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事件 平成 17年 (ネ) 10088号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人(原告) 株式会社ミレーヌ友田
訴訟代理人弁護士 岩井重一,安田隆彦,平澤慎一,小林真,阿久津真也,高橋隆二
被控訴人(被告) ラブリークィーン株式会社
訴訟代理人弁護士 川島和男,芝英則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/11/10
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴人の求めた裁判
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙「被告商品目録」記載2及び3の各商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡・貸渡しのため展示し,輸出し,又は輸入してはならない。
3 被控訴人は,その占有にかかる原判決別紙「被告商品目録」記載2及び3の各商品を廃棄せよ。
4 被控訴人は,控訴人に対し,7340万4576円及びこれに対する平成16年7月6日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人は,原判決別紙「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を,朝日新聞,毎日新聞,読売新聞,産経新聞,日本経済新聞の各全国版社会面に2段抜き15センチメートル幅で,繊研新聞及び日本繊維新聞に半5段(5段抜き半頁幅)で,表題部を16ポイント,宛名及び被控訴人の名を12ポイント,その他の部分を10ポイントの各活字をもって,各1回掲載せよ。
事案の概要
本判決においては,原判決と同様の意味において,「原告商品1」「原告商品2」「原告商品3」「原告各商品」「被告商品1」「被告商品2」「被告商品3」「被告各商品」との略称を用いる。
1 本件は,原告各商品の製造,販売等を行う控訴人(原告)が,被控訴人(被告)が原告各商品の形態模倣した被告各商品を製造,販売して,不正競争防止法2条1項3号に該当する不正競争を行ったとして,被告商品2及び3の譲渡等の差止め及び廃棄,損害賠償並びに謝罪広告の各請求をした事案である。
原判決は,被告各商品が原告各商品の形態模倣した商品であるとは認められないとして,控訴人(原告)の請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。
当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のとおりであるから,これを引用した上,「当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点)」を次のとおり付加する。
2 当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点) (1) 原告商品1と被告商品1との対比 (1-1) 原告商品1についての認定 原告商品1の形態についての原判決のA,Gの認定は誤りである。また,BないしFの認定は,概要は誤ってはいないが,商品形態の特徴点ないしは具体的形態を逸脱して認定している。
(a) 構成A(袖ぐり)については,「ノースリーブであり,袖ぐりを,肩が大きく出るように袖口を前身頃と後身頃の双方においてハの字型にカットしている。」と認定されるべきである。すなわち,原告商品1の袖ぐりは,肩山部分が存在しており,「アメリカンスリーブ」なるものであるか否かは,その概念の意味内容いかんによるが,肩がむき出しになるような袖ぐりがアメリカンスリーブと呼ばれるとすれば,それに含まれるが,肩山部分がないものがアメリカンスリーブと呼ばれるものであるとすれば,それに含まれない。
(b) 構成Gについては,「襟から腰まで体のラインに沿わせ,腰下は両脚の腿辺りの位置から下方に向かってわずかに絞られ,裾において開いた,全体として弱いマーメイドラインのシルエットとなっている。」と認定されるべきである。すなわち,原告商品1においては,脚の下方の絞りは弱くわずかなものにすぎない。
(c) 構成B(襟部分)についての原判決の認定自体に誤りはないが,花のコサージュや後身頃のリボンの態様の認定が欠落している。構成Bは,「襟は,ロールネックであり,外側に折り返すようになっている襟部分は,前面部分にはぎがなく,首の後部分でリボンを結ぶことができるように,両端とも,背部のウエスト部分の下辺りまで幅広の布がマフラー状にたれ下がっている。ロールネックの正面左側には表地と同一色の布によって作られた花のコサージュが取り付けられている。」と認定されるべきである。
(d) 構成C(スリット)については,原告商品1は,表地のみがスリットになっているのであり,「前身頃の左脇ウエスト位置から裾にかけて左寄りに切替えが入り,切替え部分の表地下部は,丸みを帯びたスリットになっており,」と認定されるべきである。
(e) 原告商品1の形態における特徴点は,全体のシルエット,切替えと裾のスリット及び襟にあり,その限りで原判決の認定に誤りはないが,袖ぐり部分(構成A)はノースリーブのワンピースとして特にデザイン上の特徴があるというものではなく,生地の風合いもフォーマルドレスとして光沢のある生地を用いる点は一般的であるので,その点は特に特徴点というほどのものではない。また,原告商品1は,全体のシルエットを脚部分の下方への絞りがわずかなものとするマーメイドラインに属する形態を採用しつつ,襟部分の形態(構成B)及び裾部分の形態(構成C,F)が特徴点となっている。特にコサージュとしての立体花弁を付したロールネックと背面がリボン状に結ぶことができる形態,左寄りに入った切替え部分の下部は,短くした表地のみスリットを入れている点で他の商品には見られない独特のデザイン上の工夫がある。購入者にフォーマルドレスとして,襟の花弁と花びらを思わせる裾のデザインによってエレガントなワンピースとしての好印象を与えるものとなっている。
(1-2) 被告商品1についての認定 被告商品1の形態についての原判決のa,gの認定は誤りである(bないしf,hの点が原告商品1のBないしF,Hと同一の形態であるとしている点は正しいが,その具体的な形態は上記(1-1)のとおりとすべきである。)。
(a) 構成a(袖ぐり)について,原判決が「肩が隠れる」と認定した点は誤りである。肩が隠れるものではなく,原告商品1と同様に,着用した際に肩が出るものである。袖口のカットの角度が八の字型ではなく,ほぼ垂直になっているにすぎない。したがって,構成aは,「ノースリーブであり,袖ぐりは,肩が出るように袖口を前身頃と後身頃の双方においてほぼ垂直にカットしている。」と認定されるべきである。
(b) 構成g(シルエット)については,「襟から腰まで体のラインに沿わせ,腰下は両脚の腿辺りの位置において下向きに向かってわずかに絞られ,裾までの間において徐々に開いた全体として弱いマーメイドラインのシルエットとなっている。」と認定されるべきである。すなわち,原判決は,「Aライン」と認定したが,Aラインは英文字のAのように上部が小さく裾にいって広がったシルエットを意味するものであり,被告商品1の全体のシルエットは,Aラインではなく,肩からひざ辺りまで体のラインに沿わせ,裾で開いたラインを有する点においてマーメイドラインのシルエットであることに変わりはない。被告商品1は,腿辺りの位置から下方に向かってラインが絞られており(甲26,乙1),Aラインとは全く異なるシルエットである。
(1-3) 原告商品1と被告商品1の形態の実質的同一性 両商品において相違点があるとしても,それらは何の努力も要しないデザイン上のわずかな改変にすぎず,需要者に与える影響もわずかなものであって,同一性の判断に影響を与えるものではない。
原告商品1の襟部分の特徴(構成B)は,原告商品1の斬新なデザインに基づくものであって,他の商品にはない特有の特徴である。被告商品1はその特徴をそっくり利用しつつ,袖ぐり部(構成A)を改変している。しかし,改変といっても,袖口のカットの角度の違いにすぎず,両商品において着用した際にはいずれも肩が露出することに変わりはなく,露出の程度が異なるにすぎない。袖口のカット角の仕様は,被服全体のシルエットないし印象に大きな影響を与えることのない,工夫を要しない単なるデザイン要素のわずかな変更である。確かに,両商品を着用した場合の肩の露出の程度の差異はあるが,商品の全体的な特徴点の共通性から見れば希薄な印象を与えるにすぎない。なお,両商品において,それらを着用する際には,いずれも肩口まである下着など着用しない。
被告商品1のシルエットは,Aラインではなく,両商品はいずれも弱いマーメイドラインであることに変わりはない。両商品の腰下のラインの相違は絞りのラインがわずか相違するにすぎず,一見して区別することができないほど酷似しており,全体のシルエットとしては,弱いマーメイドラインを構成しているとの印象を与える。両商品の各シルエットにおいて相違する点は,裾の広がりの程度のわずかな違いにすぎず,着用時の全体の印象に及ぼす影響は小さい。
したがって,両商品の商品形態は,実質的に同一である。
そして,両商品の形態上の同一性,特に原告商品1の特徴である特異な襟の形態,切替え部分のスリット,全体のシルエットの共通性を考慮すれば,被告製品1は原告製品1を参考にしない限り着想は困難であることは明らかであり,両商品の販売形態,販売時期等に照らし,被告商品1は,原告商品1を模倣する意図に基づいて作成されたものであることは明らかである。
(2) 原告商品2と被告商品2との対比 (2-1) 原告商品2についての認定 原判決の原告商品2の形態についての認定に誤りはない。
(2-2) 被告商品2についての認定 原判決の被告商品2の形態についての認定は,下記の点を除き誤りはない。
被告商品2の構成bは,「4か所を肩山に付されたボタンと同一の黒色のビーズ様のボタンで留められ,その部分も取外しが可能となっており」と認定されているが,4か所のボタンはいずれも取り外しができる状態になっていない。
(2-3) 原告商品2と被告商品2の形態の実質的同一性 原告商品2の特徴は,前身頃の襟ぐりをドレープ仕様(ゆったりした仕様)にし(構成A),袖を袖山部分が縫い合わされていない状態(肩を露出した状態)で肩山及び脇の下部分の2か所のボタンによって取り外し可能に留められていること(構成B)にあり,ブラウスとしてこのような形態のものはなく斬新なデザインである。被告商品2は,この特徴を有する原告商品2の取り外し可能なパーツ(袖)を単に改変し,あるいはブラウス本体のデザイン要素を改変したものにすぎない。
いずれの改変も,改変の着想は容易であって,当該改変によって原告商品2と形態上の相違が生ずるとしても,原告商品2が有する特異の形態上の特徴及び効果をそのまま維持している。
被告商品2の袖は,肘から先の部分が切り離された形態で4か所をボタンで留めることによって固定している。そして,取り外したパーツである袖自体を比較すれば,形態上の相違は明瞭に区別可能である。しかし,原告商品2の特徴は,袖を肩から取り外し可能とし,袖のないブラウスとして使用することを可能とする形態的機能を有しており,この最も特異な形態において被告商品2は共通していること,被告商品2の袖も袖山部分が縫い合わせない状態で肩山から袖口まで開口して開口部分をボタン留めしており,両商品を着用した場合,腕の一部が外部に露出する点では共通していることからすれば,被告商品2の取り外し可能なパーツである袖を,袖の長手方向に肘先部分を切り離して,切り離し部分の腕を露出する形態を採用することは改変の着想において何ら困難性はない。需要者に与える印象も,肩口における取り外し可能な形態と比較すれば,希薄な印象でしかない。
原判決は,両商品の相違点として,後身頃側の襟ぐり,裏地の素材,肩山部分の各形態,前身頃肩山部分のタックの有無を指摘するが,それらの相違点は周知のデザイン要素の変更にすぎず,原告商品2が有する上記の斬新な形態的特徴を考慮すれば,ブラウス全体のシルエットが酷似しているとの印象を与えるものである。
したがって,原告商品2と被告商品2の形態は,実質的に同一である。
そして,両商品の形態上の同一性,特に原告商品2の特徴である取り外し可能な袖部分の特異な形態は,原告商品2を参考にしない限り着想困難であること,両商品の販売形態,販売時期に照らし,被告商品2は原告商品2を模倣する意図に基づいて作成されたものであることは明らかである。
(3) 原告商品3と被告商品3との対比 (3-1) 原告商品3についての認定 原判決の原告商品3の形態及び形態上の特徴についての認定に誤りはない。
(3-2) 被告商品3についての認定 原判決の被告商品3の形態についての認定に誤りはない。
(3-3) 原告商品3と被告商品3の形態の実質的同一性 原告商品3のパレオは,裾が正面左から右に流れるシルエットを有して裾がフレア状となっていること,カール状の布が付いた左脇で取り外し可能にボタン留めされていることに通常のパレオにはない特徴を有している。左脇にカール状の布を付しているのは通常の使用者のきき手である右手との接触を避けるためなどの実用的な工夫もあり,全体として特異なデザイン上の工夫がなされている。また,通常のパーツでは素材にシフォン様のものは使用しないが,原告商品3は,パーティー用に着用するための特殊用途を考慮して,シフォン様のものを使用している。
原判決は,両商品の相違点として,被告商品3のパレオが帯状でフレア上の裾部分が継ぎ足されたものとなっている点を指摘するが,その相違点は,原告商品3のわずかな改変であって,改変に基づくデザイン上の工夫など一切なく,需要者に与える印象は極めて希薄である。原判決が相当異なった印象を与えると判断したことは事実誤認である。
被告商品3のパレオは,確かに裾部分が継ぎ足されたものとなっている。しかし,パレオ自体の全体のデザイン・シルエットは原告商品3のパレオと酷似し,パレオを展開した特異な形状の状態を見ても両商品のパレオは全く区別ができないほど,その全体形状,裁断,風合い,縫合が共通している。被告商品2を離間的に観察した場合は,継ぎ足し部分は同一素材,同一色の材料によって継ぎ足されたものであるので,よほど注意しなければ気がつかない部分にすぎない。需要者が両商品を手にとって吟味する場合を想定しても,両商品の全体のシルエット,パーツのフレア上のスリット部分,パレオの全体的ライン(シルエット),色・素材等の共通性に加え,ボタン縫製仕様の細部に至る部分まで共通のものであるので,上記相違点は印象が希薄となっていることは明らかである。加えて,原告商品3に接した同業者が,パレオ部分のデザイン上の改変を行うとすれば裾部分に同一素材を用いて継ぎ足すことは特に工夫を要するものではなく,継ぎ足したことによって特に機能的又はデザイン上異なった効果が創出されるというものでもない。両商品は,これを離隔的に観察すると,形態上全く区別することはできず,両商品を実際に着用した場合を考えると,通常人であれば,同一の商品と判断せざるを得ないほど酷似するといってよい。
したがって,原告商品3と被告商品3の形態は,実質的に同一である。
そして,両商品の形態上の同一性,両商品の販売形態,販売時期に照らし,被告商品3は原告商品3を模倣する意図に基づいて作成されたものであることは明らかである。
(4) 原判決の「商品の形態」に関する判断の誤り 原判決は,不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」とは,物の外観の態様であり,外観の態様に影響しない機能を含むものではないと判断し,原告商品2の袖が取り外し可能な形態となっていることや,原告商品3のパレオが取り外し可能な形態となっていることはいずれも同号における「商品の形態」に含まれないとした。
しかし,「商品の形態」には,離間的に観察した商品の外観ばかりではなく,商品の部分が他の部分と一体に構成されているか取り外し可能となっているかの特徴,また,取り外し機能を実現するための形態等の機能的特徴は「商品の形態」に含まれると解釈されるべきである。
また,控訴人は,原審において,原告商品2,3が有する機能そのものが同号によって保護を受けるべきであると主張したものではなく,機能を実現するための形態上の特徴を主張したのに,原判決は,その主張の趣旨を誤った。
当裁判所の判断
1 当裁判所も,被告商品1が原告商品1の形態を,被告商品2が原告商品2の形態を,被告商品3が原告商品3の形態をそれぞれ模倣した商品であると認めることはできず,被控訴人の本件行為が不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に該当するとはいえないから,控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく,これを棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下に付加するほか,原判決が「第3 争点に対する判断」として判示するとおりである。
2 控訴人の当審における主張にかんがみ,以下の理由を付加する。
(1) 原告商品1と被告商品1との対比について (a) 控訴人は,原告商品1の構成A(袖ぐり)と被告商品1の構成a(袖ぐり)についての原判決の認定を非難するが,証拠(検甲1,2,甲3,6,26,乙1)及び弁論の全趣旨に照らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。
控訴人主張の「アメリカンスリーブ」に当たるか否かという点は,控訴人の主張においても確定的でない上,本件証拠によっても厳密な定義を認定することはできないところ,本件で問題なのは,どの類型に該当するかということではなく,商品の具体的な形態いかんであるというべきである。
そこで,商品の具体的な形態についてみるに,原判決が,原告商品1の構成Aにおいて「肩が大きく出る(肩山部分がほとんどない)」とし,被告商品1の構成aにおいて「肩が隠れる(肩山の幅が襟ぐりから腕の付け根辺りまである)」と認定しているが,この認定は,上記証拠等に照らして相当である。なお,原判決の「肩が隠れる」との判示は,上記のような括弧内の判示によって具体化・明確化されたものとして一体的に理解すべきものであって,その認定は,是認し得るものである。
(b) 控訴人は,原告商品1の構成G(シルエット)と被告商品1の構成g(シルエット)についての原判決の認定を非難するが,前掲証拠等に照らし,原判決の認定は相当である。
控訴人は,原告商品1においては,脚の下方の絞りは弱くわずかなものにすぎないとし,被告商品1においては,全体のシルエットは,腿辺りの位置から下方に向かってラインが絞られており,Aラインではなく,肩からひざ辺りまで体のラインに沿わせ,裾で開いたラインを有する点においてマーメイドラインのシルエットであることに変わりはない,と主張する。
前記のとおり,本件で問題なのは,どの類型のデザインに分類されるかにあるのではなく,商品の具体的な形態である。
そこで,検討するに,原判決が,原告商品1の構成Gのシルエットにつき,「両脚の腿辺りの位置から下方に向かって絞られた」とし,被告商品1の構成gのシルエットにつき,「両脚の腿辺りの位置から下方に向かって絞ることなく」と認定した点は,上記証拠等に照らして是認し得るものである。控訴人は,この認定を争うが,採用することができない。
(c) 控訴人は,上記の点のほか,前記第2,2(1)(1-1)(c)〜(e)の点を指摘し,これらを前提として,同(1-3)のとおり,原告商品1と被告商品1の形態が実質的に同一であると主張する。
しかし,前提とされた両者の相違点についての控訴人の主張が採用し得ないことは,前判示のとおりである。そして,原判決が説示するとおり,構成Aとa,構成Gとgとの違いは,本件商品においては重要な相違点であるというべきであって,控訴人が原告商品1の構成Bとして付加すべきものと主張する点や,両者の形態の類似点を考慮しても,原告商品1と被告商品1の各形態が実質的に同一であるとは認めることができない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
(2) 原告商品2と被告商品2との対比について 控訴人は,被告商品2の構成bについての原判決の認定を非難した上,前記第2,2(2)(2-3)のとおり,原告商品2と被告商品2の形態が実質的に同一であると主張する。
検討するに,証拠(検甲3,4,甲4,7,26,乙2)及び弁論の全趣旨に照らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。そして,原告商品2と被告商品2とは,原判決が説示するとおり,後身頃側の襟ぐり,袖,襟ぐり辺りにおいて表地から透けて見える裏地,両身頃の肩山部分の各形態,前身頃肩山部分のタックの有無の点において,いずれも相違しており,これらの相違点が需要者・取引者に与える印象は大きく,需要者・取引者は,原告商品2及び被告商品2を一見して明瞭に区別することができるものというべきである。そして,控訴人が主張する両者の形態の類似点を考慮しても,原告商品2と被告商品2の各形態が実質的に同一であるとは認めることができない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
(3) 原告商品3と被告商品3との対比について 控訴人は,前記第2,2(3)(3-3)のとおり,原告商品3と被告商品3の形態が実質的に同一であると主張する。
検討するに,証拠(検甲5,6,甲5,8,26,乙3)及び弁論の全趣旨に照らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。そして,原告商品3と被告商品3とは,原判決が説示するとおり,パレオの形態において相違しており,パレオ付きパンツの需要者・取引者にとって,パレオの形態は,商品から受ける印象において大きな部分を占めるものと解され,本件におけるパレオの形態の相違は,原告商品3及び被告商品3について,相当異なった印象需要者・取引者に与えるものであるというべきである。そして,控訴人が主張する両者の形態の類似点を考慮しても,原告商品3と被告商品3の各形態が実質的に同一であるとは認めることができない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
(4) 原判決の「商品の形態」に関する判断の誤り 控訴人は,原審において,原告商品2,3が有する機能そのものが保護を受けるべきであると主張したものではなく,機能を実現するための形態上の特徴を主張したのに,原判決は,その主張の趣旨を誤った,と主張するとともに,原告商品2の袖が取り外し可能な形態となっていることや,原告商品3のパレオが取り外し可能な形態となっていることに関する原判決の判断を非難する。
しかし,控訴人(原告)の原審における主張は,「『取り外し式のパレオ』が付くという点が,デザインの大きな機能的な特徴である。被告は,この機能(原告のアイデア)を,完全に,模倣しているものである。」とするなど(原告準備書面(2)2頁),「商品の形態模倣」として,「機能の模倣」を主張していたとしか解されない。したがって,原判決の原告の主張の摘示に誤りはなく,原判決は,その主張に対する判示として,「外観の態様に影響しない機能」は「商品の形態」に含まれないとの判断を示したものであるから,控訴人が主張するような誤りはない。
なお,控訴人が主張するように,袖やパレオが取り外し可能となっていることに起因する商品の形態上の特徴を検討しても,実質的同一性についての前判示の認定判断を変更すべきものとはいえない。
3 結論 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 田中昌利
裁判官 清水知恵子