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関連ワード 需要者 /  印象 /  模倣 /  過失 /  因果関係 /  利益額(利益の額) /  代理人 /  代表者 /  正当な理由 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 25522号 損害賠償請求事件
原告 株式会社日本衛生センター
同訴訟代理人弁護士 村上愛三
同 三好高文
同 松倉正和
同訴訟復代理人弁護士 照井史生
被告 株式会社日本住宅保全(以下「被告日本住宅保全」という。)
同訴訟代理人弁護士 林正孝
被告 株式会社匠建(以下「被告匠建」という。)
被告 株式会社エス・ケイジャパン(以下「被告エス・ケイジャパン」とい う。)
被告匠建及び被告エス・ケイジャパン訴訟代理人弁護士 小出重義
同 伊藤真
同 松山馨
同 村田良介
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/09/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告らは,原告に対し,各自,金162万1500円及びこれに対する,被告日本住宅保全については平成15年2月28日から,被告匠建及び被告エス・ケイジャパンについては同年1月29日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その4を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求及び本案前の答弁
1 請求 (1) 被告らは,原告に対し,連帯して,金3億4500万円及びこれに対する,被告日本住宅保全については平成15年2月28日から,被告匠建及び被告エス・ケイジャパンについては同年1月29日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告日本住宅保全は,原告に対し,金297万5654円及びこれに対する平成15年2月28日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
2 本案前の答弁(被告日本住宅保全) 第1項(2)に係る訴えは却下する。
事案の概要
本件は,@原告が,被告らに対して,被告らが販売する耐震補強金具の形態は,原告の販売する耐震補強金具「グレートホルダーV型」の形態を模倣したものであるとして,不正競争防止法2条1項3号,4条に基づく損害賠償金の支払を求め,また,A原告が,被告日本住宅保全に対して,同被告との間の商品売買契約について,被告日本住宅保全に債務不履行があったとして,民法415条に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。
1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。) (1) 当事者 原告は,一般家庭・アパート・飲食店の殺鼠,殺虫作業等を目的とする会社である。
被告日本住宅保全は,一般家庭・アパート・飲食店の殺鼠,殺虫作業等を目的とする会社である。
被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは,いずれも,住宅建材販売業等を目的とする会社である。
(2) 原告の製品 原告は,平成11年3月ころから,別紙原告製品目録記載の耐震補強金具「グレートホルダーV型」(以下「原告製品」という。)を製造,販売している(甲3)。
(3) 被告らの製品 被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは,平成13年9月ころ,別紙被告製品目録2記載の耐震補強金具(以下「被告製品2」という。)及び別紙被告製品目録3記載の耐震補強金具(以下「被告製品3」という。)をタイ王国(以下「タイ」という。)から輸入し,販売を開始した(甲18,弁論の全趣旨)。被告日本住宅保全は,被告製品2及び3を被告匠建又は被告エス・ケイジャパンから購入して販売していた(なお,別紙被告製品目録1記載の耐震補強金具については,同製品の販売に係る不正競争行為に関する原告の主張もなく,また,被告らが販売をしていたことを認めるに足りる証拠もない。) 2 争点 (1) 被告製品2及び3は,原告製品の形態を模倣した商品であるか。
(2) 原告製品の形態は同種の商品が通常有する形態か。
(3) 不正競争行為による原告の損害はいくらか。
(4) 被告日本住宅保全の債務不履行責任に係る訴えの利益があるか,及び債務不履行があるか。
3 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(被告製品2及び3の形態は,原告製品の形態を模倣したものであるか)について (原告の主張) 被告製品2及び3と原告製品は,以下のとおり,その形態が同一であり,被告各製品は,原告製品を模倣したものである。
ア 原告製品の形態 原告製品は,L字形基材,補強部材及び鎹部材(連結部材),緩衝剤の4部材により構成されて,側面から見た場合に,L字形基材と弧状の鎹部材とで囲まれた全体形状が,三角形に近い形を形成している。L字形基材は,両辺の中間部分が内側に円弧状に盛り上がるように湾曲している。補強部材は,L字状に折曲され,L字形基材とは,L字形折曲基端部付近にわずかな空隙部分が存在する点を除いて,全体が,内側から当接している。鎹部材は,全体が,外方向に円弧状に緩やかに湾曲し,さらに,その中央部が内側に膨出し,クッションラウンドを形成させる形状を示し,その両端部がL字形基材の両辺の端に固定されている。合計4個のゴムの緩衝部材が,L字形基材の両辺の端部及び中間部分(補強部材の端部)に嵌められている。
イ 原告製品と被告製品2との対比 被告製品2は,原告製品における主要部分であるL字形基材の形状,補強部材の形状,合計4個のゴムの緩衝部材がはめられているという点において同一である。
確かに,原告製品においては,鎹部材の中央部は,内側に大きくU字形に膨出させたクッションラウンド部を設けているのに対して,被告製品2においては,単純な弧状を呈している点で相違があるが,全体形状は実質的に同一であるといえる。
ウ 原告製品と被告製品3との対比 原告製品においては,L字形基材の角部は1か所が90度に折り曲げられているのに対して,被告製品3においては,L字形基材の角部は,2か所において135度ずつ折り曲げられている点で相違する。
しかし,L字形基材の両辺の中間部分が盛り上がるように湾曲していること,L字形基材の角部に補強部材が固定されていること,合計4個のゴムの緩衝部材がはめられていること,L字形基材の両辺の端に固定され,中央部にクッションラウンドを有する弧状の鎹部材があることという点で,原告製品と被告製品3とは,同一の形状を有しているので,両者の形態は同一であるといえる。
(被告らの反論) ア 原告製品と被告製品2との対比 原告製品と被告製品2とは,以下の点において顕著な形態上の差異が存する。
(ア) L字形基材の角部 原告製品においては,L字形基材の角部は1か所が90度に折り曲げられているのに対して,被告製品2においては,L字形基材の角部は,2か所において135度ずつ折り曲げられている。上記形状の相違は,需要者において注視する点における相違といえる。
(イ) L字形基材及び鎹部材の横幅 原告製品においては,L字形基材の横幅は約50ミリメートル,鎹部材の横幅は約40ミリメートルであるのに対して,被告製品2においては,L字形基材の横幅も鎹部材の横幅も約38ミリメートルである。
(ウ) L字形基材の各辺の長さの関係 原告製品は,L字形基材の短辺の長さが,被告製品2のそれに比べて約18ミリメートル短く,L字形基材の長辺の長さが,被告製品2のそれに比べて約5ミリメートル長い。原告製品においては,L字形基材の短辺が長辺に比して顕著に短いという印象を与えるのに対して,被告製品2においては,L字形基材の両辺の長さがほぼ等しいという印象を与える。
(エ) 鎹部材の中央部 原告製品においては,鎹部材の中央部は,内側に大きくU字形に膨出させたクッションラウンド部を設けているのに対して,被告製品2においては,単純な弧状を呈している。この相違は,鎹部材の緩衝性,バネ弾性に係わるものであり,構造上及び機能上,重要な差異といえる。また,このクッションラウンド部は,極めて目立つものであり,これによって,原告製品は全体として複雑な形状をしているという印象を与えるのに対して,被告製品2はシンプルな形状であるという印象を与える。
(オ) ゴムの緩衝部材 原告製品においては,ゴムの緩衝部材がL字形基材にのみはめ込まれており,側面からみると,緩衝部材,L字形基材,鎹部材,ボルト部という複雑な段差が生じているのに対して,被告製品2においては,ゴムの緩衝部材は等幅のL字形基材と鎹部材が重なり合っている部分を一体としてはめ込まれており,そのため側面からみると,緩衝部材,鎹部材,ボルト部という形で段差の少ないシンプルな形状となっている。
イ 原告製品と被告製品3との対比 原告製品と被告製品3とは,以下の点において顕著な形態上の差異が存する。
(ア) L字形基材の角部 原告製品においては,L字形基材の角部は1か所が90度に折り曲げられているのに対して,被告製品3においては,L字形基材の角部は,2か所において135度ずつ折り曲げられている。上記形状の相違は,需要者において注視する点における相違といえる。
(イ) L字形基材の各辺の長さの関係 原告製品は,L字形基材の短辺の長さが,被告製品3のそれに比べて約18ミリメートル短く,長辺の長さが,被告製品3のそれに比べて約5ミリメートル長い。原告製品においては,L字形基材の短辺が長辺に比して顕著に短いという印象を与えるのに対して,被告製品3においては,L字形基材の両辺の長さがほぼ等しいという印象を与える。
(ウ) 鎹部材の横幅 原告製品においては,鎹部材の横幅は約40ミリメートルであるのに対して,被告製品3の鎹部材の横幅は約35ミリメートルである。
いずれの製品も,L字形基材の横幅は約50ミリメートルであるから,上記の差異は,原告製品においては,鎹部材の横幅がL字形基材の横幅に比して若干細いという印象を与えるのに対し,被告製品3においては,L字形基材の横幅に比して顕著に細いという印象を与える。
(2) 争点(2)(原告製品の形態は同種の商品が通常有する形態か)について (被告らの主張) 原告製品の形態は,耐震補強金具としての機能及び効用を発揮するために採用された形態であり,また,同種の商品が通常有する形態である。
ア L字形基材 L字形基材の全体形状については,直交する2本の柱を補強するためには,その形状をL字形にせざるを得ないから,同形状は,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するための通常有する形態にすぎない。また,金属製のL字形補強金具は,多数の商品が存在する。
さらに,L字形基材の両辺の中間部を内側に湾曲させている形状は,両辺部の弾性を強化する目的で採用されたものであり,このような形状は,早くから採用されており,耐震補強金具として通常有する形態にすぎない。
イ 補強部材 補強部材が,L字形基材の角部に固定される目的は,L字形基材を構成する両辺に異なる方向の力が加わったとき,その弾性力によって,L字形の形状を元に復元させることにあり,このような方法も早くから確立された技術である。
ウ ゴムの緩衝部材 耐震補強金具を木材に当接するにはネジなどにより固定することになるが,その際にL字形基材と木材との間にゴムなどの緩衝部材を挟むことにより,そのゴムなどの弾性力により固定が確実になるのであるから,緩衝部材のこのような形態は,固定を確実にするという技術的要求からの必然的といえる。また,ゴムの使用は,雨水等の浸入やシロアリ被害を防ぐ効果も有しており,機能面から通常採用される形態である。
(原告の反論) ア L字形基材 耐震補強金具にL字形を採用することは,基本的な技術手段であり,多数の金属製L字形補強部材に用いられている形態であることは否定しない。しかし,耐震補強金具に使用する目的のためには,L字形形状のみならず,他に多種の形態が想定できるから,L字形にすることが,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために通常有する形態であるとはいえない。
L字形基材の両辺の中間部を内側に湾曲させることは,構造体に加わった水平,垂直両方向の振動が吸収され,耐震補強金具に伝わりにくくなる効果を有している。しかし,このような形状を有しない耐震補強金具も多数存するのであるから,同形状が,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために通常採られる形態とはいえない。
原告製品においては,「湾曲」させて,弧状の形態を有している点に特徴があり,この点において,中間部を内側に折り曲げて平坦な折膨出部を形成した通常の形態とは異なる特徴がある。
イ 補強部材 L字形の補強部材が,L字形基材の角部に固定されている点は,耐震補強金具のすべてが採用している形状ではない。したがって,補強部材のL字形状は,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために通常有する形態とはいえない。
ウ ゴムの緩衝部材 耐震補強金具の中には,ゴムの緩衝部材が付されていない製品も多数販売されているから,緩衝部材にゴムを採用したとの形状は,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために通常有するものとはいえない。
(3) 争点(3)(不正競争行為による原告の損害はいくらか)について (原告の主張) ア 被告日本住宅保全は,被告製品2及び3を,被告匠建又は被告エス・ケイジャパンから仕入れて,一般需要者に販売していた。
平成13年8月から平成14年3月までの期間に被告製品2及び3の販売により得た被告日本住宅保全の利益額が原告の損害額であると推定される(不正競争防止法5条2項)。
イ 被告製品2及び3の最終販売価格は,2万5000円である。
被告日本住宅保全の販売利益率は,以下のとおりである。
すなわち,被告日本住宅保全は,同被告に属する営業員との間で,被告製品が販売されるごとに,営業員から,営業員に対する販売価格(仕切価格)及び手数料(個々の営業員の得る利益の30ないし35パーセントに相当する金員)を受け取るとの旨の業務委託契約を締結していた。
そうすると,被告製品2又は3の最終価格に対する利益率(製品1個当たり)は,以下のとおり,約60パーセントとなる。
@売上による収入=仕切価格1万2500円-仕入価格1260円 =1万1240円 A手数料収入=営業員の利益(販売価格2万4500円-仕切価格1万2500円)×30パーセント =3600円 B利益率=(売上による収入1万1240円+手数料収入3600円)÷販売価格2万4500円×100 =60.57パーセント ウ 平成13年8月から平成14年3月までの期間において,被告日本住宅保全の営業員を通じての全製品の販売額は,1か月当たり2億円ないし3億円であった。このうち,耐震補強金具の販売額が全製品の販売額に占める割合は60パーセントを下ることはなく,また,被告製品2及び3の販売額が耐震補強金具の販売額に占める割合は60パーセントを下ることはない。
そうすると,被告製品2及び3の販売により被告日本住宅保全が受けた利益は,以下のとおり,3億4500万円を下ることはない。
利益=1か月の販売額2億円×販売期間8か月×補強金具の割合60パーセント×被告製品割合60パーセント×利益率60パーセント =3億4560万円 エ 原告は,被告らに対して,3億4500万円及び遅延損害金の支払を求める。
(被告らの反論) ア 原告の主張イのうち,被告日本住宅保全が営業員との間で業務委託契約を締結していたこと,個々の営業員は営業活動によって得た代金を会社と折半していたこと,会社は,個々の営業員から,クーリングオフ処理に備えた費用として個々の営業員が受ける代金の5パーセント,クレジット手数料として0.5パーセント,車のリース代として月額3万5000円から5万円の支払を受けていたこと,被告製品2及び3の仕入れ価格が1個1260円であることは認めるが,その余は否認する。
イ 被告日本住宅保全は,個々の営業員に対し,耐震補強金具を含めた工事材料を無償で支給しており,販売していたわけではない。
また,被告日本住宅保全の販売額は,1か月平均8000万円程度である。
(被告匠建及び被告エス・ケイジャパンの反論) 被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは,原告から,原告製品を仕入れていたが,その後,被告製品3を扱うようになり,さらに,被告製品2に切り替えた。
したがって,仮に,被告製品3を用いずに原告製品を仕入れていたと仮定しても,原告が得られた販売利益は,以下のとおり,141万6110円を上回ることはない。
原告製品1個当たりの販売額3274円×粗利益40パーセント×被告製品3の販売総数1081個=141万6110円 (4) 争点(4)(被告日本住宅保全の債務不履行責任に係る訴えの利益及び同責任の有無)について (原告の主張) ア 原告は,平成14年3月2日ころ,被告日本住宅保全に対し,原告製品,NJHドライという名称の製品その他の製品を売り渡し,そのころ納品した。
イ ところが,被告日本住宅保全は,納品した製品のうちの一部を正当な理由なく原告に返品した。被告日本住宅保全の上記債務不履行のため,原告は,以下のとおり合計297万5654円の損害を受けた。
@ NJHドライの袋代金 21万円 A 総量 40万円 B キャンセルに伴う諸費用分担金 6万6720円 C NJHドライのキャンセル分詰替工賃 30万0720円 D 返品商品の検品及び詰替えをするのに要した人件費 158万0010円 E 箱代 16万8904円 F 返品の倉庫保管に要した費用 24万9300円 (被告日本住宅保全の反論) ア 原告は,福岡簡易裁判所に,被告日本住宅保全に対する原告製品等の売掛代金請求の支払督促を申し立て,被告日本住宅保全の異議により,訴訟事件として係属した。しかし,原告は,今後同事件について訴えを提起しないことを約して同事件を取り下げた。
本件の債務不履行責任に係る訴えは,上記不起訴の合意をした事件と密接に関連するものであるにもかかわらず,損害賠償請求権として提起されたものである。
したがって,不起訴の合意に反し,訴えの利益を欠くものである。
イ 原告の主張ア及びイのうち,原告が納品した事実,被告日本住宅保全が製品を送り返した事実は認め,その余は否認する。被告日本住宅保全が原告製品等の発注をした事実はないので,発注もなく納品された製品はそのまま原告に送り返した。
また,損害についても,返品との間の因果関係はない。
争点に対する判断
1 争点(1)(被告製品2及び3の形態は,原告製品の形態を模倣したものであるか)について (1) 事実認定 争いのない事実,証拠(甲5の1〜5の2,18)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア 原告製品の形態 原告製品の形態は,別紙原告製品目録記載のとおりである。
原告製品は,L字形基材,補強部材及び鎹部材(連結部材),緩衝剤の4部材により構成されて,側面から見た場合に,L字形基材と弧状の鎹部材とで囲まれた全体形状が,略三角形に形成されている。L字形基材は,両辺の中間部分が内側に円弧状に盛り上がるように湾曲している。補強部材は,L字状に折曲され,L字形基材とは,L字形折曲基端部付近にわずかな空隙部分が存在する点を除いて,全体が,内側から当接している。鎹部材は,全体が,外方向に円弧状に緩やかに湾曲し,また,その中央部を内側に膨出させて,クッションラウンドを形成させた形状を呈しており,その両端部がL字形基材の両辺の端に固定されている。合計4個のゴムの緩衝部材が,L字形基材の両辺の端部及び中間部分(補強部材の端部)に嵌められている。
イ 被告製品2,3の各形状及び原告製品との対比 (ア) 被告製品2,3の形態は,それぞれ別紙被告製品目録2,3記載のとおりである。
(イ) 原告製品との共通点 被告製品2,3及び原告製品は,@L字形基材,補強部材及び鎹部材(連結部材),緩衝剤の4部材により構成されて,側面から見た場合に,L字形基材と弧状の鎹部材とで囲まれた全体形状が,略三角形に形成された耐震補強金具である点,A補強部材は,L字形基材の角部に固定されており,補強部材の各辺が,L字形基材の各辺の3分の1程度の長さで,L字形基材の両辺の湾曲部に達していない点,B鎹部材は,その両端部がL字形基材の両辺の端に固定され,弧状である点において共通する。
(ウ) 原告製品との相違点 a L字形基材 原告製品では,L字形基材の角部が1か所で90度に折り曲げられているのに対し,被告製品2及び3では,角部が,2か所で135度ずつ折り曲げられている点で相違する。
原告製品では,辺の長さが375ミリメートル及び295ミリメートルであるのに対し,被告製品2及び3では,辺の長さが365ミリメートル及び323ミリメートルである点で相違する。
b L字形基材及び鎹部材の横幅 原告製品では,L字形基材及び鎹部材の横幅が,約50ミリメートル,約40ミリメートルであるのに対して,被告製品2では,L字形基材の横幅も鎹部材の横幅も約38ミリメートルであり,被告製品3では,L字形基材の横幅は約50ミリメートルであるが,鎹部材の横幅は約35ミリメートルである点で相違する。
c 鎹部材の中央部 原告製品では,鎹部材の中央部は,内側に大きくU字形に膨出させたクッションラウンド部を設けているのに対して,被告製品2では,単純な弧状を呈している。
d ゴムの緩衝部材 原告製品では,ゴムの緩衝部材がL字形基材にのみはめ込まれており,側面からみると,緩衝部材,L字形基材,鎹部材,ボルト部の順で段差が生じているのに対して,被告製品2では,ゴムの緩衝部材が等幅のL字形基材と鎹部材が重なり合っている部分を一体としてはめ込まれており,そのため側面からみると,緩衝部材,鎹部材,ボルト部という形で段差が少ない形状となっている点で異なる。
(2) 同一性の有無に関する判断 原告製品の基本的な形態の特徴は,@L字形基材と弧状の鎹部材とで側面から見た場合に,略三角形に形成されている点,AL字形基材は,両辺の中間部分が内側に円弧状に盛り上がるように湾曲している点,B鎹部材は,全体が,外方向に円弧状に緩やかに湾曲し,また,その中央部を内側に膨出させて,クッションラウンドを形成させた形状を呈している点にあり,とりわけ,Bの鎹部材に設けられたクッションラウンドは,その特異な形状から,顕著な形態上の特徴であると解される。
そこで,この観点から形態の同一性を判断する。
ア 原告製品と被告製品2 原告製品と被告製品2とを比較検討すると,前記@及びAの特徴については同一であるものの,被告製品2は,鎹部材にクッションラウンドが形成されていない点において,原告製品の有する特有の形態を備えていない。 したがって,両者の形態は,その余の点を判断するまでもなく,実質的に同一であるとは認められない。
イ 原告製品と被告製品3 原告製品と被告製品3とを比較検討すると,前記@ないしBのいずれの特徴においても両者は共通しており,基本的な形態が同一である。被告製品3は,L字形基材の角部の形状,鎹部材の横幅などの点で原告製品と異なるが,これらは原告製品の形態に些細な変更を加えたにすぎないものと評価できる。したがって,両者の形態は実質的に同一であると認められる。
(3) 模倣の意図 以上認定した原告製品と被告製品3の形態上の同一性,原告製品が平成11年3月ころから販売された(甲3)のに対し,被告製品3は平成13年9月から販売されたこと,被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは,被告製品3の販売を開始する前に原告から原告製品を仕入れていたこと(弁論の全趣旨),被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは,被告製品3と同様に鎹部材の中央にクッションラウンドが設けられている別紙被告製品目録1記載の耐震性能金具をサンプルとしてタイの輸入元に製作を依頼していること(乙24)等の事情に照らすと,被告製品3は原告製品に依拠して作られたものであると認められる。
なお,被告日本住宅保全は,被告製品3の販売時に原告製品の存在を知らなかった旨主張する。しかし,被告日本住宅保全は平成8年の設立から平成13年8月ころまで,耐震補強金具を含め,家屋の床下修理等の工事材料を原告から仕入れていた(丙4,5)のであるから,被告日本住宅保全の主張を採用することはできない。
2 争点(2)(原告製品の形態は同種の商品が通常有する形態か)について 被告らは,原告製品の形態は,耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために採られている形態であり,また,同種の商品が通常有する形態である旨主張し,それに沿う証拠として乙1ないし22を提出する。
しかし,上記被告らの主張は,以下の理由により採用できない。すなわち,原告製品の形態上の特徴は,前記1で認定したとおり,@L字形基材と弧状の鎹部材とで側面から見た場合に略三角形に形成されている点,AL字形基材は,両辺の中間部分が内側に円弧状に盛り上がるように湾曲している点,B鎹部材は,全体が,外方向に円弧状に緩やかに湾曲し,また,その中央部を内側に膨出させて,クッションラウンドを形成させた形状を呈している点にある。そして,本件全証拠によるも,原告製品が販売される前に,弧状の鎹部材を有する製品,鎹部材にクッションラウンドが形成されている製品が存在したことを認めることはできず,また,@からBまでの特徴を組み合わせた製品が製造,販売されていた事実も認められない。その他,これらの特徴的な形態が,ありふれたものであること又は耐震補強金具の機能及び効用を発揮するために必然的に採られる形態であることを認めるに足りる事実はない。
したがって,原告製品の形態は,同種の商品が通常有する形態であるとは認められない。
3 争点(3)(不正競争行為による原告の損害はいくらか)について (1) 被告らは,被告製品3を販売するについて,この行為が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当することを知り,又は,知らないことについて過失があったといえる。
そして,原告は原告製品の販売を平成11年3月ころから開始しているので,被告らは,被告製品3の販売開始から,原告が販売を開始した3年後である平成14年3月までに原告が受けた損害について賠償する責任がある。
(2) 原告は,被告日本住宅保全が平成13年9月ころから平成14年3月までの期間に,被告製品3の販売により得た利益額をもって原告の損害額であると推定されるべきであると主張する。
証拠(丙5)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実を認めることができる。すなわち, ア 被告エス・ケイジャパンは,被告日本住宅保全及び被告匠建に対して,平成13年9月から平成14年3月までの間に,被告製品3を,合計1081個販売したこと, イ 被告日本住宅保全が被告エス・ケイジャパンから被告製品3を購入する際の価格は,1個当たり1260円であること, ウ 被告日本住宅保全による被告製品3の営業活動は,製品のみを販売する方法ではなく,顧客との間で,床下修理等の工事請負契約を締結し,これに付随して耐震補強工事の注文を受けて,被告商品3を敷設する方法で行われていたこと, エ これらの工事は,被告日本住宅保全と契約した歩合制の営業員を通じて行われていたこと, オ 他方,原告が原告商品を取り扱う際の販売価格等については,平成11年3月における販売額が149個で49万7800円(甲3)であり,被告日本住宅保全に対する支払督促手続における主張では,33個で10万3950円(丙6)としており,1個当たりおおむね3000円であること, しかし,全証拠によるも,被告日本住宅保全における,被告製品3についての販売価格,利益額等は必ずしも明らかであるとはいえない。
そこで,上記認定した事実等一切の事情を総合すると,被告日本住宅保全が,被告製品3を販売したことによって得た1個当たりの利益の額は1500円とみるのが相当である。そうすると,被告日本住宅保全が被告製品3を販売することによって得た利益額(総額)は,1個当たりの利益額1500円に数量1081個を乗じた,162万1500円となり,これと同額が原告の被った損害の額と推定される。
ところで,前掲各事実に,1(3)で認定した各事実,被告匠建は,被告エス・ケイジャパンのみから被告製品3を仕入れていたこと(弁論の全趣旨),被告匠建及び被告エス・ケイジャパンは本店所在地及び代表者を共通にすること,被告エス・ケイジャパンがタイの輸入元から被告製品3を購入した際の書類(乙25)では,被告製品3が「NJH GREAT HOLDER NO.3」と記載されており(乙26),「NJH」が被告日本住宅保全を意味するものと解されるから,被告製品3は被告日本住宅保全を通して売却することが予定されていたと考えられることなどを総合考慮すると,被告らは,共同して,被告製品3を販売し,不正競争行為を行ったと解して差し支えないから,被告らは,各自,上記の損害額を賠償する義務がある。
4 争点(4)(被告日本住宅保全の債務不履行責任に係る訴えの利益及び同責任の有無)について (1) 被告日本住宅保全は,債務不履行責任に係る訴えは,従前原告との間で行った不起訴の合意に反するもので,訴えの利益を欠く旨主張する。
しかし,当該不起訴の合意は,納品され,返品を受けていないと主張する製品に係る売掛代金請求権に基づく請求についてされたものであるところ,本件の訴えは,返品による損害の賠償を請求するものであって,訴訟物を異にするから,従前の不起訴の合意によって訴えの利益が失われるものではない。
(2) 原告は,平成14年3月2日ころ,被告日本住宅保全に対し,原告製品,NJHドライという名称の製品その他の製品を売り渡し,そのころ納品したものの,被告日本住宅保全から正当な理由なく返品された旨主張する。
しかし,原告から被告日本住宅保全に対し原告製品等が納品されたこと及び被告日本住宅保全が一定の製品を原告に返送したことについては争いがないが,原告が主張する前記売買契約の成立を認めるに足りる証拠はなく,これを認めることはできない(かえって,甲18及び丙5によれば,原告と被告日本住宅保全との取引は平成13年中に終了していたことがうかがえる。)。
したがって,その余の点を論ずるまでもなく,被告日本住宅保全の債務不履行責任に係る請求は認められない。
結論
以上のとおり,原告の請求は,被告ら各自に対し,162万1500円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 山田真紀
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