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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ23171損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ5172損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成17ワ27477損害賠償請求事件 平成18ワ7539損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成19ネ10035損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ14569不正競争行為差止請求事件 平成18ワ20189損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 類似性(類似) /  観念 /  共同不法行為 /  因果関係 /  弁護士費用 /  不当利得 /  代理人 /  代表者 /  営業秘密 /  2条1項4号 /  損害賠償 / 
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事件 平成 18年 (ネ) 2431号 損害賠償請求控訴事件
控訴人(1審原告)徳 島産業株式会社代表者代表取締役A
訴訟代理人弁護士山本忠雄
同 酒井一
訴訟復代理人弁護士佐々木優雅
被控訴人(1審被告)株式会社鮎家 代表者代表取締役B
訴訟代理人弁護士伊原友己
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2007/10/18
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原判決を次のとおり変更する。
2被控訴人は,控訴人に対し,235万1105円及びこれに対する平成16年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3控訴人のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,1,2審を通じ,これを20分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人の負担とする。
5この判決2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1控訴の趣旨1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,5000万円及びこれに対する平成16年7月16日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。
42項につき仮執行宣言第2事案の概要1本件は 控訴人が 被控訴人及び控訴人金沢工場長であった1審相被告C 以 ,, (下「C」という )に対し,?@被控訴人は,Cが控訴人に隠れて新会社を設立 。
して取引先を奪うのに加担したとして,民法709条,719条に基づく損害賠償請求をするとともに,?A上記被控訴人らが,共謀して,控訴人の営業秘密であるごま豆腐のレシピを不正に持出す等したとして,不正競争防止法2条1項4号,5号,民法719条に基づく損害賠償請求をした事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴を提起した。
なお,Cは,当審第2回口頭弁論期日(平成19年1月30日)において,控訴人の同人に対する請求を認諾した。
2本件における当事者の主張は,当審における主張を次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」第2の1及び3に記載のとおり(但し,Cのみに係る部分は除く )であるから,これを引用する。なお,原判決4頁3行目 。
の「あっった」を「あった」と改める。
(控訴人の主張)(1)控訴人と被控訴人との間の取引は,平成15年2月1日に被控訴人のいしかわに対する取引口座開設の時点で,正常な取引関係ではなくなり,実質的に終了したか,又は少なくとも極端に減少し,当事者双方が特段の努力をしない限り,回復不能となる状態に変容した。控訴人は商売人として取引量の拡大を期待したが,被控訴人の方は,そのような努力を全くしなかったもので,上記時点以降の取引は,訴訟対策等から,元々その意思もないのに形式的な取引を継続させ,何らメリットがなく信頼できないと気付いた控訴人の方から取引中止を申し出るように追い込んだものにすぎない。
(2)控訴人は,控訴人に生じた損害につき,従前の主張を下記のとおりに改める。
ア平成15年1月から4月までの間に被控訴人からの注文途絶及びCの横領等によって被った損害合計444万0410円(ア)平成14年の1月から4月までの控訴人の被控訴人に対する各種ごま豆腐等の合計販売金額は1393万6000円(1月108万6000円,2月189万7000円,3月372万6000円,4月722万7000円)である。これに対して,平成15年1月1日以降,事件が発覚した同年4月中頃までの合計販売額は172万2000円(1月133万7000円,4月38万5000円)にすぎない。これは,被控訴人らの共同不法行為によっていしかわが設立され,被控訴人がいしかわにごま豆腐等を注文したため,控訴人に対する注文が全くなされないという事態が生じたことによるもので,上記被控訴人らの共同不法行為がなければ,平成15年の1月から4月においても前年と同額かそれ以上の注文があったはずであり,したがって,平成14年度の1月から4月までの上記合計販売額1393万6000円から実際の平成15年1月および4月の合計販売額172万2000円を控除した1221万4000円が上記共同不法行為により控訴人の失った販売金額ということになるところ,控訴人の利益率は少なくとも販売金額の10パーセントを下らないから,控訴人の損害は122万1400円となる。
(イ)また,上記期間中にCによる資材無断使用等によって321万9010円の損害が発生している(なお,Cから受領した200万円等は損害の担保として控訴人が預かっているものであり(甲3,17 ,現段階 )では弁済としての効力を生じていない。。)イ平成15年1月から4月までの間の被控訴人の不当利得額894万8350円上記期間中,控訴人金沢工場の幹部職員であるCとDはいしかわを設立して控訴人から給料を受け取りながら,専らいしかわの仕事をしていた。
また,その余の従業員らも,控訴人の業務をするかたわら,右両名の指示の下にいしかわへの半製品の搬送作業等の業務に従事させられていたもので,これによって控訴人が損害を被った反面において,被控訴人といしかわは給料を支払わずに済んだ利得を得たものである。
上記従業員中,C,D,E,F及びGの5名は,いしかわの仕事に専従していたのであるから,被控訴人らの利得は上記5名に対する給与合計額の80パーセントである590万0406円(上記5名の給与合計額7,,.,,)。, 375 508円×0 8=5 900 406円 を下回らない またその余の従業員についても,人件費の少なくとも30パーセントである304万7944円(上記期間中の人件費10,159,814円×0.3=3,047,944円)分はいしかわのための仕事に充てられたと評価できるから,被控訴人らは同額の利得を得たものといえる。
ウ平成15年5月以降の取引による損害656万1700円(ア)?@平成15年5月から12月までの控訴人の被控訴人に対するごま豆腐等の合計販売金額は1952万7000円であるのに対し,平成14年の同期間の合計販売金額は2635万2000円であり,?A平成16年1月から形式的に取引が継続していた10月までの合計販売金額が2178万4000円であるのに対し,平成14年の同期間の合計販売金額は3706万5000円である。
上記?@の差額682万5000万円と?Aの差額1528万1000円は,通常の取引の変動の範囲内のものではなく,被控訴人らの共同不法行為がなければ発生しなかったものである。この間,被控訴人は控訴人との取引を拡大して行く意図はなく,新たな取引先が見つかるまでの,いわば時間稼ぎとして控訴人を利用していたにすぎない。のみならず,被控訴人は,控訴人との取引をいしかわに切り替えようとしたが不成功に終わったため,控訴人から損害賠償請求訴訟を起こさ, , れることをおそれて 控訴人に生じる損害を観念しにくくするために控訴人に対して,将来のビジネス機会があるように期待させつつ,徐々に取引額を減らすという方法を採用したものであるか,又は,控訴人と被控訴人との間の信頼関係が失われた結果,取引の縮小に向かったものと考えられることからすれば,上記?@,?Aの差額は,いずれも被控訴人らの共同不法行為と相当因果関係の認められる控訴人の損害というべきである。
(イ)さらに,被控訴人らの共同不法行為がなければ,少なくとも平成14年と同等額の取引が向こう3年は続いたものと考えられ,平成16年11月,12月と平成14年の同期間の各合計販売金額の差額322万3000円と平成17年と平成14年の同等額の各合計販売金額の差額3706万5000円を合計すると,4028万8000円となる。
(ウ)そうすると,平成15年5月から平成17年末までに得られるはずであった合計販売金額は6561万7000円であり,これと,前記のとおり10パーセントを下回らない控訴人の利益率とを乗じると,656万1700円となり,同額が,被控訴人らの共同不法行為と相当因果関係の認められる控訴人の損害であるというべきである。
エ控訴人従業員E及びFの退職による損害約2500〜3000万円上記E及びFの退職は本件問題を原因とするものであるところ,両名は控訴人金沢工場の中心的な存在であった者で,控訴人にとってもその穴埋めは容易でなく 具体的には その穴埋めのために 人員増加等の費用 直 ,,,(. 。) 接支給分である年間約838万円の1 5ないし2倍のコストがかかるの2年分約2500〜3000万円が,被控訴人らの共同不法行為との相当因果関係の認められる控訴人の損害となる。なお,EとFが退職したのは,控訴人が辞職を求めたからではない。
オサンプル制作費150万円控訴人は,被控訴人からの要求により豆腐製品をはじめ豆乳プリン,海鮮茶碗蒸し,煮こごりなど数々のサンプル試作を行ったが,これらは,いしかわにおいて試作した際には被控訴人においてすぐにも発売されるかのごとく言っていたものであるにもかかわらず,控訴人に対しては,何度も修正をさせた挙句,結局は商品化しなかったもので,かかる被控訴人の行為は,それ自体控訴人に対する不法行為を構成する。
したがって,上記試作に要したサンプル制作費150万円(甲24)についても,控訴人は損害賠償を請求できる。
カ間接損害控訴人は法人ではあるが代表者Aの同族経営であり人的色彩の濃い企業であり,同人らが本件不法行為により受けた精神的損害は1000万円を下らない。
弁護士費用本件訴訟は,三面関係の入り組んだ2件の訴訟事件の処理を要し,弁護士への訴訟手続代理の委任が必要となったが,その支払うべき金額は258万円を下らない。
ク以上ア〜キの合計は約6000万円に上るところ,本件においては,前記控訴の趣旨2項のとおりの金員の支払を求める。
(被控訴人の主張)(1)原判決の認定について,,「 , ア原判決は Cの不法行為をいしかわを設立して工場や機械を整備し, 」 控訴人に替わり 被控訴人との取引をいしかわにおいてしようとしたことであると認定しているが,これがそもそも誤りである。
イまた,控訴人の援助したと認定したことの裏付け事実として,原判決は?@平成14年12月に機械メーカーからの問い合わせについて,Iが今後の取引継続の見通しを話したこと,?A平成15年1月に300万円を貸し付けたこと,?B平成15年1月末にはIがいしかわを見学したこと,?C平成15年2月からいしかわの口座を開設して取引を始めたことを取り上げている。
しかし,?@は,控訴人の金沢工場の工場長であって,同工場に関する取引に関し,全権を持っているものと思われたCから,新規に機械装置を導入するので,メーカーから問い合わせがあればよろしく返答して欲しいと言われたため,Iは控訴人が新規に装置を導入するものという認識で事実に基づいて見通しを説明したものである。?Aは,被控訴人の代表者(B社長)がCから,東京の娘婿からの借入金の返済を迫られているので,何とか用立てて欲しい旨懇願されたので,個人として貸すことになっていたものが 被控訴人の経理の都合で会社名義での貸出しとされたに過ぎない 独 , (立・工場立ち上げの資金援助というには,あまりに低額である。さら。)に,?Bは,控訴人の第2工場的な位置づけで取引を始めるに際しての現場の生産体制,衛生チェック等の意味しかなく,?Cは,実質的に控訴人との取引の一環として認識していたものである。
したがって,これらの事実をもってしても,被控訴人がCの不法行為を援助したなどと評価できない。
(2)控訴人の主張についてア控訴人は,損害賠償請求に関し,平成15年2月1日の時点で実質的に取引関係は終了していた旨主張しているが,丙1別紙添付の取引高を示すグラフや数字(これらについては争いがない )からも明らかなとおり, 。
同年における取引量が極端に減ってゼロに近いということでもないから,実質的に取引関係が終了していたなどとはいえない。ちなみに,ごま豆腐については,他社の後発類似製品の市場参入等で発売当初のような売上げ数量を確保できなくなっているが,これは市場原理であって,被控訴人に責任転嫁できる筋合いではない。加えて,被控訴人は,新商品の競争力が落ちてきたごま豆腐に匹敵するヒット商品の開発を行うべく,控訴人には, 。 種々努力を願ったが 思うような商品の開発には至らなかったものであるそれでも,被控訴人は,発売当初ほどの売上げは見込めなくなっているとはいえ,それなりの数量が出るごま豆腐は大切な商品アイテムであると捉え,控訴人との取引の継続を強く念願していた(丙2の文面)のである。
イ控訴人の損害の主張については,いずれも被控訴人の行為に起因したものではないし,法的にも相当因果関係を無視した主張としか思えない。
被控訴人と控訴人との取引関係の断絶は,控訴人自身が望んだものである。平成15年も16年も,商品の新味性が薄れたことや多くの他社類似製品の登場等の影響でごま豆腐商品が発売された当初頃のような取引数量ではないにしても,順調に定番商品として取引高が維持されていたのである。そして,この時期,被控訴人は,ごま豆腐商品に匹敵するような新たなヒット商品の開発にも意欲的に取り組んで,控訴人にも試作品を出してもらったが,残念ながら商品化するほどの域には達し得ておらず,もう少しの時間が必要な状況にあった(メーカーサンプルがすべて商品化できるなどということがないのは業界の常識であろう。そうしたところ,控 。)訴人が一方的に取引断絶を通告してきたのであるから,被控訴人としてはどうしようもない。真に取引を続ける意思がないにもかかわらす,形だけ取引を続けていたかのような控訴人の主張は真実ではない。
第3当裁判所の判断1当裁判所は,控訴人の被控訴人に対する請求は,本判決主文2項の限度で理由があると判断する。
その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3の1(, 。) から3 ただし 原判決13頁20行目以下及びCのみにかかる部分を除くと同様であるから,これを引用する。
2当審での当事者の主張について(1)控訴人は,控訴人と被控訴人との間の取引は,平成15年2月1日に被控訴人のいしかわに対する取引口座開設の時点で,実質的に終了したか,又は少なくとも極端に減少し,当事者双方が特段の努力をしない限り,回復不, , 能となる状態に変容したにもかかわらず 被控訴人はそのような努力をせずその後,元々その意思もないのに,訴訟対策等の理由で形式的な取引を継続させ,何らメリットがなく信頼できないと気付いた控訴人の方から取引中止を申し出るように追い込んだ旨主張し 控訴人常務取締役であるH 以下 H , (「常務」という )の証言中にも,これに沿う部分がある。 。
しかし,丙9ないし22(枝番含む )に照らせば,控訴人の製造するご 。
ま豆腐は被控訴人にとっても重要な商品であり,特に百貨店への納品確保については被控訴人としても神経を尖らせる状態にあったことから,被控訴人に意図的にその発注を抑えるような意図があったとも考えにくいこと,ごま豆腐の販売に関しては,他の競合商品が新たに出現する中で,被控訴人としてもそれなりに拡販に努めていることが窺われるのであって,これらの事実, , , に照らせば 上記証言等のみによっては 控訴人と被控訴人との問の取引が被控訴人のいしかわに対する取引口座開設の時点で実質的に終了したとか,被控訴人が訴訟対策等から形式的に取引の継続を装ったものとまで認めるに足りないし,他にこの点の控訴人の主張を認めるに足りる証拠はない。
また,控訴人は,被控訴人らの共同不法行為により被控訴人と控訴人との間の信頼関係が失われてしまった以上は,被控訴人においても格別の努力をしない限り従前同様の取引関係が回復するはずがないとも主張しているが,H常務の証言等に従っても,少なくとも平成16年の初めころまでは,控訴人としても,いしかわの問題に関する被控訴人の関与はさほど深くないと認識していたというのであり,本件発覚後のいしかわの事業等の打切り,精算によって,一旦事態が収拾され,平成15年5月以降被控訴人との間での取引が再開され平成16年10月まで継続した以上,被控訴人の格別の努力がない限りは従前同様の取引関係が回復しないとまでいうことはできない。
さらに,控訴人は,被控訴人との取引に何らメリットがなく信頼できないと気付いた控訴人の方から取引中止を申し出るように追い込んだとも主張するが,H常務の証言に照らしても,控訴人側から取引中止を申し入れた真の理由は明らかでないといわざるを得ず,少なくとも,被控訴人が控訴人側から取引中止を申し入れるように仕組んだとまで認めるに足りる証拠はない。
結局,この点に関する控訴人の主張は採用することができない。
(2)控訴人の被った損害等についてア控訴人の主張(2)アの損害について(ア)甲45によれば,平成15年の1月から4月までの間,被控訴人に対する控訴人の販売額は,前年度の同期間と比べて控訴人主張に係る差額のとおりの減少を示しており,この点は,いしかわの活動によるものであると認められ,かつ,弁論の全趣旨によれば,控訴人の利益率は少なくとも販売額の10パーセントを下らないことが認められる。そうすると,結局,控訴人は,被控訴人らの共同不法行為によって,控訴人主張のとおり122万1400円の損害を被ったものと認められる。
(イ)次に,控訴人は,上記期間中にCによる資材無断使用等によって321万9010円の損害が発生している旨主張するところ,その点は弁論の全趣旨によって認められるが,この点に関して控訴人はCから200万円(甲3)と48万9305円(甲17,弁論の全趣旨)を受領しており,弁論の全趣旨によれば,この点についてはCによる弁済と認められるから,その部分は消滅している(なお,少なくとも,当審においては,被控訴人もその旨主張しているものと認めるべきである。した。)がって,その残余の72万9705円は被控訴人らの共同不法行為との因果関係のある控訴人の損害と認められる。
(ウ)以上のとおり,この点に関する控訴人の損害は,195万1105円の限度でこれを認めるべきである。
イ控訴人の主張(2)イの不当利得額について平成15年1月から4月までの期間に控訴人がCらに支払った給料等については,控訴人の主張を前提としても,いしかわにおいて負担すべき人件費であるから,いしかわが不当利得したということはいえても,その取引先である被控訴人が不当利得したということにはならない。この点の控訴人の主張は採用できない。
ウ控訴人の主張(2)ウの損害について平成15年5月以降の取引により控訴人に生じた損害については,前記(1)の認定判断に照らせば,被控訴人らの共同不法行為因果関係のある損害とはいいがたいし,本件全証拠を精査しても,他にこの点を認めるに足りる証拠は見出せない。
エ控訴人の主張(2)エの損害について控訴人金沢工場の幹部E及びFの退職によって生じた損害については,仮に同人らの辞職が同人らの意思に基づく辞職であったとしても,同人ら(,, には他に選択の余地はあったことは明らかであり 甲38 39によればもともと両名は早くから計画から下りたもので,いしかわの設立等の問題との関係は薄かったといえるし,H常務も,みんなで引き留めたとまで証言している,いしかわの問題に関連があったとしても,結局は,両名 。)の自由な選択に基づくものというべきであるから,被控訴人らの共同不法行為との間の因果関係は認め難い。
オ控訴人の主張(2)オの損害について弁論の全趣旨によれば,試作品が商品化されるとは限らず,被控訴人のIの発言も単なる社交辞令又は個人的見解にすぎなかったことが窺われるから,控訴人の主張は採用できない。
カ控訴人の主張(2)カの損害について控訴人がその代表者の同族経営であり人的色彩の濃い企業であるとしても,法人との関係で精神的損害に係る損害賠償を命じるのは相当でなく,この点の控訴人の主張も採用できない。
キ控訴人の主張(2)キの損害について弁護士費用は,以上の検討から認容すべき195万1105円の約2割の40万円の限度でこれを相当因果関係のある損害と認められる。
, , 3その他 原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,当審の認定,判断を覆すほどのものはない。
第4結論以上によれば,控訴人の本件請求は,上記第3の2,(2)のア及びキの合計額である235万1105円の限度でこれを認容し,その余は棄却すべきところ,これと結論を一部異にする原判決をその限度で変更することとし,主文のとおり判決する。
(平成19年5月29日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 菊地浩明