審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成27ワ33398 不正競争行為差止等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成27ワ29222 不正競争行為差止等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成27ワ2587 不正競争防止法違反行為差止等請求事件 平成27ワ7096 不正競争防止法に基づく差止請求権等不存在確認等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成27ワ31898 不正競争行為差止等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成28ネ10028 不正競争行為差止等請求控訴事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
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事件 |
平成
27年
(ワ)
28027号
不正競争行為差止等請求事件
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原告 ケンコーマヨネーズ株式会社 同訴訟代理人弁護士 石原達夫 同訴訟代理人弁理士 飯島紳行 藤森裕司 同 補佐人弁理士伊藤大地 南方美岐 被告 カネハツ食品株式会社 同訴訟代理人弁護士 佐尾重久 井上尚司 同訴訟代理人弁理士 富澤孝 同 補佐人弁理士富澤正 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2016/04/28 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を販売 し,又は販売のために展示してはならない。 2 被告は,被告商品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,838万8000円及びこれに対する平成27年10 月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,別紙原告商品目録記載のとおりの表示(以下「原告表示」という。)がされた商品(以下「原告商品」という。)を販売している原告が,別紙被告商品目録記載のとおりの表示(以下「被告表示」という。)がされた被告商品を販売している被告に対し,周知の商品等表示である原告表示と類似する被告表示を使用した被告商品の販売等をする不正競争行為(不正競争防止法2条1項1号)をしていると主張して,@同法3条1項,2項に基づき被告商品の販売等の差止め及び廃棄,A同法4条及び5条1項に基づき損害賠償金838万8000円及びこれに対する不法行為の後(訴状送達日の翌日)である平成27年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)? 当事者 ア 原告は,サラダ類,マヨネーズ類,ドレッシング類,ソース類の製造, 販売及び輸出入業等を目的とする株式会社である。 イ 被告は,食料品の加工及び販売等を目的とする株式会社である。 ? 原告商品及び被告商品の販売 原告は平成25年9月18日頃から原告商品を,被告は平成27年2月1 0日頃から被告商品をそれぞれスーパーマーケット等で販売している。 2 争点? 原告表示の周知性?? 損害額3 争点についての当事者の主張? 争点?(原告表示の周知性)について (原告の主張) 原告は,原告商品について,原告のニュースリリースにおける発売の告知, 雑誌,新聞及びラジオの各広告の出稿並びに展示会又は商談会への出展を行 った。また,原告商品は,雑誌やインターネット記事において紹介されたほ か,全国の大手コンビニエンスストアや大手スーパーマーケット等において 販売されており,平成27年3月末時点における取扱店舗数は832である。 こうしたことから,原告表示が原告商品を表すものとして全国の消費者に広 く認識され,強い識別力を有している。 (被告の主張) 原告が主張する広告等のほとんどは食品業者向けのものであり,ラジオ広 告は原告表示が明らかでない上,原告商品の販売数量も僅かであって,需要 者である一般消費者に周知であるとはいえない。 ? 争点?( )につい て (原告の主張) 原告商品及び被告商品はいずれもポテトサラダであり,その需要者である 一般消費者は商品表示全体から受ける印象によって商品を区別し,選択する 場合が少なくないところ,原告表示及び被告表示の基本的構成は,背景を濃 紺色のグラデーションとし,商品名を表示中の上部に白抜きで大きく表示し, ポテトサラダ図形を表示中の中央部に大きく表して成るものであり,外観が 共通している。また,両表示は,包装用のプラスチック製スタンドパウチの 袋の正面に表示するもので,縦長略長方形状その他の輪郭を有し,背景色の 変色,商品名部分の表示及び両表示中のポテトサラダ図形部分の各具体的配 置及び態様も共通であり,共通の印象が一層強まっている。これらを子細に 見ると背景の変色の態様,商品名部分の段数等に相違点があるが,一般消費 者の一般的な注意力では見分けが付け難い差異にすぎない。 また,原告表示からは「サラダのプロがつくったお酒によく合うポテトサラダ」部分に外観,称呼及び観念が,被告表示からは「お酒に合うアンチョビポテト」部分に外観,称呼及び観念が生じ,両者は相違する。しかし,外観については表示全体の書体や色,配列において類似しているし,称呼及び観念については,一般消費者は必ずしも商品名を正確に認識及び記憶せず,ポテトサラダの商品名として「お酒によく合う」「お酒に合う」の文字が含まれたものは従前存在しなかったこと,原告商品が原告の「お酒によく合う」シリーズの一つであることからすれば,上記各文字部分を重視して商品を認識及び記憶することは十分に考えられる。そうすると,原告表示の「お酒によく合う」部分及び被告表示の「お酒に合う」部分は「おさけに」「あう」の点で各称呼が共通し,各観念が極めて紛らわしいといえる。 このほか,被告表示には原告表示にない「大人のポテサラ倶楽部」という文字が記載された部分があるほか,「賞味期限」その他の文字が記載されているが,これらの部分は商品表示のイメージを構成する主要な部分でない。 以上によれば,原告表示と被告表示は類似している。加えて,原告と被告との間に競業関係があることや原告商品と被告商品の販売地域が重複していることからすれば,被告商品の販売行為が原告商品と混同を生じさせることは明らかである。 (被告の主張) プラスチック製スタンドパウチの袋は食品の包装として一般的である。背景色はそれ自体として出所表示機能があるとはいえず,原告表示と被告表示の各背景色はその濃淡が異なっているし,原告表示の上部には黄色の四角形が7か所表示されているのに対して被告表示にこうした表示はない。また,原告表示には原告名,被告表示には被告名がそれぞれ明示されており,この点だけでも需要者として出所を十分に判断することができる。 商品名表示を見ると,その1段目は原告表示が「サラダのプロがつくった」という文字,被告表示は装飾図形中に「大人のポテサラ倶楽部」の文字が入 ったものであって類似しない。2段目は原告表示が「お酒によく合う」,被 告表示が「お酒に合う」の各文字であって類似しているが,一般的な用語で あって自他識別機能や出所表示機能はない。3段目は原告表示が「ポテトサ ラダ」,被告表示が「アンチョビポテト」の各文字であって類似しない。 商品を紹介する画像の部分は,原告表示がボウル状の容器の側面図で,容 器の上部を除く部分が透明フィルムになって内容物が見えるようになってい るのに対し,被告表示は円筒形の容器に盛られたサラダを上から見た斜視図 で,上部に輪切りのオリーブが3切れ描かれており,画像の一部が透明フィ ルムになっている。加えて,原告表示にはこの部分に「salad」の大き な文字,ワイングラス及びビールグラスが描かれており,これらは被告表示 にはない特徴的なものである。 以上によれば,原告が主張する部分は通常使用されている識別力がないも ので,その部分を除くと原告表示と被告表示が類似しないことは明らかであ る。 ? 争点?(損害額)について (原告の主張) ア 不正競争防止法5条1項に基づく主張 被告は平成27年2月から同年9月まで被告表示を使用した被告商品を 販売し,その販売数量は1か月当たり1万2000食を下らない。原告商 品1個当たりの粗利益額は71.75円であるから,原告が受けた損害の 額は688万8000円である。 イ 弁護士及び弁理士費用 本件訴訟の追行に当たって相当な弁護士及び弁理士費用は150万円で ある。 (被告の主張) 不知ないし争う。 |
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当裁判所の判断
事案に鑑み,争点?から判断する。 1 争点?( )について ? 原告表示と被告表示の各構成は別紙原告商品目録及び被告商品目録に示さ れたとおりであり,これらを対比すると,次のとおりである。 ア 外観 原告表示と被告表示は,@縦長の角丸長方形状のスタンドパウチであっ て左右に切れ込みがある包装に表示されていること,A両表示の背景が濃 紺色を基調としており,背景の部分が表示全体の約半分を占めること,B 左上部に販売元を表す標章が表示されていること,C上下半分の位置より 上部に商品名が明朝体の白抜き文字でまとまりよく配置されており,その 商品名中に「お酒に」「合う」及び「ポテト」の文字があること,D上記 各商品名の直下に容器に盛られたサラダの画像が表示全体の半分弱の大き さで配置され,当該画像の一部が透明で内容物が見えるようになっている こと,E下部に「要冷蔵」の文字が表示されていること,以上の点で共通 する。 他方,両表示は,少なくとも,?背景色が原告表示は上記サラダの画像 の上部周辺は青白くなっており,その周辺から濃紺色へと段階的に変色さ れているのに対し,被告表示は最上部の濃紺色から最下部の青白色へと段 階的に変色されていること,?原告表示の最上部には黄色の横長の長方形 が破線状に配置されていること,?商品名を表示する部分が原告表示は1 行目が「サラダのプロがつくった」,2行目が「お酒によく合う」,3行目 が「ポテトサラダ」の文字であり,下の行になるにつれて段階的に文字が 大きくなるのに対し,被告表示は1行目が金色の装飾罫で囲まれた中に 「大人の」「ポテサラ倶楽部」の文字が2段に分けて同色で記載されてお り,2行目が「お酒に合う」,3行目が「アンチョビポテト」の文字であ り,2行目と3行目がほぼ同一の文字の大きさであること,?上記サラダ の画像が原告表示はボウル状の容器に盛られたサラダの画像であり,上記 容器部分のほぼ全体が透明になっていて,画像に重ねて濃紺色の「sal ad」の文字,ワイングラス及びビールグラスの図のほか,説明文言が配 置されているのに対し,被告表示は白色容器に盛られたサラダの画像であ り,その画像にはオリーブ3切れが含まれていて,その右部分に正円状の 比較的小さな透明部分が設けられていること,?左上部に表示された標章 が原告表示は原告の,被告表示は被告の各会社名の一部を含むこと,?最 下部が原告表示は左側に「要冷蔵」,右側に「172kcal」の文字が 各配置されているのに対し,被告表示は左側に賞味期限等,右側に赤地に 白抜きの「要冷蔵」の文字等が各配置されていること,以上の点で相違す る。 イ 称呼及び観念 原告表示からは,少なくとも,「さらだのぷろがつくった おさけによ くあう ぽてとさらだ」の称呼と,「プロの料理人が作ったのと同様の味 がする,お酒に合うポテトサラダであること」との観念が生じる。被告表 示からは,少なくとも,「おとなのぽてさらくらぶ おさけにあう あん ちょびぽてと」の称呼と,「大人向けの味付けがしてあるお酒に合うアン チョビ入りポテトサラダ」との観念が生じる。 ? 以上を前提に検討するに,両表示の外観の共通点(上記@〜E)は,背景 の基調色が濃紺色であり,おおむね上部に販売元を示す標章及び商品名,中 央部にポテトサラダの画像,下部に「要冷蔵」その他の文字を配置している 点にある。ところが,背景の基調色が濃紺色であること自体が原告の出所表 示機能を果たすものでないことは原告が自認しているし,上記の配置は,証 拠(甲34の1)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも平成27年1月頃 の時点で縦長の角丸長方形状のスタンドパウチの包装の商品において上部に 販売元及び商品名,下部に商品のイメージ画像その他のものを配置する構成 による商品表示を採用したものが多数存在したと認められることに照らすと, ありふれたものであるということができる。 その一方で,相違点(上記?〜?)は,表示の約半分を占める背景部の変 色の態様が大きく異なり,上部においては,原告表示のみに背景色である濃 紺色と色相が大きく異なる黄色の太破線が見られ,被告表示のみに金色の 「大人のポテサラ倶楽部」の文字が見られるなど,表示全体の半分を占める 部分に目立った相違がある。また,中央部にある表示全体の半分を占めるポ テトサラダ画像を見ても,原告表示にのみ「salad」の文字が大きく書 き加えられている一方で被告表示にのみオリーブ3切れが表示されているな ど,一見して判別し得る相違が見られる。 加えて,称呼及び観念については,「おさけに」「あう」「ぽてと」との点 は共通するが,これらは商品内容を説明するにとどまるものであり,全体と して比較すると相違する部分が多いといわざるを得ない。 そうすると,原告表示と被告表示の共通点は原告表示として出所表示機能 を果たすものでないかありふれたものである一方,相違点は需要者が一見し て識別することができる差異で,需要者に異なる印象を与えるものであると いうことができるから,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に 基づく印象,記憶,連想等から両表示を類似のものとして受け取るおそれが あるとは認められない。 したがって,被告表示が原告表示に類似するということはできない。 ? これに対し,原告は,@外観につき,輪郭,背景並びに商品名表示及びポ テトサラダ図形部分の具体的配置及び態様が共通であって共通の印象が一層 強まっており,背景の変色の態様や商品名部分の段数等の相違は一般消費者 の一般的な注意力では見分けが付け難い差異にすぎない,A称呼及び観念に つき,一般消費者は「お酒によく合う」「お酒に合う」の文字部分を重視し て商品を認識及び記憶することが十分に考えられるから,原告表示の「お酒 によく合う」部分及び被告表示の「お酒に合う」部分は「おさけに」「あう」 の点で各称呼が共通し,各観念が極めて紛らわしい,B被告表示の原告表示 にない「大人のポテサラ倶楽部」という文字等は商品表示のイメージを構成 する主要な部分でないと主張するが,以上に説示したところに照らし,いず れも採用することができない。 2 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 長谷川浩二 |
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裁判官 | 藤原典子 |
裁判官 | 萩原孝 |