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事件 平成 23年 (ワ) 10113号 不正競争行為差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所 
判決言渡日 2012/04/19
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年4月19日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成23年(ワ)第10113号 不正競争行為差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成24年2月27日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

(1) 主位的請求

ア 被告株式会社丸三タカギは,別紙商品目録(1)記載の商品を譲渡し,引

き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し又は輸入してはならない。

イ 被告株式会社ノグチ,被告有限会社フォーナート及び被告ファミリー庭

園EC株式会社は,同商品を譲渡し,引き渡し又は譲渡若しくは引渡しの

ために展示してはならない。

ウ 被告らは,同商品を廃棄せよ。

エ 被告株式会社丸三タカギは,原告に対し,900万円及びこれに対する

平成23年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

オ 訴訟費用は被告らの負担とする。

カ 仮執行宣言

(2)予備的請求

ア 被告らは,京都府,大阪府及び滋賀県内において,上記商品を譲渡し,


1
引き渡し又は譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。

イ 前記(1)オと同じ。

2 被告ら

主文と同旨

第2 事案の概要

1 前提事実(証拠の掲記がない事実は当事者間に争いがない。)

(1) 当事者

原告は,住宅エクステリア,メンテナンスの設計施工請負等を目的とする

会社である。

被告株式会社丸三タカギ(以下「被告タカギ」という。)は,表札卸売り等

を目的とする会社である。

被告株式会社ノグチ(以下「被告ノグチ」という。)は,建築金物卸並小売

等を目的とする会社である。

被告有限会社フォーナート(以下「被告フォーナート」という。 は,
) 表札,

看板の企画・製作・販売等を目的とする会社である。

被告ファミリー庭園EC株式会社(以下「被告ファミリー」という。)は,

エクステリア商品,造園用資材,園芸用品の販売等を目的とする会社である。

(2) 原告商品

原告は,別紙商品目録(2)記載の商品(以下「原告商品」という。)を販売

している。

(3) 被告らの行為

被告タカギは,遅くとも平成22年10月から,別紙商品目録(1)記載の

商品(以下「被告商品」という。)を輸入し,販売している。

その余の被告らは,いずれも被告タカギから被告商品を購入し,インター

ネットを通じて販売している。

2 原告の請求

2
(1) 主位的請求

原告は,被告らの行為が,不正競争防止法(以下「法」という。)2条

項1号の他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている原告商品

の形態からなる商品表示と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲渡す

る行為などに当たるとして,被告らに対し,法3条に基づき,被告商品の譲

渡等の差止め及びその廃棄を求めるとともに,被告タカギに対し,法4条

文及び5条1項に基づき,900万円の損害賠償及びこれに対する平成23

年8月20日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5

分の割合による遅延損害金の支払を求めている。

(2) 予備的請求

原告は,仮に原告商品が原告の商品表示として全国の需要者の間に広く認

識されていなかったとしても,京都府,大阪府及び滋賀県(これらのうち少

なくとも滋賀県)においては需要者の間に広く認識されているとして,被告

らに対し,法3条に基づき,京都府,大阪府及び滋賀県における被告商品の

譲渡等の差止めを求めている。

3 争点

(1) 原告商品の形態は,法2条1項1号商品等表示に当たるか (争点1)

(2) 原告商品の形態は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されてい

るか (争点2)

(3) 被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類似の商

品表示であるか (争点3)

(4) 被告らの行為は,原告商品と混同を生じさせるものであるか (争点4)

(5) 損害額 (争点5)

第3 争点に係る当事者の主張

1 争点1(原告商品の形態は,法2条1項1号商品等表示に当たるか)につ

いて

3
【原告の主張】

原告商品の形態は,別紙商品目録(2)記載のとおりであり,需要者の注意を

引く独特の際だった特徴を備え,これらの特徴は相互に有機的な関連性を有す

るものである。

したがって,原告商品の形態は,全体として,法2条1項1号商品等表示

に当たる。

(1) 特徴1

上部に開口部となる凸状の緩やかなカーブがある蓋部と,前面凹状の緩や

かなカーブがある錠付き扉を有する箱形の郵便受け本体から構成されており,

これらのカーブは原告商品に独自の形態である。

(2) 特徴2

郵便受け本体とスペーサーとが一体となっており,これも通常の郵便受け

とは異なる原告商品に独自の形態である。

(3) 特徴3

前面の扉の錠部分は,錠周りを窪ませており,扉全体として凹凸が少ない

フラットな形態となっている。

【被告らの主張】

以下のとおり,原告商品の形態は,ごくありふれたものにすぎず,法2条

項1号の商品等表示には当たらない。

(1) 原告商品の形態は,需要者の注意を引く独特の際だった特徴を備えている

ものではない。

ア 特徴1

郵便物を収納できる箱形の形態であり,開口部が設けられ,防犯上の観

点から取出口に鍵を有するというのは,あらゆる郵便受けに共通する形状,

機能にすぎない。

また,郵便受けの上部蓋と前面に緩やかなカーブがあることも同種商品

4
が備えるありふれた形状である(乙1〜11)。

イ 特徴2

郵便受け本体とスペーサーとが一体となっている点は,通常,目に触れ

ない背面部の形態である。

また,スペーサーは,郵便受け上部の蓋を開ける際に,壁に傷がつくの

を防ぐため,郵便受けと壁との間に隙間を設けるためのものであって,郵

便受け本体とスペーサーとが一体のものであるかどうかは,出所識別機能

を有する形態上の特徴ではない。

ウ 特徴3

錠部分の周りを窪ませることは,郵便受けに限らず,錠周りの形態とし

て周知で,ありふれたものである(乙2,15〜17)。

全体として凹凸の少ないフラットな形態とすることも,郵便受け一般に

共通するものである(乙2,3,15,17)。なお,原告商品は,扉の錠

部分が扉の平面から前方に飛び出しているから,扉全体として凹凸の少な

いフラットな形態ではない。

(2) 原告商品を全体として観察したときにも,同様の形態を有する他の商品が

多数存在している(乙8〜11,15)。

(3) 原告商品は,ベルギー王国所在のペンネ社(PENNE)が製造する「スティー

リー」
(STEELY)という名称の商品であり,原告は,これを輸入販売してい

るにすぎない。

そして,原告商品は,
「ペンネ」の「スティーリー」として広告宣伝,販売

がされ,商品自体の扉右下部にも「PENNE」の商標が付されているから,

原告商品の形態について,需要者が原告の商品表示として認識することはな

い。

2 争点2(原告商品の形態は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識

れているか)について

5
【原告の主張】

原告商品の形態は,以下の販売実績等及び広告宣伝の結果,原告の商品表示

として需要者の間に広く認識されている。

仮に,原告商品が原告の商品表示として全国の需要者の間に広く認識されて

いなかったとしても,京都府,大阪府及び滋賀県(これらのうち少なくとも滋

賀県)においては,需要者の間に広く認識されている。

(1) 需要者

原告商品は,いわゆるデザインポストと称される商品であり,従来の郵便

受けとは異なり,美的装飾性が重視される比較的高価な商品群である。

したがって,デザインポストに関する需要者も,単なる外構の部材として

ではなく,郵便受けを独立した商品として購入する特殊な嗜好と購買力を有

する消費者及びこのような消費者を顧客とする業者に限定されるべきである。

これらの需要者は,主に郵便受けのデザインの美しさ,シンプルさ等に着

目して商品を選択するから,商品の名称や製造者名よりも,商品形態が自他

識別や出所識別に果たす役割は大きい。また,上記のような商品特性からす

ると,通常の日用品に比べ,短期間の形態の使用継続によって二次的出所表

示機能を獲得することが可能である。具体的には,全国的には各地の展示会

や量販店の店頭における展示,インターネットを通じた広告又は第三者の評

価により需要者の認知を受けることができ,地域的には新聞の折込み広告や

ミニコミ誌への掲載,当該地方のみ視聴可能なテレビ番組での紹介といった

マイナーな媒体において繰り返し広告宣伝又は報道をされることによっても,

十分に二次的出所表示機能を獲得することが可能である。

(2) 販売実績等

ア 原告は,ペンネ社から日本における独占的販売権を取得し,平成16年

11月から原告商品の販売を開始した。

原告商品の販売数量は,平成23年5月21日までの期間において,合

6
計4038個であり,デザインポストの販売数量としては相当に多量なも

のである。

イ 原告は,株式会社東急ハンズの横浜店において平成18年11月から,

同名古屋店において平成19年3月から,それぞれ現在に至るまで常設展

示販売をしている。

これは,デザインポストの販売としては異例の扱いである。

ウ 原告商品は,インターネット上のショッピングモールである楽天市場の

「ポスト」や「エクステリア」に関する販売ランキングにおいても,平成

21年12月から現在まで上位に位置している。

(3) 広告宣伝

ア チラシ,新聞折込み広告

原告は,平成17年1月から平成23年5月19日まで,原告商品を掲

載した多数のチラシ,新聞折込み広告を作成,頒布した。

イ テレビコマーシャル

原告は,原告商品が写ったテレビコマーシャルを制作し,びわ湖放送の

テレビ番組において,平成19年9月に24回,同年10月に22回,同

年11月に14回,同年12月に2回,平成20年1月に8回,平成21

年1月に8回,同年8月に1回,平成22年1月に6回の合計85回,上

記テレビコマーシャルを放送した。

これらのテレビコマーシャルは,滋賀県内,京都市山科区,宇治市山間

部,宇治田原町山間部,三重県伊賀市,福井県嶺南の各一部において放送

された。

ウ 雑誌広告

原告は,平成19年1月1日から平成22年1月1日まで,毎年1月1

日と8月1日の年2回,合計5回にわたり,雑誌「住まい net 滋賀」
(発行

部数各1万2000部)に,原告商品を掲載した広告を掲載した。

7
エ パンフレット

原告は,平成16年10月,原告商品の単品パンフレットを1万部作成

し,ガーデニングフェアやインターネットでの求めに応じて頒布した。

また,原告は,原告商品を掲載した「JUICY GARDEN」(VOL1ない

し VOL4)と題するパンフレットを作成し,平成18年11月に8000

部(VOL1),平成19年3月に5000部(VOL2),同年6月に1万部

(VOL3),平成23年3月に6000部(VOL4)を,それぞれ頒布し

た。

オ 展示会への出展

原告は,平成16年11月から平成23年3月まで合計7回にわたり,

原告商品を展示会に出展した。

カ テレビ番組における紹介

原告は,びわ湖放送の情報番組による取材を受け,同番組は,平成19

年4月14日及び同月15日(再放送)に放送され,この中で原告商品が

放映された。

また,同年11月23日に放送されたびわ湖放送の別の情報番組でも,

原告商品が放映された。

さらに,平成20年9月12日に放送された KBS 京都の情報番組でも,

原告商品が放映された。

【被告らの主張】

郵便受けは,全国の住宅,店舗及び事務所等で使用されるものであり,土産

品のように販売地域が限定されるものではなく,取引実態としても全国で販売

されているから,周知性の有無は全国を基準とされるべきである。

以下のとおり,原告商品の形態は,原告の商品表示として全国の需要者の間

広く認識されていない。

仮に,原告が主張する京都府,大阪府及び滋賀県に限定してみても,これら

8
の地域における原告商品の販売数量はごくわずかにすぎず,広告宣伝も滋賀県

の湖東地域の一部を中心としたごく狭い地域で行われたのみであって,京都府

や大阪府ではほぼ皆無である。広告宣伝の内容も,原告商品を対象とするもの

ではなく,原告商品の形態を商品表示として認識又は想起させるものではな

かった。

したがって,仮に,これらの地域に限定しても,原告商品の形態が原告の商

品表示として需要者の間に広く認識されているということはあり得ない。

(1)需要者

原告が主張する「デザインポスト」という特殊な分類や市場など存在しな

い。郵便受けは,住宅,店舗及び事務所等の入り口に設置されるものであり,

外観に対する印象を左右するものであるから,デザインが重要な要素となる

ものである。

したがって,需要者は,広く一般の消費者や事業者である。

なお,原告は,デザインポストの需要者について,商品の名称や製造者名

よりもデザインの美しさ,シンプルさ等に着目する旨主張するが,仮に,そ

のような需要者が存在するとすれば,当然に商品の名称や製造者名も重視す

るはずであり,原告商品と被告商品とを混同することなどありえない。

(2)販売実績等

ア 原告商品は,平成16年11月から販売されているものではない。仮に

原告の主張を前提としても,販売期間はわずか約7年間であり,販売数量

も4038個,1年当たり平均では576個にすぎない。

この原告商品の販売数量は,日本全国の郵便受けの販売総数と比較する

と,ほとんど無視できる程度のものである。具体的には,全国における新

築住宅着工数は,平成20年度が約103万戸,平成21年度が約77万

戸,平成22年度は約81万戸であり,郵便受けの新規需要と比較しても

原告商品の販売実績はごく僅少である。

9
イ 原告が主張する株式会社東急ハンズにおける常設展示販売は,わずか2

店舗におけるものにすぎないし,各店舗における原告商品の販売実績も明

らかにされていない。

ホームセンターだけでも全国に数千店舗あることからすれば,上記常設

展示販売は,原告商品の周知性の獲得に何ら寄与するものではない。

ウ 原告商品は,楽天市場の「ポスト」に関する販売ランキングにおいて,

平成23年2月3日には14位であり,同年10月19日には45位であ

り,同年11月2日には31位であり,いずれも上位ではない。また,楽

天市場の販売ランキングにおける順位は,販売数量だけを基準としておら

ず,独自に作成されたランキングである上,ランキングに登録されていな

い商品もある。

そもそも,郵便受けは,住宅を新築した際やリフォームをした際に,外

構業者から購入するのが通常であり,インターネットでの購入は少ない上,

インターネットで郵便受けを販売するサイトも無数に存在しており,楽天

市場は,そのうちの一つにすぎない。そして,原告商品は,楽天市場以外

のサイトで全て販売ランキング外である。

したがって,楽天市場における販売ランキングは,原告商品の知名度等

を示すものではない。

エ 原告商品は,ベルギー王国所在のペンネ社が製造販売しているものであ

り,原告は,これを輸入販売しているにすぎない。また,原告以外の業者

も原告商品を販売しており,原告が独占的に販売しているものでもない。

したがって,需要者が,原告商品の形態から原告の販売する商品である

と認識することはない。

(3)広告宣伝

以下のとおり,原告商品の広告宣伝は,滋賀県内の一部地域を中心とする

ごく限られた地理的範囲で行われたにすぎない。その内容も原告店舗等の宣

10
伝が多く,原告商品は,店舗内の写真の背景として多数の商品と共に写り込

んでいるにすぎなかったり,形態が判別できなかったりするなど,原告商品

の形態を需要者に認識させる効果はなかった。

ア チラシ,新聞折込み広告

原告が主張するチラシ,新聞折込み広告の頒布数量は否認する。

また,チラシの配布エリアは,全て滋賀県内又はその一部地域に限られ

ているし,新聞の折込み広告も,無差別に頒布されるものであって,宣伝

効果がかなり低いものである。

上記チラシ・新聞折込み広告の内容も,法人である原告自体の広告であ

り,原告商品の広告ではない。原告商品は多数の商品のごく一部として写

り込んでいるにすぎず,原告商品の写真も非常に小さく,詳細な形態を認

識できないものが大半であり,原告商品の形態的特徴を認識させる宣伝効

果は皆無なものである。

イ テレビコマーシャル

原告が主張するテレビコマーシャルの内容自体,不明である。

また,びわ湖放送のみで放送されたものであり,視聴された可能性があ

るのは滋賀県と周辺の一部地域に限られる。

ウ 雑誌広告

前記アと同様に,原告が主張する雑誌広告は,法人である原告自体の広

告であり,原告商品の広告ではない。原告商品は,多数の商品のうちの一

つとして紹介されているにすぎないし,原告商品の形態的特徴も,全く識

別することができない。

また,上記広告が掲載された雑誌の販売地域も滋賀県に限られているか

ら,少なくとも原告商品の形態について全国の需要者の間に広く認識させ

るものではない。

エ パンフレット

11
各パンフレットが頒布された部数は明らかではなく,多くとも1万部で

ある。被告商品を掲載したパンフレットが平成22年10月からの1年間

で30万9500部も作成されたことと比較すれば,ごくわずかである。

また,頒布の対象も明らかではない。

パンフレットの内容も原告商品専用のものではないから,原告商品の宣

伝効果は極めて限定的なものである。

オ 展示会への出展

仮に原告商品を展示会に出展したとしても,多数の出展者の中で,わず

かなスペースをとり,多数の商品の中の一商品として展示したにすぎない

から,宣伝効果は皆無である。

カ テレビ番組における紹介

原告の主張するテレビ番組は,いずれも,法人である原告自体や経営す

る店舗の紹介を内容とするものであり,原告商品の紹介を内容とするもの

ではない。

原告商品は,各番組内において,背景に数秒程度写り込んでいるなど,

全体のほんのわずかな部分でしか写っておらず,原告商品の形態的特徴を

識別できるものではない。

番組自体の放映回数も少なく,宣伝効果は皆無である。

また,上記番組は,びわ湖放送及び KBS 京都で放送されただけのもの

であるところ,びわ湖放送の視聴可能地域は,滋賀県及びその周辺地域に

限られ,KBS 京都の視聴可能地域は,京都府及びその周辺地域に限られて

いる。

3 争点3(被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類

似の商品表示であるか)について

【原告の主張】

被告商品の形態は,原告商品の形態デッドコピーといえるほど酷似してお

12
り,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類似の商品表示である。

被告らが主張する後記相違点は,インターネットで表示された場合,ほとん

ど判別できるものではなく,原告商品と被告商品とは,全体としてほぼ同じ形

態であるという印象を受けるものである。

【被告らの主張】

以下のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一

又は類似の商品表示ではない。

(1)原告商品は,鍵部分が扉の平面より前方に飛び出しており,扉全体として

凹凸の少ないフラットな形状ではない。これに対し,被告商品は,鍵部分が

扉の平面よりもくぼんでおり,扉全体としてフラットな形状である。

(2)被告商品は,原告商品と異なり,本体と背面のスペーサーとが一体となっ

ておらず,本体と別の部材であるゴムのスペーサーが設けられている。

(3)原告商品は,スチールにエポキシ塗装仕上げをされ,表面に細かな凹凸の

ある艶消し仕上げをされている。これに対し,被告商品は,ステンレス製又

はスチール製の焼付塗装仕上げをされており,光沢があるため,表面の質感

が原告商品と大きく異なる。

(4)被告商品は,原告商品と寸法や各部分の角度等が異なっている。

4 争点4(被告らの行為は,原告商品と混同を生じさせるものであるか)につ

いて

【原告の主張】

前記3【原告の主張】のとおり,被告商品は原告商品と形態が酷似している

から,需要者が原告商品と被告商品とを混同し又はその出所を混同するおそれ

は,極めて高い。

現に,需要者が原告商品と被告商品とを混同した例がある。

【被告らの主張】

以下のとおり,需要者が原告商品と被告商品とを混同し又は出所を混同する

13
おそれは全くない。

(1)前記2のとおり,原告商品の形態は,原告の商品表示として需要者の間に

広く認識されてはいない。

(2)前記3のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と異なる。

そもそも,郵便受けは,頻繁に購入される類のものではなく,家の入口を

飾るものであり,値段も比較的安価ではないから,慎重に検討されて購入さ

れるものであり,混同されるおそれが低い商品である。

(3)原告商品は,ペンネ社の「スティーリー」という目立つ商標及び商品名を

付されて広告宣伝及び販売をされており,商品自体にも「PENNE」の商標

が付されている。

これに対し,被告商品は,スペインのアレギ社が製造する「スタイリッシュ

ポスト」という商品であり,被告らはアレギ社の「スタイリッシュポスト」

として販売しており,商標,商品名及び商品の包装箱が,原告商品と全く異

なっている。

5 争点5(損害額)について

【原告の主張】

被告タカギは,平成22年10月ころから平成23年6月末までの間に,少

なくとも400個の被告商品を譲渡した。

原告商品1個当たりの利益の額は2万円である。

よって,原告は,上記譲渡数量に上記利益を乗じた合計800万円の損害を

受けた(法5条1項)。

本件不正競争防止法違反行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用は10

0万円が相当である。

【被告タカギの主張】

いずれも否認する。

第4 当裁判所の判断

14
1 争点1(原告商品の形態は,法2条1項1号商品等表示に当たるか)につ

いて

(1)原告は,原告商品の形態について,需要者の注意を引く独特の際だった特

徴を備え,これらの特徴は相互に有機的な関連性を有するものであるから,

原告商品は,全体として他の同種の商品と識別しうる独自の特徴を備えてい

る旨主張する。

しかしながら,以下の理由により,この主張を採用することはできない。

ア 特徴1

原告は,原告商品について,上部に開口部となる凸状の緩やかなカーブ

がある蓋部と,前面凹状の緩やかなカーブがある錠付き扉を有する箱形の

郵便受け本体から構成されており,これらのカーブは原告商品に独自の形

態である旨主張する。

まず,上部に開口部となる蓋部と,錠付き扉を有する箱形であることは,

郵便受け一般に共通する形態にすぎないことが明らかである。

また,乙1ないし7並びに丙1ないし4,6,8,10,12ないし1

4,16及び21によると,上部に凸状の緩やかなカーブがある蓋を設け

た郵便受けが,原告商品のほかにも複数販売され又は意匠登録されている

ことが認められる。

さらに,乙8ないし11並びに丙1,2及び10によれば,前面凹状の

緩やかなカーブがある錠付き扉を有する郵便受けも,原告商品のほかに複

数販売されていることが認められる。

これらのことからすると,特徴1について,他の同種の商品と識別しう

る独自の特徴ということはできない。

イ 特徴2

原告は,原告商品の郵便受け本体とスペーサーとが一体となっており,

これも通常の郵便受けとは異なる独自の形態である旨主張する。

15
しかしながら,スペーサーは,使用時において通常目にされることがな

い背面部の形態にすぎないことなどからすれば,商品表示として商品の形

態を構成する特徴とはいいがたい。

また,乙12及び13によれば,郵便受け本体とスペーサーとが一体と

なった商品は,原告商品の他にも複数存在することが認められる。

ウ 特徴3

原告は,原告商品について,前面の扉の錠部分が錠周りを窪ませており,

扉全体として凹凸の少ないフラットな形態となっているのは,他に類例を

見ない独特な形態である旨主張する。

しかしながら,錠周りが窪んでいるということについて,需要者が商品

の出所を示す特徴的な形態であると捉えることは,考えがたいというべき

である。また,乙2,15及び16並びに丙11によれば,前面の扉の錠

周りを窪ませた郵便受けは,原告商品のほかにも複数存在することが認め

られる。

原告商品の前面扉が全体として凹凸の少ないフラットな形態となってい

るとする点は,郵便受け一般に共通する形態であるというべきである。

エ 原告商品全体について

前記イ及びウで検討したところによれば,原告商品を全体としてみたと

きに,特徴2及び3について,商品表示として他の商品と識別しうる独自

の特徴とはいえない。

また,前記アのとおり,特徴1のうち,@ 上部に開口部となる凸状の緩

やかなカーブがある蓋部と, 前面凹状の緩やかなカーブがある錠付き扉
A

という各特徴については,個別にみると,それぞれ同種の商品にみられる

ありふれた特徴である。さらに,乙8ないし11並びに丙1及び2によれ

ば,上記@及びAの両方を備えた郵便受けも,原告商品の他に複数存在す

ることが認められる。

16
したがって,原告商品の形態は,全体としてみても,他の同種の商品と

識別しうる独自の特徴を備えているということができない。

(2)以上のとおり,原告商品の形態が他の同種の商品と識別しうる独自の特徴

を備えているとは認めることができないし,後記2のとおり,原告商品の形

態について特定の者の商品であることを示す表示として需要者の間に広く認

識されるに至っているとも認めることができない。

よって,原告商品の形態について,法2条1項1号商品等表示に当たる

ということはできない。

2 争点2(原告商品の形態は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識

れているか)について

以下のとおり,原告商品の形態は,原告の商品表示として全国の需要者の間

広く認識されているとは認めることができないし,滋賀県等限定された地域

についてみても,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているとは

認められない。

(1)需要者

原告は,一般の郵便受けと区別することができる「デザインポスト」とい

う商品類型が存在することを前提として,その需要者は,単なる外構の部材

としてではなく,郵便受けを独立した商品として購入する特殊な嗜好と購買

力を有する消費者及びこのような消費者を顧客とする業者に限定される旨主

張する。

しかしながら,
デザインポスト」という商品類型やそれに対応する需要者

層が成立していることを裏付けるに足りる証拠はない。被告らが主張すると

おり,郵便受けは,住宅,店舗,事務所等の入口に設置されるものであるこ

となどから,デザインが重要な要素となることは明らかである。

上記原告の主張は独自の主張であって,採用することができない。

したがって,需要者は,広く一般の消費者及び事業者等であると解される。

17
(2)販売実績等

原告は,平成16年11月から平成23年5月21日までの間に,合計4

038個の原告商品を販売した旨主張する。

この主張を前提としても,約6年半の間に1年当たり約620個を販売し

たというにすぎないし,郵便受け全体の市場における原告商品の占有率等を

認めるに足りる的確な証拠もない。

かえって,丙19によれば,上記原告商品の販売期間における全国の新築

住宅着工数は,平成16年度は119万3000戸,平成17年度は124

万9000戸,平成18年度は128万5000戸,平成19年度は103

万6000戸,平成20年度は103万9000戸,平成21年度は77万

5000戸,平成22年度は81万9000戸であり(いずれも1000未

満は四捨五入) 合計約739万6000戸にも上ることが認められる。
, この

ことに加え,店舗及び事業所等で新規購入される需要や買換え需要も考慮す

ると,郵便受け全体の市場における原告商品の占有率は,むしろ,少ないと

いわざるを得ない。

そうすると,原告商品の販売実績が,原告商品の形態について原告の商品

表示として需要者の間に広く認識させるものであったと認めることはできな

い。

なお,滋賀県等に限定した販売実績については,本件記録上,明らかでな

いし,原告は,原告商品の販売実績が多量であることを裏付ける事情として,

株式会社東急ハンズにおける常設展示販売や,楽天市場における販売ランキ

ングの順位についても主張しているが,これらの事実が認められるからと

いって,上記認定を左右しない。

(3)広告宣伝についてみても,以下のとおり,原告商品の形態について,原告

の商品表示として需要者の間に広く認識させるものとはいいがたい。

ア チラシ,新聞折込み広告

18
原告は,平成17年1月から平成23年5月19日まで,原告商品を掲

載した多数のチラシ,新聞折込み広告を作成,頒布した旨主張する。

そこで検討すると,甲4ないし11,13,15,17,19,21な

いし25,27ないし31,33,34,36ないし39,41,43な

いし45,47,49ないし51,53,55ないし57,59ないし6

1,63によれば,上記チラシ及び新聞折込み広告は,いずれも法人であ

る原告又は原告が運営する店舗の広告であって,原告商品の広告ではない。

原告商品は,他の商品と共に一群の商品群として掲載され又は店舗内の風

景に写り込んでいるにすぎないし,原告商品の写真の大きさは,チラシ等

をA4版の大きさで見たときに,約1ないし2? 程度の大きさのものであ

る。また,上記チラシには,原告以外の業者の広告も併せて掲載されてお

り,新聞折込み広告も他の業者の広告と併せて配布されたことが明らかで

あり,上記チラシ及び新聞折込み広告は原告単独の広告ではない。

上記のようなチラシ,新聞折込み広告の内容,体裁等からすると,原告

商品の形態について,原告の商品表示として需要者の間に広く認識させう

るものであったとは認めがたいというべきである。

イ テレビコマーシャル

原告は,原告商品が写ったテレビコマーシャルを制作し,びわ湖放送の

テレビ番組において,平成19年9月に24回,同年10月に22回,同

年11月に14回,同年12月に2回,平成20年1月に8回,平成21

年1月に8回,同年8月に1回,平成22年1月に6回,合計85回にわ

たり放送した旨主張する。

しかしながら,上記テレビコマーシャルの具体的な内容についての主張

立証はなされていない。甲64の1ないし9によれば,平成21年1月と

平成22年1月に放送されたコマーシャルは30秒間のもので,素材の内

容は「謹賀新年 30秒篇」というものであり,それ以外の期間におけるテ

19
レビコマーシャルは,いずれも15秒間のもので,素材の内容は「ポスト

ギャラリーオープン篇」又は「大切にしたい家の顔篇」というものであっ

たことが認められる。しかし,これらの素材の内容だけでは,原告商品が

写ったものであったとしても,具体的にどのような映像であったか不明で

あるため,原告商品の形態について,原告の商品表示として需要者に認識

させる内容のものであったと認めることはできない。

なお,原告の主張によっても,これらのテレビコマーシャルは,滋賀県

内,京都市山科区,宇治市山間部,宇治田原町山間部,三重県伊賀市,福

井県嶺南の各一部において放送されたにすぎないのであるから,少なくと

も原告商品の形態について全国の需要者の間に広く認識させうるものでは

ない。

また,上記の限られた放送地域に限ってみても,視聴可能なテレビ局は

複数ある上,1局につき1日当たり相当数のテレビコマーシャルが放送さ

れていたことは明らかであって,上記の期間における散発的な放送によっ

て,原告商品の形態について,原告の商品表示として需要者の間に広く認

識させたとは認めがたい。

ウ 雑誌広告

原告は,平成19年8月1日から平成22年1月1日まで,毎年1月1

日と8月1日の年2回,合計5回にわたり,雑誌「住まい net 滋賀」
(発行

部数各1万2000部)に原告商品を掲載した広告を掲載した旨主張する。

しかしながら,上記雑誌が滋賀県限定の地域雑誌であることは明らかで

あるから,少なくとも原告商品の形態について,原告の商品表示として全

国の需要者の間に広く認識させうるものであったとはいえない。

また,甲65ないし69によれば,上記雑誌広告は,法人である原告又

は原告が運営する店舗の広告であって,原告商品の広告ではないことが認

められる。原告商品は,他の商品とともに一群の商品群として掲載されて

20
いるにすぎない上,A4版の大きさでみたときに誌面のうち約2? 程度の

大きさで掲載されていたにすぎない。しかも,本文の記事や他の業者の広

告等が掲載されていたことなども考慮すると,滋賀県に限定してみても,

原告商品の形態について,原告の商品表示として需要者の間に広く認識

せたとは認めがたいというべきである。

エ パンフレット

原告は,平成16年10月から平成23年3月までの間に,原告商品を

掲載したパンフレット合計3万9000部を作成し,ガーデニングフェア

やインターネットでの求めに応じて頒布した旨主張するが,頒布の対象や

実際に頒布された正確な数量は明らかでない。

また,うち1万部については原告商品の単品パンフレットであるが,そ

の余のパンフレットは,原告が取り扱う多数の商品を紹介する50頁前後

のものであり,その頒布により,原告商品の形態について,原告の商品表

示として需要者の間に広く認識させることができたとは認めがたい。

オ 展示会への出展

原告は,平成16年11月から平成23年3月まで合計7回にわたり,

原告商品を展示会に出展した旨主張する。

甲80ないし92,104,甲105ないし107の各1・2によれば,

原告が上記各展示会に原告商品を出展したことは認められる。しかしなが

ら,原告の展示スペースを訪れた者の数は明らかでない上,原告商品が他

の商品とともに展示されていたこと,原告の他に100を超える出展者が

いたことなども考慮すると,原告商品の形態について原告の商品表示とし

需要者の間に広く認識させるものであったとは認めることができない。

カ テレビ番組における紹介

原告は,びわ湖放送の情報番組による取材を受け,同番組は,平成19

年4月14日及び同月15日(再放送)に放送され,同番組の中で,原告

21
商品が放映されたこと,同年11月23日に放送されたびわ湖放送の別の

情報番組でも原告商品が放映されたこと,平成20年9月12日に放送さ

れた KBS 京都の情報番組でも,原告商品が放映されたことを主張する。

しかしながら,弁論の全趣旨によれば,びわ湖放送のテレビ番組の視聴

可能地域は,滋賀県,京都府及び福井県の一部地域に限られ,KBS 京都の

テレビ番組の視聴可能地域は京都府,滋賀県,大阪府,奈良県の一部に限

られることが認められる。

したがって,上記各テレビ番組は,少なくとも原告商品の形態について,

原告の商品表示として需要者の間に広く認識させうるものではない。

また,上記各テレビ番組の内容をみても,甲93ないし95によれば,

専ら法人である原告及びその経営する店舗の紹介を内容とするものであり,

原告商品は店舗内の風景に写り込んでいたり又は人気のあるポストのうち

の一つとして紹介されたりしているにすぎないものである。

加えて,上記の限られた視聴可能地域に限ってみても,上記イと同様,

視聴可能なテレビ局が複数あり,1局につき1日当たり相当数の番組が放

送されていることも明らかであって,わずか数回の放送をどれほどの数の

視聴者が視聴したか相当に疑問があるし,この点に関する主張立証も全く

ない。

これらのことからすれば,滋賀県に限ってみても,上記各テレビ番組に

おける紹介により原告商品の形態について原告の商品表示として需要者

間に広く認識させたものとは認めがたいというべきである。

3 結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件請求には理由

がないから,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部



22
裁 判 長 裁 判 官 山 田 陽 三




裁 判 官 西 田 昌 吾



裁判官達野ゆきは,差し支えのため,署名押印することができない。



裁 判 長 裁 判 官 山 田 陽 三




23
別紙

当 事 者 目 録



原 告 株 式 会 社 そ と や 工 房

同訴訟代理人弁護士 松 村 信 夫

同 塩 田 千 恵 子

同 坂 本 優

同 藤 原 正 樹

同 永 田 貴 久



被 告 株式会社 丸 三 タ カ ギ

被 告 株 式 会 社 ノ グ チ

被 告 有限会社フォーナート

上記3名訴訟代理人弁護士 家 近 正 直

同 鎌 田 邦 彦

同 山 本 和 人

同 福 本 洋 一

同 北 井 歩

同 毒 島 光 志

被 告 ファミリー庭園EC株式会社

同訴訟代理人弁護士 中 村 潤 一 郎

同 五 島 洋

同 松 村 直 哉

同 大 西 隆 司

同 吉 澤 彩 子

同 濱 永 健 太

24
同 八 木 香 織

同 江 崎 辰 典




25

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