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事件 平成 20年 (ワ) 26698号 不正競争行為差止等請求事件
東京都中央区<以下略>
原告株式会社アイ・ウェーブ
同訴訟代理人弁護士 塩谷安男東京都台東区<以下略>
被告 株式会社ABG Intern ationa l
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2011/02/25
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求 1被告は,別紙被告商品目録記載の商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示し,又は輸入してはならない。
2被告は,別紙被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。
第2事案の概要 本件は,別紙原告商品目録1記載の自動排泄処理装置(以下「原告装置1」という。)及び同目録2記載の自動排泄処理装置(以下「原告装置2」という。)を開発し,商品として販売を準備しているとする原告が,別紙被告商品目録記載の自動排泄処理装置(以下「被告装置」という。)は原告装置1又は原告装置2の形態を模倣した装置であるから,被告による被告装置の譲渡行為等は不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当し,また,被告の代表者が原告から示された原告の営業秘密である原告装置1,2に係る機能,形態等の情報を被告に開示し,被告がこの営業秘密を使用して被告装置を製造したことは,2同法2条1項7号,8号の不正競争行為に該当するなどと主張して,被告装置を開発し,商品としての販売を準備している被告に対し,同法3条1項に基づき,被告装置の譲渡等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告装置の廃棄を求めた事案である。
1請求の原因(1)当事者 ア原告は,医療,介護機器・用品の企画,製造,販売等を業とする株式会社である。
A(以下「A」という。)は,原告の代表取締役である。
イ被告は,医療,介護機器・用品の企画,製造,販売等を業とする株式会社である。
B(以下「B」という。)は,被告の代表取締役である。
(2)被告による不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為 ア原告装置1及び2の開発経緯(ア)原告は,平成16年8月26日,ナノマックス株式会社(以下「ナノマックス」という。)との間において,同社の開発した自動排泄処理装置(商品名「ダイアレット」)の総販売代理店契約を締結することにより,自動排泄処理装置に関するビジネスに関与するようになった。
原告は,ナノマックスが開発した自動排泄処理装置「ダイアレット」を基に,原告独自の技術により,原告装置1を開発した(特に,オムツカップユニットに関してのノウハウは,原告固有の技術であり,これに関して,原告は3件の特許申請をしている。)。
(イ)原告は,平成17年11月,韓国企業のセキュアソフトとの間で,原告装置1の製造販売委託契約を締結し,同社に原告装置1の製造技術情報を提供し,同社による原告装置1のOEM生産が開始された。
ところが,平成19年4月ころ,セキュアソフトによる原告装置1の3OEM生産を継続することが困難となった。
(ウ)そこで,原告は,平成19年4月ころから,B(当時,原告の取締役であり,かつ,原告装置1の販売に関して業務提携関係にあった株式会社インターナショナルABG(以下「ABG社」という。)の代表者であった者。また,同人は,原告と共同で設立した韓国企業の株式会社I-WAVEJK(以下「I-WAVEJK」という。)の代表者でもあった。)の申出もあり,同人に依頼して,韓国国内において,原告装置1の製造委託先を探したものの,奏功しなかった。
原告は,上記の経緯で,I-WAVEJKに対し,原告装置1の試作機1台を交付した。
(エ)原告は,平成19年7月ころには,原告装置1の製造委託先を日本国内で探すこととし,同年10月,国際福祉機器展に原告装置1を出品すると同時に,原告装置1の後継機種として,原告装置2を発表した(ただし,当時,原告装置2は製品としては完成していなかった。)。
(オ)それ以後,原告は,原告装置2の製造販売を進めることとした。
イ原告装置1の販売及び原告装置2の販売準備(ア)原告装置1の販売状況について原告は,セキュアソフトに原告装置1の製造を委託し,セキュアソフトは,平成18年1月から原告装置1の製造を開始して,合計50台を製造した。
その後,原告は,同年11月,日本再生エネルギー株式会社(以下「日本再生エネルギー」という。)と業務提携基本契約を締結し,原告装置1の販売を委託するとともに,同社に対して,原告装置1を販売した。
(イ)原告装置2の販売状況について 原告は,帝人グループと提携して原告装置2の販売を進めることを決定し,平成20年1月25日,株式会社荏原電産(以下「荏原電産」と4いう。)との間でOEM基本契約を締結し,同社に対し,原告装置2の製造を委託した。
荏原電産は,上記製造委託契約に基づき,平成20年2月ころ,原告装置2を製造し,平成20年9月下旬に開催される国際福祉機器展への原告装置2の出品予定に合わせて,試作量産機100台を製作すること,その後は月産1000台の量産体制に入ることを計画していた。
一方,NI帝人商事株式会社(以下「NI帝人商事」という。)は,原告との間で販売特約店契約を締結し,販売特約店として,原告装置2を販売することを予定し,契約書案の作成も行われていた。
原告は,そのホームページに原告装置2を掲載したり,平成20年9月下旬に開催された国際福祉機器展に原告装置2を出品したりして,原告装置2の発売を広く告知していた。
以上のとおり,原告装置2は,平成20年10月ころには,販売開始直前の状態であった。
ウ被告装置の譲渡のための展示等 被告は,平成19年10月に開催された国際福祉機器展に被告装置を出品した。
また,被告は,平成20年9月下旬に開催された国際福祉機器展にも被告装置を出品し,被告装置の販売準備を進めている。
エ被告装置は,原告装置1,2の形態を模倣したものであること (ア)原告装置1の形態 原告装置1は,別紙2-2のとおり,以下の形状と機能を有する。
a洗浄水タンク,汚物タンク,電動モータ等を内蔵した縦509?,横390?,高さ480?の直方体型本体とそれに接続され,先端にセンサー付カップユニットが取り付けられたホースによって構成されている自動排泄処理装置である。
5本体の上部カバーを開閉することにより,本体内に内蔵された洗浄水タンクや汚物タンクの出し入れを行うことができる。本体正面のホース接続口にはホースを接続し,必要に応じて着脱することができる。
オムツカップ内には,洗浄水噴射ノズル,汚物吸引口,排尿検知センサー,排便検知センサーが配されている。
bカップユニットを人体の股間に装着し,おむつカバーにより固定して,本体に電源を入れると,排泄が行われるごとにカップユニットのセンサーが排泄・排便を識別して,本体洗浄水タンク内の洗浄水による局部・カップユニットの洗浄,尿・便及び洗浄水の本体汚物タンクへの吸引及び局部の乾燥・除菌洗浄等を自動的に行う機能を有している。
(イ)原告装置2の形態 原告装置2の形状と機能は,別紙3-2のとおりであり,以下の形状と機能を有する。
a洗浄水タンク,汚物タンク,電動モータ等を内蔵した縦602?,横458?,高さ492?の直方体型本体とそれに接続され,先端にセンサー付カップユニットが取り付けられたホースによって構成されている自動排泄処理装置である。
本体の上部カバーを開閉することにより,本体内に内蔵された洗浄水タンクや汚物タンクの出し入れを行うことができる。本体のホース接続口にはホースを接続し,必要に応じて着脱することができる。オムツカップ内には,洗浄水噴射ノズル,汚物吸引口,排尿検知センサー,排便検知センサーが配されている。
なお,原告装置2は,本体のパネル表示部が本体上部ではなく,前面上部に設置されている点,ホース取付位置が本体の前面ではなく背面に設置されている点,洗浄水タンク,汚物タンク,電動モータ等の6配置の点において,原告装置1とは異なっている。
bカップユニットを人体の股間に装着し,おむつカバーにより固定して,本体に電源を入れると,排泄が行われるごとにカップユニットのセンサーが排泄・排便を識別して,本体洗浄水タンク内の洗浄水による局部・カップユニットの洗浄,尿・便及び洗浄水の本体汚物タンクへの吸引及び局部の乾燥・除菌洗浄等を自動的に行う機能を有している。
(ウ)被告装置の形態 被告装置の形態は,別紙1-2のとおりである。
(エ)原告装置1,2と被告装置との実質的同一性a原告装置1と被告装置とは,?全体のサイズ,?ホースと本体との取付け位置,ホースの本体への取付け構造,?操作パネルの位置,?本体内部における,汚物タンク,洗浄水タンクなどの配列,各タンクの形状や容量,?汚物タンクの取手が上部に斜めに取り付けられている点,汚物タンクの上部排水口とそのキャップの位置,?カップ・ホースユニットから汚物タンクへの流入経路として,タンクの右側側面に入水口,排気口の二つの穴が開いている点,?汚物タンクへのスライド式弁の形状(汚物タンクの取り外し時に,入水口,排気口の二つの穴から,カップ・ホースユニットの導入路が自動的に水平方向にスライドして抜去される点),?オムツカップの色彩・形状(全体の形状,ヒダの形状及び数,フロントカバーに二つの穴があること)・材質(カップ基台が硬質プラスチックから成り,周辺の柔らかい部材はシリコンから成る点),?カップとホースが固定されており,分離できない構造となっている点,?使用説明書,が酷似している。
したがって,被告装置は,その形状及び機能が原告装置1と同一であるといえる。
7 b同様に,被告装置は,その形状及び機能が原告装置2と同一であるといえる。
(オ)被告装置の原告装置1,2への依拠性 a被告の代表者であるBが経営するABG社は,原告との間で,平成19年3月28日付け原告装置1に係る業務提携基本契約を締結し,原告装置1の日本における販売権を取得した。
さらに,Bは,同日,原告の取締役に就任した。
bところが,Bは,ABG社が上記業務提携基本契約に基づき原告から取得し,また,原告の取締役として原告から取得した営業秘密を利用して,被告を設立し,原告装置1の形態を模倣して被告装置を製造し,販売を行おうとしている。
c上記の被告装置の開発の経緯及び被告装置の形状に照らせば,被告装置が原告装置1に関する情報を基に製造されたものであることは明らかであり,被告装置は原告装置1,2に依拠したものであるといえる。
(3)被告による不正競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争行為 ア原告の営業秘密 (ア)営業秘密の内容 原告装置1,2に係るオムツカップユニットの以下の製造ノウハウは原告の営業秘密に当たる(以下「本件製造情報」という。)。
aクッション部の立ち上がり部分に羽根状部分を設けている点b腰当て部に圧力分散のためヒダ状部分を備えている点cカップ基台が硬質プラスチックから成り,周辺の柔らかい部材(別紙4の?フロントカバー,?クッション部,?腰当て部)がシリコンから成る点dホースとカップが固定されていて分離することができない構造とな8っている点(イ)秘密管理性 a原告は,本件製造情報に係る設計図及び関係資料を紙媒体で管理している。当該紙媒体は,原告の本店に設置された金庫内に保管されており,原告代表者又は技術責任者であるCでなければ取り出せない体制となっている。
bなお,原告は,平成17年11月,セキュアソフトとの間で,原告装置1の製造販売委託契約を締結した際,同社に対し,原告装置1の本体の設計図及びオムツカップユニットの設計図を提供したものの,業務委託契約書(甲16,17)中に守秘義務条項を設けていることから,本件製造情報の秘密管理性は失われない。
cまた,セキュアソフトは,原告から開示された本件製造情報に基づき,原告装置1の試作機50台を製造し,原告に送付したものの,当該試作機は,次のとおり管理されており,本件製造情報の秘密管理性は失われない。
(a)原告は,セキュアソフトによる製造が困難になったことから,Bの紹介に係る韓国の業者に対し,試作機50台のうちの1台を交付して,原告装置1の製造が可能であるか否かを打診した。
Bは,当時,原告の取締役として本件製造情報につき守秘義務を負っていたことから,上記韓国の業者に対しても,本件製造情報につき守秘義務を当然課しているものと信じていた。
(b)試作機50台のうちの20台については,原告が平成18年11月11日付けで業務提携基本契約を締結した日本再生エネルギーに対し,販売促進用のサンプルとして交付した。
なお,日本再生エネルギーは,本件製造情報につき,守秘義務を負っている。
9 (c)その余の試作機については,原告において,倉庫に保管するか,又は解体している。
(ウ)有用性 a自動排泄処理装置である原告装置1は,被介護者の股間にオムツカップユニットを長時間装着させ,オムツカップユニットと装置本体とをホースによって接続し,被介護者が排泄を行うたびにオムツカップユニットのセンサーが排尿・排便を識別し,本体洗浄水タンク内の洗浄水による局部及びカップユニットの洗浄,尿,便及び洗浄水の本体汚物タンクへの吸引,局部の乾燥・除菌洗浄等を自動的に行うものである。
bしたがって,股間へのオムツカップユニットの装着について,被介護者に痛みや違和感を与えないこと,腰部への負担も出来る限り軽くすること,ホースからの漏れを防ぐことが,原告装置1の機能上重要な要素であり,本件製造情報は有用な情報である。
(エ)非公知性 a原告装置2は,販売準備段階にあり,まだ販売を行っていない。
b原告装置1,2が展示会に出品されていること,原告装置1,2に係るパンフレットが製作され,頒布されていることは事実である。
しかしながら,展示会において原告装置1,2を観察し,あるいは,パンフレットを見たという程度では,本件製造情報を認識することはできない。
c原告装置1については,これまでに試作機50台を製造したのみであり,その管理状況等については,上記のとおりである。
d以上のとおり,本件製造情報は,公然と知られていない情報である。
イ原告は,原告の取締役であったBに対して,又は,Bの経営する ABG社との間の平成19年3月28日付け業務提携基本契約に基づき,同社に10対して,?原告装置1の本体及びカップ・ホースユニット,?原告装置1の取扱説明書(日本語版,韓国語版),?カップ・ホースユニットの図面,?原告が蓄積してきた製品開発や製造に関するノウハウを提供した。
B,又は,ABG社は,原告から本件製造情報を取得し,これを被告に対して開示した。
ウBが被告の代表者として,被告に本件製造情報を開示し,被告装置を製造させた行為は,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争行為である。
エまた,被告が本件製造情報を使用して被告装置を製造・販売する行為は,不正競争防止法2条1項8号に該当する不正競争行為である。
(4)原告の営業上の利益侵害されるおそれ被告装置が原告装置1,2と酷似していることに照らすと,被告装置が販売された場合には原告装置1,2の販売数が減少し,原告の営業上の利益侵害されるおそれが大きい。
(5)よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法3条1項に基づき,被告装置の譲渡等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告装置の廃棄を求める。
2請求の原因に対する認否及び被告の主張(1)請求の原因(1)(当事者)は認める。
(2)請求の原因(2)(被告による不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為)は,否認ないし争う。
ア本件の経緯について (ア)原告とI-WAVEJKとの間では,I-WAVEJKが自動排泄処理装置を製造し,同社から原告が自動排泄処理装置を仕入れることが予定されていた。
そこで,原告代表者であるAは,I-WAVEJKに対し,自動排泄11処理装置に関する情報を自ら開示し,同装置を開発,製造させた。原告の主張に係る自動排泄処理装置は,上記経緯において,Bが多額の資金を負担した上で,I-WAVEJKにより開発された装置である。
しかしながら,原告代表者であるAとBとは,自動排泄処理装置の仕入価格やその開発費用の負担などを巡って意見が対立するようになり,原告は,平成19年7月ころ,被告に対し,日本の会社から資金を得て独自に自動排泄処理装置を開発する旨を一方的に通告した。Bは,それまでに投下した資金を回収するため,被告とは別の法人(I-WAVEJK。後に商号を株式会社ABG International に変更)において,独自に自動排泄処理装置を開発,販売する途を探ることになった。
(イ)原告は,韓国法人であるI-WAVEJKを共同で設立したと主張する。
しかしながら,原告は資金を出していない。
また,セキュアソフトが自動排泄処理装置の製造を継続することができないようになった際,Bに対して,別の製造先を探す様に持ちかけてきたのは,原告代表者のAの方であった。Bは,Aの要請を受けて,韓国法人であるI-WAVEJK(株式会社ABG International )に技術者を集め,資金を提供するなどしたのである。
イ被告は被告装置の製造・販売を行っていないこと上記のとおり,韓国法人である株式会社ABG International (I-WAVEJK)が被告装置の製造,販売を行っているのであり,被告は,被告装置の製造,販売に関与していない。
被告は,韓国法人である株式会社ABG International (I-WAVEJK)からの依頼を受け,被告装置に係る連絡や事務等を行っているにすぎず,今後も,被告において,被告装置の製造,販売を行う予定はない。
ウ原告装置1,2の形態は原告の商品形態ではないこと12(ア)原告は,ナノマックスが有していた自動排泄処理装置に関する図面や技術情報を利用し,原告装置1を作成した。
原告装置1の形態は,ナノマックスの商品の形態(乙22)と類似している。
(イ)原告は,韓国企業のセキュアソフトが製造したサンプルを数台しか所持していない。
平成19年10月の国際福祉機器展においても,原告は,原告装置2の本体外側の模型を数個作成したのみで,本体内部の部品は,セキュアソフトが作成した部品をそのまま入れただけという試作機を出品していた。また,平成20年9月下旬の国際福祉機器展においても,原告が出品した装置は,上記と同様であり,状況の変化はなかった。3年以上の長期間にわたって上記のような状況に変化はなく,実際には,原告は,いまだに,原告装置1,2の量産品を開発し,販売することができていない。
(ウ)以上のように,原告は,独自の技術により原告装置1,2を開発したかのように主張するものの,原告には技術者がおらず,実際には,セキュアソフトなど他社が作成したものを利用しただけのことである。
原告装置1,2に係る形態は,ナノマックスに帰属するものであり,これが原告に帰属するとの主張は認めることができない。
エ原告装置1,2の形態と被告装置の形態との同一性について原告代表者であるAが,I-WAVEJKに自動排泄処理装置を開発,製造させたのであるから,被告装置の形態が原告装置1,2の形態と似ていたとしても,それはむしろ当然のことである。
しかしながら,両者の間には,以下のような差異点がある。
(ア)被告装置においては,オムツカップの色彩は,男性用は青色,女性用は紫色にしている。
13 (イ)被告装置においては,原告からの指導があったため,オムツカップのフロントカバーに二つの穴が設けられているものの,カバーを装着すると,上記二つの穴には意味がない。そのため,この点について,被告装置の形状を変更する予定である。
(ウ)被告装置においては,オムツカップのヒダ状部分は,圧力分散のためではなく,ずれ防止のために設けられている。しかしながら,上記目的を十分達し得ていないので,別の形状を研究している。
(エ)オムツカップの材質として,シリコンとウレタン類を選択するのは,自動排泄処理装置という商品においては,一般的なことであり,原告装置1,2に特有のことではない。
耐久性の観点から,被告は材質の選択(シリコン)を変更することを考えている。
(オ)被告製品においては,ホースとカップとが固定されていて分離することができない構造となっている。
しかしながら,他社の開発商品にも一体型はある。一体型では掃除もしにくいため,被告は分離型に変更するつもりである。
(カ)使用説明書の記載(商品の取付け方)は,他社の開発商品も含め,おおむね似通った記載になっている。
(キ)被告装置においては,汚物タンクのふたを全開することができるようになっている。他方,原告装置では,汚物タンクのふたを全開することができず,汚物タンクの中に付着した汚物を洗浄することはできない。
(ク)原告装置においては,操作パネルは,8Bitのソフトプログラムで作成されており,単純な数字表現しかできない。他方,被告装置においては,16Bitのソフトプログラムで作成されているので,音声ガイドも可能であるし,男女の別,大便の量など,使用される状況に合わせて調整することが可能である。
14 (ケ)原告装置においては,小便の塩分を感知したときに,そのまま反応する仕組みとなっている。他方,被告装置においては,センサーの数を増やし,少量の小便が繰り返される場合には5回を感知したときに,センサーが反応する仕組みとなっている。
また,原告装置においては,大便を感知すると,一定のサイクルで作動するようになっているものの,被告装置では,サイクル途中で大便が出た場合にも,それを感知して,最初に戻り,吸引と洗浄をするようになっている。
(3)請求の原因(3)(被告による不正競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争行為)は,否認ないし争う。
本件製造情報は,以下のとおり,営業秘密には該当しない。
ア原告代表者であるAは,I-WAVEJKの技術者らに対し,本件製造情報を自ら開示したものである。
Bは,自動排泄処理装置の開発作業には関与しておらず,原告の取締役としての地位を利用して,無断で秘密管理された情報を持ち出すなどということはしていない。
イ原告装置1,2に係る設計図は,ナノマックスなど他社が作成したものであり,原告装置1,2の現物も,セキュアソフトが企画製造したサンプルにすぎない。
したがって,原告が他者の図面等の技術文書に関して,自己の営業秘密であると主張するのは失当である。
ウ原告は,上記のとおり,自ら,技術者らに対し,本件製造情報を開示していたのであるから,本件製造情報には秘密管理性も,非公知性も認められない。
エ原告装置においては,カップが一つのサイズしかないので,使用者の身体が大きい場合には着用することができず,逆に小さい場合には,排泄物15などの横漏れを防ぐことが難しくなる。これに対し,被告装置は,男性用,女性用,それぞれに大,中,小のサイズがあり,6種類のサイズが用意されている。
また,原告装置においては,シリコンを使用しているとはいえ,使用者には,シリコンによる深刻な皮膚トラブルの発生が予想される。これに対し,被告装置では,専用綿カバーを使用して,カップのシリコンに使用者の肌が直接触れないように工夫している。また,カップのヒダ状部分も,被告装置においては,圧力分散の目的ではなく,ずれ防止のために用いられている。
以上のように,本件製造情報はそもそも有用性の認められないものであるか,あるいは,被告装置においては,本件製造情報がそのままには使用されていないものである。
(4)請求の原因(4)(原告の営業上の利益侵害されるおそれ)は否認ないし争う。
第3当裁判所の判断1証拠(甲1ないし5,7,12ないし35,甲36の1ないし3,甲37,甲38の1・2,甲39の1ないし3,甲40ないし47,乙1ないし4,6,8,乙10の1・2,乙13,乙14の1ないし5,乙16,18,25,26,28,平成21年3月16日の検証期日における検証の結果(以下「検証1」という。),平成22年12月21日の口頭弁論期日における検証の結果(以下「検証2」という。),証人C,原告代表者本人,被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告装置1,2及び被告装置の開発,製造の経緯等について,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
(1)原告は,平成17年7月21日,韓国企業であるセキュアソフトの代表者であるEとの間で,原告の製品である自動排泄処理装置「YUIMARL」の韓国国内における製造,販売に関し,以下の内容を有する基本合意契約を16締結した(甲13)。
ア原告は,Eあるいは同人の関連会社に対し,韓国国内での自動排泄処理装置「YUIMARL」の製造及び販売権とそれに必要な設計図面,製品仕様書,部品仕様書,サービスハンドブックを提供する。
イ原告は,ナノマックスとの間で,同社保有の自動排泄処理装置に関わる特許の韓国国内でのEあるいは同人の関連会社の実施権を保証することを内容とする同意書を相互に交換する。
ウ原告は,原告の全体株式中の20%に相当する新株を発行し,Eあるいは同人の関連会社に対し,代価2億円で譲渡する。
2億円の払込みをもって,本契約は発効する。
エ原告は,Eあるいは同人の関連会社が韓国国内で自動排泄処理装置「YUIMARL」の製造を開始した後に,その製造する製品の各部品,ユニット,組立完成品が原告の品質基準に合格した場合には,Eあるいは同人の関連会社を拠点として韓国製品を購入する。
(2)原告は,平成17年8月22日,ナノマックスとの間で,原告が指定する韓国企業一社に対し,韓国国内に限り自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造,販売権を供与するについて,ナノマックスが原告から上記自動排泄処理装置の開発資金の投資を受けることなどを内容とする覚書を締結した(甲14,15)。
(3)原告は,平成17年11月15日,同年7月21日付け基本合意契約書に基づき,Eの指定する韓国企業であるセキュアソフトとの間で,以下の内容を有する業務提携契約を締結した(甲16,17)。
ア原告は,ナノマックスが特許を出願中の技術を使用して,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」(旧名称「ダイアレット」)を,ナノマックスと共同で開発した。
イ自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の重要部分には,ナノマックスが特許17を出願中の技術のほか,原告及びナノマックスがそれぞれ有している技術及びノウハウが使用されている。
ウ原告は,ナノマックスとの間で,平成16年8月26日付け「総販売元契約」を締結し,ナノマックスが製造する自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の一切の販売権を保有している。
エ原告は,セキュアソフトから原告の発行する新株の引受代金2億円の払込みを受けるのと引き換えに,セキュアソフトに対し,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」を韓国国内に輸入して同国内で販売する独占的権利,同装置を韓国国内で製造及び販売する独占的権利,同装置の製造のために必要な技術の韓国国内における専用実施権,同装置に係るノウハウ等の開示を原告又はナノマックスから受ける権利等を付与する。
オ原告は,本契約の締結後すみやかに,セキュアソフトに対し,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造のために必要な,同装置に係る技術及びノウハウ,設計図面,製品仕様書,部品仕様書,サービスハンドブック等を実費で開示する。
カセキュアソフトは,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の部品のうち装着部位である「カップユニット」については,原告及びナノマックスが保有する特殊なノウハウが使用されていることから,日本において,原告が販売する部品を実費額で購入して使用するものとする。原告は,「カップユニット」が同装置の最も重要な部品であり,同部品の供給が停止すると同装置の製造が事実上不可能となることから,セキュアソフトから「カップユニット」の注文を受けた場合には,正当な理由がない限り,注文を受諾する義務を負う。
(4)その後,原告は,ナノマックスとの間で,原告からナノマックスに対する開発資金の投資に関する合意書を締結したり,原告が出願人となって,排泄物処理装置に関する特許登録出願等をしたりした(甲18ないし21)。
18(5)原告は,平成18年11月11日,日本再生エネルギーとの間で,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造販売に関し,原告が,日本再生エネルギーに対して,同装置を供給し,同社は,同装置の拡販に努めること,原告が,日本再生エネルギーに対し,販売促進用として,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」20台を提供することなどを内容とする業務提携基本契約及び覚書を締結した(甲30,31)。
原告は,セキュアソフトとの間の業務提携契約に基づき,同社が製造した原告装置1(試作機)50台のうち20台を,平成18年11月,日本再生エネルギーに販売した。
(6)原告は,平成19年2月23日,Bが代表者を務めていた株式会社ビーエム(なお,Bは,平成20年1月8日をもって,同社の取締役を解任されている。甲35)との間で,「発砲スチロールリサイクルシステム」事業を,株式会社ビーエムが韓国国内において事業展開することに関する業務提携基本契約を締結し,同年3月12日には,上記業務提携基本契約に基づいて,原告と株式会社ビーエムとが韓国国内において事業展開するに当たって設立する法人(「株式会社I-WAVEJ.K(仮称)」)の出資や株式保有に関する事項についての覚書を締結した(甲22,23,乙13)。
これを受け,平成19年3月16日,廃棄物リサイクル処理機及び溶剤の企画,製造,販売等を目的として,韓国ソウル市に本店をおくI-WAVEJK(平成19年11月16日,株式会社ABG International に商号変更)が設立された(乙8)。
被告代表者であるB及び原告代表者であるAは,I-WAVEJKの理事に就任した。また,Bは,原告の取締役に就任した(なお,Bが原告の取締役であった期間は,平成19年3月ころから同年9月ころまでの間である。)。
(7)また,原告は,自動排泄処理装置の製造販売に係る事業について,Bと提携して事業展開をすることとし,平成19年3月28日ころ,Bが代表者を19務めるABG社(なお,Bは,平成20年1月8日をもって,同社の取締役を解任されている。甲36の1ないし3)との間で,「YuiMarl」等原告の取扱商品を販売する事業をABG社が日本国内において展開することに関し,ABG社は,原告の同意を得たうえで,日本国内で事業を行う複数の販売会社と独占的に契約をすることができること,原告は,ABG社を通じて消耗品を含むハードウエア及び使用方法を販売会社に供与すること,原告は,ABG社が日本国内で事業を推進するにあたり,同社に商品を供給することを保証することなどを内容とする業務提携基本契約を締結した(甲24)。
(8)原告は,セキュアソフトとの間で,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造,販売に関する業務提携契約を締結していたものの,セキュアソフトは,平成19年4月ころには,装置の開発製造を継続することが不可能な状況となった。
そこで,原告は,平成19年4月ころ以降,Bに依頼して,韓国国内における自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造委託先を探すことにした。また,Bからの提案を受けて,原告は,廃棄物リサイクル処理機に関する事業を行うことなどを目的として設立した韓国法人であるI-WAVEJKを韓国における自動排泄処理装置に関する事業拠点とすること,すなわち,同社において自動排泄処理装置を製造し,原告が同装置を仕入れて販売することを計画した。
原告は,I-WAVEJKに対し,製造の可否を検討させるため,原告装置1(試作機)を提供した。
(9)原告は,平成19年7月ころまで,I-WAVEJKの技術者らに対し,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造情報等を提供し,同社において,同装置の開発,製造を目指していたものの(乙3,10),平成19年7月ころには,原告とBとは,装置の仕入価格や資金提供などの問題をめぐって意見が対立するようになった。
20 原告は,韓国国内で自動排泄処理装置を製造するという方針から日本企業に製造委託をする方針に切り替えた。
原告は,平成19年7月下旬ころには,日本法人である他社に装置の製造を委託するとして,I-WAVEJKに対し,提携関係の解消を通告した。
(10 )Bは,原告の上記通告に対して抗議したものの,交渉はまとまらなかった。
そこで,Bは,原告が提携関係の解消を通告した後,平成19年11月16日には,I-WAVEJKの商号を株式会社ABG International に変更し,同社において被告装置を製造するようになった。また,Bは,被告会社の商号を,平成19年8月13日には,株式会社ABG International に変更し,被告において,被告装置の日本における販売事業を行うことにした(甲4,5,28,29,34,40,41)。
(11 )原告は,平成19年7月4日には,株式会社オーシーエスとの間で,株式会社オーシーエスが原告に対し,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」等の製造,品質,販売面におけるコンサルタント並びに事業促進のサポートを行うこと等を内容とする「製造,品質,販売に関する覚書」を締結した(甲25)。
(12 )次いで,原告は,荏原電産との間で,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」のOEM 製造に関する交渉を行い,平成20年1月25日付けで,同社との間で,介護用自動排泄処理装置のOEM 取引に関し,以下の内容を有する OEM基本契約を締結した(甲26)。
ア対象製品は,原告が製造・販売している介護用自動排泄処理装置の「MODEL : YU シリーズ」の型式のものとする。
イ原告は,対象製品の製造を荏原電産に委託し,同社はこれを引き受ける。
ウ製品の仕様は,原告の提示する製品仕様書によるものとし,荏原電産は,当該製品仕様書及び原告からの指示に基づき,対象製品を製造する。
(13 )原告は,原告装置1(甲7。検証1の目的物のうち「原告商品」)を平成19年10月上旬に開催された国際福祉機器展に,また,原告装置2(甲2。
21検証2の目的物)を平成20年9月下旬に開催された国際福祉機器展に,それぞれ出品して展示した(甲3,40ないし42,乙25)。
なお,原告と荏原電産とは,平成20年9月下旬に開催される国際福祉機器展への出品にあわせて,試作量産機を100台製造すること,その後は月産1000台の量産体制に入ることを計画していた(甲38の1・2)。
(14 )また,原告は,NI帝人商事との間で,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」に関し,原告がNI帝人商事を日本及び日本以外の国における販売特約店に指定して商品を同社に継続的に売り渡し,NI帝人商事は原告から商品を買い受けて二次特約店に販売することなどを内容とする販売特約店契約(甲44)を締結すべく交渉を行っていた。
(15 )ところが,被告が,平成20年9月下旬に開催された国際福祉機器展に被告装置を出品したことから(甲5),NI帝人商事は被告との間で紛争となることを懸念して,原告との正式な販売特約店契約の締結に至っていない。
( 16 )なお,原告装置2も,被告装置も,現在まで商品として販売されるに至っていない。
2被告が不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為を行ったか否かについて(1)原告は,被告装置が原告装置1又は原告装置2の形態を模倣した装置であるから,被告による被告装置の譲渡行為等は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する旨主張する。
(2)原告装置1について不正競争防止法2条1項3号に掲げる不正競争に関しては,「日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について,その商品の形態模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示し,輸出し,又は輸入する行為」については,同法3条の規定は適用されない(同法19条1項5号イ)。
22 ところで,前記1(5)で認定したとおり,原告は,平成18年11月11日,日本再生エネルギーとの間で,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」の製造販売に関し,原告が,日本再生エネルギーに対して,同装置を供給し,同社は,同装置の拡販に努めること,原告が,日本再生エネルギーに対し,販売促進用として,自動排泄処理装置「ゆいまぁる」20台を提供することなどを内容とする業務提携基本契約及び覚書を締結し,原告は,同月,日本再生エネルギー株式会社に対し,原告装置1を20台販売した。
そうすると,原告装置1が「日本国内において最初に販売された」のは,平成18年11月であると認められるから,本件口頭弁論が終結された日(平成22年12月21日)の時点で,3年の保護期間が既に経過していたことになる。
したがって,原告は,原告装置1の形態を模倣した商品の譲渡等の行為について,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求権を行使することはできない。
(3)原告装置2について ア原告装置1の形態 原告装置1の形態は,別紙2-2のとおりであり,具体的には,以下の形態を有する(甲6,7,検証1)。
?本体とカップ・ホースユニットから成る。
?本体(寸法は,390?(W)×509?(D)×480?(H)である。)は,隅取りがされて,角部が丸みを帯びた,おおむね直方体状の形状をしている。本体の上部正面(前面)寄りには操作パネルが,底部にはキャスターが,それぞれ配されている。
また,正面側の側面上部(上記操作パネルのすぐ下の辺り)には,カップ・ホースユニットのホース接続口が配されている。なお,接続口にはふたが付いており,ホースが接続されていないときには,同接続口を23ふたで覆うことができるようになっている。
?操作パネルは,四隅が隅取りされて,丸みを帯びた,おおむね長方形の形状をしている。
?本体上部の本体カバーは開閉することができるようになっており,本体カバーを開くと,内部には,取り外し可能な汚物タンクと洗浄水タンクが収納されており,正面から見て左側に汚物タンクが,同右側に洗浄水タンクがそれぞれ配されている。また,本体内部には,汚物タンクと本体とを接続する汚物タンク接続パイプ,消臭剤投入口が設けられている。
?カップ・ホースユニットは,オムツカップ,接続ホース,本体接続ユニットから成る。これらはすべてが一体として接続されており,取り外すことはできない。
オムツカップは,カップ基台が硬質プラスチックで作られており,フロントカバー部,クッション部,腰当て部は,それぞれ,シリコンで作られている。
フロントカバー部には,穴が二つ設けられている。
クッション部の立ち上がり部分は,縁に羽根状部分が設けられている。
さらに,腰当て部には,ヒダ状部分が設けられており,ヒダの数は,4列52個(18個,8個,8個,18個)となっている。
イ原告装置2の形態 原告装置2の形態は,別紙3-2のとおりであり,具体的には,以下の形態を有する(甲2,検証2)。
?本体とカップ・ホースユニットから成る。
?本体(寸法は,458?(W)×602?(D)×492?(H)である。)は,隅取りがされて,角部が丸みを帯びた,おおむね直方体状の形状をしている。本体の正面(前面)側の側面上部寄りには操作パネル24が配されており,正面から見て両側の側面後方下部には各一つずつ円形状のキャスターが配されている。
また,背面側の側面上部には,カップ・ホースユニットのホース接続口が配されている。なお,接続口にはふたが付いており,ホースが接続されていないときには,同接続口をふたで覆うことができるようになっている。
?操作パネルは,長方形に略三分の一円形を合体させたような形状をしている。
?本体上部の本体カバーは開閉することができるようになっており,本体カバーを開くと,内部には,取り外し可能な汚物タンクと洗浄水タンクが収納されており,正面から見て左側に洗浄水タンクが,同右側に汚物タンクがそれぞれ配されている。また,本体内部には,汚物タンクと本体とを接続する汚物タンク接続パイプ,消臭剤投入口が設けられている。
?カップ・ホースユニットは,オムツカップ,接続ホース,本体接続ユニットから成る。これらはすべてが一体として接続されており,取り外すことはできない。
オムツカップは,カップ基台が硬質プラスチックで作られており,フロントカバー部,クッション部,腰当て部は,それぞれ,シリコンで作られている。
フロントカバー部には,穴が二つ設けられている。
クッション部の立ち上がり部分は,縁に羽根状部分が設けられている。
さらに,腰当て部には,ヒダ状部分が設けられており,ヒダの数は,4列52個(18個,8個,8個,18個)となっている。
ウ以上のとおり,原告装置1と原告装置2とは,?本体の大きさが,原告装置2の方が原告装置1よりやや大きい点,?操作パネルが,原告装置125では,上部正面(前面)寄りに配されているのに対し,原告装置2では,本体の正面(前面)側の側面上部寄りに配されている点,?操作パネルの形状,?カップ・ホースユニットのホース接続口が,原告装置1では,正面側の側面上部(操作パネルのすぐ下の辺り)に設けられているのに対し,原告装置2では,背面側の側面上部に設けられている点,?洗浄水タンクと汚物タンクが,原告装置1では,正面から見て左側に汚物タンクが,同右側に洗浄水タンクがそれぞれ配されているのに対し,原告装置2では,正面から見て左側に洗浄水タンクが,同右側に汚物タンクがそれぞれ配されている点において相違する。
しかしながら,原告装置1と原告装置2とは,本体の全体的な形状,すなわち,隅取りがされて,角部が丸みを帯びた,おおむね直方体状の形状をしている点で共通している。また,原告装置1,2は,いずれも自動排泄処理装置であり,オムツカップを身体に装着して使用するものであることに照らすと,需要者が最も着目する部分(商品としての特徴的部分)はカップ・ホースユニットの形状,特にオムツカップの形状であると考えられ,これらの形状においては,原告装置1と原告装置2とは共通する(オムツカップの形状は同一である。)。なお,原告装置1,2において,カップ・ホースユニット,特にオムツカップの形状が商品としての特徴部分であることについては,原告自身が認めるところである(甲6,証人C,弁論の全趣旨)。
以上によれば,原告装置1と原告装置2とは,本体部分の形状において相違する点があるものの,商品としての特徴的部分であるカップ・ホースユニットの形状において共通する(オムツカップの形状は同一である)から,原告装置2の形態は,原告装置1の形態と実質的に同一であるというべきである。なお,原告自身,その主張において,原告装置1と原告装置2との相違点はわずかな点にとどまり,最も重要な部位であるカップ・ホ26ースユニットにおいて全く同一であるから,原告装置2は,原告装置1をマイナーチェンジしたものにすぎず,その形状や機能において大きな変化はないから,原告装置1の形状及び機能を基本的に維持した後継機種と評価されるべきものである旨主張しており,原告装置2の形態が原告装置1の形態と実質的に同一であることは,原告の主張自体からも明らかであるといえる。
エ原告装置2の形態は,原告装置1の形態と実質的に同一であるというべきであるから,原告装置1が最初に販売された平成18年11月をもって,原告装置2が「日本国内において最初に販売された」日であると解すべきである。
そうすると,原告装置2についても,本件口頭弁論が終結された日(平成22年12月21日)の時点で,3年の保護期間が既に経過していたことになるから,原告は,原告装置2の形態を模倣した商品の譲渡等の行為について,不正競争防止法3条1項に基づく差止請求権を行使することはできない。
オ仮に,原告装置2が原告装置1の単なる後継機種ではなく,両者の形態が相違するものであるとみるのであれば,原告が,原告装置2の商品形態として,その模倣について不正競争防止法2条1項3号による保護を求め得るのは,原告装置2の形態のうち,原告装置1の形態と実質的に異なる部分に基礎を置くものでなければならないというべきである。
前記認定のとおり,原告装置2の形態と原告装置1の形態とが相違するのは,操作パネルの位置・形状,カップ・ホースユニットのホース接続口の位置,洗浄水タンクと汚物タンクの収納位置といった本体の部分的な形態にすぎず,これらの点は,他社の同種商品においても適宜用いられるありふれた形態にすぎないというべきであるか(甲10,乙20ないし22),あるいは,そうでなくても,被告装置においては,操作パネルの位置・形27状,カップ・ホースユニットのホース接続口の位置,洗浄水タンクと汚物タンクの収納位置は,いずれも原告装置2とは異なるから,両者が実質的に同一の形態であるということはできない(検証1,2)。
(4)したがって,いずれにせよ,被告が不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為を行ったことを理由として,同法3条1項に基づき,被告装置の譲渡等の差止めを求め,同条2項に基づき,被告装置の廃棄を求める原告の請求は理由がない。
3被告が不正競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争行為を行ったか否かについて(1)原告は,原告装置1,2に係るオムツカップユニットの,?クッション部の立ち上がり部分に羽根状部分を設けている点,?腰当て部に圧力分散のためヒダ状部分を備えている点,?カップ基台が硬質プラスチックから成り,周辺の柔らかい部材(別紙4の「?フロントカバー」,「?クッション部」,「?腰当て部」)がシリコンから成る点,?ホースとカップが固定されていて分離することができない構造となっている点に係る製造ノウハウ(本件製造情報)が,原告の営業秘密に該当し,Bが被告の代表者として,被告に本件製造情報を開示し,被告装置を製造させた行為は,不正競争防止法2条1項7号に,被告が本件製造情報を使用して被告装置を製造・販売する行為は,同項8号に,それぞれ該当する旨主張する。
(2)しかしながら,原告の主張からは上記?ないし?の諸点に係る製造ノウハウの具体的内容が明らかであるとはいえず,原告の主張は営業秘密の特定を欠くものとして,失当であるといわざるを得ない。
(3)また,本件製造情報が,原告装置1,2のオムツカップユニットの形状や材質に係る情報であるとしても,?オムツカップユニットのクッション部の立ち上がり部分に羽根状部分を設けている点,?腰当て部に圧力分散のためヒダ状部分を備えている点,?カップ基台が硬質プラスチックから成り,周28辺の柔らかい部材(別紙4の「?フロントカバー」,「?クッション部」,「?腰当て部」)がシリコンから成る点,?ホースとカップが固定されていて分離することができない構造となっている点は,いずれも,原告装置1,2のオムツカップユニットを見た者が容易に認識し得る情報であるということができる。
そして,前記1(13)で認定したとおり,原告は,原告装置1を平成19年10月上旬に開催された国際福祉機器展に,原告装置2を平成20年9月下旬に開催された国際福祉機器展に,それぞれ出品して展示したのであるから,少なくとも,これら機器展を訪れて,展示された原告装置1,2を見た不特定多数の第三者は,上記オムツカップユニットの形状や材質に係る情報を認識したものと認められる。
ところで,不正競争防止法において「営業秘密」とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいうのであるから(不正競争防止法2条6項),上記オムツカップユニットの形状や材質に係る情報は,上記のとおり,国際福祉機器展に出品されて展示されたことにより,非公知性を欠くに至ったものというべきである。
(4)したがって,被告が不正競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争行為を行ったことを理由として,同法3条1項に基づき,被告装置の譲渡等の差止めを求め,同条2項に基づき,被告装置の廃棄を求める原告の請求は理由がない。
4よって,主文のとおり判決する。
追加
29裁判官柵木澄子裁判官小川卓逸(別紙1-2,別紙2-2,別紙3-2,別紙4は省略)30(別紙1-1)被告商品目録商品名自動排泄処理装置「セルフレットNA-301」本体寸法444?(W横)×532?(D縦)×492?(H高さ)内蔵タンク水槽タンク容量4000CC汚物タンク容量7000CC付属品カップホースユニット,カップホースユニットカバー,専用綿オムツ,綿カバー,カップ綿カバー,リモコン,専用電源コード,アースコード,専用薬品,エアーフィルター形状,機能等別紙1-2のとおり31(別紙2-1)原告商品目録1商品名自動排泄処理装置「ゆいまぁる」本体寸法390?(W横)×509?(D縦)×480?(H高さ)内蔵タンク洗浄水タンク容量4000CC汚物タンク容量6000CC付属品カップユニット,ホースユニット,リモコン形状,機能等別紙2-2のとおり32(別紙3-1)原告商品目録2商品名自動排泄処理装置「ゆいまぁる」本体寸法458?(W横)×602?(D縦)×492?(H高さ)内蔵タンク洗浄水タンク容量3500CC汚物タンク容量6500CC付属品カップ・ホースユニット,リモコン,ホース洗浄用ブラシ,オムツカバー,除菌消臭剤形状,機能等別紙3-2のとおり
裁判長裁判官 阿部正幸
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