関連ワード | 他人の営業 / 差止請求(差止) / 信用回復措置 / デザイン / 代理人 / 代表者 / 秘密管理(秘密管理性) / 有用性 / 非公知性 / 営業秘密 / 2条1項4号 / プログラム / 具体的態様 / 営業上の信用 / |
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事件 |
平成
23年
(ワ)
10050号
プログラム差止等請求事件
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2011/12/14 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成23年12月14日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成23年(ワ)第10050号 プログラム差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成23年10月31日 判 決 東京都江東区<以下略> 原 告 ヴァンダープラッツ・デザイン・オプティマ イゼーション・コンサルティング株式会社 同訴訟代理人弁護士 室 井 優 東京都港区<以下略> 被 告 アドバンスソフト株式会社 東京都港区<以下略> 被 告 Y1 東京都港区<以下略> 被 告 Y2 被告ら訴訟代理人弁護士 中 村 治 嵩 椎 名 健 二 森 井 聡 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告らは,別紙「物件目録」記載1のコンピュータプログラムを製造,使用, 複製(同プログラムをフロッピーディスク,CD−ROM,MO,ハードディ スク等の記録媒体に収納することを含む。)又は頒布してはならない。 2 被告らは,別紙「物件目録」記載1のコンピュータプログラムを格納したフ ロッピーディスク,CD−ROM,ハードディスク等の記録媒体を頒布しては ならない。 3 被告らは,別紙「物件目録」記載1のコンピュータプログラムを格納したフ ロッピーディスク,CD−ROM,ハードディスク等の記録媒体を廃棄せよ。 4 被告らは,別紙「物件目録」記載2の論文を印刷,出版,販売又は頒布して はならない。 5 被告らは,別紙「物件目録」記載2の論文が記載された書籍を廃棄せよ。 6 被告アドバンスソフト株式会社は,原告に対し,被告アドバンスソフト株式 会社のホームページに,別紙「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を,その表題並 びに原告及び被告の各商号は16ポイントゴシック体,その他は12ポイント ゴシック体で,本判決確定の日から1年間掲載せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,被告らが別紙「技術情報目録」記載1〜4の原告の営業秘密を窃取 し,これを使用して別紙「物件目録」記載1のプログラム(以下「被告プログ ラム」という。)及び同目録記載2の論文(以下「被告論文」という。)を作 成,開示した(不正競争防止法2条1項4号)として,原告が,被告らに対し, 不正競争防止法3条1項,2項に基づき,被告プログラムの製造,使用,複製, 頒布及び被告プログラムを格納した記録媒体の頒布の差止め(上記第1の1, 2),被告プログラムを格納した記録媒体の廃棄(上記第1の3),被告論文 の出版,頒布等の差止め(上記第1の4),被告論文が掲載された書籍の廃棄 (上記第1の5)を求めるとともに,被告アドバンスソフト株式会社(以下「被 告会社」という。)に対し,不正競争防止法14条に基づき,被告会社のホー ムページに別紙「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を掲載すること(上記第1の 6)を求める事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。) (1) 原告及び被告会社は,いずれもコンピュータプログラムの開発,販売等を 業とする株式会社である。 被告Y1(以下「被告Y1」という。)は,被告会社の取締役であり,被 告Y2(以下「被告Y2」という。)は,被告会社の従業員である。 (2)ア 原告は,平成18年7月頃,別紙「技術情報目録」記載1の文書(以下 「原告文書1」という。)を作成した。(甲1) イ 原告は,平成19年9月頃,別紙「技術情報目録」記載2のプログラム (以下「原告プログラム」という。)を作成するとともに,その頃,同目 録記載3,4の各文書(以下,順に「原告文書2」,「原告文書3」とい い,原告文書1〜3及び原告プログラムを一括して「本件各技術情報」と いう。)を作成した。(甲3の1〜6,甲5,6,弁論の全趣旨) (3) 被告Y1及び被告Y2は,被告論文を執筆し,被告会社は,平成22年1 1月9日,被告論文を掲載した雑誌「アドバンスシミュレーション」Vol.4 (以下「被告雑誌」という。)を発行した。(甲2の1〜4) また,被告会社は,その頃までに被告プログラムを作成し,被告雑誌にお いて,被告プログラムの特長,手法,性能等について広告した。(甲2の3) 3 争点 (1) 本件各技術情報は原告の営業秘密に該当するか (2) 被告らによる不正競争の存否 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(本件各技術情報は原告の営業秘密に該当するか)について ア 原告 (ア) 原告文書1は,原告が独自に考案した「多段階モード合成法による数 値計算アルゴリズム」及び「大規模メモリーの動的管理を用いたハイブ リッド並列計算方法」等を解説した文書であり,原告プログラムは,原 告文書1に記載された理論に基づいて作成されたプログラムである。 また,原告文書2,3は,いずれも原告プログラムの性能を検証する ために作成されたものである。 本件各技術情報は,以下のとおり,不正競争防止法2条6項所定の「営 業秘密」に該当する。 (イ)a 本件各技術情報の有用性 原告文書1に記載されている「多段階モード合成法による数値計算 アルゴリズム」は,公知のモード合成法に多段階並列化手法を取り入 れ,並列処理を多重化するハイブリッド並列化に適したモード合成法 の多段階計算アルゴリズムであり,並列コンピュータ(マルチコアC PUを並列に構成したもので,現在のスーパーコンピュータの主流で ある。)上で数億自由度を超える巨大固有値計算を可能にするもので ある。 原告プログラムは,上記アルゴリズムを実現しているものであり(原 告プログラムが実現している上記アルゴリズムが,営業秘密の客体と して保護されるべき技術上の情報である。),本件各技術情報は,耐 震解析,振動解析,騒音解析等の数値シミュレーション手法として国 内外において広く求められている有用なコア技術である。 b 本件各技術情報の秘密管理性 原告は,原告社内の Ethernet LAN(Local Area Network)に設置し た機密情報用NASサーバ(Buffalo 社 Tera Station)に本件各技術情 報を認証化(パスワードがないと閲覧,印刷及びコピー不能)して記 録しており,原告代表者が同サーバの運用を管理している。 c 本件各技術情報の非公知性 本件各技術情報は,今のところ,原告,被告らのほか,被告らから 本件各技術情報の開示を受けた独立行政法人日本原子力研究開発機構 (以下「JAEA」という。)にしか知られておらず,非公知である。 イ 被告ら 否認ないし争う。 (2) 争点(2)(被告らによる不正競争の存否)について ア 原告 被告らは,共謀の上,平成19年夏ないし秋頃,原告の営業秘密である 本件各技術情報を窃取し(被告Y2が原告社内LANに接続し,原告プロ グラムの開発に使用していたPCクラスターコンピュータ NEXXUS に不 正侵入する方法により窃取した。),これを使用して被告論文及び被告プ ログラムを作成するとともに,被告プログラムを利用した取引を獲得する ため,JAEAに対し,本件各技術情報を掲載した被告雑誌を交付して, これを開示した。 以上のとおり,被告らは,不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争 を行っている。 イ 被告ら 否認する。 被告プログラム及び被告論文は,被告会社の技術情報に基づき,被告ら が独自に作成したものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各技術情報は原告の営業秘密に該当するか)について (1) 証拠(甲2の1〜4,乙1の1,2,乙2)及び弁論の全趣旨によれば, 本件各技術情報は,いずれも被告雑誌に掲載されていること,被告雑誌は, 平成22年11月頃,被告会社の取引先,被告会社に会員登録した者及び全 国の国立大学図書館に対し,約4500部が無償で頒布されたこと,以上の 事実が認められる。 上記事実によれば,本件各技術情報は,現在,不特定の者が公然と知り得 る状態になっており,既に公然知られたものであるということができるから, 「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)に該当するということはできず, 同法3条1項,2項に基づく差止め及び廃棄請求(前記第1の1〜5)は, いずれも理由がない。 なお,原告は,本件各技術情報は,被告Y2が原告社内LANに接続され たPCクラスターコンピュータ NEXXUS に不正侵入する方法により窃取し たと主張するが,窃取の日時や,その具体的態様を特定せず,かつ,当該主 張を裏付ける証拠も提出しない。 (2) また,原告は,被告会社に対し,不正競争防止法14条に基づく信用回復 措置として,被告会社のホームページに別紙「謝罪広告目録」記載の謝罪広 告を掲載することを求めているが,同条の規定に基づく信用回復の措置を求 めるためには,「他人の営業上の信用を害した」ことが要件となるところ, 原告は,被告らが同法2条1項4号に該当する不正競争を行ったことを主張 するのみで,原告の営業上の信用が害されたことについては何ら主張,立証 しない。 したがって,不正競争防止法14条に基づく原告の請求(前記第1の6) についても理由がない。 2 よって,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも 理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡 本 岳 裁判官 鈴 木 和 典 裁判官 坂 本 康 博 別 紙 物 件 目 録 1 大規模固有値計算プログラム(大規模固有値計算ソルバー) Advance / NextNVH 2 汎用的な計算機環境において高速な固有値解析を可能にすると ころのソフトウェアであり,多階層モード座標結合モード合成法 による大規模固有計算を可能にするソフトウェアとして実現した, 大規模固有値計算ソルバーである「大規模固有値計算プログラム Advance / NextNVH」に関する論文 別 紙 謝 罪 広 告 目 録 <省略> 別 紙 技 術 情 報 目 録 1 「多段階モード合成法と並列処理の技術資料」と題する文書 2 大規模メモリーの動的管理(プログラムの処理過程での大規模メモリー を動的に再配置する手法)を用いた多段階モード合成法による大規模固有 値解析のための「ネクストNVHソルバープログラム」(初期版) 3 「モード合成法固有値ソルバーの固有値精度検証1万自由度ベンチマー ク問題@」と題する文書 4 「Hybrid NextNVH 実行ログファイル:PARMCMS.log トヨタ自動車1 60万自由度車両シェルモデル(理論解との比較検証)」と題する文書 |