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関連ワード 周知性 /  広く認識 /  需要者 /  類似性(類似) /  外観 /  混同のおそれ(混同) /  商品の形態(商品形態) /  混同のおそれ(混同) /  損害賠償 / 
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事件 昭和 63年 (ワ) 16553号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1991/03/25
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
一 被告は、別紙第一目録記載の封緘具(以下「被告商品」という。)を輸入し、
販売し、頒布してはならない。
二 被告は、原告に対し、五九四八万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
一 本件は、原告において、原告の販売する別紙第二目録記載の封緘具(以下「原告商品」という。)の形態が原告の周知の商品表示、被告の販売等する被告商品の形態が被告の商品表示であると主張して、不正競争防止法1条1項1号1条の2第1項の適用を求めている事案である。
二 争いのない事実 原告は、昭和五三年ころ以降、株式会社トスカから同社が製造した封緘具を購入し、これに「LOX」(ロックス)という商品名を付して日本国内において販売を始めた。これが原告商品である。
一方、被告は、アメリカ合衆国に本店を有する会社であるが、日本国内においては、封緘具、値札取付器具等の輸入、販売を主な業務としているところ、昭和五八年七月ころ以降、韓国において製造した封緘具を日本国内に輸入し、これに「アンビタッチ」という商品名を付して販売している。これが被告商品である。また、被告は、被告商品の販売を始めるまでは、別個の封緘具を販売していた。
三 争点1 原告商品の形態は、遅くとも昭和五七年末ころまでに、原告の商品表示として、日本国内において広く認識されるに至っていたか否か。
2 被告商品の形態は、原告商品の形態類似しているか否か。
3 被告の行為によって、原告商品と被告商品との混同が生じ、又は生じるおそれがあるか否か。
4 原告の被った損害の額いかん、また、損害賠償請求債権の一部が時効により消滅しているか否か。
当裁判所の判断
一 証拠によれば、次の事実を認めることができる。
1 原告商品は、挿通孔を持つ略円柱形筒状の頭部と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、右の挿通孔に挿通して係止される結合部からなり、この結合部に羽根の形をした係止突片が存在し、全体が合成樹脂で一体に形成された封緘具である(甲四及び五の各一、二、検甲一)。
2 被告は、原告による原告商品の販売より前に、「セキュラータッチ」という商品名の封緘具を販売していたが、これは、挿通孔を持つ略円錐形の頭部(一方向からのみ挿入可能)と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、右の挿通孔に挿通して係止される結合部からなり、全体が合成樹脂で一体に形成された封緘具である(検甲三、証人【A】の証言)。
3 株式会社サトーゴーセーは、遅くとも昭和五六年ころまでに封緘具の販売を始めたが、これは、挿通孔を持つ略角柱形筒状の頭部と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、右の挿通孔に挿通して係止される結合部からなり、全体が合成樹脂で一体に形成された封緘具である(甲一七、検甲四、
証人【A】の証言)。
4 原告商品と右「セキュラータッチ」とは、頭部の形状及び係止突片の有無、係止作用の点が異なり、更に、原告商品では頭部の両方向から結合部を挿通することができるが、「セキュラータッチ」は頭部の片方向、すなわち、円錐形の底面の方からのみ挿通することができるという相違がある。また、サトーゴーセーの販売に係る封緘具と原告商品とは、頭部の形状及び係止突片の有無、係止作用の点が異なる(前掲各証拠)。
5 原告商品と他の二つの商品との間において、商品の形態自体から明らかな相違点は、頭部の形状及び係止突片の有無にとどまり(右1ないし3の認定事実)、その余の点は、機能あるいは作用上の相違であって、外観上の形態自体からは必ずしも判然としない。もっとも、頭部の形状及び係止突片の有無のほかにも、形状の相違点がないとはいえないものの、極めて微細なものである。そして、これら各封緘具は、それ自体が極めて小さく、ひいては、その頭部及び原告商品の係止突片は、
更に小さなものである。したがって、取引者又は需要者は、取引の実情の下において、これら商品を見たときに、それぞれ別個の企業の商品であることを示す特徴的な形態の違いが存在するものと明確に認識することは困難であると認められる(前掲各証拠)。
二 右認定の事実によれば、原告が原告商品について周知性を獲得したとする昭和五七年末より以前に、原告商品のほかに、右のような紛らわしい二つの商品が競合的に存在したのであるから、そのころまでに、その中で特に原告商品のみが、極めて特徴的な形態を有し、その出所を表示する機能を有する商品表示として、周知性を獲得するに至ったものと認めることはできない。また、原告商品は、その販売後現在に至るまでの間、大量に販売されるとともに、その宣伝広告も相当行われたものと認められるが(甲四及び五の各一、二、八の一、二、九の一ないし三、一〇、
一一、一二ないし一五の各一ないし五、二〇の一ないし三、二二の一、二、二三、
二四の一、二、二五、二七、証人【A】の証言)、その後も「セキュラータッチ」その他の封緘具が販売されていること(乙一一、証人【A】、【B】の各証言)、
これら商品に特徴的な形態の違いが存在するものと明確に認識することは困難であること(前認定の事実)などから、現に原告商品の形態が商品表示として周知性を獲得しているとも認められず、他に右周知性を認めるに足りる証拠はない。
三 よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
第一目録被告が「アンビタッチ」という商品名で販売している封緘具にして、別添写真1の通り挿通孔を持つ円筒形の頭部と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、右挿通孔に挿通して係止される結合部からなり、全体が合成樹脂で一体に形成されたもの。
〈8990-001〉第二目録原告が「ロックス」という商品名で販売している封緘具にして、別添写真2の通り、挿通孔を持つ筒状の頭部と、この頭部の側面から延長する中間部と、この中間部の先端に形成され、右挿通孔に挿通して係止される結合部からなり、全体が合成樹脂で一体に形成されたもの。
<8990-002>