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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11ワ22096不正競争防止法に基づく差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成12ワ20801不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成17ワ7778不正競争防止法に基づく販売差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成16ワ9869損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 顧客層 /  他人の商品 /  観念 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  因果関係 /  デザイン /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  秘密として管理 /  営業上の情報 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  営業秘密 /  2条1項7号 /  損害賠償 /  損害額 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 26971号 損害賠償請求事件
原告 イースタン・リアル・エステイト株式会社
訴訟代理人弁護士 渡辺彰敏
被告 ジンブラザーズ株式会社
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/08/31
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,金3000万円及びこれに対する平成13年9月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,被告が原告販売に係るバッグの形態を模倣したバッグを製造,販売したこと,及び被告が原告の商品開発方法や仕切値率などの原告の営業秘密を不正に使用したことを理由として,不正競争防止法(以下「法」という。)に基づいて損害賠償を求めた事案である。
2 前提となる事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 原告はハンドバッグ等の皮革製品の輸入販売を業とする株式会社である。
原告は,平成9年10月から,フランスのエルメス社の製造するバッグの形態に酷似したバッグを,「エポニーヌ」の標章を付して販売した。このうちエルメス社のバーキンと呼ばれるバッグ(以下「バーキン」という場合がある。)と同一形態のバッグは,別紙1(原告製品目録)のとおりである(以下「原告製品」という。)。
(2) 他方,被告は,カバン製造及び卸売りを業とする株式会社である。
被告は,遅くとも平成12年7月ころ,同様にエルメス社の製造するバッグの形態に酷似したバッグを,「ロイヤルグレース」の標章を付して販売した。被告の販売する上記バッグのうち,エルメス社製バーキンと同一形態のものは別紙2(被告製品目録)のとおりである(以下「被告製品」という。)。
3 争点 (1) 形態模倣行為(法2条1項3号)の成否 (原告の主張) 別紙1及び2を対比すれば明らかなとおり,原告製品の形態を模倣した被告製品を販売した被告の行為は,法2条1項3号に該当する。
被告は,原告もエルメス社の製品の形態を模倣したと主張する。
しかし,被告の主張は失当である。エルメス社の製品が平均単価50万円程度であるのに対して,原告製品の平均単価は8万円程度であって,エルメス社の製品に似ていながら,しかも,エルメス社より廉価で製品を供給することにより,エルメス社の製品にあこがれながら高価格ゆえにエルメス社の製品を購入できない我が国の消費者を購入者層として開拓した。原告のこの構想は,当時,エポニーヌのような価格帯で購入できるエルメス調の製品を有しなかった我が国の消費者の新たな需要を喚起し,エポニーヌは平成11年7月から平成12年6月の1年間に約1億5000万円を売り上げるまでに成長した。このように,原告製品は,エルメス社の顧客とは異なる顧客層を対象とし,独自の市場を開拓したものであるから,原告製品の形態にはその市場において独自性があるといえる。被告は,エルメス社以外の高級ブランドバッグの形態を模倣した商品を販売することも可能であったにもかかわらず,原告が開拓した上記市場に原告製品の形態を模倣して参入したものであるから,被告の行為は,不正競争行為に該当するというべきである(詳細は,別紙「原告準備書面1(抜粋)」,「原告準備書面2(抜粋)」のとおりである。)。
(被告の反論) 否認する。
被告製品は,エルメス社の製品の形態を模倣したものであって,原告製品の形態を模倣したものではない。そもそも,原告製品は,高級バッグとして著名なエルメス社の製品の形態を模倣しただけのものであって,原告独自のデザイン等の創意工夫は何ら存在せず,原告には保護されるべき利益がない(詳細は,別紙「被告答弁書(抜粋)」のとおりである。)。
(2) 営業秘密不正使用行為(法2条1項7号)の成否 (原告の主張) 被告は,原告と取引のあった有限会社ハイクラスの代表者Aを通じ,同人が原告から開示を受けた情報,すなわち,@原告の商品開発方法及びA小売店における原告製品の販売価格に対する仕入価格の割合(以下「仕切値率」という。)に関する情報を取得した。
「原告の商品開発方法」とは,エルメス社の製品に酷似した製品を,エルメス社の価格の何分の1かの低価格で供給することにより,エルメス社の製品にあこがれながら,高価格なために購入できないでいる我が国の消費者層に狙いを絞り,商品展開を行うという開発方法を指す。「原告製品の仕切値率」とは,原告の販売先である小売店において,販売価格に対する原告からの仕入価格の割合を指す。原告は,原告製品の仕切値率を各小売店に対して,口外しないよう求めているので秘密情報である。したがって,上記商品開発方法及び仕切値率は,法2条4項所定の営業秘密に当たる。
被告は,原告の主催するインターネット上のホームページに「エポニーヌ商品の取扱店」として表示された販売店に対し,原告の仕切値率を知ったことを利用して,原告の卸価格より僅かに安い卸価格で被告製品を売り込み,原告の販売活動を妨害した。被告の上記行為は,原告の営業秘密を不正に使用し,原告の販売活動の妨害を行ったものであり,法2条1項7号の不正競争行為に該当する。
(被告の反論) 否認する。
原告の商品開発方法は原告独自のものではなく,同様の商品開発方法を採る会社は他にも無数にあるし,被告自身も原告が原告製品を販売する以前からエルメス社製品を模倣した製品を製造・販売していた。
また,仕切値率は,原告が製品を卸販売している小売店側から容易に入手できるものであって,何ら営業秘密に該当するものではない。
(3) 損害額 (原告の主張) ア 原告は,平成12年7月から11月までの間に,同11年の同期に比して,原告製品の売上げにして約金4500万円,利益にして約2000万円の減収減益を余儀なくされたが,これは被告製品の販売によるものである。また,原告は原告製品のために年間約4000万円の広告費を計上しているが,被告の不正競争行為によりこの広告の3割程度は効果が減殺されたから,これによって生じた原告の損害は1000万円を下るものではなく,これも被告の行為と相当因果関係にある損害である。
イ また,被告は,平成12年7月から現在までの期間に被告製品を,約7500万円分売上げ,少なくとも3000万円の利益を得たものであるから,法5条1項によっても,原告の損害は少なくとも3000万円である。
ウ 以上によれば,被告の不正競争行為による原告の損害は,金3000万円を下るものではない。
(被告の反論) 争う。
争点に対する判断
1 争点1(形態模倣)について 法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡,貸し渡し,輸入する行為等につき不正競争行為とする旨規定する。同規定が設けられた趣旨は,費用,労力を投下して,商品を開発して市場に置いた者が,費用,労力を回収するに必要な期間(最初に販売された日から3年),投下した費用の回収を容易にし,商品化への誘因を高めるためには,費用,労力を投下することなく商品の形態模倣する行為を規制するのが相当であるとされたからである。したがって,法2条1項3号所定の不正競争行為について同法4条により損害賠償を請求することができる者は,自ら費用,労力を投下して,当該商品を開発して市場に置いた者に限られるというべきである。
以上の観点から検討する。前提となる事実,証拠(甲1,2,乙2,4,5)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。すなわち,原告は,平成9年10月から,エルメス社の製造するバッグの形態に酷似したバッグ(原告製品)に,「エポニーヌ」の標章を付して販売した。原告製品は,別紙1のとおりであり,その形態が著名なエルメス社製のバーキンと呼ばれるバッグと全体の形状,細部の装飾などにおいて酷似している。原告が,原告製品をエルメス社の製品に似せて販売した理由は,原告によれば,エルメス社の製品が平均単価50万円程度であるのに対して,原告製品の平均単価は8万円程度であって,よく似た商品を廉価で供給することにより,エルメス社の製品にあこがれる消費者の需要に応えるためであるとしている。なお,我が国において,エルメス社がバーキンと呼ばれるバッグを販売したのが平成9年以前であることは明らかである。
そうすると,原告製品の形態は,著名なエルメス社のバーキンの形態を模倣したものであり,原告は,自ら費用,労力を投下して,商品を開発して市場に置いた者ということはできない。そうすると,原告は法4条により損害賠償を請求することができる者に当たらない。したがって,その余の点を判断するまでもなく,被告が原告製品の形態を模倣したことを原因とする原告の請求は理由がない。
2 争点2(営業秘密の不正使用)について 不正競争防止法における「営業秘密」とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいう(法2条4項)。
まず,原告の主張に係る営業秘密のうち「エルメス社の製品に酷似した製品を,エルメス社の価格の何分の1かの低価格で供給することにより,エルメス社の製品にあこがれながら,高価格なために購入できない我が国の消費者層に狙いを絞り,商品展開を行うという開発方法」については,その性質上,公然と知られていない情報と言うことはできないこと,このような方法が秘密として管理されていた形跡は窺えないこと,有用な情報であると解せられないこと等の理由に照らすと,法2条4項所定の営業秘密には当たらない。
次に,原告の主張に係る営業秘密のうち「仕切値率」については,各小売店は,それぞれ自己が原告製品を仕入れた価格を当然に知っているわけであるが,本件全証拠によるも,原告が原告商品の各小売店に対する卸値を秘密として管理していたと認めることはできない(原告が各小売店に対して口外しないように依頼したとしても,そのようなことにより直ちに秘密として管理されていると解することはできない。)。したがって,その余の点を判断するまでもなく,被告が営業秘密を使用したことを原因とする原告の請求は理由がない。
結論
よって,主文のとおり判断する。
追加
別紙1(原告製品目録)別紙2(被告製品目録)別紙原告準備書面1(抜粋)第1被告答弁書に対する原告の主張1被告は,その答弁書の第3において,「原告の独自の『商品開発コンセプト』とは,エルメス社の製品を限りなく模倣することであ」るとしているが,これは大きな誤りである。原告の商品開発コンセプトは,エルメス社の製品によく似た製品を,同社製品の1割乃至2割程度の低価格で供給することにあった。
被告はこの大きな誤解に基づいて「平成9年から平成10年の時期にはすでにこのような原告の主張する原告の『独自の開発コンセプト』に基づいて商品製作を行い,収益活動を行っていた会社は,国内外合わせて1000社を数えたとされる」とするが,どのような根拠に基づく主張であろうか。1000社とは言わないまでも100社でも摘示していただきたい。
そして被告は原告には「企業努力もそれに伴う企業としての原告の権利や権限は一切存在しない。」とし,原告も被告も「エルメス社の権利に対する侵害を行い,収益を得たのである。」とするが,ここにも大きな誤解が存する。
まず第1に,既に訴状でも明らかにしたとおり,原告がエルメス調の製品を低廉な価格で供給し始めた時期には,そのような製品を供給する企業は日本国内には存せず,またそのような製品に対する市場の顕在的な需要も明らかでなかった。
日本において,そのようなエルメス社の製品の1割から2割という低廉な価格で同様の商品を供給したのは原告であり,そのような市場の需要を開拓し顕在化させたのも原告であった。従って,原告には自らが労苦を伴って開拓した市場を不正に荒らされないよう請求する権利がある。
第2に,このようにして原告が開拓した商品需要は,何らエルメス社の権利を侵害するものではない。これも既に訴状において指摘したことであるが,如何に外形的に似ていようとも,原告商品を求める顧客層と原告商品の5倍から10倍という高価格で,しかも通常発注してから数年間待たないと入手できないエルメス社の製品を求める顧客層とは,明らかに厳然と異なるのである。この点において,原告の開拓した商品市場は何らエルメス社の権利を侵害するものではないのである。
そしてそのことを何よりも端的に示しているのは,自己の既得権益の確保に熱心な外国企業であるエルメス社から,原告は1度たりとも商品の販売中止の請求を受けたことはなく,何らかのクレームを受けたことすらないという事実である。被告が,自らエルメス社の権利を侵害しているつもりでも,同社は被告の商品販売に何らの痛痒を感じていないのである。それは,被告の商品を購入する購買層が同社の商品購買層とは明らかに異なるからである。被告が侵害しているのは,エルメス社の権利ではなく原告の権利である。
更に第3に,商品の形態においても,原告及び被告の製品と実際のエルメス製品とは,そのデザインがどれほど似通っていても,実際に並べてみれば,使用されている革の品質・手触り・風格等の差異は素人目にも明らかである。これに対して被告の製品は単なる形態の模倣のみならず,原告製品と革の品質・手触り・風格等の点においてもほとんど同一であり,この点においても,被告が侵害している利益は,エルメス社の利益ではなく,原告の利益であることが明らかである。
別紙原告準備書面2(抜粋)第1原告の主張(追加)1被告は,原告の製品を模倣しながら,その商品コンセプトを正確に理解していないか,或いは故意に論点をすり替えているものである。
エルメス社の製品の模造品を製造・販売していた,或いはしていると言うだけの会社であれば,世界的に何社も存在することは,被告主張の通りである。それは,この世界において,いわゆる「フェイク(模造品)市場」が厳然と存在する以上,明らかな事実である。
ここでいう「フェイク」とは,本件のような皮革製品を初め,宝石・時計・アクセサリー等の高級品の(本物の)所有者が,公式の席や社交の場でのみその所有する本物を使い,その他日常的には所有する高級品(本物)に代わってそれらとよく似た模造品を使うという欧米の習慣に依存した,言ってみれば真の所有者の為の模造品を意味する。従って,公式な社交界の存しない我が国においては,従来,このようなフェイクを取り扱う市場は存せず,或いは存在したとしても微々たる規模であるに過ぎなかった。
これに対して原告は,こうしたフェイク(模造品)を,本物の所有者の為ではなく,むしろ本物に憧れてはいてもその高価格故に入手できない一般大衆の為に,廉価にかつ容易に入手できるようにしたものである。
前者のフェイクと後者の原告が手がける商品との間には,次のような相違がある。第1に,エルメス等の製品は基本的に商品の数だけデザインがあるが,原告の商品は,数種類であるに過ぎない。これは,エルメス等においては基本的な型(パターン)はあっても,個々の商品は受注生産であり,従って注文者の指示により無数のヴァリエーションが存する(それ故,フェイクでさえ受注生産であることもままある)が,原告においては,大衆的な価格を維持する為,エルメスの基本パターンのうちいわゆる「売れ筋」にあたる数種類の人気商品のデザインを踏襲しているに過ぎないものである。第2に,欧米における「フェイク」は,本物の所有者の為のものであるので,それらの者からのメールオーダーによる場合が多く,またフェイクといえども受注生産であったり,そうでなくとも大量の在庫を保持していないので,発注から製品の受け取りまで相当の時日を要することが多い。これに対して原告は,多額の広告宣伝費等を費やして広く大衆にアピールし,店舗を構え,相当数の在庫を取りそろえることにより,通常,注文から数日以内,店舗に在庫があればその場で商品が受け取れるようにしたものである。
2フェイクを廉価に大量供給する,と言うだけの企業戦略であれば,これを原告のみのオリジナルとすることは困難であろう。しかしながら被告は,数多あるエルメス製品のパターンの中から原告が多年に渡る市場調査の結果,製品化したのと全く同じパターンの商品を,隠れた位置にある商標以外寸分違わずに作り上げ,しかもそれを原告商品を販売する販売店に,原告よりやや低額の仕切値で売り込むという,商道徳上も最も唾棄されるべき方法での参入を試みたのである。実際上,被告が日本のフェイク市場を開拓しようとするならば,エルメスにこだわることなく,グッチのフェイクでもセリーヌのフェイクでも良かったはずであるにかかわらず,被告は上記のような方法を選択したのであり,そこには,本訴において被告が声高に主張するような独自の商品コンセプトも市場調査も販路開拓も存せず,不正な競争行為があるのみであった。
3独自の商品開発も販路開拓もなく,それ故何らのリスクも負わずに,他社が多大な労力と資本を費やして開拓した市場を荒らし回る業者には,一定のパターンが見られる。それは,短期間に市場を荒らし回り,不正な利益を上げると何処へともなく消え去ってしまい,しばらく期間をおいて,再び別の商品で全く同様の市場簒奪を試みるというパターンである。被告が,すでにその登記簿上本店所在地に何らの施設を有せず,本訴提起時には送達先とする程度に現存した支店でさえも,現在は「もぬけの殻」の状態にあることは,このような市場簒奪者の通例によく当てはまるものである。
別紙被告答弁書(抜粋)第3(原告,被告また有限会社ハイクラスの行なう事業内容とその概況)あくまでも原告の独自の「商品開発コンセプト」とは,エルメス社の製品を限りなく模倣することであり,「販売ルート・販売店に対する卸価格の営業秘密」とは,エルメス社の製品に対する需要に対し,それに代わりうる模造品を低単価で高利益で販売したい販売店に対する営業活動である。
このようなことは国内や海外の大小を問わず町工場のハンドバックメーカーは,独自の開発方法や知識,情報がなくてもエルメス社の製品さえ入手し,分解し研究し販売すれば簡単に成り立つことであった。
そのようなハンドバックメーカーが被告の取引先であった韓国内のハンドバックメーカーであり,訴状上で登場するイタリアのハイクラス社なのである。この平成9年から平成10年の時期にはすでにこのような原告の主張する原告の「独自の開発コンセプト」に基づいて商品製作を行い,収益活動を行っていた会社は被告の認識では,国内外合わせて1000社を数えたとされる。
そこには,原告の主張する「独自」のとか「オリジナル」などの言葉も,そのための企業努力もそれに伴う企業としての原告の権利や権限は一切存在しない。
敢えてそれを主張するなれば,それはすべてエルメス社の権利である。
原告が販売する「エポニーヌ」,また被告が販売する「ヘンリー」,「ロイヤルグレース」もすべてエルメス杜の商品の模造品であり,エルメス社の権利に対する侵害を行い,収益を得たのである。
ただその行為がハンドバック製品のデザイン,機能,構造そのものの時代を通した不変性,またそこに発生する独自の意匠権,商標権というものの所在が不明確であり認められにくい性格がある為,そのようなエルメス社の模造品とされる商品,またそれを製作するメーカーは,「エルメス」または「HERMES」という商標権だけを侵害しなければどんなにエルメス社の製品を模造した商品を製作・販売し収益を上げてもその行為を追及されることなく,企業活動が可能なのであった。
その中でもそのような単なるエルメス社製品の模造行為を正当なまた立派な企業活動とした認識違いは,原告の代表者Bの経営者としての道徳観念とその資質を著しく疑わざる負えない。またその模造品につけた名前だけがオリジナルであるのにも関わらず,原告はその単なるエルメス社の製品の模造品をすべてが独自のものかのように「オリジナルブランド」として堂々と大々的に告知をし,その完成度の高さを市場や販売店に対しアピールすることで最も知名度を得たのが,「エポニーヌ」であり前述したその他大勢の会社の商品なのである。
(中略)第4(原告の請求に対する拒絶理由その1)原告は,被告が平成9年7月以降,有限会社ハイクラスを通して同社との取引上で原告が訴状上でうたう「営業秘密」を入手し,原告独自の商品コンセプトに基づいて商品を開発し販売して収益を上げたと記述するが,被告は有限会社ハイクラスと取引を開始する以前,さらには平成9年10月から原告が「エポニーヌ」なる商品による事業を開始する以前から,同コンセプトに基づいて同様の商品の供給を国内に対し行い収益を得ていたものである。
またそれ以前から国内外問わずそのような会社は,無数に存在していた。
したがって,原告の訴える同事業に対する既得権による権利や財産などは一切存在しない。
(原告の請求に対する拒絶理由その2)エルメス社の単なる模造品であるという証拠として,原告の扱うブランドの商標は英語表記を行うと「EPONINE」である。しかし,原告の製作し販売する商品のすべてはエルメス社と全く同じデザインであり,エルメス社の扱うブランド「エルメス」(HERMES)の頭文字「H」をモーチーフにしたデザインである。
前述したようにいずれにしても原告の主張する,自社の独自性は認められず,その権利,財産の侵害またそれに伴う損害に対する被告への請求は一切成り立たない。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 今井弘晃
裁判官 石村智