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事件 平成 21年 (ネ) 10003号 不正競争行為差止等請求,同請求控訴事件
控訴人兼被控訴人(1審本訴原告兼反訴被告) 株式会社オーベル(以下「控訴人オーベル」という。)
控訴人兼被控訴人(1審本訴原告) X1 (以下「控訴人X1」という。)
同所
同X2 (以下「控訴人X2」という。)
同X3 (以下「控訴人X3」という。)
控訴人ら訴訟代理人弁護士 大澤一郎
被控訴人兼控訴人(1審本訴被告兼反訴原告) 株式会社サンベスト(以下「被控訴人サンベスト」という。)
同所
同Y1 (以下「被控訴人Y1」という。)
同所
被控訴人(1審本訴被告兼反訴原告) (以下「被控訴人Y2」という。)
被控訴人ら訴訟代理人弁護士 海田麻子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/03/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原判決を次のとおり変更する。
(1)被控訴人Y1及び同Y2は,連帯して,ア控訴人オーベルに対し,16万5000円イ控訴人X1に対し,8万2500円ウ控訴人X2に対し,4万1250円エ控訴人X3に対し,4万1250円及び以上の各金員に対するいずれも平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)控訴人らの被控訴人サンベストに対する本訴請求並びに被控訴人Y1及び同Y2に対するその余の本訴請求をいずれも棄却する。
(3)被控訴人Y1に対し,ア控訴人オーベル及び同X1は,連帯して,27万5000円イ控訴人オーベル及び同X2は,連帯して,2万7500円ウ控訴人オーベル及び同X3は,連帯して,2万7500円及び以上の各金員に対するいずれも平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)被控訴人サンベストの反訴請求及び同Y1のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,本訴,反訴を通じ,かつ,第1,2審を通じ,これを2分し,その1を控訴人らの,その余を被控訴人らの負担とする。
3この判決は,主文1項(1)及び(3)に限り,仮に執行することがで- 3 -きる。
事実及び理由
全容
第1申立て1控訴人ら(1)控訴人らの控訴及び請求の減縮に基づき,原判決を次のとおり変更する。
ア被控訴人サンベスト及び同Y1の反訴請求をいずれも棄却する。
イ控訴人オーベルに対し,(ア)被控訴人らは,連帯して,2279万7500円(イ)被控訴人Y1及び同Y2は,連帯して,550万円及び以上の各金員に対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ控訴人X1に対し,(ア)被控訴人Y1及び同Y2は,連帯して,275万円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1は,55万円及びこれに対する平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
エ控訴人X2に対し,(ア)控訴人Y1及び同Y2は,連帯して,137万5000円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1は,27万5000円及びこれに対する平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
オ控訴人X3に対し,(ア)被控訴人Y1及び同Y2は,連帯して,137万5000円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1は,27万5000円及びこれに対する平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
(2)当審において追加された被控訴人サンベスト及び同Y1の請求を棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。
(4)仮執行宣言2被控訴人サンベスト及び同Y1(1)被控訴人サンベスト及び同Y1の控訴及び請求の拡張に基づき,原判決を次のとおり変更する。
ア控訴人らの本訴請求をいずれも棄却する。
イ控訴人オーベルは,(ア)被控訴人サンベストに対し,200万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1に対し,250万円及び内金100万円に対する平成19年10月4日から,内金150万円に対する平成20年1月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
(2)当審において追加された請求ア控訴人X1は,(ア)被控訴人サンベストに対し,200万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1に対し,200万円及びうち100万円に対する平成19年10月4日から,うち100万円に対する平成20年1月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員を,(ア)の200万円については,控訴人オーベルと,うち50万円については,控訴人X2及び同X3と,(イ)の前者の100万円については,同限度で,控訴人オーベルと,うち25万円の限度で,控訴人X2及び同X3と,(イ)の後者の100万円については,同限度で,控訴人オーベルと,うち25万円の限度で控訴人X2及び同X3とそれぞれ連帯して支払え。
イ控訴人X2は,(ア)被控訴人サンベストに対し,50万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1に対し,50万円及び内金25万円に対する平成19年10月4日から,内金25万円に対する平成20年1月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員をその余の控訴人らとそれぞれ連帯して支払え。
ウ控訴人X3は,(ア)被控訴人サンベストに対し,50万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまて年5分の割合による金員(イ)被控訴人Y1に対し,50万円及び内金25万円に対する平成19年10月4日から,内金25万円に対する平成20年1月24日から各支払済みまで年5分の割合による金員をその余の控訴人らと連帯してそれぞれ支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人らの負担とする。
(4)仮執行宣言第2事案の概要1原審における請求本件は,原審においては,控訴人らの以下の本訴請求と,被控訴人らの以下の反訴請求とからなる事案であった。
(1)本訴請求?控訴人オーベルが,被控訴人らによる別紙物件目録記載1ないし6の塗料(以下「被控訴人塗料1」などといい,これらをまとめて「被控訴人塗料」という。)の製造・販売行為は不正競争防止法2条1項1号及び同項13号に該当し,被控訴人らが同控訴人を誹謗・中傷した行為は同法2条1項14号に該当すると主張して,被控訴人らに対し,同法3条に基づいて別紙顧客目録記載の者(以下「本件顧客」という。)への営業行為及び被控訴人塗料の本件顧客への輸出・譲渡の差止め(ただし,被控訴人塗料のうち別紙物件目録記載1,3,5及び6の塗料の製造・販売行為の差止めは,不正競争防止法2条1項14号のみに基づくものである。)を求める請求?控訴人オーベルが,?の不正競争行為による損害として,被控訴人らに対し,不正競争防止法4条に基づいて5387万2500円及び平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求?控訴人オーベル並びにその代表取締役であった1審原告訴訟被承継人A(以下「被承継人」という。)の訴訟承継人である控訴人X1,同X2及び同X3(以下「控訴人X1ら」という。)が,被控訴人Y1及び同Y2による文書の配布が控訴人オーベルの信用を毀損するとともに,被承継人の名誉を毀損すると主張して,同被控訴人らに対し,民法709条に基づく損害賠償として,それぞれ550万円及び前同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求?控訴人X1らが,被控訴人Y1の株主総会における発言が被承継人の名誉を毀損すると主張して,同被控訴人に対し,民法709条に基づく損害賠償として,110万円及び平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求(2)反訴請求?被控訴人サンベスト及び同Y1が,控訴人オーベルによる本訴提起のうち不正競争防止法違反に係るものは不当訴訟であると主張して,同控訴人に対し,民法709条に基づく損害賠償として,200万円及び平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求?被控訴人Y2が,?と同様に主張して,控訴人オーベルに対し,民法709条に基づく損害賠償として,300万円及び前同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求?被控訴人Y1が,控訴人オーベルの株主総会における被承継人及び控訴人X1の発言が同被控訴人の名誉を毀損すると主張して,控訴人オーベルに対し,民法709条に基づく損害賠償として,100万円及び平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求2原判決及び控訴の提起(1)原判決は,本訴については,本訴?の請求を棄却し,同?の請求を210万円及び平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,同?のうち,被控訴人Y1の名誉毀損による損害賠償を求める請求を合計18万円及びこれらに対する平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認定し,同?の請求を棄却するとともに,反訴請求については,反訴?のうち,被控訴人Y1の請求を24万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,同?及び?の請求をいずれも棄却した。
(2)控訴人オーベルは,原判決中,本訴?の請求を棄却した部分を不服として,また,同控訴人及び控訴人X1らは,同?のうち,被控訴人Y1及び同Y2の名誉毀損行為による損害賠償を求める請求を棄却した部分を不服として,控訴人X1らは,同?の請求を棄却した点を不服としてそれぞれ控訴した。
他方,被控訴人サンベスト及び同Y1は,原判決中,反訴?の請求を一部棄却した部分及び同?及び?の請求を全部棄却した点をいずれも不服として控訴した。
3当審における請求(1)当審において,その後,被控訴人サンベストは,控訴人X1らに対し,会社法429条に基づく不当訴訟による損害賠償請求として,合計200万円(内訳は,控訴人X1につき100万円,同X2及び同X3につき各50万円)及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴えを追加し,被控訴人Y1は,同被控訴人の控訴人オーベルに対する不当訴訟による損害賠償請求の主たる請求を100万円の支払を求める限度に減縮した上,控訴人X1らに対し,上記と同様の損害賠償請求として,合計100万円(内訳は,控訴人X1につき50万円,同X2及び同X3につき各25万円)及びこれらに対する前同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴えを追加するとともに,控訴人オーベルに対する名誉毀損行為による損害賠償請求について,主たる請求を150万円に拡張した上,会社法429条に基づく名誉毀損行為による損害賠償として,控訴人X1らに対し,合計100万円(内訳は,控訴人X1につき50万円,同X2及び同X3につき各25万円)及びこれらに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,控訴人X1に対し,50万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める訴えを追加した。
(2)以上の結果,当審において判断が求められている請求は,以下の本訴請求1ないし5及び反訴請求1ないし7である。
ア本訴関係以下の本訴請求(当審において拡張された請求を含む。)中,(ウ)と(エ)は互いに不真正連帯債務の関係に立つ。
(ア)本訴請求1控訴人オーベルの被控訴人らに対する不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為による同法4条に基づく損害賠償としての2279万7500円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(イ)本訴請求2控訴人オーベルの被控訴人らに対する不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為による同法4条に基づく損害賠償としての2279万7500円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(ウ)本訴請求3控訴人オーベルの被控訴人Y1及び同Y2に対する名誉毀損行為による民法709条に基づく損害賠償としての550万円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払請求(エ)本訴請求4控訴人X1らの被控訴人Y1及び同Y2に対する名誉毀損行為による民法709条に基づく損害賠償としての550万円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(オ)本訴請求5控訴人X1らの被控訴人Y1に対する名誉毀損行為による民法709条に基づく損害賠償としての110万円及びこれに対する平成20年2月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求イ反訴関係以下の反訴請求(当審において追加された請求を含む。)中,それぞれに対応する債務は,(ア)と(ウ)のほか,(イ)と(エ)について(エ)の各自の支払の限度,(オ)と(カ)について(カ)の各自の支払の限度,(オ)と(キ)について(キ)の限度で,いずれも互いに不真正連帯債務の関係に立つ。
(ア)反訴請求1被控訴人サンベストの控訴人オーベルに対する不当訴訟提起行為による会社法350条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての200万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(イ)反訴請求2被控訴人Y1の控訴人オーベルに対する不当訴訟提起行為による会社法350条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての100万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(ウ)反訴請求3被控訴人サンベストの控訴人X1らに対する不当訴訟提起行為による会社法429条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての合計200万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(エ)反訴請求4被控訴人Y1の控訴人X1らに対する不当訴訟提起行為による会社法429条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての合計100万円及びこれに対する平成19年10月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(オ)反訴請求5被控訴人Y1の控訴人オーベルに対する名誉毀損行為による会社法350条,民法715条及び同法709条に基づく損害金150万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(カ)反訴請求6被控訴人Y1の控訴人X1らに対する名誉毀損行為による会社法429条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての合計100万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求(キ)反訴請求7被控訴人Y1の控訴人X1に対する名誉毀損行為による会社法429条及び民法709条に基づく損害賠償請求としての50万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求4前提となる事実関係控訴人らの本訴請求並びに被控訴人サンベスト及び同Y1の反訴請求に対する判断の前提となる事実関係は,以下のとおりである。
(1)当事者等以下の事実は,当事者間に争いのない事実のほか,甲1,2,30,31,91ないし93,乙1及び弁論の全趣旨によって認められる。
ア控訴人オーベル控訴人オーベルは,自動車部品の固体潤滑コーティング及び塗料の販売等を行う会社であり,昭和42年3月に,B(以下「B」という。),被控訴人Y1及び同人の夫である被控訴人Y2を発起人として設立された有限会社オーベル化学研究所が,昭和55年に株式会社に組織変更されたものである。
B,C(以下「C」という。),被控訴人Y1及び被承継人は,きょうだいであり,年齢は上記記載の順である。
控訴人オーベルにおいては,設立当初から平成9年2月に至るまで,Bが代表取締役を務め,そのころまでの同社の経営には,Bのほか,被控訴人Y1及び後に加わったCが当たっていたが,同年3月,BとCが引退し,被承継人が代表取締役に就任した。
控訴人オーベルの株式については,平成9年から平成10年ころに2度にわたって増資をし,被承継人に割り当てた結果,被承継人が発行済み株式の60%,被控訴人Y1が16%,Bが16%,死亡したCの相続人であるD(以下「D」という。),E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)が合計8%を有していた。
被控訴人Y1は,平成13年8月ころ,被承継人に依頼されて社長代行として控訴人オーベルの経営に携わったが,同14年3月の株主総会において,社長代行を解任された。
なお,被承継人の死亡により,本件訴訟の訴訟手続は,その相続人である控訴人X1らが受継した。また,平成20年7月26日,控訴人オーベルの取締役であった控訴人X1が同社の代表取締役に就任している。
イ被控訴人サンベスト被控訴人サンベストは,塗料及び塗料機会,器具類の製造,販売を目的とする会社であり,平成14年4月に設立され,被控訴人Y1が代表取締役に,同Y2が監査役にそれぞれ就任している。
ウ三洋商事株式会社三洋商事株式会社(以下「三洋商事」という。)は,塗料及びその他の原材料並びに塗装機械,器具類の輸出及び販売を目的とする会社である。控訴人オーベルは,三洋商事から塗料を購入していたところ,三洋商事が経営危機に陥ったことから,同控訴人は,材料の仕入れ先を安定させるため,昭和60年ころ,三洋商事を買収して系列傘下におさめた。
三洋商事の代表取締役は,平成9年4月まではBが,同月からは被控訴人Y1が務めていたが,被控訴人Y1は,平成14年3月の株主総会において取締役を解任され,以降は被承継人が代表取締役を務めていた。
(2)塗料の概要以下の事実は当事者間に争いがない。
アザイラン1052ザイラン1052は,アメリカのウィットフォード社製の塗料であり,我が国においては,岡畑興産株式会社(以下「岡畑興産」という。)が同塗料の独占的販売代理店であった。
イホスタフロン5875ホスタフロン5875は,ドイツのヘキスト社が製造・販売していた塗料の名称であるが,ヘキスト社は,遅くとも平成4年ころ,ホスタフロン5875の製造を中止し,その技術及び製法をドイツのワイルバーガー社及びアメリカのウィットフォード社に譲渡した。
ヘキスト社が製造していたホスタフロン5875と同じ塗料は,現在,ワイルバーガー社のグレブロン1211,ウィットフォード社のザイラン1075として,それぞれ製造・販売されている。
(3)過去の紛争の経過以下の事実は,当事者間に争いのない事実のほか,甲14,30ないし33,47,90,乙1,弁論の全趣旨によって認められる。
ア横領による損害賠償請求訴訟控訴人オーベル及び三洋商事は,東京地方裁判所に対し,平成13年,控訴人オーベル及び三洋商事の経理を担当していたG(以下「G」という。)を被告として,また,控訴人オーベルは,控訴人オーベルの取引先である有限会社石川工業所(以下「石川工業所」という。)の取締役であるH(以下「H」という。)を共同被告として,?G及びHが共謀して水増し又は架空請求をする方法により2120万5000円を横領した,?Gが不正経理により合計270万9960円を横領したと主張して,損害賠償の支払を請求する訴え(平成13年(ワ)第27725号。以下「別件横領関係訴訟」という。)を提起した。
控訴人オーベルとHとの間で,平成14年11月15日,Hが控訴人オーベルに80万円を支払い,控訴人オーベルがその余の請求を放棄することを内容とする訴訟上の和解が成立した。
東京地方裁判所は,平成15年2月28日,上記事件について,控訴人オーベル及び三洋商事のGに対する請求を全部認容する判決を言い渡し,同判決は控訴期間満了により確定した。
イ退職慰労金支払等請求訴訟被控訴人Y1は,東京地方裁判所に対し,平成14年,控訴人オーベルを被告として,退職慰労金残金,保証料残金,技術料及び社長代行報酬の支払を求める訴え(平成14年(ワ)第12515号)を提起した後,三洋商事を被告として,被控訴人Y1が三洋商事の取締役を解任されたことに正当事由がないとして,残りの在任期間の報酬と慰謝料の支払を求める訴え(平成14年(ワ)第12786号)を提起した。
三洋商事は,被控訴人Y1に対し,同被控訴人が三洋商事の代表取締役在任中に支払を受けた技術料,売掛金,弁護士費用及び保険料の積立貯蓄部分の返還,並びに同被控訴人が前記技術料を受け取ったことによって三洋商事が加算税を課されたことによる損害賠償の支払を求める反訴(平成14年(ワ)第21525号)を提起した。
東京地方裁判所は,平成16年3月31日,平成14年(ワ)第12515号事件に係る被控訴人Y1の請求のうち,社長代行報酬の支払請求については棄却し,その余の請求を認容し,平成14年(ワ)第12786号事件に係る同請求のうち,取締役報酬相当額の損害賠償の一部を認容し,その余の請求を棄却し,三洋商事の反訴請求については,売掛金の返還の限度で認容し,その余の反訴請求を棄却する判決を言い渡した。
ウ取締役解任請求訴訟被控訴人Y1は,東京地方裁判所に対し,平成17年,控訴人オーベル,被承継人及び控訴人X1を被告として,被承継人及び控訴人X1について控訴人オーベルの取締役を解任することを求める訴え(平成17年(ワ)第7086号。以下「別件取締役解任請求訴訟」という。)を提起した。
東京地方裁判所は,平成18年9月26日,上記事件について,被控訴人Y1の請求を棄却する判決を言い渡し,同被控訴人は控訴したが,東京高等裁判所は,平成19年4月26日,控訴を棄却する判決を言い渡し,被控訴人Y1は上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成19年9月21日,上告を棄却し,上告受理申立てを受理しないとの決定をした。
エ賃料支払差止請求訴訟被控訴人Y1は,東京地方裁判所に対し,平成17年,被承継人を被告として,株主の取締役に対する違法行為差止請求権に基づき,控訴人オーベルから被承継人及び有限会社ラーラアヴィスに対する賃料支払の差止めを求める訴え(平成17年(ワ)第13377号)を提起した。
東京地方裁判所は,平成18年9月26日,上記事件について,被控訴人Y1の請求を棄却する判決をし,被控訴人Y1は控訴したが,東京高等裁判所は,平成19年7月18日,被控訴人Y1の控訴を棄却する判決を言い渡した。
オ特別背任罪による告発被控訴人Y1は,警視庁に対し,平成16年1月ころ,被承継人を商法上の特別背任罪で告発したが,いったん同告発を取り下げ,亀有警察署に対し,平成17年3月3日,同内容の告発をしたが,被承継人は,平成18年12月22日,同告発に係る被疑事件について,不起訴処分を受けた。
カ放火罪による告発控訴人オーベルの吉川工場は,平成9年3月5日,火災により焼失した。
Gは,吉川警察署に対して,平成18年8月ころ,上申書を提出して,被承継人を上記火災に係る放火の罪で告発した。
(4)文書送付行為以下の事実は,当事者間に争いのない事実のほか,甲16ないし19によって認められる。
ア本件文書の送付被控訴人Y1及び同Y2は,Cに対し,同人あての平成15年7月20日付け書簡(以下「本件文書1」という。)を送付した。
被控訴人Y1は,B及びCに対し,同人らあての平成15年12月11日付け書簡(以下「本件文書2」という。)を送付した。
被控訴人Y1は,Bに対し,同人あての平成17年3月28日付け書簡(以下「本件文書3」という。)を送付した。
被控訴人Y1は,D,E及びFに対し,同人らあての平成17年3月28日付け書簡(以下「本件文書4」といい,本件文書1ないし4の送付行為を「本件文書送付行為」という。)を送付した。
イ本件文書の文言本件文書1ないし4には,別紙「名誉毀損文言」記載のとおりの文言が含まれている。
(5)株主総会における発言以下の事実は,当事者間に争いがない。
ア被控訴人Y1の発言被控訴人Y1は,被承継人に対し,平成19年11月8日開催の控訴人オーベルの株主総会(以下「本件株主総会」という。)において,別紙「Y1発言」記載1(1)ないし(18)及び2(1)ないし(4)のとおりの発言(以下「本件発言1」という。)をした。
イ被承継人及び控訴人X1の発言被承継人は,被控訴人Y1に対し,本件株主総会において,別紙「A発言」記載1ないし6のとおりの発言(以下「本件発言2」という。)をし,被承継人及び控訴人X1は,被控訴人Y1に対し,本件株主総会において,別紙「A及びX1発言」記載1ないし5のとおりの発言(以下「本件発言3」という。)をした。
5本件訴訟の争点当審における本件訴訟の争点は,下記のとおりである。
(1)不正競争防止法に基づく損害賠償請求ア不正競争防止法2条1項13号に基づく請求について(ア)争点1-1被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項13号該当行為の有無(イ)争点1-2損害(ウ)争点1-3被控訴人Y1及び同Y2に対する請求の可否イ不正競争防止法2条1項14号に基づく請求について(ア)争点2-1被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項14号該当行為の有無(イ)争点2-2控訴人オーベルと被控訴人サンベストの間の競争関係の有無(ウ)争点2-3損害(エ)争点2-4Y1及びY2に対する請求の可否(2)不当訴訟ア争点3-1本件訴訟提起行為の違法性の有無イ争点3-2故意又は過失の有無ウ争点3-3損害(3)本件文書送付行為による名誉・信用毀損ア争点4-1本件文書送付行為の違法性の有無イ争点4-2故意又は過失の有無ウ争点4-3損害(4)本件発言1による名誉毀損ア争点5-1違法性の有無イ争点5-2故意又は過失の有無ウ争点5-3損害(5)本件発言2・3による名誉毀損ア争点6-1違法性の有無イ争点6-2損害第3当事者の主張前記争点に関する当事者の主張は,当裁判所の判断を示す際に,これを摘示することとする。
第4当裁判所の判断1不正競争防止法違反による損害賠償請求(1)被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項13号該当行為の有無(争点1-1)についてア控訴人オーベルの主張控訴人オーベルは,被控訴人サンベストは「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」と表示した塗料をケーヒンや東邦メッキに販売しているところ,これらの塗料は,それぞれザイラン1052及びホスタフロン5875と異なる成分の塗料であるから,被控訴人サンベストによるこれらの塗料についての表示は不正競争防止法2条1項13号にいう「商品の原産地,品質,内容,製造方法,用途若しくは数量…について誤認させるような表示」であり,被控訴人サンベストによるこれらの塗料についての表示行為及び販売行為は同号の不正競争行為に該当すると主張するので,この点について検討する。
イ控訴人オーベル及び被控訴人サンベストの取引状況以下の事実は,当事者間に争いのない事実のほか,甲40(添付資料5),61,71ないし74,乙32及び弁論の全趣旨によって認められる。
(ア)株式会社ケーヒン株式会社ケーヒン(以下「ケーヒン」という。)は,本田技研工業株式会社系列の会社である。
控訴人オーベルとケーヒン(ただし,当時の商号は「株式会社京浜気化器」であった。)は,昭和56年,自動車部品取引に関する基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結し,控訴人オーベルは,同契約に基づいて,コーティング加工をした自動車部品をケーヒンに納入していた。
ケーヒンのスロットルシャフトについてのフッ素樹脂コーティング加工の仕様書には,昭和56年ころから,塗料としてザイラン1052を使用することが記載されている。
また,ケーヒンのバキュームピストンについてのテフロンコーティング加工の仕様書には,昭和57年ころから,塗料としてホスタフロン5875を使用することが記載されている。
控訴人オーベルは,岡畑興産からザイラン1052を購入し,これを自動車部品のフッ素樹脂コーティング加工に使用し,加工済みの自動車部品をケーヒンに納入するとともに,ヘキスト社からホスタフロン5875を,同社がホスタフロン5875の製造を中止した後はワイルバーガー社からグレブロン1211を購入するなどして,自動車部品のテフロンコーティング加工に使用し,加工済みの自動車部品をケーヒンに納入していた。
また,同控訴人は,ケーヒンに対して,平成16年8月まで,ザイラン1052やホスタフロン5875(ただし,ホスタフロン5875の製造が中止された後はこれと同等のものであるザイラン1075及びグレブロン1211を使用した塗料)を販売していた。
(イ)東邦メッキ株式会社東邦メッキ株式会社(以下「東邦メッキ」という。)は,自動車部品等の塗装,コーティングを業とする会社であり,ケーヒンの下請けであったところ,控訴人オーベルと東邦メッキは,昭和57年9月28日,東邦メッキがケーヒンに納入するスロットルシャフト,チョークシャフト,リンクシャフト,バキュームピストン等の自動車部品のコーティングに関し,控訴人オーベルが東邦メッキにノウハウを提供すること等を内容とする契約(以下「本件技術提携契約」という。)を締結した。
同契約においては,控訴人オーベルが東邦メッキに対して提供するコーティング装置に使用するコーティング材料等について,「本契約の精神に基き別途取決めるものとする。」とされていた。
控訴人オーベルは,東邦メッキに対して,平成16年11月まで,本件技術提携契約に基づいてザイラン1052を販売し,東邦メッキはこれを使用してコーティング加工を行った自動車部品をケーヒンに納入していたが,上記第2の4「前提となる事実関係」(1)ウのとおり,三洋商事が控訴人オーベルの傘下に入ってからは,三洋商事がザイラン1052を販売していた。
また,被控訴人サンベストは,東邦メッキに対し,平成17年1月から同18年7月まで,被控訴人塗料1を少なくとも毎月40kg,被控訴人塗料4を少なくとも毎月20kg,それぞれ販売した。
なお,同被控訴人は,平成18年8月以降は,被控訴人塗料1及び4に代えて,「SBC」の後に番号を付した名称の塗料を東邦メッキに販売した。
ウザイラン1052及びホスタフロン5875によるコーティング上記イの事実並びに甲3の1ないし8,甲40,71ないし74,104及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
控訴人オーベルは,ザイラン1052を使用したスロットルシャフトのフッ素樹脂コーティングやホスタフロン5875を使用したバキュームピストンのテフロンコーティングなどの自動車部品のコーティングについての優れた技術を有していたため,昭和56年にケーヒン(当時の商号は株式会社京浜気化器)との間で本件基本契約を締結し,塗料によるコーティングを施した自動車部品を納入していた。
そして,ケーヒンの下請である東邦メッキとの間で締結された本件技術提携契約は,その後のコーティング塗料の取引の状況に照らすと,コーティング技術についてのノウハウを提供することを条件として,コーティングに使用する塗料については,控訴人オーベルを通じて購入することを内容とするものであったと理解することができるのであり,控訴人オーベルとケーヒン及び東邦メッキは,その後の長年にわたる取引を通じて,オーベルが有する自動車部品のコーティング技術に関すして安定した信頼関係を構築してきたものということができる。
また,本件基本契約及び本件技術提携契約が締結された当時,コーティングについてのケーヒンの仕様書においては,スロットルシャフトのフッ素樹脂コーティングの「コーティング材の材質」又は「フッ素樹脂」について,「XYLAN1052」又は「XYLAN-1052」と記載され,バキュームピストンのテフロンコーティングの「コーティング材の材質」として「ホスタロン(判決注:ホスタフロンの誤記であると認められる。)-5875」と記載されているが,上記仕様書には,被コーティング部品の機械加工精度,下地処理,コーティング,防錆処理,使用条件などについて定められているほか,「コーティング後の部品仕様」又は「コーティング後の部品の特性」に関して,外観,皮膜硬度,耐ガソリン・アルコール性,耐蝕性,耐湿性,耐摩耗性,皮膜の密着性などの具体的な要求特性が定められている。
さらに,ケーヒンにおける平成8年から同12年当時のスロットルシャフトの設計図面において,表面処理について「ザイラン1052」と記載される一方,既にホスタフロン5875の製造が中止された後であることに争いのない平成9年及び同12年当時のスロットルバルブの図面並びに平成12年及び同15年当時のバキュームピストンの図面に「ホスタフロン5875」を意味すると認められる記載(「ホススターフロン5875」,「ホスターフロン5875」,「フォスターフロン5875」及び「フォスタフロン5875」)がある。
加えて,控訴人オーベルは,「ザイラン1052」との名称で納入している塗料についてはザイラン1052とPAIクリアーを特定の比率で混合し,「ホスタフロン5875」との名称で納入している塗料についてはグレブロン1211とザイラン1075を特定の比率で混合して製造しているところ,同製造は,撹拌,粘度測定,混合,ろ過等の複数の工程を経て行われるものである。
エケーヒン及び東邦メッキに対する塗料の販売上記ウで認定したところによると,当初本件基本契約に基づいてコーティング加工した自動車部品をケーヒンに販売していた控訴人オーベルが,下請の東邦メッキに対して,コーティング技術についてのノウハウを提供する一方,塗料を販売するようになった経過を経て,その後,控訴人オーベルがケーヒン及び東邦メッキとの間で技術面における信頼関係を構築してきたのであり,このような信頼関係は特殊な部品であるスロットルシャフトやスロットルバルブのコーティング加工技術及びその前提となるコーティング塗料の調整に関するオーベルのノウハウを基礎とするものであって,上記のような経過に照らし,オーベルはこのようなノウハウを専らケーヒンとその系列会社及び東邦メッキに対してのみ提供していたということができる。
他方,上記ウで認定したとおり,控訴人オーベルが納入している塗料が多くの工程を経て混合及び調整されたものであって,控訴人オーベルとケーヒン及び東邦メッキの間においては,納入される塗料の名称自体ではなく,塗料によるコーティングが最終的に要求特性を満たすことが重要であると考えられることからすると,東邦メッキとの関係において,控訴人オーベルに求められていたのは,単に特定の塗料を間違いなく納入するというレベルのことではなく,当該塗料を使用した結果,コーティング後の部品が仕様書の記載において要求される特性を満たすようにすることであったと理解しなければならない。
そして,前記第2の4「前提となる事実関係」(1)のとおり,被控訴人サンベストは,控訴人オーベルにおけるこのような塗料についての取引を熟知した被控訴人Y1が経営する会社であるから,ケーヒン及び東邦メッキがザイラン1052及びホスタフロン5875を使用したコーティング加工において求める上記のような内容についても十分理解していたと推認され,前記第2の4「前提となる事実関係」(5)のとおり,被控訴人Y1が控訴人オーベルの社長代行及び三洋商事の取締役を解任されたことについて訴訟に至っている経過に照らすと,ケーヒン及び東邦メッキにおいても,被控訴人サンベストが,被控訴人Y1の下で,従来の控訴人オーベルとの取引の内容を踏まえて営業活動を行っていることは十分に認識していたものと推認される。
そうすると,被控訴人サンベストがケーヒン及び東邦メッキに対して被控訴人塗料1及び4を納入していたとしても,ケーヒンや東邦メッキは,これらの塗料について,従前の控訴人オーベルとの取引と同様,一定の混合及び調整が行われていることを前提として取引を行っていたものであり,平成17年1月以降,被控訴人サンベストがケーヒンや東邦メッキに対して継続的に塗料を販売していることからすると,被控訴人サンベストによって納入された塗料を使用して加工された自動車部品はケーヒンや東邦メッキによる検査によって仕様書記載の要求特性を満たすと認められるものであったと推認することができる。
オ以上によると,ケーヒン又は東邦メッキにとっては,控訴人オーベルのみならず被控訴人サンベストも,実質的には,継続的な取引において構築されてきた信頼関係を基礎として,求められる技術的レベルについて共有することができる極めて限られた取引先であるということができるのであり,具体的な商品である塗料について,特定の自動車部品に使用したときの要求特性を達成するためにノウハウに属する一定の調整が必要となることについても共通認識が形成されていたということができる。このような状況において,被控訴人サンベストが,ザイラン1052及びホスタフロン5875をベースとして,ケーヒン及び東邦メッキにおけるコーティング加工後に仕様書記載の要求特性を満たすようにこれに一定の塗料を混合し,調整を施したものについて,「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」との名称を付したまま,これらを被控訴人塗料1及び4として,ケーヒン及び東邦メッキに対して販売したとしても,これによってケーヒン又は東邦メッキにおいて,そのように調整済みの「ザイラン1052」及び「ホスタフンロン5875」として納入を受けるのが当然で,反対に,ケーヒン又は東邦メッキが自ら調整する前提で,被控訴人サンベストが,その仕入れた「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」を調整未了の状態で納入することは予定されていないから,ケーヒン及び東邦メッキにおいて,その品質等を誤認する余地はないのであり,上記各名称をそのまま付したとしても,これをもって,不正競争防止法2条1項13号にいう「商品の原産地,品質,内容,製造方法,用途若しくは数量…について誤認させるような表示をし」たと認めることはできないというべきである。また,表示の点において「ザイラン1052」又は「ホスタフロン5875」と紛れるおそれのない「SBC」の後に番号を付した名称を表示することが,同号にいう「表示」をしたものと評価することができないことは当然である。
カこの点に関し,控訴人オーベルは,被控訴人サンベストがケーヒン又は東邦メッキに納入したザイラン1052及びホスタフロン5875にはFe成分が多量に含まれていることから,以上の調整にとどまらず,安価なグレブロン1215を混入させているかのように主張する。
しかしながら,控訴人オーベルがその証拠として提出する甲4の1ないし甲13によっては,その検査対象である塗料が被控訴人サンベストによって「ザイラン1052」又は「ホスタフロン5875」の名称を付されて東邦メッキに納入された塗料そのものであると認めることができないばかりか,上記説示したとおり,被控訴人サンベストが納入したザイラン1052及びホスタフロン5875がケーヒンや東邦メッキによる検査によって仕様書記載の要求特性を満たすと認められるものであったと推認されるのであり,その意味において,被控訴人サンベストの行為が不正競争防止法2条1項13号所定の行為であると認めることはできないというべきであるから,控訴人オーベルの主張を採用することはできない。
キしたがって,被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項13号該当行為を認定することはできない。
(2)被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項14号該当行為の有無(争点2-1)についてア控訴人オーベルの主張と被控訴人らの反論控訴人オーベルは,被控訴人Y1と同Y2とは共謀して,別紙営業誹謗行為一覧表記載のとおり,同一覧表の「対象会社・個人名」欄記載の取引先に対し,同一覧表の「中傷の内容」欄記載のとおりの事実(ただし,?〜?は,?オーベルは潰れる,?Aは横領犯,?社長の逮捕は近い,という内容をそれぞれ意味する。)を告知し,控訴人オーベルの信用を毀損したと主張する。
これに対して,被控訴人らは,被控訴人Y1は,控訴人オーベルの社長代行及び三洋商事の代表取締役を解任されたため,取引先を訪問して退任の挨拶をした際,不当解任であることのほか,今後は,被控訴人Y1が控訴人オーベルの役員として技術協力はできなくなったことを述べたことはあるが,控訴人オーベル主張に係るような事実を告知したことはないと主張して争っている。
なお,別紙営業誹謗行為一覧表には,「対象会社・個人名」欄に「台湾ケーヒン」,「インドケーヒン」及び「その他のケーヒン海外子会社(タイ・南京など)」との記載があるが,控訴人オーベルは,被控訴人Y1及び同Y2の行為について,上記一覧表記載の営業誹謗行為がいずれも日本国内におけるものであり,不正競争防止法4条が適用されることを前提として本件訴訟を提起していると解されるので,いずれも日本国内における行為として,以下,その有無について検討する。
イ控訴人オーベル提出の証拠とその証明力控訴人オーベルは,その主張を裏付ける証拠として,控訴人オーベルの従業員の陳述書(甲27,80),被承継人の陳述書(甲28,29,37〜39,81),行政書士の陳述書(甲36),保険外交員の陳述書(甲70)並びにケーヒンの部長,東邦メッキの社長及び岡畑興産の従業員の発言の反訳書面(甲75〜77)を提出する。
しかしながら,上記書証のうち,控訴人オーベルの従業員及び被承継人の陳述書は,第三者によるものと評価することはできない。また,行政書士の陳述書はケーヒンの部長から伝聞した内容を確認した旨の陳述書であって,控訴人オーベル主張に係る事実の告知があったことについての直接証拠ではない。そして,保険外交員及び東邦メッキの社長は,一方で陳述書の内容を一部否定する確認書(乙13,29)に署名押印しているほか,日研工業株式会社の社長,台湾ケーヒンの従業員,インドケーヒンの元従業員及びホンダ技研朝霞研究所の研究員も,控訴人オーベル主張に係る事実の告知を受けたことはない旨の確認書(乙15〜18)に署名押印している。
以上を踏まえると,ケーヒンの部長を始めとする上記事実の告知を受けたとされる者についての証人尋問の申請が一切ない本件において,上記書証の証明力を認めることは困難であって,これらをもって控訴人オーベル主張に係る営業誹謗行為が立証されたとして,同事実を認定することはできないといわざるを得ない。
この点に関して,控訴人オーベルは証人尋問の申請が困難であった事情があったと主張するが,そのような事情があるからといって,上記書証の証明力を認め得るものではなく,他に上記事実の告知を認めるに足りる証拠はない。
したがって,被控訴人サンベストによる不正競争防止法2条1項14号該当行為は,これを認定することができない。
(3)小括以上によると,その余の点(争点1-2及び3,争点2-2ないし4)について判断するまでもなく,控訴人オーベルの不正競争防止法に基づく本訴請求1及び2はいずれも理由がない。
2不当訴訟(1)本件訴訟提起行為の違法性の有無(争点3-1)についてア被控訴人サンベスト及び同Y1の主張被控訴人サンベスト及び同Y1は,本訴提起行為のうち,不正競争防止法に基づく請求に係る部分は不当訴訟の提起であると主張するので,この点について検討する。
イ不当訴訟と認められるための要件訴えの提起は,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り,相手方に対する違法な行為となる(最高裁昭和60年(オ)第122号昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁)。
控訴人オーベルは,本訴提起時において,被控訴人らによる被控訴人塗料の製造・販売行為は,不正競争防止法2条1項1号及び同項13号に該当し,被控訴人らが控訴人オーベル及びその代表取締役である1審原告A(被承継人)を誹謗・中傷する行為が同法2条1項14号に該当すると主張して,被控訴人らに対し,同法3条に基づいて本件顧客への営業行為及び被控訴人塗料の本件顧客への輸出・譲渡の差止めを求めるとともに,これらの不正競争行為による損害として,被控訴人らに対し,同法4条に基づいて5387万2500円及び平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたことは明らかである。
しかしながら,上記不正競争防止法に基づく請求に係る訴えの提起が違法な行為であるということができるためには,不正競争防止法に基づく差止請求権及び損害賠償請求権の少なくともいずれかについて,その主張が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者である控訴人オーベルにおいて,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのに,あえて訴えを提起したなどの事情が認められる必要がある。
そこで,以下,そのような事情が認められるか否かについて上記請求ごとに検討することとする。
ウ不正競争防止法2条1項14号に基づく請求控訴人オーベルの不正競争防止法2条1項14号に基づく請求は,被控訴人サンベストによる同号に該当する行為を認定することができないため,理由がないことは上記1(2)のとおりである。
しかしながら,本訴提起時において,控訴人オーベルは,上記1(2)イに掲記したとおりの証拠を提出しており,これらのうち第三者的立場にある行政書士の陳述書(甲36),保険外交員の陳述書(甲70)並びにケーヒンの部長,東邦メッキの社長及び岡畑興産の従業員の発言の反訳書面(甲75〜77)には,被控訴人Y1が控訴人オーベルの取引先であるケーヒン,東邦メッキ及び岡畑興産において,控訴人オーベルがつぶれるなどの事実を告知したことをうかがわせる記載があることが認められるのであって,当該書証の証明力を直ちに認めるのが困難であることは前記説示のとおりであるが,これらの陳述書の作成主体又は反訳書面の発言主体への証人尋問を実施することによって,これらに記載された事実を立証することができた可能性があったことは否定することができない。
そして,前記第2の4「前提となる事実関係」(4)のとおり,被控訴人サンベストが,東邦メッキに対して,被控訴人塗料1(ザイラン1052)及び4(ホスタフロン5875)を販売していたことが認められ,控訴人オーベルと被控訴人サンベストとは塗料の販売について競争関係にあったと認められるのであるから,少なくとも,本件訴訟提起時において,不正競争防止法2条1項14号に基づく差止め及び損害賠償の請求が事実的,法律的根拠を欠くものであったとまでは認められない。
エ不正競争防止法2条1項13号に基づく請求控訴人オーベルの不正競争防止法2条1項13号に基づく請求は,被控訴人サンベストによる同号に該当する行為を認定することができないため,理由がないことは,上記1(1)のとおりである。
しかしながら,上記ウのとおり,被控訴人サンベストは,東邦メッキに対して,被控訴人塗料1及び4を販売していたことが認められるところ,当裁判所は,これらの塗料に「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」との表示を付し,販売する行為が不正競争防止法2条1項13号に該当する行為でないと判断したが,それは,上記のとおり,控訴人オーベルとケーヒン及び東邦メッキとの取引の経過及び特定の自動車部品をコーティング加工するための塗料に求められる特性等について検討した結果であって,このような事情の検討をするまでもなく明らかに理由がないと判断するものではないから,同号に基づく差止め及び損害賠償の請求が事実的,法律的根拠を欠くものであったとまでは認められない。
この点に関し,被控訴人サンベスト及び同Y1は,控訴人オーベルが,被控訴人塗料1及び4が溶剤以外のものを添加している点をとらえて,このような塗料に「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」と表示することが不正競争防止法2条1項13号に該当することを前提とする主張をしながら,控訴人オーベル自身が溶剤以外のものを添加した塗料を「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」として販売しているとして,控訴人らの本訴提起が不当訴訟であることが裏付けられるかのように主張する。
しかしながら,本訴提起時において,控訴人オーベルは,被控訴人塗料1及び4はザイラン1052及びホスタフロン5875にグレブロン1215を大量に混入させた塗料であるにもかかわらず,これらの塗料に「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」と表示していることが不正競争防止法2条1項13号に該当すると主張していたものであり,被控訴人塗料1及び4に溶剤以外のものが添加されていること自体を同号に該当すると主張していたものではなく,同控訴人もその販売する塗料に溶剤以外のものを添加していることはその前提になっていたと解されるのであるから,被控訴人サンベスト及び同Y1の上記主張は失当といわなければならない。
そして,控訴人オーベルの主張に係る事実が認められないのは,上記のとおり,提出された証拠(甲4の1〜甲13)のみによっては証明が不十分であったという理由によるものであるところ,同証拠に係る塗料の入手先は控訴人オーベルの取引先であるケーヒンであって,同社は被控訴人サンベストの取引先でもあるため,一方当事者である控訴人オーベルに対する更なる協力を得にくいなどの事情が存在する可能性があり,上記提出に係る証拠が控訴人オーベルによってねつ造されたものであるなどの事情を認めるに足りる証拠もないのであるから,この観点からしても,控訴人オーベルの同号に基づく差止め及び損害賠償の請求が事実的及び法律的根拠を欠くものであったとまでは認められない。
オ不正競争防止法2条1項1号に基づく請求控訴人オーベルの不正競争防止法2条1項1号に基づく請求は,上記エの請求と選択的併合の関係にあるところ,同請求については,原判決において,控訴人オーベルにおいて,「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」を自己の商標として使用していたことを認めるに足りる証拠はないなどとして棄却され,同控訴人は,同請求を棄却されたことについては控訴していないところ,少なくとも,不正競争防止法2条1項1号に基づく同請求において,「ザイラン1052」及び「ホスタフロン5875」が自己の商品等表示であるとの事実は,自己の商品等表示周知性及び対象物に係る商品等表示類似性を主張立証する前提となる基本的事実であるといわなければならないことからして,この点について何ら有効な立証を行うことができない状態で訴えが提起された同請求は,その事実的,法律的根拠が薄弱なものであったといわざるを得ない。
しかしながら,上記のとおり,不正競争防止法2条1項13号及び14号に基づく請求に係る訴えの提起が不当訴訟に当たるとはいえない本件においては,これらの請求に係る訴えについては応訴しなければならない筋合いのものであり,同項13号に係る請求と選択的併合関係にある同項1号に基づく請求に係る訴えに対する被控訴人サンベスト及び同Y1の応訴の負担は,実質的に存在しないか極めて少ないものであることからすると,本件において,同項1号に基づく請求に係る訴えの提起が,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に当たるとまでいうことはできない。
差止請求の範囲と請求の相手方の選択被控訴人サンベスト及び同Y1は,不正競争防止法に基づく差止請求の範囲が過大であること及び同請求の相手方として被控訴人サンベストのみならず同Y1を加えていることから,過大な部分の請求に係る訴え及び被控訴人Y1に対する訴えの提起は不当訴訟であると主張する。
そこで,まず,差止請求の範囲についてみると,その範囲は差止めの必要性との関係で判断されるべき事項であって,訴訟における主張立証の状況によっては請求の変更によって対応することができる性質のものであり,上記ウないしオのとおり,訴えの提起自体が不当訴訟の提起として不法行為となるものでない本件においては,訴状に記載された差止請求の範囲が適切でなかったことによって,訴えの提起自体が不法行為となるものではないというべきである。
次に,請求の相手方についてみると,会社に対する差止請求が認容されれば,当該会社の機関である代表者も会社に対する当該判決の効力を尊重して行動することが要請されるのであるから,会社に対して請求すれば,代表者個人に対して請求をする必要はなく,会社に対する訴えの提起が不当訴訟ということができないとしても,代表者個人に対して訴えを提起した行為が当然に不当訴訟とならないということはできない。しかしながら,本件においては,上記1のとおり,被控訴人Y1が,被控訴人サンベストの代表取締役として,被控訴人塗料1及び4の製造・販売に深く関与していただけでなく,前記第2の4「前提となる事実」(3)のとおりの過去の紛争の経過において,控訴人オーベルや被承継人を被告として複数の訴えを提起したり,被承継人を特別背任罪で告発するなど,一連の紛争の拡大について主体的に関わってきたこと,本件においても,反訴の提起及びその後の請求の追加や拡張を行うなかで,控訴人オーベル及び被承継人(控訴人X1ら)と被控訴人サンベスト及び同Y1との間の紛争という様相を呈していることなどを総合的に考慮すると,被控訴人塗料の製造・販売等の差止め及び損害賠償を求める不正競争防止法に基づく請求について,被控訴人サンベストのほか,被控訴人Y1をも被告として訴えを提起したことが,事実的,法律的根拠を欠くものとまでいうことはできない。
したがって,差止請求の範囲及び請求の相手方から当該請求に係る訴えが不当訴訟であるとの被控訴人サンベスト及び同Y1の主張を採用することはできない。
(2)小括以上によると,本訴提起行為のうち不正競争防止法に基づく請求に係る部分が不当訴訟の提起であるということはできないから,その余の点(争点3-2及び3)について判断するまでもなく,反訴請求1ないし4はいずれも理由がない。
3本件文書送付行為による名誉・信用毀損(1)本件文書送付行為の違法性の有無(争点4-1)及び故意又は過失の有無(争点4-2)についてア当事者の主張(ア)控訴人らの主張被控訴人Y1及び同Y2は,共謀して本件文書送付行為を行ったものであり,同行為により,控訴人オーベル及び被承継人の名誉が毀損された。
(イ)被控訴人Y1及び同Y2の主張本件文書1ないし4はいずれも名宛人への親書であって,他の人物が読むことを予定したものではないし,本件文書送付行為は,控訴人オーベルや三洋商事の株主である被控訴人Y1及び同Y2が,株主である名宛人に対して必要な情報を伝達するために行ったものであるから,公共の利害に関する事実に係り,公益を図る目的によるものである。
また,本件文書1ないし4に記載された事実は真実であるか,少なくとも被控訴人Y1及びY2が真実であると信じたことについて相当の理由がある。
さらに,被控訴人Y1及び同Y2は本件文書1を,被控訴人Y1は本件文書2ないし4を送付したが,本件文書2ないし4の送付について,被控訴人Y2は同Y1と共謀していない。
イ本件文書に記載された事実本件文書1ないし4に記載された文言は,別紙「名誉毀損文言」記載のとおりであり,本件文書1には,?被承継人が控訴人オーベル及び三洋商事を私物化し,背任行為を行ってきたこと及び?控訴人オーベルの技術が低下していること,同2には,?被承継人が控訴人オーベルの従業員に命じて塗料仕入代金をごまかし,これにより得た資金を横領したこと及び?控訴人オーベルは技術低下や水増し請求塗料の不正仕入等のために経営状態が悪化してきたこと,同3には,?被承継人は,控訴人オーベルを私物化し,横領又は特別背任等の犯罪行為により7000万円以上の損害を控訴人オーベルに与えているにもかかわらず,これをGの犯行にすり替えて告訴するなどして,自己の犯罪を隠蔽したこと及び?被承継人が近々逮捕されること,同4には,?被承継人は,平成9年から長期間にわたって横領を行っていたこと,?横領の方法は,被承継人がHに架空請求を命じ,これを現金で受け取るというものであったこと及び?被承継人は自己の横領行為を隠蔽し,控訴人オーベルを乗っ取るという計画に基づいて被控訴人Y1を追い出したこと,以上の事実がそれぞれ記載されている。
本件文書1ないし4に摘示された以上の事実は,いずれも控訴人オーベル及び被承継人の社会的評価を低下させるものであると認められる。
そして,本件文書1は,被控訴人Y1及び同Y2の連名による文書であり,被控訴人Y1が控訴人オーベルの社長代行及び取締役を解任され,その後設立した被控訴人サンベストの社長となるとともに,被控訴人Y2は同社の監査役に就任しているという関係があることに加え,同2ないし4に記載された事実は,同1記載の事実と重なるものであって,これらをより詳細に記載したものであることからすると,被控訴人Y1名義の本件文書2ないし4の送付は,被控訴人Y1及び同Y2の共謀によるものであると推認される。
ウ違法性及び故意又は過失事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最高裁昭和38年(オ)第815号昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁)。
(ア)公共の利害と公益目的本件文書送付行為は,控訴人オーベルの株主である被控訴人Y1及び同Y2が同じく株主である名宛人に対して行ったものであって,その内容は控訴人オーベルの代表者である被承継人による横領の事実等を摘示することにより被承継人による会社の私物化を告発する内容であり,これらの内容が真実であるとすれば,控訴人オーベルの株主にとって,その経営の在り方を検討するための重要な情報となるべきものであるから,来るべき株主総会等の機会に備えて,控訴人オーベルの株主のために,情報を提供することを目的とするものと解することができる。
そうすると,本件文書送付行為は,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったものと認められる。
(イ)真実性の証明前記第2の4「前提となる事実関係」(3)アのとおり,控訴人オーベルのG及びHに対する同人らの横領行為による損害賠償請求訴訟については,Hとの間で和解が成立し,Gに対する請求を全額認容する判決が確定しているが,同人らによる横領行為があったかどうかはともかくとして,これらの横領行為が被承継人によって命じられたものであるなど,被承継人による横領行為があったとの事実が真実であることを認めるに足りる証拠はない。
また,被承継人において背任行為などその他の犯罪行為を行っていたとの事実及び背任行為や上記の横領行為によって会社を私物化していたか,私物化しようとしていたとの事実についても,これらが真実であることを認めるに足りる証拠はない。
さらに,被承継人が本件文書3の作成日である平成17年3月28日から遠くない時期に逮捕されたとの事実についても認定することはできない。
したがって,本件文書1ないし4に記載された上記イ記載の事実については,いずれもその重要な部分において真実であることの証明があったとはいえない。
(ウ)真実と信ずるについての相当の理由被控訴人Y1及び同Y2は,別件横領関係訴訟において審理の対象となったGによる横領行為が存在したことを前提として,同横領行為が長期間にわたり,公然と行われたものであるから,社長として経理書類の押印していた被承継人が全く関知しないというのは不自然であり,被承継人は同横領行為について告訴した平成14年2月直後に被控訴人Y1を控訴人オーベルから追放し,その後告訴を取り下げて事件をうやむやにしたことから,被控訴人Y1及び同Y2において被承継人が横領行為を行ったという事実を真実と信ずるについての相当の理由があったと主張する。
しかしながら,上記主張に係る事実のうち,Gによる横領行為の存在を除く部分については,いずれも推測に基づくものというほかなく,結局被承継人が横領行為に関与したという事実を裏付ける証拠は何ら存在しないのであるから,被控訴人Y1及び同Y2の主張は失当である。
また,被控訴人Y1及び同Y2は,同Y1による被承継人に対する告発が受理され,捜査が進んでいたことから,被承継人が逮捕され,同人の横領行為が明らかになると信じたとも主張するが,告発が受理され,捜査が行われることと,告発に係る事実が真実であるかどうかとは関係がないから,被控訴人Y1及び同Y2のこの主張も失当である。
さらに,被控訴人Y1及び同Y2は,控訴人オーベルの平成7年から同20年までの決算関係書類について,同一期中において複数の決算書が作成されたことがあること,合計残高試算表と決算報告書の記載が一致しない期があるなど不整合な記載があることから,被控訴人Y1及び同Y2において被承継人による横領行為があったとの事実を真実と信ずるにつき相当の理由があったと主張するが,同主張に係る事実が,決算書の記載に不整合があることを超えて,同不整合が被承継人による横領行為の結果であることを示すものと解することは到底できないから,被控訴人Y1及び同Y2のこの主張も失当である。
そして,本件文書送付行為当時において,被承継人による横領行為や同横領行為等による被承継人による控訴人オーベルの私物化の事実,同横領行為等を理由として被承継人が逮捕されるという事実について,これらを具体的に示唆する客観的な証拠はないのであるから,被控訴人Y1及び同Y2において,本件文書1ないし4に記載された上記イの事実が真実であると信ずるについての相当の理由があったとは認められない。
なお,本件文書送付行為の後,本件発言1の当時においては,後記説示のとおり,その間に,別件横領関係訴訟の判決及び別件取締役解任請求訴訟におけるGの証言があったため,被控訴人Y1には,被承継人による横領行為の事実を真実であると信ずるについて相当の理由があったということができるが,本件文書送付行為当時には,そのような事情がなく,以上の判断が妨げられることはない。
(エ)したがって,本件文書送付行為について,違法性を阻却すべき事情は認められず,被控訴人Y1及び同Y2において故意又は過失がなかったとすべき事情も認められない。
(2)損害(争点4-3)本件文書送付行為は4回にわたって継続的に行われたものであり,本件文書1ないし4の記載内容に基づいて,控訴人オーベル及び被承継人の社会的評価を低下させるものであるが,その送付先は控訴人オーベルの株主であり,かつ,社長であった被承継人の親族関係にある者に限定されていることからすると,控訴人オーベル及び被承継人の社会的評価の低下による被害が甚大であるとまでいうことはできないところ,本件文書送付行為による控訴人オーベル及び被承継人の損害の額としては,それぞれについて各15万円ずつ(ただし,承継人らの内訳については,控訴人X1,同X2及び同X3について,それぞれ7万5000円,3万7500円及び3万7500円)と認めるのが相当であり,控訴人オーベル及び承継人らが負担する弁護士費用のうち,本件文書送付行為と相当因果関係のある損害としては,控訴人オーベル及び承継人らについて,それぞれ1万5000円ずつ(ただし,承継人らの内訳については,控訴人X1,同X2及び同X3について,それぞれ7500円,3750円及び3750円)と認めるのが相当である。
(3)小括以上によると,本訴請求3及び同4については,それぞれ被控訴人Y1及び同Y2に対して33万円及びこれに対する平成18年10月29日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において認容されるべきである。
4本件発言1ないし3による名誉毀損(1)当事者の主張控訴人X1らは,本件株主総会における被控訴人Y1の本件発言1は,被承継人の名誉を毀損するものであると主張し,被控訴人Y1は違法性及び故意又は過失がないとしてこれを争う。
他方,被控訴人Y1は,本件株主総会における被承継人による本件発言2及び同人及び控訴人X1による本件発言3は同被控訴人の名誉を毀損するものであると主張し,控訴人X1らは違法性がないとしてこれを争う。
(2)各発言において摘示された事実本件株主総会における本件発言1ないし3の内容については,当事者間に争いがないところ,甲83,乙31及び弁論の全趣旨によると,本件株主総会への出席者は,被承継人,控訴人X1,被控訴人Y1及び株主の代理出席者であるIの4名であったことが認められる。
ア本件発言1本件発言1は,その内容から,被承継人がG及びHと組んで横領行為を行うなどして,控訴人オーベルを私物化しているとの事実を摘示するものであり,この事実の摘示は被承継人の社会的評価を低下させるものであると認められる。他方,本件発言1には放火に関するものも含まれるところ,ここでは,吉川工場の放火事件については時効になったとの事実を摘示するものと認められるほか,被承継人が警察官を脅して捜査を中止させようとしたことについても触れられているが,前者については,何ら被承継人の社会的評価を低下させるものではないし,後者についてはその趣旨は極めて不明瞭であり,被承継人の社会的評価を低下させるに足りるまとまった事実の摘示と認めることはできない。したがって,本件発言1のうち,更なる検討が必要となるのは,横領に関するもののみである。
イ本件発言2・3本件発言2は,その内容から,被控訴人Y1が横領犯人であるとの事実,あるいは,横領犯人から金銭を受け取っているとの事実を摘示するものであり,これらの事実の摘示は,いずれも被控訴人Y1の社会的評価を低下させるものであると認められる。
また,本件発言3は,その内容から,被控訴人Y1が精神病を患っているとの事実を摘示するものであり,この事実の摘示は被控訴人Y1の社会的評価を低下させるものであると認められる。
(3)本件発言1ないし3の違法性の有無(争点5-1及び同6-1)及び故意又は過失の有無(争点5-2)についてア本件発言1(争点5-1及び2)本件発言1における被承継人がG及びHと組んで横領行為を行うなどして,控訴人オーベルを私物化しているとの事実については,同事実が真実であるとすれば,単に犯罪行為が存在することを意味するのみならず,本件株主総会の出席者にとっては,同事実は会社経営のあり方を検討するための重要な事項となるべきものであって,同事実に係る発言は,本件株主総会の出席者のために,このような情報を提供することを目的として行われたということができるから,本件発言1は,その表現において穏当を欠く点があるものの,なお公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったものということができる。
しかしながら,上記3(1)ウ(イ)のとおり,被承継人による横領行為があったとの事実が真実であることを認めるに足りる証拠はないから,本件発言1に係る事実が真実であったとの証明があるとは認められない。
そして,本件文書送付行為の当時において,上記事実を真実を信ずるにつき相当な理由があったと認められないことは,上記3(1)ウ(ウ)のとおりである。
他方,甲78によると,本件文書送付行為から本件株主総会が開催されるまでの間である平成18年6月27日に,別件取締役解任請求訴訟における口頭弁論期日においてGの証人尋問が行われ,被承継人とHとが横領行為に関わっていた旨が詳細に証言されていることが認められる。同証言は,自らが横領行為に関わったことを示すものではないが,別件横領関係訴訟において,Gに対する請求を全額認容する判決が確定していることは,前記第2の4「前提となる事実関係」(3)アのとおりであるところ,別件取締役解任請求訴訟の原告である被控訴人Y1が,本件株主総会の開催時において,別件横領関係訴訟の判決を踏まえた上,別件取締役解任請求訴訟における横領行為に関するGの詳細な証言に基づいて,被承継人が横領行為に関わっていたと信じることには無理からぬ事情があったともいうことができるから,本件発言1当時の被控訴人Y1には,被承継人による横領の事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったということができる。
したがって,本件発言1については,被控訴人Y1による故意又は過失が否定されるというべきであるから,その余の点(争点5-3)について判断するまでもなく,本訴請求5は理由がない。
イ本件発言2・3(争点6-1)控訴人らは,本件発言2・3は,いずれも4人しか出席していない株主総会における株主間の口論中にされた発言であるから,損害賠償を求めることができるほどの違法性を有しないと主張する。
しかしながら,これらの発言が被控訴人Y1の社会的評価を低下させるものであると認められる以上,これが少数の株主の出席に係る株主総会における発言であるという事情があったとしても,その違法性の程度に影響を与える可能性があることは格別,これらの発言の違法性が阻却されるとまでいうことはできないから,控訴人らの主張は失当である。
他方,控訴人らは,本件発言2・3に係る事実について真実性が証明されているか,真実と信ずるについて相当の理由があるとの主張をするものではない。
したがって,本件発言2・3は,被控訴人Y1の社会的評価を低下させる違法なものであり,これらの発言についての承継人及び控訴人X1の故意又は過失が認められるところ,これらの発言は,本件株主総会における被承継人及び控訴人X1による発言であるから,いずれも株主総会における取締役としての発言であると認められる。
(4)本件発言2・3による被控訴人Y1の損害(争点6-2)本件発言2・3は,いずれも株主総会における取締役の発言であって,その一連の発言行為は被承継人及び控訴人X1による共同不法行為であるということができるが,本件株主総会の出席者は4名と少人数であったことを踏まえ,同発言の内容を考慮すると,これらの発言による被控訴人Y1の損害の額としては,本件発言2について10万円,本件発言3について20万円と認めるのが相当であり,被控訴人Y1が併せて賠償を求める弁護士費用相当の損害のうち,本件発言2・3と相当因果関係のある損害は,それぞれ1万円及び2万円と認めるのが相当である。
(5)小括以上によると,本訴請求5については上記(3)アのとおり理由がなく,反訴請求5ないし7については,反訴請求5について33万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において認容されるべきであり,このうち11万円及びこれに対する平成20年1月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲において被承継人らは,それぞれ控訴人オーベルと連帯支払義務を負い,残部については控訴人オーベル及び同X1が連帯支払義務を負うものであるから,反訴請求6及び7については,この限度(主たる請求に関し,本件発言2に係る分について,控訴人X1,同X2及び同X3がそれぞれ5万5000円,2万7500円及び2万7500円,本件発言3に係る分について,控訴人X1が22万円の限度)において認容されるべきである。
5結論以上の次第であるから,原判決は本判決の主文1項のとおり変更されるべきものである。
追加
(別紙)物件目録1ザイラン10522SBC10523ルブコート202同等品4ホスタフロン58755SBC58756ルブコート206同等品以上(別紙)顧客目録省略以上(別紙)名誉毀損文言1本件文書1(1)「35年間苦労して育て上げた『オーベルの将来』を託した心算の創立者達と貴殿を騙して,Aは三洋まで乗っ取り,完全に両社を私物化」している。(1頁下から11行〜10行)(2)「Aは,オーベルの負債を増やし,技術を捨て,客先や銀行からも見放され,従業員も殆ど新人にしてしまった。」(1頁下から7行〜6行)(3)「然しその後の調査では信じ難いAの背任行為の事実が次々に明らかになってきています。」(2頁14行〜15行)(4)「我々に対する詐欺,横領,人権侵害,名誉毀損などのきわめて悪質な行為」(2頁17行)2本件文書2(1)「AとGとが三洋商事からごまかした塗料仕入れ代金の年度別不正金額は次のようであった。」(1頁の項目2)(2)「これら不正はすべてA社長がHとGに命じてやらせ,大半の資金はA社長が横領した…」(2頁の項目1)(3)「オーベルの経済状態も悪化してきたと聞いている。技術の低下,収益率の低下,水増し請求による石川工業所への垂れ流し,急増した借入金の返済と利息,塗料不正仕入れの発覚による中断,などが原因として考えられる。」(2頁の項目7)3本件文書3(1)「警察から漏れ聞くところでは,Aの逮捕が近いようです。」(1頁10行)(2)「オーベルが横領によって約7千万円以上の被害を受けていたこと」「それが,社長であるAによるものであること(特別背任にあたると警察で言われました)」(1頁12行〜14行)(3)「Gの犯行にすり替えて約2000万円の詐欺横領で2人を告訴し,自己の横領を隠蔽したこと」(1頁16行〜17行)(4)「Hを介した5000万円以上の横領が隠蔽されたこと」(1頁19行〜20行)(5)「Aは自分の悪行は全て他人のせいにする。」(1頁25行)(6)「現金40万円をA自身が着服という社長にあるまじき浅ましい犯行をした事。」(1頁下から5行)(7)「(Aは金に汚いが,自己防衛の為には会社の金をばらまく)。」(2頁7行〜8行)(8)「しかし,Y1に社長になられると,自分のやった横領が露見する恐れがあったのと,会社私物化の計画が続けられなくなる。」(2頁24行〜25行)(9)「60歳になるまでにあらゆる手段を講じてオーベルを根こそぎ自分のものにする計画だったそうです。」(2頁下から9行〜8行)(10)「オーベルの資金がどんどんAとその家族の懐へ流出しています。」(2頁下から3行)(11)「会社はAとその家族役員たちに吸尽くされて抜け殻状態です。」(2頁最終行)(12)「Aの気違いじみた強欲,私利私欲に会社が食い荒らされているのを見るのは本当に辛いです。」(3頁下から7行〜6行)4本件文書4(1)「月100万から400万円をHに命じて架空請求させ,現金でAに直接戻させるという方法で横領していた事が後で判りました。」(2頁1行〜2行)(2)「その時はオーベルの経営が破綻しかけた原因がまさかAの横領にあるとは気がつきませんでした」(2頁18行〜19行)(3)「A(は)当初からの計画であった会社のっとりのシナリオを継続し,平成9年から実行してきた詐欺横領の隠蔽を図ったことは今になってみれば明白です。」(2頁下から10行〜8行)(4)「Aは,平成9年以来の長期間にわたって多額の詐欺横領をしており,その隠蔽を図るためとその後の不正計画を続けるためにはY1を会社から追い出さなければならなかったということです。」(2頁下から6行〜4行)以上(別紙)Y1発言1横領関係(1)「仕事じゃなくて,泥棒のこと?仕事ってなんのこと」(2)「警察や検察から言われてっからね。」(3)「A,あのね。犯人は,何だっけ,Gじゃなかったていうことは我々も知ったし,検察からも言われたし,警察からも言われた。それじゃだれなのって言うことでAだろう。ほかにいないんだから,ねえ。」(4)「取ったのはあんただからさ。」(5)「A自分でねぇ,お金を取っておいてね。人のせいにしたっていうことをちゃんと言う機会が(Gには)あったでしょうと,本当なら。」(6)「我々はね,Aみたいにぽっぽ,ぽっぽやっていないからさ。」(7)「こっちはね,自分で働いたお金でね,みんな養わないとなんない。あんたたちの盗んだお金と違うからさ。」(8)「ねぇ,GとHさんとAが三人組んでやった詐欺横領事件というのがね。さっき,チラッとこれは知ってると言ったの。あれでね。商法違反で有罪ですよということで」(9)「お金に名前が書いてないからね。Aのね,通帳の中にはこれだね。これだけ。」(10)「えっ,じゃあ,Aが盗んだのなんかすごいね。何億だね。何億になるね」(11)「Aが盗んだお金をGに転嫁したものを何でこっちが買えるのよ。」(12)「何でAなんかと手組んで。Hと三人だもの,いえねー,何で一緒にやったのよ」(13)「Gがとったなんて嘘をつくんじゃないよ」(14)「お金も持っていってるけど,これ位全部持って行ってるでしょう」(15)「きれいにみんなポケットにいれちゃった」(16)「Gがあんたたちと組んで,ああいうことをやるからがスタートじゃない。」(17)「いや,Aの通帳にもありましたと(警察が被告Y1に)言ってくれたよ。」(18)「盗んだお金で払ったんだろうからいいけど」2放火関係(1)「放火も時効になっちゃったんだってね。」(2)「ええ,誰かがつけさせたらしいね。」(3)「私は聞いた」「警察から」(4)「(Aが放火の点について捜査しないよう警察官のJさんを脅したという点について中村さんが)あんた(注:A)が脅しに行ったと言ってたよ」(別紙)A発言1(誰が横領犯人かという話の流れで)「うん,Y1でしょう」2「うんうん,ほおー。まあ,Gから3000万,金取ってるんだから,あれはもう,いっそ,分けたらいいじゃ。」3「あんた(注:Y1)が持ってるって,そういうことをさ,一緒にやってるんでしょう。」4「だから,Y1が買ったらどう,盗んだのあるでしょう,盗んだのが。」5「全然盗んでない?(笑)」6「そうよ,だれか買ってくれる人,だから,おたく(注:被告Y1)でもいいよ。
さっきから言っているとおり,がっぽり盗んだ金があるから。」以上(別紙)A及びX1発言1控訴人X1「同じことを何回も何回も,何度も何度も病気みたいに言ってきて。」2被承継人「病気だよ,これ」3控訴人X1「病気ですよ。本当に。少し病院に行って見てもらった方がいいですよ。」4被承継人「これはあのね,Kが言ってたよ。これは弁護士の問題じゃなくて,精神科医の問題だって言ってたよ。」5被承継人「だれが言ったの,じゃあ。こっちはKが,ねぇ,これは精神科だって言ったよ。」以上
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記
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