内容自体も含め,その使用の事実を明確に争っているにもかかわらず,原告パシフィックウエーブはこれを具体的に裏付ける何らの主張・立証も行っていない。
そればかりか,同原告代表者は,その当事者尋問において,乙16リストに掲げられた業者のうち被告各商品を購入したことがある業者の有無について問われても,具体的に特定できず 「全部が全部調べておりませんね」な ,どと供述するにとどまっている。
このように,本件では,被告が本件顧客情報を不正使用したことを裏付けるような証拠が全くない。
3よって,いずれにしても本件顧客情報について,被告に不正競争防止法2()条1項7号の不正競争があったとは認められないから,これに基づく原告パシフィックウエーブの請求には理由がない。
3争点2-2(ジェルの製法の営業秘密性及び不正使用の有無)1営業秘密性(秘密管理性)について()本件製法情報の秘密管理性について,原告らは本件顧客情報におけるのと同旨の主張をするところ,これを裏付ける確たる証拠は全くないから,前記。 2(1)において認定説示したところが本争点においてもそのまま当てはまるしたがって,本件製法情報は,秘密として管理されていたと認められないから,不正競争防止法2条6項にいう「営業秘密」に当たるとは認められない。
2不正使用の有無について()原告らは,被告が本件製法情報を使用していると主張するが,被告各商品に本件樹脂が使われていることを認めるに足りる証拠はない(原告らは,被告が本件樹脂の使用を否認しているにもかかわらず,これを使用していることについて何ら具体的な主張・立証をしない。。)3よって,いずれにしても,本件において被告が営業秘密である本件製法情()報を不正に使用した(不正競争防止法2条1項7号)とは認められないから,これに基づく原告らの請求には理由がない。
4争点3-1(本件書面記載の営業誹謗行為性)1本件書面記載の内容()ア前記当事者間に争いのない事実等(5)のとおり,本件書面(甲72)には以下の記載(本件書面記載)がある。
「PITAシリーズは従来のジェルビーとは生産方法が異なります。具体的には立体格子状ジェルの生産方法を注入方式から,インジェクション方式に変更し,生産効率を大幅に高めることに成功しました。ジェルビー商品と比較し30%強の価格ダウンとなっております。高度な工業生産であるため品質が安定し,且つ耐久性もアップしております。勿論本来の床ずれ防止機能は同等であります 」。
イ上記本件書面記載について,原告らは 「PITAシリーズ (被告各 ,」商品)が,原告各商品(ジェルビー)と生産方法が異なること,品質が安定したこと,耐久性がアップしたこと,同等の床ずれ防止機能があることがいずれも虚偽であり,原告らの営業上の信用を害すると主張するので,以下検討する。
なお,被告は,本件書面では,被告各商品の比較対象を被告が従前販売していた「ジェルビー」という商品名の被告の商品としたものであり,いわゆる「当社比」という趣旨で被告各商品の生産方法等について述べただけであるから原告らの営業上の信用を害することはないと主張する。しかし,本件書面において,被告は 「ジェルビー」を「京都の某社からOE ,M供給を受けて販売して」いた旨及びその後「弊社の独自ブランドPITAを開発し」た旨記載していること(甲72 ,被告が販売していた「ジ )ェルビー」のパンフレット(甲7)の表紙には 「ジェルビー」という商 ,品名とともに「GELTRON」使用と記載されているところ 「GEL,TRON」とは原告各商品の素材であるジェルトロン部材を指すものと解されること,本件書面が一般消費者ではなく被告の取引先に郵送されたこと(前記当事者間に争いのない事実等(5))からすれば,本件書面を受け取った被告の取引先の中には,本件書面記載が被告各商品とジェルトロン部材を使用する原告各商品とを対比するものであると認識する者も存在すると考えられる。したがって,本件書面記載を単なる「当社比」にすぎないものと解することはできず 「ジェルビー」に関する本件書面記載にお ,いて虚偽の事実が記載されているとすれば,原告各商品ひいては原告らの信用を害するものになり得るというべきである。
2生産方法について()本件書面記載中生産方法に言及した部分は,まず,被告各商品( PIT「Aシリーズ )は 「ジェルビー」と比べて,立体格子状ジェルの生産方法 」,を注入方式からインジェクション方式に変更し,これにより生産効率を大幅に向上させたというものである。しかし,原告らは,原告各商品の生産方法が「単純な無圧力の注入方式ではなく,インジェクション方式に改良を加えた原告独自のものである」などと主張するものの「注入方式」を採用していることを積極的に否定していないから 「ジェルビー」の生産方法が「注入 ,方式」であったことが虚偽であるというためには,少なくとも本件書面記載にいう「注入方式」が原告らの採用する方式とは異なることが具体的に立証されなければならないところ,本件書面記載には,同記載にいう「注入方式」が具体的にどのような生産方法を意味するかについての具体的な記載はなく,この点が明らかでないから 「ジェルビー」の生産方法として原告ら ,が自ら採用している方式が,本件書面記載にいう「注入方式」とは異なることが立証されているとはいえず,これが虚偽であるとは認められない。また,被告各商品がその生産方法をインジェクション方式に変更したことが,虚偽であると認めるに足りる証拠もない。
また,上記生産方法の変更により「生産効率を大幅に高めることに成功しました 」との本件書面記載が虚偽と認めるに足りる証拠もない。原告らは, 。
生産方法の変更「のみ」で30%もの価格ダウンに成功したという因果関係自体が虚偽であり,その結果,原告らの生産方法が被告の生産方法より劣っていることを指摘するものであると主張する。しかし,上記の本件書面記載は,原告らの生産方法が被告の生産方法より劣っていることや,生産方法の変更「のみ」で価格ダウンに成功したことを直接的に指摘するものではない。
また,原告らも指摘するように,生産効率以外にも商品の価格を左右する要因はいくつもあるのであり,このことは本件書面を受け取った取引者にとっても,当然のこととして認識されている事柄である。そうすると,そもそも上記本件書面記載によって,これを受け取った者が,被告各商品の価格ダウンが生産方法の変更「のみ」によると読むとはにわかに考え難く,原告らの主張は,その前提において失当というべきである。
3品質及び耐久性について()ア本件書面記載の「高度な工業生産であるため品質が安定し」との部分について検討すると 「高度な工業生産」が被告の生産方法による生産を指 ,していることは,その文脈から窺うことができるが,いかなる意味で「高度」なのかは判然とせず,したがって 「高度な工業生産」が果たして何 ,を意味するのかも明確ではない。また「品質が安定し」との部分についても,ここにいう「品質」がどのような意味での品質を指すのか,また「安定」がどのような観点における安定をいうのかといった点についても明確ではなく,しかも,この点が「ジェルビー」と対比して指摘しているのかどうかすら明確ではない。
このように上記記載部分には曖昧な点が多く含まれることから,かかる記載部分に接した者が抱く印象も様々であり,必ずしも原告らの生産方法についてネガティブな印象を持つとは限らず,むしろ被告各商品に関する一般的抽象的なセールストークにすぎないと捉えるのが通常の受け止め方と考えられる。また,仮にかかる記載部分を読んで原告らの生産方法についてネガティブな印象を抱く者がいたとしても,その印象は相当漠然としたものにしかならないはずである。
そうすると,同記載をもって,原告らの信用を害するものと認めることはできない上,虚偽であるかどうかを証拠に基づいて客観的に判断することが可能な事項ともいえないので 「虚偽の事実」に当たるとも認められ ,ない。
イ本件書面記載の「耐久性もアップしております」という部分については,上記品質に係る表現に比べれば若干具体的であり,虚偽であるかどうかを証拠に基づいて客観的に判断することも一応可能といえるし,内容的にも「ジェルビー」と対比して被告が生産する「PITA」の耐久性がアップした,すなわち耐久性が高いことを述べるものであり,これに接した者も,通常 「ジェルビー」の耐久性についてネガティブな印象を抱くと考えら ,れるから,原告らの信用を害し得るものといえる(ただし,本件書面記載は,原告らの会社名や原告各商品の商品名を指摘して直接的に対比している訳ではないので,上記記載部分に接した者全てが原告らの商品の耐久性についてネガティブな印象を抱くとは限らない。。)そこで,かかる記載が虚偽であるかどうかについて検討するに,証拠(乙40〜44)によれば,レンタル用福祉用具の消毒作業としてオゾンが用いられており,耐オゾン性が耐久性の一つの指標となり得ると解されるころ,財団法人化学物質評価研究機構が「ピタマットレス用ジェル」と「ジェルビーマットレス用ジェル」の耐オゾン性を検査した結果,前者の方が耐オゾン性が高かったことが認められる。
この点,本件書面記載における「耐久性」がいかなる意味における耐久性を指すのかは明らかではないものの,少なくとも耐久性の一つの指標となり得る「耐オゾン性」においては,原告らの商品よりも被告の商品が高いことが認められるのであるから 「耐久性もアップしております」とい ,う表現が虚偽とまでは認められない。これに対し,原告らは,耐久性はオゾン消毒に対する耐久性よりも,使用中における変形の有無により評価されるべきである旨主張するが,その主張の根拠が十分に示されていない上,そもそも上記記載部分において「耐久性」が何を指すのか明らかではなく,原告らの商品の具体的な耐久性能を掲げて,被告商品よりも劣ると直接的に指摘されている訳ではないのであるから,耐久性について他の指標があるとしても,上記記載部分が虚偽であるとはいえない。
なお,被告がインテリジェル商品と被告各商品とを比較したものとして提出する試験報告書(乙38)には 「ピンク (厚さ45?)及び「ブ ,」ルー (厚さ40?)の各試料につき「繰返し圧縮残留ひずみ試験(8万 」回,圧縮率50% 」を行った結果,その「厚さ低下率(% 」がそれぞ ) )れ「0.1」及び「0.6」であったことが記載されているところ,ここにいう「ピンク」が被告各商品であり 「ブルー」がインテリジェル商品 ,であると認めるに足りる証拠はない(厚さのみから商品を特定することはできない )から,この試験結果に基づいて,被告各商品が原告各商品よ 。
りも品質の安定性及び耐久性において優れていると認めることはできない。
4床ずれ防止機能について()本件書面記載には 「本来の床ずれ防止機能は同等であります」と記載さ ,れているところ,証拠(乙45)及び弁論の全趣旨によれば,西川リビング株式会社が被告商品1である「PITA」と,原告商品1の1種類である「エクシードH80 (甲13の1の4頁)を試験品として,体圧分散性比 」較試験を行った結果,ギャッジベッドを起こさない状態(0度)では,両試験品の被験者の体にかかる圧力に有意の差は認められないが,ギャッジベッドを30度起こした状態では,被告商品1に比べて原告商品1の方が,被験者の尾てい骨付近に大きな圧力がかかっていることが認められる。
そして,利用者の体にかかる圧力をより分散させる方が床ずれ防止機能において優れているといえるから,上記試験結果によれば,ギャッジベッドを起こさない状態では原告商品1と被告商品1の床ずれ防止機能に差は認められず,ギャッジベッドを30度起こした状態では,むしろ被告商品1の方が床ずれ防止機能が高いことが認められる。そうすると,少なくとも,被告商品1の「床ずれ防止機能」が原告商品1のそれと「同等」である旨を指摘する本件書面記載が虚偽であるとは認められない。
この点,原告らは,上記試験結果について,両試験品のジェルセグメントやキャビティ部分の硬さが同一でなければ試験の意味がないとか,未使用品であることの証明がなされていないなどと主張するが,かといって,被告商品1の床ずれ防止機能が原告商品1のそれと同等でない(原告商品1よりも劣っている)ことについて自ら積極的な主張・立証をしていないのであるから,原告らのかかる主張は上記認定を左右するものではない。
5その他の原告らの主張について()上記主張のほかにも,原告らは,被告のカタログ(甲74)やウェブサイト(甲77)の説明からすれば,あたかも,被告商品1が原告商品1の後継モデルであるかのような記載になっていると主張し,かかる記載は虚偽であるとも主張する。しかし,同各証拠には 「ジェルビー・マットレスDタイ ,プ」を掲記した上 「ピタ・マットレスに商品切替中」と記載されてはいる ,が,被告商品1が原告商品1の後継モデルであるとは明確に記載されていないし,仮にそのように解することができるとしても,被告の取り扱う同種商品を切り替える旨を告知するものにすぎず,それだけでは原告らの営業上の信用を害するものとは認められない。
また,原告らは,被告が福祉機器展において,被告各商品の材料が原告各商品の材料と同じであるとか,ほとんど同じである旨説明した(甲75)ことについても,原告らの営業上の信用を害する行為である旨主張するが,仮にこれらの説明が虚偽であるとしても,原告らの営業上の信用を害するものとは認められない。
6以上のとおり,本件書面記載は,生産方法,品質及び耐久性,床ずれ防止()機能に係る表現を個別に見ても違法な信用毀損行為とは認められず,全体としても,違法と評価するようなものとは認められない。
よって,営業誹謗行為に係るその余の争点について判断するまでもなく,本件書面記載の通知が不正競争防止法2条1項14号の不正競争に当たるとは認められないから,これに基づく原告らの請求には理由がない。
5争点4-1(本件取引契約1に係る債務不履行の有無等)について1事実認定()前記当事者間に争いのない事実等に加え,証拠(甲5,6,78,100,乙2,3,原告パシフィックウエーブ代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア原告パシフィックウエーブは,平成11年,立体格子状ジェルに関する米国特許を保有する米国エディゾーン社との間でライセンス契約を締結し,同契約に基づいて,同社(又は同社のライセンスの下で立体格子状ジェルを製造していた米国イージーシート社)から,インテリジェル部材を輸入し,これをマットレスなどの商品(インテリジェル商品)に加工して同商品を我が国で販売していた。
イ原告パシフィックウエーブ代表者,被告代表者及び両名を仲介したB氏は,平成14年8月に,医療,介護その他の福祉に用いる寝装具の一般販売等を目的とする会社である被告を設立した。
被告は,同年9月より,原告パシフィックウエーブからインテリジェル商品を仕入れて,これを介護用品として発売した。
原告パシフィックウエーブと被告は,翌平成15年4月1日,本件取引契約1を締結し,これにより原告パシフィックウエーブは被告に対し,インテリジェル商品の介護用品分野における日本国内での独占的販売権を与えた。
ウ原告パシフィックウエーブは,エディゾーン社が我が国において行った立体格子状ジェルに係る特許出願が平成16年に拒絶されたのを機に,同社とのライセンス契約を解消し,立体格子状ジェル(ジェルトロン)の自社生産を開始した。
しかし,原告パシフィックウエーブは,エディゾーン社とのライセンス契約において医療分野における販売を禁止されていたため,同社との同契約解消後の法的トラブルを避けるために,別会社を設立してジェルトロン部材を販売することとし,平成16年8月に原告ジェイスリープを設立した。
エ原告ジェイスリープは,平成16年9月ころから,原告パシフィックウエーブの製造するジェルトロン部材を使用したジェルトロン商品を 「ジ,ェルトロン」の商品名で販売するようになり,被告は,同年10月から,原告ジェイスリープよりジェルトロン部材を購入して「ジェルビー」という商品名(被告の登録商標)でマットレス等を販売するようになった。
原告ジェイスリープと被告は,平成17年10月11日,本件取引契約2を締結したが,同契約においては,本件取引契約1では定められていた被告の介護用品分野における独占的販売権が定められなかった。
オ上記のとおり,本件取引契約2において被告の介護用品分野での独占的販売権が定められなかったことから,同契約の締結により,原告ジェイスリープが原告各商品を含むジェルトロン商品を介護用品分野で販売することが可能となった。このことから,ジェルトロン部材を原告ジェイスリープから購入している被告は,原告ジェイスリープにコスト面で太刀打ちできなくなると考え,自社生産の検討を開始した。
その後,被告は,平成18年4月より 「ピタ(PITA 」シリーズ ,)のシートクッション(被告商品2)の販売を開始し,同年10月には,同じくマットレス(被告商品1)の販売を開始した。
カ原告ジェイスリープは,同年12月15日,被告に対して,被告商品1の開発・広告宣伝方法が本件取引契約2に違反していると通知し,10日以内に契約違反状態の是正措置を講じることを要求した。
また,原告ジェイスリープは,同月26日,被告が上記是正措置に応じないとして,同月25日の経過をもって,本件取引契約2を解除する旨の意思表示をした。
2本件取引契約1に係る合意解約の成否()ア原告パシフィックウエーブは,本件取引契約1の債務不履行を主張するのに対し,被告は,本件取引契約1は本件取引契約2の締結により合意解約されたと主張するので,まず,この点について検討する。
イ本件取引契約書1(甲5)の第1条1項には,同契約が対象とする「商品」の定義として 「 商品』とは乙(判決注:原告パシフィックウエー ,『ブ)が取り扱っているインテリジェルR,ジェラスティックR等の成型品及びそれらを使用した商品であって,乙が決定した用途向けの製品を意味する 」と定められているところ,前記認定事実のとおり,本件取引契約 。
1に基づいて,被告は原告パシフィックウエーブからインテリジェル部材を仕入れていたのであるから(他の部材を仕入れていたことを窺わせる証拠はない,同契約は実際にはもっぱらインテリジェル部材を対象とす 。)るものであると認められる。
しかるところ,前記認定事実のとおり,原告パシフィックウエーブは,エディゾーン社の我が国における特許出願が拒絶されたことを機に,同社とのライセンス契約を解消し,同原告が開発したジェルトロン部材を販売するために原告ジェイスリープを設立した上,本件取引契約2の締結に至ったものであるところ,本件取引契約2の成立後は同原告と被告との間ではもっぱらジェルトロン部材が取引の対象とされ,インテリジェル部材に係る取引が一切行われておらず,被告各商品の販売開始を知った後も同原告が本件取引契約1の違反を問題視した形跡が全く窺えないことに照らすと,本件取引契約2の成立により,原告パシフィックウエーブにおいて,被告とインテリジェル部材を取引する意思は確定的に消滅したと推認される。また,上記本件取引契約2に至る経緯に照らすと,被告においても,原告パシフィックウエーブとインテリジェル部材の取引をする意思は確定的に消滅したものと推認される。そして,他に上記推認を覆すに足りる証拠はない。
このように,原告ジェイスリープと被告との間においては,インテリジェル商品をジェルトロン商品と置き換えるとの共通認識の下で,本件取引契約2の締結に至ったのであり,同契約の成立により,本件取引契約1の契約当事者,すなわち原告パシフィックウェーブと被告との間においても,これを存続させる意思が確定的に消滅したというべきである。したがって,本件取引契約2の成立によって,本件取引契約1を解約するとの黙示の合意があったと認めるのが相当である。
ウこれに対し,原告パシフィックウエーブは,同原告としては,本件取引契約2の成立後も本件取引契約1を存続させる意思があった旨主張する。
しかし,同原告は,本件取引契約1において介護用品分野におけるインテリジェル商品の独占的販売権を被告に与えておきながら,本件取引契約2の成立後は,原告ジェイスリープを介して,インテリジェル商品の後継品と自ら主張するジェルトロン商品につき被告に独占的販売権を与えず,ジェルトロン商品である原告各商品を自ら介護用品分野で販売しているのであるから,原告パシフィックウエーブは,独占的販売権が定められていない本件取引契約2を原告ジェイスリープと被告との間で締結させることにより,自ら介護用品分野に参入することを積極的に企図していたものというべきである。そして,その企図を実現するため,原告パシフィックウエーブとしては,本件取引契約1(とりわけ独占的販売権条項)の効力をなからしめることが必要であったから,原告ジェイスリープと被告が本件取引契約2を締結するに際し,本件取引契約1を終了させる意思がなかったなどとは認め難い。
3本件取引契約1解約後における債務の存否()ア上記のとおり,本件取引契約1は,平成17年10月11日に本件取引契約2が締結されたことにより合意解約されたものと認められる。もっとも,本件取引契約1自体が合意解約により終了したとしても,同契約中の個々の条項の内容によっては,その条項に係る債務の効力が存続する場合もあると考えられるので,以下,原告パシフィックウエーブが主張する本件取引契約1の債務について,それぞれ検討することとする。
イ原告パシフィックウエーブは,本件取引契約書1に定める以下の条項について,債務不履行を主張する(以下において「甲」は被告を指し,「乙」は原告パシフィックウエーブを指す。。)「第17条(禁止行為)甲は乙の承諾無くして次の行為をしてはならない。
?本契約に基づき知り得た商品に関する情報は乙の営業秘密であることを認識し,これを他に漏洩する行為?乙及び商品の信用を毀損する行為?ジェラスティックR等の成型品と同じかあるいは酷似する構造を有する素材を利用した他社の製品を取り扱う行為」「第22条(秘密保持義務)甲及び乙は本契約及び個別契約に基づき又は関連して知り得た相手方の秘密情報につき第三者に開示漏洩しないものとする 」。
ウ本件取引契約書1においては,同契約の終了後も被告が上記各条項に係る債務を負うことについて明確な定めはなされていない。また,上記第17条6号の禁止行為については,原告パシフィックウエーブが被告に介護用品分野におけるインテリジェル商品の独占的販売権を与えることとの関係で,競合商品の販売について一定の制約が定められているものと解される。したがって,契約当事者の意思解釈からしても,同号については,契約存続中に限った禁止規定と解するのが相当である。
また,上記第17条2号の禁止行為(信用毀損行為)についても,その抽象的一般的な定め方からすれば,契約当事者間における相互尊重の表れにすぎず,不正競争防止法2条1項14号等に定める営業誹謗行為などの違法行為に当たらない行為までをも,これと同様に規制する規定であるとは認められない。したがって,同条項についても,契約存続中における禁止規定と解するのが相当である。
エこれに対し,上記第17条1号及び第22条については,第17条1号とは別に,独立の条項として第22条が定められていること,条項の内容としても,原告パシフィックウエーブの営業秘密の保持義務を定めるものであり,契約解消に伴って当然に同義務が消滅してしまうと,原告パシフィックウエーブの営業秘密を守るという目的が達成できないのであり,このことは被告としても了知していたというべきであるから,これら条項については,その性質上,契約解消後も秘密保持義務の効力が存続するものと解するのが相当である。
これら条項において被告が保持すべき秘密情報の範囲について,第17条6号においては「商品に関する情報」と定められているにすぎないことから,同号に基づいて契約解消後に被告が負う秘密保持義務の範囲も,「商品に関する情報」に限られるというべきである。これに対し,第22条秘密保持義務の範囲は「本契約及び個別契約に基づき又は関連して知り得た相手方の秘密情報」と記載されていることから 「商品に関する情,報」に限らず,本件取引契約1に基づき又はこれに関連して知り得た原告パシフィックウエーブの秘密情報全般に及ぶものというべきである。
そうすると,本件において原告パシフィックウエーブが秘密として主張する情報(本件顧客情報及び本件製法情報)は,本件取引契約1の第17条6号にいう「商品に関する情報」又は第22条にいうにいう「本契約及び個別契約に基づき又は関連して知り得た秘密情報」に当たると解される。
4本件取引契約1の解約後における被告の債務不履行の有無()上記のとおり,本件顧客情報及び本件製法情報については,本件取引契約1の解消後も被告において秘密保持義務を負い,これを第三者に漏洩する行為をしてはならないと解されるが,前記2(2)及び3(2)で認定したとおり,そもそも被告は本件顧客情報及び本件製法情報を使用しているとは認められないのであるから,被告が被告各商品の製造販売に当たって,本件顧客情報及び本件製法情報を第三者に漏洩したとも認められない。
したがって,被告に上記各情報に係る秘密保持義務違反は認められない。
5よって,被告には,原告パシフィックウエーブが主張する本件取引契約1()の債務不履行が認められないのであるから,これを理由とする同原告の請求には理由がない。
6争点4-2(本件取引契約2に係る債務不履行の有無)について1本件取引契約2は,平成18年12月25日の経過をもって解除されたこ()とに争いはないが,少なくとも,被告が被告各商品の販売を開始した同年4月から上記解除の日までの間は,有効に存続していたのであるから,同期間内においては,被告は原告ジェイスリープに対し本件取引契約書2に定められた債務を負うことになる。また,本件取引契約2の解除による同契約終了後も,本件取引契約2において定められた個々の条項に係る債務が存続するかどうかについては,前記5の争点と同様に問題となり得る。
そこで,原告ジェイスリープが本件において主張する債務不履行について,それぞれ検討する。
2本件取引契約2の第8条1項及び第16条4号について()ア本件取引契約書2における定め本件取引契約書2(甲6)には以下の定めがある(以下において「甲」は被告を指し 「乙」は原告ジェイスリープを指す。以下,(3)ア及び(4) ,アにおいて同じ。。)「第1条(定義)本契約で使用する用語は,別段の定めがない限り,次の意味内容を表すものである。
1『製品』とは乙の製造にかかる立体構造を有するジェルの成型品を意味する。
2『商品』とは,製品を使用して,乙が,自ら決定した用途向けに製作したマットレス,パッド,マクラ,クッション及び甲乙が別途協議の上定める物品を意味する。
3『商品等』とは商品及び製品を意味する。
4『新製品』とは,乙の承諾のもと甲が商品等を利用し,商品化した物品を意味する 」。
第8条(新製品の開発)1甲は,商品等を利用した物品(以下 「新製品」という)の開発を ,行う場合又は第三者をして開発を行わせる場合には,事前にその旨を乙に対し書面で通知し,乙の書面による承諾を得ることを要する 」。
第16条(禁止行為)甲は,乙の事前の書面による承諾なく,次の各行為をしてはならない。
?商品等との誤認混同を防止する措置を講じることなく,商品等と同じ或いはこれと酷似する構造を有し,同じあるいは酷似する素材を利用した他社製品を取り扱う行為」イ第8条1項について第8条1項は「商品等を利用した物品」の開発を行う場合には原告ジェイスリープの事前の承諾を得なければならないことを定めるところ,ここにいう「商品等」とは「商品」及び「製品」を意味するものであり(上記第1条3項「商品」とは「製品」を使用して,原告ジェイスリープが ),製作したマットレス,パッド,マクラ,クッション及び原告ジェイスリープと被告が別途協議の上定める物品であり(同条2項 ,また「製品」と)は被告の製造にかかる立体構造を有するジェルの成型品を意味する(同条1項 。)そうすると,第8条1項が原告ジェイスリープの事前の書面による承諾を要求しているのは,原告ジェイスリープの製造する立体格子状ジェルであるジェルトロン部材及びこれを使用して同原告が製作したマットレス等を利用した物品の開発と解するのが相当である。
これに対し,原告ジェイスリープは,同条項では商品等を「利用した」物品と定めているのであるから,原告各商品に使用されている技術や特徴を使用することも原告ジェイスリープ製造に係る商品等を利用することに当たると主張する。たしかに「利用」という文言のみからすれば,同条項の「利用」の意義をそのように解釈することも不可能とはいえない。しかし,後記ウのとおり,第16条4号では 「商品等」と同一又は酷似する ,商品を被告が取り扱うこと自体は禁じられていなかったこと(誤認混同防止措置が講じられれば販売可能と解される )からすれば 「商品等を利 。,用した物品」を原告ジェイスリープが主張するように広く解すると,同条項により認められるべき行為が認められないことなって同条項と整合しないことになり,契約の解釈として許容することができないというべきである。
そこで 「商品等を利用した物品」とは,ジェルトロン部材及びこれを ,使用して原告ジェイスリープが製造するマットレス等を直接利用した物品に限られると解すべきであり,かかる解釈を前提にすると,被告各商品は,いずれも原告ジェイスリープの製造するジェルトロン部材を直接利用した物品とはいえないのであるから,被告各商品は第8条1項にいう「商品等を利用した物品」に当たらない。
したがって,被告各商品は第8条1項の適用対象ではないので,被告が原告ジェイスリープの事前の承諾を得ずに被告各商品の販売を開始したことが同条項に違反するとはいえない。
第16条4号について第16条4号では,被告が原告ジェイスリープの事前の書面による承(ア)諾なく行ってはならない行為として 「商品等」と同一若しくは酷似す ,る構造を有する他社製品又は同一若しくは酷似する素材を利用した他社製品を誤認混同防止措置を講じることなく取り扱う行為を定めている。
そこで,被告各商品が,?同条項にいう「他社製品」に当たるかどうか,?被告各商品の販売において誤認混同防止措置が講じられているかどうかについて,以下検討する。
「他社製品」に当たるかどうかについて(イ)第16条4号における「他社製品」とは 「商品等」と同一若しくは ,酷似する構造又は素材を利用した他社製品をいい,ここにいう「商品等」とは,上記イで検討したとおり,原告ジェイスリープの製造する立体格子状ジェルであるジェルトロン部材及びこれを使用して同原告が製造するマットレス等を直接利用した物品と解される。
そうすると,第16条4号の対象となる「他社製品」とは,ジェルトロン商品と同一又は酷似する商品や,ジェルトロン部材と同一又は酷似する素材を採用する商品をいうと解される。
そこで,ジェルトロン商品である原告各商品の形態と被告各商品の形態とを対比するに,両商品の形態は,前記当事者間に争いのない事実等(2)及び(3)において認定したとおり,別紙原告商品目録1及び同2並びに別紙被告商品目録1及び同2添付の各写真のとおりであること,原告各商品の素材であるジェルトロン部材の形態と,被告各商品の素材であるピタ部材の形態は,別紙原告商品目録1及び別紙被告商品目録1添付の各部分拡大図のとおりであることが認められる。なお,証拠(甲81〜83)によれば,原告各商品の平面視十字型の補強部が表面にある場合(トップタイプ)と裏面にある場合(ボトムタイプ)の両方あることが認められる。
そうすると,原告各商品と被告各商品とは,その使用する部材に起因する形態上の相違点が認められる。すなわち,両商品は,原告各商品においては,各格子空間の中に平面視十字型の補強部が設けられているのに対し,被告各商品の各格子空間の底には中心に丸孔が形成された底壁が設けられているという点において相違する。
また,原告商品2と被告商品2は,被告商品2の表面には,臀部と大腿部の形状に対応した凹部が形成されているのに対し,原告商品2では,かかる凹部が形成されていない点において相違する。
このように,少なくとも上記の点において原告各商品と被告各商品の形態は異なっているのであり,このことに加え,前記1(2)のとおり,立体格子状形態自体が原告各商品において特別に顕著な特徴とはいえず,また,かかる形態が需要者に周知であるともいえないことに照らすと,上記相違点は比較的大きな形態上の相違というべきである。
そうすると,原告各商品と被告各商品の形態は,同一又は酷似する構造を有する他社製品にも,同一又は酷似する素材を採用する他社製品にも該当しないというべきである。
よって,被告各商品は第16条4号にいう「他社製品」に該当しない。
誤認混同防止措置について(ウ)前記当事者間に争いのない事実等(3)のとおり,被告は被告商品1を「ピタ・マットレス ,被告商品2を「ピタ・シートクッション」とい 」う商品名で販売しており,そのカタログ(甲74)においても 「PI,TA」という標章が大きく掲げられていることからすれば,被告が被告各商品を販売するに当たって 「ジェルトロン」なる商品名の原告各商 ,品との誤認混同防止措置を講じていないとは認められない。
以上のとおり,被告各商品は「他社製品」に当たらない上,被告は被(エ)告各商品を販売するに当たって誤認混同防止措置を講じていないともいえないので,いずれにしても被告の行為が第16条4号の禁止行為に当たるとはいえない。
エよって,被告による被告各商品の販売が本件取引契約2の第8条1項又は第16条4号に違反するとは認められない。また,本件取引契約2の解除後もその効力が存続する旨の定めもなく,これらの条項の内容から解除後もその効力が存続すると解すべきであるともいえないから,本件取引契約2が解除された後の行為については,これら条項の違反はそもそも考えられない。
3本件取引契約2の第17条について()ア本件取引契約書2における定め本件取引契約書2(甲6)には,以下の定めがある。
第17条(秘密保持義務)甲及び乙は,本契約継続中及び本契約終了後,本契約あるいは個別契約に基づき又はこれらに関連して相手方から開示を受け又は知り得た情報につき,第三者に開示し又は漏洩し,あるいは目的以外に使用してはならない 」。
秘密保持義務の対象上記のとおり,第17条における秘密保持義務の対象となる「情報」の意義について,同条項では極めて曖昧な定めがあるのみであるが,少なくとも,相手方すなわち原告ジェイスリープから開示を受け又は知り得た情報でなければならないことは,その文言上明らかである。
しかるところ,原告ジェイスリープが同条による秘密保持義務違反を主張する本件顧客情報及び本件製法情報は,原告ジェイスリープの主張によっても,原告ジェイスリープによって開示されたものではなく,原告パシフィックウエーブによって開示されたものである。
そうすると,これら情報は「相手方から開示を受け又は知り得た情報」に当たらないことが明らかである。また,これら情報について,別途,同条にいう「情報」とするという合意がされたなどの事情があったと認めるに足りる証拠もない。
したがって,原告ジェイスリープの主張する本件顧客情報及び本件製法情報は,いずれも同条にいう「情報」に当たると解することはできず,そうである以上,被告において同条に違反する行為があったともいえない。
なお,同条は,前記5(3)エで認定説示したとおり,その性質上,本件契約2の解除後も効力が存続すると解されるが,そもそも,原告ジェイスリープが主張する上記各情報自体が同条の適用対象とならないのであるから,その効力存続の有無にかかわらず,被告に同条違反があったといえないことは当然である。
4本件取引契約2の第16条1号について()ア本件取引契約書2における定め本件取引契約書2(甲6)には,以下の定めがある。
第16条(禁止行為)?乙及び商品等の信用を毀損する行為」イ信用毀損行為の有無原告ジェイスリープが主張する信用毀損行為は,本件書面の配布による本件書面記載の通知であるところ,この点が原告ジェイスリープや原告各商品の信用を毀損するものと認められないことについては,前記4で認定説示したとおりである。
よって,本件書面の配布による本件書面記載の通知が同条項に違反する, とは認められない。なお,同条項は,前記5(3)ウで認定説示したとおり本件取引契約2の存続中における禁止行為と解され,解除による契約終了後は,その効力が消滅すると解される。
5よって,被告には,原告ジェイスリープが主張する本件取引契約2の債務()不履行が認められないから,これを理由とする同原告の請求には理由がない。
7争点5-1(原告説明図の著作物性等)について1原告説明図の著作物性について()ア著作権法は 「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであ ,って,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう 」と定めて。
おり(著作権法2条1項1号 ,思想又は感情の創作的な表現を保護の対 )象とするものであるから,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体でないもの又は表現したものであっても表現上の創作性がないものについては,著作権法によって保護することはできず,これを「著作物」ということはできない。
イこの点,原告パシフィックウエーブは,原告説明図には,以下の?ないし?の点において創作性がある旨主張する。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルの格子形状を表現した。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルそれぞれに彩色を施している。
?3分割された立体格子型グミ状ジェルを組合わせたものを立体的に表現している。
??ないし?の特長を表現したマットレスの上に人が仰向けに横たわり,肩部,臀部,脚部に対し,3分割された立体格子型グミ状ジェルがどのように対応しているかが表現されている。
ウしかし,原告説明図は8段階の硬さの立体格子型グミ状ジェルの中から,使用者の肩部・臀部・脚部にそれぞれ最適なものを3枚決定し,これら3枚のジェルセグメントを組み合わせて1つのマットレスを構成するという技術的思想(甲100,原告パシフィックウエーブ代表者)を基にその使用方法を図形で表現したものであるところ,上記?の格子形状の表現については,原告説明図は全く同じ形状の平行四辺形を単に縦横に並べて表現したものにすぎず,表現として極めてありふれたものである。
上記?の彩色についても,原告説明図は分割された3つの部分を黄色・青色・赤色でそれぞれ彩色したものにすぎず,極めてありふれた色の組み合わせにすぎない。
上記?の立体的な表現についても,原告説明図は平行四辺形と長方形を組み合わせて表現したものであり,立体形状の表現方法としては,最も単純でありふれた方法に属するものといえる。
上記?のマットレスに横たわる人物についても,原告説明図は,黄色に彩色されたマットレスの上に足部分を,青色に彩色されたマットレスの上に臀部を,赤色に彩色されたマットレスの上に肩部分を,それぞれ描いて表現したものであり,これらの対応関係を表現するに当たってさしたる工夫も窺えない上,人物の表現方法も,これ以上できないほどに,その輪郭のみを簡略化してありふれた手法で模式的に描いたものであり,そこに創作性は認め難い。
2このように,原告説明図には,表現上の創作性が認められないので,著作()権法上の「著作物」とはいえない。よって,著作権侵害に係るその余の点について検討するまでもなく,著作権侵害を理由とする原告パシフィックウエーブの請求には理由がない。
第5結論以上により,原告らの本件各請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。