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事件 昭和 63年 (ワ) 1286号
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裁判所 京都地方裁判所
判決言渡日 1991/04/25
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告株式会社アールセブンは、別紙被告商品目録一記載の商品を販売してはならない。
二 被告株式会社アールセブンは、その本・支店、営業所、倉庫に存する右商品を廃棄せよ。
三 被告株式会社アローエンタープライズは、別紙被告商品目録二記載の商品を販売してはならない。
四 被告株式会社アローエンタープライズは、その本・支店、営業所、倉庫に存する右商品を廃棄せよ。
五 被告ユーピー株式会社は、別紙被告商品目録三記載の商品を販売してはならない。
六 被告ユーピー株式会社は、その本・支店、営業所、倉庫に存する右商品を廃棄せよ。
七 訴訟費用は被告らの負担とする。
八 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告 主文第一ないし八項と同旨二 被告ら1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
主張
一 請求原因1 原告は、昭和四九年一〇月一四日に有限会社として設立され、昭和五二年七月二一日に株式会社に組織変更の登記を経た会社であるが、自動車用品の製造、販売を主な営業目的としている。
2 原告は、自動車用車輪として、エイトスポーク、八本スポークといわれるアルミホイールを製造、販売している。その販売網は、北海道から沖縄まで日本全国に及んでいる。原告の製造、販売するアルミホイールは、「RSワタナベ」「アールエスワタナベ」と呼称されていて、別紙原告商品目録記載のとおりであるが、その形態(色彩を含む。以下同じ。)は、次の点で、原告の商品であることを示す特徴があり、他の業者の商品と識別されている。なお、別紙原告商品目録記載の商品は二種類あるが、空気穴の位置が少し相違するのみであり、本質的には同一形態である。
(1) 素材がアルミニウムであること 従来のホイールは鋳鉄製であったが、アルミニウムは、より軽く、強度があるので、自動車燃料の節約になるという利点がある。
(2) 一体成型であること 一般にアルミホイールはいくつかの部分に分けて製造し、これを接合して製品化されるが、原告の商品は最初から鋳型にアルミニウムを流し込んで一体に成型して製造されるので、更に軽量になり、強度も増し、外観もすっきりしたものとなっている。
(3) カマボコ型のスポークタイプで、スポークが八本あること アルミホイールには、スポークタイプ、メッシュタイプ、ホールタイプ等があるが、原告の商品は、スポークタイプである。しかも、そのスポークは、細いワイヤではなく、カマボコ型といわれる太いもので、スポークの外形がほぼ均一で、内側は空洞となって、内側に向かって少し扇形に開いた形となっている。そして、スポークは八本である。
(4) 色彩が暗色系の黒であること 一般に暗色は、派手さがなく、目立たないから落ち着いた感じを人に与えるものであるが、さらに、汚れが目立たないという特徴を有する。自動車の車輪には、ブレーキ等の作動により細かい金属片等が付着し、汚れとなって表れるが、この汚れを目立たなくするものである。
3 これらの特徴を備えた原告の商品は、その優れたデザイン性と機能性とにより人気商品となった。
この商品は、原告設立前の昭和四七年に原告代表者【A】が個人営業として卸販売を始めたものであるが、原告は設立以来これを製造、販売し、昭和五〇年頃から日本全国で取引され、売上が上昇し、原告が株式会社に組織変更した昭和五二年頃には、この形態の商品は原告の商品を示すものとして、自動車用品取引業界及び自動車愛好家の間において周知となった。この形態の商品を長期間継続的に販売する業者は原告以外にはなく、原告のみがこの形態の商品を、エイトスポーク、八本スポークとして強力に広告宣伝してきた。最近の原告の売上は年間10億円を超え、
この形態の商品が原告の商品を示すことは現時点でも周知である。
4 被告アールセブンは、昭和六二年末頃から、別紙被告商品目録一記載のアルミホイールを卸販売している。
5 被告アローエンタープライズは、昭和六二年末頃から、別紙被告商品目録二記載のアルミホイールを卸販売している。
6 被告ユーピーは、昭和六二年末頃から、別紙被告商品目録三記載のアルミホイールを卸販売している。
7 被告らの右各商品は、その形態上、(1)素材がアルミニウムであること、
(2)一体成型であること、(3)カマボコ型のスポークタイプで、スポークの内側が空洞となっていて、内側に向かって少し扇型に開いていて、スポークが8本あること、(4)色彩が暗色系の黒であること、において原告の商品と同一であり、
コピー商品である。
8 被告らが右各商品を卸販売し始めたため、自動車用品取引業者及び自動車愛好家をして、右各商品を原告の製造、販売する商品であると誤認混同させている。
このため、原告はアルミホイールの製造、販売につき、営業上の利益を害されるおそれがある。
9 よって、原告は、不正競争防止法1条1項1号の規定により、被告らの右各商品の販売の差止を求め、あわせて、その本支店、営業所、倉庫に存するものの廃棄を求める。
二 請求原因に対する被告アールセブンの認否及び反論1 請求原因1項の事実は認める。
2 同2、3項の各事実はいずれも争う。自動車用品取引業界においては、商品の意匠は瞬時にして陳腐化するため、コピー商品が常に流動している。原告の商品もコピー商品であるから、不正競争防止法1条1項1号の規定によって保護を受けられるものではない。
3 同4項のうち、被告アールセブンが別紙被告商品目録一記載の商品を卸販売している事実は認め、その余の事実は否認する。
4 同7、8項の事実はいずれも争う。
三 請求原因に対する被告アローエンタープライズの認否及び反論1 請求原因1項のうち、原告が株式会社として登記されていることは認め、その余の事実は知らない。
2 同2、3項の事実は知らない。日本で初めて八本スポークのアルミホイールを商品化したのは原告ではなく、原告の商品に独自性はない。原告の商品と同形態のアルミホイールは昭和四〇年頃にイギリスから輸入され、その後日本では株式会社ヤマコが製造、販売し始めたもので、その後多数の会社が製造、販売してきている。原告の商品の形態出所表示機能があるとはいえないし、周知性があるとは到底いえない。
3 同5項のうち、
被告アローエンタープライズが別紙被告商品目録二記載の商品を卸販売している事実は認め、その余の事実は否認する。
4 同7項の事実は否認する。被告アローエンタープライズの商品は、次の点で原告の商品とは形態が異なる。
(1) アルミホイールが自動車の走行に耐えうる強度を得るために、アルミホイールの裏面にアルミ製のディスク板を接合させている。
(2) 同様に、アルミホイールが自動車の走行に耐えうる強度を得るために、スポークの湾曲を極端にせずに、直線的にした。
(3) 自動車の走行中にタイヤがアルミホイールから外れないように、ハンプと呼ばれる隆起をつけた。
5 同8項の事実は否認する。被告アローエンタープライズの商品には「BR」と刻印してあるほか、アルミホイールの中央部分に同被告の商品表示「Black Racing」を明示したセンターキャップをはめこむことができるようになっているので、商品の誤認混同を生ずることはない。また、通常ホイールの販売店では、原告の商品と被告アローエンタープライズの商品とは明確に区別して展示され、各商品の商品名、価格等が表示されているので、購入者が同被告の商品を原告の商品と誤認混同することはない。
四 請求原因に対する被告ユーピーの認否及び反論1 請求原因1項の事実は知らない。
2 同2、3項の各事実は否認する。八本スポークのアルミホイールは原告の独創ではない。カマボコ型で内側に扇型に開いたスポークは、ホイール製造上当然の技術的帰結であって、形態に特殊性はない。また、アルミホイールの製造、販売は多数の有名、無名の業者がしており、原告は無名に近い小規模業者である。アルミホイールの販売高は年間四〇〇〇億円を超えるものとみられ、仮に原告の近年の売上高が年間一〇億円であったとしても業界の四〇〇分の一を超えず、原告の商品はその存在を業界で十分に知られていない。
3 同6項の事実は認める。
4 同7項の事実は否認する。被告ユーピーの商品は原告の商品とは形態が相違している。同被告の商品と原告の商品とはスポークの撓みの形、ホイールの側面より外に出る具合、スボークの太さの変化の有無が相違している。被告ユーピーの商品は、原告の商品と比較して、スポークの長さが一〇ミリメートル長く、幅が5ミリメートル狭く、スポーク全体に一四〇度の力ーブ状の勾配をつけている点が異なっている。そしてまた、スポークがホイールのセンターに付着する部分の角度は、原告の商品が四五度の勾配であるのに対し、被告ユーピーの商品のは六〇度となっている。
5 同8項の事実は否認する。被告ユーピーの商品のアルミホイールの中央部分にはキャップをはめ込むことになっているが、そのキャップには製造者光生アルミニュームエ業株式会社の商品であることを示す「TRS.RALLY」の白銀のマークが付けられているので、購入者には一見して識別がつき、購入者が被告ユーピーの商品を原告の商品と誤認混同することはない。
証拠(省略)
理 由一 請求原因1項の事実は、原告と被告アールセブンとの間で争いがなく、原告とその余の被告らとの間では、成立に争いのない甲第一七号証によってこれを認めることができる。
二 原告と被告らとの間で成立に争いのない甲第一号証、同第二ないし七号証(枝番を含む)、同第一〇号証の一ないし一五、同第二号証の一ないし三、同第一六号証、同第一七号証、原本の存在と成立に争いのない甲第一八ないし一一四号証(枝番を含む)、原告と被告ユーピーとの間で成立に争いのない丁第一号証、同第二号証の一ないし三、同第三号証の一ないし一〇、同第七号証、原告と被告アールセブンとの間において原告の商品であることに争いがなく、原告とその余の被告らとの間において原告代表者本人尋問の結果によって原告の商品と認められる検甲第一、
二号証、原告代表者本人尋問の結果によると、
1 原告は自動車用車輪等を製造、販売しているものであるが、その主力商品はアルミ製で内側を空洞にしたカマボコ型の八本のスポークからできているエイトスポーク、八本スポークといわれる一体成型のアルミホイールである。
2 右アルミホイールは、原告代表者【A】がイギリスから輸入されたアルミホイール「ミニライト」を参考にして昭和四六年に個人営業で、日本で初めて製造、販売を始めたものであり、原告は昭和四九年設立以来これを「RSワタナベ」「RSオリジナルホイール」等の商品名で日本全国で販売している。
3 これに類似した形態のものは「ミニライト」以外にも「ヤマコオリジナル」(丁第一号証)、「エンケイコンペ8」「ダイマグ」「サイクロン」「FORMULA-ONE」「マグロード」「トマホーク」(以上丁第二号証の一ないし三、丁第三号証の七)等が他社から発売されたことがあるが、これらはいずれも【A】の製造、販売開始より後に発売されたもので、しかも周知性を獲得するに至らなかったものであり、当初から現在まで一貫して継続的に製造、販売されてきたのは原告の「RSワタナベ」「RSオリジナルホイール」以外にはない。
4 原告の製造、販売する右商品の形態は、別紙原告商晶目録記載のとおりであるが、その形態上の特徴は、(1)素材がアルミニウムで、(2)一体成型で、
(3)内側を空洞にし内側に向かって少し扇形に開いた形のカマボコ型のスポークタイプで、スポークが八本あり、(4)色彩が暗色系の黒(つや消しの黒)となっているところにある。同目録記載の商品のうち、「RSワタナベF8F」はスポークの撓が顕著であり、スポークがホイールの側面に達しているのに対し、「RSワタナベB」はスポークの撓みが少なく、ホイールの側面にまで達していないが、この相違は右形態上の特徴に関係しない。
5 色彩の点を除けば、原告の商品は昭和四九年当時からほぼ別紙原告商品目録記載のとおりであった(但し、甲第一号証に示されるとおり、原告の八本スポークの商品には、スポークの先端がフレームのフランジ近くまでは届いていない形態のもある)が、色彩を含めて原告の商品が右のような特徴を全部備えたのは昭和五七年頃のことであり、この頃から昭和六二年頃に至るまでは右特徴を備えたアルミホイールは他のいずれからも販売されなかった。
6 原告は、昭和四九年から昭和五七年まで自動車用品雑誌「オートスポーツ」に、ほぼ継続的に「RSワタナベ」「RSオリジナルホイール」の広告を掲載してきており、また近年は自動車用品雑誌「ヤングオート」「ホリデーオート」等に自動車用品販売業者の広告として原告の商品が絶えず掲載されており、自動車用品販売店の店頭における現品の展示とあいまって、現在では、前示形態上の特徴を備えたアルミホイールが原告の商品であることは、自動車用品取引業者及び自動車愛好家には周知となっている。
7 昭和六二年頃から原告の商品に類似したアルミホイールが他社から販売されるようになったが、それらの類似商品に対しては、自動車用品雑誌の広告の上で、
「RSワタナベタイプ」もしくは「RSワタナベ風」という表示がなされている。
以上の事実が認められる。成立に争いのない丙第三ないし六号証(枝番を含む)、丁第三号証の一ないし一〇、同第四ないし六号証、被告アローエンタープライズ、被告ユーピー各代表者本人尋問の結果は右認定を左右するに足りない。
三 右認定事実からすると、別紙原告商品目録記載の商品は原告(もしくは【A】)の創始にかかる独創的商品とはいえず、また、他にこれに類似した形態の商品が販売されなかったものともいえないが、日本国内では【A】が最初に製造、
販売を始め、これを引き継いだ原告のみが一貫してこれを製造、販売し、前示形態上の特徴によってこれが原告の商品であるものと日本国内の自動車用晶取引業者及び自動車愛好家に周知となったのであるから、右特徴を備えた形態は、不正競争防止法1条1項1号に規定された「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するものといわねばならない。
被告ユーピー代表者本人尋問の結果によって成立の認められる丁第一二号証及び同本人尋問の結果中には、現在日本国内で年間約三六〇〇億円ものホイールが販売されているので、仮に原告の販売高が年問一〇億円としてもその三六〇分の一に過ぎないとの部分があるが、本件はホイール全般の不正競争の問題ではなく、前示特徴のある形態の八本スポークのアルミホイールの出所表示機能及び周知性の問題であるので、右販売高の多寡の故をもつて周知性判断を左右することはできない。
なお、原告代表者本人尋問の結果によると、原告は昭和五七年頃、資金難から一時経営が行き詰まったことがあるものと認められるが、営業を中断したものではなく、その後業績は回復し、現在に至るまで別紙原告商品目録記載の商品を継続的に製造、販売しているのであるから、右判断を左右するものではない。
四 スポークタイプのホイールにおいても、素材はアルミニウムに限られず、スポークの数は四本から二〇本までいろいろあり、スポークの内側が空洞状になっているものばかりではなく、スポークの外側がカマボコ型のみではなく、色彩も黒だけでなく、シルバー、ゴールドその他があるのであるから、原告の右商品の形態がホイール製造上当然の技術的帰結であって形態に特殊性がないとの被告ユーピーの主張は採用できない。
五 被告アールセプンが別紙被告商品目録一記載のアルミホイールを卸販売していることは当事者間に争いがなく、原告代表者本人尋尋問の結果によると、同被告は昭和六二年八月頃から右商品を販売しているものと認められる。
被告アローエンタープライズが別紙被告商品目録二記載のアルミホイールを卸販売していることは当事者問に争いがなく、原告及び同被告各代表者本人尋問の結果によると、同被告は昭和六二年八月頃から右商品を販売しているものと認められる。
被告ユーピーが昭和六二年末頃から別紙被告商品目録三記載のアルミホイールを卸販売していることは当事者間に争いがない。
六 原告と被告アールセブンとの間で成立に争いがなく、原告とその余の被告らとの間で弁論の全趣旨によって成立の認められる甲第一三二号証、前掲検甲第一、二号証、原告と被告ユーピーとの間で同被告の商品であることに争いがない検甲第三号証、原告と被告アローエンタープライズとの間で同被告の商品であることに争いがない検甲第四号証、原告と被告アールセブンとの間で同被告の商品であることに争いがない検甲第五号証、原告代表者本人尋問の結果によると、別紙被告商品目録一ないし三記載の各商品は、いずれも、(1)素材がアルミニウムで、(2)一体成型で、(3)内側を空洞にし内側に向かって少し扇形に開いた形のカマボコ型のスポークタイプで、スポークが八本あり、(4)色彩が暗色系の黒(つや消しの黒)となっていて、その形態上の特徴において原告の製造、販売する別紙原告商品目録記載のアルミホイールと同一であるばかりでなく、両者は一見したのみではその相違を識別することが難しいよく似た商品であるものと認められる。
もっとも、被告アローエンタープライズ代表者本人尋問の結果によると、同被告の商品は強度保持のため裏側にディスクを補強し、タイヤの破裂に備えてリムに顕著なハンプ(隆起)を設けている点で原告の商品と形態上の相違がある(検甲第一、二号証によると、原告の商品もハンプがあるがその隆起は小さい。)ものと認められるが、検甲第一、二号証と検甲第四号証を対比すると右は微差であり、これをもって両者の形態の特徴に相違があるとはいえない。
また、被告ユーピー代表者本人尋問の結果によって成立の認められる丁第一一号証及び同本人尋問の結果によると、同被告の商品は、スポークの撓みが大きく、スポークがホイールの側面よりもはみ出しているもので、原告の商品よりもスポークの長さが一〇ミリメートル長く、幅が五ミリメートル狭く、高さが三ミリメートル高く、スポークのセンターへの取りつけの角度の差が一五度あり、スポークの断面が丸みを帯び、リムが全体として凹状であり、リムに顕著なハンプを設けている等の点で相違しているものと認められるが、検甲第一、二号証と検甲第三号証を対比すると右は微差であり、これをもって両者の形態の特徴に相違があるとはいえない。
以上によると、被告らの各商品は、その形態において、周知の原告の商品ときわめてよく似ていて、自動車用品取引業者及び自動車愛好家に誤認混同を生ぜさせるものというほかない。
七 成立に争いのない丙第一号証、被写体が自動車用品販売店であることに争いがなく、弁論の全趣旨によって平成二年六月一八日に被告アローエンタープライズ代表者が撮影した写真と認められる検丙第一号証の一ないし三、同第二号証の一ないし三、同第三号証の一ないし三、弁論の全趣旨によって被告ユーピー代理人が平成二年一二月一〇日撮影した同被告のホイールのキャップの写真と認められる丁第一三号証の一、二、同第一四号証の一、二、被告アローエンタープライズ、被告ユーピー各代表者本人尋問の結果によると、八本スポークのホイールは中央(車軸の上)の部分に小さなキャップをとりつける仕組みになっており、キャップには各会社のマークが記されているものであり、また自動車用品販売店におけるホイールの商品展示にあたってはホイールの商品名の表示がなされることが多いものと認められる。
しかしながら、ホイールとキャップとは別個のものであり、キャップによってホイールが識別されるものとは限らず、必ずホイールと同じ会社を示すキャップがとりつけられるものとも限らないのであり、また自動車用品販売店においてホイールの商品展示にあたって必ずしも商品名の表示が明確、適切にされるとは限らないのであるから、キャップの存在や商品名の表示によって本件各商品の誤認混同が避けられるものではない。
八 そして、以上によると、原告は、被告らの右各商品の販売によって営業上の利益を害されるおそれがあるものと推認される。
九 そうすると、被告らの右各商品による原告の商品との誤認混同侵害を除去するには、被告らの右各商品の販売を禁止するほか、違法行為を組成する被告らの右各商品を廃棄する必要があり、不正競争防止法1条1項1号の規定により、原告の被告らに対する各請求はいずれも認容すべきものである。
よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条93条1項本文、仮執行の宣言につき同法196条を適用して、主文のとおり判決する。
別紙目録(省略、本書五〇四頁以下参照)