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関連ワード 登録商標 /  需要者 /  外観 /  差止請求(差止) /  因果関係 /  弁護士費用 /  ライセンス /  デザイン /  代理人 /  代表者 /  ドメイン不正取得(2条1項12号) /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 8380号 不正競争行為差止等請求事件
原告 株式会社レジャープロダクツ代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 永井均
被告 優美社産業株式会社代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 木村圭二郎
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/02/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1(1) 被告は、別紙物件目録(一)記載の各商品につき、別紙表示目録(1)及び(5)記載の各表示を使用し、又は当該表示をした同商品の販売をしてはならない。
(2) 被告は、別紙物件目録(二)記載の各商品につき、別紙表示目録(2)及び(6)記載の各表示を使用し、又は当該表示をした同商品の販売をしてはならない。
(3) 被告は、別紙物件目録(三)記載の各商品につき、別紙表示目録(3)記載の表示を使用し、又は当該表示をした同商品の販売をしてはならない。
(4) 被告は、別紙物件目録(四)記載の各商品につき、別紙表示目録(4)記載の表示を使用し、又は当該表示をした同商品の販売をしてはならない。
2(1) 被告は、別紙物件目録(一)記載の各商品の下げ札及び広告から別紙表示目録(1)及び(5)の表示を抹消せよ。
(2) 被告は、別紙物件目録(二)記載の各商品の下げ札及び広告から別紙表示目録(2)及び(6)の表示を抹消せよ。
(3) 被告は、別紙物件目録(三)記載の各商品の下げ札及び広告から別紙表示目録(3)の表示を抹消せよ。
(4) 被告は、別紙物件目録(四)記載の各商品の下げ札及び広告から別紙表示目録(4)の表示を抹消せよ。
3 被告は、原告に対し、金50万円及びこれに対する平成12年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
以下、書証の引用は、甲1などと略称する。
(争いのない事実等) 1 原告及び被告は、ともに各種バッグ・カバン及び袋物の製造、輸入、販売を業とする会社である。
2 被告の行為 (1) 被告は、別紙物件目録(一)記載の商品(ただし、被告がその製造、販売を争い、本件全証拠によっても、その製造、販売が認められない商品番号2250、2321ないし2324及び2372番は除く。以下「被告商品1」という。)を販売するに当たり、別紙表示目録(5)記載の表示(以下「被告表示5」という。)及び、同表示をその一部に含む別紙表示目録(1)記載の表示(以下「被告表示1」という。)を付している(甲1、検甲1、弁論の全趣旨)。
(2) 被告は、別紙物件目録(二)記載の商品(ただし、被告商品1と同様の理由により商品番号1201、1202、1208、1245、1246及び1252番は除く。以下「被告商品2」という。)を販売するに当たり、別紙表示目録(2)記載の表示(以下「被告表示2」という。)及び同目録(6)記載の表示(以下「被告表示6」という。)を付している。
(3) 被告は、別紙物件目録(三)記載の商品(ただし、被告商品1と同様の理由により商品番号2676及び2689番は除く。以下「被告商品3」という。)を販売するに当たり、別紙表示目録(3)記載の表示(以下「被告表示3」という。)を付している。
(4) 被告は、別紙物件目録(四)記載の商品(ただし、廃番となっているは除く。
以下「被告商品4」という。)を販売するに当たり、別紙表示目録(4)記載の表示(以下「被告表示4」という。)を付している。
(5) 被告商品1ないし4は、いずれも中国製である。
また、被告商品1及び2は、いずれも被告によってデザインされたもので、被告は、商標のライセンスを得て、被告商品1については、「bitch skateboards」等の表示をし、被告商品2については、「KANGOL」等の表示を付している(弁論の全趣旨)。
3 原告の請求 原告は、被告表示1ないし4は原産地誤認表示に該当し、被告表示5及び6は品質誤認表示に該当するから、被告による上記2(1)ないし(4)記載の行為は、いずれも、不正競争防止法2条1項12号所定の不正競争に該当するとして、その差止め等と損害賠償を求めている。
争点及び争点に関する当事者の主張
1 争点1(不正競争防止法2条1項12号該当性)について 【原告の主張】 (1) 被告表示1ないし4について ア 被告商品1ないし4は、いずれも中国製であるにもかかわらず、被告表示1ないし4は、いずれも中国以外の国において、同商品が製造されたかのような誤解を需要者に生じさせる表示である。
具体的には、被告表示1の「LOS ANGELES CA.」という記載は、被告商品1が米国のロサンゼルスで製造されたとの誤解を生じさせ、被告表示2のイギリス国旗と「ENGLAND」という記載は、被告商品2がイギリス製であるとの誤解を生じさせ、被告表示3の「Haight Street San Francisco U.S.A.」という記載は、被告商品3が米国のサンフランシスコ製であるとの誤解を生じさせ、被告表示4の「NEW YORK」という記載は、被告商品4が米国のニューヨーク製であるとの誤解を生じさせる表示となっている。
したがって、被告表示1ないし4は、いずれも原産地誤認表示に該当する(関税法71条、不当景品類及び不当表示防止法4条3号参照)。
イ 被告商品1ないし4のかばん内部に「MADE IN CHINA」というタグが付されていることは認める。
しかし、被告表示1ないし4は、それぞれの被告商品の下げ札に表示されているのであるから、当該下げ札に真の原産地が表示されていない以上、被告表示1ないし4が原産地誤認表示であることに変わりはない。被告は、別訴(当庁平成12年(ワ)第943号)において、個別の表示が原産地誤認表示に該当すると主張していたのであるから、本訴において、下げ札と別の個所に打ち消し表示があることをもって、原産地誤認表示に該当しないと主張することは、禁反言の法理に反する。
また、上記タグは、各かばん内側奥横の、極めて見にくい部分(かばんの内側布を引っ張り出さないと分からない部分)で、しかも一部のタグは破れやすい小さな紙製のものである。この紙製タグについては、内側の布を引っ張って、タグを無理して読もうとしても「MADE IN CHI」までしか見えず、それ以上読みとろうと引っ張れば、それにより破れるようになっている。したがって、上記タグの表示は、被告表示1ないし4の打消表示とはなっていない。被告は、紙製タグをビニル製に変更したと主張するが、在庫分について付け替えをしたものとは認められない。
(2) 被告表示5及び6について 被告は、被告商品1についてはビッチスケートボード社から、被告商品2についてはカンゴール社から、単に商標のライセンスを得て、被告商品1又は2を製造しているにすぎないが、被告表示5及び6は、ビッチスケートボード社又はカンゴール社がデザインした商品の製造ライセンスを得て、被告が製造しているとの認識を需要者に与えるものであり、被告商品1及び2の品質を誤認させる表示である。
【被告の主張】 (1) 原産地誤認表示について 被告商品1ないし4には、いずれも「MADE IN CHINA」という中国製であることを示す表示が、かばん内部のタグに付されている。
そして、当該部位は、当該商品の取引において、原産地を表示することが一般的に期待されている部位であるから、被告商品1ないし4には、原産地誤認表示は付されていない。
なお、被告商品に触れさている上記タグは、従前、紙製であったが、現在ではビニル製に変更している (2) 品質誤認表示について 被告表示5及び6が、原告が主張するような趣旨に解される余地はない。また、バッグ等の業界においてライセンスといえば、形態の特殊性が著しい等特段の場合を除いて、商標に関するものを指称するのが通常であり、需要者が、原告主張のような誤解をする余地もない。
したがって、被告表示5及び6は品質誤認表示に該当しない。
2 争点2(損害の額)について 【原告の主張】 原告は、本訴の提起と遂行を弁護士に委任し、相当額を出捐しているところ、
被告の不正競争と相当因果関係にある弁護士費用は金50万円と見るのが相当である。
【被告の主張】 争う。
争点に対する判断
1 争点1(不正競争防止法2条1項12号該当性)について (1) 被告商品1について ア 被告表示1は原産地誤認表示に該当するか。
被告商品1には被告表示1が付されており、当該表示には、「LOS ANGELES CA.」という記載があるので、当該記載のみに着目すれば、被告商品1の需要者は、
被告商品1の原産地を米国の(カリフォルニア州)ロサンゼルスと認識するおそれがあるといえる。
しかしながら、ある表示が、不正競争防止法2条1項12号にいう原産地を誤認させるような表示に当たるかどうかを判断するに当たっては、当該表示のみに着目するのではなく、当該表示が付された商品全体を観察し、商品の需要者が、当該表示を商品の原産地表示と認識し、真の原産地と異なる地域を原産地と認識するおそれがあるかどうかを検討する必要があるというべきである。
以上の観点から、被告商品1について検討するに、証拠(甲1、検甲1、検乙4)と弁論の全趣旨によれば、@被告表示1は、被告商品1に付けられている下げ札の表面であるが、そこには、上から順に、「bitch」というブランドロゴ、2人の人間のシルエットの図柄(bitchのシンボルマークと考えられる)、「bitch skateboards」というブランド名の表示、「LOS ANGELES CA.」、「THIS PRODUCT IS MADE THROUGH AN AGREEMENT WITH BITCH SKATEBOARDS.」という英語の文章が記載されていることが認められること、A下げ札の裏面には、小さいながらも「LICENCED BY CROWN F.G.CO.,LTD」、「DISTRIBUTED BY YUBISHA SANGYO CO,.LTD」、「THIS PRODUCT IS MADE THROUGH AN AGREEMENT WITH BITCH SKATEBOARDS.」「TEL.(06)6458-3174」と記載されていることが認められる。
以上の被告商品1に付された下げ札の記載からすれば、被告表示1のうち「LOS ANGELES CA.」という記載は、本来的には「bitch skateboards」というブランド主体の所在地を表示するものであるということができる。そして、今日において、カバン等の衣料品関連業界において、ブランド主体の所在地とその商品の原産地とが異なることは往々にしてあるところ、上記のように、被告商品1の下げ札表面及び裏面には、被告商品1がライセンス商品であることを示す比較的簡単で短い英語の記載があることが認められる。したがって、被告商品1の需要者は、被告商品1に付された下げ札の記載から、被告商品1が、「LOS ANGELES CA.」に所在する「bitch skateboards」自身が製造したものではないと理解するものと考えられる。
また、被告商品1の内側に、「MADE IN CHINA」と記載されたタグが付されていることについては、当事者間に争いがないところ、これは、被告商品1の原産地が中国であることを直接的に記載した表示であると認められる。もっとも、この表示は、被告商品1の内側に付されているもので、上記下げ札と比較して見にくい位置に付されていることは否定できない。しかしながら、証拠(検乙5ないし7)によれば、かばんの原産地をその内側のタグに記載した商品は、市場に複数存在することが認められ、一般的にも、衣料品関連商品において、原産地を外観から見えない商品の裏側や内側に記載することは、よく見られることである。そして、かばんを購入しようとする需要者は、かばんという物の性質上、かばんの外観のみならず、
その内側の構造にも注目するものと考えられ、そうであれば、被告商品1の需要者は、被告商品1を購入するに当たって、その内側に付された上記タグの記載を見ることになるものと考えられる。
以上の事実からすると、被告商品1の需要者は、被告商品1を購入するに当たって、通常、被告表示1が表示された下げ札全体と被告商品1の内側に付された上記タグを見るであろうから、当該商品の原産地を、中国であると認識する蓋然性が高く、少なくとも、被告表示1の「LOS ANGELES CA.」という記載から、被告商品1の原産地を米国の(カリフォルニア州)ロサンゼルスと認識するおそれがあるとは認められないというべきである。
したがって、原告の被告表示1が原産地誤認表示に該当するとの主張は認めることができない。
なお、原告は、被告が、被告商品1の内側に付された上記タグの存在をもって、
被告表示1が原産地誤認表示に該当しないと主張することは、禁反言の法理に反すると主張する。しかし、被告の同主張は、異なる商品についての法的評価に属する主張であるから、原告の主張は失当である。
イ 被告表示5は品質誤認表示に該当するか。
被告表示5は、「THIS PRODUCT IS MADE THROUGH AN AGREEMENT WITH BITCH SKATEBOARDS.」であり、被告商品1が「BITCH SKATEBOARDS」の同意のもと製造されていることを表示している。
ところで、今日において、商品のブランド主体ないし管理者が、商標の経済的利用態様の一つとして、一定の条件の下、商標のライセンシーに、当該商標を付した商品のデザイン等の開発自体を委ねることは、よく行われているところである。
そうすると、単にブランド主体の許可のもと製造されていることを表示しているにすぎない被告表示5に接した需要者が、その記載から、直ちに被告商品1は、そのブランド主体である「BITCH SKATEBOARDS」自身が開発した商品であると認識するおそれがあるとは認められない。
したがって、被告表示5が品質誤認表示に該当するとの原告の主張は、その前提を欠き、失当である。
(2) 被告商品2について ア 被告表示2は原産地誤認表示に該当するか 証拠(甲2、検甲2、検乙2)と弁論の全趣旨によれば、@被告表示2は、被告商品2に付けられている下げ札の表面であるが、そこには、上から順に、
イギリスの国旗、ブランド名である「KANGOL」、「ENGLAND」と記載されていることが認められること、A商品の下げ札裏面には、小さいながらも、「この商品は、イギリス、カンゴール社との提携により製造したものです。」という日本語の記載と、「DISTRIBUTED BY CROWN F.G.CO.,LTD.」、「COOPERATED WITH YUBISHA SANGYO CO,.LTD.」という英語の記載があることことが認められる。
以上の下げ札の記載からすれば、被告商品2は、「KANGOLE」とは別の者によって製造されたと認識できるのであって、本来的には、ブランド主体である「KANGOLE」の所在地を示す記載にすぎない、被告表示2のイギリスの国旗や「ENGLAND」という記載から、被告商品2の需要者が、被告商品2の原産地を英国と認識するおそれがあるとは認められないというべきである。
したがって、原告の被告表示2が原産地誤認表示に該当するとの主張は認めることができない。
なお、被告商品2の内側には、「MADE IN CHINA」と記載されたタグが付されていることについては、当事者間に争いがないが、同タグは、被告商品2の内側ひだに折りたたまれており、実際には、「MADE IN CHI」までしか見えないから、それ自体が被告商品2の真正な原産地を表示するものということはできない。しかし、被告商品2に付されている下げ札自体の記載から、被告表示2が原産地表示と認識されるおそれがあるといえないことは、上記記載のとおりであるから、被告商品2の内側に付された上記タグについての評価は、被告表示2が原産地誤認表示に該当しないとの判断を左右しない。
イ 被告表示6は品質誤認表示に該当するか 被告表示6は、「Kangol is the registered trademark of Kangol Ltd.」「この製品は、イギリス、カンゴール社との提携により製造したものです。」という記載であって、前者は、「Kangol」がカンゴール社の登録商標であることを示す記載にすぎず、後者も、被告商品2が、ブランド主体であるカンゴール社との提携の下に製造されていることを表示しているにすぎない。そうすると、被告表示5について判示したのと同様、被告表示6に接した需要者が、その記載から、直ちに被告商品2はカンゴール社が開発したものと認識するおそれがあるとは認められない。
したがって、被告表示6が品質誤認表示に該当するとの原告の主張は、その前提を欠き、失当である。
(3) 被告商品3について 証拠(甲3、検乙3)と弁論の全趣旨によれば、@被告表示3は、被告商品3に付けられた下げ札の表面の一部であるが、その下げ札の表面には、上から順に、リスの図柄(ブランドのシンボルマークと考えられる。)、ブランド名である「CHOOP」、「Haight Street San Francisco U.S.A.」と記載されていること、A商品の下げ札裏面には、小さいながらも、「LICENCED BY CROWN F.G.CO.,LTD.」、「DISTRIBUTED BY YUBISHA SANGYO CO,.LTD.」、「TEL.(06)6458-3174」と記載されていることが認められる。そして、被告商品3の内側に、「MADE IN CHINA」と記載されたタグが付されていることについては、当事者間に争いがない。
そうすると、被告商品1について判示したのと同様、被告商品3の需要者は、被告商品3を購入するに当たって、通常、被告表示3が表示された下げ札全体と被告商品3の内側に付された上記タグを見るであろうから、当該商品の原産地を、中国であると認識する蓋然性が高く、少なくとも、被告表示3の記載から、被告商品3の原産地を米国のサンフランシスコと認識するおそれがあるとは認められないというべきである。
したがって、原告の被告表示3が原産地誤認表示に該当するとの主張は認めることができない。
(4) 被告商品4について 証拠(甲4、検乙1)と弁論の全趣旨によれば、@被告表示4は、被告商品4に付けられた下げ札の表面であるが、そこには、上から順に、ブランド名である「E.G.SMITH」、「NEW YORK」と記載されていること、A商品の下げ札裏面には、
小さいながらも、「LICENCED BY CROWN F.G.CO.,LTD.」、「DISTRIBUTED BY YUBISHA SANGYO CO,.LTD.」、「TEL.(06)6458-3174」と記載されていることが認められる。そして、被告商品4の内側に、「MADE IN CHINA」と記載されたタグが付されていることについては、当事者間に争いがない。
そうすると、被告商品1について判示したのと同様、被告商品4の需要者は、被告商品4を購入するに当たって、通常、被告表示4が表示された下げ札全体と被告商品4の内側に付された上記タグを見るであろうから、当該商品の原産地を、中国であると認識する蓋然性が高く、少なくとも、被告表示4の記載から、被告商品4の原産地をニューヨークと認識するおそれがあるとは認められないというべきである。
したがって、原告の被告表示4が原産地誤認表示に該当するとの主張は認めることができない。
2 以上より、原告の請求は、いずれも理由がないから、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 高松宏之
裁判官 安永武央