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審判番号(事件番号) データベース 権利
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平成24ワ13282不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
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事件 平成 25年 (ネ) 10062号 不正競争行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/12/26
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成25年12月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成25年(ネ)第10062号,同第10083号 不正競争行為差止等請求控

訴事件,同附帯控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成24年(ワ)第4229号)

口頭弁論終結日 平成25年10月31日

判 決



控訴人兼附帯被控訴人 有限会社ジャパンリンク貿易



訴 訟 代 理 人 弁 護 士 石 川 慶 一 郎



被控訴人兼附帯控訴人 Y



訴 訟 代 理 人 弁 護 士 伊 藤 真

同 平 井 佑 希

訴 訟 代 理 人 弁 理 士 梶 原 克 彦

主 文

1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。

2 控訴費用は控訴人兼附帯被控訴人の負担とし,附帯控訴費用は被控

訴人兼附帯控訴人の負担とする。

3 原判決主文第3項は,当審において,被控訴人兼附帯控訴人が附帯

請求について請求の一部減縮をしたことにより,「控訴人兼附帯被控

訴人は,被控訴人兼附帯控訴人に対し,374万5337円及び内金

322万6779円に対する平成24年2月23日から,内金5万1

496円に対する同年3月31日から,内金12万7062円に対す

る同年12月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支




払え。」と変更された。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 控訴の趣旨

(1) 原判決中,主文第3項を取り消す。

(2) 前項に係る部分の被控訴人兼附帯控訴人の請求を棄却する。

(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人兼附帯控訴人の負担とする。

2 附帯控訴の趣旨

(1) 原判決中,主文第3項を次のとおり変更する。

控訴人兼附帯被控訴人は,被控訴人兼附帯控訴人に対し,745万917

9円及び内金640万2063円に対する平成24年2月23日から,内金

10万2992円に対する同年3月31日から,内金25万4124円に対

する同年12月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払

え。

(2) 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人兼附帯被控訴人の負担とする。

(3) 仮執行宣言

第2 事案の概要

本件は,原判決別紙原告商品目録記載の各商品(以下「原告各商品」と総称

し,それぞれを目録の番号に従い,「原告商品1」などという。)を販売する

被控訴人兼附帯控訴人(以下,単に「一審原告」という。)が,原判決別紙被

告商品目録記載の各商品(以下「被告各商品」と総称し,それぞれを目録の番

号に従い,「被告商品1」などという。)は原告各商品の形態模倣した商品

であり,控訴人兼附帯被控訴人(以下,単に「一審被告」という。)による被

告各商品の販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項3号

不正競争行為に当たる旨主張して,一審被告に対し,同法3条1項,2項に基

づき,被告商品1,4ないし6の販売等の差止め及び廃棄並びにその製造用の




金型及び治具の廃棄を求めるとともに,同法4条に基づく損害賠償として13

20万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は,一審原告の請求について,被告商品1,4ないし6の販売等の差

止め及び廃棄並びに損害賠償として374万5337円及びこれに対する平成

24年2月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合によ

る遅延損害金の支払を一審被告に命じる限度で認容し,その余の請求をいずれ

も棄却した。

これに対し一審被告が,原判決中,損害賠償請求に関する部分の一審被告敗

訴部分のみを不服として控訴した。また,一審原告が,原判決中,損害賠償

求に関する部分の一審原告敗訴部分について,745万9179円及び内金6

40万2063円に対する平成24年2月23日から,内金10万2992円

に対する同年3月31日から,内金25万4124円に対する同年12月29

日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を一審被告に命じるよう

変更を求める限度で附帯控訴し,これに伴い,附帯請求について請求の一部減

縮をした。

1 前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨によ

り認められる事実である。)

(1) 当事者

ア 一審原告は,ステンドグラスのランプシェード,パイン材の家具,ドー

ルハウスなどの製造,販売を営む者である。

イ 一審被告は,日用品雑貨,インテリア用品,家具の輸入販売等を目的と

する会社である。

(2) 一審原告による原告各商品の販売

一審原告は,株式会社楽天が運営する「楽天市場」という名称のインター

ネットショッピングモール(以下「楽天市場」という。)に出店した「ウィ

ッチーズキッチン」という名称のネットショップ(「http://www.rakuten.n




e.jp/gold/witch/」。以下「原告ショップ」という。)において,平成21

年3月21日から原告商品2を,平成22年2月6日から原告商品3を,同

年7月18日から原告商品4を,同年11月2日から原告商品5を,平成2

3年4月10日から原告商品1を,同年7月15日から原告商品6をそれぞ

れ販売している。

原告各商品は,いずれも,一審原告が製造した「ステンドグラスのペンダ

ントランプ」(ステンドグラスのランプシェード)である。

(3) 一審被告による被告各商品の販売等

ア 一審被告は,原告各商品の販売開始後,自ら運営するウェブサイト上の

ネットショップ(「http://www.japan-link.jp/」。以下「被告ショップ」

という。)等において,中国のメーカーであるティファニー社(「QIX

IANG TIFFANY LIGHTING CO.,LTD」。以下,

単に「ティファニー社」という。)が製造した被告各商品を,単品である

いは任意のランプスタンド,ペンダントフレーム等と組み合わせて販売し

た。

イ 被告商品1は原告商品1と,被告商品2は原告商品2と,被告商品3は

原告商品3と,被告商品4は原告商品4と,被告商品5は原告商品5と,

被告商品6は原告商品6とそれぞれ実質的に同一の形態の商品であり,被

告各商品は,ティファニー社によって製造された原告各商品の形態をそれ

ぞれ模倣した商品である(甲3,9,乙1,弁論の全趣旨)。

(4) 本件の経過

ア 一審原告の代理人弁護士は,平成23年9月27日到達の内容証明郵便

で,一審被告に対し,被告商品1ないし5の形態が原告商品1ないし5の

形態をそれぞれ模倣したものであり,一審被告による被告商品1ないし5

の譲渡等が不競法2条1項3号の不正競争行為に該当することを理由に,

被告商品1ないし5の譲渡等の中止等を求める旨の警告(以下「本件警告」




という。)をした(甲7の1,2)。

イ 一審原告は,平成24年2月15日,本件訴訟を提起した。

2 当審における争点

(1) 一審被告による被告各商品の販売について不競法19条1項5号ロによ

る同法4条適用除外の有無(争点1)

(2) 一審原告の損害額(争点2)

第3 当事者の主張

1 争点1(不競法19条1項5号ロによる同法4条適用除外の有無)につい



(1) 一審被告の主張

ア 一審被告は,被告各商品をティファニー社から輸入し,これを日本国内

で販売したものであり,被告各商品を輸入した時点において,原告各商品

の存在を知らなかった。

一審被告は,平成23年9月27日に一審原告から本件警告を受けて初

めて原告商品1ないし5の形態と類似していることを認識したものであ

り,また,被告商品6については本件警告の対象となっていなかった。

そして,インテリア用品のように一つ一つの形態が異なる膨大な品数の

商品について類似品かどうかの調査を行うことは容易ではない。たまたま

一審原告が楽天市場に原告各商品を出品していたからといって,インター

ネットショッピングモールや通販サイトが無数に存在する中で,楽天市場

はその一つにすぎず,特に楽天市場を調査すべき義務があるということは

できない。

そうすると,一審被告が被告各商品を輸入,販売するに際し,原告各商

品と類似している商品を輸入しないように注意すべき義務などないし,仮

に一審被告において被告各商品の輸入時に被告各商品が原告各商品の形態

模倣した商品であることを知らないことにつき過失があったとしても,




少なくとも被告商品1ないし5については本件警告を受けるまでは,被告

商品6については本件訴状の送達を受けるまでは,上記過失は重大なもの

ではなかったというべきである。

この点に関し,一審原告は,一審被告は,ティファニー社を手足として

用いて被告各商品を製造し,これを日本国内で販売していたから,被告各

商品の輸入者とはいえず,「他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受け

た者」(不競法19条1項5号ロ)に該当しない旨主張する。

しかしながら,一審被告は,ティファニー社と資本関係などなく,対等

な取引関係にあること,ティファニー社は,アメリカ,ヨーロッパ,アジ

アの国々から注文を受けて製造しており,ティファニー社が製造した製品

の全量が一審被告に納品されているわけではなく,被告各商品についても,

ティファニー社は一審被告以外の外国企業にも被告各商品を製造販売して

いるはずであること,一審被告は,ティファニー社を手足として用いて被

告各商品を製造しているのではなく,同社から被告各商品を輸入する輸入

者であることからすれば,一審原告の上記主張は理由がない。

イ 以上によれば,一審被告が本件警告を受けた平成23年9月27日まで

に被告商品1ないし5を販売した行為及び本件訴状の送達を受けた時まで

に被告商品6を販売した行為については,一審被告においてティファニー

社から被告各商品を譲り受けた時に被告各商品が原告各商品の形態模倣

した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がな

かったから,不競法19条1項5号ロの規定により同法4条は適用されず,

一審被告が同条に基づく損害賠償責任を負うことはない。

ウ これに対し原判決は,一審被告がティファニー社から被告各商品を購入

して我が国に輸入するに当たっては,一審被告には被告各商品が原告各商

品の形態を模倣したものであるかどうかを調査すべき取引上の注意義務が

あったにもかかわらず,この点につき何らの調査も行わなかったから,被




告各商品が原告各商品の形態模倣した商品であることを知らなかったと

しても,知らないことにつき重大な過失がなかったものとは認められない

旨判断した。

しかしながら,@仮に被告各商品と原告各商品の出所の異同や被告各商

品が模倣品ではないか等につき,一審被告が問合せを受け得る立場であっ

たとしても,現実に問合せを受けたことはなく,一審被告は一審原告から

の本件警告を受けて初めて模倣品の可能性について知ったというのが実情

であること,A原告各商品の画像が楽天市場に出店した原告ショップに掲

載されていたとしても,楽天市場は消費者向けのショッピングモールであ

り,一審被告のようにランプシェードのみならず,家具,雑貨品等莫大な

種類(1000種類以上)の商品を扱う輸入業者が日常的に逐一調査する

ことは現実的には困難であること,B一審被告は,ティファニー社との取

引が長く,これまでティファニー社の商品について日本国内でクレームを

受けたことはなく,ティファニー社との間で取引上の信頼関係が形成され

ており,ティファニー社に対し形態模倣の有無を改めて確認すべき動機付

けがなかったことによれば,一審被告において,被告各商品が原告各商品

の形態を模倣したものであるかどうかを容易に調査可能であったとはいえ

ず,これを調査すべき取引上の注意義務があったとはいえないし,仮に上

記注意義務があったとしても,一審被告において特段の調査を行わなかっ

たからといって,重大な過失があったということはできない。

したがって,原判決の上記判断は誤りである。

(2) 一審原告の主張

ア 被告各商品は一審被告からティファニー社に対する一方的な指示により

製造自体が中止され得るものであり,被告各商品の製造の意思決定を行っ

ていたのは一審被告自身であること,一審被告は,どのような商品が販売

できるかをティファニー社からあらかじめ把握し,あらかじめ顧客に告知,




宣伝等を行った上で被告各商品の販売をしていること,一審被告がティフ

ァニー社から一審被告の略称(「JLT」)が不動文字で印刷された専用

の梱包箱に入った被告各商品を仕入れていること,ティファニー社が製造

した被告各商品の全量が一審被告に納入されていることからすれば,一審

被告は,ティファニー社から被告各商品を輸入しているのではなく,ティ

ファニー社を手足として用いて被告各商品の製造を行い,これを日本国内

で販売していたというべきである。

したがって,一審被告は,被告各商品の輸入者とはいえず,「他人の商

品の形態を模倣した商品を譲り受けた者」(不競法19条1項5号ロ)に

該当しないから,一審被告が被告各商品を販売する行為について同号が適

用される余地はない。

イ 仮に一審被告が被告各商品の輸入者であるとしても,一審被告は,遅く

とも平成22年2月には一審原告が販売する商品の形態模倣した商品の

販売を開始し,原告各商品を含め17種もの一審原告の商品の形態模倣

した商品を販売していたのであるから,本件警告を受けるまで原告各商品

の存在を知らなかったことなどあり得ないこと,一審被告は,一審原告か

ら本件警告を受けた後も,一審原告に対し何ら回答することなく,また,

原告ショップ等を確認することすらなく,模倣行為を繰り返していたこと,

一審被告は,被告各商品を発送する際にその梱包箱に原告ショップ掲載の

原告各商品の画像写真(ただし,モノクロ)を貼付して,被告各商品の識

別を行っていたことなどによれば,一審被告は,被告各商品の輸入時に被

告各商品が原告各商品の形態模倣した商品であることを知っていたとい

うべきである。

さらに,仮に一審被告が被告各商品の輸入時に被告各商品が原告各商品

の形態を模倣した商品であることを知らなかったとしても,一審被告は,

日用品雑貨,インテリア用品等の輸入販売を目的とする有限会社であって,




設立後10年を経過し,海外からの日用品雑貨等の輸入業については十分

知識を有しているはずであるから,日用品雑貨等の貿易に携わる者として

中国等アジア諸国で生産された日本向け商品が他人の知的財産権を侵害

ている可能性があることを容易に認識することができたこと,一審原告の

各商品がガラス板の形状やその組合せを創意工夫した斬新な特徴的形態を

有し,遅くとも平成20年5月ころ以降,楽天市場の洋風ペンダントライ

ト部門,シャンデリア部門,壁掛け照明部門等の部門ランキングでしばし

ば1位を獲得する人気商品であったことを併せ考慮すると,一審被告にお

いては,ティファニー社に事前に問い合わせたり,インターネット等で検

索したりするなどごく簡単な調査をしたりさえすれば,被告各商品が原告

商品の形態模倣した商品であることを容易に知ることができたもので

ある。

しかるに,一審被告は,日本最大のインターネットショッピングモール

である楽天市場における調査すらせずに,上記のとおり本件警告を無視し

て,本件警告の前後を通じて模倣行為を繰り返していたのであるから,一

審被告には,被告各商品が原告各商品の形態模倣した商品であることを

知らなかったことにつき,重大な過失がある。

したがって,一審被告が本件警告を受けた平成23年9月27日までに

被告商品1ないし5を販売した行為及び本件訴状の送達を受けた時までに

被告商品6を販売した行為について不競法19条1項5号ロが適用される

との一審被告の主張は,理由がない。

2 争点2(一審原告の損害額)について

(1) 一審原告の主張

ア 不競法5条1項に基づく損害額

一審被告は,故意又は過失により,原告各商品の形態模倣した被告各

商品を販売する不正競争行為(不競法2条1項3号)を行って,一審原告




営業上の利益侵害したから,同法4条に基づいて,一審原告が被った

損害を賠償すべき責任を負う。

一審原告が一審被告の上記不正競争行為により受けた不競法5条1項

基づく損害額は,次のとおり,合計675万9179円を下らない。

(ア) 被告各商品の譲渡数量販売数量

一審被告は,平成22年6月4日から平成24年12月28日ころま

での間に,少なくとも次の数量の被告各商品を販売した。

a 被告商品1

販売期間 平成23年8月12日から平成24年2月15日まで

販売数量 46個

b 被告商品2

販売期間 平成22年6月4日から平成23年10月8日まで

販売数量 60個

c 被告商品3

販売期間 平成23年1月8日から平成24年12月28日まで

販売数量 41個(このうち,訴状送達の日の翌日である平成24年

2月23日から同年12月28日までの販売分が9個)

d 被告商品4

販売期間 平成23年1月26日から平成24年2月17日まで

販売数量 51個

e 被告商品5

販売期間 平成23年1月8日から平成24年2月2日ころまで

販売数量 32個

f 被告商品6

販売期間 平成23年12月15日から平成24年3月30日まで

販売数量 32個(このうち,訴状送達の日の翌日である平成24年




2月23日から同年3月30日までの販売分が4個)

(イ) 原告各商品の単位数量当たりの利益額

原告各商品の1個当たりの利益額(甲19)は,次のとおりである。

a 原告商品1の利益額 2万6577円

b 原告商品2の利益額 2万5748円

c 原告商品3の利益額 2万8236円

d 原告商品4の利益額 2万3259円

e 原告商品5の利益額 2万5748円

f 原告商品6の利益額 2万5748円

(ウ) 一審原告の損害額

a 前記(ア)及び(イ)に基づいて,不競法5条1項に基づく一審原告の

損害額を算出すると,合計675万9179円となる。

【計算式】(26,577×46)+(25,748×60)+(2

8,236×41)+(23,259×51)+(25,748×3

2)+(25,748×32)=6,759,179

b 一審原告の上記損害額のうち,平成24年2月23日から同年12

月28日までの間に被告商品3(合計9個)が販売されたことによる

損害額は25万4124円,同年2月23日から同年3月30日まで

の間に被告商品6(合計4個)が販売されたことによる損害額は10

万2992円である。

(エ) 「販売することができないとする事情」の不存在等

a 不競法2条1項3号の形態模倣の不正競争行為は,被侵害者の商品

の形態に依拠し,これと実質的に同一の形態を持つ商品を販売する行

為であり,被侵害者の商品と侵害品とが市場において完全に補完関係

に立つから,被侵害者の商品と侵害品との価格差等は,そもそも被侵

害者が「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただ




し書き)に該当しないというべきである。

そうすると,被告各商品が原告各商品と比べて廉価であるとしても,

一審原告において原告各商品を「販売することができないとする事情」

があるということはできない。

この点に関し,原判決は,被告各商品の小売価格は,原告各商品の

小売価格の4分の1ないし5分の1程度(被告商品4の小売価格の例

は,原告商品4の小売価格の約9分の1)と認定したが,被告商品2

が2万4000円,被告商品3が2万4000円,被告商品4が2万

3000円,被告商品5が2万5000円であるなどの小売価格の例

があることや,現実に被告商品4は2万3000円でも売れているこ

となど(甲21ないし24,29ないし32)からすると,原判決の

上記認定は誤りである。また,原告各商品及び被告各商品は,一般家

庭や店舗等におけるインテリアとして使用されるランプであり,いわ

ゆる消耗品等は異なり,若干の価格差によって購買層が分断されるよ

うな性質の商品ではなく,原告各商品と被告各商品との価格差が需要

者の購買意欲に与える影響は極めて小さいというべきである。

したがって,被告各商品と原告各商品との価格差等を根拠に被告各

商品の販売数量の2分の1に相当する数量につき一審原告が「販売す

ることができないとする事情」があるとした原判決の認定判断は誤り

である。

b 一審被告は,一審原告のステンドグラスのランプシェードの販売能

力は1アイテムにつき年9個程度であるから,上記販売能力に応じた

被告各商品の販売数量分が一審原告の損害であって,その販売数量

超える分については不競法5条1項に基づく損害額の対象とはならな

いなどと主張する。

しかしながら,不競法5条1項本文の「販売その他の行為を行う能




力」は,潜在的実施能力で足りると解すべきである。そして,一審原

告の扱う商品の一部に需要が集中すれば,当該商品の販売を優先して

その需要に応えるのが当然であること,一審原告は19種類の商品に

ついて被告各商品の販売数量と同程度の販売をした販売実績を持って

いることからすると,一審原告の潜在的実施能力に欠けるところはな

かったから,一審被告の上記主張は理由がない。

弁護士費用及び弁理士費用

一審被告の不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用及び弁理士費

用相当額の損害は,70万円を下らない。

ウ 小括

以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,不競法4条に基づく損害

賠償として745万9179円(前記ア(ウ)a及びイの合計額)及び内金

640万2063円に対する平成24年2月23日(訴状送達の日の翌

日)から,内金10万2992円に対する同年3月31日から,内金25

万4124円に対する同年12月29日から各支払済みまで民法所定の

年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

(2) 一審被告の主張

ア 不競法5条1項に基づく損害額の主張に対し

(ア) 一審原告主張の一審被告による被告各商品の販売期間及び販売数

量(前記(1)ア(ア))は認める。被告各商品は,一審被告が被告ショップ

を通じて業者に卸売りをしたものである。

このうち,本件警告を受けた後の販売数量は被告商品1が30個,被

告商品2が4個,被告商品3が7個,被告商品4が22個,被告商品5

が18個である。

しかしながら,一審原告が製造販売するステンドグラスのランプシェ

ードの種類は非常に多く,実際の原告各商品の販売数は年間数個から十




数個程度と考えられること,原告各商品の価格は1個4万円台が主流で

あるのに対し,被告各商品の小売価格(参考上代)は1万円以下であっ

て,その価格差は4倍程度あり,被告各商品を購入した顧客層が高価な

原告各商品を購入するとは考えられないことからすると,一審被告が販

売した被告各商品の販売数量の全部に相当する数量について一審原告

が「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただし書き)

がある。

(イ) この点について,原判決は,被告各商品の販売数量のほぼ2分の1

の数量について一審原告が「販売することができないとする事情」があ

ったと認定したが,逆に言えば,残余の数量については上記事情がなか

ったものと認定し,その上で,一審原告の損害額を340万5337円

と判断した。

しかしながら,一審原告の製造販売するステンドグラスのランプシェ

ードの数は,平成23年の1年間で約820個であること,一審原告の

製造販売するステンドグラスのランプシェードのデザインの種類は,楽

天市場の原告ショップに掲載されているものが合計99種類あり(甲

2),そのうちデザイン的に重複するものを除いても,90種類以上に

も及ぶことに鑑みると,一審原告のステンドグラスのランプシェードの

販売能力は,1アイテムにつき年平均9個程度である。不競法5条1項

に基づく損害額は,被侵害者の販売その他の行為を行う能力に応じた額

を超えない限度において認められるのであるから(同項本文),一審原

告の販売能力を超える数量については同項に基づく損害額の対象とはな

らないし,又は上記数量については一審原告において「販売することが

できないとする事情」(同項ただし書き)に該当するというべきである。

そうすると,一審原告の損害額は,最大で合計154万3171円(次

のaないしfの合計額)にすぎず,原判決の上記認定及び判断は誤りで




ある。

a 被告商品1

被告商品1の販売期間は約6か月であるから,一審原告の販売能力

からすれば9個の12分の6の5個程度が一審原告の損害というべき

である。

そうすると,一審原告の損害額は13万2885円となる。

【計算式】 26,577×5=132,885

b 被告商品2

被告商品2の販売期間は約16か月であるから,一審原告の販売能

力からすれば9個の12分の16の12個程度が一審原告の損害とい

うべきである。

そうすると,一審原告の損害額は30万8976円となる。

【計算式】 25,748×12=308,976

c 被告商品3

被告商品3の販売期間は約24か月であるから,一審原告の販売能

力からすれば9個の12分の24である18個程度が一審原告の損害

というべきである。

そうすると,一審原告の損害額は50万8248円となる。

【計算式】 28,236×18=508,248

d 被告商品4

被告商品4の販売期間は約13か月であるから,一審原告の販売能

力からすれば9個の12分の13である10個程度が一審原告の損害

というべきである。

そうすると,一審原告の損害額は23万2590円となる。

【計算式】 23,259×10=232,590

e 被告商品5




被告商品5の販売期間は約13か月であるから,一審原告の販売能

力からすれば,前記dと同様に10個程度が一審原告の損害というべ

きである。

そうすると,一審原告の損害額は25万7480円となる。

【計算式】 25,748×10=257,480

f 被告商品6

被告商品6の販売期間は約3か月半であるから,一審原告の販売能

力からすれば9個の12分の3.5である4個程度が一審原告の損害

というべきである。

そうすると,一審原告の損害額は10万2992円となる。

【計算式】 25,748×4=102,992

弁護士費用及び弁理士費用の主張に対し

一審原告の主張は争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(不競法19条1項5号ロによる同法4条適用除外の有無)につい



(1) 認定事実

前記第2の1の前提事実と証拠(甲2,3,5,6,9,19,27,乙

1ないし9(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合す

れば,次の事実が認められる。

ア 一審原告は,複数の出店者から買物ができるインターネットショッピン

グモールである「楽天市場」に原告ショップ(名称「ウィッチーズキッチ

ン」)を出店して,ステンドグラスのペンダントランプ,シャンデリア,

壁掛け照明及びテーブルランプ,パイン材の家具等の商品を販売している。

原告ショップのウェブページでは,ステンドグラスの各商品がその画像と

ともに展示されており,商品の形態を画像で確認できる。




楽天市場は,大手のインターネットショッピングモールであって,売れ

筋商品のランキングを商品のジャンル別に「ランキング市場」において発

表している。一審原告が販売するステンドグラスの各商品は,平成20年

5月ころ以降,楽天市場の洋風ペンダントライト,シャンデリア,壁掛け

照明の各部門の「ランキング市場」でしばしば1位等のランキング上位を

獲得しており,平成23年9月22日には,ステンドグラスのペンダント

ランプが洋風ペンダントライト部門の「ランキング市場」で1位から3位

までを独占し,平成24年1月にも同部門で1位を獲得した。

一審原告は,原告ショップにおいて,ステンドグラスのペンダントラン

プとして,平成21年3月21日から原告商品2を,平成22年2月6日

から原告商品3を,同年7月18日から原告商品4を,同年11月2日か

ら原告商品5を,平成23年4月10日から原告商品1を,同年7月15

日から原告商品6をそれぞれ販売している。

一審原告が販売するステンドグラスのペンダントランプは,原告ショッ

プにおいて,原告各商品を含めて100種類程度展示されており,いずれ

も,一審原告の家族等によってハンドメイドで製作されている。

なお,一審原告が楽天市場の「ランキング市場」で1位等のランキング

上位を獲得したステンドグラスのペンダントランプは,原告各商品とは別

商品である。

イ 一審被告は,自ら運営するウェブサイト上の被告ショップ等において,

ステンドクラスのペンダントライト(ペンダントランプ),シャンデリア

等の商品を販売している。一審被告が販売する上記商品は,ティファニー

社等の中国のメーカーによって中国で製造された商品である。

一審被告は,平成22年6月4日から被告商品2を,平成23年1月8

日ころから被告商品3及び5を,同月26日ころから被告商品4を,同年

8月12日ころから被告商品1を,同年12月15日ころから被告商品6




をそれぞれ販売した。なお,被告各商品の販売先は,いずれも業者であり,

卸販売したものである。

被告各商品は,いずれもティファニー社によって中国で製造されたステ

ンドグラスのペンダントランプである。

ウ ティファニー社は,被告各商品について,インターネットで見た原告各

商品に依拠してデザインのサンプルを作成し,そのサンプル画像を添付し

たメールを一審被告に送信し,これを受けた一審被告は,自ら運営するウ

ェブサイト上のネットショップ等において被告各商品の宣伝等をした上

で,ティファニー社に被告各商品を注文し,ティファニー社がその受注を

受けて製造した被告各商品を購入してこれを輸入し,前記イのとおり,日

本国内で業者向けに販売した。

ティファニー社は,被告各商品の梱包に当たり一審被告の略称(「JL

T」)を不動文字で印刷した一審被告専用の梱包箱を使用していた。また,

ティファニー社は,被告商品3及び5の梱包箱の外側面に,原告ショップ

に掲載された原告商品3及び5の画像をプリントしたもの(ただし,モノ

クロ)を貼付していた。

エ 一審原告の代理人弁護士は,平成23年9月27日到達の内容証明郵便

で,一審被告に対し,被告商品1ないし5の形態が原告商品1ないし5の

形態をそれぞれ模倣したものであり,一審被告による被告商品1ないし5

の譲渡等が不競法2条1項3号の不正競争行為に該当することを理由に,

被告商品1ないし5の譲渡等の中止等を求める旨の警告(本件警告)をし

た。本件警告に係る警告書(甲7の1)中には,一審原告が原告商品1を

楽天市場の原告ショップで販売していること,原告商品1が楽天市場の「洋

風ペンダントライト デイリー売れ筋人気ランキング」の5位になってい

ること,本件警告の到達後2週間以内に被告商品1ないし5を含む19種

類の商品について,各商品ごとの製造数,販売数,販売価格,販売先等を




書面で一審原告に回答することを求めることなどの記載があった。

オ その後,一審被告は,平成23年10月中旬ころ,ティファニー社に対

し,被告商品1ないし5の製造の中止を求め,既にティファニー社に発注

していた分をキャンセルした。

他方で,一審被告は,上記製造の中止を求めるまで,被告商品1ないし

5が他人の商品の形態を模倣した商品であるかどうかについてティファニ

ー社に問合せをするなどの調査確認をすることはなかった。また,一審被

告は,本件警告を受けた後も,一審原告に連絡を取ることも,楽天市場の

原告ショップを調査することもなく,被告商品1については平成24年2

月15日まで,被告商品2については平成23年10月8日まで,被告商

品3については平成24年12月28日ころまで,被告商品4については

同年2月17日まで,被告商品5については同月2日ころまでそれぞれの

販売を継続した。

カ 一審被告は,本件警告を受けた後の平成23年12月15日ころから,

ティファニー社が製造した被告商品6の販売を開始し(前記イ),平成2

4年3月30日までその販売を継続した。

一審被告は,被告商品6をティファニー社から輸入するに当たり,ティ

ファニー社に対し,被告商品6が他の商品の形態模倣した商品であるか

どうかについて問合せをしたことはなく,また,楽天市場の原告ショップ

を調査することもなかった。

その間の同年2月15日,一審原告は,本件訴訟を提起した。

(2) 一審被告の「被告各商品を譲り受けた者」該当性

ア 原告各商品の形態と被告各商品の形態を対比すると,次のとおりであ

る(甲3)。

(ア) 原告商品1と被告商品1

原告商品1は,@形態の基本的構成として,12枚のガラス板をハン




ダによって接合して形成され,天頂のソケット取付部から下方に向けて

末広がりの傾斜を有するシェード上部と,全高の略2分の1の位置から

下方に向けて前記傾斜よりも更に急な傾斜を有するシェード下部とから

なり,全体として6面の深張り型の傘形状を有し,A形態の具体的構成

として,シェード下部は,下端縁が緩やかな凸曲線を描いて形成された

略台形状のガラス板6枚をシェード上部のガラス板の下端に連続するよ

うに配し,シェード下部を構成する6面のうち1面には4枚の花弁状の

ガラス板を放射状に配した花飾り2個が配され,シェード下部の緩やか

な凸曲線を描く下端縁には全周にわたりレース状の打ち抜き模様からな

る模様部を有し,シェード下部の6箇所のハンダ部分下端から球状のガ

ラス球が連なってなる下げ飾りが吊り下げられている。

原告商品1と被告商品1とは,4枚の花弁状のガラス板を放射状に配

した花飾り2個が,原告商品1ではシェード下部を構成する6面のうち

1面に配されているのに対し,被告商品1では上記6面のうち対向する

2面に配されている点において差異がある以外には,形態の基本的構成

及び具体的構成において一致する。そして,上記差異は商品全体の形態

に影響を及ぼすものとはいえない。

したがって,被告商品1の形態は,原告商品1の形態と実質的に同一

である。

(イ) 原告商品2と被告商品2

原告商品2は,@形態の基本的構成として,4枚の略5角形状のガラ

ス板をハンダによって接合して下方に向けて末広がりの四角錐台形状に

形成され,全体として4面を有し,各ガラス板は天頂のソケット取付部

に接続される上端が最も短辺であり,上端から下方に向けて末広がりの

傾斜を有する対向する2辺が最も長辺であり,下辺は逆山形をなす2辺

からなり,A形態の具体的構成として,4枚のガラス板は,幅の広い概




略ネクタイ状を有し,左右に隣接する各接合箇所には,凹曲線状の切欠

部によりアーモンド形の二つの穴が上下に連接して形成され,その連接

部分には蝶結び状のリボンが配され,更に凹曲線状の切欠部の下には,

逆V字状の切欠部が形成されている。

原告商品2と被告商品2とは,原告商品2にはシェードの4面に花飾

りが配されていないのに対し,被告商品2にはシェードの4面のうち対

向する2面の右下隅に5枚の花弁状のガラス板を放射状に配した花飾り

が配されている点,アーモンド形の穴及び逆V字状の切欠部が,原告商

品2では空隙になっているのに対し,被告商品2ではガラス片により埋

められている点において差異がある以外には,形態の基本的構成及び具

体的構成において一致する。そして,上記差異は商品全体の形態に影響

を及ぼすものとはいえない。

したがって,被告商品2の形態は,原告商品2の形態と実質的に同一

である。

(ウ) 原告商品3と被告商品3

原告商品3は,@形態の基本的構成として,24枚のガラス板をハン

ダによって接合して形成され,天頂のソケット取付部から下方に向けて

末広がりの傾斜を有するシェード上部と,全高の略2分の1の位置から

下方に向けて前記傾斜よりも更に急な傾斜を有するシェード下部とから

なり,全体として6面の深張り型の傘形状を有し,A形態の具体的構成

として,シェード下部は,3枚のガラスをハンダによって接合して一体

化し,下端縁が緩やかな凸曲線を描いて形成された略台形状の接合ガラ

ス板を形成し,その接合ガラス板をシェード上部のガラス板の下端に連

続するように配し,シェード下部の下端縁には全周にわたり各面四つず

つの半ドーナツ状の飾りが連続的に配されている。

原告商品3と被告商品3とは,形態の基本的構成及び具体的構成にお




いて一致する。

したがって,被告商品3の形態は,原告商品3の形態と実質的に同一

である。

(エ) 原告商品4と被告商品4

原告商品4は,@形態の基本的構成として,12枚のガラス板をハン

ダによって接合して形成され,天頂のソケット取付部から下方に向けて

末広がりの傾斜を有するシェード上部と,全高の下から略5分の3の位

置から下方に向けて前記傾斜よりも緩やかな傾斜を有するシェード下部

とからなり,全体として6面の鐘型花冠を有し,A形態の具体的構成と

して,シェード上部は,ソケットから放射状に等間隔で3本突き出させ

たスパイダーを介してソケットに取り付けられており,シェード下部は,

下端縁が緩やかな凸曲線を描いて形成された略台形状のガラス板6枚を

シェード上部のガラス板の下端に連続するように配し,シェード下部と

シェード上部との接合部近傍には全周にわたりレース状の打ち抜き模様

からなる模様部を有し,シェード下部の6箇所のハンダ部分下端から球

状のガラス球が連なってなる首飾り状の下げ飾りが吊り下げられてい

る。

原告商品4と被告商品4とは,下げ飾りのガラス球の形状が,原告商

品4では球状であるのに対し,被告商品4では涙滴形状である点におい

て差異がある以外には,形態の基本的構成及び具体的構成において一致

する。そして,上記差異は商品全体の形態に影響を及ぼすものとはいえ

ない。

したがって,原告商品4と被告商品4は,形態の基本的構成及び具体

的構成において一致する。

(オ) 原告商品5と被告商品5

原告商品5は,@形態の基本的構成として,12枚のガラス板をハン




ダによって接合して形成され,天頂のソケット取付部から下方に向けて

末広がりの傾斜を有するシェード上部と,全高の略2分の1の位置から

下方に向けて前記傾斜よりも更に急な傾斜を有するシェード下部とから

なり,全体として6面の深張り型の傘形状を有し,A形態の具体的構成

として,シェード下部は,下端縁が緩やかな凸曲線を描いて形成された

略台形状のガラス板6枚をシェード上部のガラス板の下端に連続するよ

うに配し,シェード下部を構成する6面のうち1面には略台形状の左辺

と上辺に左右の羽を接合して配した蝶飾りが配され,シェード下部の下

端縁には全周にわたりレース状の打ち抜き模様からなる模様部を有し,

シェード下部の6箇所のハンダ部分下端から球状のガラス球が連なって

なる下げ飾りが吊り下げられている。

原告商品5と被告商品5とは,蝶飾りが,原告商品5ではシェード下

部を構成する6面のうち1面に配されているのに対し,被告商品5では

上記6面のうち対向する2面に配されている点において差異がある以外

には,形態の基本的構成及び具体的構成において一致する。そして,上

記差異は商品全体の形態に影響を及ぼすものとはいえない。

したがって,原告商品5と被告商品5は,形態の基本的構成及び具体

的構成において一致する。

(カ) 原告商品6と被告商品6

原告商品6は,@形態の基本的構成として,16枚のガラス板をハン

ダによって接合して形成され,天頂のソケット取付部から下方に向けて

末広がりの急傾斜を有するシェード上部と,全高の下から略3分の1の

位置から下方に向けて同程度の急傾斜を有するシェード下部とからな

り,全体として8面を有する八角錐台形状を有し,A形態の具体的構成

として,シェード上部は,五角形に形成された略ネクタイの大剣状のガ

ラス板8枚をソケット取付部の周りに配し,その下端部は全周にわたり




剣先で構成される三角波形模様を有し,シェード下部は,全周がハンダ

で縁取られたひし形のガラス板8枚を配し,シェード上部とシェード下

部の接合部にはシェード上部下端縁とシェード下部上端縁とで形成され

るひし形の空隙が全周にわたり8箇所に形成されている。

原告商品6と被告商品6とは,原告商品6にはシェード上部とシェー

ド下部の接合部にひし型の空隙が形成されているのに対し,被告商品6

にはひし型の空隙に相当する箇所に同形状の透明ガラスが配されている

点において差異がある以外には,形態の基本的構成及び具体的構成にお

いて一致する。そして,上記差異は商品全体の形態に影響を及ぼすもの

とはいえない。

したがって,原告商品6と被告商品6は,形態の基本的構成及び具体

的構成において一致する。

イ 前記(1)の認定事実及び前記アの認定によれば,被告各商品は,ティファ

ニー社が原告各商品の形態に依拠して中国で製造した実質的に同一の形態

の商品であり,原告各商品の形態模倣した商品であること,一審被告は,

ティファニー社に対し,被告各商品を発注して輸入し,これを日本国内で

販売したことが認められる。

そうすると,一審被告は,ティファニー社から被告各商品を輸入した輸

入者であって,「他人の商品の形態を模倣した商品」である被告各商品を

譲り受けた者に当たることが認められる。

ウ これに対し,一審原告は,被告各商品は一審被告のティファニー社に対

する一方的な指示により製造自体が中止され得るものであり,被告各商品

の製造の意思決定を行っていたのは一審被告自身であること,一審被告は,

どのような商品が販売できるかをあらかじめ把握し,あらかじめ顧客に告

知,宣伝等を行った上で被告各商品の販売をしていること,一審被告が一

審被告の略称(「JLT」)が不動文字で印刷された専用の梱包箱に入っ




た被告各商品を仕入れていること,ティファニー社が製造した被告各商品

の全量が一審被告に納入されていることからすれば,一審被告は,ティフ

ァニー社を手足として用いて被告各商品の製造を行っていたものであるか

ら,被告各商品の輸入者とはいえない旨主張する。

前記(1)の認定事実によれば,一審被告が,平成23年10月中旬ころ,

ティファニー社に対し,被告商品1ないし5の製造の中止を求め,既に発

注していた分をキャンセルしたことがあったが,一審被告がその製造の中

止を求めたのは,一審原告の代理人弁護士から被告商品1ないし5が原告

商品1ないし5の形態を模倣した商品である旨の本件警告を受けたことに

よるものであるから,このキャンセルの一事をもってティファニー社と一

審被告が,一審被告のティファニー社に対する一方的指示により被告各商

品の製造自体を中止され得る関係にあったものということはできない。

また,一審被告がティファニー社から送信された被告各商品のサンプル

画像を用いて被告各商品の宣伝等を行った上で,被告各商品の販売をして

いたからといって,一審被告がティファニー社を手足として用いて被告各

商品の製造を行っていたことの根拠になるものではない。

さらに,一審被告専用の梱包箱は,ティファニー社が日本向けに輸出す

る際に必要とされる輸出荷印(シッピングマーク)の刷り込みがされた梱

包箱であるというにすぎず(乙202ないし204),また,仮に被告各

商品の全量が一審被告に納入されているとしても,それは一審被告のみが

ティファニー社に発注していたからにすぎないとも考えられるから,いず

れも,一審被告がティファニー社を手足として用いて被告各商品の製造を

行っていたことの根拠になるものではない。

したがって,ティファニー社は,一審被告から,被告各商品の注文を受

けて,その製造をし,一審被告に販売していたものであり,ティファニー

社と一審被告が,一審被告のティファニー社に対する一方的な指示により




被告各商品の製造自体が中止され得る関係にあったものということはでき

ず,一審原告の上記主張は理由がない。

(3) 被告各商品の輸入時における一審被告の重大な過失の有無等

一審被告は,一審原告から本件警告を受けて初めて原告商品1ないし5の

形態と類似していることを認識し,また,被告商品6は本件警告の対象とな

っていなかったこと,インテリア用品のように一つ一つの形態が異なる膨大

な品数の商品について類似品かどうかの調査を行うことは容易ではなく,一

審原告が楽天市場に原告各商品を出品していたからといって,インターネッ

トショッピングモールや通販サイトが無数に存在する中で,楽天市場はその

一つにすぎず,特に楽天市場を調査すべき義務があるということはできない

ことなどからすれば,一審被告が被告各商品を輸入,販売するに際し,原告

各商品と類似している商品を輸入しないように注意すべき義務などないし,

仮に一審被告において被告各商品の輸入時に被告各商品が原告各商品の形態

模倣した商品であることを知らなかったことにつき過失があったとして

も,少なくとも被告商品1ないし5については本件警告を受けるまでは,被

告商品6については本件訴状の送達を受けるまでは,上記過失は重大なもの

ではなかった旨主張する。

そこで検討するに,一審被告は,インテリア用品の輸入販売業者として,

他人の商品の形態を模倣した商品を輸入し,これを販売することにより他人

営業上の利益侵害してはならない義務を負うというべきであるから,一

審被告がティファニー社から被告各商品を輸入するに当たり,ティファニー

社に対し,被告各商品のデザイン完成に至る開発経緯等を問い合わせるなど

して被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認

すべき注意義務を負っていたものと解するのが相当である。

しかるところ,前記(1)の認定事実によれば,一審被告は,被告各商品を輸

入するに当たり,ティファニー社に対し,被告各商品が被告各商品が他人の




商品の形態模倣した商品ではないことを調査確認したことがなかったこと

が認められ,また,平成23年9月27日に一審原告の代理人弁護士から被

告商品1ないし5が楽天市場の原告ショップで販売されている原告商品1な

いし5の形態を模倣した商品である旨の本件警告を受けた後も,原告ショッ

プを調査することなく,被告商品1ないし5の販売を継続するとともに,原

告商品6の形態を模倣した被告商品6の販売を行っていたのであるから,一

審被告には,被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを

調査確認しようとする意思もなかったものと認められる。

加えて,楽天市場は,大手のインターネットショッピングモールであり,

一審原告が楽天市場の原告ショップで販売するステンドグラスの各商品は,

平成20年5月ころ以降,楽天市場の洋風ペンダントライト,シャンデリア,

壁掛け照明の各部門の「ランキング市場」でしばしば1位等のランキング上

位を獲得していたこと(前記(1)ア)からすると,一審被告において,被告各

商品のデザイン完成に至る開発経緯等をティファニー社に問い合わせていれ

ば,楽天市場の原告ショップを調査することに格別の困難はなかったものと

認められる。そして,原告ショップには,ステンドグラスのペンダントラン

プが原告各商品を含めて100種類程度展示されていたが(前記(1)ア),原

告各商品の形態と被告各商品との形態は酷似していること(前記(2)アの(ア)

ないし(カ))に照らすと,一審被告が原告ショップを調査すれば,被告各商

品が原告各商品の形態模倣した商品であることを容易に認識し得たものと

認められる。

以上を総合すると,一審被告において被告各商品の輸入時に被告各商品が

原告各商品の形態模倣した商品であることを知らなかったとしても,それ

は,被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認

すべき注意義務を怠ったことによるものであり,しかも,上記調査確認をす

ることにより被告各商品が原告各商品の形態模倣した商品であることを容




易に認識し得たにもかかわらず,一審被告には調査確認をしようとする意思

すらなかったのであるから,一審被告において被告各商品の輸入時に被告各

商品が原告各商品の形態模倣した商品であることを知らなかったことにつ

き重大な過失がなかったものと認めることはできない。

したがって,一審被告は,本件警告の前後を通じて,被告各商品について

不競法19条1項5号ロの「他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた

者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品模倣した商品であることを

知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)」に該当

しないから,一審被告の上記主張は,採用することができない。

(4) 小括

以上によれば,一審被告は,故意又は過失により,原告各商品の形態を模

倣した被告各商品を販売する不正競争行為(不競法2条1項3号)を行って,

一審原告の営業上の利益侵害したものといえるから,同法4条に基づいて,

一審原告が被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。

2 争点2(一審原告の損害額)について

(1) 不競法5条1項に基づく損害額

ア 被告各商品の譲渡数量販売数量)等

一審被告による被告各商品の販売期間及び販売数量が次の(ア)ないし

(カ)に記載のとおりであることは,当事者間に争いがない。

また,証拠(甲5,15ないし18,乙2ないし9(枝番のあるものは

枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,被告各商品は,被告ショッ

プにおいて,一審被告が業者に卸売りをしたものであり,その卸売価格及

び被告ショップ掲載の参考上代の額は,次の(ア)ないし(カ)に記載のとお

りであることが認められる。

(ア) 被告商品1

販売期間 平成23年8月12日から平成24年2月15日まで




販売数量 46個

卸売価格 2900円

参考上代 1万1600円

(イ) 被告商品2

販売期間 平成22年6月4日から平成23年10月8日まで

販売数量 60個

卸売価格 2500円

参考上代 1万円

(ウ) 被告商品3

販売期間 平成23年1月8日から平成24年12月28日まで

販売数量 41個(このうち,訴状送達の日の翌日である平成24年2

月23日から同年12月28日までの販売分が9個)

卸売価格 2400円

参考上代 9600円

(エ) 被告商品4

販売期間 平成23年1月26日から平成24年2月17日まで

販売数量 51個

卸売価格 2300円

参考上代 9200円

(オ) 被告商品5

販売期間 平成23年1月8日から平成24年2月2日ころまで

販売数量 32個

卸売価格 2400円

参考上代 9600円

(カ) 被告商品6

販売期間 平成23年12月15日から平成24年3月30日まで




販売数量 32個(このうち,訴状送達の日の翌日である平成24年2

月23日から同年3月30日までの販売分が4個)

卸売価格 2710円

参考上代 1万0840円

イ 原告各商品の単位数量当たりの利益額

証拠(甲2,19,20)及び弁論の全趣旨によれば,平成23年当時

の原告各商品の原告ショップにおける販売価格及び1個当たりの利益額

は,次のとおりであることが認められる。

(ア) 原告商品1

販売価格 4万5150円

1個当たりの利益額 2万6577円

(イ) 原告商品2

販売価格 4万4100円

1個当たりの利益額 2万5748円

(ウ) 原告商品3

販売価格 4万7250円

1個当たりの利益額 2万8236円

(エ) 原告商品4

販売価格 4万0950円

1個当たりの利益額 2万3259円

(オ) 原告商品5

販売価格 4万4100円

1個当たりの利益額 2万5748円

(カ) 原告商品6

販売価格 4万4100円

1個当たりの利益額 2万5748円




ウ 一審原告の販売能力

(ア) 証拠(甲19,33)及び弁論の全趣旨によれば,被告訴人は,平

成23年の1年間に,一審原告の家族3人で約820個のステンドグラ

スランプを製造した実績があること,一審原告が販売したステンドグラ

スランプの商品のうち,人気の高いものは1種類で100個以上販売し

た実績があることが認められる。

上記認定事実によれば,一審原告は,前記アの被告各商品の販売期

間(平成22年6月4日から平成24年12月28日ころまでの間)中

に,前記アの被告各商品の販売数量(合計262個)の原告各商品につ

いて「販売その他の行為を行う能力」(不競法5条1項本文)を有して

いたものと認められる。

(イ) これに対し一審被告は,一審原告の製造販売するステンドグラスの

ランプシェードの数は,平成23年の1年間で約820個であるが,楽

天市場の原告ショップに掲載されているランプシェードのデザインの種

類は,デザイン的に重複するものを除いても,90種類以上にも及ぶこ

とに鑑みると,一審原告のステンドグラスのランプシェードの販売能力

は1アイテムにつき年平均9個程度であるから,原告各商品のそれぞれ

につき年9個を超える分は一審原告の販売能力を超えている旨主張す

る。

しかしながら,一審被告の主張は,原告ショップに掲載されている9

0種類以上の各商品について全て同じ割合で注文があり,その製造及び

販売がされていることを前提とするものであるが,一審原告が販売する

個々の商品は,そのデザイン,価格等が異なり,その売れ行きに違いが

生じ得ることは明らかであるから,一審被告の主張はその前提を欠くも

のである。また,一審被告の主張を前提としても,一審原告には1年間

に約820個のステンドグラスのランプシェードを販売した実績がある




ことになるから,一審原告において,前記アの被告各商品の販売期間中

に,前記アの被告各商品の各販売数量(合計262個)の原告各商品を

販売する能力に欠けることはなかったというべきである。

したがって,一審被告の上記主張は理由がない。

エ 販売することができないとする事情の存否等

(ア) 一審被告は,一審原告が製造販売するステンドグラスのランプシェ

ードの種類は非常に多く,実際の原告各商品の販売数は年間数個から十

数個程度と考えられること,原告各商品の価格は1個4万円台が主流で

あるのに対し,被告各商品の小売価格(参考上代)は1万円以下であっ

て,その価格差は4倍程度あり,被告各商品を購入した顧客層が高価な

原告各商品を購入するとは考えられないことからすると,一審被告が販

売した被告各商品の販売数量の全部に相当する数量について一審原告

が「販売することができないとする事情」(不競法5条1項ただし書き)

がある旨主張する。

そこで検討するに,@原告各商品及び被告各商品は,ステンドグラス

のペンダントランプという照明器具の一種であり,同様の照明器具には

多種多様なものが存在すること,A原告各商品及び被告各商品は,それ

ぞれ原告ショップ又は被告ショップで販売されており,ネットショップ

で販売されていたという点では共通するが,原告各商品については,そ

の販売価格が4万円台(4万0950円ないし4万7250円の範囲)

であるのに対し,被告各商品については,一審被告によって業者に対し

て卸売りがされたものであり,その販売価格(卸売価格)は2000円

台(2300円ないし2900円の範囲)であり,その価格差は20倍

程度あり,また,被告ショップ掲載の被告各商品の参考上代は1万円前

後(9200円ないし1万1600円の範囲)であり,この参考上代と

対比しても,その価格差は4倍程度あったことからすると,一審被告か




ら被告各商品を購入する顧客層と一審原告から原告各商品を購入する顧

客層には重なり合わない部分がかなりあるものといえること,B一審原

告が楽天市場の「ランキング市場」で1位等のランキング上位を獲得し

たステンドグラスのペンダントランプは,原告各商品とは別商品であり,

原告各商品がとりわけ人気が高い商品であったことをうかがわせる事情

を認めるに足りる証拠はないこと,C一審被告の取引先の業者のネット

ショップにおいて,被告商品2が2万4000円,被告商品3が2万4

000円,被告商品4が2万3000円,被告商品5が2万5000円

などの小売価格で掲載されている例(甲21ないし24)があるが,当

該業者と一審被告とを同一視し得るような事情を認めるに足りる証拠は

なく,また,この小売価格と対比しても,原告各商品との価格差は1.

6倍程度あったこと,以上の@ないしCの事情を総合考慮すると,前記

ア認定の被告各製品の販売数量のうち,50%に相当する数量について

は,原告各商品と被告各商品の価格差及び顧客層の相違等に起因して,

一審被告による不正競争行為がなくとも,一審原告が原告各商品を「販

売することができないとする事情」があったものと認めるのが相当であ

る。

したがって,前記アの被告商品の譲渡数量のうち,50%に相当する

数量(被告商品1につき23個,被告商品2につき30個,被告商品3

につき20個,被告商品4につき25個,被告商品5につき16個,被

告商品6につき16個)に応じた額を,原告の損害額から控除すべきで

ある。この限度において一審被告の上記主張は,理由がある。

(イ) これに対し一審原告は,不競法2条1項3号の形態模倣の不正競争

行為は,被侵害者商品の形態に依拠し,これと実質的に同一の形態を

持つ商品を販売する行為であり,被侵害者の商品と侵害品とが市場にお

いて完全に補完関係に立つから,被侵害者の商品と侵害品との価格差等




は,そもそも被侵害者が「販売することができないとする事情」に該当

しないし,また,被告商品2が2万4000円,被告商品3が2万40

00円,被告商品4が2万3000円,被告商品5が2万5000円で

あるなどの小売価格の例があることや,現実に被告商品4は2万300

0円でも売れており,原告各商品及び被告各商品は,一般家庭や店舗等

におけるインテリアとして使用されるランプであり,いわゆる消耗品等

は異なり,若干の価格差によって購買層が分断されるような性質の商品

ではなく,原告各商品と被告各商品との価格差が需要者の購買意欲に与

える影響は極めて小さいから,上記事情は存在しない旨主張する。

しかしながら,前記(ア)で述べたように,原告各商品は,ステンドグ

ラスのペンダントランプという照明器具の一種であって,同様の照明器

具には多種多様なものが存在する一方で,原告各商品が価格の多寡にか

かわらず,需要者が購入を求めるような特に人気の高い商品であったも

のとまでは認められないことからすると,原告各商品と被告各商品との

価格差が需要者の購買意欲に与える影響を軽視することはできない。

そして,前記(ア)の@ないしCの事情に鑑みると,被告各商品の形態

が原告各商品の形態と酷似していることなどを考慮してもなお,原告各

商品と被告各商品とが市場において完全に補完関係に立つものとはい

えず,一審原告の上記主張は,理由がない。

オ 一審原告の損害額

(ア) 以上を前提に,一審原告の不競法5条1項に基づく損害額を,前記

アの被告各商品の販売数量(ただし,前記エによる減算後のもの)に前

記イの原告各商品の1個当たりの利益額を乗じて算出すると,合計34

0万5337円となる。

【計算式】26,577×(46−23)+25,748×(60−3

0)+28,236×(41−20)+23,259×(51−25)




+25,748×(32−16)+25,748×(32−16)=3,

405,337

(イ) 一審原告の上記損害額のうち,平成24年2月23日から同年12

月28日までの間に被告商品3(合計9個)が販売されたことによる損

害額は12万7062円(28,236×9×0.5),同年2月23

日から同年3月30日までの間に被告商品6(合計4個)が販売された

ことによる損害額は5万1496円(25,748×4×0.5)であ

る。

(2) 弁護士費用及び弁理士費用

本件事案の性質・内容,本件訴訟に至る経過,本件審理の経過等諸般の事

情に鑑みれば,一審被告の不正競争行為と相当因果関係のある一審原告の弁

護士費用及び弁理士費用相当額の損害は,前記(1)の損害額の約1割に相当す

る34万円と認めるのが相当である。

(3) 小括

以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,不競法4条に基づく損害賠

償として374万5337円(前記(1)オ(ア)及び(2)の合計額)及び内金3

22万6779円に対する平成24年2月23日(訴状送達の日の翌日)か

ら,内金5万1496円に対する同年3月31日から,内金12万7062

円に対する同年12月29日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合に

よる遅延損害金の支払を求めることができる。

3 結論

以上の次第であるから,原判決は相当であり,本件控訴及び本件附帯控訴は,

いずれも理由がない。なお,一審原告は,当審において,附帯請求について請

求の一部減縮をしたから,原判決主文第3項を前記2(3)記載の認定のとおりに

変更する。

したがって,本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却することとし,主文




のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 齋 藤 巌