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事件 平成 28年 (ワ) 10736号 不正競争行為差止等請求事件
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原告 株式会社シューズセレクション
同訴訟代理人弁護士 國吉朋子 川村恵一郎 10
被告株式会社福永
同訴訟代理人弁護士 向山文俊 齋雄一郎 15 主文 1 被告は,別紙被告商品目録記載の各商品を輸入し,譲渡し,引き渡し,又は譲 渡若しくは引渡しのために展示してはならない。 2 被告は,別紙被告商品目録記載の各商品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,140万4596円及びこれに対する平成28年4月2 20 0日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 25 第1 請求 1 主文第1項及び第2項と同旨 12 被告は,原告に対し,472万4000円及びこれに対する平成28年4月2 0日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告が,被告に対し,原告の販売する折り畳み傘の形態が商品等表示 5 に当たり,被告による別紙被告商品目録記載の各商品(以下「被告商品」と総称 する。)の輸入,譲渡等の行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行 為に当たると主張して,@同法3条1項及び2項に基づく被告商品の輸入,譲渡 等の差止め及び被告商品の廃棄,A同法4条,民法709条,及び不正競争防止 法5条1項,2項又は3項に基づく損害賠償金472万4000円及びこれに対 10 する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年4月20日から 支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案で ある。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められ る事実) 15 当事者
原告は,洋傘の製造及び販売を業とする株式会社である。
被告は,洋傘の卸売等を業とする株式会社である。
原告による折り畳み傘の販売 ア 原告は,平成16年11月頃から,「ポケフラット」, 「ポケフラシャトル」 20 との商品名の折り畳み傘(以下「原告商品」と総称し,個別の商品は商品名 に従い,「ポケフラット」などという。)の販売を開始した。 イ ポケフラットは,折り畳んで包袋に入れた状態において,次の@〜Bの形 態(ただし,@における本体部分の横幅は約6.0〜6.5cm)を有して いる。ポケフラシャトルの形態は,折り畳んで包袋に入れた状態において, 25 次の@〜Bの形態(ただし,@における本体部分の横幅は約4.5〜5.0 cm)を有している(以下,@〜Bの形態を「原告商品形態」という。。 ) 2@ 本体部分は,全長が約22〜24cm,横幅が約4.5〜5.0cm又 は約6.0〜6.5cm,厚さが約2.5cmの薄く扁平な板のような形 状をしている。 A 本体部分の板の面は,傘布のふくらみによりやや弧を描いて丸みを帯び 5 ている。 B 柄の部分は,薄く扁平な板の長手方向の一端を構成し,本体部分の横幅 及び厚さを超えない幅の扁平な形状をしている。
被告の行為 ア 被告は,平成27年初め頃から,被告商品の輸入及び販売を開始した。 10 イ 被告商品は,折り畳んで包袋に入れた状態において,次の@〜Bの形態(以 下「被告商品形態」という。)を有している。 @ 本体部分は,全長(最長部分)が約24cm,横幅(最大部分)が6. 5cm,厚さ(最大部分)が約2.5cmの薄く扁平な板のような形状を している。 15 A 本体部分の板の面は傘布のふくらみによりやや弧を描いて丸みを帯び ている。 B 柄の部分は,薄く扁平な板の長手方向の一端を構成し,本体部分の横幅 及び厚さを超えない幅の扁平な形状をしている。 2 争点 20 原告商品形態についての周知の商品等表示該当性の有無
原告商品と被告商品の形態の類似性及び混同の有無
原告の損害額 3 争点に関する当事者の主張 争点 (原告商品形態についての周知の商品等表示該当性の有無)について 25 (原告の主張)
原告商品形態は,次のとおり,特別顕著性及び周知性を有し,不正競争防止 3法2条1項1号の商品等表示に当たる。 ア 形態の特別顕著性 一般的な折り畳み傘は折り畳んだ状態の形状が円柱形であるのに対し,原 告商品形態は,原告商品の販売が開始されるまで存在しなかった独創的な形 5 態である。そして,原告商品形態は,縦の長さ及び横の長さに比べて厚さの 寸法が短く扁平で縦長の板のような形状から,需要者に対し,一般的な折り 畳み傘と比べて,薄く扁平な板のような形状という点を特に印象づけるもの である。このことは,原告商品の広告において原告商品が薄いことが強調さ れていること,原告商品の発売から間もない平成17年1月頃に日本経済新 10 聞社が主催する2004年日経優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産業 新聞賞を受賞したこと,新聞,雑誌,テレビ番組等においても原告商品が薄 いことが強調されていること,消費者も原告商品が薄いとの感想を多く書き 込んでいることからも明らかである。 したがって,原告商品形態は客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴 15 を有しているといえ,原告商品形態には特別顕著性がある。 イ 周知性
原告元代表者は,従来の円柱形の形態とは大きく異なる薄く平たい形状 の折り畳み傘を想起し,原告商品形態を特徴とする原告商品を開発し,平 成16年11月頃から原告商品の販売を開始した。 20 原告は,原告商品について,@消費者が予想しない天候の変化による需 要や突発的な購買意欲等に応え,多くの往来者に原告商品を周知させるこ とができる公共交通機関のターミナルや高速道路のサービスエリア内に 所在する小売店を有する取引先,A需要者が余剰の時間を過ごし予定外の 買い物をすることが多いコンビニエンスストア,書店,家電量販店,ホー 25 ムセンター,雑貨店,薬局,B広範囲に多数の小売店舗を有し,集客力の ある食品スーパー,Cその他の大手取引先等に対して営業活動を行い,こ 4れらを原告商品の販売先とした。
原告は,原告商品を周知するため,多数の小売店舗に対して商品展示用 の什器や販促用備品を提供するなどして,小売店舗における展示方法にも 工夫をした。 5 原告は,多額の宣伝広告等費用を費やし,雑誌,新聞,テレビCM,展 示会,自社ショールーム等を通じて,積極的に原告商品の宣伝活動を行っ た。
原告商品は販売開始当初から注目を集め,原告は,新聞,雑誌,テレビ 番組等のメディアから,原告商品の取材を多数受け,それらの取材を通じ 10 て,原告商品を広く周知させた。
上記の営業活動等の結果,原告商品は多数の小売店舗で販売され,原告 商品形態の特異な形態と相まって,折り畳み傘としては異例のヒット商品 となり,平成16年11月の販売開始後,販売数量を飛躍的に伸ばし,平 成18年4月頃には累計販売数量は100万本を超え,平成27年末まで 15 の販売数量の累計は約1823万本に及ぶ爆発的な販売実績を記録した。 以上によれば,原告商品形態は,需要者に広く認識されているといえる。 (被告の主張)
原告商品形態は,次のとおり,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に 該当しない。 20 ア 形態の特別顕著性
原告商品形態は,客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴を有している とはいえない。原告は,原告商品形態は,縦の長さ及び横の長さに比べて厚 さの寸法が短く,薄く扁平な板のような形状から,需要者に一般的な折り畳 み傘にはない特徴を印象づけると主張するが,縦の長さ及び横の長さに比べ 25 て厚さの寸法が短いという点は程度の違いにすぎず,薄いという形状はあい まいなものであり,特別顕著性を有する特徴であるとはいえない。 5また,折り畳んだときの形状が薄く扁平な板のような形状となる折り畳み 傘は原告商品が販売される前から販売されており(乙5, ,7) 現在でも販売 されている(乙18〜21)。これらの同種商品と原告商品形態はサイズに 若干の違いがあるにすぎない。さらに,折り畳んだときの形状が薄く扁平な 5 板のような形状となる折り畳み傘の骨組みは原告商品が販売される前から 製造されていた(乙10,11,13)。加えて,折り畳んだときの傘の骨組 みが直方体となる形状の実用新案登録及び特許出願もされていた(乙1〜 4)。 したがって,原告商品形態に特別顕著性があるとはいえない。 10 イ 周知性
原告は,原告商品につき,公共交通機関のターミナル等の小売店舗を有す る取引先等を販売先としたと主張するが,これらの小売店舗では原告商品が 販売されるより前から折り畳み傘が販売されており,また,小売店舗に対し て商品展示用の什器や販促用備品を提供することや,展示会等に商品を出展 15 することも通常行われており,原告の活動は通常の活動にすぎない。 そして,上記のとおり,折り畳んだときの形状が薄く扁平な板のような形 状となる折り畳み傘は原告商品が販売されるより前から販売されており,原 告だけがその形態を長期的独占的に使用した事実はないし,原告が原告商品 の形態的特徴を強力に宣伝して周知させた事実も存在せず,原告商品形態が 20 需要者に広く認識されていたとはいえない。 争点 (原告商品と被告商品の形態の類似性及び混同の有無)について (原告の主張)
原告商品形態と被告商品形態は形態的特徴がほぼ一致しており,被告商品は
原告商品の模倣品であって,原告商品と被告商品の形状は同一である。そして, 25 原告商品と被告商品は同種商品であり,被告商品の形態が原告商品と混同を生 じさせるおそれを有するものであることは明らかである。 6(被告の主張) 否認ないし争う。 争点 (原告の損害額)について (原告の主張) 5ア 不正競争防止法5条1項に基づく損害額
被告商品の販売数量は,被告商品のうち,品番No.2500の商品(以 下「被告商品1」という。)の販売数量が3588本であり,品番No.2 501の商品(以下「被告商品2」という。)の販売数量が3664本であ るとの被告主張の本数以上であるが,以上の合計7252本を販売数量と 10 して損害額を算定することとする。
原告商品は年間で約152万本が売られており,全ての取引事例の内容 を開示することは困難である。そこで,原告商品の取引事例をバランス良 く抽出したものが別紙原告商品利益算定表(以下「別紙算定表−1」とい う。 であり, ) これによれば原告商品の1本当たりの粗利益は330.8円 15 (別紙算定表−1の番号Cの平均)である。したがって,原告商品の粗利 益330.8円に被告商品の販売数量7252本を乗じた239万896 2円が原告の損害額と推定される。 不正競争防止法5条1項の「利益」が限界利益であるとすれば,別紙算 定表−1のとおり,原告商品1本当たりの限界利益は260.58円(別 20 紙算定表−1の番号Eの平均)であり,これに被告商品の販売数量725 2本を乗じた188万9726円が原告の損害額と推定される。 なお,被告は,別紙算定表−1の取引事例に小売価格が1000円以上 の商品が含まれており,別紙算定表−1の平均の利益額は原告商品の1本 当たりの利益額として適切ではないと主張する。 25 しかしながら,原告は小売業者に対して卸売をしており,原告にとって の需要者は一般消費者ではなく小売業者である。そして,小売業者にとっ 7て競合品であるか否かは小売価格ではなく卸価格によって判断されるべ きであるが,原告商品と被告商品はともに卸価格には幅があり,その違い は相対的なものにすぎない。原告の販売先である小売業者の多くは,原告 商品について,卸価格が異なる複数の原告商品を仕入れて,品揃えを増や 5 しており,卸価格が異なる商品であっても競合品となり得る。また,小売 価格が700円の原告商品についても利益率が高いものがあり,他方,小 売価格が1000円以上の原告商品では小売価格の違いによって利益率 に有意な差異がないことから,小売価格や販売数量の多寡でサンプルに含 めるか否かを決めることは不合理である。 10 そして,上記の事情に照らせば,被告商品が販売されていた期間に販売 されていた,被告商品と競合品となり得る原告商品を網羅的に取引事例に 含めることは合理的である。 イ 不正競争防止法5条2項に基づく損害額
被告商品の販売数量は1万2000本であり,被告商品の1本当たりの 15 利益額は1本当たり227円を下らないから,被告が被告商品を販売する ことによって得た利益は272万4000円(1万2000本×227円) であり,同額が原告の損害額と推定される。 もっとも,被告は,被告商品1の販売数量は3588本であり,売上額 は122万8440円,被告商品2の販売数量は3664本であり,売上 20 額は125万3880円であると主張するので,同販売数量を前提とする 損害額も算定する。
被告の現実の決済レートが不明であることから,平成27年及び平成2 8年における対顧客電信売相場(TTS)の平均値である115.945 円を適用すると,被告商品1の仕入値は251円(26米ドル÷12×1 25 15.945=251.22)であり,被告商品2の仕入値は266円(2 7.5米ドル÷12×115.945=265.71)である。そして, 8
同仕入値を前提とすると,被告商品1の粗利益は32万7852円,被告 商品2の粗利益は27万9256円となる。
被告の平成27年度(平成26年12月から平成27年11月まで)及 び平成28年度(平成27年12月から平成28年11月まで)における 5 販管費の各項目のうち,変動費であり,かつ,被告商品にかかった費用は 荷造運賃のみであり,平成27年度及び平成28年度の荷造運賃が各年度 の被告売上高に占める割合は平成27年度が3.92%,平成28年度が 3.76%であり,平均値は3.84%である。そうすると,被告商品1 にかかる変動費は4万7172円(売上額122万8440円×3.8 10 4%),被告商品2にかかる変動費は4万8148円(売上額125万3 880円×3.84%)である。 したがって,被告商品1の限界利益は28万0680円(粗利益32万 7852円−4万7172円),被告商品2の限界利益は23万1108 円(粗利益27万9256円−4万8148円)であり,合計額51万1 15 788円が原告の損害額と推定される。 ウ 不正競争防止法5条3項に基づく損害額
原告商品形態の使用料は,次の@〜Cの理由等から被告商品1本当たり1 40円が相当であるところ,被告が主張する被告商品の販売数量合計725 2本を販売数量として損害額を算定すると,本件において原告が受けるべき 20 使用料は101万5280円(700円×20%×7252本)であり,同 額が原告の損害額と推定される。 @ 原告は,原告商品形態に類似する商品を販売した第三者との間で,原告 商品形態の使用料を商品1本当たり100円とする訴訟外の和解契約を 締結したところ,原告商品のうち取引事例の多い小売価格700円,卸価 25 格420円の商品の各価格に対する料率を計算すると卸価格では23. 8%,小売価格では14.3%に相当する。 9A 原告は原告商品形態の周知性獲得のために多額の広告宣伝等費用を費 やしている。 B 社団法人発明協会研究センター編集の「実施料率[第5版]によると, 」 傘は「他に分類されない製造業・産業の技術」に分類され,実施料率の平 5 均値は,「平成4年度〜平成10年度はイニシャル有りが5.8%,イニシ ャル無しが8.6%」であり,高い使用料が認められる場合について,同 書には「このように,この技術分野の実施料率が8%以上の契約は,その 他の製造業とその他の産業の商標関連が中心であるが,具体的には前者に は傘の商標が多く,」と記載されている。 10 C 生活用品等の製造販売業においては,使用料率を乗じるべき販売価格は 小売価格とする場合が多く,原告も第三者から小売価格に対する6%の使 用料を支払って傘布の絵柄の使用許諾を受けていること等から,使用料率 を乗じるべき販売価格は卸価格ではなく小売価格であり,原告商品のうち 取引事例の多い小売価格700円を基準に使用料を算定すると,原告商品 15 1本当たりの使用料相当額は140円(700円×20%)である。 エ 弁護士費用相当額の損害 弁護士費用相当額は200万円が相当である。 オ 以上から,原告は,被告に対し,損害賠償金472万4000円(上記ア 〜ウのうち最も高い額である同イ 272万4000円及び上記 20 エの弁護士費用相当額200万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の 日(訴状送達の日の翌日)である平成28年4月20日から支払済みまで民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (被告の主張) ア 不正競争防止法5条1項に基づく損害額 25 不正競争防止法5条1項の規定は,侵害行為がなければ被侵害者が自己の 商品を販売することができたという関係,要するに,被侵害者の商品と侵害 10 商品が競合品である必要がある。しかしながら,別紙算定表−1の取引事例 には,小売価格が1000円以上の商品が含まれており,被告商品の小売価 格と比べて高額であり,このような商品は被告商品の競合品とはいえず,サ ンプルとして適切ではない。また,小売価格が1000円以上の商品は原告 5 商品の中でも特に高額な商品であり,原告が作成した販売数量のデータによ ると,原告商品全体の販売数量のうち小売価格が1000円以上の商品の販 売数量が占める割合は少なく,さらに,これらの高額な商品は,その他の商 品と比較して利益率が高く,この点からも,原告商品の利益を算定するため のサンプルとして適切ではない。 10 したがって,原告が作成した別紙算定表−1に基づく原告商品の利益額は 客観的に合理的なものとはいえず,原告商品の利益の合理的な根拠とはいえ ない。 イ 不正競争防止法5条2項に基づく損害額
被告商品1の販売数量は3588本,売上額は122万8440円,被告 15 商品2の販売数量は3664本,売上額は125万3880円であり,売上 額合計は248万2320円である。 これに対し,被告商品の仕入値は191万4233円である。また,被告 が被告商品を販売して得た利益(限界利益)を算定するに当たっては,少な くとも,被告が被告商品を販売するために必要となる,倉庫保管料,運送代, 20 サンプル関連費用(サンプル商品代,出荷料,運送代),販売促進費,仕入れ コスト及び保険料を経費として控除すべきであり,これらの合計は60万6 468円となる。 そうすると,被告商品の仕入値と経費は被告商品の売上額合計を上回って いるから,被告商品について利益は生じていない。 25 ウ 不正競争防止法5条3項に基づく損害額
原告は,原告商品形態の使用料が売上額の20%を下らないと主張するが, 11 「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究 報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜本 編」 (平成22年3月。株式会社帝国データバンク)において,特許権に関す る使用料の平均値は売上額の3.7%にすぎず,商標権に関する使用料の平 5 均値は売上額の2.6%にすぎないこと(乙59)からすると,商品の形態 についての使用料が20%を下らないことなどあり得ず,使用料率は高くと も2%である。 第3 当裁判所の判断 1 10 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア 原告商品の販売実績
原告は,平成16年11月頃から,原告商品の販売を開始した。原告商品 の年間販売数量は平成19年には150万本を超え,平成24年には200 万本を超えた。原告商品の平成26年までの累計販売数量は1600万本を 15 超え,平成29年10月末までの累計販売数量は2000万本を超えた。ま た,我が国において販売される折り畳み傘は輸入されたものがほとんどであ るところ,我が国に輸入される折り畳み傘の総数のうち,ポケフラットが占 める割合は平成19年から平成26年までの期間は約8%ないし9%であ り,平成27年から平成29年までの期間は約6%であった。(甲66,6 20 9) イ 原告商品の取扱店舗
原告は,原告商品を販売するため,全国の駅・空港の売店,観光・文化施 設売店,バラエティ雑貨店,ホームセンター,家電量販店,コンビニエンス ストア,大学や企業の生協,書店,文具店,薬局,食品スーパー,百貨店, 25 ホテル,旅館,土産物店等に対して原告商品を販売し,それらの売店等の店 舗において原告商品が展示されて,販売された。原告商品を取り扱う取引先 12 企業は平成26年末時点で90を超え,平成29年末時点では150を超え, その中には,全国各地に多数の店舗を有する企業も多く含まれている。また,
原告は,取引先に対し,原告商品を展示するための専用の什器等を提供し, その什器を使用して原告商品を展示して販売する店舗も多数あった。(甲7 5 0,71) ウ 原告の広告活動
原告は,平成17年から平成21年にかけて,一般の書店で販売される 雑誌,会員情報誌,新聞(日本流通新聞,毎日新聞)等の媒体において,
原告商品の広告を多数掲載し,同広告には原告商品が原告商品形態が判別 10 し得る形で掲載された。これらの広告には,いずれも,原告商品の側面(厚 さ2.5cm)を正面に向けて上下を両手で挟むようにして撮影した写真 や原告商品を上着の胸ポケットに入れて撮影した写真等,原告商品が薄い ことを強調する写真や原告商品が薄いことを強調した文章が掲載された。 (甲14の1〜26・28〜30・33) 15 原告商品は,平成19年6月,北海道,首都圏,愛知,大阪,岡山,香 川,福岡を放送地域とするテレビ東京の番組「ワールドビジネスサテライ ト」で紹介された。また,原告は,平成20年から平成25年にかけて, テレビ神奈川(神奈川) 南日本放送 , (鹿児島,宮崎)北日本放送 , (富山), テレビ長崎(長崎,佐賀),日本海テレビジョン放送(鳥取,島根)及び瀬 20 戸内放送(香川,岡山,徳島)において,原告商品のテレビCMを放送し た。(甲14の27・31・34〜37・39〜58・60〜80)
原告は,テレビ長崎が平成24年10月,平成25年10月,平成26 年9月,平成27年10月に長崎市内で開催したイベントにおいて,原告 商品のCMを放映し,原告商品を多数展示して,販売した。(甲14の5 25 9・81・83・84)
原告は,平成24年4月以降,原告のウェブサイトにおいて,原告商品 13 のプロモーションビデオを掲載し,また,平成25年10月以降,原告商 品の写真及び説明文を掲載した紹介ページを掲載した。原告のウェブサイ トの閲覧数は少なくとも毎月1万4千回を超えており,平成29年10月 末までの累計閲覧数は326万5949回である。また,原告商品の紹介 5 ページの閲覧数は,平成26年4月以降,少なくとも毎月200回を超え ており,平成29年10月末までの累計閲覧数は4万9763回である。 (甲14の38・82,甲72)
原告が上記の原告商品の広告宣伝に要した費用の総額は,平成27年末 時点で2477万8659円であった。(甲15) 10 エ 新聞,雑誌,テレビ番組等による取材
原告は,原告商品の発売(平成16年)以降,新聞,雑誌,全国ネットの テレビ番組,地方局のテレビ番組,ラジオ番組,インターネット上のウェブ サイト等の多数の広告媒体から,原告商品に関して取材を受けた。平成16 年から平成26年末までに,原告商品を取り上げた広告媒体は100を超え, 15 その後も,原告商品は現在に至るまで各広告媒体において継続的に取り上げ られている。これらの雑誌,新聞等の紹介記事では,原告商品が原告商品形 態が判別し得る形で掲載されるか,鞄や衣服のポケットに入れやすいとの表 現を用いるなどして原告商品が薄いことが強調されていた。また,テレビ番 組やラジオ番組の出演者は,原告商品が薄いことを強調する発言をした。 甲( 20 16の1〜132,甲64の1〜9) オ 消費者の感想
原告商品の発売以降,インターネット上の商品販売サイト,商品価格比較 サイト,その他個人ブログ等において,原告商品を紹介する記事が掲載され, また,感想の書き込みが行われており,それらの紹介記事等の多くでは,原 25 告商品が原告商品形態が判別し得る形で掲載され,鞄や衣服のポケットに入 れやすいなどとの表現で原告商品が薄いことが強調された。(甲25の1〜 14 120,甲65の1〜30) カ 受賞歴
原告商品は,平成17年1月に日本経済新聞社が主催する2004年日経 優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産業新聞賞を受賞した。原告商品の 5 説明として「傘を平べったい形にし,畳んだときの厚さを2.5センチとシ ューズセレクションの通常の折り畳み傘に比べてほぼ半分に抑えた。折り畳 んだときの長さは22センチで,バックに入りやすくなる。」との記載があ り,賞状には受賞理由として「新しい時代に先駆けた独創的な新製品」との 記載がある。(甲3) 10 不正競争防止法2条1項1号の趣旨は,周知な商品等表示の有する出所表示 機能を保護するため,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自 己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することにより,同法の 目的である事業者間の公正な競争を確保することにある。 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有 15 するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有 するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特定の出所を表 示する二次的意味を有し,不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」 に該当するためには,@商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な 特徴を有しており(特別顕著性) かつ, , Aその形態が特定の事業者によって長 20 期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等によ り,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するも のとして周知になっていること(周知性)を要すると解するのが相当である。
原告商品形態の特徴について ア まず,原告商品形態の特徴について検討する。 25 一般的な折り畳み傘は,折り畳んで包袋に入れた状態において円筒形の形 態をしているのに対し,原告商品の形態は,折り畳んで包袋に入れた状態に 15 おいて,原告商品形態を有しているところ,当該形態によって,原告商品は, 全体的に薄く扁平な板のような形状を有することが認められ,円筒形でない だけでなく,それが全体的に薄く,扁平な板のような形状である点で,一般 的な折り畳み傘の形状とは明らかに異なる特徴を有しているといえる。 5 そして,上記のとおり,原告商品の広告では原告商品が薄いことが強調 されたこと(上記 ウ ),発売から間もない平成17年1月頃に日本経済 新聞社が主催する2004年日経優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産 業新聞賞を受賞し,原告商品の形態が説明された上で「新しい時代に先駆け た独創的な新製品」との評価を受けたこと(上記 カ),新聞,雑誌,テレビ 10 番組等の多数のメディアにおいて原告商品が取り上げられたところ,そこで は原告商品が薄いことが強調されていること(上記 エ),そもそも原告商 品の形態がそれまでの商品の形態とは明らかに異なる原告商品形態である ことから上記のような多数の媒体で取り上げられたと考えられること,一般 消費者もインターネット上の商品販売サイト等に原告商品が薄いとの原告 15 商品形態を強調する感想を多く書き込んでいること(上記 オ)などからす ると,原告商品は需要者に対し,全体的に薄く扁平な板のような形状を有す る商品であるという強い印象を与えるものといえる。 そうすると,原告商品形態は,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴を有していたといえ,原告商品形態には特別顕著性があるといえる。 20 イ これに対し,被告は,原告商品の他にも折り畳んで包袋に入れた状態が薄 く扁平な板のような形状となる折り畳み傘(乙5(乙15〜17は乙5の折 り畳み傘の写真である。,7,18〜21)や折り畳んだときの形状が薄く ) 扁平な板のような形状になる折り畳み傘の骨組み(乙10,11,13)が 存在し,このうち,乙第5号証及び乙第7号証の商品は原告商品が販売され 25 るより前から販売されていたこと,折り畳んだときの傘の骨組みが直方体と なる形状の実用新案登録及び特許出願もされていた(乙1〜4)ことから, 16 薄く扁平な板のような形状を有する折り畳み傘はありふれた形態であって
原告商品形態に特別顕著性はない旨主張する。 しかし,原告商品が販売される前から,一定の形状の折り畳み傘の骨組み が存在し,また,骨組みの形状に関する実用新案登録等がされていたとして 5 も,それは骨組みに関するものであって,それを利用した折り畳み傘の形態 は不明であり,折り畳み傘の形態としての原告商品形態の特別顕著性の有無 を直ちに左右するものとはいえない。また,被告が指摘する商品(乙5,7, 18〜21)には,折り畳んで包袋に入れた状態が円筒形ではなく,直方体 に似た形状を有するものもある。しかし,被告が指摘する商品はいずれも販 10 売数量及び売上高は明らかになっておらず,市場において広く流通している 商品であると認めるに足りる証拠はないこと,乙第5号証及び乙第7号証の 商品は既に販売が終了していること(乙6,8,41)などからすると,上 記各商品によって,原告商品形態がありふれており,他の商品と識別し得る 特徴を有しないとはいえない。 15 周知性について
上記 のとおり,原告は原告商品形態を有する原告商品を平成16年11月 以降継続的に販売し,その販売実績は相当の本数に及び,折り畳み傘全体の販 売本数に対しても一定の割合に及んでいること(上記 ア),原告商品は全国 の多数の店舗で展示,販売され,それによって原告商品形態は全国の店舗に訪 20 れた顧客の目に触れたこと(上記 イ),原告の広告活動や広告媒体からの取 材等によって,原告商品形態が分かる写真やその特徴である薄く扁平な板のよ うな形状を強調する多数の雑誌や新聞等の発行,テレビCMや番組による放送 が行われ,原告商品形態が全国の一般消 その結果,原告商品は,原告商品形態を一見して認識し得る形で長期間,相当 25 れる。 17
上記 のとおり,薄く扁平な板のような形状という特徴がある原告商品形態 を有する原告商品が,上記のような極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績 等により,購入者を含む需要者の目に触れてきたこと,その結果,インターネ ット上の商品販売サイト等において消費者から原告商品を紹介する書き込み 5 が多数され,かかる書き込みの多くで原告商品形態の特徴が強調されているこ 平成27年初め頃の時 点において,原告の出所を示すものとして需要者に広く認識されたと認めるこ とができる。 そして,上記 のとおり,原告商品は,平成27年以降も,販売規模及び広 10 告媒体の取材等による宣伝が従前と同様に継続されていることからすると,原 告商品形態は,現在においても,原告の出所を示すものとして需要者に広く認 識されていると認めることができる。 小活 以上によれば,原告商品形態は,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示 15 に該当すると認められる。 2 争点(原告商品と被告商品の形態の類似性及び混同の有無)について 本体部分の板の面は,傘布のふくらみによりやや弧を描いて丸みを帯びている 点,B柄の部分は,薄く扁平な板の長手方向の一端を構成し,本体部分の横幅 20 及び厚さを超えない幅の扁平な形状をしている点で共通する。また,@原告商 品形態は,本体部分の全長が約22〜24cm,横幅が約4.5〜5.0cm 又は6.0〜6.5cm,厚さが約2.5cmでの薄く扁平な板のような形状 であるに対し,被告商品形態は本体部分の全長(最長部分)が約24cm,横 幅(最大部分)が6.5cm,厚さ(最大部分)が約2.5cmの薄く扁平な 25 板のような形状であり,全長及び横幅が相違するが,その他の点は共通する。 これらの共通点は,原告商品と被告商品の全体にわたり,この共通点によっ 18 て,両商品ともに薄く扁平な板のような形状をしているという特徴を需要者に 強く印象づけるものである。そして,上記@の全長及び横幅の1〜2cm程度 の相違点は,商品全体を見た際に判別し得る相違点とはいえない。そうすると,
原告商品形態と被告商品形態はほぼ全部において同一であるといえ,上記1の 5 とおり,原告商品形態は原告の出所を示すものとして需要者に広く認識されて いることからすると,被告商品に接した需要者は被告商品の形態が原告の出所 を表示すると認識するといえる。 したがって,被告商品形態は,原告商品と出所の混同を生じさせるものであ ると認められる。 10 以上によれば,原告商品形態は,遅くとも被告商品の販売が開始される平成 27年初め頃の時点においては原告の周知の商品等表示になっていたという ことができるから,被告による被告商品の輸入及び販売行為は,不正競争防止 法2条1項1号の不正競争行為に該当する。 そして,原告は,被告の上記不正競争行為によって,原告商品の販売に係る 15 営業上の利益を侵害されている又は侵害されるおそれがある者であるから,被 告に対し,同法3条1項に基づき,被告商品の輸入,譲渡,引渡し,又は譲渡 若しくは引渡しの差止めを請求することができるとともに,同条2項に基づき, 侵害行為を組成した被告商品の廃棄を請求することができる。 また,上記1 の認定事実を踏まえると,被告は,被告商品の販売行為によ 20 って原告の原告商品の販売に係る営業上の利益を侵害することを知っていた か,少なくとも知らなかったことにつき過失があったものと認められる。 したがって,被告は,原告に対し,同法4条に基づき,上記侵害行為によっ て原告が受けた損害を賠償する責任を負うというべきである。 3 争点(原告の損害額)について 25 不正競争防止法5条1項に基づく損害額 ア 被告が,被告商品を少なくとも7252本販売したことは当事者間で争い 19 がない。なお,原告は,被告商品の販売数量は1万2000本であるとも主 張するが イ) 被告が7252本を超えて被告 , 商品を販売したことを認めるに足りる証拠はなく,同販売の事実を認めるこ とはできない。 5イ 別紙算定表−1の「書証」欄記載の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,原 告は,平成26年から平成28年にかけて,別紙算定表−1記載のとおりの
原告商品の取引をしたことが認められる。別紙算定表−1記載の各取引は,
原告商品の極めて多数の取引のうち,原告が,商品名,取引先,取引年度が 異なる40例の取引を取り出したものである。 10 ウ 別紙算定表−1記載の原告商品の取引事例を踏まえ,原告商品1本当たり の利益額について検討する。 不正競争防止法5条1項にいう「利益の額」 「被侵害者がその侵害の行 は, 為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」をいう のであり,その趣旨に照らせば,販売価額から控除すべき経費は,当該数量 15 の被侵害者製品を追加して販売するために追加的に必要であったはずの経 費を指すものと解すべきであり,かかる経費を控除した利益(限界利益)の 額をもって同項の「利益の額」とするのが相当である。原告の主張のうち, これと異なり粗利益が「利益の額」であるとの主張は採用することができな い。 20 そして,原告商品の取引における関税,消費税(ただし,輸入消費税につ いては販売先が負担しており,原告は最終負担者ではないため,控除の対象 外である。,通関料,運送料,荷役料,保管料は,上記経費に該当するとい ) え,別紙算定表−1の各取引の各商品について,粗利益から上記関税等の経 費を控除した「利益の額」は別紙算定表−1の限界利益欄(番号E)記載の 25 額となる。 エ 別紙算定表−1は,原告商品についての多数の取引のうち,原告が取り 20 上げた合計40例の取引が挙げられているが,他の取引の内容(小売価格 を含む。)は明らかでない。そして,別紙算定表−1には,小売価格が50 0円,700円,1000円,1500円,2000円及び3000円の
原告商品の取引が挙げられているところ,原告は,別紙算定表−1のうち 5 の35例の取引(別紙算定表−1の取引のうち,被告商品販売前にされた 取引番号3,4,6,8,11の取引を除いたもの)における「利益の額」 を平均すると1本当たり260.58円(別紙算定表−1の番号Eの平均) であるとして,同額に被告商品の販売数量である7252本を乗じた額が 損害であると主張する。 10 しかし,原告商品の販売数量データ(甲66)によれば,別紙算定表− 1に挙げられた原告商品の平成27年及び平成28年における販売数量 の総数は,別紙原告商品販売数量・割合・利益算定表(以下「別紙算定表 −2」という。)の番号@,Aのとおりである。これによれば,小売価格が 700円及び1000円(平成28年について)の原告商品の販売数量は, 15 小売価格が1500円以上の原告商品よりも相当に多く,原告商品の取引 全体においても,小売価格が700円及び1000円(平成28年につい て)の原告商品の取引の販売数量は,小売価格が1500円以上の原告商 品の取引に比べて相当に多いと推認することができる。 また,別紙算定表−1によれば,700円の原告商品(取引番号1,2, 20 7,9,10,13〜32の各取引)の1本当たりの限界利益は120円 ないし220円,小売価格が1000円の原告商品(取引番号5の取引) の限界利益は1本当たり231円,1500円の原告商品(取引番号33 〜36の各取引)の1本当たりの限界利益は416円又は435円,20 00円の原告商品(取引番号37〜40の各取引)の1本当たりの限界利 25 益は628円又は633円,3000円の原告商品(取引番号12の取引) の1本当たりの限界利益は1194円である。 21 以上のとおり,小売価格が700円及び1000円(平成28年につい て)の原告商品の取引は,小売価格が1500円以上の原告商品の取引に 比べて相当に多いと推認することができること,原告商品では小売価格の 違いによって限界利益に大きな差があることからすれば,「利益の額」を 5 算定するに当たって,別紙算定表−1の各取引の限界利益の単純な平均の 額を「利益の額」とするのは相当ではない。 そこで,原告商品1本当たりの「利益の額」については,別紙算定表− 1の限界利益欄記載の額(番号E)に,そこで掲げられた各原告商品につ いて,それらの原告商品の総合計販売数量と各原告商品の合計販売数量と 10 の割合を考慮して算定した173円(別紙算定表−2の番号H)を「利益 の額」とすることが相当であると認める。 オ これに対し,被告は,小売価格が1000円以上の原告商品は,被告商品 の小売価格と比べて高額であり,被告商品の競合品ではないと主張する。
被告商品の小売価格は700円である(甲7,8)のに対し,別紙算定表 15 −1の原告商品には小売価格が1000円,1500円,2000円及び3 000円の商品がある。もっとも,別紙算定表−1の原告商品のうち小売価 格が最も高い商品の小売価格も3000円であること,同じ店において小売 価格700円及び1000円の原告商品が売られている店が相当数あるほ か,小売価格700円,1000円及び1500円の原告商品が販売されて 20 いる店,小売価格700円及び2000円の原告商品が販売されている店, 小売価格1000円,1500円,3000円の原告商品が販売されている 店があること(甲75)などから,別紙算定表−1に記載の原告商品の需要 者は被告商品の需要者と異なるとはいえず,別紙算定表−1に記載されてい る原告商品は「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると 25 いえる。 カ 他方,原告は,小売価格が700円の原告商品についても利益率が高いも 22 のがあること,小売価格が1000円以上の原告商品では小売価格の違いに よって利益率に有意な差異がないこと等から,被告の侵害行為が行われた時 期に販売された小売価格の異なる原告商品を網羅的に取引事例に含めるの は合理的であると主張する。しかし,上記のとおり,小売価格が700円及 5 び1000円の原告商品と小売価格が1500円以上の原告商品の限界利 益には差異があること及び1500円以上の原告商品の販売数量は少ない ことを踏まえると,別紙算定表−1の各取引の限界利益の単純な平均の額を 「利益の額」とするのは相当ではない。 キ 以上から,原告商品1本当たりの「利益の額」は173円とするのが相当 10 である。 したがって,不正競争防止法5条1項に基づく損害額は合計125万45 96円(被告商品の販売数量7252本×原告商品1本当たりの利益額17 3円)である。 不正競争防止法5条2項に基づく損害額 15 上記 アのとおり,本件において被告商品の販売数量として認められるのは 7252本であるところ,原告の主張によっても,不正競争防止法5条2項に 基づく損害額は51万1788円であり,上記 の同条1項に基づく損害額を 上回らない。 不正競争防止法5条3項に基づく損害額 20 原告は,原告商品形態の使用料は140円(原告商品の小売価格700円の 20%)を下らないと主張し,原告が受けるべき使用料は101万5280円 (700円×20%×7252本)であると主張する。しかし,原告の主張に く損害額を上回らない。 25 したがって,不正競争防止法5条2項及び3項に基づく損害額については検 討するまでもなく,本件においては,同条1項に基づく損害額である合計12 23 5万4596円を損害として認めるのが相当である。 また,本件における弁護士費用相当額の損害額は15万円とするのが相当で ある。 4 結論 5 よって,原告の請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれら を認容し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することとし,また,主文 第1項及び第2項については,仮執行宣言を付すことは相当でないから,これを 付さないこととし,主文第3項には仮執行宣言を付すこととして,主文のとおり 判決する。 10 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 柴田義明 15 裁判官 萩原孝基 20 裁判官 大下良仁 (別紙一部省略) 24 (別紙)
被告商品目録 商品:折り畳み傘 5 段式:3段式 表示:aqua pleasure 原産国:中国 品番:@ No.2500 A No.2501 10 JANコード:@ 4 571249925004 A4 571249925011 以上 25
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2018/02/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
事実及び理由
全容