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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成22ワ7025不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成22ネ10039不正競争行為差止等請求控訴,同附帯控訴事件 判例 不正競争防止法
平成23ネ10023損害賠償等請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成23ネ10019損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成20ネ245製造販売差止等請求控訴事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 記憶 /  差止請求(差止) /  逸失利益 /  因果関係 /  損害額の推定(損害額と推定) /  利益額(利益の額) /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  正当な理由 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密であると認識 /  秘密として管理 /  秘密保持義務 /  営業上の情報 /  営業秘密 /  他人に損害を加える目的(加害目的) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 35836号 業務禁止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2011/09/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成23年9月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成20年(ワ)第35836号 業務禁止等請求事件

口頭弁論終結日 平成23年6月23日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 被告Aは,別紙ディーラー名簿1ないし3を使用し,同名簿記載の者

に対し,面会を求め,電話をし,又は郵便物を送付するなどして,別紙

商品目録記載1ないし8及び10ないし14の各商品に係る売買契約の

締結,締結の勧誘等の販売業務を行ってはならない。

2 被告らは,原告に対し,連帯して440万2099円及びこれに対す

る平成22年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払

え。

3 被告Aは,原告に対し,861万0900円及びこれに対する平成2

2年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

5 訴訟費用は,原告に生じた費用の8分の1と被告Aに生じた費用の4

分の1を被告Aの負担とし,原告に生じた費用の24分の1と被告オキ

シーヘルスジャパン株式会社に生じた費用の12分の1を被告オキシー

ヘルスジャパン株式会社の負担とし,原告,被告A及び被告オキシーヘ

ルスジャパン株式会社にそれぞれ生じたその余の費用を原告の負担とす

る。

6 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告らは,別紙ディーラー名簿1ないし3を使用し,同名簿記載の者に対し,

面会を求め,電話をし,又は郵便物を送付するなどして,別紙商品目録記載の

商品に係る売買契約の締結,締結の勧誘等の販売業務を行ってはならない。

2 被告らは,別紙ディーラー名簿1ないし3を廃棄せよ。

3 被告らは,原告に対し,連帯して5000万円及びこれに対する平成22年

9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,健康器具の販売等を業とする原告が,取締役兼営業担当部長であっ

た被告A(以下「被告A」という。)及び同被告が原告を退職した後に設立し

た健康器具の販売等を業とする被告オキシーヘルスジャパン株式会社(以下「被

告オキシーヘルス」という。)に対し,被告Aにおいては,不正の手段により

営業秘密が記載された原告の顧客名簿を取得し,原告を退職した後に入社した

バイオネット株式会社(以下「バイオネット」という。)に上記顧客名簿を開

示し,バイオネット・被告オキシーヘルスで上記顧客名簿を使用して原告の顧

客らに対する販売活動を行い,被告オキシーヘルスにおいては,バイオネット

から上記顧客名簿を取得し,仮に被告Aによる上記顧客名簿の取得が不正の手

段によるものでなかったとしても,被告Aにおいて図利加害目的で上記顧客名

簿を開示したり使用したりしているとして,労働契約又は不正競争防止法に基

づく上記顧客名簿を使用した販売業務の差止めや不正競争防止法に基づく上記

顧客名簿の廃棄を求めるとともに,債務不履行又は不法行為に基づく上記販売

活動による逸失利益相当額の損害賠償を求め,また,被告Aにおいて,原告の

貸付先等であったバイオネットに,その財産を不当に流出させ,株式会社ニュ

ーロサイエンス(以下「ニューロサイエンス」という。)を経由した被告オキ

シーヘルスへの事業譲渡をさせるなどして,バイオネットを破産させたことに

より,原告のバイオネットに対する貸付金等の回収が不能になったとして,不

法行為に基づく貸倒れ等による損失相当額の損害賠償を求める事案である。

1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めら

れる事実)

(1) 当事者等

ア 原告は,医療器械器具や健康器具等の輸出入及び製造販売等を業とする

株式会社である。

イ 被告Aは,平成17年3月1日,原告に社員として採用され,同年4月

4日までは営業担当部長として,同月5日からは取締役兼営業担当部長と

して,それぞれ勤務していた者であり,平成20年5月31日に原告を退

職するとともに,同年6月にバイオネットに入社した(取締役就任につき

弁論の全趣旨)。

ウ 被告オキシーヘルスは,美容・健康器具等の製造販売及び輸出入等を業

とする株式会社であり,平成20年11月7日,被告A等によって設立さ

れ,代表取締役を同被告が,取締役をB(以下「B」という。)等が,監

査役をC(以下「C」という。)が,それぞれ務めている(目的・取締役・

監査役につき弁論の全趣旨)。

エ バイオネットは,音楽・映像著作物の販売,健康食品・器具等の輸入及

び販売等を業とする株式会社であり,代表取締役をD(以下「D」という。)

が務めていた(目的・役員につき甲5)。

バイオネットは,健康器具である高気圧エア・チェンバー・システム「O

asisO2」本体や付属品等を販売する米国オキシーヘルスLLCから

国内総輸入販売権を取得して,上記商品を輸入・販売していた。

オ ホロニック株式会社(以下「ホロニック」という。)は,電子応用医療機

器・健康機器の製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社であり,代表

取締役をCが務めている(乙12)。

カ ニューロサイエンスは,神経科学用等の研究機器・機材の輸出入及び製

造・販売等を業とする株式会社であり,代表取締役をE(以下「E」とい

う。)が,取締役をB等が,監査役をCが,それぞれ務めている(乙13)。

キ 株式会社アンス(以下「アンス」という。)は,青果物の仲介及び販売,

衛生・健康・美容・医療用機器の輸出入及び販売等を業とする株式会社で

あり,代表取締役をBが,取締役をE等が,それぞれ務めている(乙11)。

(2) 原告・バイオネット間の代理店契約等の締結と顧客情報の蓄積等

ア 原告は,平成17年1月5日,バイオネットとの間で,原告がバイオネ

ットから高気圧エア・チェンバー・システム「OasisO2」本体や付

属品等を仕入れて国内の医療関連施設(医師・歯科医師・看護師・理学療

法士・柔道整復師・鍼灸師など医療関連国家資格及びこれに準ずる資格を

有する者)に販売する旨の代理店契約及び覚書(以下「本件覚書」という。)

を締結した。

イ 原告は,前記代理店契約及び本件覚書に基づき,別紙商品目録記載1な

いし8の各商品(以下「本件各商品」という。 及び同目録記載9の商品
) (以

下,本件各商品と併せて「本件各商品等」という。)を販売していくととも

に,アフターサービスのために,顧客となった代理店やエンドユーザーの

名称,住所,電話番号,取引実績等から構成される原告以外では一般に入

手することができない顧客情報を原告事務所のパーソナルコンピュータ内

に蓄積していった。

ウ 原告は,平成18年6月8日,バイオネットとの間で,同社による「O

asisO2」後継機の開発に資金面で協力する旨の覚書を締結し,平成

19年9月28日,同社に対し,1500万円を貸し付けて資金協力を行

った(以下,この貸付けを「本件貸付け」という。覚書・貸付けにつき甲

15,92の3・4)。

(3) 被告Aによる顧客名簿の取得・開示とバイオネットへの転職等

ア 被告Aは,平成20年5月2日,原告に対し,同月31日付けで退職す

る旨申し入れた(甲17)。

イ 被告Aは,平成20年5月15日,部下に対し,原告の顧客情報から代

理店(ディーラー)情報を抽出した一覧表を作成するよう指示し,翌16

日,この部下から,ファクシミリで別紙ディーラー名簿1の送付を受けた

(日付につき甲3の1,16)。

ウ 被告Aは,平成20年5月20日,部下に対し,原告の顧客情報から抽

出する代理店情報を本件各商品等が2台以上販売された先に限定するとと

もに都道府県別・業種別にした一覧表を翌21日に行われるバイオネット

との会合までに作成するよう指示し,この部下から別紙ディーラー名簿2

を受け取った。その上で,被告Aは,上記会合に先立ち,これをバイオネ

ットの社員に引き渡した(日付・名簿の引渡しにつき甲16,証人F,被

告A本人)。

エ 被告Aは,平成20年5月下旬ころ,原告事務所のパーソナルコンピュ

ータから原告の顧客情報を印刷し,その印刷物をバイオネットの事務所に

持参した上で,これを同社の社員に引き渡し,別紙ディーラー名簿3(以

下,別紙ディーラー名簿1ないし3を「本件各名簿」という。)のとおり,

原告の顧客情報がバイオネットのパーソナルコンピュータに入力された

(時期につき証人F)。

オ 被告Aは,平成20年6月から同年11月までの間,バイオネットにお

いて,次のとおり,原告の顧客らに対し,いずれもホロニックを経由して,

本件各商品等を販売した。

時期 販売先 商品 数量 販売価格

(ア) 6〜11月 ノースパラマ株式会社 OasisO2 8台 1600万円

(イ) 7月29日 株式会社オフィスナカツ OasisO2 1台 240万円

(ウ) 8月 6日 有限会社柔薬品商事 OasisO2mild 1台 128万7000円

(エ)10月23日 有限会社柔薬品商事 OasisO2mild 1台 108万9000円

(4) 被告オキシーヘルスによる顧客情報の取得とバイオネットの破産等

ア バイオネットは,平成20年7月ころ,資金繰りが悪化し,本件各商品

等の輸入資金が不足した。そこで,バイオネットは,被告AやCホロニッ

ク代表取締役兼ニューロサイエンス監査役の紹介で,同月,ニューロサイ

エンスとの間で,同社に輸入資金を融資(いわゆる輸入ファイナンス)し

てもらう代わりに,同社を経由して本件各商品等を仕入れる旨の輸入代行

契約を締結するとともに,アンスとの間で,コンサルティング契約を締結

した。

イ 被告オキシーヘルスは,平成20年11月,バイオネットから,本件各

商品に関する顧客や原告の顧客情報を引き継いだ。このため,被告オキシ

ーヘルスの代表取締役に就任した被告Aは,以後,被告オキシーヘルスに

おいて,バイオネットや原告の顧客らに対し,本件各商品を販売している。

ウ バイオネットは,平成20年12月1日,事業を廃止し,同月12日に

自己破産を申し立て,同月17日,東京地方裁判所から,破産手続開始決

定を受けた(平成20年(フ)第23062号,甲6)。

(5) 原告の秘密管理に関する諸規定等

ア 平成18年5月22日にいずれも実施された原告の就業規則及び秘密管

理規定には,次の規定がある。

(ア) 就業規則

(秘密の保持)

48条 在職中はもとより退職後を通じて,業務上知り得た会社や顧客

のデータ,秘密または情報および会社の不利益となる事柄を他に

漏らし,もしくは漏らそうとしてはなりません。

(競業の禁止)

49条 在職中はもとより退職後を通じて,書面による会社の承諾なし

に,前条のデータ,秘密および情報を利用して競業的行為を行う

ことはできません。

(イ) 秘密管理規定

(重要情報の範囲)

2条 この規定において秘密情報とは,次に掲げるものをいう。

1号 取引先の名称,所在地および取引実績

2号 顧客に関する情報の一切(担当者名,修理履歴,納品日,掛率

等を含む)

3号 保有する全ての個人情報(以下略)

(管理の方法)

3条 秘密情報は,書類での管理およびデータベースとしてコンピュー

ターによる管理とする。

(閲覧)

4条 秘密情報の書類は経営管理部の書庫で施錠のうえ管理する。

(アクセス)

5条 秘密情報へのアクセスは会社代表者の事前承認を条件とし,社員

がその業務に必要な場合のみ閲覧できるものとする。

(プリントアウト等)

6条 秘密情報の開示を受けた社員が次のことをするときは,あらかじ

め会社代表者の許可を得なければならない。

1号 秘密情報をプリントアウトするとき

2号 秘密情報をハードディスクまたはその他の記録媒体へコピーし

たときは,コピーしたディスクの保管に責任をもたなければなら

ない。

(保管責任)

7条 秘密情報をプリントアウトした時は,そのペーパーに責任を持た

なければならない。また秘密情報をハードディスクまたはその他の

記憶媒体にコピーしたときは,コピーした媒体の保管に責任を持た

なければならない。

(情報漏洩の禁止)

8条 秘密情報の開示を受けた社員はそれを第三者に洩らしてはならな

い。

(不正アクセスの禁止)

9条 代表者の事前承認を受けていない社員は,秘密情報にアクセスし

てはならない。

(甲90,91)

イ 被告Aは,平成18年5月28日,前記就業規則及び前記秘密管理規定

を受け,原告に対し,次の誓約事項を含む秘密保持誓約書を提出した。

(秘密保持の誓約)

1条 貴社就業規則および貴社秘密管理規定を遵守し,次に示される貴社

の秘密情報について,貴社の許可なくいかなる方法をもってしても,

開示,漏洩もしくは業務目的以外で使用しないことを約束いたします。

1号 取引先の名称,所在地および取引実績

2号 顧客に関する情報の一切

3号 保有する全ての個人情報(以下略)

(退職時の秘密情報の返還)

3条 私は,貴社を退職することになった場合は,私が管理もしくは所持

している秘密情報および記録媒体の一切を退職時までにすべて貴社に

返還し,私の手元に秘密情報および記録媒体は一切残存していないこ

とを誓います。

(退職後の秘密保持)

4条 秘密情報については,貴社を退職した後においても,開示,漏洩ま

たは使用しないことを遵守いたします。

(甲1)

2 争点及び当事者の主張

本件の争点は,労働契約違反に関し,差止め請求については,@被告Aはバ

イオネット・被告オキシーヘルスで本件各名簿を使用して原告の顧客に対し別

紙商品目録記載の各商品に関する販売活動を行ったか,債務不履行,不法行為

又は会社法350条に基づく損害賠償請求については,更にA被告Aがバイオ

ネットに原告の顧客情報を開示し,バイオネット・被告オキシーヘルスで原告

の顧客らに対して販売活動を行うなどしたことに,正当な理由があるか,B因

果関係・損害である。

不正競争防止法違反に関し,差止め・廃棄請求については,@本件各名簿に

記載された顧客情報は営業秘密に該当するか,A被告Aはバイオネット・被告

オキシーヘルスで本件各名簿を使用して原告の顧客に対し別紙商品目録記載の

各商品に関する販売活動を行ったか(労働契約違反の争点@に同じ。),B被

告Aが本件各名簿を取得したのは,不正の手段によるものか,仮に不正の手段

によるものでない場合,被告Aがバイオネットに本件各名簿を開示し,バイオ

ネット・被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を行うなどした

ことに,図利加害目的があるか,不法行為又は会社法350条に基づく損害賠

償請求については,更にC因果関係・損害である。

債権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求については,@被告Aについてバ

イオネットに財産を不当に流出させ,ニューロサイエンスを経由した被告オキ

シーヘルスへの事業譲渡をさせるなどしたことによる債権侵害の不法行為が成

立するか,A因果関係・損害である。

(1) 労働契約違反について

ア 争点@(被告Aはバイオネット・被告オキシーヘルスで本件各名簿を使

使用して原告の顧客に対し別紙商品目録記載の各商品に関する販売活動

を行ったか)について

(原告の主張)

被告Aは,バイオネット・被告オキシーヘルスで,本件各名簿を使用し

て,原告の顧客に対し,本件各商品等やこれらと同種の別紙商品目録記載

10ないし14の各商品等に関する販売活動を行った。被告Aが本件各名

簿を使用していることは,販売先が本件各名簿に記載された顧客に集中し

ていることから明らかである。

(被告らの主張)

被告Aは,バイオネット・被告オキシーヘルスで本件各名簿を使用して

は原告の顧客に対する販売活動を行っていない。本件各名簿に記載されて

いた原告の対応に不満を抱く顧客からの購入希望によるものである。ま

た,被告オキシーヘルスでは,別紙商品目録記載9の商品を販売していな

い。

イ 争点A(被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開示し,バイオネッ

ト・被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を行うなどした

ことに,正当な理由があるか)について

(被告らの主張)

(ア) 原告とバイオネットの間には,平成20年1月ころから,バイオネ

ットの経営が悪化していたため,共同でジョイントベンチャーを設立し

て経費削減や売上げ増加を図る計画があった。

被告Aは,前記計画における原告側の担当者であり,原告の顧客情報

がジョイントベンチャーを円滑に開始させ,ジョイントベンチャーがア

フターサービスを行ったり保険を掛けたりするのに必要であった上,バ

イオネットからも度々開示を求められ,原告とバイオネットとが競合す

る関係にもなかったため,平成20年5月21日に行われた上記計画に

関するバイオネットとの会合に別紙ディーラー名簿1・2を持参し,原

告退職前の同月に同社に対して別紙ディーラー名簿3を開示したにすぎ

ない。

(イ) 被告Aがバイオネットで原告の顧客らに対して販売活動を行ったの

は,上記顧客らが,原告の対応に不満を抱き,原告の担当者であった被

告Aに対応を求め,バイオネットの代表取締役であるDや専務取締役で

あるF(以下「F」という。)からも対応するよう命じられたからであ

る。そもそも原告とバイオネットとの間で締結された代理店契約や本件

覚書は,バイオネットが原告の顧客らに対して販売活動を行うことを禁

じていなかった。

また,被告Aが被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動

を行っているのは,米国オキシーヘルスLLCが被告オキシーヘルスに

対して同被告が国内総輸入販売元となってバイオネットの行っていたア

フターサービスを継続するよう求めたからである。

さらに,本件覚書で定められた原告の販売先は,医療関連施設に限ら

れていたから,被告Aがバイオネットや被告オキシーヘルスで医療関連

施設以外の原告の顧客らに対して販売活動を行ったことに,問題はない。

(ウ) 以上によれば,被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開示し,

バイオネットや被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を

行ったことには,正当な理由がある。

(原告の主張)

(ア) 原告とバイオネットとの間には,平成20年5月当時,共同でジョ

イントベンチャーを設立する計画があり,同月21日にバイオネットと

の会合が行われたものの,初会合であって,原告の顧客情報は必要では

なかった。

(イ) 原告の顧客らが原告の対応に不満を抱いていた事実はないし,バイ

オネットの代表取締役であるDや専務取締役であるFが被告Aに対して

原告の顧客に対応するよう命じた事実もない。また,本件覚書は,バイ

オネットが原告の顧客らに対して販売活動を行わないことを前提として

いる。

さらに,原告は,本件覚書を締結した後,バイオネットからの要請を

受けて,医療関連施設以外の顧客らに対しても販売活動を行っていたも

のであり,被告Aが上記顧客らに対して販売活動を行ったことが正当化

されるわけではない。

(ウ) 以上によれば,被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開示し,

バイオネットや被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を

行ったのは,原告とバイオネットや被告オキシーヘルスとを競業させる

目的に基づくものであり,正当な理由がない。

ウ 争点B(因果関係・損害)について

(原告の主張)

(ア) 原告は,本件各商品等に関し,被告Aが退職する前である平成17

年3月から平成20年5月までの3年3か月間は毎月平均5765万

7297円の売上げがあったのに,被告Aが退職した後である同年6

月から同年11月までの6か月間は毎月平均1747万6675円の

売上げしかなく,毎月の売上げが4018万0622円減少した。この

売上げの減少は,被告Aの前記労働契約に違反する販売活動によるもの

である。原告の粗利益率は,最も少ない月でも31.6%はあったから,

原告は,被告Aの労働契約違反により,年間粗利で1億5236万49

18円の損害を被った。

(計算式)4018万0622円×0.316×12月=1億5236万4918円

(イ) 仮に前記損害が認められないとしても,バイオネットは,平成20

年6月から同年11月までの6か月間に,前記1(前提事実)(3)オ記載

の販売に加え,次のとおり,原告の顧客らに対し,いずれもホロニック

を経由して,本件各商品等やその付属品を販売し,その販売価格合計は

3701万7600円となる。

時期 販売先 商品 数量 販売価格

a 6月 松本針灸整骨院 O2リキッド 10本 2万8800円

b 6月 松本針灸整骨院 O2オイル 10本 3万円

c 6月 玉井整骨院 O2リキッド 10本 2万8800円

d 6月 玉井整骨院 O2オイル 10本 3万円

e 8月 有限会社アプトワーク OasisO2 1台 225万円

f 8月 8日 安山整骨院 OasisO2 1台 300万円

g 8月12日 最上耳鼻咽喉科 OasisO2mild 1台 128万7000円

h10月10日 ノースパラマ株式会社 OasisO2 3台 660万円

i10月21日 ノースパラマ株式会社 OasisO2 1台 170万円

j11月20日 セントラルメディカル株式会社 OasisO2mild 1台 128万7000円

バイオネットは,粗利から変動経費である荷造運賃を控除して算出し

た限界利益率が39.9%であったから,上記の取引により合計147

7万0022円の利益を得た。

(計算式) 3701万7600円×0.399=1477万0022円

また,被告オキシーヘルスは,平成20年11月から平成22年8月

までの1年10か月間に,粗利から変動経費である運賃・荷造包装費・

販売奨励金・販売手数料を控除して算出した限界利益額が5168万3

921円であったから,同額の利益を得た。

このため,被告らは,平成20年6月から平成22年8月までの2年

3か月間に,合計6645万3943円の利益を得ており,不正競争防

止法5条2項類推適用により,この利益額が原告の損害額と推定される。

(被告らの主張)

争う。本件各商品等の売上げが減少したのは,平成18年秋ころに有名

スポーツ選手による「OasisO2」の使用がマスコミで報じられたこ

とで生じた本件各商品等のブームが終了したことや,平成20年6月に財

団法人日本アンチ・ドーピング機構が高圧酸素カプセルの使用はドーピン

グ違反の疑いがあるとして使用自粛を求める見解を通達したこと,同年9

月に本件各商品等についてリコール問題が生じたこと,リーマンショック

に続く不況が生じたことによるものである。

また,前記(原告の主張)aないしeは,キャンセルされた。fは,バ

イオネットから医療関連施設ではないスポーツバンク株式会社に対して

販売され,同社から安山整骨院に対して販売されたにすぎない。gの販売

先は,最上耳鼻咽喉科ではなく,その経営者の妻であって,原告の顧客で

はない。h・iは,ホロニックが販売したのであって,バイオネットが販

売したのではない。jは,被告Aが販売したものではない。

(2) 不正競争防止法違反について

ア 争点@(本件各名簿に記載された顧客情報は営業秘密に該当するか)に

ついて

(原告の主張)

本件各名簿に記載された原告の顧客情報は,原告事務所内のパーソナル

コンピュータにデータが保管されており,利用し得る社員が限定されてい

る上,当該社員には秘密保持誓約書を差し入れさせて秘密保持義務を負わ

せるとともに,毎月行われている営業会議等で流出させないよう注意喚起

をするなどし,客観的に秘密と認識し得る状態で管理されていたから,秘

密として管理されていた情報である。また,本件各名簿に記載された顧客

情報は,原告が創業時から行ってきた医療関連機器等の販売活動の中で集

積したものであり,当該顧客や紹介先への販売活動やアフターサービスに

役立つから,有用な情報であるとともに,原告以外では一般に入手するこ

とができないから,非公知の情報でもある。

したがって,本件各名簿に記載された顧客情報は,営業秘密に該当する。

(被告らの主張)

原告のパーソナルコンピュータ内に保管された顧客情報は,パスワード

の設定がなく,利用し得る社員も限定されていなかった上,秘密管理規定

は遵守されず,営業会議等で注意喚起がされたこともなかったから,客観

的に秘密として管理されていた情報ではない。また,本件各商品は,高額

で大きく,耐用期間も長く,同じ顧客が再び購入することは少ないから,

本件各名簿に記載された顧客情報は,有用な情報ではない。さらに,本件

各名簿に記載された顧客情報は,その半分以上が被告Aにおいて原告に入

社する前から知っていたものである上,特に別紙ディーラー名簿1・2に

記載された顧客情報は,顧客名と住所だけであり,インターネットや電話

帳で調べられるから,非公知の情報でもない。

したがって,本件各名簿に記載された顧客情報は,営業秘密に該当しな

い。

イ 争点B(被告Aが本件各名簿を取得したのは,不正の手段によるものか,

仮に不正の手段によるものでない場合,被告Aがバイオネットに本件各名

簿を開示し,バイオネット・被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して

販売活動を行うなどしたことに,図利加害目的があるか)について

(原告の主張)

(ア) 被告Aは,平成20年5月,事情を知らない部下に対し,前記(1)

イ(原告の主張)(ア)のとおり,虚偽の理由を告げて別紙ディーラー名

簿1・2を取得するとともに,原告から無断で別紙ディーラー名簿3を

取得したから,被告Aが本件各名簿を取得したのは,不正の手段による

ものである。

(イ) 仮に不正の手段によるものでないとしても,被告Aがバイオネット

に本件各名簿を開示し,バイオネットや被告オキシーヘルスで原告の顧

客らに対して販売活動を行ったのは,前記(1)イ(原告の主張)(ウ)の

とおり,原告とバイオネットや被告オキシーヘルスとを競業させる目的

に基づくものであり,図利加害目的がある。

(被告らの主張)

(ア) 被告Aが本件各名簿を取得したのは,前記(1)イ(被告らの主張)(ア)

の理由によるものであって,不正の手段によるものではない。

(イ) 被告Aがバイオネットに本件各名簿を開示したのは,前記(1)イ(被

告らの主張)(ア)の理由によるものであるし,バイオネットや被告オキ

シーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を行ったのも,前記(1)イ

(被告らの主張)(イ)の理由によるものであって,図利加害目的がない。

ウ 争点C(因果関係・損害)について

(原告の主張)

前記(1)ウ(原告の主張)(ア)のとおり,原告は,被告らの不正競争防

止法違反により,年間粗利で1億5236万4918円の損害を被った。

仮に前記損害が認められないとしても,前記(1)ウ(原告の主張)(イ)

のとおり,被告らは,平成20年6月から平成22年8月までの2年3か

月間に,合計6645万3943円の利益を得ており,不正競争防止法5

条2項により,この利益額が原告の損害額と推定される。

(被告らの主張)

前記(1)ウ(被告らの主張)と同様の理由により,争う。

(3) 債権侵害の不法行為について

ア 争点@(被告Aについてバイオネットに財産を不当に流出させ,ニュー

ロサ イエンスを経 由した 被告オキシー ヘルス への事業譲渡 をさせ るな

どしたことによる債権侵害の不法行為が成立するか)について

(原告の主張)

バイオネットは,平成20年6月以降,借入金の返済や多額に上る固定

費の負担,代表取締役であるDの浪費等により,資金繰りに窮するように

なり,翌7月には,本件各商品等の輸入資金が不足することになったもの

の,その時点では破産原因は生じていなかった。

これを受け,被告Aは,平成20年7月23日,Dに対し,ニューロサ

イエンスが輸入ファイナンスを付けてくれるとして,アンス代表取締役兼

ニューロサイエンス取締役であるBとホロニック代表取締役兼ニューロサ

イエンス監査役であるCを紹介した。その結果,バイオネットは,ニュー

ロサイエンスとの間で輸入代行契約を締結させられるとともに,アンスと

の間でコンサルティング契約を締結させられ,D・Fの個人保証やバイオ

ネットの実印・銀行印,通帳等も奪われ,実権を握られた。

その上で,被告Aは,ニューロサイエンスの代表取締役であるEやBと

共謀の上,バイオネットに,ニューロサイエンスから高額な仕入れやアン

スへの低額な販売を行わせたり,商品を低額に見積もったニューロサイエ

ンスへの代物弁済を行わせたりして,財産を不当に流出させた。

また,平成20年10月30日にはバイオネットからニューロサイエン

スへ,同年11月4日には同社から設立中の被告オキシーヘルスへ,順次,

事業譲渡をさせ,バイオネットを無資力に陥らせて破産させた。その結果,

原告は,バイオネットに対する本件貸付け等に係る債権が回収不能となる

損害を被った。

したがって,被告Aは,バイオネットに財産を不当に流出させたりニュ

ーロサイエンスを経由した被告オキシーヘルスへの事業譲渡をさせたり

し,バイオネットを倒産させて原告の本件貸付け等に係る債権を無価値に

したものであるから,債権侵害の不法行為が成立する。

(被告らの主張)

バイオネットは,前記(1)ウ(被告らの主張)の理由により,平成20年

7月,本件各商品等の輸入資金が不足するようになり,その時点で既に破

産原因が生じていたものである。

被告AがDに紹介したのは,Cであり,同人がEとBを紹介したもので

ある。その結果,バイオネットは,輸入代行契約やコンサルティング契約

を締結したが,同社からの要望によるものであるし,DやFが個人保証を

行ったり同社の実印・銀行印,通帳等を預けたりしたものの,実権を握ら

れたわけではない。個人保証は,支払確保のために必要であるし,実印・

銀行印や通帳等を預けたのは,Dが出張で不在なことが多かった上,同人

が債権者に押印を迫られないようにするためにすぎない。

バイオネットによるニューロサイエンスからの仕入れが高額だったり,

アンスへの販売やニューロサイエンスへの代物弁済で見積もった商品が

低額だったりしたことは争う。高額な仕入れは,ニューロサイエンスに対

する融資の返済も含むものである。低額な販売も,資金調達のために行っ

たものであって,その額でも原価を下回ってはいない。

また,被告オキシーヘルスは,平成20年11月,米国オキシーヘルス

LLCから国内総輸入販売権を取得するとともに,バイオネットから本件

各商品に関する顧客や原告の顧客情報を引き継いでいる。しかしながら,

それは,バイオネットを国内総輸入販売元にしたままでは本件各商品等の

輸入を継続することができなくなるおそれがあったからである。被告オキ

シーヘルスを国内総輸入販売元に変更することで本件各商品の輸入を継

続することができるようにした上で,同被告の利益をバイオネットに回す

予定であった。バイオネットは,8000万円で申し込んだセーフティネ

ット保証付き融資を2000万円しか受けられなかった結果,破産したに

すぎない。

したがって,被告Aは,バイオネットに財産を不当に流出させたりニュ

ーロサイエンスを経由した被告オキシーヘルスへの事業譲渡をさせたり

したものではない上,仮に財産の不当な流出や事業譲渡が認められても,

バイオネットには既に破産原因が生じていたから,不法行為を構成しな

い。

イ 争点A(因果関係・損害)について

(原告の主張)

原告は,バイオネットが破産した平成20年12月17日当時,同社に

対して本件貸付けに係る債権等2662万5617円を有していたとこ

ろ,被告らの不法行為により,全額が回収不能となる損害を被った。

(被告らの主張)

争う。

(4) よって,原告は,被告A及び同被告が代表取締役を務める被告オキシーヘ

ルスに対し,原告の就業規則48条49条,秘密保持誓約1条4条の労

働契約又は不正競争防止法3条1項2条1項4・5・7・8号に基づき,

本件各名簿を使用した別紙商品目録記載の各商品に関する販売業務の差止

を求めるとともに,不正競争防止法3条2項2条1項4・5・7・8号に

基づき,本件各名簿の廃棄を求め,また,労働契約違反の債務不履行,労働

契約違反,不正競争防止法違反若しくは民法上の不法行為又は会社法350

条に基づき,主位的には,連帯して労働契約違反又は不正競争防止法違反の

損害賠償金1億5236万4918円と債権侵害に基づく損害賠償金266

2万5617円の合計1億7899万0535円の内金5000万円及びこ

れに対する平成22年8月27日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日であ

る同年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金

の支払を,予備的には,連帯して労働契約違反又は不正競争防止法違反の損

害賠償金6645万3943円と債権侵害に基づく損害賠償金2662万5

617円の合計9307万9560円の内金5000万円及びこれに対する

上記訴えの変更申立書送達の日の翌日である同年9月4日から支払済みまで

民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める。

第3 当裁判所の判断

1 労働契約違反に関する争点@(被告Aはバイオネット・被告オキシーヘルス

で本件各名簿を使用して原告の顧客に対し別紙商品目録記載の各商品に関する

販売活動を行ったか)について

(1) 販売活動を行った商品について

前記第2の1(前提事実)(3)オ・(4)イのとおり,被告Aが原告の顧客に

対し,バイオネットでは本件各商品等を,被告オキシーヘルスでは本件各商

品を,それぞれ販売していた事実は,当事者間に争いがない。また,証拠(甲

119の1・2)によれば,被告Aが被告オキシーヘルスで別紙商品目録記

載10ないし14の各商品を販売している事実が認められ,上記争いがない

事実と総合すれば,被告Aが被告オキシーヘルスで原告の顧客に対して別紙

商品目録記載10ないし14の各商品を販売している事実を推認することが

できる。他方,被告Aが原告の顧客に対し,バイオネットにおいては同目録

記載10ないし14の各商品を,被告オキシーヘルスにおいては同目録記載

9の商品を,それぞれ販売していた事実については,いずれも証拠がない。

(2) 本件各名簿の使用について

本件各名簿には,原告の顧客である代理店やエンドユーザーの名称,住所,

電話番号,販売年月日,販売した商品の種類・シリアルナンバー・価格・修

理歴等の情報が最大で953件記載されている。相当数の名称や住所程度の

情報ならまだしも,1000件近い顧客の名称や住所,電話番号,販売年月

日,販売した商品の種類・シリアルナンバー・価格・修理歴等の情報につい

てまで,本件各名簿を使用せずに原告の顧客らに対して販売活動を行うこと

は,事実上不可能である。また,前記認定のとおり,被告Aがバイオネット

に対して本件各名簿に記載された情報を開示するとともに,被告オキシーヘ

ルスがバイオネットから本件各名簿に記載された情報を取得したのは,バイ

オネットや被告オキシーヘルスでの原告の顧客らに対する販売活動に,本件

各名簿に記載された情報が必要だったからこそというべきである。これらを

総合すれば,被告Aがバイオネットや被告オキシーヘルスで本件各名簿を使

用して原告の顧客に対する販売活動を行っていたことを推認することができ

る。

この点につき,被告らは,被告Aが原告の顧客に対する販売活動を行って

いるのは,本件各名簿を使用したことによるものではなく,本件各名簿に記

載されていた原告の対応に不満を抱く顧客からの購入希望によるものである

旨主張し,同旨の陳述をするノースパラマ株式会社,株式会社オフィスナカ

ツ,有限会社柔薬品商事及びスポーツバンク株式会社の各陳述書(乙3ない

し5,29)を提出する。確かに,被告らの上記主張と証拠を前提とすれば,

一部の原告の顧客の名称や住所,電話番号程度の情報は使用しなかった可能

性がある。しかしながら,当該顧客は,被告Aにとって新規の顧客ではなく,

自らが対応してきた旧知の顧客であるから,販売時期や販売した商品の種

類・シリアルナンバー・修理歴等,過去の取引に関する情報を基に対応する

ためには,本件各名簿を参照せざるを得ないことは明らかである。したがっ

て,被告Aは本件各名簿を使用して原告の顧客に対する販売活動を行ってい

たものと容易に推認することができるのであって,被告らの上記主張や証拠

は採用することができない。

(3) 小括

以上によれば,被告Aは,本件各名簿を使用して原告の顧客に対し,バイ

オネットでは本件各商品等(別紙商品目録記載1ないし9)の各商品に関す

る販売活動を,被告オキシーヘルスでは本件各商品(同目録記載1ないし8)

及び同目録記載10ないし14の各商品に関する販売活動を,それぞれ行っ

ていたものというべきである。

2 労働契約違反に関する争点A(被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開

示し,バイオネット・被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活動を

行うなどしたことに,正当な理由があるか)について

(1) 顧客情報の開示について

被告らは,原告の顧客情報が原告とバイオネットの間で計画されていたジ

ョイントベンチャーを円滑に開始させ,ジョイントベンチャーがアフターサ

ービスを行ったり保険を掛けたりするのに必要であった上,原告とバイオネ

ットとが競合する関係にもなかったため,被告Aがバイオネットに原告の顧

客情報を開示したことには正当な理由がある旨主張する。

しかしながら,証拠(甲13,16,115,116,乙1,2,14,

15,証人F,同D,原告代表者,被告A本人)によれば,@原告とバイオ

ネットは,平成19年ころから売上げが減少し,同年秋ころからは特に落ち

込んでいたため,平成20年3月ころ,両者の間に共同でジョイントベンチ

ャーを設立して経費削減等を図る計画が持ち上がり,同年5月21日,今後

の全体的な方針を合意するための初会合が行われたこと,このため,上記会

合に原告の顧客情報など詳細な情報は必要なかったこと,その上,上記会合

は,人事案等で折り合わずに即日決裂したこと,また,A本件各商品等に保

険を掛けるためには,設置場所の情報があれば足り,本件各名簿に記載され

た情報は必要がなかったこと,さらに,B本件覚書2・3条には,バイオネ

ットが原告に対して国内の医療関連施設への「OasisO2」本体や付属

品等の販売を一任し,万一原告とバイオネットの間で競合等による紛争が発

生した場合,協議により対等に,かつ,誠意をもって対処する旨規定されて

いることが認められる。

前記認定の事実によれば,被告Aが前記会合に先立って原告の顧客情報を

開示する必要はなかった上,上記会合でジョイントベンチャーを設立する計

画は決裂したため,上記会合後も原告の顧客情報を開示する必要はなかった

ものというべきである。また,原告とバイオネットは,同じ「OasisO

2」本体や付属品等を販売することによる競合の可能性があったため,本件

覚書で競合が発生した場合には協議して対処する旨を合意していたものとい

うべきであって,競合を生じさせるような原告の顧客情報の開示が許容され

ていたとはいえない。仮に被告らの主張する被告Aが原告の顧客情報を開示

した理由を前提としても,原告の就業規則48条秘密管理規定8条,秘密

保持誓約書1・4条には,原告の社員が原告の許可なく顧客情報を開示する

ことを禁じる旨が規定されていたのであるから,被告Aにおいて原告の許可

を得て開示すべきであったのに,被告Aが原告の許可を得たことについては,

証拠がない。

そうすると,被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開示したことに正

当な理由があるとはいえない。

(2) 原告の顧客らに対する販売活動について

ア 被告らは,まず,被告Aがバイオネットで原告の顧客らに対して販売活

動を行ったのは,上記顧客らが原告の対応に不満を抱いて被告Aに対応を

求め,DやFからも対応するよう命じられたからであり,また,そもそも

バイオネットが原告の顧客らに対して販売活動を行うことも禁じられて

いなかったから,上記販売活動には正当な理由がある旨主張する。

しかしながら,被告AがDやFから顧客らの求めに対応するよう命じら

れたことについては,DとFのいずれもがその証人尋問において否定して

おり,他にこれを認めるに足りる証拠がない。また,仮に原告の顧客らが

原告の対応に不満を抱いて被告Aに対応を求めていたとしても,前記第2

の1(前提事実)(5)ア(ア)のとおり,被告Aは,原告の就業規則49条

により,原告の承諾を得ないまま原告の顧客情報を利用して競業的行為を

行うことが禁じられていたのであるから,原告の承諾を得た上で本件各名

簿に基づく原告の顧客らへの販売活動を行うべきであったにもかかわら

ず,証拠(甲20,108,110)によれば,被告Aは,原告の承諾を

得ないまま秘密裏に本件各名簿を使用して原告の顧客らに対する販売活

動を行っていたことが認められる。さらに,前記(1)のとおり,原告とバ

イオネットが本件覚書で競合が発生した場合には協議して対処する旨を

合意していたことに照らすならば,競合を生じさせるような原告の顧客ら

に対する販売活動が許容されていたとはいえない。

そうすると,この点で,被告Aがバイオネットで原告の顧客らに対して

販売活動を行ったことに正当な理由があるとはいえない。

イ 被告らは,次に,被告Aが被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して

販売活動を行っているのは,米国オキシーヘルスLLCが被告オキシー

ヘルスに対してバイオネットの行っていたアフターサービスを継続する

よう求めたからであって,上記販売活動には正当な理由がある旨主張す

る。

しかしながら,前記アと同様,被告Aは,原告の承諾を得ないまま原告

の顧客情報を利用して競業的行為を行うことが禁じられているのである

から,被告オキシーヘルスにおいても,原告の承諾を得た上で本件各名簿

を使用した原告の顧客らに対する販売活動を行うべきであるのに,証拠

(甲115,乙15,原告代表者,被告A本人,弁論の全趣旨)によれば,

原告の承諾を得ないまま本件各名簿を使用した原告の顧客らに対する販

売活動を行っていることが認められる。

そうすると,この点で,被告Aが被告オキシーヘルスで原告の顧客らに

対して販売活動を行っていることに正当な理由があるとはいえない。

ウ 被告らは,さらに,本件覚書で定められた原告の販売先が医療関連施設

に限られていたから,被告Aがバイオネットや被告オキシーヘルスで医

療関連施設以外の原告の顧客らに対して販売活動を行ったことには正当

な理由がある旨主張する。

しかしながら,証拠(甲4,19,89,115)によれば,バイオネ

ットは,当初,医療分野への販売は原告に,他の美容・スポーツ・リラク

ゼーション3分野への販売は別の3社に,それぞれ委託していたものの,

別の3社の販売実績が上がらなかったため,原告に対して上記3分野への

販売も委託するようになり,原告の販売先が医療関連施設に限られなくな

ったことが認められる。

そうすると,この点でも,被告Aがバイオネットや被告オキシーヘルス

で原告の顧客らに対して販売活動を行ったことに正当な理由があるとは

いえない。

(3) 小括

上に述べたところによれば,被告Aがバイオネットに原告の顧客情報を開

示したりバイオネットや被告オキシーヘルスで原告の顧客らに対して販売活

動を行ったりしたことに正当な理由があるとはいえない。

したがって,被告Aは,原告の就業規則48・49条秘密管理規定8条

及び秘密保持誓約1・4条に基づき,原告の許可を得ることなく原告の顧客

情報を開示したり原告の承諾を得ることなく原告の顧客情報を利用して競業

的行為を行ったりしない義務を負っていたにもかかわらず,正当な理由なく,

バイオネットに原告の顧客情報を開示したりバイオネット・被告オキシーヘ

ルスで本件各名簿を使用して原告の顧客に対する販売活動を行ったりしたの

であるから(以下,これらの行為を「本件各行為」という。), 債務不履行

責任を負う。

3 労働契約違反に関する争点B(因果関係・損害)について

(1) 証拠によれば,次の事実が認められる(1円未満切捨て)。

ア 原告の本件各商品等に関する総売上高及び売上総利益

原告の本件各商品等に関する総売上高及び売上総利益(総売上高から売

上原価を控除した粗利益。以下同じ。)は,次のとおりである。

総売上高 売上総利益

(ア) 平成17年3月〜同18年2月 6億3730万7782円 1億9204万1553円

(月平均 5310万8981円 1600万3462円)

(イ) 平成18年3月〜同19年2月 13億7123万6708円 4億7602万4042円

(月平均 1億1426万9725円 3966万8670円)

(ウ) 平成19年3月〜同20年2月 9億2837万3621円 2億7242万1971円

(月平均 7736万4468円 2270万1830円)

(エ) 平成20年3月〜同年5月 1億3106万3348円 4153万4754円

(月平均 4368万7782円 1384万4918円)

(オ) 平成20年6月〜同年11月 1億2839万6857円 3402万2427円

(月平均 2139万9476円 567万0404円)

(カ) 平成20年12月〜同21年6月 1億6718万1618円 4194万9019円

(月平均 2388万3088円 599万2717円)

(キ) 平成21年7月〜同22年6月 1億9059万9461円 5746万7205円

(月平均 1588万3288円 478万8933円)

(甲120の1ないし4)

イ バイオネットの本件各商品等に関する総売上高及び売上総利益

バイオネットの本件各商品等に関する総売上高及び売上総利益は,次の

とおりである。

総売上高 売上総利益

(ア) 平成18年3月〜同19年2月 8億6250万4906円 1億8272万7060円

(月平均 7187万5408円 1522万7255円)

(イ) 平成19年3月〜同20年2月 6億3791万8354円 1億5343万9705円

(月平均 5315万9862円 1278万6642円)

(ウ) 平成20年3月〜同年10月 2億8678万9747円 1億2375万3815円

(月平均 3584万8718円 1546万9226円)

(甲121ないし123)

ウ 被告オキシーヘルスの本件各商品に関する総売上高及び売上総利益

被告オキシーヘルスの本件各商品に関する総売上高及び売上総利益は,

次のとおりである。

総売上高 売上総利益

(ア) 平成20年11月〜同21年9月 1億0524万0437円 5067万7937円

(月平均 956万7312円 460万7085円)

(イ) 平成21年10月〜同22年9月 3951万0237円 1762万8981円

(月平均 329万2519円 146万9081円)

(乙16の1,17,18)

エ 本件各商品等の売上高の推移等

本件各商品等の売上高は,有名スポーツ選手による「OasisO2」

の使用がマスコミに報じられたことから,平成18年の秋冬にかけて急増

した。しかし,平成19年以降はブームが終了して減少に転じ,同年秋こ

ろからは売上げが落ち込んでいった上,平成20年6月には財団法人日本

アンチ・ドーピング機構が医療機器としての高圧酸素カプセルの使用はド

ーピング違反の疑いがあるとして使用の自粛を求めたため,更に売上げが

落ち込んでいった。バイオネットは,同年7月ころから,百貨店に対する

販売が増えてきたものの,同年9月ころ,「OasisO2」本体が相次

いで破裂する事故が生じたため,多数の返品を受けるとともに,2か月間

にわたって百貨店から取引を停止され,資金繰りに窮するようになった。

(甲111の1・2,115,116,乙1,2,6,15,証人D,原

代表者

オ 原告,バイオネット及び被告オキシーヘルスの各利益の関係等

原告,バイオネット及び被告オキシーヘルスは,いずれも「Oasis

O2」本体や付属品等を主に販売しており,被告Aが原告を退職する前は,

国内総輸入販売権を有するバイオネットの販売する本件各商品等の約8

割が原告を経由して販売されていたため,バイオネットと原告の双方に販

売益が生じていたのに対し,被告Aが原告を退職した平成20年6月以降

は,バイオネットや同社を引き継いで国内総輸入販売権を取得した被告オ

キシーヘルスの販売する本件各商品等が原告を経由せずに販売されてい

るため,バイオネットや被告オキシーヘルスには販売益が生じているもの

の,原告には販売益がほとんど生じていない状態にある。そして,前記ア

ないしウのとおり,総売上高に占める売上総利益の割合(粗利益率)は,

平成20年3月から同年5月までの原告が約32%,平成20年3月から

同年10月までのバイオネットが約43%,平成20年11月から平成2

2年9月までの被告オキシーヘルスが約47%である。(甲9の1ないし

3,10・11・103の各1・2,115,120の1ないし4,12

1ないし123,乙16の1,17,18,原告代表者

(2) 前記認定の事実によれば,原告の売上げは,被告Aが本件各行為を行い始

める以前の平成19年ころから,継続的に減少していたのであるから,被告

Aが本件各行為を行い始めた後に生じた原告の利益の減少分が直ちに本件各

行為に起因するものとは認められないというべきである。

もっとも,バイオネットが平成20年6月以降に被告Aの販売活動により

原告の顧客に対して販売した売上げは,被告Aが本件各行為を行わなければ

原告の売上げになったものと認められるから,被告Aがバイオネットで原告

の顧客に対して販売した売上額に原告の限界利益率を乗じたいわゆる限界利

益の額の限度で,本件各行為に起因する損害と認めるのが相当である。

また,被告オキシーヘルスは,平成20年11月以降,バイオネットから

その顧客を引き継いだのであるから,被告オキシーヘルスの限界利益のうち

本件各行為に起因するものが占める割合は,バイオネットの限界利益のうち

本件各行為に起因するものが占める割合と同様であると認めるのが相当であ

る。

ア 被告Aがバイオネットで行った本件各行為に起因する損害額

(ア) 被告Aがバイオネットで原告の顧客に対して販売した売上額

被告Aがバイオネットで原告の顧客に対して販売した売上額は,前記

第2の1(前提事実)(3)オの2077万6000円のほか,証拠(甲2

1,107,110)によれば,次のとおり,1366万7600円と

認められ,合計で3444万3600円となる。

時期(平成20年) 販売先 商品 数量 販売価格

@ 6月 松本針灸整骨院 O2リキッド 10本 2万8800円

A 6月 松本針灸整骨院 O2オイル 10本 3万円

B 6月 玉井整骨院 O2リキッド 10本 2万8800円

C 6月 玉井整骨院 O2オイル 10本 3万円

D 8月 有限会社アプトワーク OasisO2 1台 225万円

E 8月 8日 安山整骨院 OasisO2 1台 300万円

F10月10日 ノースパラマ株式会社 OasisO2 3台 660万円

G10月21日 ノースパラマ株式会社 OasisO2 1台 170万円

この点につき,原告は,被告Aが平成20年8月12日に最上耳鼻咽

喉科に対して「OasisO2mild」1台を128万7000円で

販売した旨主張するが,証拠(甲21,34の4)によれば,最上耳鼻

咽喉科ではなく,その経営者の妻が個人的に購入したものであることが

認められ,同女が原告の顧客であったことを認めるに足りる証拠はない。

また,原告は,被告Aが同年11月20日にセントラルメディカル株式

会社に「OasisO2mild」1台を128万7000円で販売し

た旨も主張するが,被告Aが販売したことを認めるに足りる証拠はない。

したがって,上記原告の各主張は,いずれも採用することができない。

また,被告らは,前記@ないしDがキャンセルされた旨主張するが,

これを認めるに足りる証拠はない。また,被告らは,前記Eが医療関連

施設ではないスポーツバンク株式会社を経由して販売された旨主張する

が,前記2(2)ウのとおり,原告の販売先は医療関連施設に限られておら

ず,証拠(甲4,19)によれば,スポーツバンク株式会社も原告の顧

客であったことが認められる。さらに,被告らは,前記F・Gを販売し

たのはホロニックであってバイオネットではない旨主張するが, (甲
証拠

20,22,24,26,証人F,同D)によれば,ホロニックは,バ

イオネットが原告の顧客に対して販売活動を行っていることを隠すため

に経由されていた会社にすぎないことが認められる。したがって,上記

被告らの各主張は,いずれも採用することができない。

(イ) 原告の限界利益率

証拠(甲121)によれば,バイオネットの平成20年3月から同年

10月までの変動費は,荷造運賃の926万9553円,保険料609

万7742円及び旅費交通費1064万0321円の合計2600万7

616円であり,前記(1)イ(ウ)記載の同期間における売上総利益(月平

均1546万9226円)から上記変動費(月平均2600万7616

円÷8月)を控除した限界利益額の同期間における総売上高(月平均3

584万8718円)に対する限界利益率は,約34%であることが認

められる。

そして,原告の限界利益率は,前記バイオネットの限界利益率に,平

成20年3月から同年10月までのバイオネットの粗利益率(前記(1)

イ(ウ)の売上総利益(月平均1546万9226円)を総売上高(月平

均3584万8781円)で除した割合。約43%。)に対する同年3

月から同年5月までの原告の粗利益率(前記(1)ア(エ)の売上総利益(月

平均1384万4918円)を総売上高(月平均4368万7782円)

で除した割合。約32%。)の割合を乗じて求めるのが相当であり,約

25%であることが認められる。

(計算式)(1546万9226円−2600万7616円÷8月)÷3584万8718円=34%

(バイオネットの限界利益率)

34%×32%÷43%=25%(原告の限界利益率)

(1円未満切捨て・百分率は小数点以下四捨五入)

(ウ) 小括

そうすると,被告Aがバイオネットで行った本件各行為に起因する原

告の損害額は,前記(ア)のバイオネットでの売上額合計3444万36

00円に上記原告の限界利益率25%を乗じた861万0900円とす

るのが相当である。

(計算式)3444万3600円×0.25=861万0900円

イ 被告Aが被告オキシーヘルスで行った本件各行為に起因する損害額

前記のとおり,被告オキシーヘルスは,平成20年11月以降,バイオ

ネットからその顧客を引き継いだのであるから,被告オキシーヘルスの限

界利益のうち本件各行為に起因するものが占める割合は,バイオネットの

限界利益のうち本件各行為に起因するものが占める割合と同様であると

認めるのが相当である。

証拠(乙16の2,17,18)によれば,被告オキシーヘルスの平成

20年11月から平成21年9月までの変動費は,旅費交通費393万5

945円,保険料31万8100円,運賃101万9698円,荷造包装

費3万0975円,販売奨励金50万0850円及び販売手数料554万

2439円の合計1134万8007円であり,同期間の限界利益は,1

か月平均357万5448円であること(前記(1)ウ(ア)の売上総利益の

月平均460万7085円−1134万8007円÷11月) 平成21年10月から平成2


2年9月までの変動費は,旅費交通費236万9551円,保険料11万

9790円,荷造運賃60万4813円及び販売手数料408万1403

円の合計717万5557円であり,同期間の限界利益は,1か月平均8

7万1118円であること(前記(1)ウ(イ)の売上総利益の月平均146万

9081円−717万5557円÷12月)が認められる(1円未満切捨て)。

そうすると,平成20年3月から同年10月までの間のバイオネットの

限界利益(前記(1)イ(ウ)の売上総利益1億2375万3815円から前

記ア(イ)の変動費2600万7616円を控除した金額)のうち,前記ア

(ウ)のとおり,本件各行為に起因すると認められる861万0900円も

のが占める割合は,約9%であるから,被告Aが被告オキシーヘルスで行

った本件各行為に起因する損害額は,440万2099円とするのが相当

である(353万9693円+86万2406円)。

(計算式)861万0900円÷(1億2375万3815円−2600万7616円)=9%

357万5448円×0.09×11月=353万9693円(平成20年11月〜平成2

1年9月の損害額

87万1118円×0.09×11月=86万2406円(平成21年10月〜平成22

年8月の損害額
(1円未満切捨て・百分率は小数点以下四捨五入)

(3) 小括

以上によれば,原告の労働契約違反に関する請求は,原告が,被告Aに対

しては,原告の就業規則48条49条,秘密保持誓約1条4条の義務に

基づき,本件各名簿を使用した本件各商品及び別紙商品目録記載10ないし

14の各商品に関する販売業務の差止めを求めるとともに,上記義務違反の

債務不履行に基づき,バイオネットで行われた本件各行為に起因する損害賠

償金861万0900円及びこれに対する平成22年8月27日付け訴えの

変更申立書送達の日の翌日である同年9月4日から支払済みまで民法所定の

年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,被告らに対しては,上記債務

不履行又は会社法350条に基づき,連帯して被告オキシーヘルスで行われ

た本件各行為に起因する損害賠償金440万2099円及びこれに対する上

記申立書送達の日の翌日である同年9月4日から支払済みまで民法所定の年

5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(被告オキシ

ーヘルスに対する,差止請求及びバイオネットで行われた本件各行為に起因

する損害賠償請求は,被告Aが被告オキシーヘルスの代表取締役を務めてい

る事実だけでは,これを認めることができず,理由がない。)。

4 不正競争防止法違反に関する争点@(本件各名簿に記載された顧客情報は営

業秘密に該当するか)について

不正競争防止法上の営業秘密とは,秘密として管理されている生産方法,販

売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知

られていないものをいうところ(同法2条6項),ある情報が秘密として管理

されているというためには,当該情報に接し得る者が制限され,当該情報に接

した者に当該情報が秘密であると認識し得るようにしていることが必要である

と解される。

証拠(甲1,16,乙15,原告代表者,被告A本人,弁論の全趣旨)によ

れば,@原告は,平成20年当時,資本金の額が2400万円で社員数が約3

0人弱の中小企業であり,大別して「OasisO2」と医学教育関連製品,

血圧計等の健康機器をそれぞれ販売する3部門に分かれていたこと,A原告で

は,全社員に秘密保持誓約書を提出させていたこと,もっとも,B本件各商品

等の取引実績等から構成される顧客情報が蓄積された原告事務所のパーソナル

コンピュータは,他のパーソナルコンピュータとLANで接続されるとともに,

上記顧客情報にはパスワードが設定されていなかったため,本来は「Oasi

sO2」の販売部門に所属する営業社員だけが上記顧客情報を閲覧したり印刷

したりすることが許されていたにもかかわらず,実際には原告の従業員であれ

ば派遣社員やアルバイトでも自由に上記顧客情報を閲覧したり印刷したりする

ことができていたことが認められる(原告は,営業会議等で顧客情報を流出さ

せないよう注意喚起するなどしていた旨主張するものの,これを認めるに足り

る証拠はない。)。

前記認定の事実によれば,原告は,中小企業であって,情報を管理しやすい

環境にあった上,就業規則や秘密管理規定で秘密の管理に関する規定を定めた

り全社員に秘密保持誓約書を提出させたりして,情報を管理しようとしていた

ことはうかがわれるものの,実際には,顧客情報の閲覧や印刷に原告代表者

事前の承認や許可を得るという秘密管理規定で定められた手続が遵守されてい

なかった上,パスワードの設定等による物理的な障害も設けられていなかった

ため,権限のない原告従業員でも自由に閲覧したり印刷したりすることができ

たものである。

以上を総合すれば,原告は,本件各名簿に記載された顧客情報に接し得る者

を制限し,上記情報に接した者に上記情報が秘密であると認識し得るようにし

ていたとはいえないから,本件各名簿に記載された顧客情報は,秘密として管

理されていたとはいえず,不正競争防止法上の営業秘密には当たらないといわ

ざるを得ない。

以上より,原告の不正競争防止法違反に関する請求は,その余の点について

判断するまでもなく,理由がない。

5 債権侵害の不法行為に関する争点@(被告Aについてバイオネットに財産を

不当に流出させ,ニューロサイエンスを経由した被告オキシーヘルスへの事業

譲渡をさせるなどしたことによる債権侵害の不法行為が成立するか)について

(1) 証拠によれば,次の事実が認められる。

ア バイオネットは,平成20年7月ころ,資金繰りが悪化し,本件各商品

等の輸入資金が不足したため,同月23日,ニューロサイエンスから輸入

資金の融資を受けたものの,その後も,状況は改善せず,金融機関から融

資を受けられる見込みはなく,輸入代金の支払を怠って「OasisO2」

本体や付属品等の国内総輸入販売権を失うおそれが現実化してきた。この

ため,Dは,同年8月ころから,被告AやB等との間で,新会社を設立し

て当該新会社に負債を除いたバイオネットの全事業を引き継がせ,金融機

関から融資を受けるとともに,国内総輸入販売権を維持する方法を協議す

るようになった。(甲48,49,乙1,14,15,111の1・2,

証人D)

もっとも,バイオネットは,再び本件各商品等の輸入資金が不足したた

め,平成20年8月29日,ニューロサイエンスとの間で,バイオネット

が返済を怠ったときは「OasisO2」に係る営業権と商品を譲渡する

旨の停止条件付事業譲渡契約を締結した上で,同年9月2日,ニューロサ

イエンスから,弁済期を同年11月2日とし,連帯保証人をDとFとする

約定で,輸入資金約1402万円の融資を受けた(甲53,55の1ない

し5,56,乙14,24,証人D)。

イ バイオネットは,平成20年9月ころに生じた「OasisO2」本体

の破裂事故により,多数の返品を受けるとともに,2か月間にわたって百

貨店から取引を停止されることとなった。このため,バイオネットは,資

金繰りに窮することとなり,同年10月には,ニューロサイエンスに対す

る約3000万円の借入債務を同月末の弁済期に返済することができな

いことが判明した(甲111の1・2,116,乙1,証人D)。

そこで,Dと被告A等は,平成20年10月25日,計画倒産になる旨

主張して反対していたFを押し切り,バイオネットのニューロサイエンス

に対する前記事業譲渡は実行するものの,同社には本件各商品等の販売体

制がないため,新会社として設立される被告オキシーヘルスがニューロサ

イエンスから更に事業譲渡を受けることにより,「OasisO2」の販

売事業を継続させることとし,同社の了解も得た(甲46,111の1・

2,116,乙14,15,証人D,被告A本人,弁論の全趣旨)。

その上で,バイオネットは,平成20年10月30日,ニューロサイエ

ンスとの間で,「OasisO2」に係る営業権と商品を譲渡する旨の事

業譲渡契約を締結するとともに,ニューロサイエンスは,同年11月4日,

設立中の被告オキシーヘルスとの間で,上記営業権と商品を譲渡する旨の

事業譲渡契約を締結した(甲52,54,乙1)。

ウ バイオネットは,資金を得る目的で,平成20年11月4日には,東京

都中央区長に対して中小企業信用保険法2条4項所定の特定中小企業者

の認定(いわゆるセーフティネット保証)を申請し,金融機関に対して8

000万円の融資を申し込むとともに,ニューロサイエンスに対して「O

asisO2」(Mサイズ)5台と「OasisO2home」21台を

約54%割り引いて販売し,アンスに対し,翌5日には,「OasisO

2」(Mサイズ)5台と「OasisO2home」21台を約54%割

り引いて販売し,翌6日には,「OasisO2home」21台を約6

6%割り引いて販売し,翌7日には「O2リキッド」3875本と「O2

オイル」6937本を80%割り引いて販売し,同月14日には,ニュー

ロサイエンスに対し,「OasisO2」(Mサイズ)3台と「Oasi

sO2」(Sサイズ)2台,「OasisO2home」5台を約76%

割り引いた代物弁済を行い,ニューロサイエンスから,同月18日と同月

20日には,「OasisO2home」各1台を約3.7倍の価格で仕

入れるなどした。(甲57の2,58の1,61,67ないし73,86,

101,102,116,乙14,証人F)

エ 被告AとD,Bは,平成20年11月21日,米国オキシーヘルスLL

Cの代表者Gを訪ね,バイオネットからニューロサイエンスを経由した被

告オキシーヘルスへの事業譲渡について了解を得た。その結果,被告オキ

シーヘルスは,同月25日,米国オキシーヘルスLLCから国内総輸入販

売権を取得し,以後,本件各商品や別紙商品目録記載10ないし14の各

商品を販売している。(甲103の1・2,116,119の1・2,乙

1,14,15,証人D,被告A本人)

オ バイオネットは,平成20年11月27日,セーフティネット保証付き

融資を申し込んでいた金融機関から,2000万円しか融資が下りない旨

の回答を受けたことから,事業継続を断念し,同年12月1日に事業廃止

の上,同月17日,破産手続開始決定を受けた(甲6,111の1・2,

乙14)。

カ 原告は,バイオネットに対し,同社からニューロサイエンスを経由した

被告オキシーヘルスへの事業譲渡が開始された平成20年10月30日

の時点で,本件貸付けを含む1404万3294円の金銭債権を有してお

り,バイオネットが破産した同年12月17日の時点では,2662万5

617円に増加していた(甲92の1・2)。

(2) 前記認定の事実によれば,被告AがDと共に平成20年10月30日から

同年11月4日までの間にかけて「OasisO2」に係る営業権と商品を

バイオネットからニューロサイエンスを経由して被告オキシーヘルスに譲渡

させたのは,金融機関から融資を受けるとともに,国内総輸入販売権を維持

するためであったということができるから,これをもって原告を含むバイオ

ネットの総債権者に対する害意があったものとはいい難く,この点について

被告Aが不法行為責任を負うものとはいえない。

この点につき,原告は,被告AがEやBと共謀の上,バイオネットに,ニ

ューロサイエンスから高額な仕入れやアンスへの低額な販売を行わせたり,

商品を低額に見積もったニューロサイエンスへの代物弁済を行わせたりした

旨主張する。確かに,前記(1)ウのとおり,バイオネットがニューロサイエン

スから高額な仕入れやアンスへの低額な販売を行ったり,商品を低額に見積

もったニューロサイエンスへの代物弁済を行ったりしたことは認められるも

のの,これらの事実だけでは債権侵害による不法行為の違法性を基礎付ける

ものとはいい難い上,被告Aがこれらの行為に共謀したことを認めるに足り

る証拠はない。したがって,この点に関する原告の上記主張は,採用するこ

とができない。

以上より,前記以外の不法行為に関する請求は,その余の点について判断

するまでもなく,理由がない。

6 結論

以上によれば,原告の請求は,前記3(3)のとおり,被告Aに対しては,本

件各名簿を使用した本件各商品及び別紙商品目録記載10ないし14の各商

品に関する販売業務の差止めを求めるとともに,損害賠償金861万090

0円及びこれに対する平成22年9月4日から支払済みまで年5分の割合に

よる遅延損害金の支払を求め,被告らに対しては,連帯して損害賠償金44

0万2099円及びこれに対する上記同日から支払済みまで年5分の割合に

よる遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

東京地方裁判所民事第47部




裁判長裁判官 阿 部 正 幸




裁判官 山 門 優




裁判官 志 賀 勝




(別紙 ディーラー名簿1ないし3は省略)





(別紙)

当 事 者 目 録




東京都文京区<以下略>

原 告 日本ライトサービス株式会社

同訴訟代理人弁護士 稲 見 友 之

同 田 邊 勝 己

同 片 岡 剛

同 江 口 公 一

同 尾 山 祐 介

同 金 帝 憲

同 平 田 香 織

同 伊 倉 吉 宣

同 寺 島 哲

同 世 利 英 之

千葉県市川市<以下略>

被 告 A

東京都台東区<以下略>

被 告 オキ シーヘルスジ ャパン 株式会社

被告ら訴訟代理人弁護士 辻 惠

同 樋 口 卓 也

同 石 田 亮

同 石 渡 敏 暁





(別紙)

商 品 目 録




1 高気圧エア・チェンバー・システム「OasisO2」

2 高気圧エア・チェンバー・システム「OasisO2home」

3 ウォーターサーバー「Oxyserve」

4 携帯用高濃度酸素水「OxygenLiquidO4」

5 酸素オイル「OxygenTreatmentOil」

6 サプリメント「GreenO2」

7 マイクロバブルバス「MicroBubbleBath」

8 ペット用健康器具「DogsO2」

9 高気圧エア・チェンバー・システム「OasisO2mild」

10 高気圧チェンバー「Fortius」

11 高気圧チェンバー「Quamvis」

12 高気圧チェンバー「RESPIRO」

13 高気圧チェンバー「SOLACE」

14 高気圧チェンバー「VITAERIS」






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