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関連ワード 差止請求(差止) /  代理人 /  代表者 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  秘密保持義務 /  有用性 /  営業上の情報 /  非公知性 /  営業秘密 /  2条1項4号 /  2条1項5号 /  2条1項6号 /  2条1項7号 /  不正取得行為 /  損害賠償 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 7756号 不正競争行為差止等請求事件
平成 20年 (ワ) 9083号 請負代金等請求事件
第1事件原告・第2事件被告有 限会社サプリメント(以下「原告」とい う)。
訴訟代理人弁護 士中世古裕之平山芳明 山田庸男 二宮誠行 中村和洋 西村勇作 増田広充 西原和彦 三好吉安 大森剛 河合順子 小津充人 梁栄文 松尾友寛 佐藤朋子 第1事件被告・第2事件原告A
訴訟代理人弁護 士濱田諭第1事件被告B 第1事件被告C 第1事件被告D
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/06/08
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2原告は,被告Aに対し,16万9860円及びこれに対する平成20年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告Aのその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,第1事件・第2事件を通じて,原告に生じた費用の30分の1と被告Aに生じた費用の10分の1を被告Aの負担とし,その余をすべて原告の負担とする。
5この判決の第2項は仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1第1事件【主位的請求】( )被告らは,別紙営業秘密目録記載の内容を用いて,顧客に対して,電話を1し,郵便物を送付し,又は電子メールを送信する等して占いに関する契約の締結,締結方の勧誘等をしてはならない。
( )被告らは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿に記載する内容が記録された2コンピュータ内の記録媒体,又はPCカード,CD-ROM,DVD-ROM,フロッピーディスク等の電磁的記録媒体等から同記録内容を抹消し,同記録媒体又は電磁的記録媒体からの印刷物を廃棄せよ。
( )被告らは,原告に対し,それぞれ200万円及びこれに対する被告A及び3被告Bは平成20年6月30日から,被告C及び被告Dは平成20年7月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
【被告Aに対する主位的請求( )の予備的請求】3被告Aは,原告に対し,183万0140円及びこれに対する平成20年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2事件( )主文第2項と同じ。
1( )原告は,被告Aに対し,ホームページ()掲載用の 2 http://freedom-uranai.com被告Aの写真を返還せよ。
第2事案の概要1事案の要旨( )第1事件1第1事件は,電話占い業を営む原告が,?原告の受付業務等に従事していた分離前第1事件被告E及び原告と業務請負契約を締結して原告の顧客に対して電話による占い鑑定をしていた被告らが共謀して,Eにおいて不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当する原告の顧客情報(別紙営業秘密目録記載の情報,以下「本件顧客情報」という。)を持ち出した上,Eが代表を務める分離前第1事件被告HER-BER-SU合同会社(以下「H。 , ER-BER-SU」という )が本件顧客情報を用いて電話占い業を営み被告らもHER-BER-SUと業務請負契約を締結してHER-BER-SUの顧客に対して電話による占い鑑定をしているとして,被告らに対し,不正競争防止法3条(2条1項5号,6号,8号又は9号)に基づき,本件顧客情報を用いた営業の差止め及び本件顧客情報が記録された記録媒体等の廃棄を求め,?被告らが原告との間の業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したとして,被告らに対し,業務請負契約で定められた違約金各200万円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日(被告A及び被告Bは平成20年6月30日,被告C及び被告Dは平成20年7月2日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,被告Aに対し,予備的に,200万円の違約金請求債権と第2事件における被告Aの原告に対する16万9860円の未払鑑定料請求債権とを相殺した残額である183万0140円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である平成20年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
( )第2事件2第2事件は,原告と電話占い鑑定に関する業務請負契約を締結していた被告Aが,原告に対し,?業務請負契約に基づき,未払鑑定料16万9860円及びこれに対する第2事件の訴状送達の日の翌日である平成20年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,?原告との業務請負契約が終了したとして,ホームページ掲載用に原告に交付した写真の返還を求める事案である。
2前提事実(末尾に証拠の掲記のない事実は,当事者間に争いのない事実又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実である )。
( )当事者等1ア原告は,平成14年2月19日に設立された,電話による占い業等を営む会社である。
イ原告代表者であるF(従前の氏は「F1」であり,平成18年8月に婚姻して現在の氏となった。以下,氏の変更の前後を問わず「F」という )は,平成12年4月ころ 「フリーダム」の名称で電話占い業を始 。 ,め(以下,原告設立前にFが営んでいた電話占い業を単に「フリーダム」ということがある,平成14年2月19日には原告を設立し,フリー 。)ダムの事業を原告に承継した者である。
ウEは,平成14年11月から平成19年3月までの間,原告の事務所で受付業務等に従事していた者である。
エ被告Aは,平成18年11月から平成19年12月ころまでの間,占い師名を「A1」として,原告の顧客の占い鑑定をしていた者である。
オ被告Bは,平成13年11月から平成19年1月ころまでの間,占い師名を「B1」として,フリーダム及び原告の顧客の占い鑑定をしていた者である。
カ被告Cは,平成13年6月から平成18年12月までの間,占い師名を「C1」として,フリーダム及び原告の顧客の占い鑑定をしていた者である。
キ被告Dは,平成14年3月から同年11月までの間,占い師名を「D1」として,原告の顧客の占い鑑定をしていた者である。
クHER-BER-SUは,平成19年8月3日に設立された各種占い業等を目的とする合同会社であり,Eが業務執行社員及び代表社員を務めている (甲2)。
ケ有限会社オブジェ(以下「オブジェ」という )は,アクセサリーの製 。
造販売等を目的とする会社であり,Eの姉のGが代表取締役を務めている。
(甲1)( )HER-BER-SUの設立等2オブジェは,平成19年5月19日 「ハーバース」の名称で電子メール ,や電話による占い事業を開始したが,同年8月3日に設立されたHER-BER-SUにその事業を承継した (乙A26,27)。
( )被告らとオブジェとの契約3被告らは,平成19年5月19日付けでオブジェと業務請負契約を締結し,オブジェ及びHER-BER-SUの顧客に対して電話による占い鑑定をしている(ただし,被告Aは,現在はHER-BER-SUとの業務請負契約を解消している(乙A4の1〜4の3) 。)。
( )原告による相殺の意思表示4原告は,被告Aに対し,平成20年8月26日の第2事件の第1回口頭弁論期日において,被告Aに対する業務請負契約上の義務違反を理由とする違約金請求債権を自働債権として,被告Aの原告に対する第2事件に係る未払鑑定料債権全額を対当額で相殺するとの意思表示をした (当裁判所に顕著。
な事実)3第1事件の争点( )不正競争防止法に基づく請求に係る争点1ア本件顧客情報が不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当するか(争点1)イE及びHER-BER-SUによる不正競争行為の有無(争点2)ウ被告らによる不正競争行為の有無(争点3)( )業務請負契約上の義務違反を理由とする請求に係る争点2ア原告と被告らとの間の業務請負契約の成否及びその契約内容(争点4)イ被告Dが原告との間の業務請負契約を未成年を理由に取り消すことができるか(争点5)ウ被告らによる業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務違反の有無(争点6)4第2事件の争点( )原告の被告Aに対する鑑定料の未払額(争点7)1( )被告Aが原告に自己の写真の返還を求めることができるか(争点8) 2第3争点に関する当事者の主張1争点1(本件顧客情報が不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当するか)について【原告の主張】( )有用性1本件顧客情報は,原告が事業を営む上で有用な営業上の情報である。
( )非公知性2本件顧客情報は,不特定多数の第三者に公知の情報になっているものではない。
( )秘密管理性3ア事務所のセキュリティ原告は,事務所の玄関,各ドア,窓等について,セコムによる警備システムを設定している。
イパソコンのセキュリティ本件顧客情報は,原告の事務所内に設置されたパソコンで管理されているが,パソコンには「ウラデン」と称するオリジナルのセキュリティソフトを導入している。
ウラデンは,IDと9階層のパスワードが設定されているセキュリティソフトであり,データのコピーや持出しができないようになっている。
原告では,一般の従業員にはID・パスワードを教えておらず,Eを含む管理受付責任者だけにパソコンを起動させるためのID・パスワードと顧客情報管理ソフトを起動させるためのパスワードを教えていた。
そして,原告では,パソコンを一日中立ち上げた状態にはしておらず,年に数回はパスワードの変更もしていた。
ウタックシールの管理体制原告では,平成19年3月当時,1か月に3000人ほどの顧客に対してダイレクトメールを発送していたが,顧客の住所及び氏名の印刷されたタックシール(宛名シール)は,F又はその夫のHが原告の事務所の3階にあるマスターパソコンで1か月分をまとめて作成して管理受付責任者に手渡し,その後は管理受付責任者が鍵付きの引出しの中に入れて保管していた。
秘密保持義務を負わせる契約の締結原告(あるいは原告設立前のF)は,平成12年ころから,管理受付責任者,一般受付及び占い師との間で,原告を通さずに原告の顧客に対して連絡を取ることや原告の顧客データを外部に流すなどの行為を禁止事項とし,違反した場合には違約金を支払わせる内容の労働契約あるいは業務請負契約を締結している。
オ管理責任者による情報の管理原告においては,一般の受付従業員と受付業務その他の業務を管理する立場の管理受付責任者とを区別し,管理受付責任者には管理手当として月額5000円を支払っていた。Eが原告に在職していた当時は,E及びIだけが管理受付責任者であった。
そして,原告では,管理受付責任者だけに原告事務所のセコムの鍵及び宛名シールを保管する引出しの鍵を渡しており,パソコンを立ち上げるためのID及びパスワードと顧客情報管理ソフトを立ち上げるためのパスワードも管理受付責任者だけに教えていた。
カ顧客情報の重要性を認識させる指導原告では,従業員らが勤務を開始する際の最初のオリエンテーションで顧客情報の重要性についての教育を行うとともに,日常的にも顧客情報の重要性を認識させる指導を行っていた。
キ以上からすれば,原告において本件顧客情報が客観的に秘密として管理されていることは明らかであり,原告の受付従業員,管理受付責任者及び占い師のいずれにとっても本件顧客情報が秘密として管理されていることが認識可能な状態に置かれていたことも明らかである。
( )したがって,本件顧客情報は不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」4に該当する。
【被告らの主張】不知。
2争点2(E及びHER-BER-SUの不正競争行為の有無)について【原告の主張】( )HER-BER-SUの銀行預金口座への入金者と原告の顧客との重複 1HER-BER-SUの銀行預金口座に鑑定料を振り込んだ利用者と原告の顧客の氏名を比較すると,入金件数で見ると191件のうち157件が原告の顧客と重複しており,入金者で見ると89人のうち61名が原告の顧客と重複している。
( )HER-BER-SUによる原告の顧客へのダイレクトメールの送付2複数の原告の顧客に対して,HER-BER-SUから突然ダイレクトメールが送付されている。
( )Eが本件顧客情報を持ち出すことが十分に可能であったこと3Eは,原告在職当時,管理受付責任者の地位にあり,事務所玄関のセコムの鍵,宛名シールを保管していた引出しの鍵を管理していた。そして,原告においては,日中にダイレクトメールの作成作業を行っていたが,管理受付責任者として中心的役割を担っていたのはEであり,しかも,土曜日などはEが一人で原告事務所でダイレクトメールの作成業務に従事していた。
したがって,Eが原告を退職する直前の平成19年2月あるいは3月ころ,ダイレクトメールの作成に用いる原告の顧客の住所,氏名が印刷されたタックシールのコピーなどを取って本件顧客情報を不正に取得する機会は十分にあった。
( )EとHER-BER-SUとの関係4「ハーバース」の名称で電話占い業を立ち上げたのはオブジェであるが,オブジェの代表者であるGはEの姉であり,Eは事業立上げの準備に携わっている。
しかも,電話占い業を立ち上げた際のオブジェの担当者であるJは,数年前から占い業務に関心を持ち,ようやく平成19年5月に事業を開始することができたにもかかわらず,そのわずか3か月後の同年8月にはEが代表を務めるHER-BER-SUがその事業を承継している。
( )以上によれば,Eは,平成19年3月ころ,本件顧客情報を原告から不正 5に窃取し,その後,HER-BER-SUに開示し,HER-BER-SUにおいてこれを利用して電話占い業を行っていることは明らかである。
このようなEの行為は,不正競争防止法2条1項4号又は7号所定の不正競争行為に該当し,HER-BER-SUの行為は,同法2条1項5号又は8号所定の不正競争行為に該当する。
【被告らの主張】不知。
3争点3(被告らによる不正競争行為の有無)について【原告の主張】HER-BER-SUが設立された時点で,HER-BER-SUに登録した占い師は原告の占い師であった被告ら4名だけであったこと,被告らとHER-BER-SU(オブジェ)との間の業務請負契約がいずれも平成19年5月19日という同じ日に締結されていること,被告らがHER-BER-SUを通じて原告の顧客に接触していることなどからすれば,被告らとEとが共謀してHER-BER-SUを立ち上げ,Eが原告から本件顧客情報を無断で持ち出し,被告らにおいて,本件顧客情報をHER-BER-SUから開示を受けて利用し,原告の顧客に対して連絡を取ったり電話占い鑑定を実施していることは明らかである。
また,原告は,平成20年3月27日付けで被告らに対して照会書(甲22の1)を送付しているから,被告らは,遅くともその時点で,Eによる本件顧客情報の不正取得及び不正開示を認識していた。
以上の被告らの行為は,不正競争防止法2条1項5号,6号,8号又は9号所定の不正競争行為に該当する。
【被告Aの主張】否認する。
被告Aは,E,被告B,被告C及び被告Dと全く面識がなく,これらの者と共謀することはあり得ない。
被告Aは,オブジェのJの要請により,オブジェが新たに始める占い事業に参加することにしたものである。
原告は,被告Aにおいて,原告が送付した照会書(甲22の1)を受け取ったことをもって,Eによる本件顧客情報の不正取得行為を知り得たと主張するが,この照会書は原告の主張が一方的に記載されているものであり,これを読んだだけでEが本件顧客情報を不正取得したことを知ることなど到底不可能である。
【被告Bの主張】否認する。
被告Bは,平成19年5月上旬,オブジェの占い師になるために電話オーディションを受けたが,担当者のJと電話で話しただけであり,EがHER-BER-SUを運営していることすら知らなかった。被告Bは,原告の代理人から照会書(甲22の1)を受け取った平成20年3月下旬ころ,HER-BER-SUに確認し,その際に初めてEが原告の関係者であることを知った。
【被告Cの主張】否認する。
被告Cは,原告との契約中はもちろん,オブジェと契約を締結した後も,Eが原告の関係者であったとは知らなかった。
【被告Dの主張】否認する。
被告Dは,原告の代理人から照会書(甲22の1)を受け取った平成20年3月下旬ころ,Eが原告の関係者であることを初めて知った。
4争点4(原告と被告らとの間の業務請負契約の成否及びその契約内容)について【原告の主張】( )原告は,被告らとの間で,以下の規約を含む業務請負契約を締結した(た1だし,原告設立前の契約主体は原告ではなくFである。なお,以下の規。)約中の乙は原告を,甲は被告らを指す。
「乙の顧客に対し,乙を通さずに連絡を取る,又はその顧客のデータ(相談内容を含め)を外部に流すなどの行為をとった際には,損害賠償金として,甲は乙に100万円を支払うことに異議ないものとする。
乙の鑑定師並びにスタッフに対し,被告らが引き抜き行為を行った場合,甲は原告に損害賠償金100万円を支払うことに異議ないものとする。業務契約者同士が乙の許可無く個人的に連絡を取り合うことも禁止する。
上記規約は契約解除後も有効とする。・・・」( )上記規約の文言上は,契約者同士の相互連絡行為についての賠償額の予定2に関する記載はないが,原告は,被告らに対し,相互連絡行為についても賠償金の支払対象となる行為であることを説明し,その了解を得ている。
【被告Aの主張】原告が主張する内容の業務請負契約を締結したことは認める。
【被告Bの主張】被告Bが署名した業務請負に関する契約書(甲35)には,原告の名前は記されていない。
また,上記契約書では,情報流出についての損害賠償金は50万円となっている。
【被告Cの主張】被告Cが署名した業務請負に関する契約書(甲6)は,フリーダム代表者の「K」との間の契約書であり,被告Cと原告との間の契約書ではない。
また,上記契約書には,100万円の賠償金の記載はなく,50万円と30万円の賠償金が記載されているにすぎない。
【被告Dの主張】被告Dは,原告と業務請負に関する契約を締結したことはない。
5争点5(被告Dが原告との間の業務請負契約を未成年を理由に取り消すことができるか)について【被告Dの主張】被告Dは,原告との間で業務請負契約を締結した当時18歳であり,契約締結について親権者の同意も得ていなかった。
被告Dは,原告に対し,平成20年8月26日の第1事件の第1回口頭弁論期日において,業務請負契約を取り消すとの意思表示をした。
【原告の主張】原告と被告Dとの間で業務請負契約が締結された当時,被告Dが未成年であったことは認めるが,被告Dは親権者(母)である被告Cの同意を得て同契約を締結したのであるから,未成年を理由に取り消すことはできない。
6争点6(被告らによる業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務違反の有無)について【原告の主張】上記3【原告の主張】のとおり,被告らは,原告との業務請負契約上の顧客接触・情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したものである。
また,被告Aは,原告を通じて知り合った顧客である●●●●●(以下「●●」という )及び●●●●(以下「●●」という )に対し,被告Aが開設 。 。
する占いのホームページを紹介,案内しており,被告Aによる顧客接触禁止義務に違反する行為がうかがわれる。
【被告Aの主張】否認する。
原告は,被告Aが●●にホームページを紹介したことを指摘するが,被告Aは,原告から紹介された●●を鑑定した際,鑑定内容を正確に理解してもらうために被告Aが開設している「A2」というホームページ(乙B16)を紹介しただけである。同ホームページは,営業目的のものではないため,被告Aの電話番号やメールアドレス等の連絡先は記載されておらず,霊的な問題等について説明しているだけのものである。
【被告B,被告C及び被告Dの主張】否認する。
7争点7(原告の被告Aに対する鑑定料の未払額)について【被告Aの主張】被告Aは,原告と電話占い鑑定に関する業務請負契約を締結した際,鑑定料金は1分50円,支払方法は毎月末日締めの翌月15日払と合意し,その後,平成19年7月以降の鑑定料金は1分につき80円,リピート客の鑑定の場合は一定金額(30分以内500円,30分以上1000円)を加算することを合意した。
そして,被告Aは,甲2の1のとおり平成19年11月及び12月にも原告の顧客に対して電話による占い鑑定をしたが,平成19年11月分の鑑定料金11万9560円,同年12月分の鑑定料金5万0300円が支払われていない。
【原告の主張】被告Aが主張する上記の業務請負契約の内容(平成19年7月以降の鑑定料金の変更を含む )は認める。。
しかし,原告の被告Aに対する未払鑑定料が合計16万9860円であることは否認する。被告Aが鑑定料金計算のために作成した甲2の1では平成19年11月18日の「●●●●●●」の鑑定時間が37分とされているが実際は35分である。また,甲2の1には同年12月8日の「●●●●●●● (鑑」定時間21分)及び同月9日の「●●●●●● (鑑定時間52分)の記載が 」あるが,これらについては鑑定の事実がない。したがって,被告Aに対する未払鑑定料金は,原告が主張する鑑定料金16万9860円から上記75分に対応する鑑定料金6000円(75分×80円/分=6000円)を控除した16万3860円である。
8争点8(被告Aが原告に自己の写真の返還を求めることができるか)について【被告Aの主張】被告Aは,平成19年2月ころ,原告に対し,ホームページ掲載用として写真を渡したが,原告と被告Aとの間の業務請負契約は平成20年2月ころに終了した。
したがって,被告Aは,原告に対し,上記写真の返還を求めることができる。
【原告の主張】原告と被告Aの業務請負契約が終了したとしても,そのことを理由として写真の返還を求めることはできない。
原告は,平成19年1月ころまでに,被告Aから写真を受け取ったことは認めるが,それは履歴書に貼付する写真であり,履歴書全体を含めて返還しない旨の合意をしている。
第4当裁判所の判断1争点1(本件顧客情報が不正競争防止法2条1項6号所定の「営業秘密」に該当するか)について( )事実関係1前記前提事実並びに証拠(甲84,乙A27,証人H,原告代表者本人,分離前被告HER-BER-SU代表者兼分離前被告E本人及び各項末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告の設立等Fは,平成12年4月ころ 「フリーダム」の名称で電話による占い業 ,を始め,平成14年2月19日には原告を設立し,それまで営んでいたフリーダムの個人事業を原告に承継した。原告においても,電話による占い事業を営むにあたっては,フリーダムの名称を継続して使用している。
Fの母であるKは,原告設立前からフリーダムの事業を手伝っており,一時期はFからフリーダムの代表者の肩書きを使用してFの業務を代行することを許諾されていたことがあったところ,原告を設立した際にはその取締役に就任した。
Fの夫であるHは,平成13年3月ころから,Fが営んでいた電話占い業の事務経理を手伝うようになり,原告が設立された際にはその取締役に就任した (甲82,83,乙A1) 。
イ原告の事業形態原告は,電子メールや電話による占い業等を営んでいるが,電話による占い業の事業形態は,以下のとおりである。すなわち,?原告のホームページや雑誌の広告等を見た顧客が,原告に電話をかけて受付スタッフに電話占いを希望する旨と電話番号を伝える,?原告と業務請負契約を締結している占い師が自宅等で待機しており,原告の受付スタッフが占い師に連絡をして顧客の電話番号を伝える,?占い師が顧客に電話をかけて占い鑑定をする(顧客の希望によっては当該顧客から占い師に連絡をする場合もある,?占い終了後,顧客が原告の口座に料金を支払い,占い師には 。)契約で定められた委託料金が原告から支払われる (甲8)。
ウ原告事務所のスタッフ平成19年当時,原告には5,6名のスタッフ(原告と業務請負契約を締結して受付業務等に従事する者。以下,単に「スタッフ」という )が。
在籍しており,原告事務所2階において,電話受付,パソコンによる顧客情報のデータの登録・更新作業,顧客へのダイレクトメールの発送作業等に従事していた。原告の営業時間は午後1時から午前3時までであり,スタッフは3交代制で勤務していたので,原告事務所に常時待機しているスタッフは1,2名であった。
エパソコンによる顧客情報の管理(ア)原告は,平成14年ころ,Fの知人であるLに「ウラデン」と称す。, る顧客情報管理ソフト(以下「ウラデン」という )を開発してもらい「電話番号「氏名「フリガナ「住所「何を見て「転送区 」,」,」,」,」,分「DM区分「コレクト区分「備考区分「入力担当「更新 」,」,」,」,」,担当「入力日時「更新日時」等の入力欄を設け,そこに顧客の情 」,」,報に関する所定の入力をして顧客情報を管理していた (甲55ないし。
57[いずれも枝番を含む,甲69)。](イ)ウラデンを起動させるためには,まず,パソコン本体のログインパスワードを手動で入力してパソコンを起動させ,次に,ウラデンをメニュー画面から立ち上げるためにパスワードを手動で入力する必要がある。
これに加えて,ウラデンを作動させるためのパスワードが7つ設定されているが,この7つのパスワードについては手動で入力する必要はなく,ウラデンを操作する過程で自動的にパスワード認証がされるように設定されている。ウラデンを起動するためのパスワードは,ウラデンを導入してから何度か変更されている (甲69)。
(ウ)Eが原告を辞める前,原告の事務所には2階に受付用のパソコンが2台,3階にF又はHだけが使用していたマスターパソコンが1台設置されていたが,これら3台のパソコンにはそれぞれ異なるパスワードが設定されていた。原告の事務所の2階に設置されていた受付用パソコンのパスワードは,勤務年数の長いスタッフだけが知らされており,すべてのスタッフがパスワードを知らされていたわけではなかった。上記受付用のパソコンからは,顧客情報を閲覧・入力をすることはできるものの,顧客情報のデータのコピーやプリントアウトはできない設定になっていた。
(エ)原告では,始業時にパスワードを入力してウラデンを起動させた後は,営業が終了するまで起動させたままの状態であり,受付担当者が,占い鑑定の利用があった際には随時顧客の情報を入力することとなっていた。
オダイレクトメール送付用のタックシールの管理原告は,毎月3000人の顧客にダイレクトメールでパンフレット等を送付していたが,遅くとも平成16年11月に現在の事務所に引っ越した後は,F又はHだけが事務所3階の部屋に設置してあるマスターパソコンを使用し,ウラデンで管理している顧客のデータを用いてダイレクトメール送付用のタックシール(顧客の住所,氏名が記載された宛名シール)を印刷し,スタッフにこれを渡してダイレクトメールの作成,送付作業をさせていた。
そして,原告は,遅くとも平成18年ころには,鍵のかかる引出の付いた棚を購入して事務所2階に設置し,宛名を印刷した後のタックシールはこの棚の引出しに入れて鍵をかけて保管するようになり,タックシールを取り出す際には枚数をノートに記録し,F,HとEを含む数名のスタッフが鍵を管理していた。
カスタッフ又は占い師との間で作成された業務請負契約書の内容原告あるいはフリーダム(F)は,占い師又はスタッフと契約を締結する際 「業務請負に関する契約書」を作成しているが,同契約書には,ス ,タッフ又は占い師が原告の顧客に原告を通さずに連絡を取ったり,原告の顧客のデータ(相談内容を含め)を外部に流すなどの行為をした場合には損害賠償金として一定金額を支払う旨の規定がある(E,被告A及び被告Dの損害賠償金はそれぞれ100万円であり,被告C及び被告Bの賠償金はそれぞれ50万円であった。詳細は後記4のとおり(甲4ないし7,。)。
35)( )検討2ア秘密管理性上記認定のとおり,原告は,ウラデンと称する顧客情報管理ソフトを導入し 「電話番号「氏名「フリガナ「住所「何を見て「転送区 ,」,」,」,」,」,分「DM区分「コレクト区分「備考区分「入力担当「更新担 」,」,」,」,」,当「入力日時「更新日時」等の欄を設けて顧客に関する情報を入力 」,」,してデータとして保管していたところ,営業時間中はウラデンを起動させた状態にしており,スタッフが顧客情報を閲覧すること自体は制限されていなかった。しかし,ウラデンを起動させるために必要なパスワードについては,勤務年数の長いスタッフにしか知らされていなかった上,F及びH以外のスタッフが使用する原告事務所2階に設置されているパソコンは顧客情報のデータのコピー及びプリントアウトができないような設定がされており,スタッフが顧客情報を持ち出すことを困難にする措置が講じられていた。
また,原告では,ウラデンで管理されている顧客情報を用いてタックシールを作成し,これを貼付してダイレクトメールを送付していたが,顧客の住所,氏名が記載されるタックシールは,スタッフが使用するパソコンでは作成することができず,FあるいはHだけが使用していたマスターパソコンで同人らだけが作成していた上,貼付前のタックシールについては,事務所2階に設置していた鍵付き引出しのある棚で施錠した上で保管し,鍵については一部のスタッフが管理するとともに,タックシールの枚数についてもノートに記載して管理していたというのである。
そして,原告においては,スタッフ及び占い師と契約を締結する際,原告の顧客情報を外部に流出させるなどした場合に,損害賠償金として50万円や100万円といった高額の違約金を支払わせる内容の業務請負契約を締結していたものであり,以上の事情に照らせば,原告のスタッフあるいは占い師としては,原告が顧客情報を他の情報とは区別して,秘密として管理していたことを十分に認識することができたといえる。
以上のような原告における管理態様からすれば,原告が営業秘密と主張する本件顧客情報は,これに接した者において,原告が秘密として管理していることを十分に認識することができる措置が取られていたというべきであり,本件顧客情報にアクセスすることができるスタッフが6名程度であったという原告の規模等も考慮すれば,秘密として管理されているものと認めるのが相当である。
有用性本件顧客情報は,原告を利用した顧客の住所,氏名,電話番号等であり,これらの顧客は今後も同様に電話による占いを依頼する可能性の高い顧客ということができるから,電話による占い事業を営むに当たって有益な営業上の情報であることは明らかである。
非公知性前記認定事実によれば,本件顧客情報は,原告が事業を継続する中で集積した顧客の情報であって,公然と知られているものではないというべきである。
エまとめしたがって,本件顧客情報は,不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当する。
2争点2(E及びHER-BER-SUによる不正競争行為の有無)について( )事実関係1前記前提事実並びに証拠(甲84,乙A27,原告代表者本人,分離前被告HER-BER-SU代表者兼分離前被告E本人及び各項末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
アEの原告における業務Eは,平成14年11月から原告に勤務するようになり,電話の受付業務,占い師への鑑定依頼の連絡,ダイレクトメールの作成作業等に従事していた。Eは,土曜日や日曜日には原告事務所に1人で出勤をして作業をしていた。
イEの退職Eは,平成19年3月中旬,Fに対し,Eの姉のGが代表者を務めるオブジェの仕事を手伝わなければならなくなったとして,原告を退職したい旨を伝え,Fはこれを了承した。
そして,Eは,平成19年3月に原告を退職し,同年4月初旬からオブジェで仕事をするようになった。
ウオブジェによる占い事業の開始オブジェは,平成19年4月中旬頃から,占い事業の開業準備を始め,同年5月19日から「ハーバース」の名称で電話又は電子メールによる占い業を開始した(以下,オブジェが営んでいた占い事業を「ハーバース」ということがある(甲14,乙A26) 。)。
エHER-BER-SUの設立Eは,平成19年8月3日,HER-BER-SUを設立して業務執行社員及び代表社員に就任し,オブジェが営んでいたハーバースの事業を譲り受けた。HER-BER-SUにおいても 「ハーバース」の名称を継 ,続して使用している。
オHER-BER-SUの事業形態HER-BER-SUは,電子メール又は電話による占い鑑定を提供しているが,電話による占い鑑定の事業形態は原告と同様であり,HER-BER-SUに連絡をしてきた顧客を占い師に紹介して電話鑑定をしてもらうというものである。HER-BER-SUでは,顧客を勧誘する方法として,ダイレクトメールの送付,雑誌やインターネット等の広告等を利用している (甲14)。
カ被告らとオブジェとの契約被告らは,平成19年5月19日付けでオブジェと業務請負契約を締結し,オブジェから顧客の紹介を受けて電話による占い鑑定をするようになったが,当初は,オブジェと業務請負契約を締結した占い師は被告らだけであった (乙A4の1〜乙A4の3,乙A26,証人J) 。
キハーバースによる原告の顧客へのダイレクトメールの送付平成19年5月ころから,原告の顧客のもとにハーバースからのダイレクトメールが届くようになり,そのことについて顧客から原告に問合せがくるようになった (甲31ないし34,75,76) 。
クHER-BER-SUを利用した顧客と原告の顧客との一致HER-BER-SUが鑑定料の徴収のために使用している銀行預金口座(平成19年8月7日開設,乙A17)には,平成19年8月10日から同年11月14日までの間に合計89名の利用者が鑑定料金を入金しているが,そのうち61名が原告がウラデンで管理していた顧客名簿に記載されている顧客の氏名と一致する (甲57,63の1,乙A17) 。
( )検討2上記で認定した事実,とりわけ,Eが,土曜日や日曜日には原告事務所に1人で出勤してダイレクトメールの作成作業に従事しており,顧客の氏名,住所が印刷されたタックシールを持ち出すことが容易な状況にあったこと,Eが原告を退職してオブジェに勤務を開始した直後,オブジェにおいて原告と同様の電話占い業の開業準備が始められたこと,オブジェがハーバースを開業した当時にオブジェと業務請負契約を締結した占い師は,いずれも原告と契約を締結していた被告ら4名だけであること(ただし,被告Aについては,この時点では原告との契約が継続していた,オブジェがハーバース 。)を開業してからわずか3か月後には,EがHER-BER-SUを設立してその代表者となり,オブジェからハーバースの事業を譲り受けたこと,ハーバースが開業した平成19年5月ころから,原告の顧客のもとにハーバースからダイレクトメールが届くようになったこと,平成19年8月10日(HER-BER-SU設立直後)から同年11月14日までの期間でみると,89名中61名,すなわちHER-BER-SUの利用者の実に約68.5%もの利用者が,原告がウラデンで管理していた顧客名簿に記載されている顧客の氏名と一致することなどの事実を総合すれば,Eにおいて,原告と競業する電話占い業を自ら立ち上げることを企て,原告がダイレクトメール送付用に作成したタックシールを印刷するなどして原告の本件顧客情報を持ち出し,連絡先を把握していた被告らに自らあるいは第三者を通じて接触してオブジェと契約を締結させ,本件顧客情報をオブジェに開示し,オブジェ及びHER-BER-SUが,占い事業を営むに当たり,本件顧客情報を利用して原告の顧客のもとへダイレクトメールを送付するなどしたことが推認されるというべきである。
以上のEの行為は,不正の競業をする目的で,営業秘密である本件顧客情報をオブジェ(後のHER-BER-SU)に開示したものであるから,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争に該当し,Eから開示された本件顧客情報を用いて原告の顧客にダイレクトメールを送付して勧誘等をするHER-BER-SUの行為は,同項8号所定の不正競争行為に該当するというべきである。
3争点3(被告らによる不正競争行為の有無)について( )原告は,被告らとEとが共謀してHER-BER-SUを立ち上げ,Eが1原告から本件顧客情報を無断で持ち出し,被告らにおいて,本件顧客情報をHER-BER-SUから開示を受けて利用し,原告の顧客に対して連絡を取ったり電話占い鑑定を実施していることが明らかであるとし,かかる被告らの行為は不正競争防止法2条1項5号,6号,8号又は9号所定の不正競争行為に該当すると主張する。
( )確かに,上記のとおり,オブジェがハーバースを開業した当初,オブジェ2と契約を締結した占い師は被告ら4名だけであり,被告らは,いずれも原告と契約を締結していた占い師(被告Aについては当時も原告との契約を続けていた )であったことが認められる。しかし,このことは,Eが,原告の 。
スタッフであったころに把握した被告らの連絡先をオブジェに開示し,オブジェがこれを利用して被告らに接触して契約を締結したことを推認させるものということはできるものの,被告らがEと共謀して,原告から本件顧客情報を持ち出してこれを使用していることまでをも推認させるものではない。
そして,被告らは,いずれも,オブジェの担当者のJによるオーディションを受けるなどしてオブジェと契約を締結したのであり,その時点では,ハーバースにEが関与しているとは知らず,平成19年8月ころ,JからEにハーバースの事業を引き継ぐ旨の連絡を受けて初めてEを知ったという趣旨の供述をしているところ,オブジェと被告らとの間で作成された業務請負契約書(乙A4の1〜4の3)にはJがハーバースの代表として記名押印しており,オブジェの開業準備は対外的にはJが中心となって行っていたものと推認されることからすれば,オブジェによる開業準備がされていた時点でEが被告らと接触しなかった可能性もある。したがって,オブジェと契約した際にEのことを知らなかったとする被告らの供述もあながち不自然なものとして,これをたやすく排斥することはできない。
そして,他に,被告らとEが共謀して,原告から本件顧客情報を持ち出してこれを使用している事実を認めるに足りる証拠はない。
( )また,上記のとおり,HER-BER-SUが営む電話による占い事業は,3上記のとおり,原告と同様の形態であり,?HER-BER-SUが,ダイレクトメールの送付,雑誌やインターネット等の広告等により宣伝活動をする,?顧客が,HER-BER-SUに電話をかけて受付スタッフに電話占いを希望する旨と電話番号を伝える,?HER-BER-SUと業務請負契約を締結している占い師が自宅等で待機しており,HER-BER-SUの受付スタッフが占い師に連絡をして顧客の電話番号を伝える,?占い師が顧客に電話をかけて占い鑑定をする(顧客の希望によっては当該顧客から占い師に連絡をする場合もある,?占い終了後,顧客がHER-BER-S 。)Uの口座に料金を支払い,占い師には契約で定められた委託料金がHER-BER-SUから支払われる,というものである。
本件において,原告は,被告らに対し,本件顧客情報の内容を用いて,顧客に対して,電話をし,郵便物を送付し,又は電子メールを送信する等して占いに関する契約の締結,締結方の勧誘等をすることの差止めを求めているが,ダイレクトメールを送付する等して顧客を勧誘して契約を締結しているのはHER-BER-SUであって,被告らは,HER-BER-SUと業務請負契約を締結して,HER-BER-SUからの依頼に基づいて占い鑑定をしているだけであり,HER-BER-SUによる本件顧客情報の使用を認識していると認めるに足りる証拠もないから,HER-BER-SUと被告らを一体と捉えて,被告らが本件顧客情報を使用しているとするのは相当でない。
なお,原告は,平成20年3月27日付けで被告らに対して照会書(甲22の1)を送付しているから,被告らは,遅くともその時点で,Eによる本件顧客情報の不正取得及び不正開示を認識していると主張する。確かに,上記照会書には,Eが原告のデータを悪用した可能性について言及する記載があるが,あくまで原告の言い分を一方的に記載した文書であり,同照会書をもって,被告らがEによる本件顧客情報の持出し等の事実を認識することができたとは認められない。
( )以上のとおりであるから,被告らが不正競争防止法2条1項5号,6号, 48号又は9号所定の不正競争行為をしていると認めることはできない。
よって,原告の被告らに対する不正競争防止法に基づく請求には理由がない。
4争点4(原告と被告らとの間での業務請負契約の成否及びその内容)について( )被告Aについて1原告と被告Aとの間で,電話占い鑑定に関する業務請負契約が締結された際,?被告Aが,原告を通さずに原告の顧客の鑑定をした場合,原告を通さずに原告の顧客に連絡をとった場合,原告の顧客データ(相談内容を含む)を外部に流した場合には,原告に対し,損害賠償金100万円を支払う,?被告Aが,原告と契約を締結している鑑定師の引抜行為をした場合には損害賠償金100万円を支払う,との合意が成立したことは,原告と被告Aとの間において争いがない。
( )被告Bについて2ア証拠(甲35)によれば,被告Bが,フリーダムの占い師となって電話による占い鑑定業務を開始するに当たり,以下の内容の規約を含む平成13年11月付け「業務請負に関する契約書」に署名押印したこと(契約書で被告Bは「甲」と表記されている,同契約書には契約の相手方とし 。)て「フリーダム代表者K (契約書では「乙」と表記されている ) 」 。
の記名があること認められる。
「規約1.乙の顧客に対し,乙を通さず鑑定をする・連絡をとる・又はその顧客データ(相談内容も含む)を外部に流すなどの行為を行った際には,損害賠償金として甲は乙に50万円を支払うことに異議ないものとする。契約解除後であっても同じものとする。
・・・1.乙の鑑定師にたいし,甲が引き抜き行為を行った場合,甲は乙に損害賠償金30万円を支払うことに異議ないものとする。業務契約者同士が乙に関係なく個人的に連絡を取り合うことを禁止する。
・・・」イ契約当事者について被告Bが署名した上記契約書には,契約の相手方として「フリーダム代表者K」と記載されているところ,上記1で認定のとおり,当時,Fは,その母であるKにフリーダムの代表者の肩書きを使用してFの業務を代行することを許諾していたのであるから,上記契約書に基づく業務請負契約は,Fが営むフリーダムの事業活動の一環として締結されたものである。そして,Fは,平成14年2月19日に原告を設立し,それまで営んでいたフリーダムの事業を原告に承継し,被告Bも,平成19年1月ころまで原告のもとで電話による占い鑑定を続けていたのであるから,上記業務請負契約は原告設立後に原告に承継されたものと認められる。
ウ契約内容について上記契約書によれば,原告と被告Bとの間で,?被告Bが,原告を通さずに原告の顧客の鑑定をした場合,原告を通さずに原告の顧客に連絡をとった場合,原告の顧客データ(相談内容を含む)を外部に流した場合には,原告に対し,損害賠償金50万円を支払う,?被告Bが,原告と契約を締結している鑑定師の引抜行為をした場合には損害賠償金30万円を支払う,との賠償額の予定(民法420条)に係る合意を含む業務請負契約が存続していたものと認められる。
原告は,上記?,?の違反行為に対する損害賠償金が各100万円と定められたと主張するが,上記契約書の客観的な文言に反するものであり,他にそのような合意が成立したことを認めるに足りる証拠はないから,同主張を採用することはできない。
( )被告Cについて3ア証拠(甲6)によれば,被告Cは,フリーダムの占い師となって電話による占い鑑定業務を開始するに当たり,以下の内容の規約を含む平成13年6月15日付けの「業務請負に関する契約書」に署名押印したこと(契約書では被告Cは「甲」と表記されている,同契約書には契約の相手 。)方として「フリーダム代表者K」との記名があることが認められる。
「規約1.乙の顧客に対し,乙を通さず鑑定をする・連絡をとる・又はその顧客のデータ(相談内容も含む)を外部に流すなどの行為を行った際には,損害賠償金として甲は乙に50万円支払うことに異議ないものとする。契約解除後であっても同じものとする。
・・・1.乙の鑑定師にたいし,甲が引き抜き行為を行った場合,甲は乙に損害賠償金30万円を支払うことに異議ないものとする。業務契約者同士が乙に関係なく個人的に連絡を取り合うことを禁止する。
・・・」イ被告Bについて検討したところと同様,上記契約書に基づく業務請負契約は,Fが営むフリーダムの事業活動の一環として締結されたものであり,原告設立後に原告に承継されたものと認められる。
そして,上記契約書によれば,原告と被告Cとの間で,?被告Cが,原告を通さずに原告の顧客の鑑定をした場合,原告を通さずに原告の顧客に連絡をとった場合,原告の顧客データ(相談内容を含む)を外部に流した場合には,原告に損害賠償金50万円を支払う,?被告Cが,原告と契約を締結している鑑定師の引抜行為をした場合には,原告に損害賠償金30万円を支払う,との賠償額の予定に係る合意を含む業務請負契約が存続していたものと認められる。
( )被告Dについて4ア証拠(甲7)によれば,被告Dは,フリーダムの占い師となって電話による占い鑑定業務を開始するに当たり,以下の内容の規約を含む平成14年3月23日付けの「業務請負に関する契約書」に署名押印したこと,同契約書には契約の相手方として「フリーダム代表者K (契約書では」「乙」と表記されている )の記名があることが認められる。 。
「1,乙の顧客に対し乙を通さず連絡をとる,またはその顧客のデータ(相談内容を含め)を外部に流すなどの行為を行った際には,損害賠償金として甲は乙に100万円を支払うことに意義(判決注:異議の誤記と認める )ないものとする。。
1,乙の鑑定師に対し,甲が引き抜き行為を行った場合甲は乙に損害賠償金100万円を支払うことに意義(判決注:異議の誤記と認める )ないものとする。業務契約者同士が乙の許可なく個人的に連絡 。
を取り合うことも禁止する。
1,上記規約は契約解除後も同じとする。・・・」イ被告Dが署名した上記契約書には,契約の相手方として「フリーダム代表者K」と記載されており,原告の名称は記載されていないものの,当時,原告がフリーダムの名称で電話による占い事業を行っていたこと,原告の代表者はF(当時の氏名はF1)であること,被告Dは,上記契約書の作成後,原告のもとで占い鑑定をしていたことからすれば,上記契約書に基づく契約は,原告と被告Dとの間で成立したものと認められる。
そして,上記契約書によれば,原告と被告Dとの間で,平成14年3月23日,?被告Dが,原告を通さずに原告の顧客の鑑定をした場合,原告を通さずに原告の顧客に連絡をとった場合,原告の顧客データ(相談内容を含む)を外部に流した場合には,原告に対し,損害賠償金100万円を支払う,?被告Cが,原告と契約を締結している鑑定師の引抜行為をした場合には損害賠償金100万円を支払う,との賠償額の予定に係る合意が成立したものと認められる。
( )相互連絡禁止義務違反についての損害賠償の予定の有無について5原告は,被告らに対し,相互連絡行為についても賠償金の支払対象となる行為であることを説明し,その了解を得たと主張するが,契約書の文言上は契約者同士の相互連絡行為に関して賠償額を予定する旨の記載はなく,他にそのような事実を認めるに足りる証拠はない。
5争点6(被告らが業務請負契約上の義務に違反したか否か)について事案にかんがみ,争点5(被告Dが原告との間の業務請負契約を未成年を理由に取り消すことができるか)の前に争点6(被告らが業務請負契約上の義務に違反したか否か)について判断する。
( )原告は,被告らが業務請負契約上の顧客接触・情報漏洩禁止義務,相互連1絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したとして違約金の支払を求めているところ,上記4のとおり,相互連絡禁止義務違反についての違約金に関する合意があったとは認められない上,被告らが相互に連絡を取ったことにより,原告に何らかの損害を与えたとも認められない。
したがって,以下,被告らによる顧客情報の漏洩禁止義務違反(原告の顧客データ[相談内容を含む]を外部に流したか否か ,顧客への接触禁止義 )務違反(原告を通さずに原告の顧客の鑑定をしたか否か,原告を通さずに原告の顧客に連絡をとったか否か ,引抜禁止義務違反(原告と契約を締結し )ている鑑定師の引抜行為をしたか否か)の有無について順次検討する。
( )顧客情報の漏洩禁止義務違反の有無について2上記3のとおり,Eが,原告がダイレクトメール送付用に作成したタックシールを印刷するなどして本件顧客情報を持ち出し,これをHER-BER-SUに開示したことは認められるものの,被告らがEと共謀していたとまで認めることはできないから,被告らが原告との間の業務請負契約上の顧客情報の漏洩禁止義務に違反したと認めることはできない。
( )被告らがHER-BER-SUを通じて原告の顧客に対して占い鑑定をし3ていることが顧客への接触禁止義務違反行為となるかア原告は,被告らがHER-BER-SUを通じて原告の顧客に対して占い鑑定をしていることが,業務請負契約上の顧客への接触禁止義務違反行為に該当すると主張する。
イ被告B,被告C及び被告Dがオブジェと契約を締結した時点では,同被告らと原告との契約は終了しており,本件契約上,契約終了後に同被告らが原告以外の業者と契約を締結して占い鑑定をすることは禁止する旨の条項はなく,被告Aについても,オブジェとの契約締結時に原告との契約は終了していなかったものの,後記のとおり,原告以外の業者と契約を締結して占い鑑定をすることは禁止されていなかったのであるから,被告らがオブジェと契約を締結して占い鑑定をすること自体は原告との間の業務請負契約に違反する行為ということはできない。
そして,HER-BER-SUの勧誘活動が本件のように原告の顧客情報を利用するという不当なものでなければ,HER-BER-SUに占い鑑定を依頼してきた顧客が過去に原告を利用したことがあったとしても,被告らがHER-BER-SUを通じて当該顧客の占い鑑定をすることは自由な営業活動として許されるべきであって,原告と被告らとの間の業務請負契約上の顧客への接触禁止義務も,被告らに当該顧客からの占い鑑定の依頼を拒否する義務までを課すものとは考えがたい。
したがって,被告らがHER-BER-SUを通じて原告の顧客(過去に原告を利用した者)に対して占い鑑定をしたことをもって,業務請負契約上の顧客への接触禁止義務に違反したというためには,被告らにおいて,少なくともHER-BER-SUが本件顧客情報を使用して原告の顧客への勧誘活動をしていることを認識している必要があると解される。
ウこれを本件について見ると,確かに,上記のとおり,HER-BER-SUが,本件顧客情報を用いて原告の顧客にダイレクトメールを送付するなどして顧客を募集していること,HER-BER-SUの利用者の氏名の大部分が原告の顧客名簿に記載されている顧客の氏名と一致することからすれば,被告らがHER-BER-SUを通じて占い鑑定をした顧客の中には原告の顧客(過去に原告を利用した者)が含まれていると認められる。
しかし,被告らは,HER-BER-SUと業務請負契約を締結し,HER-BER-SUから依頼を受けてHER-BER-SUの顧客に電話による占い鑑定をしているにすぎず,Eによる本件顧客情報の持ち出し及びHER-BER-SUにおける使用について,被告らがEと共謀していた事実を認めることができないだけでなく,被告らにおいて,HER-BER-SUが本件顧客情報を使用して原告の顧客に対する勧誘活動をしていることを認識しているとも認められないことは,上記3で認定説示したとおりである。したがって,被告らがHER-BER-SUを通じて原告の顧客(過去に原告を利用したことがある者)に対して占い鑑定をしたことをもって,本件業務請負契約上の顧客への接触禁止義務に違反したと認めることはできない。
( )被告Aの●●及び●●に対する接触禁止義務違反の有無4ア原告は,被告Aが,原告の顧客であった●●及び●●にAが開設する占いのホームページを紹介,案内しているとして,このことから,被告Aによる顧客接触禁止義務に違反する行為がうかがわれると主張する。
イ被告Aが負う顧客への接触禁止義務の内容証拠(乙B2,乙B14,被告A本人)によれば,被告Aは,原告と業務請負契約を締結する前から,宮崎県において占い師として活動していたこと,原告は,平成18年11月22日に被告Aに送信した電子メールに「当方(判決注:原告)はご自身(判決注:被告A)のお客様も鑑定を続けられたままうち(判決中:原告)のお仕事についていただいてかまいませんし時間的なダブルブッキングさえなければ特に問題視はしていません 」と記載し,同年12月29日に被告Aに送信した電子メールに 。
「かけもちはオッケイですので対面鑑定を外部でされることは問題ありません 」と記載したことが認められる。 。
上記事実によれば,原告と被告Aとの業務請負契約においては,被告Aが原告を通さずに同被告自身の固有の顧客に対して占い鑑定をすること自体は許容されていたことが明らかであるから,業務請負契約上の顧客への接触禁止義務は,被告Aが原告を通さずに顧客と接触して占い業務を行うことを一般的に禁止する競業禁止義務ではなく,原告を通じて知った顧客に対して自ら連絡を取ったり,顧客へ被告Aの連絡先を伝えるなどして連絡をさせるなどの行為に限り,これを禁止するものと解するのが相当である。
ウ●●の関係について証拠(乙B11,被告A本人)によれば,被告Aが,原告を通して占い鑑定をした●●に対し,原告を通さずに占い鑑定をしたことは認められるものの,被告Aから●●に連絡を取ったり,被告Aが●●に自身の連絡先を伝えるなどして同人に連絡をさせたことまでを認めるに足りる証拠はない。
そして,被告Aは,●●はインターネットで被告Aの連絡先を調べて個人的に鑑定を依頼してきたのであり,被告A自ら●●に連絡をしたことはないという趣旨の供述をしているところ,証拠(乙B15)によれば,被告Aは,自身が提供する占い鑑定の内容,問合せ先等を記載した「A2」というホームページ(乙B15)を開設していたことが認められるから,占い鑑定に興味を持っている●●が,インターネットを検索し,被告Aが運営する上記ホームページを見て被告Aに連絡を取ってきた可能性を否定することはできず,他に被告Aの上記供述の信用性を否定すべき事情も見あたらないから,被告Aの上記供述を直ちに排斥することはできない。
したがって,被告Aが,●●に対し,原告との業務請負契約上の顧客への接触禁止義務に違反する行為をしたと認めることはできない。
エ●●の関係について(ア)証拠(甲30の1,甲30の2の1ないし甲30の2の4,甲43,乙B17)によれば,次の事実が認められる。
a原告を通じて被告Aの占い鑑定を受けた●●は,平成19年10月18日,原告に対し,以下の内容を記載した電子メールを送信した。
(甲30の2の1)「A1先生から,霊体のひずみを,修正した方が良いと,言われたのですが,別料金とのことでした。
霊体の修正を申し込むためには,どうすれば良いのでしょうか,料金は,いくらなのでしょうか,教えて下さい 」。
bFは,同日,●●からの上記aの電子メールに対する返信として,以下の内容の電子メールを送信した (甲30の2の2)。
「御連絡たまわりました。フリーダムです。こんばんは。
料金について先生は電話鑑定の中で何かいっておられませんでしたか?」c●●は,同日,Fからの上記bの電子メールに対する返信として,以下の内容の電子メールを送信した (甲30の2の3)。
「7万円ではないかと,思うのですが・・。
普通に,電話鑑定の際に,霊体の修正をお願いすれば良いのでしょうか・」dFは,同日,●●からの上記cの電子メールに対する返信として,以下の内容の電子メールを送信した (甲30の2の4)。
「フリーダムです。レイショウ鑑定の件で先ほどケイタイへお電話をさせていただいたのですが,お留守のようでした。また明日お電話させていただいてよろしいでしょうか。ご心配が募りお急ぎの際には本日11時まででしたらお電話させていただくことが可能ですのでよろしくお願いします 」。
eFは,翌10月19日,●●に電話をかけ,概ね次の内容の会話をした(甲30の1,乙B17)「・・・F『で,一応ですね,あの,先生とどこまで,どのような話になっているかと思って,ちょっと教えていただければと思いまして 』。
●●『あの。左のほうの,その歪みがあって,で,修正をまあ,あの,すると,した方がいいといわれ・・・具体的なお金とか,祝詞とかそういうような申込みの仕方とかがわからなかったので,とりあえずそういう感じですよ 』。
F『じゃ先生からとしては,御祓いをしたほうがいいということと,て,先生があの,ま,自分に頼めば有料だけどもできるよ。という話だったということですよね 』。
●●『そう?なんかあの,別料金ですかと言ったら,ま,少し料金はかかるという話で。えーよくちょっとわからないですけど,それってどういうこと,どういう感じなんですかね?』・・・●●『あ,なんか先生の鑑定,ん?なんか私のホームページを見てほしいというふうなことを言われまして,ちょっと見たんですけど,探したんですが,なくて,で,ホームページ調べたんですけども,なんかようするにそのフリーダムさんから申し込むのか,あるいはその先生の方に直接,先生のそのホームページから申し込むのかわからないんですけど。ちょっと別料金だと言われまして 』。
F『あ,うーむ,そうだんですね。じゃ,そのホームページというのは,フリーダムのホームページではなくて,先生のホームページをという感じですよね 』。
●●『うーん。あの,A1の世界というふうな,・・・ウェブではなかったんで。聞き間違えたかも知れないんですけど・・・』・・・」(イ)以上の認定事実によれば,被告Aが,原告を通じて●●の占い鑑定をした際,●●に対し,霊体のひずみを修正したほうがいいと告げ,料金については別途7万円が必要であると伝えたこと,●●に対し,被告Aの開設するホームページを見るよう勧めたことが認められ,これによれば,被告Aが,原告の顧客である●●に対し,原告を通さずに霊体のひずみの修正をすることを持ちかけたものと考えられなくもない。
しかし,被告Aは,原告を通して●●の占い鑑定をした際,鑑定内容を正確に理解してもらうために被告Aが開設している連絡先等の記載のない「A2」というホームページを紹介しただけであると主張し,これに沿う供述をしている。
そして,証拠(乙B16)によれば,被告Aは 「A2」というホー,ムページを作成していたところ,同ホームページには前世や霊体に関する説明はあるものの,被告Aの連絡先等の記載はないことが認められる。
そして,被告Aが●●に紹介したホームページはこの「A2」のことであったと考えられるから(●●は,被告Aに紹介されたホームページが「A3」であったと話しているが,被告Aが原告ではA1の名称を用いていたことから,●●において被告Aから紹介された「A2」を「A3」と思い込んでしまったものと考えられる,被告Aの上記主張及 。)び供述には一応の裏付けがあり,直ちに排斥することはできない。
また,被告Aが,●●に対し,原告を通さずに個人的に霊体のひずみの修正をすることを持ちかけたのであれば,被告Aの連絡先や霊体のひずみの修正をするための具体的な手続等について説明したはずであるが,上記のとおり,被告Aが,連絡先や鑑定料金等の記載のある「AA」というホームページ(乙B15)を開設していたにもかかわらず,●●には被告Aの連絡先等の記載のない「A2」というホームページ(乙B16)を紹介したこと,実際,●●が,霊体のひずみの修正を申し込む方法がわからず,原告に電子メールで問合せをしていることからすれば,被告Aから同被告の連絡先等についての説明を受けていないことは明らかであり,このことからすれば,被告Aが霊体のひずみを修正するための料金が7万円であると説明した点についても,あくまで一般的な料金についての説明をしたにすぎないとも考えられる。
そうすると,上記(ア)で認定した事実からは,被告Aが,原告を通じて●●の占い鑑定をした際,原告を通さずに霊体のひずみの修正をすることを持ちかけたとまで認めることはできず,他に,これを認めるに足りる証拠もない。
したがって,被告Aが,●●に対して,原告との間の業務請負契約上の接触禁止義務に違反する行為をしたと認めることはできない。
( )引抜禁止義務違反について5原告は,被告らが業務請負契約上の引抜禁止義務に違反したと主張するが,被告らがオブジェと業務請負契約を締結したことは認められるものの,被告らが原告の鑑定師の引抜行為をしたと認めるに足りる証拠はない。
なお,証拠(乙E1,被告D本人)によれば,被告Dがオブジェと業務請負契約を締結したのは,平成19年5月ころに同被告の母である被告Cからオブジェを紹介されたことがきっかけであったことが認められるが,原告と被告Dとの業務請負契約は平成14年11月には終了しているのであるから,被告Cが原告の鑑定師を引き抜いたということにはならない。
( )まとめ6以上のとおりであるから,原告の被告らに対する業務請負契約上の義務違反を理由とする請求には理由がない。
6争点7(原告の被告Aに対する鑑定料の未払額)について被告Aは,原告の被告Aに対する鑑定料金の未払額が16万9860円(平成19年11月分は11万9560円,同年12月分は5万0300円)であると主張し,これを裏付けるものとして,占い鑑定をした日付,顧客氏名,鑑定時間等を集計した資料(第2事件の甲2の1)を提出している。この資料は,その作成経緯が必ずしも明確ではないものの,その体裁及び内容からして,各月ごとに各顧客から占い鑑定の依頼があった順に,顧客名,受付時刻,鑑定に要した時間等を記載しているものであって,日々記帳する帳簿書類に準ずるものであると認められる。そうすると,この資料の記載内容については一定の信用性を肯定することができる。
他方,原告は,被告Aに対する未払鑑定料金が16万3860円である限度で認め,鑑定料金の算出根拠については,上記資料では平成19年11月18日の「●●●●●●」の鑑定時間が37分とされているが実際は35分である,同年12月8日の「●●●●●●● (鑑定時間21分)及び同月9日の「● 」●●●●● (鑑定時間52分)の記載があるがこれらについては鑑定の事実 」がないと説明している。しかし,原告はそのように主張するだけで,その根拠となる資料を一切開示しないから,原告の上記主張の信用性をたやすく肯定することはできず,上記甲2の1の信用性を覆すには足りないというべきである。
したがって,未払鑑定料の額は,被告Aの主張するとおり,16万9860円であると認められる。
7争点8(被告Aが原告に自己の写真の返還を求めることができるか)について被告Aは,平成19年2月ころ,原告に対し,ホームページ掲載用として被告Aの写真を渡したが,原告と被告との間の業務請負契約は平成20年2月ころに終了したとして,同写真の返還を求めている。
被告Aの上記請求は,業務請負契約の終了をその根拠とするものと解されるところ,現時点において被告Aが上記写真の所有権を有する旨の主張立証がない以上,被告Aが,原告と業務請負契約を締結するに当たって,同契約終了時に写真を返還するという合意をしたなどの事情が認められない限り,原告の被告Aに対する上記写真の返還義務を直ちに肯定することはできない。これを本件についてみると,被告Aが,同契約締結時に,同契約終了時に上記写真を返還するとの合意をしたとの主張はなく,かつ,これを認めるに足りる証拠もない(契約書〔甲5〕には上記趣旨の合意に係る記載はない )から,原告と被。
告A間の業務請負契約が終了したからといって,直ちに原告の被告Aに対する写真の返還義務を肯定することはできないというべきである。本件において,他に写真の返還義務を基礎づける事実上・法律上の根拠についての主張立証はない。
したがって,原告に対し写真の返還を求める被告Aの請求は理由がない。
第5結語以上によれば,第1事件における原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,第2事件の被告Aの請求は,業務請負契約に基づき,原告に対し,未払鑑定料金16万9860円及びこれに対する弁済期到来後の平成20年3月29日(第2事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
別紙営業秘密目録原告業務に使用するコンピューターの記録媒体内に記録された原告作成にかかる顧客名簿(顧客の「電話番号「氏名「フリガナ「住所「何を見て「チ」,」,」,」,」,ェック「転送区分「区分「コレクト区分「備考区分「備考「入」,」,」,」,」,」,DM力担当「更新担当「入力日時」及び「更新日時」の記入欄があるもの)及び」,」,当該顧客名簿をもとに封筒に貼付するタックシール上に印字された顧客情報
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人