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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ5172損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ14527損害賠償等請求事件 平成18ワ15947マニュアル使用差止請求事件 判例 不正競争防止法
平成17ワ23171損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
昭和60ワ4131秘密保持義務存在確認等請求事件 判例 不正競争防止法
平成15ネ1010損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 類似性(類似) /  過失 /  共同不法行為 /  逸失利益 /  因果関係 /  利益額(利益の額) /  弁護士費用 /  ライセンス /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  得べかりし利益 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  有用性 /  営業上の情報 /  非公知性 /  営業秘密 /  2条1項4号 /  2条1項5号 /  不正取得行為 /  不正開示行為 /  プログラム /  不正の利益を得る目的(図利目的) /  損害賠償 /  損害額 /  具体的態様 / 
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事件 平成 18年 (ワ) 5172号 損害賠償請求事件
原告イープランニング株式会社
原告マ テリアル有限会社
原告ら訴訟代理人弁護士村田秀人 川添圭
被告Y1
被告Y2
被告Y3
被告Y4
被告ら訴訟代理人弁護士甲田通昭 福西咲也子 沙々木睦
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2008/06/12
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,連帯して,原告イープランニング株式会社に対し,257万9104円及びこれに対する平成16年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,連帯して,原告マテリアル有限会社に対し,97万7276円及びこれに対する平成16年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告らの上記被告らに対するその余の請求及び被告Y4に対する請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用の負担は次のとおりとする。
(1)原告イープランニング株式会社の負担分は,同原告に生じた費用- 2 -の5分の4と,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に生じた費用の15分の8と,被告Y4に生じた費用の3分の2とする。
(2)原告マテリアル有限会社の負担分は,同原告に生じた費用の8分の7と,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に生じた費用の24分の7と,被告Y4に生じた費用の3分の1とする。
(3)被告Y1,被告Y2及び被告Y3の負担分は,それぞれ,原告イープランニング株式会社に生じた費用の15分の1と,原告マテリアル有限会社に生じた費用の24分の1と,同被告らに生じた(1)及び(2)以外の費用とする。
5この判決の第1項及び第2項は仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求の趣旨1被告らは,原告イープランニング株式会社(以下「原告イープランニング」という )に対し,連帯して1490万9104円及びこれに対する平成16年 。
2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,原告マテリアル有限会社(以下「原告マテリアル」という )に対。
し,連帯して744万8744円及びこれに対する平成16年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告らの負担とする。
4仮執行宣言第2事案の概要原告らは,?@出会い系サイトを経営する原告イープランニングの元従業員であったP1及び被告Y3は,原告イープランニング及び同じく出会い系サイトを経営する原告マテリアルから示され又は不正に取得した営業秘密である顧客情報を,不正の利益を得る目的で出会い系サイトを経営する被告Y1,, 並びにその従業員である被告Y2及び被告Y4に開示し 被告らは共謀の上そのような不正開示行為又は不正取得行為がされたことを知って,上記顧客情報を用いて出会い系サイトの営業活動を行った,?AP1及び被告Y3は,原告イープランニングの営業秘密である出会い系サイト用携帯電話サイト構,, , 築のためのプログラムを不正に取得し 被告Y1 被告Y2及び被告Y4はこの不正取得行為がされたことを知って同プログラムを取得し,被告らは共, , 謀の上 同プログラムを用いて出会い系サイトの営業活動を行ったと主張し被告らに対して,次の不正競争防止法又は民法の各条項に基づいて損害賠償を請求した。
(1)顧客情報関係ア被告Y3(ア)不正競争防止法(以下「法」という )2条1項4号又は7号,4 。
条,民法719条(イ)民法709条,719条イ被告Y1(ア)法2条1項5号又は8号,4条,民法719条(イ)民法709条,719条(ウ)民法715条ウ被告Y2及び被告Y4(ア)法2条1項5号又は8号,4条,民法719条(イ)民法709条,719条(2)プログラム関係ア被告Y3(ア)法2条1項4号,4条,民法719条(イ)民法709条,719条イ被告Y1(ア)法2条1項5号,4条,民法719条(イ)民法709条,719条(ウ)民法715条ウ被告Y2及び被告Y4(ア)法2条1項5号,4条,民法719条(イ)民法709条,719条1前提事実(争いがないか弁論の全趣旨により認められる )。
(1)原告イープランニングは,平成14年11月から「出会い広場」の名称で出会い系サイトを運営し,原告マテリアルは,平成15年2月から「モアラブ」の名称で出会い系サイトを運営していた(原告らの運営する上記各出会い系サイトを以下 「原告らサイト」という。 ,。)(2)P1,被告Y3及び被告Y4は,原告イープランニングの従業員であったが,いずれも平成15年4月から7月にかけて同原告を退職した。退職当時,P1及び被告Y3は正社員であり,被告Y4はアルバイトであった。
(3)被告Y1は,従前から雇用していた被告Y2のほか,被告Y3及び義妹である被告Y4並びにP1を雇用して 「ソルモンド」の屋号で,平成15 ,年8月から「アップル・アップル (後に「Choco Mint )という出会い系 」」サイトを開設し,その後 「恋げっと「mocoPA」及び「恋の予感…」の ,」,3つの出会い系サイトを追加して開設し,運営した(被告Y1の運営する上記各出会い系サイトを併せて,以下「被告らサイト」という。。)2争点(1)被告らの損害賠償責任の有無ア不正競争防止法違反(被告ら)(ア)原告らの顧客情報及び原告イープランニングのプログラムは法2条6項の「営業秘密」に該当するか。
(イ)被告Y3は原告らの顧客情報及び原告イープランニングのプログラムを不正に取得し又は不正に開示したか(法2条1項4号,7号 。)(ウ)被告Y1,被告Y2及び被告Y4は,被告Y3らによる不正取得行為又は不正開示行為がされたことを知って,原告らの顧客情報及び原告イープランニングのプログラムを営業に使用したか(法2条1項5号,8号 。)イ一般不法行為(被告ら)「」 原告らの顧客情報及び原告イープランニングのプログラム営業秘密に該当しない場合,被告らの行為が一般不法行為(民法709条)を構成し,被告らが共同不法行為責任(民法719条)を負うか。
ウ使用者責任(被告Y1)被告Y1は,被告Y3らによる不正取得行為又は不正開示行為がされたことを知らないで,原告らの顧客情報及び原告イープランニングのプログラムを営業に使用した場合,被告Y3らの行為につき使用者責任(民法715条)を負うか。
(2)原告らの損害額第3争点に関する当事者の主張1争点(1)ア(ア)(営業秘密性)について【原告らの主張】(1)原告イープランニングの出会い系サイトは,サイト利用者(会員)が携帯電話を用いてインターネットから原告イープランニングの「出会い広場」のサイトにアクセスすると,原告イープランニングが設置していたインターネットサーバ内に格納されているプログラム(以下 「本件プログラム」と ,いう )が起動し,会員専用のメニュー画面が出力され,掲示板への書き込 。
みや相手への返信,及び料金の支払等ができるようになっていた。
本件プログラムは,原告イープランニングが設置していた上記インターネットサーバコンピュータ(コンピュータ名「www.(省略)内に保存されてい )」た別紙1一覧表記載の各プログラム群であり,それぞれ,同一覧表の「ディレクトリ名」欄記載のディレクトリに保存された「ファイル名」欄記載の各プログラムの集合体である。また,上記プログラムの各ファイルが有していた機能は,別紙1一覧表「機能」欄記載のとおりである。
上記サーバーにログインして,本件プログラムのソースコードにアクセスするためには,そのためのIDとパスワードが必要とされ,かかるIDとパスワードを保有していたのは,本件プログラムの開発者であり原告イープランニングの従業員(平成15年8月に原告マテリアルに転籍)であったP2と,原告ら代表者の2名のみであった。
なお,本件プログラムは,原告マテリアルの出会い系サイトの営業にもライセンス供給されていた。
したがって,本件プログラムは,有用性,非公知性及び秘密管理性のいずれも満たす「営業秘密」である。
(2)原告イープランニングが設置していた上記インターネットサーバーコンピュータには,原告らのサイト利用者の情報を収集するためのデータベースがそれぞれ設置されており,原告らのサイトを利用した顧客の情報を記録したデータが格納されていた。その内容は多岐にわたるが,その中には,別紙2記載の「テーブル名」欄記載のデータベース(ファイル名は「保存ファイル名」欄を参照)に含まれる,以下のフィールド名に記録されたデータがあった(以下「本件顧客データ」という。。)〔フィールド名〕〔記録されている内容〕mail会員登録された顧客のメールアドレスprice入金額point所有ポイントpoint_b入力前ポイント本件顧客データ中に記録された会員は,出会い系サイトの利用者であり,本件顧客データからメールアドレスを抽出すれば,別の出会い系サイトを開設した際に電子メールを送付して勧誘することが可能である。また,入金額,所有ポイント及び入力前ポイントを見れば,出会い系サイトを多く活用している会員(いわゆるヘビーユーザー)が判明するため,これを抽出してより積極的な勧誘を行うことも可能となる。
被告らが原告イープランニングの従業員として勤務していた当時,従業員40人のうちの35人がアルバイトであったが,アルバイト従業員は,主として社内のパソコンからサクラ役(男性客からのメールに対して一般女性客を装って返事を書く役)を行う「一般アルバイト」と「リーダー 「サブリーダー」に 」分かれていた。そして,その当時における,本件顧客データに対するアクセス権限を一覧表にすると,別紙3記載のとおりである。すなわち,本件顧客データに対するアクセスについては,アルバイトと正社員(原告ら代表者及びシステム管理者であるP2を含む)によって大別されており,最も重要な顧客情報であるメールアドレス,電話番号及び入金履歴については,一部の例外(アルバイトのうち入金・問合せ担当者。被告Y4はこれに当たる )を除き,正社員 。
のみが閲覧可能であった。そして,具体的には,社内のパソコンから所定のアドレス(URL)にアクセスすると,IDとパスワードの入力を促す画面が表示され,各従業員に与えられたIDとパスワードを入力することにより,業務が行えるようになるが,本件顧客データにアクセスするためには,正社員のID・パスワードを入力することが必要であった。
また,原告イープランニングは,P1及び被告Y3が退職する際に,両名との間で機密保持に関する合意をした。
以上のとおり,本件顧客データは,有用性及び非公知性を有しており,また上記のようにアクセスし得る者をIDとパスワードによって一定の者に制限していたから 秘密管理性も有する したがって 本件顧客データは営 ,。,,「業秘密」である。
【被告らの主張】原告らは,本件プログラムや本件顧客データに対するアクセスをIDとパスワードによって制御していたと主張するが,そのような事実はない。原告らでは,アルバイト・正社員を問わず,与えられたIDとパスワードを使用することにより,会員の「年齢」「希望する異性のタイプ」「居住している都道府県」「利用した日時」「利用料金」などの顧客情報を自由に閲覧できる状態にあった。
原告ら社内で厳格なアクセス制限がされていなかったことは,IDとパスワードによるアクセス制限の対象となっていた情報とアクセス権限を有する者に関する原告らの主張が変遷を繰り返していることからも明らかである。
また,従業員に与えるIDとパスワードの管理も杜撰であった。すなわち,原告らは,従業員に対して,IDとパスワードの管理について特に注意することもなく,入力担当のアルバイト従業員に至っては,複数のアルバイト従業員で1つのID及びパスワードを共有していた上,このID及びパスワードを記載した紙を入力用のパソコンのところに貼って使用しており,入力担当アルバイト従業員で退職者が出たにもかかわらず,その際にもID及びパスワードが変更されることもなかった。さらに,本件プログラムについては,P2は,自分のIDとパスワードをそれと分かるようにメモ書きした紙片を,離席中でも鍵をかけていない引き出しに保管していたり,原告代表者やP2は,特にアクセス制限のパスワード等もかけずに,パソコンにID及びパスワードを入力したままで離席することもあった。
また原告らでは,従業員に対して,退職者を出入りさせないようにする指示や,原告ら代表者やP2のパソコン,机への接触禁止との指示もなかった。
さらに原告らにおいては,従業員に対し,顧客データが大事な情報であるということをぱっと見て分かるような措置はとっておらず,口頭でも伝えていなかったし,本件プログラムについても,その存在や機能だけでなく,それが原告らにとって大事な情報であるということも説明していなかった。
以上からすれば,本件プログラムや本件顧客データが他の情報とは異なり,秘密であると客観的に認識できるように取り扱われていなかったことは明らかであり,それらは営業秘密に必要な秘密管理性を欠くものというべきである。
なお,原告らが主張する機密保持に関する同意書は,被告Y4については作成されていないし,被告Y3も内容については一切説明を受けずに署名させられたもので,その合意は公序良俗違反で無効である。
2争点(1)ア(イ)及び(ウ)(不正競争行為)について【原告らの主張】本件プログラムについては,P1又は被告Y3が,システム担当者であるP2の机を調べて引き出し内に保管されていたP2のID及びパスワードが記載されたメモ書きを発見したか,又はP1及び被告Y3が原告イープランニングを退職する直前,システム担当者であるP2が来客やトイレ等のため短時間離席し,同人のノートパソコンが同人の机上に置かれている状態であった隙をみて同ノートパソコンを操作し,同人のID及びパスワードを発見し,これを利用して入手したと結論できる。このことは,P1及び被告Y3が,原告イープランニングを退職直後の平成15年6月下旬から同年7月ころまでの間,深夜に複数回にわたり, 原告事務所を訪れていたとの原告イープランニングの従業員の報告があることや原告らのサイトと被告らのサイトを比較すると,各画面に表示される画面構成や文字のみならず,各ページのインターネットアドレス(URL)に表示されるプログラム名と引数(ひきすう)が同一であること(甲20)から明らかである。
本件顧客データについては,正社員及び被告Y4であれば本件プログラムを通じて閲覧できたことから,P1,被告Y3及び被告Y4らが,自らのID及びパスワードを用いて本件プログラムにログインし,収集したものと推測される。
そして,P1,被告Y3及び被告Y2は,平成16年2月24日に原告ら代, (「」。) 表者 P2及び原告ら訴訟代理人の村田秀人弁護士 以下 村田弁護士 というと面談した際,P1と被告Y3が本件プログラムと本件顧客データを原告らに無断で取得したことを認め,被告Y2もこれを認めており,その旨の議事録(甲21)も作成された。
また,被告Y1は,自ら経営する被告らサイトを開設した時点において,原告らサイトのシステム(本件プログラム)が利用されていることを知っており,本件顧客データが利用されることも当然知っていた。
さらに被告Y4は,被告Y1の義妹であって,ソルモンドにおいて原告イープランニングと同一の業務に従事しており,被告Y1にP1を引き合わせることをしたのであるから,本件における関与は明らかであり,他の被告らと共謀したものである。
以上より,被告らは前記事案の概要?@及び?A記載の不正競争行為をした。
【被告らの主張】(1)P1及び被告Y3が本件プログラム及び本件顧客データを不正取得,不正開示,不正使用したことはなく,被告Y1,被告Y2及び被告Y4が,そのことを知って本件プログラム及び本件顧客データを被告らサイトの営業に使用したこともない。被告Y1は,当初,被告Y2に命じて出会い系サイト用のプログラムを購入させたが,業績が上がらなかったため,被告Y4を通じてP1を紹介され,そのP1の提案により,被告らサイトを原告らサイトのような使い勝手のよいものにするために200万円を支払ってプログラムを製作させた上,頻繁に利用する客に勧誘メールを送っても売上増につながらず,大量のメールアドレスを作り出す機械が必要であるというので,その購入費も支払った。また,被告Y3は,P1の紹介により,サクラ役として入社したものである。
(2)本件プログラムの不正取得については,その具体的態様について原告らの主張は合理的理由もなく変遷している上,P1や被告Y3が,原告らの主張するように誰にも見咎められずに原告ら代表者やP2の机,パソコンを探ることは不可能である。また,原告らサイトと被告らサイトのプログラム名や引数名が同一である点については,一般にプログラム名や引数名には,いかなる処理のためのものであるのかがすぐに分かるように名前を付けることが多いところ,原告らサイトと被告らサイトで同一であるプログラム名及び引数名につ,, 。 いては 大半が その内容を示すにあたって一般的に用いられている語であるまた,そのようなものでない場合にも,被告らの出会い系サイトを作成したP1は,原告イープランニングで原告らサイトに触れていたのであるし,それらは既に原告らサイトの「URL表示」で公開されているのであるから,これらを使用したからといって,「営業秘密」の侵害にはならない。
(3)原告らが指摘する平成16年2月24日の議事録は,その際の話合いの内容を記載したものではなく,そこに記載されたような内容の話は一切されなかった。また,議事録への被告Y3らの署名も,話合いに出席した証拠にと求められてしただけであり,内容を確認の上でしたものではない。かえって,議事録では,原告ら代表者は 「当方としては説明内容に納得していません 」と記載 , 。
しているのであって,これは,被告Y3らが本件プログラム等の盗用を認めていなかったことの証左である。
被告Y1が平成16年3月1日に話したことも,上記(1)の内容にすぎない。
3争点(1)イ(一般不法行為)について【原告らの主張】仮に,本件プログラム又は本件顧客データが法2条6項の「営業秘密」に該当しない場合であっても,被告らは,出会い系サイトの運用において,本件プログラムと本件顧客データの重要性を十分に認識しつつ,P1と共謀して,本件プログラム及び本件顧客データを原告イープランニングに無断で取得し,被告らサイトへ利用しているのであるから,被告らには,少なくとも共同不法行為に基づく損害賠償責任があるというべきである(民法719条,709条 。)【被告らの主張】争点(1)ア(イ)及び(ウ)での主張のとおりであり,否認する。
4争点(1)ウ(被告Y1の使用者責任)について【原告らの主張】仮に,被告Y1が,P1及び他の被告らが本件プログラム及び本件顧客データを原告イープランニングに無断で取得して被告らサイトへ利用していることを知らなかったとしても,自身が経営するソルモンドの業務の一環として,P1,被告Y3,被告Y2,被告Y4らを雇用してその業務に従事させ,その事業におい,, て上記の不正競争行為及び不法行為がなされているのであるから 被告Y1には民法715条の使用者責任に基づく損害賠償責任がある。
【被告Y1の主張】使用者責任の前提となるP1,被告Y3,被告Y2,被告Y4らの不正競争行為及び不法行為が存しないことは争点(1)ア(イ)及び(ウ)のとおりである。
また,少なくとも,原告らが主張する本件プログラム及び本件顧客データの取得行為は,被告Y1の出会い系サイト事業において「職務の執行につき」なされたものとはいえないので,被告Y1について使用者責任は成立しない。
5争点(2)(損害額)について【原告らの主張】(1)原告イープランニングの損害アライセンス料相当額(法5条3項3号)本件プログラムは,画像やメニュー等を柔軟にカスタマイズ(編集)できる構造になっていることが特徴であったことから,原告イープランニングは,営業秘密である本件プログラムについて,出会い系サイトを構築しようとする業者(4社)との間でライセンス契約を締結していた。そこでのライセンス料は,初期導入のためのライセンス料として1サイトあたり150万円,開設後は本件プログラムにより得た売上げの20%相当額とされていた。
, () 被告らサイトは 前述のとおり4つのインターネットアドレス URLを用いて運営されていたから,これらの初期導入ライセンス料相当額は600万円となる。また,被告らは,本件プログラムを不正に使用したこと, , により 少なくとも合計1174万5521円の売上げを上げていたからライセンス料相当額はその20%である234万9104円となる。
したがって,原告イープランニングが受けた本件プログラムライセンス料相当額の損害は,少なくとも834万9104円となる。
イ売上減少による損害原告らサイトの毎月の売上高の推移については別紙4記載のとおりである,, 。 が 両サイトとも 平成15年8月を境として売上げが大幅に落ち込んでいる原告らサイトでは,平成15年7月から8月にかけて,サイトの構成をリニューアルしたり,利用方法や約款・料金の改定をしたりした事実はなく,原告ら自身によるいわゆる「客離れ」を誘発するような事情は一切存在しなかった。
原告らの売上げが安定して推移していたのは,優良顧客(ヘビーユーザー)を多数抱えていたからであるが,被告らが本件プログラム及び本件顧客情報を取, , 得 使用して被告らサイトの運営を始めたのが平成15年8月以降であるから同時期以降の原告らサイトの売上げの急激な減少は,被告らサイトの開設が主たる原因であるものといわざるを得ない。
そして,その逸失利益については,その他の要因(被告らサイト以外の出会い系サイトの開設等)の影響も考慮し,原告らの売上減少分の約80%を下らない金額が,被告らサイトの開設と相当因果関係のある損害として認められるべきである。
そして別紙4記載のとおり,原告イープランニングでは,被告らサイトが開設された平成15年8月を境として,月間の平均売上高が約650万円減少していることが明らかであるから,その80%相当額の520万円が,少なくとも原告イープランニングの受けた損害となる。
弁護士費用弁護士費用相当額については,原告イープランニングに生じた各損害の合計金の10%を下ることはないから,原告イープランニングについて136万円が弁護士費用相当額の損害として認められるべきである。
, 。 エ以上より 原告イープランニングの損害額は1490万9104円となる(2)原告マテリアルの損害ア調査費用原告らでは,平成15年8月以降,会員数及び掲示板への書き込みが伸び悩んだり,従業員が次々と退職したりするようになったため,本件プログラムの開発者であるP2が,その原因と対策の調査に専従することになり,本件の事実関係の調査と,原告らサイトと被告らサイトの比較調査等のために従事した。そして,P2は,平成15年8月から9月にかけて,他のプログラムのメンテナンスやバージョンアップ作業を中断し,平成15年8月から9月までの2か月間,本件プログラムの流出経緯等の調査に専従した。P2は,平成15年8月に原告イープランニングから原告マテリアルに転籍しており,原告マテリアルが,平成15年8月及び9月にP2氏に対し支払った給与は333万3333円であるから,これが本件調査に要した費用として原告マテリアルの損害となる。
また,P2氏は,被告らから今後このような侵害行為を受けないためのソフトウェア製品を購入したが,この購入費用(消費税込み7万5411円)は原告マテリアルが支出している。このソフトウェア製品にはプログラムを暗号化して第三者に読まれないようにする機能と,特定のマシンでのみ実行可能にする機能がある。
したがって,原告マテリアルの調査費用相当の損害は,合計340万8744円となる。
イ売上減少による損害原告マテリアルも,原告イープランニングと同様に,平成15年8月を境として月間平均売上高が約420万円減少しているから,その80%相当額の336万円が,少なくとも原告マテリアルの受けた損害となる。
弁護士費用弁護士費用相当額については,原告マテリアルについて68万円が認められるべきである。
エ以上より,原告マテリアルの損害額は744万8744円となる。
【被告らの主張】, 。 原告ら主張の損害は いずれも被告らの行為と相当因果関係が認められない(1)原告イープランニング関係のライセンス料相当額については,原告が提出した「取引基本契約書」なるものには,取引の相手すらも明らかにされておらず,また,初期導入費用に至っては契約書上に一切記載がないことなどからしても,原告らの主張するようなライセンス事業が真に行われていたのか極めて疑わしいといわざるを得ない。
(2)売上減少による損害については,原告らは,原告らサイトの売上減少が生じた時期に,原告らサイトの優良顧客を目にしなくなったこと,複数のアルバイト従業員が急に同時期に辞めたこと,及び,原告イープランニングを退職した被告Y3らが新たに出会い系サイト事業を始めていることを知ったことから,被告らサイトにより,原告らの顧客が奪われていると思い込んだだけであって,客観的証拠は全くない。
また,出会い系サイトの売上げを継続して増加させる上で最も重要なのは,常に新規の顧客を掴み続けることであるが,その上で大きなウェイトを占めるのが勧誘メールである。しかし,平成15年の特に夏ころは,迷惑メールの対策として,携帯電話1端末から1日に送信できるメールの数を制限すること,携帯電話1端末から1回に送信できるメールの数を制限すること,送信者に簡単に推測できるメールアドレスの使用をできなくすることなど,業者が一度に大量のメールを送れないようにする対策が相次いで取られたところ,原告らサイトの売上げが減少した原因はこの点にあると考えられる。
そして,そもそも,原告らの優良顧客が,原告らサイトを使用し続けるか,他社サイトに乗り換えるかは,結局のところ,個々の顧客の判断によるのであって,仮に被告らが原告らの優良顧客に被告らサイトの勧誘メールを送っていたとしても,この行為と原告らサイトの売上減少との間に相当因果関係はない。
よって,仮に被告らが本件顧客データを取得して,その中の優良顧客に対し勧誘メールを送信していたとしても,原告らサイトの売上減少は被告らの行為と相当因果関係のある損害とはいえない。
(3)調査費用については,P2は原告マテリアルと雇用契約を締結して働いている労働者であり,原告マテリアルとしては,P2が「本件プログラム流出経緯等の調査」を行うと,他の業務を行うとにかかわらず,P2に対し,定められた給与を支払わなければならない立場にあったから,P2の平成15年8月分,9月, , 分の給与は 仮に被告らが原告らから本件プログラム等を取得していたとしても同行為と因果関係の認められる損害とはいえない。
また,ソフトウェア購入代金については,原告らによる本件ソフトウェア購入当時既に被告らが本件プログラムを取得する行為自体は終了しているのであって,今後の侵害行為防止措置のための費用と被告らの取得行為との間には因果関係がない。よって,本件ソフトウェア購入費用は,仮に被告らが原告らから本件プログラム等を取得していたとしても,かかる行為と因果関係のある損害とはいえない。
第4争点に対する当裁判所の判断1争点(1)ア(ア)(営業秘密性)について(1)本件プログラムについてア証拠(甲4の1〜4,26,証人P2)によれば,次の事実が認められる。
(ア)本件プログラムは,原告イープランニングが出会い系サイトを運営する目的でP2が作成した会員制のインターネット掲示板プログラムであり,原告イープランニングが契約しているインターネットサーバー内に格納されており,サイト利用者である会員が携帯電話を用いて原告イープランニングのサイトにアクセスすると,会員専用のメニュー画面が出力され,掲示板への書き込みや相手への返信,料金の支払等ができるプログラムである。
(イ)本件プログラムは,上記のインターネットサーバー内に格納されているが,それをダウンロードするためには,サーバーへログインするためのIDとパスワードが必要であり,それを有していたのは原告ら代表者とP2のみであった。
(ウ)原告イープランニングは,平成15年4月以降,合計4社に対して,本件プログラムの使用許諾契約を締結したが,そこでは,?@被許諾者は使用料を支払うこと,?A被許諾者は,プログラムの使用権の譲渡又は再使用の許諾,プログラムの化体した物,関連資料,マニュアル等の複製,プログラムの機密又は知識の漏洩,原告イープランニングの指定したサーバー以外のサーバーにおけるプログラムの使用及びサーバーの設置場所の移転を禁じられていた(なお被告らは,甲第4号証の1ないし4について,被許諾者欄が非開示とされて提出されていることからその信用性を疑うが,その形式及び内容から見て,特にその信用性を否定すべきものとは認められない。。)イ上記事実に基づき,本件プログラムが法2条6項の「営業秘密」に当たるか否かについて検討するに,本件プログラムは,出会い系サイトの営業に使用することのできるプログラムで,有償の使用許諾もなされていたものであるから 「事業活動に有用な技術上の情報」であることが認 ,められる。そして,本件プログラムが特に公知になっていたことも窺われないから 「公然と知られていないもの」に当たり,さらに,原告社内 ,でもアクセスできる者が限られていたのであるから 「秘密として管理さ ,れている」ものと認められる。
したがって,本件プログラムは,原告イープランニングの営業秘密であると認められる。
ウこれに対し,被告らは,原告ら代表者やP2によるID及びパスワードの管理が杜撰であったと主張して,本件プログラム秘密管理性を否定するが,被告らが主張するように,単にIDとパスワードを書いた紙片を机に入れていたとか,それらをパソコンに入れたまま離席することがあったとしても,アクセスできる従業員を制限している取扱いをしていることに変わりはないから,被告らの主張する上記事実をもって秘密管理性を否定することはできない。
(2)本件顧客データについてア証拠(甲25,26,証人P2,原告ら代表者本人)によれば,次の事実が認められる。
(ア)原告イープランニング及び原告マテリアルが経営する各出会い系サイトは,会員制のものであったが,サイト利用者である会員に関する情報は,原告イープランニングが契約しているインターネットサーバー内にデータベースとして格納されていた。そして,その情報の中には,本件顧客データも存在した。
(イ)原告イープランニングと原告マテリアルとが運営する各出会い系サイトは異なるが,代表者は同一人であり,双方の従業員が双方の業務を行うなど,両サイトは事実上一体として運営されていた。
(ウ)本件顧客データのうち,会員登録された顧客のメールアドレスは,勧誘メールや返信メールを送信する宛先となるメールアドレスであり,また,会員の入金額,所有ポイント及び入力前ポイントからは,当該会員がサイトを利用する程度を知ることができる。
(エ)原告らの従業員には,IDとパスワードが与えられており,社内のパソコンから本件顧客データを含むデータベースにアクセスするには,IDとパスワードが必要であった。
イ上記事実に基づき,本件顧客データが法2条6項にいう「営業秘密」に当たるか否か検討するに,本件顧客データは,出会い系サイトに会員として登録する顧客のメールアドレスとその利用程度を知ることができる情報であるから 「事業活動に有用な営業上の情報」に当たることが明 ,らかである。そして,本件顧客データが特に公知になっていたことも窺われないから 「公然と知られていないもの」と認められ,さらに,本件 ,顧客データにアクセスするためには,IDとパスワードが必要であったのであるから 「秘密として管理されている」ものと認められる。 ,したがって,本件顧客データは,原告イープランニングの営業秘密であると認められる。
ウ本件顧客データの秘密管理性に関して,被告らは以下のとおり種々の主張をするので,検討する。
(ア)まず被告らは,本件顧客データにアクセスできる従業員は何ら制限されていなかったから秘密管理性がないと主張する。
確かに被告らが指摘するように,本件顧客データにアクセスできる従業員の範囲と内容についての原告らの主張は変遷を重ねており,原告ら社内において原告らが主張するような系統立ったアクセス制限がとられていたのかについては疑問もある。
しかし,一般にIDやパスワードを要求する趣旨は,それを知っている者のみを当該情報にアクセスできるようにし,それを知らない者には当該情報にアクセスできないようにする点にある。そうすると,たとえ原告ら社内において会員のデータベースにアクセスできる者が制限されておらず,全従業員が会員のデータベースにアクセスすることができたとしても,従業員にIDとパスワードが与えられ,それなしには会員のデータベースにアクセスすることができない措置がとられていた以上,従業員にとっては,原告らが,会員のデータベース中の情報をIDとパスワードを知らない者,すなわち原告らの従業員でない者に対しては秘密とする意思を有していると認識し得るだけの措置をとっていたと認めるに妨げないというべきである。
(イ)また被告らは,原告ら社内では,ID及びパスワードの管理が杜撰で,原告ら代表者らもその管理について何ら注意を与えなかったから,秘密管理性がないと主張する。
しかし,IDやパスワードというものが上記(ア)で述べた趣旨のものである以上,殊更にその管理について注意を与えなかったからといって,原告らがそれによってアクセスし得る情報を秘密とする意思を有していることが,同情報にアクセスしようとする者に認識できないとはいえない。
また被告らは,原告ら社内でのID及びパスワード管理の杜撰さの例として,?@複数のアルバイト従業員で1つのID及びパスワードを共有していたこと,?AID及びパスワードを記載した紙を入力用のパソコンのところに貼って使用していたこと,?B入力担当のアルバイト従業員で退職者が出たにもかかわらず,その際にID及びパスワードが変更されることがなかったことを指摘する。
しかし,?@については,そのことをもってパスワードの管理が杜撰であったとはいえない。また,?A及び?Bについては,仮にそのようなことがあったとしても,原告ら社内でどの程度そのようなことが行われていたのか不明であり(少なくとも?Bについては,同趣旨の被告Y4の供述によっても,一度そういうことがあったというにすぎない,それらが常態化し, 。)かつ原告ら代表者らがそれを知りながら放置し,結果として原告ら社内におけるIDやパスワードの趣旨が有名無実化していたというような事情があればともかく,そのような事情が認められない限り,なお秘密管理性を認めるに妨げはないというべきである。そして,本件ではそのような事情は認められない。
(ウ)以上のとおり,本件顧客データの営業秘密性(秘密管理性)を否定する被告らの上記各主張は採用できない。
2争点(1)ア(イ)及び(ウ)(不正競争行為)について(1)後掲証拠によれば,次の事実が認められる。
ア原告らサイトと被告らサイトを比較したところ,サイトの各ページについて,ページURLのうちプログラム名と引数名がすべて同一であり,また,ページ内容も一部を除いて同一であった。
イ原告ら訴訟代理人である村田弁護士は,平成16年2月10日,被告Y2,P1及び被告Y3に対し 「通知書」を送付した(甲14ないし1 ,9〔枝番含む。〕)その「通知書」には,概ね,?@原告らの出会い系サイトと被告らの出会い系サイトを列挙し,?A被告らの出会い系サイトの料金振込先を4口座列挙し,?B別途送付する文書(甲66又は乙6)にあるとおり,被告らのサイトは原告らのサイトの頁の装飾部分が同一で,案内文言も言葉づかいがわずかに異なるのみで,きわめて類似していること,随所に表示されるプログラム名と引数が全く同じであること,頁の装飾部分,男性登録案内画面,指定受信登録の案内内容等がきわめて類似又は同一であることから,被告らは原告らのシステムを共通して流用したサイトを運営し,利益を得ているものと断じざるを得ないとし,?CP1と被告Y3は,退職前から原告らの管理するコンピューターにアクセスの上,原告らの営業を妨害し,自らが利得する目的で原告らの顧客情報やシステムを無断でダウンロードしていたと思慮され,両名の行為は法2条4号及び7号に該当し,被告Y2も民法719条,法2条1項5号又は6号,8号又は9号により損害賠償責任を負うことから,原告らは,損害賠償を請求するとし,?Dついては話合いのために2週間以内に村田弁護士まで連絡するよう求める,と記載されていた。
ウ平成16年2月24日,原告ら代表者,P2及び村田弁護士と,P1,被告Y3及び被告Y2との間で,村田弁護士の事務所で話合いがなされた。この話合いは1時間程度に及び,被告ら側はP1が,原告ら側は村田弁護士が主として話をした。そして,最後に「議事録」が作成され,P1,被告Y3及び被告Y2はそれに異議なく署名した(甲21 。)3頁からなるその「議事録」には,概ね,?@原告らの出会い系サイトと被告らの出会い系サイトを列挙して 「以上のとおり間違いありませ ,ん 」として,被告Y2,P1,被告Y3の順に署名が記載され(以上1 。
頁目 ,?A被告らの出会い系サイトの料金振込先を4口座列挙し,それら )はすべて被告Y1が管理し,預金はすべて被告Y1に帰属するとし,?B原告らのサイトと被告らのサイトを比較すると,被告らのサイトは原告らのサイトの頁の装飾部分が同一で,案内文言も言葉づかいがわずかに異なるのみで,きわめて類似していること,随所に表示されるプログラム名と引数が全く同じであること,頁の装飾部分,男性登録案内画面,指定受信登録の案内内容等がきわめて類似又は同一であるとの関係にあり,それは平成16年2月10日に送付された資料(甲66又は乙6)のとおりであるとし 「以上のとおり間違いありません 」として,被告 , 。
Y2,P1,被告Y3の順に署名が記載され(以上2頁目 ,?CP1と被 )告Y3は,退職後,原告らが管理するコンピューターに無断でアクセスし,自らが利得する目的(被告らのサイト運用での利用を含む)で原告らの上記顧客情報を閲覧し,上記システムを無断でダウンロードした。
P1と被告Y3は,原告イープランニングに交付した「機密保持に関する同意書」の1項に違反することを認めるとし,?DP1と被告Y3は,ソルモンドにて以上の事業をするにあたり,原告らのシステム,顧客情報を利用することを被告Y1に告げ,同人の指示のもと被告Y2は,上記顧客情報や上記システムを利用しているとして 「以上のとおり間違い ,ありません 」と確認し,?E最後に被告Y2,P1,被告Y3の順に署名 。
され,署名下に「2004年1月26日をもって営業活動は停止しています 」と手書きされ,?F「立会人」として,原告ら代表者及びP2の署 。
名が記載されるとともに 「当方としては説明内容に納得していません。 ,内容の真偽につき確たる証拠の提出を求めます 」と手書きで付記されて 。
いる。
エ平成16年3月1日,被告Y1は,原告ら訴訟代理人の村田弁護士と同弁護士の事務所で面談し,その際,被告らサイトの料金振込先の預金通帳(甲5ないし13〔枝番含む )を提出するとともに 「本日,貴殿 〕,の事務所にてお話しした内容はつぎのとおりです 」との文章で始まる文 。
書に署名した(甲22 。)その文書には,?@被告Y1は,P1と被告Y3から,ソルモンドで事業をするに当たり,原告イープランニング等のシステムを利用することを告げられ,その上システム改修費用が必要と言われてその費用を支払っている,?A彼らから原告イープランニング等の顧客情報も持っているとは言われたが,他にも顧客データーを買う必要があると言われ,その費用まで支払っている,と記載されている。
(2)上記(1)ウの議事録の記載からすると,P1,被告Y3及び被告Y2は,平成16年2月24日に原告ら訴訟代理人村田弁護士の事務所で原告ら代表者らと面談した際,P1及び被告Y3において本件プログラムをダウンロードするとともに本件顧客データを閲覧し,被告らサイトにおいてこれらを使用し,被告Y2もそのことを知ってそれらを使用していることを自認していたと認められ,このことに上記(1)アの原告らサイトと被告らサイトの同一性及び類似性を併せ考慮すると,P1及び被告Y3は本件プログラムを不正に取得し(法2条1項4号 ,本件顧客データを不正に使用,開 )示したもの(同7号 ,被告Y2はそのことを知って本件プログラム及び本 )件顧客データを使用したもの(同5号,8号)というべきである。
(3)これに対して,被告らは,以下のとおり種々の主張をするが,いずれも採用できない。
ア被告らは,平成16年2月24日の話合いにおいては議事録に記載されたような話はされず,署名も話合いに出席した証拠にと求められてしただけであり,内容を確認の上で署名したものではないと主張し,被告Y3及び被告Y2も同趣旨の供述をする。
しかし,同日の話合いは,それに先だって原告ら側が送付した「通知書」を踏まえて持たれたものであり,しかも原告ら側は弁護士が関与しているのであるから,同日の話合いにおいて,原告ら側が,被告Y3らに対して,通知書に記載した事実の有無を問い質さないとは考えられない。現に「議事録」の記載内容も,ほとんどが「通知書」に記載された内容を確認するものとなっているところである( 議事録」の記載にあっ 「て「通知書」の記載にないのは,被告Y1が被告らサイトの事業主である点ぐらいである。。)そして 「通知書」の内容が,被告Y3らが本件顧客情報と本件プログ ,ラムを盗用して被告らサイトにおいて使用していることについての損害賠償責任を追及する趣旨であることは素直に理解し得るところであり,被告Y3自身も 「通知書」において「ソルモンドが,イープランニング ,のサイトをぱくってるんじゃないかというような話にはなってたと思います 」と述べている(被告Y3・13頁)のであるから,原告ら側が話 。
合いにおいて通知書の内容の確認を求めれば,被告Y3らはその求める内容を理解したはずであると考えられる。この点について,被告Y3及び被告Y2は,当日の話合いにおいて主として話をしていたのはP1と村田弁護士であったと供述しながら,1時間程度も話をしていたにもかかわらず,その話の内容がどのようなものであったのかについてほとんど明らかにせず,ただ議事録の記載内容の話はなかったと述べるのみであるなど,両被告の供述は合理性に欠け,採用することができない。
,「」,「 。」 また議事録 には 各頁の末尾に 以上のとおり間違いありませんと記され,各頁のその記載の近辺に被告Y3らの署名がされているのであるから,原告ら側が被告Y3らに署名を求めた趣旨が,その文書に記載された内容についての間違いない旨の確認を求める趣旨であることは容易に理解し得たものというべきである。これに加え,この文書に「議事録」という表題が付されていることや枚数がわずか3頁の文書にすぎないことを併せ考えると,被告Y3らが 「議事録」の内容を理解せずに ,署名したとは考え難い。
また 「議事録」には,原告ら代表者の署名に続けて,原告ら代表者に ,よる「当方としては説明内容に納得していません 」との記載があり,被 。
告らは,これをもって被告Y3らが本件プログラム等の盗用を否認していたことの証左であると主張する。しかし,この文章は,村田弁護士の示唆により原告ら代表者が記載することになったものである(乙3)ところ,原告ら側として 「議事録」において被告Y3らから本件プログラ ,ム等を盗用したことを認める旨の署名を得ていながら,他方でそれを否定する趣旨で上記記載をするとは考え難い。このことからすると,原告ら代表者の供述のとおり,上記記載は,P1らが署名の後に「2004年1月26日をもって営業活動は停止しています 」と記載したこと等に 。
対し,果たしてP1らのいうように真実営業活動を停止したものかどうか疑わしいという趣旨で記載されたものと認めるのが相当である。
イ被告らは,原告らサイトと被告らサイトが類似していることによっては,被告らサイトにおいて本件プログラムが利用されたことを裏付けるものではないと主張する。
確かに原告らサイトと被告らサイトとが各ページの文章,プログラム名及び引数において同一ないし類似しているとしても,それらはいずれも第三者が原告らサイトに会員としてアクセスすれば知ることができるものばかりであるから,これらのみによって直ちに被告らサイトが本件プログラムを利用して作成されたことまで推認し得るというものではない。しかし,甲第20号証に示されたような多数のページの文章,プログラム名及び引数名が一致ないし類似しているという事実は,被告らサイトが本件プログラムを利用して作成されたのではないかと疑わせる事実であることは確かであり,このことに前記「議事録」の存在を併せ考慮すると,前記のとおり被告Y3らによる不正競争行為を認定することができるというべきである。
ウ被告らは,被告Y3らが本件プログラム及び本件顧客データを取得した態様についての原告らの主張が変遷しており,本件プログラムについては無断で取得するのは不可能であると主張する。
確かに,特に本件プログラムについては,被告Y3らが無断で取得するのが困難であることは否定できない。しかし,それが不可能とまではいえないし,そもそも被告Y3らがどのような態様で本件プログラム及び本件顧客データを取得したのかについては,目撃証言もない以上,本人の供述によることなくその取得態様を具体的に特定することは困難である。したがって,原告らの主張が推測に頼らざるを得ないのは当然であって,そのような本人しか知り得ない取得態様が明らかにならないからといって,本件プログラム及び本件顧客データの取得の事実自体が認定できないというものではない。
(4)以上より,被告Y3及び被告Y2は,原告らに対し法4条により損害賠償責任を負う。
これに対し,被告Y4については,同被告がソルモンドで勤務していたことは認められるものの,それ以上に本件プログラム及び本件顧客データが原告らから盗用されたものであることを同被告が知っていたとか,重過失により知らなかったことを窺わせる証拠はなく,また,本件プログラム及び本件顧客データの使用についての共謀も認められないから,被告Y4の不正競争行為及び共同不法行為責任を肯認することはできない。
なお,被告Y1の責任については,次に検討する。
3争点(1)ウ(使用者責任)について被告Y1は,P1,被告Y3及び被告Y2の使用者であり,被告Y3らが原告イープランニングから取得した本件プログラム及び原告らから示された本件顧客データを被告らサイトにおいて使用する行為が,被告Y1の事業の執行につきなされたものであることは明らかである。この点について被告Y1は,本件プログラムを取得する行為は,事業の執行につきなされたものではないと主張する。しかし,その取得行為自体は事業の執行としてなされたものではないとしても,それを被告らサイトにおいて使用する行為は,被告Y1の事業の執行につきなされたものにほかならない。
そして,先に2(1)エで認定した事実からすると,被告Y1は,被告Y3らの選任監督上,相当の注意を尽くしたとはいえないというべきである。
したがって,被告Y1は,同被告自身の不正競争行為の有無にかかわらず,被用者であるP1,被告Y3及び被告Y2の上記不正競争行為につき,民法715条に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。
4争点(2)(損害額)について(1)原告イープランニングの損害についてアライセンス料相当額について証拠(甲4の1〜4)によれば,原告イープランニングは,本件プログラムについて,4社との間で使用許諾契約を締結し,その使用料は,2社については売上高の10%,1社については10〜15%,1社については同20%と定めていたことが認められる。このような使用料率は,特許権等を実施許諾する際の通常の実施料率と比べてはるかに高い料率ではあるが,本件プログラムを用いて行う事業が出会い系サイトの事業であり,商品の製造販売のような経費は必要がなく,本件プログラムこそが主要な設備投資の対象であると考えられることからすると,上記のような使用料率もあながち不合理なものとはいえない。もっとも,使用許諾先によって10%から20%の差異が生じることについては,特殊事情も作用していると考えられ,このことを考慮すると,本件における使用料相当額としては,売上高の15%とするのが相当である。
そうすると,被告らサイトの売上額は,少なくとも原告らが主張する1174万5521円を下回らないと認められる(甲22)から,使用料相当額は176万1828円(小数点以下切捨て)となる。
なお,原告らは,上記使用許諾契約においては,初期導入のための使用許諾料として150万円が別途設定されていたと主張し,これに沿う証拠(甲27,28)を提出する。しかし,肝心の契約書(甲4の1〜4)に。,(,) はそのいずれにもそのような記載がない また 上記証拠 甲27 28は,いずれも原告イープランニング作成に係る請求書にすぎず,実際に初期導入のための使用許諾料が支払われたことを認めるに足りる確たる証拠といえるものではない。これらの点からすると,初期導入のための使用許諾料が設定されていたことは,これを認めるに足りないから,この点は使用料相当額として考慮することができない。
イ売上減少による損害について原告らは,被告らサイトが開設された平成15年8月を境に原告らサイトの売上額が大きく減少しており,これは被告らサイトの開設によるものであると主張する。
しかし,原告らが主張する原告らサイトの売上推移(原告らサイトは実質的に一体として運営されていたことから両サイトを一体として検討する )と被告らサイトの売上推移(甲22)を対比してみると,別紙4の 。
とおりであり,原告らサイトの売上げは平成14年11月の開設以降,急激に増加したが,平成15年5月をピークとして,同年6月以降は急激に減少していることが認められる。そして,この急減傾向は,被告らサイトの売上げを原告らサイトの売上げに加算してみても変わらないから,原告らサイトの売上減少額は,被告らサイトの売上げを大きく上回っているといえる。このことからすると,被告らサイトの開設が原告らサイトの売上げの減少に大きな影響を与えたとは考え難いところであり,他の要因,例えば他の出会い系サイトの開設,出会い系サイト全体の売上げ動向,原告ら代表者自身がいわゆるサクラとして優れていると述べるP1や被告Y3がこの時期に退職したこと等による影響が大きいのではないかと考えられる(なお被告らが主張する携帯電話会社による迷惑メール対策〔乙5の1〜3〕は,長期的に見て原告らの売上げが減少した要因としては考えられるものの,平成15年5月をピークとして急減傾向に転じたきっかけとなった対策であったとは認められない。。)もっとも,前記のとおり,被告らサイトにおいて本件顧客データが使用されたと認められる以上,その使用が原告らサイトの売上げに全く影響を与えなかったと考えることも不自然である。
以上の検討を踏まえ,かつ本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件において被告らサイトで本件顧客データが使用されたことによって原告らサイトに生じた売上減少額は,被告らサイトの売上げの10%(各原告につき5%ずつ)と認めるのが相当であり(法9条 ,被告らサイトの売上 )げは少なくとも原告らが主張する1174万5521円を下回らないと認められるから 結局 各原告の売上減少額は 各58万7276円ずつ 小 ,,,(数点以下切捨て)となる。そして,原告らの損害となるのは,売上減少額そのものではなく,それによる逸失利益であるが,原告らの事業が出会い系サイトであることを考えると,上記程度の売上額を得るのに追加的な費用が必要になったとは認められないから,上記売上減少額をそのまま逸失利益額として認めるのが相当である(なお,本件プログラムの使用による原告イープランニングの損害について,同原告は前記のとおり使用料相当額の損害を請求しており,それは被告らサイトが本件プログラムを使用したことを前提とする損害の主張であるから,それに加えて,被告らサイトが本件プログラムを使用しなかったことを前提とする得べかりし利益相当額を損害として認めることはできない。。)ウ弁護士費用について本件で被告らの行為と相当因果関係を有する原告イープランニングに係る弁護士費用相当額は,23万円と認めるのが相当である。
エまとめ以上より,原告イープランニングの損害額は,257万9104円となる。
(2)原告マテリアルの損害についてア売上減少による損害についてこの点は,前記(1)イのとおり,58万7276円と認められる。
イ調査費用について原告らは,P2が平成15年8月及び9月の2か月間にわたり,原告らサイトの売上げが減少した原因の調査に専従したと主張する。
しかし,P2の陳述書(甲26)によっても,その間に同人がしていたことは,携帯電話を使って他社の出会い系サイトを閲覧して書き込み状況をチェックしたり,携帯電話に送られてくる出会い系サイトの勧誘メールを丹念にチェックしたということにとどまるのであって,このような作業を2か月もの間,独自にプログラムを開発し得るほどの能力のあるP2が専従したとは考え難い。また,P2の陳述書(甲26)によっても,同人が被告らサイトに気づいたのは平成15年11月に勧誘メールが届いたことがきっかけだというのであり,そうすると,同年8月及び9月に行ったという上記調査は,成果が全くなかったということになる。
もっとも,自己の営業に異変を感じた際には,何らかの調査をするのが通常であり,本件において被告Y3らは結局不正競争行為を行っていたのであるから,調査の成果がなかったからといって,P2の行った調査が全く必要ではなかったということもできない。
これらの事情を考慮すると,本件で被告らの行為と相当因果関係を有する調査費用としては,30万円と認めるのが相当である。
なお,原告らは,被告らから今後このような侵害行為を受けないために購入したソフトウェア製品の購入代金も損害として主張するが,これは,被告らによる本件プログラム等の取得が契機になったとはいえ,今後の被告らによるものに限らない同様の取得行為を防止するためのものにすぎないから,本件において被告らの行為と相当因果関係を有する損害とは認められない。
弁護士費用について本件で被告らの行為と相当因果関係を有する原告マテリアルに係る弁護士費用相当額は,9万円と認めるのが相当である。
エまとめ以上より,原告マテリアルの損害額は,97万7276円となる。
5まとめ以上によれば,原告らの本件請求は,被告Y4を除く被告らに対し,?@原告イープランニングが257万9104円の損害賠償及びこれに対する不正競争行為の後である平成16年2月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,?A原告マテリアルが97万7276円の損害賠償及びこれに対する不正競争行為の後である平成16年2月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,原告らの被告Y4に対する本件請求はいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 高松宏之