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関連審決 審判1995-40012
審判1997-12278
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ネ6311不正競争行為差止等請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成13ワ2935営業秘密使用禁止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成15ワ5711営業差止等請求事件 判例 不正競争防止法
昭和60ワ4131秘密保持義務存在確認等請求事件 判例 不正競争防止法
平成12ネ3811不正競争行為差止等請求各控訴事件 平成12ネ3812不正競争行為差止等請求各控訴事件 平成12ネ3874不正競争行為差止等請求各控訴事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 需要者 /  他人の営業 /  類似性(類似) /  記憶 /  差止請求(差止) /  過失 /  因果関係 /  弁護士費用 /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  得べかりし利益 /  有用性 /  プログラム /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 10年 (ワ) 5090号 損害賠償請求事件
原告 株式会社梅谷製作所右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 本渡諒一
同 木島喜一右補佐人弁理士 【B】
被告 株式会社イソワ右代表者代表取締役 【C】 右訴訟代理人弁護士 中村稔
同 富岡英次右補佐人弁理士 【D】
同 【E】
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/10/31
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、原告に対し、金四五万円及び内金四〇万円に対する平成一〇年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
損害賠償 被告は原告に対し、金七〇七一万三五八五円及び内金六一一一万三五八五円に対する平成一〇年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 謝罪広告 被告は日刊板紙段ボール新聞社(本社―東京都文京区<以下略>)が発行する板紙段ボール新聞の紙上に別紙謝罪広告目録(一)の謝罪広告を、包装ニュース社(本社―東京都千代田区<以下略>)が発行する週間包装ニュースの紙上に別紙謝罪広告目録(二)の謝罪広告を、それぞれ本判決日より二か月以内に各二回掲載せよ。
事案の概要
一 争いのない事実等(文末に証拠の表記のないものは、当事者間に争いがない。) 1 当事者 原告及び被告はともに段ボール機械並びに段ボール機械の関連機械の製造、販売を業とする株式会社であり、市場において競合関係にある。
2 被告の実用新案権 被告は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有していた。
(一) 登録番号 第三〇〇二二一八号 (二) 登録年月日 平成六年七月一三日 (三) 出願年月日 平成四年一月一八日(実願平六―三七七五) なお、本件考案は、発明の名称を「段ボールシート用印刷機」とする後記3の特許出願(特願平四―二七二三六号、以下この出願に係る特許権を「原特許権」という。)から、平成六年三月一八日に分割特許出願したもの(特願平六―七三九七六号)を、実用新案登録出願に出願変更したものである。
(四) 考案の名称 段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構 (五) 実用新案登録請求の範囲は別添登録実用新案公報の該当欄記載のとおりであり、その請求項1は次の各構成要件に分説される。
A 印版(42)を装着した版胴(44)と、この版胴(44)に対向配置した圧胴(46)とを備え、前記印版(42)にインキを転移させると共に、相互に反対方向に回転する前記版胴(44)と圧胴(46)との間に段ボールシート(43)を通過させて、該シート(43)に所要の印刷を行なうよう構成した段ボールシート用印刷機において、
B 前記版胴(44)に対して近接・離間自在に配設され、近接時に該版胴(44)の印版(42)と接触して回転するインキ転移ロール(50)と、
C このインキ転移ロール(50)に運転中は常に接触して回転し、インキ量の絞り調整を行なう絞りロール(52)と、これらインキ転移ロール(50)および絞りロール(52)の上方に配設され、該ロール(50、52)の長手方向に平行移動し得ると共に、可逆モータ(96)により正逆付勢されるチュービングポンプ(95)と、
D このチュービングポンプ(95)に着脱自在に介挿され、一方の開口部(60a)をインキ供給部(58)に臨ませると共に、他方の開口部(60b)を前記両ロール(50、52)の間に画成されるインキ貯留部(A)に臨ませたチューブ(60)と、前記チュービングポンプ(95)と一体的に移動可能に設けられ、前記チューブ(60)のインキ貯留部(A)に臨む開口部(60b)を昇降させる昇降駆動機構(99)とからなり、
E 前記チューブ(60)の開口部(60b)は、常にはインキ貯留部(A)の上方におけるインキ吐出位置にあって、前記可逆モータ(96)を一方向へ駆動することにより前記インキ供給部(58)中のインキを該インキ貯留部(A)に供給し、また前記昇降駆動機構(99)を駆動して該チューブ(60)を下降させることにより、その開口部(60b)を該インキ貯留部(A)中の残留インキに浸漬させると共に、該可逆モータ(96)を逆回転させて残留インキをインキ供給部(58)に回収するよう構成した F ことを特徴とする段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構。
3 被告の原特許権(乙一七、一八) 被告の原特許権の内容は次のとおりである。
(一) 登録番号 第二五三四九四九号 (二) 登録年月日 平成八年六月二七日 (三) 出願年月日 平成四年一月一八日(特願平四―二七二三六号) (四) 発明の名称 段ボールシート用印刷機 (五) 特許請求の範囲 印版(42)を装着した版胴(44)と、この版胴(44)に対向配置した圧胴(46)と、前記版胴(44)に対し近接・離間自在に配設され、近接時には該版胴(44)に装着した印版(42)と接触して回転するインキ転移ロール(50)と、このインキ転移ロール(50)に運転中は常に接触して回転し、供給されるインキの量を絞り調整する絞りロール(52)とを備え、前記インキ転移ロール(50)を介して前記印版(42)にインキを転移させると共に、相互に反対方向に回転する前記版胴(44)と圧胴(46)との間に段ボールシート(43)を通過させて、該シート(43)に所要の印刷を行なうよう構成した段ボールシート用印刷機において、前記インキ転移ロール(50)および絞りロール(52)における軸方向の両端部に配置され、両ロール(50、52)の間に画成されるインキ貯留部(A)の長手方向両端部を閉成する堰部材(74、74)と、
前記インキ転移ロール(50)および絞りロール(52)の上方に配設されて該ロール(50、52)と平行に移動可能で、前記インキ貯留部(A)ヘの低粘度かつ高度速乾性インキの供給並びに残留インキの回収を選択的に行なう供給・回収装置(54)とを備え、
前記供給・回収装置(54)は、前記インキ貯留部(A)に沿って移動自在に配設した保持手段(92)と、前記保持手段(92)に配設され、可逆モータ(96)により正逆付勢されるチュービングポンプ(95)と、このチュービングポンプ(95)に着脱交換自在に介挿され、一方の開口部(60a)を前記保持手段(92)に配設したインキポット(58)中のインキに浸漬させると共に、他方の開口部(60b)をインキ貯留部(A)に臨ませたチューブであって、その少なくとも前記ポンプ(95)に介挿される部位に可撓性を持たせたチューブ(60)とからなり、
前記可逆モータ(96)の付勢によりインキポット(58)中のインキをインキ貯留部(A)に供給し、また該モータ(96)の逆付勢によりインキ貯留部(A)中の残留インキをインキポット(58)に回収するよう構成したことを特徴とする段ボールシート用印刷機。
4 原告及び被告の製造する段ボール印刷機 (一) 原告は、平成五年一二月から「プリンタスロッタプラムμ」という名称の段ボール用印刷機(以下「原告印刷機」という。)を製造し、被告は、平成四年末ころから「エクシード」という名称の段ボール用印刷機(以下「被告印刷機」という。)をそれぞれ製造、販売している。
(二) 原告は、原告印刷機は別紙機械目録記載のとおりであると主張しているところ、その構成を摘記すると次のとおりである(番号は、同目録添付図面参照)。
@ 給紙ユニット2、印刷ユニット3、クリーザスロッタユニット5から構成された印刷機中の印刷ユニット3であり、該印刷ユニット3は、印版8を装着した版胴4と、この版胴4に対向配置した圧胴31とを備え、印版8にインキを転移させると共に、相互に反対方向に回転する前記版胴4と圧胴31との間に段ボールシートを通過させて、シートに所要の印刷を行ない、印刷された段ボールシートをシート送りロール6、7により下流側へ搬送するよう構成されている。
A 版胴4に対して近接・離間自在に配設され、近接時には該版胴4の印版8と接触して回転するインキ転移ロール10と、このインキ転移ロール10に運転中は常に接触して回転し、インキ量の絞り調整を行う絞りロール11と、前記インキ転移ロール10および絞りロール11における軸方向の両端部に配置され、両ロール10、11の間に画成されるインキ貯留部Aの長手方向両端部を閉成する堰部材26、26とを有する。
A―2 インキ転移ロール10の上方には、ゴムロール27と取出しロール28と該取出しロール28に接触・離間可能なスクレーパ29を有し、スクレーパ29の下方にはインキパン30を設けている。
A―3 取出しロール28の斜め上方には、洗浄液補給用配管パイプ32を有している。
A―4 インキ供給回収装置9は、横桁12にコロ14、インキ供給回収装置台5を介して取り付けられている。
A―5 インキ供給回収装置台15に設けた連結部39は、チェーン34と接続されており、チェーン34は、駆動装置35に取り付けられたスプロケット36と、もう一方側のスプロケット37により張設され、インキ供給回収装置9は、ロール10、11の長手方向に移動可能に取り付けられている。
B インキ転移ロール10および絞りロール11の上方に配設され、該ロール10、11の長手方向に平行移動し得ると共に、可逆モータ19より正逆付勢されるチュービングポンプ18が装備されている。
C 前記チュービングポンプ18には、着脱自在に介挿され、一方の開口部20aをインキ供給部17中のインキに浸漬させると共に、他方の開口部20bを前記両ロール10、11の間に画成されるインキ貯留部Aに臨ませた可撓性を有するチューブ20が取り付けられている。
D チュービングポンプ18と一体的に移動可能に設けられ、チューブ20のインキ貯留部Aに臨む開口部20bを昇降可能とする昇降駆動機構22を備えている。
D―2 チューブ20の開口部20bがロール10、11の軸手方向への往復移動中はチュービングポンプ18が正転あるいは逆回転するよう構成している。
E チューブ20の開口部20bは、常にはインキ貯留部Aの上方におけるインキ吐出位置にあって、可逆モータ19を一方向へ駆動することによりインキ供給部17中のインキを該インキ貯留部Aに供給するように構成され、また、昇降駆動機構22を駆動して該チューブ20を下降させることにより、その開口部20bを該インキ貯留部A中の残留インキに浸漬させると共に、該可逆モータ19を逆回転させて残留インキをインキ供給部17に回収可能に構成されている。
E―2 インキ貯留部Aの一方側には、インキ貯留部A全体のインキ量を制御するセンサー38を設けている。
E―3 通常の印刷運転中は、切替えスイッチはインキの自動供給に設定され、印版の必要箇所に関係なくチューブ20の開口部20bがインキ貯留部Aを一端から他端までインキを供給しながら往復移動し、インキ貯留部A全体のインキ量が上限設定値になると、センサー38が検知して自動的にチューブ20の開口部20bのロールの軸手方向への往復移動とインキの供給を停止するよう構成している。
E―4 印刷運転中にインキ貯留部A全体のインキ量が下限設定値以下になると、センサー38が検知して自動的にチューブ20の開口部20bがロール10、11の軸方向へ往復移動しながらインキを追加供給するよう構成され、また、
色替え時には昇降駆動機構22を駆動してチューブ20の開口部20bをインキ貯留部Aの貯留インキに浸漬させ、ロール10、11の軸方向へ往復移動しながらインキ貯留部Aの貯留インキをインキ供給部17内に回収可能に構成されている。
F 以上の特徴を有する段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構を有する印刷ユニットである。
5 本件実用新案権に関する経緯等 (一) 被告は、特許庁に本件考案について実用新案技術評価書を請求し、平成六年一一月七日、請求項1ないし4のいずれもその評価を「2」(この請求項に係る考案は、掲記の刊行物の記載からみて、進歩性を欠如するものと判断されるおそれがある。)とする実用新案技術評価書(以下「本件評価書@」という。)を得た(甲二)。
(二) 被告は、再度、特許庁に本件考案について実用新案技術評価書を請求し、平成七年二月二四日、請求項1ないし4のいずれもその評価を「2」とする実用新案技術評価書(以下「本件評価書A」という。)を得た(甲三)。
(三) 被告は、弁理士【D】に対し、本件評価書@の評価の妥当性及び本件考案に関するその他の無効事由の存否について鑑定を依頼したところ、平成七年三月二日付けで、右評価は妥当性を欠くこと、本件評価書@において引用されている文献を含め調査した範囲においては本件考案が無効と判断されるおそれは特に認められないとする鑑定書を得た(乙三)。
また、被告は、弁理士【F】に対し、本件評価書@の評価の妥当性について鑑定を依頼したところ、同月一〇日付けで、右評価は妥当性を欠くとする鑑定書を得た(乙二)。
(四) 被告は、平成七年五月二日、原告に対し、本件評価書@を提示して、
原告印刷機が本件実用新案権を侵害している旨の警告をした(以下「本件警告」という。)(甲一一)。
(五) 原告は、平成七年六月二六日、本件考案について、進歩性がないとの理由により、登録無効審判(平成七年審判第四〇〇一二号、以下「本件無効審判」という。)を請求した。
(六) 被告は、同年八月二五日、原告に対し、原告印刷機を製造、販売することが本件実用新案権を侵害しているとしてその製造、販売の差止めと一億四三〇〇万円の損害賠償を、原告製造に係る段ロールを製造することが特許第一一六六四五二号の特許権(発明の名称―片面段ボールの製造装置における中芯保持装置、以下「別件特許権」という。)を侵害しているとしてその製造の差止めと一億四六六八万円の損害賠償を求める訴訟(以下「本件侵害訴訟」という。)を東京地方裁判所に提起した(甲一九)。
(七) 特許庁は、同年一二月二五日、本件無効審判について、原告の請求は成り立たないとの審決をした(甲一四)。
(八) 原告は、平成八年二月九日、右審決について、東京高等裁判所に審決取消請求訴訟(同庁平成八年(行ケ)第二一号、以下「本件審決取消訴訟」という。)を提起した(甲一五)。
被告は、同月一四日、名古屋地方裁判所において、原告に対し、本件実用新案権に基づいて、原告印刷機の製造、販売の差止め等を求める仮処分(同庁平成八年(ヨ)第一四〇号、以下「本件仮処分」という。)を申し立て、同年九月二七日、本件侵害訴訟の判決の確定又は本件実用新案権の消滅のいずれか先に到来する日まで原告印刷機の製造、販売を行わないことなどを内容とする和解が成立した(甲二一、二三)。
東京高等裁判所は、本件審決取消訴訟について、平成九年六月一〇日、
右審決を取り消す旨の判決をし、右判決は、上訴期間の経過により確定した(甲一六、弁論の全趣旨)。
特許庁は、右判決を受けて本件無効審判について更に審理をした上で、
平成九年一一月二八日、本件実用新案登録を無効とする旨の審決をし、同審決は確定した(甲一七、弁論の全趣旨)。
(九) 本件侵害訴訟は、名古屋地方裁判所に移送されて審理(同庁平成七年(ワ)第四二九〇号)され、同裁判所は、別件特許権に基づく請求について、平成一一年一二月二二日、原告が別件特許権を侵害したとして、損害賠償につき一部認容する判決をした(弁論の全趣旨、甲一九、乙四〇)。
6 原特許権に関する経緯 (一) 特許庁は、平成一〇年五月二九日、原告が請求した原特許についての無効審判事件において、原特許を無効とするとの審決(平成九年審判第一二二七八号)をした(乙三六)。
(二) 被告は、右審決について、東京高等裁判所に審決取消請求訴訟(同庁平成一〇年(行ケ)第二一五号)を提起し、同裁判所は、平成一二年三月一日、右審決を取り消す旨の判決をし、同判決は確定した(乙三六、弁論の全趣旨)。
7 被告の行為 (一) 被告の技術本部長【G】は、平成六年四月ころ、別添の「エクシードの利点とミューの欠点(対比表)」と題する書面(以下「本件対比表」という。)を作成した(甲二四、乙七)。
(二) 被告は、平成七年九月一六日、原告の取引先を含めた段ボール用印刷機の購入予定者及び段ボール関連企業を読者とする「週刊包装ニュース」の紙上に、「実用新案権『段ボールシート用インキ回収・供給装置』、および特許権『片面段ボール製造装置における中芯保持装置』についてお知らせ」との表題のもとに、別紙広告・記事目録(一)記載の広告を掲載した(以下「本件広告@」という。)(甲二五)。
(三) 被告は、平成七年九月二七日、原告の取引先を含めた段ボール用印刷機の購入予定者及び段ボール関連企業を読者とする「板紙段ボール新聞」の紙上に、「お知らせ」との表題のもとに、別紙広告・記事目録(一)記載の広告を掲載した(以下「本件広告A」という。)(甲二六)。
(四) 被告は、平成七年一一月七日、岐阜県に本社を有する岡田段ボール株式会社に対し、右(三)記載の板紙段ボール新聞の広告の写しをファックスで送信した(甲二七の1、2)。
(五) 平成八年一月二七日付けの前記「週刊包装ニュース」の紙上一頁、三頁、四頁に、それぞれ別紙広告・記事目録(二)ないし(四)記載の広告・記事(原文のまま)が掲載された(以下、同目録(二)記載の記事を「本件記事@」、同目録(三)記載の記事を「本件記事A」、同目録(四)記載の広告を「本件広告B」という。)(甲二八の1ないし3)。
二 本件は、原告が、被告に対し、(一) 被告は原告の取引先に対し本件対比表を配付したが、同書面には営業上の信用を害する虚偽の事実が記載されており、被告の右行為は不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為に当たるとして損害賠償を、(二) 被告は、本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信、本件侵害訴訟の提起及び本件仮処分の申立てを行い、口頭で原告の取引先に対し「裁判していて、すぐに原告の機械は製造できなくなる。」などと流布したが、後に本件実用新案登録を無効にすべき審決が確定したとして、実用新案法29条の3に基づき、損害賠償を、(三) 被告の本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信、原告の取引先に対する口頭での右流布行為について、不正競争防止法2条1項13号に基づいて損害賠償を、(四) 被告の本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載について謝罪広告の掲載をそれぞれ求めている事案である。
三 争点 1 本件対比表の各項目の記載内容は、不正競争防止法2条1項13号の他人の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるか。
2 被告は、本件対比表の内容を告知又は流布したか。
3 被告の次の行為が、不正競争防止法2条1項13号の他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布、あるいは、実用新案法29条の3第1項の権利の行使又はその警告に当たるか。
(一) 本件広告@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信について (二) 本件広告B、本件記事@、Aの掲載について 4 被告は、原告の取引先に対し、口頭で、不正競争防止法2条1項13号の他人の営業上の信用を害する虚偽の事実、あるいは、実用新案法29条の3第1項の権利の行使又はその警告に該当する内容を述べたか否か。
5 被告の本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載ないしファックス送信、本件警告、本件侵害訴訟の提起、本件仮処分の申立て、口頭での告知行為につき、過失があったか否か、及び、実用新案法29条の3第1項ただし書の相当の注意を払ったか否か。
6 原告の損害の額及び因果関係の存否
争点に関する当事者の主張
一 争点1(本件対比表の内容が不正競争防止法2条1項13号の他人の営業上の信用を害する虚偽の事実に当たるか。) 1 項目「ゴムロールの絞り調整はできるか?」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機は、空気圧調整つまみを調整することで、エアシリンダの空気圧を連続的に調整してゴムロールの絞り調整が可能である。
(二) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「調整不可」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「微妙な絞り調整はできない。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機は、空気圧を利用してエアシリンダによりゴムロールをインキ転移ロールに一定の力で押し付けているものであって、絞りの微妙な調整はできない。
被告印刷機は、偏心ハウジングと高精度位置決コンピュータによりゴムロールの位置を移動して、ゴムロールとインキ転移ロールの間隔を微妙に調節できインキの絞り調整が可能であるため、所望の色合いを出すことができる。
(二) 原告印刷機は、空気圧の調整つまみは、印刷機のはるか上方、作業員が手を伸ばしてやっと届く位置にあり、印刷作業中に空気圧の表示器を見ながら細かい調整を行うことは、不可能である。表示器、調整つまみは、一度空気圧を設定したら、しばらくは、これを変化させないことを前提に、空気圧、絞りを一定に保つために設置されている。
被告印刷機は、作業員が印刷状況を見ながら手許でこれを微妙に調整できる構成である。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
2 項目「洗浄中に印版交換できるか?」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機は、版胴から印版を取り外すには、足踏みスイッチで版胴を回転させながら印版を作業者側に引き離していくが、印版とインキ転移ロール(アニロックスロール)との間は所定の間隔が設けられているので、印版がインキ転移ロールに接触することはない。したがって、洗浄中にも印版の交換はできる。
原告印刷機の場合は、ユーザーとの受注契約時に印版の厚みに応じて、
印版とインキ転移ロールの間隔を定めるのであり、仮に数種類の印版厚みのものを使用しているユーザーであれば、印版厚みの一番厚いものに対応可能な設定にしておけばよいだけであり、この間隔は、後にプログラムを変更することでも変更できる。
(二) 被告は、原告印刷機のカタログ(乙三〇)には、洗浄中に印版交換はできる旨の記載は存在しないと主張するが、同カタログ四頁「2 インキ洗浄」の項には、「インキ洗浄は印刷版取替時に自動操作で行います。」との記載、即ち、
洗浄中に印版交換できるとの明確な記載がある。同カタログは展示会用に作成し、
短期間配布したものであるが、その当時の機械も右構造のもので、洗浄中に印版の交換もできた。
また、被告は、原告印刷機のカタログ(甲四〇)は本件対比表作成以後のものであるから本件対比表の内容の真偽には無関係である旨主張するが、被告は、同カタログが配布された後にも、本件対比表を配布しているから、同カタログの内容を考慮して本件対比表の内容の真偽を判断すべきである。
(三) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「できない」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「従って洗浄時にアニロックスロールが回転していると印版がこすれる可能性があり印版がはずせない。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機は、印刷が終了して機械のモーターのスイッチを切ると、
インキ転移ロール(アニロックスロール)と版胴との間隔は、自動的に八・五ミリメートルとなり、印版は、約〇・二ミリメートルの厚さのフィルム上に設置されているから、一般的な印版中、薄い七ミリ印版の場合には、インキ転移ロールと印版との間は、一・三ミリメートル、八ミリ印版の場合には、〇・三ミリメートルとなり、このような状態では、印版の取り外し作業におけるほんの小さな振れ等によって、印版が回転するインキ転移ロールと接触し、印版を傷つけることとなる。実際にそのような苦情を被告は聞いている。印版に傷をつける可能性のある交換方法があっても、交換不可能ということは、業者としては当然のことである。
(二) 原告印刷機のカタログ(乙三〇)には、洗浄中に印版交換はできる旨の記載は存在しないし、カタログ(甲四〇)には、インキ洗浄は印版取替時に自動操作で行う旨の記載があるが、同カタログは、本件対比表作成以後のものであり本件対比表の内容の真偽には無関係である。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
3 項目「洗浄は自動か?」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機において、洗浄作業が半自動であるとしても、作業者は洗浄中に印刷機の操作盤に付き切りになる必要はなく、その際、他の作業をすることができる。被告印刷機のような全自動の場合、インキ回収後にインキタンクとノズルを取り外さないままロールの洗浄を開始するため、ノズルからインキの垂下がある分、洗浄時間を長めに設定しておかねばならないが、原告印刷機のような半自動の場合、インキの垂下は全くないから、作業能率が低下することはなく、全自動か半自動かは、欠点でもなく利点でもない。
(二) したがって、同項目における「ミュー」の欄の被告印刷機の欠点を記載する趣旨の「半自動」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「洗浄時はオペレータが付きっきりとなる。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機においては、「インキ回収」、「洗浄液吐出」、「スクレーパ」の各スイッチが別になっており、オペレータが状況を見ながら各スイッチを操作する必要があるから、オペレータが付き切りとなることにより洗浄作業能率が低下するのに対し、被告印刷機は、全自 動であるから、洗浄の間に他の作業を進めることができる。インキの垂下の可能性はあるが、垂下する位置はロールの端部付近に近く、この位置に印版がある可能性は少ないのであり、このような特殊な場合を想定して被告印刷機の効率が悪いということはできない。
(二) 原告印刷機は、洗浄時にオペレータが付き切りとなることにより洗浄作業能率が低下する。
(三) 実際にも、ユーザーは、洗浄の間に他の作業を進めることのできる被告印刷機の自動洗浄の有用性を認めている。
(四) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
4 項目「セット替え時間」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機は、前記2、3の原告の主張のとおり、洗浄中に、印版交換ができ、オペレーターが付き切りとなることはないから、セット替え時間が遅いことはない。
(二) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「遅い」との記載、
「ミューの機構は?」の欄の「洗浄中は印版交換ができない」「洗浄時はオペレータが付きっきり」「セット替え遅い」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機は、前記2、3の被告の主張のとおり、実際には洗浄中に印版交換はできないもので、洗浄時にオペレータが付き切りにならなければならなかったのに対し、被告印刷機は、洗浄中に印版交換ができるし、洗浄は全自動であるから、被告印刷機の方が原告印刷機に比べてセット替が短く済むことは当然であり、ユーザーもこれを認めている。
(二) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
5 項目「インクの粘度変化は?」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機には、インキの粘度を一定に保つための水分補給装置を設けているが、ロールの上方から供給される水分は非常に細かな噴霧状態の適切量であり、インキ貯留部全体にわたって供給する構造にしているので、インクの粘度が変化しやすいということはない。
(二) 原告印刷機においては、インキ貯留部におけるインキの残量をセンサーで検知し、随時インキを自動的に追加補給するので、そもそも、インキの粘度変化が生じ難く、現実にユーザーが原告印刷機にて印刷する場合、水分補給をしないところも多い。
右水分補給装置は、回収した残留インキを使用して印刷を行う場合や季節による温度・湿度差等からインキの粘度が多少変化している場合があり、そうした場合に備えて設けられている。
(三) 被告印刷機の粘度調整機構は、シャワー装置でロール部分を囲って加湿するものであるが、印刷機を外気と遮断するためのカバーを必要とし、内部の湿気に伴う防錆構造を採用するためコストアップに連なる欠点がある。
(四) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「変化しやすい」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「極端に粘度が変化する。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機は、水分補給用配管パイプの孔から、インキ貯留部全体及びロール上の両方に直接水分を補給する機構であるから、粘度が上昇したときに、
直接水分を供給することによって、急激に粘度が下がり、印刷の色が変化してしまうものであり、被告印刷機のシャワー装置による方法に比べ、大きく粘度が変化する。
(二) 原告印刷機は、インキの自動的な追加供給を粘度に変化が生じないほど頻繁に行っているわけではなく、だからこそ、水分補給装置を備えているものであるし、水分補給を必要とするのがどのような場合であるにせよ、水分補給装置を使用すれば、右のとおり急激に粘度が変化することに違いはない。
(三) 被告印刷機は、原告印刷機に比べて、筐体の設置による多少のコストアップがあったとしても、急激な粘度変化を防止し得る性能を確保しているという事実には違いがない。
(四) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
6 項目「インクの使用量は?」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機においては、インキをセンサーによって自動的に供給・補給し、インキの粘度が上がらない程度の必要最小限度の適量だけをロール間に溜める機構になっているし、インキの回収も十分に行われているから、廃棄されるインキの量は少ない。
(二) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「多い」との記載、
「ミューの機構は?」の欄の「インクの粘度が上がりやすい」「ロール間のインクの溜め量を多くする必要がある」「回収が不十分」「インクの捨てる量が多い」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機がインキをセンサーによって自動的に供給・補給していることは認める。
(二) 原告印刷機では、水分補給をしたときに、被告印刷機に比べて大きく粘度が変化するため、このような事態を少しでも避けようとすれば、どうしても、
インキ貯留部に貯留するインキの量を多くし、インキ貯留量に対する水分の蒸発率を低くする必要がある。
インキ貯留部に貯留するインキの量が増加すればするほど、その十分な回収が困難となり、インキを廃棄する量が増加する。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
7 項目「アニロックスロールの駆動ギヤの幅」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機のインキ転移ロール(アニロックスロール)のギヤ幅は、
標準仕様(機械幅二・七メートル)のもので三五ミリメートル、大型特殊仕様(機械幅四メートル)のもので四〇ミリメートル、小型特殊仕様(機械幅二・一メートル以下)のもので三〇ミリメートルであり、右ギヤ幅以外のものは存在しない。
右のとおり、耐久性を確保した設計幅にしているので、破損の恐れはない。
(二) したがって、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「ギヤ幅は約一五oしかない。(長時間の使用で破損の恐れあり)」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機の同ギヤの幅は、少なくとも本件対比表を作成した平成六年四月当時の調査対象印刷機については一五ミリメートルであったし、現在においても三五ミリメートルよりも五ミリメートル薄い、三〇ミリメートルの厚さの駆動ギヤを使用したものが存在する。
原告は、本件対比表において被告により問題点を指摘されて、数回にわたり同ギヤをより幅の広いものに変更したものと推測される。
(二) 原告印刷機の同ギヤの幅が三五ミリメートルであるとしても、被告印刷機の同ギヤの厚さ五五ミリメートルと比較すると、非常に力のかかる枢要なギヤに、かなりの程度薄いギヤを使用していることに違いはない。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
8 項目「生産管理装置について」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機の生産管理装置のコンピュータには、通常よく使用する形状の場合には、既に入力されたパターンを用いてセットし、それ以外の特殊な形状の場合には、通常のパターンを呼び出して、これに追加データを入力するだけでよく、これらの追加の特殊な形状のデータはメモリに記憶されているので、次回からはデータを呼び出すだけでよい。
右技術は、原告印刷機(ミュー)よりも古い機種である原告印刷機(マークV、平成二年発売)において既に実施していた。
(二) 原告印刷機は、生産管理装置の操作スイッチの手前にテーブル(幅六六センチメートル、奥行き一六センチメートル)があるので、書類を置くことができる。
(三) 被告は、本件対比表作成後の原告印刷機の改良は本件対比表の内容の真偽には無関係であると主張するが、仮に本件対比表作成後に原告印刷機に改良が加えられたとしても、被告はその後の平成七年六月ころに本件対比表を流布していたのであるから、被告の主張は理由がない。
(四) したがって、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「C式、素通しについては各ホルダーの位置をオペレータが手で計算し、それをテレビ画面に入力する必要がある為セットにかなり時間がかかる。」「テーブル面に操作スイッチがある為書類が置けない。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 被告は原告印刷機の納入されている工場において確認したが、少なくとも確認した範囲においては、原告印刷機は、C式、素通しについては、手で計算して入力しなければならないものである。
(二) 原告印刷機の操作スイッチの手前のテーブルは狭いから、実質的に書類等を置くことは不可能である。
(三) 原告の主張は、本件対比表の作成後に作成された原告印刷機のカタログ(甲四〇)に基づくものであり、本件対比表の作成後に原告印刷機に改良が加えられたとしても、本件対比表の内容の真偽には無関係である。
(四) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
9 項目「ユニットの開閉」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機は、開閉操作スイッチ盤の上の切替えつまみの操作によりユニットを開閉するが、開閉動作中は警告音(断続音)が鳴り続ける。
(二) 原告印刷機において、作業者がユニット間に入る際に、操作パネルにある安全スイッチを押せば、右警告音とは別種の警告音(間欠音)が鳴り続け、さらに、安全スイッチが押された状態では、切替えつまみにより閉操作をしてもユニットは移動できないように制御されているので安全である。
(三) 原告はユーザーに印刷機を納入・据付する際に、一週間ほど機械の操作等の指導を行っており、その時に、「作業等でユニット間に入る時は必ず安全スイッチを押すこと」を注意事項として作業者に説明している。また取扱説明書にもその旨の注意事項を記載して注意を促している。
さらに、万一、安全スイッチが押されなかった場合でも、作業者がユニット間で使用するレンチやハンドル等の工具等が、印刷機の所定の場所に戻っていない場合には、センサーによって「作業者がまだユニット間にいる」と判断して、
ユニットの閉操作を行ってもユニットは閉動作しないように制御しているので、安全性には十分に配慮している。
(四) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「危険」との記載、
「ミューの機構は?」の欄の「人が挾まれる可能性がある。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機は、各ユニットごとに開閉装置が設けられておらず、各ユニットの大きさからして、各ユニットの間に作業者等がいても、操作者がこれを視認することは極めて困難であり、知らずに開閉装置を作動させて大事故を発生させる危険性を有している。
(二) 原告主張のような安全装置が配備されていても右危険を回避することは困難であり、実際の原告印刷機の作業時において、安全スイッチをほとんど押すことなくユニットの間を作業員が出入りしている。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
10 項目「スロッタ部NO2ヨークについて」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機には、標準仕様としてダブルスロッタ仕様とシングルスロッタ仕様の二種があるところ、ダブルスロッタ仕様の印刷機ではNO2ヨークは駆動側へ動くが、シングルスロッタ仕様の印刷機ではNO2ヨークは駆動側へ動かない。原告印刷機では、ダブルスロッタもシングルスロッタも標準仕様であり、販売される印刷機のほとんどは、ダブルスロッタ仕様である。
(二) 原告は、受注、契約の際に、ユーザーと機械について打ち合わせをし、その際、NO2ヨークを駆動側へ制限なく動けるようにするか否か、特別な要望が有るか否か、について詳細に打合せるのであるから、NO2ヨークの動きそのものが、利点とか欠点になるものではない。
(三) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「駆動側へは動かない」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「NO2ヨークとNO3ヨークの間に受けがある為、NO2ヨークは駆動側へは動かない。」「長さ面の長い2ピースはすみ切り台をNO2ヨークにつける必要あり」等の記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機には、ダブルスロッタ仕様であっても、NO2ヨークの移動が制限されている印刷機があるし、シングルスロッタ仕様の印刷機では、NO2ヨークは駆動側へ動かない。
(二) 同項目における記載は、最も基本的な仕様であるシングルスロッタ仕様の場合をいっているものであるが、オプション仕様のダブルスロッタの場合についてまで触れていないからといって、内容が虚偽となるものではない。
(三) 原告印刷機のように、NO2ヨークが機械中心から駆動側に移動できないと、長さ面の長い2ピースのシートを加工する際に、オペレータが工具を使って角切り台を取り外してセットしなければならない。
被告印刷機は軸の中間に受けがなくNO2ヨークが制限なく動くから、
右のようなシートでもセットが自動ででき、この点は大きな利点である。
(四) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
11 項目「給紙部の紙粉の処理について」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機では、給紙テーブルの下方に設けた吸引ファンでシートの紙粉を吸引し、網に溜めるようになっており、右に加えて、シートの上側からも吸引装置で紙粉を吸引する機種もある。
(二) したがって、同項目における「ミュー」の欄の「飛び散る」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「ファンから出た紙粉はフロアにそのまま吹きつけられる。(シートに紙粉もつきやすい)」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 原告印刷機において、吸引した紙粉を貯める網はかなり大きな目のものであり、紙粉は、網の目を容易に通り抜ける。網の目を通り抜けた紙粉は、ファンから出て、フロアにそのまま吹き付けられるから、紙粉が飛び散る程度も大きい。
(二) 原告が主張するシートの上側から吸引装置で紙粉を吸引する機種の優劣については、本件対比表で対比していない。
(三) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
12 項目「Wスロッタユニットの下ヨークのねじ軸について」における記載について 〔原告の主張〕 (一) 原告印刷機においては、スロッタユニットで発生するスロッタ屑は、
刃物受けロールのヨークに設けたスクレーパ(屑掻き取り板)により掻き取られ、
排出案内部材に従い落下した後、落下地点に配設したベルトコンベアにより印刷機外に排出されるから、スロッタ屑が排出されず山盛りになることはなく、トラブルの原因となることもない。
(二) 原告印刷機「マークV」においても、原告印刷機「ミュー」と同じスロッタ屑排出構造を採用していたが、屑は山盛りにならず、トラブルの原因となったことはない。
(三) したがって、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「NO1スロッタのくずがねじ軸が引っ掛かりやすく、大きなロットを通した時に、スロッタかすが排出されず山盛りになりスロッタ下刃に巻き付きトラブルの原因となる。」との記載は虚偽である。
〔被告の主張〕 (一) 印刷機のスロッタユニットで発生するスロッタ屑は、相当大きなものが多く、ねじ軸が多いと、隣り合う軸との間隔が狭くなり、また、引っかかる場所も多くなるため、スロッタ屑が容易にねじ軸をまたいで引っかかり、これが多くなればなるほど、下に落下せずに軸上に積み重なるスロッタ屑の量が急増する。
(二) ねじ軸の本数は、被告印刷機においては一本であるのに対し、原告印刷機においては四本であるから、この機構自体から、原告印刷機の方がスロッタ屑が溜まりやすいことが導かれる。
(三) スロッタ屑は、一枚のダンボールシートに八個所の切り込みを入れる際に発生するものであり、紙粉等とは異なり、かなりの長さ、幅を有するものが排出される。通常の作業では、一オーダー当たり最低一〇〇枚以上、一日当たり平均二万枚程度のシートを加工するから、一オーダー当たり八〇〇個、一日平均では一六万個程度のスロッタ屑が排出される。そのため、スロッタ屑が複数のネジ軸にまたがって落下せずトラブルの原因となることは、明らかであり、実際、ユーザーからの苦情が出た経験もある。
(四) したがって、本件対比表の右記載部分は虚偽ではない。
二 争点2(被告は、本件対比表の内容を告知又は流布したか否か。) 〔原告の主張〕 被告の営業社員は、原告の顧客に対し、本件対比表を交付し、その内容を告知し又は流布した。
〔被告の主張〕 被告は、営業社員の理解を確かなものとするための社内資料として本件対比表を作成したものであり、一般的に顧客に配付するために作成したものではない。
被告の営業社員は、本件対比表を社外に持ち出さないよう指導を受けており、せいぜい顧客に対し本件対比表を示しながら説明したにすぎず、顧客の手元に存在したとされる本件対比表一通(甲二四)が判明している以外、配付したこともないから、被告は、告知ないし流布行為を行ってはいない。
三 争点3(被告の次の行為が、不正競争防止法2条1項13号の原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知又は流布、あるいは、実用新案法29条の3第1項の権利の行使又はその警告に当たるか。) 1 本件広告@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信について 〔原告の主張〕 本件広告@、Aには、「複数の専門家からは『実用新案の技術評価書に引用された公知技術は、実用新案の構成とはまるで違うものなので、実用新案権は有効である。』という意見を受け取っている。」旨の記載があるが、被告はこれを自己の意見として表明している上、右専門家の意見の内容は「技術評価書は客観的な妥当性を欠く」というものであり、右記載は、被告が自己の都合のいいように鑑定書を解釈してなしたものである。
また、本件実用新案権は無効と確定したから、専門家の意見は間違いであったのであり、間違った鑑定書を利用した本件広告@、Aは、結果的に虚偽の記載になる。
さらに、右専門家の意見の記載に加え、被告が原告に対し実用新案権侵害で訴訟提起したこと、知的財産権は尊重しなくてはならないことを記載することにより、専門家という隠れ蓑を利用して原告が他社の知的財産権を尊重していないと公言している。
したがって、被告による本件広告@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信の各行為は、いずれも、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知ないし流布、及び、本件実用新案権の行使に該当する。
〔被告の主張〕 本件広告@、Aには、何ら客観的な事実に反する虚偽の事実は含まれておらず、また、原告が被告の実用新案権を侵害していることを敢えて示唆するような文章も含まれていない。かえって、原告の主張をも取り上げ、技術評価書の内容にも触れるなど、公正さが失われないように配慮しており、しかも最終的な被告の希望も、訴訟を提起するに至った被告の立場に対する理解を求めるというものであり、本件広告@、Aの内容は、本件実用新案権の有効無効にかかわらず、同権利の行使に該当するようなものとは到底いえないし、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実にも該当しない。
なお、本件広告Aのファックス送信は、送付先の会社からの要請に基づいて、被告の社員が行ったものであり、告知ないし流布行為には該当しない。
2 本件記事@、A、本件広告Bの掲載について 〔原告の主張〕 (一) 本件記事@、Aは、新聞発行者が被告に取材した内容であるとしても、右取材の際に、被告が虚偽の事実を告知し流布したことに起因するものであるから、本件記事@、Aの掲載についても被告による虚偽の事実の流布行為となる。
(二) 本件広告Bには、「特許庁により被告の立場が支持されたので、裁判所でも本件実用新案は有効との建前で審理がされる」とあり、続いて、「……権利が有効である以上は必ずやプリンタスロッタ・プラムμの製造販売行為は本件実用新案権を侵害する旨、裁判所により判決されるものと確信している」と記載され、
本件記事@、Aと本件広告Bの右記載部分を併せ読むと、読者は、原告の本件実用新案権の侵害行為は間違いないものと理解するから、被告による本件記事@、A、
本件広告Bの掲載は、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知ないし流布、
及び、本件実用新案権の行使に該当する。
被告は、本件侵害訴訟における原告の対応と本件無効審判の結果とから、本件侵害訴訟において勝訴を確信すると考えるのは合理的であり、このような見解を表明したとしても虚偽の事実にはならない旨主張するが、原告は、本件侵害訴訟において、本件実用新案権の無効を主張し、仮に有効であるとしても、本件実用新案権はインキの重点的供給を可能にするものに限定され、原告印刷機はインキの重点的供給ができないから侵害とはならないと主張していたのであるから、本件広告Bの内容が虚偽であることに変わりはない。
〔被告の主張〕 (一) 本件記事@、Aは、被告が掲載した記事ではなく、発行者の独自の取材に基づく新聞記事であり、その内容は、原被告間の訴訟の経緯を事実として記載し、円満な解決を望む声が強いことを紹介しているにとどまり、被告の同事件についての見解が述べられているわけでもない。
(二) 本件広告Bのうち、本件無効審判において原告の請求が退けられたこと、今後侵害訴訟において同権利が有効との建前で審理がなされるとの記載部分は、客観的事実を記載したものである。
また、本件侵害訴訟において勝訴を確信しているなどの記載部分は、原告が、本件侵害訴訟において、原告印刷機が本件考案の実用新案登録請求の範囲を分説した構成要件を全部充足することについては争わず、ただ、公知技術等を勘案して、明細書には記載されていない別個の構成要件を付加すべきであり、この明細書に記載されていない構成要件を原告印刷機は充足しないと主張していたものであるから、右原告の対応と本件無効審判の結果をもとに、被告が、本件侵害訴訟において勝訴を確信していると考えるのは合理的であり、このような見解を当時抱いていたことを事実として記載したとしても、それが虚偽とはならない。
四 争点4(被告は、原告の取引先に対し、口頭で、不正競争防止法2条1項13号の原告の営業上の信用を害する虚偽の事実、あるいは、実用新案法29条の3第1項の権利の行使に該当する内容を述べたか否か。) 〔原告の主張〕 被告は、平成八年七月ころ、原告の取引先である株式会社大村紙工の社長に対し、以下の内容を流布した。
1 裁判していて、すぐに梅谷の機械は製造できなくなる。梅谷の機械を買ったら、お客さんに迷惑がかかる。
2 三年したら梅谷の機械はガタガタになる。
3 平成八年一〇月に特許がおりるので、梅谷は機械を作ることはできない。
〔被告の主張〕 原告の主張事実は否認する。
五 争点5(被告の本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載ないしファックス送信、本件警告、本件侵害訴訟の提起、本件仮処分の申立て、口頭での告知行為につき、過失があったか否か、及び、実用新案法29条の3第1項ただし書の相当の注意を払ったか否か。) 〔原告の主張〕 本件評価書@、Aによる評価は、いずれも「2」(この請求項に係る考案は、右欄の刊行物の記載からみて、進歩性を欠如するものと判断されるおそれがある。)であったから、本件実用新案権は無効になるおそれがあるものと十分に認識すべきであったにもかかわらず、被告は、本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載ないしファックス送信、本件警告、本件侵害訴訟の提起、本件仮処分の申立て、口頭での告知行為をしたものであり、この点で過失が認められる。
〔被告の主張〕 1 本件考案は、被告が、長期にわたり多大な費用と時間をかけた末、開発に成功したものであり、その実施品は直ちに実用性が評価されて商業的成功を収めたものである。
2 被告は、本件考案と同様の内容の発明について、平成五年一一月三〇日に米国特許を得ているし、平成三年一一月から一二月にかけて、及び、平成六年一月から二月にかけての二度にわたり先行技術の調査を行い、得られた数十件の先行技術に関する各刊行物を弁理士に見せて検討を依頼したところ、出願しようとしている考案の有効性について疑いを抱かせるような技術は見当たらないとの回答を得ている。
3 被告は、平成六年三月一八日、原特許から本件考案に係る部分を分割特許出願し、それを本件実用新案登録に出願変更したが、その後、本件考案の評価を「2」とする本件評価書@を受領したことから、弁理士二名に対し本件評価書@の評価の妥当性と本件考案の再評価についての鑑定を依頼したところ、本件評価書@の評価は妥当でないこと、調査した範囲において本件考案が無効と判断されるおそれは特に認められないとの意見を得た。
4 本件無効審判において原告の請求は成り立たないとの審決がなされており、その後、本件審決取消訴訟において同審決が取り消されたが、右判決は、本件評価書@、Aに引用されていない文献をもとに本件考案は進歩性がないとしたものであり、それを予測することは困難であった。
5 原特許は、本件考案と発明の構成こそ異なるものの、発明の課題、作用効果などについては、ほぼ同様の事項が記載されているところ、東京高等裁判所は、
原特許を無効とする旨の審決(平成九年審判第一二二七八号)を取り消す旨の判決をしており、このことからも、本件実用新案権が将来無効とされることを予測することは不可能であったといえる。
6 以上によれば、被告は、本件実用新案権の権利の行使及び本件警告については、相当の注意をもってしたものであり、実用新案法29条の3第1項ただし書により、その他の本件実用新案権の有効性を前提とした行為についても過失がなく、損害賠償ないし謝罪広告の掲載の責任を負わない。
六 争点6(原告の損害の額及び因果関係の存否) 〔原告の主張〕 1 主位的主張 被告の本件対比表の配布、本件広告@ないしB、本件記事@、Aの掲載ないしファックス送信、本件侵害訴訟の提起、本件仮処分の申立て、口頭での告知行為によって、原告が被った損害は左記(一)ないし(五)のとおりであり、原告は、被告に対し、左記(一)ないし(五)の合計七〇七一万三五八五円及び左記(一)ないし(四)の合計六一一一万三五八五円に対する訴状送達の日の翌日である平成一〇年六月三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を請求する。
(一) 契約不成立による得べかりし利益の損害(一八〇〇万円) 原告は、平成七年一〇月ころから、塩田段ボール(香川県)、東海ケース(大阪府枚方市)及び株式会社セーカン(石川県)との間で原告印刷機の販売交渉をしていたが、右三社は、同時期に販売交渉をしていた被告の前記各行為により、原告印刷機に対する不安が募り、その売買契約の成立には至らず、かえって、
被告との間で売買契約を締結した。
原告は、右三社との間の契約で、少なくとも一社当たり六〇〇万円、三社で一八〇〇万円の利益を得ることができた。
(二) 新聞広告費用(三六万〇五〇〇円) 原告は、平成七年一一月一五日付け及び平成八年二月二八日付け板紙段ボール新聞の紙上で、被告の前記各行為に対し、その誤解を解くための広告をしたが、その費用として合計三六万〇五〇〇円を要した。
(三) 弁護士・弁理士費用(二〇五八万四九四六円) 原告は、弁理士・弁護士費用として、本件無効審判につき八九万四七九七円、本件審決取消訴訟につき八一五万四〇〇〇円、本件侵害訴訟における本件実用新案権に基づく請求に関する費用部分として六九〇万一一四九円、本件仮処分につき四六三万五〇〇〇円をそれぞれ要した。
(四) 装置取替え費用(二二一六万八一三九円) 原告は、被告の前記各行為に伴うユーザーの不安を払拭するため、それまで納入していた原告印刷機に配備していた「チュービングポンプを用いたインキの供給・回収装置」七八台分を「コンプレッサーによる圧縮空気流を利用した密閉ボックス式のインキ供給・回収装置」に無償で取り替えたが、そのために二二一六万八一三九円を要した。
(五) 本件訴訟の弁護士・弁理士への依頼による費用(九六〇万円) 原告は、本件訴訟の提起、遂行を弁護士、弁理士に依頼したが、その費用としては、九六〇万円が相当である。
2 予備的主張 被告の前記各行為により、原告がこれまで業界において営々と築き上げてきた営業上の信用、名誉を傷つけられ、無形の損害を受けたものであるところ、その損害は一八〇〇万円を下らない。
〔被告の主張〕 1 原告の主張1については争う。なお、同1の(一)、(二)及び(四)に対して次のとおり反論する。
(一) 同1(一)記載の原告印刷機が販売できなかったことと、被告担当者の発言や提訴、新聞広告、本件対比表の記載との間には因果関係はない。
(二) 同1(二)記載の原告の新聞広告等の行為は、別件特許権(片面段ボールの製造装置における中芯保持装置)に基づく原告の段ロール製造行為に対する損害賠償をもその根拠としていたものであるから、仮に本件実用新案権に基づく請求ないし広告の掲載がなかったとしても、原告としては必要な支出であったはずである。
前記第二、一、5の(九)記載のとおり、別件特許権に基づく特許権侵害行為差止等の請求訴訟(名古屋地方裁判所平成七年(ワ)第四二九〇号)における判決で、特許権侵害が認められているから、原告がこの請求に関してとった前記措置は、被告の適法な行為に対するものであったことになる。
(三) 同1(四)記載の原告が一部装置を取り替えたと主張する印刷機については、前記判決で認定されたように、別件特許権を侵害するものであったから、原告はいずれにしても取り替える必要が存在したものである。
2 原告の主張2については争う。
争点に対する判断
一 争点1(本件対比表の内容が虚偽か否か。)について 1 項目「ゴムロールの絞り調整はできるか?」における記載について (一) 検甲一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機は、空気圧を利用してエアシリンダによりゴムロールをインキ転移ロールに一定の力で押し付けているものであり、空気圧調整つまみの操作によりゴムロールの押し付け力を調整する。
本件対比表作成当時、右空気圧調整つまみ及び空気圧の表示器は、印刷機の内側で床面から約二メートルの高さに設けられていたが、現在は、印刷機の外側で以前より若干低い位置に設けられている。
(2) 被告印刷機は、ゴムロールを偏心ハウジングにより支え、位置決めコンピュータによりゴムロールの位置を移動して、インキ転移ロールの間隔を広狭にできるような機構とし、絞り調整ボタンを操作することにより位置決めコンピュータを作動させる。
また、右絞り調整ボタン及び絞り圧を表示する表示器は、段ボール印刷機の外側に設けられた操作盤に取り付けられ、床面から一・四メートルの高さに設けられている。
(二) そうすると、絞り調整ボタンの操作により、ゴムロールとインキ転移ロールとの間の間隔を、位置決めコンピュータにより広狭にできる被告印刷機の方式の方が、空気圧調整つまみの操作により、ゴムロールをインキ転移ロールに押し付ける力を調整する原告印刷機の方式よりも、より微妙な調整が可能であることが推認できる。
また、右操作に必要な絞り調整ボタンないし空気圧調整つまみの設置位置からすれば、被告印刷機は、印刷作業中においても右調整を行うことが可能であるのに対し、原告印刷機は、本件対比表作成当時のものは印刷作業中に印刷状態及び空気圧の表示器を見ながら調整を行うことは困難である。
以上によれば、同項目における「ミュー」の欄の「調整不可」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「微妙な絞り調整はできない。」との記載部分は虚偽とはいえない。
2 項目「洗浄中に印版交換できるか?」における記載について (一) 検甲一、甲四三、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機は、通紙完了時に、インキ転移ロール(アニロックスロール)と版胴との間隔は、自動的に印版の厚さに一・五ミリメートルを加えた間隔となるように設計されているから、印版とインキ転移ロールとの間隔は一・五ミリメートルとなり、印版が厚さ約〇・二ミリメートルのフィルム上に設置されていることを考慮に入れれば、右間隔は一・三ミリメートルとなる。
(2) 被告印刷機は、通紙完了時に、インキ転移ロールと版胴との間隔は約一〇ないし一五ミリメートルに離間するように設計されている。
(二) そうすると、右インキ転移ロールと印版との間隔からすれば、被告印刷機との比較において、原告印刷機の方が、インキ転移ロールが回転している時に印版交換をすると印版がインキ転移ロールに接触して傷がつく可能性が高いことが推認できる。
もっとも、検甲一では、原告印刷機のインキ転移ロール回転時に印版交換をしている状況が撮影されており、印版を傷つけないように注意して交換することは可能であることが認められる。
しかし、本件対比表の記載は、「洗浄時にアニロックスロールが回転していると印版がこすれる可能性があり印版がはずせない。」というもので、全体として見ればその理由を明確に示した上で「印版がはずせない。」と記載されているから、本件対比表を見た需要者が右記載を見た場合、「印版がはずせない。」とする趣旨が、物理的に印版を取り外すことが不可能であるという意味ではなく、原告印刷機の洗浄時におけるインキ転移ロールと印版との間隔が狭いことから、インキ転移ロールが回転している際に印版を交換すると印版がこすれる可能性があることによるものであることを十分理解できるし、検甲一に示されるように注意して交換すれば不可能でないことも理解可能であるというべきであるから、同項目における「ミュー」の欄の「できない」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「従って洗浄時にアニロックスロールが回転していると印版がこすれる可能性があり印版がはずせない。」との記載部分は、営業上の信用を害する虚偽の事実に該当しないというべきである。
なお、原告は、受注契約時に印版の厚みに応じて印版とインキ転移ロールの間隔を定めるものの、後にプログラムを変更することで右間隔を変更することが可能であると主張するが、仮にそうであるとしても、そうした変更を実施する以前の原告印刷機の機構に関する記述として右記載部分が虚偽といえないことに変わりはない。
3 項目「洗浄は自動か?」における記載について (一)(1) 原告印刷機においては、「インキ回収」、「洗浄液吐出」、「スクレーパ」の各スイッチが別になっており、オペレータが状況を見ながら各スイッチを操作すること、洗浄作業が全自動でないことについて、当事者間に争いはない。
(2) 検乙一及び弁論の全趣旨によれば、被告印刷機においては、「自動洗浄」のボタンを押せば、回収、インキかき取り、ロール洗浄までが、すべてコンピュータのプログラムに沿って全自動で行われることが認められる。
(二) そうすると、被告印刷機との比較において、原告印刷機は、洗浄の際に作業者が「インキ回収」、「洗浄液吐出」、「スクレーパ」の各段階でボタン操作しなくてはならず、洗浄作業に注意を払っていなければならないため、その意味で「洗浄時はオペレータが付きっきりとなる。」と記載したとしても、それが虚偽であるとまでいうことはできないし、また、被告印刷機における全自動の洗浄作業との比較において、原告印刷機における半自動の洗浄作業の方が効率が低いことが推認できるから、同項目における「ミュー」の欄の被告印刷機の欠点を記載する趣旨の「半自動」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「洗浄時はオペレータが付きっきりとなる。」との記載は虚偽とはいえない。
4 項目「セット替え時間」における記載について (一) 同項目における「ミューの機構は?」の欄の「洗浄中に印版交換ができない。」「洗浄時はオペレーターが付きっきり」との記載部分は、本件対比表における「洗浄中に印版交換できるか?」「洗浄は自動か?」の各欄の記載を引用したものであるから、前記2、3で述べたとおり、営業上の信用を害する虚偽の事実に該当しないというべきである。
(二) また、右事実関係を前提とすれば、同項目における「ミュー」の欄の「遅い」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「セット替え遅い」との記載部分も虚偽の事実とはいえない。
5 項目「インキの粘度変化は?」における記載について (一) 検甲一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機は、インキ貯留部を形成するインキ転移ロールと絞りロールの略全幅にわたり、インキ貯留部の上方に、一定間隔で直径〇・五ミリメートルの微孔が多数設けられているパイプを設置し、同パイプを水タンクに連結し空気圧で同パイプから水が噴霧されるようになっている。
水分補給スイッチボタンを一回押すと、同パイプから二秒間水が噴霧され、一回の噴霧でインキ貯留部全体にわたり五〇ミリリットルの水分が補給される。
(2) 被告印刷機は、インキ貯留部全体を筐体で覆い、筐体内が多湿状態に保たれ、インキ貯留部から水分がほとんど蒸発しない構成となっており、さらに、
同筐体内の空気中に霧状の水分を時々噴霧して多湿状態を保つようになっている。
(二) 原告印刷機のインキ粘度調整機構は、インキの粘度変化が印刷の色が変化する程度のものであることまでを認めるに足りる証拠はないものの、乙三一添付資料2(大阪印刷インキ製造株式会社常務取締役【H】作成の報告書)によれば、被告印刷機のように、インキ機構全体をカバーで覆って加湿器により内の空間を加湿する装置を備えたインキ機構では、インキがカバー内の湿気を徐々に吸収していくため、インキの粘度変化がゆるやかで小さく、インキに直接水分を補給する方法に比べて粘度変化の振れが小さくなる特徴があることが認められ、両者の比較においては、原告印刷機の方が、インキの粘度変化がより急激に起こることが認められる。
なお、原告は、原告印刷機では、随時インキを自動的に追加補給するので、インキの粘度変化が生じ難く、水分補給をしないユーザーも多く、むしろ、印刷終了後の残留インキをインキタンクに回収して、次の同じ色の印刷を行う場合や季節による温度・湿度差等からインキの粘度が多少変化している場合に備えて、水分補給装置を設けていると主張するが、原告印刷機において、どのような場合であれ水分補給した際には、被告印刷機におけるインキ機構と比べて、急激な粘度変化が起こることには変わりはない。
そうすると、同項目における「ミュー」の欄の「変化しやすい」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「極端に粘度が変化する。」との記載は虚偽とはいえない。
なお、原告は、被告印刷機は、カバーを必要とすること、および、内部の湿気による錆の発生、防錆構造の採用のためコストアップに連なる欠点がある旨主張するところ、特許番号第二八七九一二六号の特許公報(甲四一)中に、被告印刷機を念頭に置いたと考えられる近時のフレキソ印刷方式の欠点として右と同旨の記載があることが認められるが、仮に被告印刷機に右のような欠点があったとしても、インキの粘度変化に関する前記記載が虚偽といえないことに変わりはない。
6 項目「インキの使用量は?」における記載について (一) 甲四〇、乙三〇によれば、原告印刷機における色替え前の一回のインキ使用量は約五〇ミリリットルであることが認められる。
一方、被告印刷機についてインキ使用量を示す証拠はないが、乙三一によれば、被告は、被告印刷機の開発に当たり、インキの粘度変化が生じにくい印刷機構に適合した新しいインキを大阪印刷インキ製造株式会社と共同開発し、原告印刷機が使用している従来のインキと比較して、被告印刷機に使用されるインキは粘度が安定していることが認められる。
(二) 被告印刷機との比較において、原告印刷機のインキの粘度調整の機構はインキの粘度変化が大きいことは前記のとおりであり、そうすると、被告が主張するように、原告印刷機においては、インキの貯留量を多くして水分の蒸発率を低くする必要があり、インキ貯留量が増えればインキの交換の際にインキを捨てる量が多くなることも推認できる。
なお、原告は、原告印刷機においては、インキの粘度が上がらない程度の必要最小限度の適量だけをロール間に溜める機構になっており、インキの回収も十分に行われているから廃棄されるインキの量は少ない旨主張するが、原告印刷機の右機能により、被告印刷機と比較してもインキの使用量が多くはないことまでを認めるに足りる証拠はない。
そうすると、同項目における「ミュー」の欄の「多い」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「インクの粘度が上がりやすい」「ロール間のインクの溜め量を多くする必要がある」「回収が不十分」「インクの捨てる量が多い」との記載は虚偽とはいえない。
7 項目「アニロックスロールの駆動ギヤの幅」における記載について (一)(1) 甲四二の1、2、四五、四六、検甲一、乙三二、検乙一によれば、
原告印刷機のインキ転移ロールの駆動ギヤの幅は、印刷機の仕様により、三〇ミリメートル、三五ミリメートル、四〇ミリメートルであることが認められる。
なお、被告は、本件対比表を作成した平成六年四月当時の調査対象印刷機については幅一五ミリメートルであったと主張し、同主張に沿う証拠として被告技術本部長【G】作成の報告書(乙一〇)を提出するが、同報告書の内容は、
【G】が愛知県の某段ボール工場で稼働している原告印刷機を目視したところ、インキ転移ロールの駆動ギヤの幅が約一五ミリメートルであったというものであって、具体性、客観性に乏しく、右報告書によっては前記認定を覆すには足りない。
(2) 検乙一、弁論の全趣旨によれば、被告印刷機のインキ転移ロールの駆動ギヤの幅は五五ミリメートルであることが認められる。
(二) そうすると、被告印刷機との比較において、原告印刷機の方が同駆動ギヤの幅が狭いとしても、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「ギヤ幅は約一五oしかない。(長時間の使用で破損の恐れあり)」との記載は営業上の信用を害する虚偽の事実であるというべきである。
8 項目「生産管理装置について」における記載について (一)(1) 検甲一、乙一二の1、2、一三の1ないし4、検乙一、弁論の全趣旨によれば、本件対比表作成時の原告印刷機の生産管理装置のコンピュータには、
通常よく使用する段ボール形状のパターンが入力されているが、それ以外のC式(開口部を有する二個の箱であって、両箱の関係が、一方は本体箱となり、他方が本体箱を覆う蓋箱となる菓子箱のような形式の箱のこと)、素通し(印刷ユニットで印刷工程を経るものの、罫線ユニット、スロッタユニットの部分は素通しする印刷のみの工程)等の工程においては、オペレータが簡単な加減算をした上でその数値を入力する必要があること、生産管理装置のコンピュータ画面の手前部分に、幅六六センチメートル、奥行き一六センチメートルのテーブル部分があることが認められる。
なお、甲四〇、弁論の全趣旨によれば、原告印刷機は、本件対比表の作成時以降に仕様が変更になり、機械に配備されたコンピュータ処理により作業員が手で計算することはなくなったことが認められる。
(2) 検乙一、弁論の全趣旨によれば、被告印刷機は、通常の段ボール形状のパターンだけでなく、C式、素通しについてもシートの形状が表示され、簡単な入力で設定ができること、生産管理装置のコンピュータ画面の手前部分に、幅六一センチメートル、奥行き四〇センチメートルのテーブル部分があることが認められる。
(二) そうすると、少なくとも本件対比表の作成時においては、被告印刷機との比較において、原告印刷機は、C式、素通しの工程設定に関し、手計算が必要となる点で使いにくいということがいえる。
また、生産管理装置のテーブル部分については、前記のとおり、被告印刷機との比較において、原告印刷機のテーブル面の奥行きが一六センチメートルと狭いことから、書類を置くための十分な広さが確保されているとはいえないというべきである。
したがって、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「C式、素通しについては各ホルダーの位置をオペレータが手で計算し、それをテレビ画面に入力する必要がある為セットにかなり時間がかかる。」「テーブル面に操作スイッチがある為書類が置けない。」との記載が虚偽であるということはできない。
なお、原告は、原告印刷機の生産管理装置が改良され設定入力がより簡便になった後にも、被告は本件対比表を配布していると主張するが、後記二記載のとおり、本件対比表は平成六年四月ころに本件対比表が作成されて平成七年六月ころに配布されたものであり、右一年二か月程度の間に原告印刷機が改良されたとしても、そのことをもって、本件対比表において従前の原告印刷機の機能について記載した部分が虚偽と評価されるものではない。
9 項目「ユニットの開閉について」における記載について (一) 検甲一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機は、給紙ユニットに開閉スイッチが設けられ、操作者は、
同位置から開閉操作を行うため、開閉時にユニット間に作業者がいないことを自分の目で確認することができない。
なお、原告印刷機には、各ユニット別に安全スイッチ等の安全装置が設けられ、ユニット間に出入りする作業員の操作により、給紙ユニットの操作部からの開閉操作を制限するようになっている。
(2) 被告印刷機は、各ユニットごとに開閉装置を設け、ユニットの開閉の際には、オペレータが開閉するユニットの側面に立って開閉部分を目で確認しながら操作することができるようになっている。
(二) そうすると、被告印刷機との比較において、原告印刷機においては、
開閉操作を行う作業者がユニット間に人がいないかどうかを目視により確認することが困難であり、段ボール工場において印刷機のユニット開閉動作が危険な作業の一つと認識されていること(乙三一)を考慮すると、同項目における「ミュー」の欄の「危険」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「人が挾まれる可能性がある。」との記載は、被告印刷機との対比において、虚偽とはいえない。
なお、原告は、原告印刷機について、@ユニットの開閉動作中は警告音が鳴り続けること、A各ユニット別に安全スイッチが設けられ、ユニット間に出入りする作業者の操作により、警告音が鳴ると同時に、給紙ユニットの操作部からの開閉操作を制限するようになっていること、B原告は「作業等でユニット間に入る時は必ず安全スイッチを押すこと」を注意事項として作業者に説明しており、取扱説明書にもその旨の注意事項を記載していること、Cユニット間で使用する工具等が所定の場所に戻っていない場合にはセンサーによって作業者がユニット間にいると判断され、ユニットは閉動作できないように制御していること、を理由として安全性が確保されていると主張する。しかし、本件対比表の記載内容からすれば、ユニット開閉操作をする作業者の側からユニット間に人がいないかどうかを視認できるか否かという観点から安全性を記載しているのであり、そうした観点からの安全性の記載として右記載内容が虚偽とはいえないことに変わりはない。
10 項目「スロッタ部NO2ヨークについて」における記載について (一) 検甲一、乙三一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機のうちシングルスロッタ仕様のものは、スロッタ部NO2ヨークは、固定された軸受け(センターブラケット)を超えて駆動側へ移動することができないから、一定以上の長さの段ボールに切り込みを入れる場合には、特別の作業が必要である(なお、スロッタとは、段ボール紙に切り込みを入れる装置であり、スロッタ機構が一つのものをシングルスロッタ、二つ備えたものをダブルスロッタという。)。
また、ダブルスロッタ仕様のものは、スロッタ部NO2ヨークが、操作側から駆動側への動きに制限がないものと、シングルスロッタ仕様のもののように、その動きに制限があるものとが存在し、ユーザーは購入時に選択することができる。
(2) 被告印刷機のNO2ヨークは、軸に沿って、操作側から駆動側への移動に制限がなく、幅の長い段ボールに切り込みを入れる場合にも、ヨークを移動し、刃物の位置を変えて切り込みを入れることが容易にできる。
(二) そうすると、原告印刷機は、シングルスロッタ仕様のもの及びダブルスロッタ仕様のものの一部につき、スロッタ部NO2ヨークは、固定された軸受け(センターブラケット)を超えて駆動側へ移動することができない構造になっているから、同項目における「ミュー」の欄の「駆動側へは動かない」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「NO2ヨークとNO3ヨークの間に受けがある為、NO2ヨークは駆動側へは動かない。」「長さ面の長い2ピースはすみ切り台をNO2ヨークにつける必要あり」等の記載は虚偽とはいえない。
なお、原告は、ダブルスロッタ仕様の印刷機が標準仕様であり、オプションではないこと、ユーザーとの受注、契約の打合せの際に、NO2ヨークを駆動側へ制限なく動けるようにするか否か等について詳細に打ち合わせることによれば、NO2ヨークの動きそのものが、利点とか欠点になるものではない旨主張するが、シングルスロッタ仕様のもの、及びダブルスロッタ仕様のものの一部についてヨークの移動が制限されている印刷機が存在するのであるから、ダブルスロッタ仕様の一部の機種に移動が制限されないものが存在するからといって、前記対比表の記載が虚偽であるとすることはできない。
11 項目「給紙部の紙粉の処理について」における記載について (一) 検甲一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機 原告印刷機は、給紙テーブルの下方に設けた吸引ファンで段ボールシートの紙粉を吸引し、吸引口に設けられた網に紙粉を貯める構成となっている。
(2) 被告印刷機 被告印刷機は、給紙ユニットに紙粉の吸引孔を設け、吸引ダクトを介して吸引(サクション)ファンにより紙粉を吸引し、サクションファンの排気口に設けたダストバッグに紙粉を貯める構成となっている。
(二) そうすると、被告印刷機ではダストバッグで紙粉を捕集するから細かい紙粉も捕集できるのに対し、原告印刷機では網で紙粉を捕集するから、細かい紙粉については捕集できずに印刷機の下方に向けて吹き出されることが推認される。
本件対比表において、被告印刷機の欄に「サクションファンの出口にダストバッグがついており、細かい紙粉でも溜まる。」と細かい紙粉についての記載があり、原告印刷機の欄はそれに対比する形で記載されているから、その内容も紙粉のうち細かいものについての処理能力に関するものであると理解されるから、同項目における「ミュー」の欄の「飛び散る」との記載、「ミューの機構は?」の欄の「ファンから出た紙粉はフロアにそのまま吹きつけられる。(シートに紙粉もつきやすい)」との記載は虚偽とはいえない。
なお、原告は、シートの上側からも吸引装置で紙粉を吸引する機種もある旨主張するが、原告印刷機の一部の仕様のものに右主張の機構を有するものがあったとしても、本件対比表記載の右内容が虚偽であることになるものではない。
12 項目「Wスロッタユニットの下ヨークのねじ軸について」における記載について (一) 検甲一、検乙一、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告印刷機 原告印刷機は、本件対比表作成当時のダブルスロッタ仕様のものでは、スロッタユニットの下ヨークのねじ軸が四本設置されている。
(2) 被告印刷機 被告印刷機は、ダブルスロッタ仕様のものでも、スロッタユニットの下ヨークにねじ軸が一本設置されている。
(3) スロッタ屑について 段ボールシート用印刷機では、スロッタユニットにおける段ボールシートへ切り込みを入れる作業で、段ボールから切り取られたスロッタ屑がユニット下部に落下するが、一日の印刷作業ではその量も大量になるところ、これらのスロッタ屑は、落下途中でヨークねじ軸に引っかかることがある。
(二) 本件対比表の記載 そうすると、被告印刷機との比較において、原告印刷機はねじ軸の本数が多く、スロッタ屑がねじ軸に引っかかりやすいことが推認され、多数の段ボールを連続的に印刷した場合には、スロッタ屑が積み重なり、トラブルを招く可能性が皆無とはいえないというべきであるから、同項目における「ミューの機構は?」の欄の「NO1スロッタのくずがねじ軸が引っ掛かりやすく、大きなロットを通した時に、スロッタかすが排出されず山盛りになりスロッタ下刃に巻き付きトラブルの原因となる。」との記載は虚偽とはいえず、その他、右記載が虚偽であることを裏付ける的確な証拠はない。
なお、原告は、刃物受けロールのヨークに設けたスクレーパ(屑掻き取り板)により屑を掻き取り、屑は排出案内部材に従い落下した後、落下地点に配設したベルトコンベアにより印刷機外に排出するから、スロッタ屑が排出されず山盛りになることはない旨主張し、検甲一、弁論の全趣旨によれば、原告印刷機においてそうした機構を備えていることが認められる。しかし、たとえ原告印刷機に右機構が備えられているとしても、スロッタ屑がベルトコンベア上に至る過程において、ねじ軸の本数が多いことに伴いスロッタ屑が引っかかる可能性が高いことに変わりはなく、本件対比表の右記載が虚偽とはいえないことに変わりはない。
13 以上によれば、本件対比表の各記載のうち、項目「アニロックスロールの駆動ギヤの幅」における「ミューの機構は?」の欄の「ギヤ幅は約一五oしかない。(長時間の使用で破損の恐れあり)」との記載部分については、営業上の信用を害する虚偽の事実であると認められるが、その余の記載部分は虚偽とはいえない。
二 争点2(被告は、本件対比表の内容を告知又は流布したか。)について 甲二四、四四、乙七、一一、二九、三四によれば、被告の技術本部長【G】は、平成六年四月ころ、営業本部からの依頼を受けて本件対比表を作成して、これを営業社員に配布し、平成七年六月ころ、右営業社員は、原告印刷機の購入を検討していた株式会社塩田段ボール、株式会社セーカンほか数社に対し、本件対比表を提示ないし交付し、これをもとに説明するなどして営業活動を行ったことが認められ、これによれば、被告は、本件対比表の内容を告知ないし流布したものというべきである。
なお、被告は、社内資料として本件対比表を作成し、社員に対して本件対比表を社外に持ち出さないように指導しており、せいぜい営業社員が顧客に対し本件対比表を示しながら説明したにすぎない旨主張するが、前記のとおり被告の営業社員が原告の顧客数社に対し本件対比表を提示ないし交付して説明を行っている以上、たとえ本件対比表が社内資料として作成されたものであっても、それを社外に持ち出さないような指導が徹底されていなかったというほかはなく、結局、被告により本件対比表の内容が告知ないし流布されたものというべきことに変わりはない。
三 争点3(虚偽事実の告知、流布、又は実用新案法29条の3第1項の権利行使、警告の該当性)について 1 本件広告@、Aの掲載、本件広告Aのファックス送信について 本件広告@、Aは、被告が原告に対して本件実用新案権及び別件特許権の侵害を理由として差止め及び損害賠償を求める訴訟を提起したこと、原告印刷機には本件考案とまったく同じ機構が装備されていること、原告は別件特許を用いた片面段ボール製造装置に搭載することを目的とした段ロールを製造、販売していること、被告は右訴訟に至るまでの間円満解決に向けて努力したが、原告は本件実用新案権は無効であり別件特許権の侵害についても争う立場を堅持したため、解決には至らなかったこと、被告は複数の専門家の検討結果として技術評価書の否定的評価及び本件実用新案権が有効であるとの意見を得ていること、原告が本件無効審判を請求したこと、被告は請求理由から依然として被告は権利が無効とされることがないことを確信していることなどを記載した上、同業者間において他社の知的財産権を尊重して公正な競争秩序を確立することを願っていることなどと述べているものである。
右のうち、本件実用新案権の有効無効に係る記載部分については、複数の専門家の意見を得ている旨の記載があるものの、被告は権利が無効とされることがないことを確信している旨の記載と併せて、本件実用新案権が有効であるとの事実を述べたのと等しく、右記載に接した原告の取引先の業者の側でもそのように受け取るものと見るのが相当である。そうすると、本件実用新案権は、前記第二、一の5記載のとおり、本件実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定し、無効となったのであるから、右記載部分については虚偽の事実であるというべきである。しかし、その余の記載部分は虚偽であるとは認められない(本件実用新案権が有効であれば、原告印刷機の構成が本件考案の技術的範囲に属することは後記五の4記載のとおりであるし、被告の原告に対する別件特許権の侵害を理由とする訴訟の一審判決で右侵害の事実が認められたことは、前記第二、一、5の(九)記載のとおりである。)。
なお、被告は、本件記事Aのファックス送信は、送付先の会社からの要請に基づいて、被告の社員が行ったものであり、告知、流布にも該当しない旨主張するが、たとえ被告の主張のとおり、送付先の会社から要請があったにせよ、
被告が任意に送付したことに変わりはなく、告知ないし流布に該当するものというべきである。
原告は、被告の右各行為が実用新案法29条の3所定の権利行使又は警告にも該当する旨主張する。しかし、同法29条の3第1項にいう「実用新案権者……が侵害者等に対しその権利を行使し、又はその警告をした場合」とは、相手方(即ち同項に基づいて損害賠償義務を負う相手)に対して直接、差止めや損害賠償を求め、訴訟を提起し、仮処分を申し立てるというような権利の行使をし、又は警告をすることをいうものと解すべきであるから、直接の相手方以外の取引先等に対する前記のような告知ないし流布は、右の権利行使又は警告には該当しないものというべきである。
2 本件広告B、本件記事@、Aの掲載について (一) 本件広告Bは、被告が原告に対し本件実用新案権に基づいて差止めを求める訴訟を提起したこと、原告が本件無効審判を請求したこと、特許庁はこれに対し原告の請求が成り立たない旨の審決をしたこと、被告は本件実用新案の有効性を確信していたこと、右差止めを求めている訴訟においては本件実用新案は有効との建前で審理がされることになり、原告が原告印刷機を製造販売する行為は本件実用新案権を侵害している旨の判決が出されることを確信していること、その場合には、原告印刷機の購入者の使用行為も実用新案権の侵害行為となることが記載されている。
右記載も、本件実用新案権が有効であり、原告による原告印刷機の製造販売が本件実用新案権を侵害するとの事実を述べるに等しい記載を含むものと評価できるから、1と同様に、結果的には虚偽の内容のものであったというべきである(右部分以外に虚偽の記載があるとは認められない。) また、本件広告Bが実用新案法29条の3の権利行使又は警告に該当するとはいえないことは、1で述べたところと同じである。
(二) 次に、本件記事@、Aについては、発行者である「週刊包装ニュース」の記事の形式で掲載されているものであり、そもそも、被告自身による行為とはいい難い。
さらに、その内容を見ても、特許庁が本件無効審判について原告の請求が成り立たない旨の審決をしたこと、被告が原告に対し本件実用新案権に基づき損害賠償請求訴訟や出荷停止の仮処分の申立てをしていること等を記載する部分は、
いずれも客観的事実を述べているものであり、また、同訴訟ないし仮処分の結果によっては原告印刷機の使用禁止にまで発展しかねず、原告被告間での話合いによる解決を期待する声が強いとされると等を記載する部分は、右紛争を懸念し話合いによる解決を臨む業界筋の期待として述べられているものである。
原告は、取材を受けた被告が告知したことが右内容として記事になっている旨主張するが、右内容は、被告のみが知り得た情報ないし被告の意見は含まれていないから、被告が告知した内容に基づいて作成されたものと断ずることはできないし、また、訴訟ないし仮処分の帰趨を断定的に述べているわけではなく、虚偽の事実も含まれていないものというべきである。
四 争点4(口頭での流布)について 原告は、被告が平成八年七月ころ原告の取引先である株式会社大村紙工の社長に対し、@裁判していて、すぐに梅谷の機械は製造できなくなる、梅谷の機械を買ったら、お客さんに迷惑がかかる、A三年したら梅谷の機械はガタガタになる、
B平成八年一〇月に特許がおりるので、梅谷は機械を作ることはできないなどと口頭で流布したと主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。
五 争点5(過失及び権利行使に際しての相当の注意の存否)について 1 乙八、九、一五、一六によれば、被告は、平成三年の春ころから、新開発のインキを用いた新しいタイプの印刷機のインキの供給・回収機構の開発に取り組み、その開発を終えてから、平成三年一一月から一二月にかけて、段ボール印刷機とオフセット印刷機に関する分野の技術について、特許公報を中心として国内外の先行技術の調査を行い、平成四年一月一八日に原特許を出願した後の平成六年一月から二月にかけて、再度先行技術の調査を行い、右調査で得られた数十件の先行技術に関する各刊行物を弁理士に見せ、出願しようとしている考案の有効性について疑いを抱かせるような技術が開示されていないか否かの検討を依頼したが、そのような技術は見当たらないとの回答を得たこと、本件考案と同様の内容の発明について、米国において特許出願を行い、平成五年一一月三〇日、米国特許を得たことが認められる。
2 その後、本件考案の請求項1ないし4について、進歩性を欠如するものと判断されるおそれがあると評価する本件評価書@、Aを得たこと、本件評価書@について、弁理士二名より右評価は妥当性を欠くという意見の鑑定書を得たこと、本件無効審判について原告の請求は成り立たないとの審決がされたこと、本件審決取消訴訟において右審決を取り消す旨の判決がされ確定したこと、本件実用新案登録は無効とする審決が確定したことは、前記第二、一の5に記載のとおりである。
本件評価書@、A、本件無効審判、本件審決取消訴訟で示された判断の理由の概要は次のとおりである。
(一) 本件評価書@における理由は、本件考案の請求項1について、実願昭五九―六九六五号(実開昭六〇―一一九五四〇号)の願書に添付されたマイクロフィルム(以下「本件文献@」という。)及び実願昭五四―一〇五四七号(実開昭五五―一〇二三九号)の願書に添付されたマイクロフィルム(以下「本件文献A」という。)に基づいて、本件考案が進歩性を欠如するものと判断されるおそれがあると評価している(甲二)。
(二) 本件評価書Aにおける理由は、本件考案の請求項1について、本件文献@及びAに加え、特公昭五二―二七七五八号公報(以下「本件文献B」をも加えて、本件考案が進歩性を欠如するものと判断されるおそれがあると評価している(甲三)。
(三) これに対し、原告は、技術評価書の本件文献@ないしB、特開昭六一―二六六二四八号公報(以下「本件文献C」という。)を含む八件の刊行物に開示された技術に基づき、進歩性がないとの理由により本件無効審判を請求したが、同審決が原告の請求を認めなかった理由は、本件考案と本件文献@に示された技術との構成の相違点のうち、「チューブがポンプに対して着脱自在であること」、「ポンプが可逆できること」については、前記各文献に示された技術からきわめて容易に容易に考案できたものとすることはできないというものである(甲一四)。
(四) 本件審決取消訴訟の判決が右審決を取り消した理由は、審決が認定した本件考案と本件文献@に示された技術との右相違点のうち、「ポンプが可逆できること」については本件文献Cの記載からきわめて容易に想到することができたとし、「チューブがポンプに対して着脱自在であること」については、本件文献Aの記載からすれば単なる設計事項にすぎないと考えられるから、当業者においてきわめて容易に想到することができたというものである(甲一六)。
3 また、本件考案は、原特許から分割出願されたものであり、原特許発明からインキ供給・回収を行うチュービングポンプ等を昇降させる機構等を特定した構成を有しており、右昇降機構以外の構成はほぼ同一ということができる。
そして、原告は、原特許について、出願前に公然実施されていたこと、及び、本件文献@ないしCを含む七件の刊行物に開示された技術に基づき進歩性がないことを理由として無効審判を請求し、特許庁は、平成一〇年五月二日、本件文献@、A及びCに記載された技術から当業者が容易に発明することができたものと認められるとし、無効とする旨の審決をした(乙三六)。
東京高等裁判所が審決取消請求事件において右審決を取り消したことは既に述べたとおりである。
4 本件考案と原告が主張する原告印刷機の構成を比較すると、構成@は構成要件Aを、構成Aは構成要件B及び構成要件Cのうち絞りロールの構成を、構成Bは構成要件Cのうちチュービングポンプの構成を、構成C及び構成Dは構成要件Dを、構成Eは構成要件Eを、構成Fは構成要件Fをそれぞれ文言上充足しており、
原告印刷機は、本件考案の技術的範囲に属するものということができる。
5 前記のとおり、本件評価書@、Aにおいて本件考案が進歩性を欠くと判断されるおそれがあるとした公知資料と、本件審決取消訴訟の判決において進歩性を否定すべき根拠として挙げられた公知資料とは同一ではないから、右判決の理由に従えば、本件評価書@、Aに記載された公知資料のみでは、本件考案が進歩性を欠き無効となると判断できなかったともいい得るのであって、本件評価書@の評価は妥当性を欠くと判断した二名の弁理士の判断が誤りであったとはいえない。
また、本件無効審判において、特許庁は、請求人である原告の主張する理由及び証拠方法によっては本件実用新案を無効とすることはできないと判断している上、本件考案と構成が極めて類似する原特許について、特許庁は、本件審決取消訴訟の判決が進歩性を欠くことの理由として掲げた引用文献と同一の文献をもとにして進歩性を欠くとする審決をしたが、審決取消訴訟において右審決が取り消されているのであり、これらの事実からすれば、本件考案の進歩性の判断が極めて微妙なものであることが窺われる。
6 以上の事実を総合考慮すれば、被告が本件実用新案権が有効なものであるとして、本件警告、本件侵害訴訟の提起及び本件仮処分の申立てを行ったことについては、実用新案法29条の3第1項ただし書の相当の注意を払ったものと認めるのが相当である。また、右各行為のほか、被告が本件広告@ないしBを掲載ないしファックス送信したことについて、被告に過失があるとはいえない。
六 争点6(損害)について 1 これまで認定、判断したところによれば、結局、被告が、原告印刷機のインキ転移ロールの駆動ギヤとして、三〇ミリメートル、三五ミリメートル、四〇ミリメートルの幅のものを使用していたにもかかわらず、「ギヤ幅は約一五oしかない。(長時間の使用で破損の恐れあり)」との虚偽の事実(以下「本件虚偽部分」という。)を原告の取引先に告知ないし流布したという点に関し、原告の損害の額及び因果関係の存否が問題となる。なお、前記認定の事実関係に照らせば、被告が右虚偽事実の告知ないし流布をしたことについて、被告には過失があったものと認められる。
2 主位的主張について (一) 契約不成立による得べかりし利益の損害について 原告は、被告の行為により、原告印刷機の販売交渉をしていた塩田段ボール、東海ケース及び株式会社セーカンとの間で売買契約の成立には至らなかったと主張するが、右契約の不成立が、本件対比表における本件虚偽部分の告知ないし流布によるものであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって、甲四四、乙三四によれば、右三社は、段ボール印刷機の購入に当たり、原告、被告の担当者や段ボール印刷機を購入し使用している他社にも問い合わせ、あるいは実際に機械を見て、最終的に選定していること、右三社の担当者は、少なくとも本件対比表の記載は機械の選定に影響をしていない旨述べていることが認められる。
よって、原告が主張する契約不成立による得べかりし利益の損害の請求は理由がない。
(二) 新聞広告費用、弁護士・弁理士費用、装置取替え費用について 甲二九によれば、原告が掲載したとする平成七年一一月一五日付け板紙段ボール新聞の掲載広告は、本件考案ないし別件特許に関する訴訟等の経緯、これに対する原告の見解等を内容とするものであることが認められ、原告が弁護士・弁理士費用を要したと主張する本件無効審判、本件審決取消訴訟、本件侵害訴訟及び本件仮処分は、もっぱら本件実用新案権に関するものであり、原告が装置を取り替えたと主張するインキ供給・回収装置も本件実用新案権に係る紛争によるユーザーの不安を払拭するためのものというべきであるから、いずれも本件対比表の虚偽記載部分とは関係がない事項に関するものであり、その他、原告の主張する各費用が、本件対比表における本件虚偽部分の告知ないし流布によるものであることを認めるに足りる証拠はない。
よって、原告が主張する右各費用の請求は理由がない。
(三) 以上によれば、原告の主位的主張は理由がない。
3 予備的主張について 前記2、(一)記載のとおり、本件虚偽部分が段ボール印刷機の購入に際し、原告に確認すれば容易に判明する内容のものであり、機械の選定の判断に影響しないものであるとしても、被告が、原告印刷機の重要な部品であるインキ転移ロールの駆動ギアが長時間の使用で破損の恐れがあるなどと、原告の取引先に対し告知ないし流布したことにより、原告の営業上の信用が傷つけられたものというべきである。
これに伴う原告の損害は、本件虚偽部分の内容、告知ないし流布の態様等を総合考慮すると、四〇万円が相当である。
また、原告は、本件訴訟の提起、遂行を弁護士及び弁理士に依頼したが、
本件事件の一切の事情を考慮すれば、弁護士及び弁理士費用相当損害金としては、
五万円が相当である。
六 以上によれば、原告の請求は、被告に対し、金四五万円及び内金四〇万円に対する訴状送達の日の翌日である平成一〇年六月三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(口頭弁論終結の日 平成一二年六月二六日)
追加
別紙機械目録第1図第2図第3図第4図第5図第6図第7図別紙謝罪広告目録(一)(板紙段ボール新聞用)お詫び弊社は、株式会社梅谷製作所殿が製造販売されていたプリンタスロッタプラムμのチュービングポンプ方式によるインキ供給・回収機構が弊社が所有していました実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)の権利を侵害する旨の広告を平成七年九月二七日付け板紙段ボール新聞紙上に掲載しました。
しかし、弊社の実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)は、株式会社梅谷製作所殿が申請されていた実用新案登録無効審判において、平成九年一一月二八日に特許庁において登録無効の審決により無効となり確定しました。
弊社は、前記のとおり株式会社梅谷製作所殿のプリンタスロッタプラムμのチュービングポンプ方式によるインキ供給・回収機構が弊社が所有していました実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)の権利を侵害する旨の広告をなすことで、株式会社梅谷製作所殿の信用を毀損しましたことをここに認め、かつ、株式会社梅谷製作所殿に多大のご迷惑をお掛けしましたことを衷心よりお詫びし謝罪するものであります。また、ユーザーの皆様に対しても段ボール用印刷機のご購入に際して混乱をもたらしましたことを深く謝罪いたします。
今後はこのようなことのないよう心掛けることをお誓いして、謝罪の意を表するものであります。
平成年月日株式会社イソワ右代表者代表取締役【C】株式会社梅谷製作所代表者代表取締役【A】殿ユーザー各位別紙謝罪広告目録(二)(週刊包装ニュース用)お詫び弊社は、株式会社梅谷製作所殿が製造販売されていたプリンタスロッタプラムμのチュービングポンプ方式によるインキ供給・回収機構が弊社が所有していました実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)の権利を侵害する旨の広告を平成七年九月一六日及び平成八年一月二七日付け週刊包装ニュース紙上に掲載しました。
しかし、弊社の実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)は、株式会社梅谷製作所殿が申請されていた実用新案登録無効審判において、平成九年一一月二八日に特許庁において登録無効の審決により無効となり確定しました。
弊社は、前記のとおり株式会社梅谷製作所殿のプリンタスロッタプラムμのチュービングポンプ方式によるインキ供給・回収機構が弊社が所有していました実用新案登録第三○○二二一八号(考案の名称段ボールシート用印刷機のインキ供給・回収機構)の権利を侵害する旨の広告をなすことで、株式会社梅谷製作所殿の信用を毀損しましたことをここに認め、かつ、株式会社梅谷製作所殿に多大のご迷惑をお掛けしましたことを衷心よりお詫びし謝罪するものであります。また、ユーザーの皆様に対しても段ボール用印刷機のご購入に際して混乱をもたらしましたことを深く謝罪いたします。
今後はこのようなことのないよう心掛けることをお誓いして、謝罪の意を表するものであります。
平成年月日株式会社イソワ右代表者代表取締役【C】株式会社梅谷製作所代表者代表取締役【A】殿ユーザー各位別紙別紙広告・記事目録(一)お客様各位におかれましては、平素から弊社にご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、弊社では、去る八月二十五日、大阪府岸和田市<以下略>所在の株式会社梅谷製作所殿に対し、実用新案構侵害および特許権侵害差止め及び損害賠償請求の訴訟を、東京地方裁判所に提起いたしました。
弊社の実用新案権は「段ボールシート用のインキ回収・供給装置」に関する登録第三○〇二二一八号実用新案であり、弊社の装置にこの機構を採用して以来、数多くのお客様方から好評を博してきたものですが、梅谷製作所殿で製造販売されているプリンタスロッタ・プラムμには、この実用新案とまったく同じ機構が装備されております。
また、弊社の特許権はフィンガレス・シングルフェーサの基本的特許である特許第一一六六四五二号「片面段ボール製造装置における中芯保持装置」であり、梅谷製作所殿では、専ら弊社の装置に搭載することを目的とした段ロールを製造し、弊社の装置のお客様に納入してこられたものです。
そこで、これらの梅谷製作所殿の行為は弊社の権利の侵害である旨を申し入れ、
円満な解決をはかるため努力してまいりましたが、実用新案権については、特許庁の技術評価書において新規性、進歩性を欠くものと判断されるおそれがある、と記載されている等との理由で同実用新案は無効であり、また、特許権については、同社は同社の行為は通常の修理行為の範囲内の行為である等の理由で、同社の行為は適法であるという立場を堅持してこれられたため、友好的な解決を得るに至りませんでした。
弊社としては、複数の専門家にあらためて検討をお願いし、公平な意見を求めましたところ、実用新案の技術評価書に引用された公知技術は、実用新案の構成とはまるで違うものなので、実用新案権は有効であり、また、専ら弊社の装置に搭載することを目的として、特許発明の主要な構成部材である段ロールを製造することは、適法な修理行為の範囲外であるとの意見を受けとっております。
また、右記実用新案権に対して、梅谷製作所殿では去る六月二十六日に無効審判を請求しておられます。しかし、その請求理由を検討した結果、弊社としては依然として無効とされるおそれはないものと確信いたしております。
その結果、弊社の営業の基幹である知的財産権を守るため、冒頭に申しましたとおり、止むを得ず、訴訟を提起するに至った次第でございます。
以上、同業者間において互いに他社の知的財産権を尊重して、公正な競争秩序を確立することこそが、弊社の心から念願いたしているところでございますので、何卒、弊社の立場にご理解賜りますようお願い申し上げます。
株式会社ISOWA代表取締役社長【C】別紙広告・記事目録(二)梅谷「プラム」特許侵害確定特許庁は昨年12月25日、梅谷製作所が提訴していたISOWA特許権「インキ供給・回収装置」に関する特許無効審判につき、梅谷製作所の訴えを全面的に却下した。この審決に基づきISOWAは、直ちに梅谷製作所が製造・販売するプリスロ「プラム」を特許侵害として、損害賠償、出荷停止の仮処分を申請しており、場合によっては、現在段ボール工場で使われているプラムの使用禁止に迄発展しかねない。(三頁へ)別紙広告・記事目録(三)梅谷製作の特許無効提訴、全面却下ISOWA勝訴、プラム損害賠償へISOWA(本社・愛知県春日井市・【C】社長)は、既報(本紙7年9月16日付詳報)のように、梅谷製作所(大阪府岸和田市<以下略>)を相手に、梅谷製作所が製造・販売するプリンタ・スロッタ「プラム」のインキ供給・回収装置が特許侵害、として東京地方裁判所(現在名古屋裁判所に移管)に提訴、争っているが、
これに対抗して梅谷製作所は、特許庁にISOWAのこの特許が無効とする無効審判を提訴、争っていた。
これに関し、特許庁は昨年12月25日、梅谷製作所の申立てを全面的に退け、ISOWAの特許権を改めて認定した。この審決に基づきISOWAは、梅谷製作所に対し、梅谷製作所が製造・販売するプリンタ・スロッタ「プラム」が特許侵害だとして、損害賠償、併せて出荷停止の仮処分を裁判所に申請しており、これも近く確定する予想。
段ボール機械業界にも、特許係争は多いが、殆どが、ユーザーである段ボール業界に迷惑が及ぶことを避けるため、当事者間の話合いで円満解決している。
しかし今回は、ISOWA側がかねてから話合い解決を望んでいたものを、梅谷製作所が断固拒否を貫き、遂に裁判に迄発展したもの。
業界筋では、梅谷製作所が頑なに対決姿勢を貫いて行けば、現在、段ボール工場で使用されている梅谷「プラム」の使用禁止にまで発展しかねぬ懸念もあり、このため段ボール業界には両社間の話合い解決を期待する声が強い。(関連記事四頁参照)別紙広告・記事目録(四)実用新案件「段ボールシート用印刷機のインキ・回収装置」権利有効のについてお知らせお客様各位におかれましては、平素から弊社にご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、弊社が平成7年8月25日、大阪府岸和田市<以下略>所在の株式会社梅谷製作所殿に対し、同社が製造販売しておられるプリンタスロッタ・プラムμは弊社の有する実用新案登録第3002218号にかかるインキ回収・供給装置と同じ機構が採用されていることを理由として、実用新案権侵害差止めの訴訟を提起いたしましたことは、すでにお知らせ申し上げていたとおりでございます。
一方、梅谷製作所殿では、弊社の訴訟提起に先立ち、平成7年6月28日、弊社の実用新案登録は無効であるとして、特許庁に対し、登録無効審判を請求しておられたこともご承知のことと存じます。
この無効審判事件につき、特許庁では審理の結果、去る平成7年12月25日付けで、梅谷製作所殿の請求は成り立たない、したがって、本件実用新案登録は有効である旨、審決しましたので、ここにお知らせ申し上げます。
本件実用新案の有効性について弊社はかねて確信しておりましたが、今般、特許庁により弊社の立場が支持されましたので、裁判所でも本件実用新案は有効との建前で審理がされることになります。
梅谷製作所殿の製造販売しておられるプリンタスロッタ・プラムμのインキ回収・供給機構は、弊社の本件実用新案のものと何ら変わりはありませんので、権利が有効である以上は、必ずや、梅谷製作所殿のプリンタスロッタ・プラムμの製造販売行為は、本件実用新案権を侵害する旨、裁判所により判決されるものと確信いたしております。その場合には、同社の製造販売行為のみならず、同社から同社のプリンタスロッタ・プラムμを購入なさって使用しておられるお客様の使用行為もまた、実用新案権の侵害行為となることになります。
つきましては、こうした状況に充分ご注意下さいますよう、お願い申しあげます。
弊社としては法律にしたがい、知的財産権を互いに尊重し、公正な競争秩序が確信されるよう、心から念願いたしております。
株式会社ISOWA代表取締役社長【C】
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝