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事件 平成 19年 (ワ) 1688号 不正競争行為差止等請求事件
原告 イミュ株式会社
原告 エルソルプロダクツ株式会社
原告 ピアス株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士 畑郁夫石川 正重冨貴光 細野真史 松本 亮
被告 株式会社佳香園
訴訟代理人弁護士 杉山博夫
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2008/10/14
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告イミュ株式会社に対し,3639万7255円及びこれに対する平成19年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告エルソルプロダクツ株式会社に対し,1996万4165円及びこれに対する平成19年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告ピアス株式会社に対し,963万8580円及びこれに対する平成19年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用はこれを3分し,その1を原告ら,その余を被告の各負担とする。
6 この判決の第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。
-2-
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙被告商品表示目録1及び同2記載の容器に収容したまつ毛化粧料を製造し,譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供してはならない。
2 被告は,別紙被告商品目録3記載の包装に収納したまつ毛化粧料を製造し,譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供してはならない。
3 被告は,第1項及び前項記載のまつ毛化粧料を廃棄せよ。
4 被告は,原告らそれぞれに対し,6600万円(原告らの不可分債権)及びこれに対する平成19年2月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は被告の負担とする。
6 仮執行宣言
事案の概要等
1 事案の概要本件は,原告らの製造・販売するまつ毛化粧料(マスカラ)の容器及びその包装が原告の商品表示として周知・著名なものになっており,被告がこれに類似する商品表示を使用したマスカラを製造し,譲渡し又は引き渡したことは,不正競争防止法2条1項1号又は2号所定の不正競争に該当するとして,被告に対し,同法3条1項に基づき被告の製品の製造・譲渡等の差止め,同法3条2項に基づき被告の製品の廃棄及び同法4条に基づき被告の製品の販売によって原告が被った損害賠償の一部として原告らそれぞれに対する6600万円(原告らの不可分債権)の支払及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年2月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
末尾に証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いが 2 争いのない事実等(ない。)1当事者 ()ア 原告ら原告エルソルプロダクツ株式会社(以下「原告エルソルプロダクツ」という。)及び原告ピアス株式会社(以下「原告ピアス」という。)は,化粧品の製造及び販売等を目的とする株式会社である(甲1〜3)。
原告イミュ株式会社(以下「原告イミュ」という。)は,化粧品の販売等を目的とする株式会社である(甲4)。
原告エルソルプロダクツ及び原告イミュは,いずれも原告ピアスを親会社とする企業グループに属している。
イ被告被告は,化粧品の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
2 原告らによる商品の製造及び販売()原告エルソルプロダクツは,別紙原告ら商品表示目録1記載の容器(以下「原告ら容器」という。)にまつ毛化粧料を充填した商品(以下「原告ら商品」という。)を製造し,これを同目録2記載のように包装して(以下,原告ら商品を同目録2記載のように包装したものを「原告ら包装」という。),原告ピアスに販売している。
原告イミュは,原告ら商品を原告ピアスから仕入れて,卸売代理店及び小売店に販売している(甲6,7)。
3 被告による商品の製造()被告は,遅くとも平成18年4月以降,別紙被告商品表示目録1記載の容器(以下「イ号1容器」という。)にマスカラを充填した商品(以下「被告商品1」という。)及び同目録2記載の容器(以下「イ号2容器」といい,イ号1容器と合わせて「イ号各容器」という。)にマスカラを充填した商品(以下「被告商品2」といい,被告商品1と合わせて「被告各商品」という。)をそれぞれ製造した。
被告は,被告商品1を別紙被告商品表示目録3記載のように包装し(以下,被告商品1を同目録3記載のように包装したものを「ロ号包装」という。),また,被告商品2を甲第13号証記載のように包装し(以下,同号証記載の包装を「件外包装」という。別紙件外包装写真参照。),これらを訴外株式会社ワールドリンクス(以下「ワールドリンクス」という。)に納入した(ワールドリンクスに納入したことについて甲60)。
イ号各容器,ロ号包装及び件外包装のための資材は,いずれもワールドリンクスから被告に提供されたものであり,被告はこれらを使用して被告各商品を製造した。
3争点1 被告の行為は不正競争防止法2条1項1号又は同項2号に該当するか。
()ア 原告ら容器及び原告ら包装は原告らの商品表示として需要者の間に広く認識されているか又は原告らの著名な商品表示といえるか。(争点1-1)イ イ号各容器は原告ら容器と類似するか。(争点1-2)ウ ロ号包装は原告ら包装と類似するか。(争点1-3)エ 被告各商品は原告ら商品と混同のおそれがあるか。(争点1-4)オ 被告各商品の製造は不正競争防止法2条1項1号及び2号にいう他人の商品等表示の使用に該当するか。また,被告各商品の納入は同項1号及び2号にいう他人の商品等表示を使用した商品の譲渡又は引渡しに該当するか。(争点1-5)2 被告の行為により原告の営業上の利益侵害され又は侵害されるおそれが()あるか。(争点2)3 被告に故意・過失が認められるか。(争点3)()4 原告らの損害額及び損害賠償請求権の性質(争点4) ()
当事者の主張
1 争点1-1(原告ら容器及び原告ら包装の周知性著名性)【原告らの主張】1 原告ら容器及び原告ら包装が他の同種商品と識別し得る独特の特徴を有す()ることについてア 原告ら容器の商品表示性原告ら容器は,同種のマスカラ容器の中でも,とりわけ?@容器本体(ア)(マスカラが充填されている容器部分をいう。以下同じ。)が濃いワインレッドの色を有する点,及び?A容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点(以下,原告らが主張する原告ら容器の上記特徴点を「原告ら容器の特徴点?@」などという。)において,需要者の注意を引く独特の際だった特徴(色彩及び模様)を備えている。
原告ら商品の販売が開始された平成13年9月当時,マスカラ容器に(イ)は比較的地味な色(シルバー,グレー,ホワイト,ブラックなど)を配したものが一般的であり,原告ら容器のように濃いワインレッドの色を配したマスカラ容器は他になかった。また,平成13年9月当時,原告ら容器のように,マスカラ容器に2つの長いまつ毛模様を表示したものは他になかった。
原告ら商品は,マスカラでありながら,塗るだけであたかも「つけま(ウ)つ毛」を付けたかのようにまつ毛を長く見せることができることをコンセプトとする点で従来のマスカラと大きく相違するところ,2つの長いまつ毛模様は,かかる「塗るつけまつげ」としてのコンセプトを容器に表示したものとして独特の特徴を有している。
このように,原告ら容器の色彩・模様は,上記原告ら容器の特徴点?@(エ)及び同?Aの各点において,需要者の注意を引くに十分な特徴を有し,それゆえ際だった自他識別力を有している。
イ 原告ら包装の商品表示性原告ら包装は,マスカラの包装の中でも,とりわけ?@台紙の略中央部(ア)に「塗るつけまつげ」との文字が付されている点,?A包装台紙の色調がライトグリーン(緑系統)を基調としており,このこととブリスター方式(商品を水膨れ状にプラスチック等で覆うことにより包容する方式をいう。以下同じ。)で内包されている容器本体が濃いワインレッド色であることとが相まって,全体として特徴ある調和がとれている点,?B容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点,?C台紙の形状が全体として木の葉型である点,及び?D台紙の形状と略長方形のプラスチック状包装との形状とが一致していない点(以下,原告らが主張する原告ら包装の上記特徴点を「原告ら包装の特徴点?@」などという。)において,需要者の注意を引く独特の際だった特徴(模様,色彩及び形状)を備えている。
原告ら商品の販売が開始された平成13年9月当時,ブリスター方式(イ)によりマスカラ容器を包容するものは他になかった。したがって,マスカラの包装としてブリスター方式を採用したこと自体,原告ら包装の特徴といえる。
原告ら商品のコンセプトは,マスカラでありながら,塗るだけであた(ウ)かも「つけまつ毛」を付けたかのようにまつ毛を長く見せることができることにあり,この点で従来のマスカラと大きく相違するところ,原告ら包装は,同コンセプトである「塗るつけまつげ」というキャッチフレーズとしての文字を,台紙の略中央部に目立つように付したところに大きな特徴がある。
原告ら包装の全体の色調は,緑系統を基調とした台紙(背景)に濃い(エ)ワインレッドの色の容器本体を重ね合わせるという斬新なものである。
色彩は補色関係にある場合に最もアピール効果を発揮するところ,緑色と赤色はまさに補色関係にあり,そのコントラストを利用した点は,他のマスカラ包装には見られなかった原告ら包装のもう1つの大きな特徴である。
以上の各特徴に加えて,上記ア(ア)で述べた容器本体の特徴(2つの(オ)長いまつ毛模様)も,ブリスター方式を採用したことによって需要者が購入時に視認し得ることとなり,包装の特徴部分を構成するに至っている。
さらに,台紙自体の形状も,単に略長方形のプラスチック状包装の形状に合わせるのではなく,全体として木の葉型の形状を採用したものであって,かかる形状は他のマスカラ包装にはなかった。
以上より,原告ら包装の特徴点?@ないし?Dは,他のマスカラ包装とは(カ)優に識別し得る独特の際だった特徴である。
2 原告ら容器及び原告ら包装の周知性()ア 売上高及び市場占有率原告らは,平成13年9月25日,大手雑貨小売店であるソニープラザ20店舗において原告ら商品の販売を試験的に開始したところ,初回生産分(5000本)が発売開始後わずか数日にして完売するに至った。これを契機に,原告ら商品は,販売開始の2か月後には全国のソニープラザ直営店舗において販売され,平成13年度には約30万個を売り上げた。
その後,原告ら商品の販売数量及び売上高は,年を追うに従って大幅な増加傾向の一途を辿り,販売開始以降平成17年度末までの原告ら商品の販売数量合計は1115万6465個,卸売販売額合計は93億7262万8833円,小売販売額合計は171億5444万1000円に上る。
また,配荷店舗数についても,概要,平成13年度は200店舗,平成14年度は1800店舗,平成15年度以降は4500店舗と年々増加傾向にあり,地域的にも日本全国各地の百貨店,化粧品雑貨小売店(ソニープラザ,ロフト,東急ハンズなど),ドラッグストア及びスーパーで販売されている(甲8)。
イ 広告宣伝原告らは,平成14年4月以降,日本全国各地の主要都市の交通機関(JR・私鉄・バス)の中吊り及び主要駅構内並びに繁華街で原告ら商品の広告をしたほか,女性用ファッション雑誌に多数の純広告(広告掲載を希望する者が,自ら,写真,デザイン,レイアウト等広告の内容を決定して行う広告をいう。以下同じ。)を繰り返し行った。さらに,原告らは,平成14年8月以降,全国各地で原告ら商品のテレビCMを多数回放映した。
上記広告宣伝に当たっては,原告らは,原告ら容器のみならず原告ら包装をも全面的に掲載し,その模様,色彩及び形状を需要者に強く印象付けることにより,原告ら容器及び原告ら包装の前記各特徴を大きく目立つように表示して広告宣伝を行った。
原告らがこれまでに原告ら商品の広告宣伝に費やした費用の総額は,20億0044万3000円に上る。
ウ 業界紙や大手雑貨小売店による大々的な紹介原告ら商品は,平成13年9月の販売開始後現在に至るまで,女性用ファッション雑誌に継続的かつ大々的に取り上げられ,マスカラの人気ランキングの最上位に常にランクインしている。
また,原告ら商品は,大手雑貨小売店であるソニープラザにおける人気商品ベスト10のランキングにおいても,長年にわたって終始最上位にランクインしている。
以上のように,原告ら商品は,業界紙や大手雑貨小売店等によって長年にわたって大々的に人気商品として取り上げられている。一般にマスカラ市場においては商品人気の浮き沈みが激しいといわれるところ,原告ら商品は,上述のとおり,異例ともいうべき驚異的なロングヒットを記録し続けている。
3小括()以上のとおり,原告ら容器及び原告ら包装は,同種商品と識別し得る独特の特徴を有し,かつ,原告らによる強力な広告宣伝のもと,継続的かつ独占的に使用されていることからすれば,原告ら商品の商品表示として需要者の間に広く認識されるに至っている。
【被告の主張】全て否認ないし争う。
1 原告ら容器及び原告ら包装の商品表示性について()ア マスカラ容器及び包装は,原告らのものも同業他社のものもほぼ同一に近い形状である。模様なども,顔面における目,まつ毛,眉という限定された小さな範囲の事柄であるから,それらは皆同一若しくは類似しているのが普通であり,1社だけが他の数百社に対し自他識別力を持つというような性質のものではない。
イ 原告ら容器の色彩について,容器本体にどのような配色をするかは本来自由であるところ,原告らが使用している濃いワインレッド系の色の容器は,平成12年ころよりマスカラ容器に使用されており,平成18年7月時点で10点も使用されていることから,かかる色のみでは自他識別力はない。
原告ら包装についても,材料はプラスチックであり,その模様,デザイン及び形状等は他の化粧品メーカーとほぼ同一である。
ウ 原告ら包装の「マスカラじゃない。塗るつけまつげ」という表示についても,「つけまつげ」は業界においては商品として販売されている普通名称であり,一方,マスカラという用語は長くはっきりとしたまつ毛に仕上げるという普遍的意味を有しているから,かかる説明文では表示の独自性はない。
2 原告ら容器及び原告ら包装の周知性について()原告らは,原告ら商品の売上高及び市場占有率,広告宣伝並びに業界紙と大手雑貨小売店における紹介の観点から周知性を主張するが,これらが仮に真実であるとしても,前記のように原告ら容器及び原告ら包装には自他識別力がないから,これによって直ちに広く需要者たる若年女性層に認識されているとはいえない。
よって,原告ら容器及び原告ら包装は,原告商品の商品表示として自他識別力が保護されなけれなければならないレベルにまで周知されていない。
2 争点1-2(イ号各容器と原告ら容器との類否)について【原告らの主張】1 原告ら容器とイ号1容器との類否()ア 一致点原告ら容器は,?@容器本体が濃いワインレッドの色を有する点,及び?A容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点において需要者の注意を引く特徴を備えているところ,イ号1容器はこれらの特徴を全て具備している。また,原告ら容器とイ号1容器は,?B容器本体及びキャップ(マスカラ容器の蓋部分をいう。以下同じ。)のサイズ及び形状が全く同一である(以下,原告らが主張する原告ら容器とイ号1容器との一致点を「イ号1容器との一致点?@」などという。)。
よって,原告ら容器とイ号1容器は,需要者(一般消費者である女性)に極めて類似しているという印象を想起させるから,原告ら容器とイ号1容器は類似している。
イ 相違点原告ら容器とイ号1容器とは,?@イ号1容器の容器本体正面視長手方向に平行して付されている文字が「 」であるのに対し,原告 Fiber mascaraら容器では「 」である点,?Aまつ毛模様の配置される位 dejavu Fiberwig置がイ号1容器では容器本体下部であるのに対し,原告ら容器では容器本体上部である点,?Bキャップの色がイ号1容器では金色であるのに対し,原告ら容器では銀色である点において若干相違する(以下,原告らが主張する原告ら容器とイ号1容器との相違点を「イ号1容器との相違点?@」などという。)。
しかしながら,イ号1容器が原告ら容器の上記各特徴を全て具備し,両者の類似性が優に認められる以上,これらの若干の相違をもって類似性の判断が左右されるものではない(しかも,イ号1容器との相違点?@について,両文字は「 」において同一であり,むしろ,類似性を肯定する Fiber要素ともいえる。)。
ウ 以上より,原告ら容器とイ号1容器は類似している。
2 原告ら容器とイ号2容器との類否()ア 一致点前記(1)アと同じ(なお,原告ら容器とイ号2容器との一致点は「イ号2容器との一致点?@」などという。)。
イ 相違点原告ら容器とイ号2容器とは,?@イ号2容器の容器本体正面視長手方向に平行して付されている文字が「 」であるのに対し,原告 fiber mascaraら容器では「 」である点,?Aまつ毛模様の配置される位 dejavu Fiberwig置がイ号2容器では容器本体下部であるのに対し,原告ら容器では容器本体上部である点,?Bイ号2容器では,目の絵柄はいずれも閉じた状態であり,髪が描かれているのに対し,原告ら容器では,目の絵柄は開いた状態と閉じた状態であり,髪が描かれていない点,及び?Cキャップの色がイ号2容器では金色であるのに対し,原告ら容器では銀色である点において若干相違する(以下,原告らが主張する原告ら容器とイ号2容器との相違点を「イ号2容器との相違点?@」などという。)。
しかしながら,イ号2容器が原告ら容器の上記各特徴を全て具備し,両者の類似性が優に認められる以上,これらの若干の相違をもって類似性の判断が左右されるものではない(しかも,イ号2容器との相違点?@について,両文字は「 」のスペルにおいて同一であり,むしろ,類似性を Fiber肯定する要素ともいえる。)。
ウ 以上より,原告ら容器とイ号2容器は類似している。
【被告の主張】以下のとおり,原告ら容器とイ号各容器とは類似しない。
1 原告らの主張する一致点について()ア イ号各容器との一致点?@について原告ら容器とイ号各容器が同じようなワインレッドでも,原告ら容器は青みがかっており,イ号各容器はいずれも黄色がかっており,同じ色とはいえない。
イ イ号各容器との一致点?Aについて原告ら容器のまつ毛模様の絵柄は,目・まつ毛・眉が表現されているところ,イ号1容器の絵柄は目・まつ毛しか表現されていないので,両者は異なるものである。
イ号2容器に至っては,顔全体の絵柄であり,原告ら容器の絵柄とは全く異なるものである。
ウ イ号各容器との一致点?Bについて原告ら容器及びイ号各容器は,いずれも一般的に使われている容器の大きさ・形状であり,そもそも類似性を問題にすること自体失当である。
2 原告らの主張する相違点()原告ら容器とイ号各容器とは,原告らも認めているとおりの相違点がある。
なお,イ号1容器の「 」及びイ号2容器の「 」 Fiber mascara fiber mascaraとの表記は,いずれも商品名を英語で表しているだけであり,「 」及Fiberび「 」はいずれも1単語にすぎない。原告ら容器は「 」と表記 fiber FiberwigFiber wig Fiberwi されているとおり,「 」の後に「 」が付けられており,「」と「 」及び「 」とは外観,称呼及び観念が異なる。 g Fiber fiber3 原告らが主張していない相違点について()ア まつ毛模様の絵柄について,原告ら容器は濃い黒色であるのに対し,イ号各容器の絵柄はいずれもグレー色である。
イ 原告ら容器の「 」は銀色で光っているのに対し,イ号 dejavu Fiberwig各容器の文字はグレー色で光っていない。
4 以上のように,原告ら容器とイ号各容器は,容器の色彩,キャップの色,()絵柄の内容・色・位置及び表示文字等が相違し,取引者及び需要者が両者の外観・称呼・観念を全体的に判断して類似したものと受け取るおそれはないので,類似するとはいえない。
3 争点1-3(ロ号包装と原告ら包装との類否)について【原告らの主張】1一致点()原告ら包装は,?@台紙の略中央部に「塗るつけまつげ」との文字が付されている点,?A包装台紙の色調がライトグリーン(緑系統)を基調としており,このこととブリスター方式で内包されている容器本体が濃いワインレッド色であることとが相まって,全体として特徴ある調和がとれている点,?B容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点,?C台紙の形状が全体として木の葉型である点,及び?D台紙の形状と略長方形のプラスチック状包装との形状とが一致していない点において需要者の注意を引く特徴を備えているところ,ロ号包装はこれらの特徴をほぼ全て具備している。また,原告ら包装とロ号包装は,?Eプラスチック状包装のサイズがほぼ同一である点,?F正面視においてマスカラ容器をブリスター方式により包容する部分が略半円状に隆起している点,?G容器本体及びキャップのサイズ及び形状が同一である点,?Hプラスチック状包装の正面視内部の形状につき,台紙を格納する部分が台紙形状に沿って正面視凹状に形成されている点,?I台紙がマスカラ容器の背面に密接するように配置されている点,?J台紙の中央下部に,「センイ」「2倍」「配合」の文字がいずれも付されている点,及び?K台紙の略下部に,黒のブラシ及び「ブラック 」との黒字白抜き文字が付されて Blackいる点においても同一である(以下,原告らが主張する原告ら包装とロ号包装との一致点を「ロ号包装との一致点?@」などという。)。
よって,原告ら包装とロ号包装は,需要者(一般消費者である女性)に極めて類似しているという印象を想起させるから,原告ら包装とロ号包装とは類似している。
2相違点()Fiber masc 原告ら包装とロ号包装は,?@ロ号包装には台紙の上部に「 」「」「エクステまつげ」との文字が3段に分けて上から順に付されている araのに対し,原告ら包装には台紙の上部に「 」「 」との文字が dejavu Fiberwig2段に分けて上から順に付されている点,?Aロ号包装には台紙の略中央部に「まるで」「つけまつげ」の文字が2段に分けて上から順に付されているのに対し,原告ら包装には「マスカラじゃない」「これは」「塗るつけまつげ」との文字が3段に分けて上から順に付されている点,?Bマスカラ容器をブリスター方式により包容する部分がロ号包装では正面視左側であるのに対し,原告ら包装では正面視右側である点,?Cロ号包装の台紙には左側に楕円状の半球が描かれ,その右側にまつ毛状の模様が描かれているのに対し,原告ら包装の台紙にはそのような図柄は描かれていない点,?D容器本体の正面視長手方向に平行して付されている文字がロ号包装では「 」 Fiber mascaraであるのに対し,原告ら包装では「 」である点,?Eまつ毛 dejavu Fiberwig模様の配置される位置がロ号包装では容器本体下部であるのに対し,原告ら包装では容器本体上部である点,及び?Fキャップの色がロ号包装では金色であるのに対し,原告ら包装では銀色である点において若干相違する(以下,原告らが主張する原告ら包装とロ号包装との相違点を「ロ号包装との相違点?@」などという。)。
しかしながら,ロ号包装が原告ら包装の需要者の注意を引く各特徴をほぼ全て具備し,両者の類似性が優に認められる以上,これらの若干の相違をもって類似性の判断が左右されるものではない(しかも,ロ号包装との相違点?@及び?Dについて両文字は「 」において同一であり,また,同?Aにつ Fiberいて両文字は「つけまつげ」において同一であり,むしろ,これらの点は類似性を肯定する要素ともいえる。)。
3 以上より,原告ら包装とロ号包装とは類似している。
()【被告の主張】以下のとおり,原告ら包装とロ号包装は類似しない。
1 原告らの主張する一致点()ア ロ号包装との一致点?@について原告らは,「マスカラじゃない これは塗るつけまつげ」と表示しており,「マスカラじゃない」といい切っている点から考えると,あたかも商品自体が「マスカラ」ではなく「つけまつげ」の印象を与えているのに対し,ロ号包装は「まるでつけまつげ」であり,商品自体が「つけまつげ」であるとは認識されない。「つけまつげ」は普通名称であり,独自性はないし観念も異なる。
イ ロ号包装との一致点?Aについてロ号包装の台紙はグリーンの色が使われているが,原告ら包装の台紙のように全体がグリーンではなく,一部であり,明らかに外観が相違する。
ウ ロ号包装との一致点?Eについて原告が主張するプラスチック状包装のサイズは,一般的に使用されており,特別顕著性,独自性はない。
エ ロ号包装との一致点?Fについてブリスター方式において,包容する部分を隆起させることは一般的な方法である。しかも,隆起している部分について,原告ら包装は中央より右側であるのに対し,ロ号包装では中央より左側にある。
オ ロ号包装との一致点?Hについてブリスター方式では,一般的な形状であり,特別顕著性,独自性は認められない。
カ ロ号包装との一致点?Iについてブリスター方式では,一般的に行われている配置であり,特別顕著性,独自性は認められない。
キ ロ号包装との一致点?Jについて原告は,ロ号包装の台紙中央下部に,「センイ」,「2倍」,「配合」の文字が付されていると主張するが,実際の表示としては「センイ2倍配合」である。
ロ号包装では,「従来のマスカラの2倍」という表示文であり,何に対して「2倍」なのかについて観念が相違している。
ク ロ号包装との一致点?Kについて原告ら包装では黒のブラシ全体が水平に描かれているのに対し,ロ号包装では黒のブラシは斜め45度に描かれている。
また,ロ号包装では「ブラック 」の表示であるが,原告ら包装 Blackでは「 」であり,明らかに外観・称呼が異なる。 Pure Black2 原告ら包装とロ号包装との相違点()原告ら包装とロ号包装とは,原告らも認めているとおりの相違点があるほか,以下の相違点がある。
ア ブリスター容器の吊り下げ用の穴の形と位置が異なっている。原告ら包装は中央より右側で丸画であるのに対し,ロ号包装は中央より左側で円盤状である。
イ ブリスター容器の背面において,ロ号包装のものは,台紙の形に沿って一部隆起しているが,原告ら包装は隆起していない。
ウ 台紙裏面の説明文は,原告ら包装は緑色であるのに対し,ロ号包装は黒色である。
3 以上のように,原告ら包装とロ号包装とは,絵柄,台紙の色,形状,ブリ()スター方式における隆起部分の位置,ブラシの絵柄及びその位置並びにブリスター容器の吊り下げ用の穴の形と位置等について,取引者及び需要者がそれらの外観を全体的に判断して類似したものと受け取るおそれはないので,類似するとはいえない。
4 争点1-4(混同のおそれ)について【原告らの主張】1 前記1【原告らの主張】のとおり,原告ら容器及び原告ら包装は,原告ら()商品の商品表示として需要者の間に広く認識されており,その周知性は確立している。
また,前記2及び3の各【原告らの主張】のとおり,原告ら商品の容器及び原告ら包装とイ号各容器及びロ号包装とは極めて類似している。
よって,イ号1容器及びロ号包装を使用した被告商品1並びにイ号2容器を使用した被告商品2を見た需要者である女性客は,原告ら商品と被告各商品を混同するおそれが極めて高い。
2 イ号各容器及びロ号包装の台紙には「 」との文字が付されていると() Fiberころ,この文字は原告ら容器の容器本体及び原告ら包装の台紙の「 」Fiberと同一である。また,ロ号包装の台紙の「つけまつげ」との文字は,原告ら包装の台紙にも付されている。
このように表示文字の一部が同一であるという事情は,需要者をして両商品を混同させるおそれを助長している。
3 原告らが被告各商品の販売状況について調査したところによると,原告ら()商品が陳列された半円フロア什器の上に被告各商品のカウンター什器が載せられて販売されていたり,原告ら商品と被告各商品とが同一のカウンター什器に載せられて販売されている店舗があることが判明した。
このような陳列・販売がなされると,原告ら商品と被告各商品との類似性も相まって,需要者が両商品を混同するおそれはより一層高まっている。
4 以上のとおり,被告による被告各商品の製造販売行為は,需要者に対して,()原告ら商品との間で誤認混同を生じさせている。
【被告の主張】1 前記2及び3の各【被告の主張】のとおり,原告ら容器とイ号各容器,原()告ら包装とロ号包装は,いずれも類似しないから,仮に大きさや形状等に共通している部分があったとしても,取引者及び需要者の通常の注意力によれば識別可能であり,混同は生じない。
2 イ号各容器及びロ号包装には,商品の出所が空白若しくはニッドと表示さ()れ,他方,原告ら容器及び原告ら包装にも,その出所が表示されているのであるから,取引者及び一般需要者の通常の注意力によれば,商品の出所や営業主体について識別は可能であり,混同のおそれはない。
3 店舗での販売状況について,被告は陳列のための什器を提供したことはな()い。また,店舗や薬局においては,両商品の卸売業者は異なっているから,それぞれの卸売業者から商品を購入する際に,混同することは通常の商人の注意力をもってすればあり得ない。
化粧品に限らず,同種商品の並列的配置はいずれの店舗,薬局においても販売上の利便及び顧客の選択の利便から行われており,顧客が通常の注意力をもってすれば混同することはあり得ない。
4 「 」「つけまつ毛」との表記についても,これらは普通に用いられ () Fiberており,もともと「混同」の適用が除外されているものである。
5 争点1-5(被告の製造行為及び納入行為の不正競争行為該当性)【原告らの主張】1 被告各商品の製造について()被告の製造行為は,原告らの商品表示の「使用」(不正競争防止法2条1項1号,同2号)に該当する。すなわち,上記各号に定める「使用」とは,「営業に関連して使用される一切の場合を包含する」概念であるところ,被告各商品は,イ号各容器にマスカラが充填され,充填後のイ号各容器をロ号包装等で包装することにより完成する商品であり,その製造過程においてイ号各容器及びロ号包装が使用されることを必須の条件としている。この点にかんがみれば,被告各商品の製造がイ号各容器及びロ号包装の「使用」に該当すること,ひいては,上記製造行為が不正競争防止法に基づく差止めの対象となることは明らかである。
2 被告各商品の納入について()前記(1)のとおり,被告各商品の製造行為は,原告ら商品の商品表示を使用したものであり,被告は,これをワールドリンクスに納入したのであるから,かかる被告の行為が,原告らの商品表示を使用した商品の「譲渡」又は「引渡し」に該当することは明白である。
この点,被告は,ワールドリンクスから届けられたイ号各容器及びロ号包装を占有していないと主張し,被告各商品の譲渡も引渡しも行っていない旨主張する。しかしながら,ワールドリンクスがイ号各容器及びロ号包装を被告に対して納入した後,被告がイ号各容器及びロ号包装を直接管理・支配しているのは紛れもない事実であって,かような事実が存するにもかかわらず,イ号各容器及びロ号包装を占有していないとの被告の主張は荒唐無稽というほかない。被告は,自身が占有するイ号各容器及びロ号包装を用いて被告各商品を完成させ,これをワールドリンクスに納入しているのであり,かような納入の時点で,被告各商品の占有が被告からワールドリンクスに移転することは明らかであり,被告がワールドリンクスに対して被告各商品を譲渡し又は引き渡していたことも明らかである。
【被告の主張】被告は,ワールドリンクスからの依頼に基づき,ワールドリンクスが占有する資材(容器,キャップ,包装,台紙)に,マスカラを充填したにすぎず,いわゆるOEM製造を請け負ったものである。イ号1容器の商品やロ号包装の台紙に「NID」のロゴマークが付されているとおり,被告各商品は株式会社ニッドのプライベートブランドである。
よって,ワールドリンクスへの納入行為は譲渡や引渡しに当たるものではなく,被告各商品の製造が原告の商品表示を使用する行為にも当たらない。
6 争点2(営業上の利益侵害)について【原告らの主張】1 原告ら商品と被告各商品は,いずれも小売店,ドラッグストア等で販売さ()れ,市場において完全に競合している。
したがって,原告ら商品と混同される被告各商品が製造販売されることにより,原告らがその営業上の利益侵害され,また,今後侵害されるおそれがあることは明らかである。
2 被告は,原告イミュ及び原告エルソルプロダクツが本訴に先立ち被告を債()務者として申し立てた仮処分命令申立事件(当庁平成18年(ヨ)第20030号 以下,「本件仮処分事件」という。)において,被告が被告各商品の製造販売をするつもりはない旨述べたことから,もはや営業上の利益侵害するおそれはないと主張する。しかし,原告ら商品に類似する被告各商品の製造販売を原告らに無断で行っていた被告が,本件仮処分事件を契機に突如として被告各商品を製造しない旨申し述べたところで,かような申述が全く信用に値しないものであることはいうまでもない。
被告は,本訴において原告ら商品と被告各商品との類似性を頑なに否定しているのであって,かような被告の態度にかんがみれば,被告が将来において被告各商品の製造販売を再開しない保証は何一つ存在しない。
以上からすれば,現在もなお営業上の利益侵害のおそれが存することは明白である。
3 被告は,現在イ号各容器及びロ号包装を全く保有していないとも主張する()が,かような主張が到底信用できないことは前記で述べたところと同様である。
【被告の主張】1 原告ら商品と被告各商品の間には類似性がなく,識別が可能で,混同のお()それはない。
2 被告は,ワールドリンクスの占有するイ号各容器にマスカラを充填してい()たにすぎないところ,被告各商品の製造は平成18年7月3日で終了し,現在,被告の下にイ号各容器及びロ号包装は残存していない。
また,本件仮処分事件において,被告は,イ号各容器に収納したマスカラ及びロ号包装に収納したマスカラについては,現在製造販売等をしていないし,今後もするつもりはない旨申述し,原告イミュ及び原告エルソルプロダクツは同事件を取り下げたものである。
3 よって,もはや原告の営業上の利益侵害され,又は侵害されるおそれは()ない。
7 争点3(被告の故意・過失)について【原告らの主張】被告は,種々のマスカラの製造販売等を行ってきた,原告らと競争関係にある化粧品製造販売業者である。かかる被告であれば,被告各商品の製造を開始した平成18年当時,マスカラ市場において既に周知ないし著名な商品表示であった原告ら容器等を知っていたか,又は少なくとも知り得る状況にあった。
そして,原告ら容器及び原告ら包装が周知ないし著名な商品表示である以上,かかる表示の使用の可否を何ら調査・検討せずに使用し,被告各商品を完成させてワールドリンクスに譲渡又は引き渡した行為には,少なくとも過失が認められる。
【被告の主張】被告は,ワールドリンクスから資材の提供を受けてOEM製造を請け負ったにすぎないものであり,OEMにおいては,注文者が指図した商品の容器について請負人に選択権はなく,注文者の指図に従わざるを得ないのであるから,故意・過失はない。
8 争点4(原告の損害額等)について【原告らの主張】1総論()原告らは,以下のとおり,不正競争防止法5条1項に基づき,原告らの受けた損害の額を主張するものである。この点,不正競争防止法5条1項における「利益の額」とは,限界利益,すなわち請求権者の商品の販売価格から製造原価ないし仕入価格を控除し,さらに,請求権者の商品の販売数量の増加に応じて増加するいわゆる変動経費を控除した金額を指すと解すべきである。
なお,被告の釈明によれば,平成18年4月24日から同年7月20日までの間に被告が製造し,ワールドリンクスに納入した被告各商品の数量は,ロ号包装に入れられた被告商品1が8万3955個,件外包装に入れられた被告商品2が1万5403個であり,その合計は9万9358個とのことである。そこで,以下では,被告の主張する譲渡数量(以下「本件譲渡数量」という。)を前提として原告らの損害額を主張する。ただし,原告らは,被告が製造した被告各商品の数量が9万9358個以上存在しない旨を認めるものではない。
2 原告ら商品の製造から納品に至るまでの各原告の役割()原告ら商品の製造は原告エルソルプロダクツが行っており,原告エルソルプロダクツが製造した原告ら商品は,原告エルソルプロダクツが原告ピアスに,原告ピアスが原告イミュにそれぞれ販売し,原告イミュは卸売代理店及び小売店(以下「卸売代理店等」という。)に販売している。
原告ら商品の製造過程及び物流の具体的流れは以下のとおりである。
すなわち,原告エルソルプロダクツは,容器本体,キャップ及び台紙等といった原告ら商品の原材料を取引先から仕入れ,静岡県掛川市所在の工場(以下「掛川工場」という。)及び福岡県柳川市所在の工場(以下「九州工場」という。)の2か所において,原告ら商品の製造を行っている。なお,原告エルソルプロダクツは,平成19年10月31日に九州工場を閉鎖したため,同年11月1日以降の原告ら商品の製造場所は掛川工場のみである。
掛川工場で製造された原告ら商品は,同工場敷地内にある原告ピアス所有の物流センター(以下「ピアス物流センター」という。)に搬入され,ピアス物流センター内で保管,管理される。他方,九州工場で製造された原告ら商品は,運送業者によって九州工場からピアス物流センターへと運送され,同じくピアス物流センター内で保管,管理される。
ピアス物流センターにて保管,管理されている原告ら商品は,卸売代理店等からの原告イミュに対する発注を受けて,原告ピアスが運送業者に運送を委託し,かかる運送業者によって,ピアス物流センターから卸売代理店等に直接納品されている。したがって,卸売代理店等に対する販売元である原告イミュには原告ら商品は納品されておらず,原告ら商品の保管,管理,納品は原告ピアスが担当している。
3 原告エルソルプロダクツの損害()ア 販売価格原告エルソルプロダクツ・原告ピアス間で行われるグループ会社商品の取引については,商品のブランドに応じて,当該商品の販売価格の算定方法が予め設定されている。すなわち,原告エルソルプロダクツ・原告ピアス間の取引におけるグループ会社商品の販売価格は,当該商品のメーカー希望小売価格から,当該価格に「運営費率」(ブランドごとに定められた一定比率をいう。)を乗じて得られる「運営費」を控除した金額とされている。この点,原告ら商品は原告イミュのブランド商品(以下「イミュブランド商品」という。)であるところ,イミュブランド商品については,運営費率が●●%に設定されているから,原告エルソルプロダクツの原告ピアスに対するイミュブランド商品の販売価格は,以下の数式のとおり,メーカー希望小売価格の●●%となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そうすると,原告ら商品の市場におけるメーカー希望小売価格は1個当たり1500円であるから,原告エルソルプロダクツの原告ピアスに対する原告ら商品の販売価格は,1個当たり●●●円●●●●●●●●●●●●●●●●となる。
イ 原材料費原告ら商品の原材料は製品資材及びマスカラ原料であるところ,原告ら商品には,国内製の原材料のみによって製造される原告ら商品(以下「原告ら商品A」という。)と,中国製の原材料を含む原材料によって製造される原告ら商品(以下「原告ら商品B」という。)があり,原告ら商品Aの仕入価格は1個当たり●●●●●●円,原告ら商品Bの仕入価格は1個当たり●●●●●円となる。
ところで,平成18年4月1日から同年7月31日までの間において掛川工場で製造された原告ら商品A及び原告ら商品Bの製造数量は,それぞれ約12万個及び約60万個であり,割合でいうと概ね1:5である。かかる割合を加味すると,原告ら商品1個当たりの原材料費は,以下の計算式のとおり●●●●●●円となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ウ 変動経費人件費(ア)原告ら商品Aの製造過程における作業工数,作業単価等は以下の図表のとおりであり,原告ら商品A1個当たりの人件費は●●●●●円となる。なお,「秤量」とは,複数の仕入先から仕入れた種類の異なるマスカラ原料を所定の処方に従って混ぜ合わせるため,各マスカラ原料の重量を秤量する作業をいい,「バルク調製造」とは,秤量した各マスカラ原料を調合し,マスカラ液を製造する作業をいう。
また,原告ら商品Bの製造過程における作業工数,作業単価等は以下の図表のとおりであり,原告ら商品Bの1個当たりの人件費は●●●●●円となる。
なお,原告ら商品Bに係る「充填」の作業工数が,原告ら商品Aに係る「充填」の作業工数を下回るのは,原告ら商品Bについては筆付キャップに係る筆及びキャップが当初から一体化しており,筆及びキャップの組合せ作業を行う必要が存しないからである。
そして,前記イのとおり,平成18年4月1日から同年7月31日までの間において掛川工場で製造された原告ら商品A及び原告ら商品Bの製造数量は,割合でいうと概ね1:5であるから,かかる割合を加味すると,原告ら商品1個当たりの人件費は,以下の計算式のとおり●●●●●円となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●荷造運搬費(イ)前記(2)のとおり,原告エルソルプロダクツは,掛川工場及び九州工場の2か所において原告ら商品の製造を行っており,九州工場で製造された原告ら商品は,運送業者によって九州工場からピアス物流センターへと運送されている。
しかし,本件においては,九州工場からピアス物流センターへの運搬費を考慮する必要はない。なぜなら,平成18年4月1日から同年7月31日までの4か月間の本件譲渡数量(9万9358個)を前提とすると,4か月間で10万個程度の数であれば,掛川工場のみの稼動によって上記数量に相当する原告ら商品を製造することは十分可能だからである。すなわち,掛川工場には,上記販売期間内はもちろん,現在でも,原告ら商品専用の製造ラインが●ライン確保されているところ,●ラインで製造可能な原告ら商品の1日当たりの数量は●●●●●●個であり,掛川工場の稼動可能日数は1月当たり●●日であるから,掛川工場における原告ら商品の4か月間の製造可能数量は●●●個である。他方,平成18年4月1日から同年7月31日までの間における実際の製造数量は74万1937個 であるから,上記期間において10万個にも満たない数の原告ら商品を,掛川工場のみで追加製造することは十分可能であり,原告ら商品の追加製造に関し九州工場の稼動を考える必要はなく,九州工場からピアス物流センターまでの原告ら商品の運搬も考える必要はない。よって,運搬に伴う経費は,原告ら商品の販売価格から控除すべき変動経費には該当しない。
利益額及び損害額以上のとおり,原告ら商品1個当たりの販売価格は●●●円,原告ら商品1個当たりの原材料費は●●●●●●円,人件費は●●●●●円であるから,原告ら商品1個当たりの原告エルソルプロダクツの限界利益額は●●●●●●円 となる。したがって,本件譲渡数量(9万9358個)を前提とすると,原告エルソルプロダクツの損害額は,上記の限界利益額に被告各商品の譲渡数量を乗じた額である1894万0615円(1円未満切捨て)となる。
4 原告ピアスの損害()ア 販売価格原告ピアス・原告イミュ間で行われるグループ会社商品の取引についても,商品のブランドに応じて当該商品の販売価格の算定方法が予め設定されており,その算定方法は原告エルソルプロダクツのそれと全く同じである。この点,原告ピアス・原告イミュ間の取引におけるイミュブランド商品に係る運営費率は●●%に設定されているから,原告ピアスの原告イミュに対するイミュブランド商品の販売価格は,以下の数式のとおり,メーカー希望小売価格の●●%となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そうすると,原告ら商品の市場におけるメーカー希望小売価格は1個当たり1500円であるから,原告ピアスの原告イミュに対する原告ら商品の販売価格は1個当たり●●●円 となる●●●●●●●●●●●●●●●。
イ 仕入価格原告エルソルプロダクツの原告ピアスに対する原告ら商品の販売価格は前記(3)アのとおり●●●円であるから,この価格がそのまま原告ピアスの仕入価格となる。
ウ 変動経費前記(2)のとおり,原告ら商品は,原告ピアスからの委託を受けた運送業者によって,ピアス物流センターから卸売代理店等へと直接納品されている。かかる発送に伴う運搬費(運送業者への運送業務委託に伴う委託料)は発送先の遠近によって大きく異なるが,原告ピアスの運送業務委託先である西濃運輸株式会社が作成した見積書に記載されている各地区(札幌,仙台,関東,名古屋,近畿,広島及び福岡)への1ケース(1ケース当たりの原告ら商品の数量は36個である。)当たりの運賃額からすれば,原告ら商品1個当たりの運搬費は,以下の計算式のとおり,全国平均で●●●●円となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●エ 利益額及び損害額以上のとおり,原告ら商品1個当たりの販売価格は●●●円,原告ら商品1個当たりの仕入価格は●●●円,運搬費は●●●●●円であるから,原告ら商品1個当たりの原告ピアスの限界利益額は●●●●●円 となる。
したがって,本件譲渡数量(9万9358個)を前提とすると,原告ピアスの損害額は,上記の限界利益額に被告各商品の譲渡数量を乗じた額である914万6897円(1円未満切捨て) となる。
5 原告イミュの損害()ア 販売価格原告イミュの卸売代理店等に対する原告ら商品の販売価格は,販売先である卸売代理店等ごとに異なっており,その金額は一定ではない。そこで,平成18年4月1日から同年7月31日までの間における原告ら商品の国内出荷実績等から原告ら商品の1個当たりの販売価格を算出するに,上記期間における原告ら商品の国内出荷数量は●●●●●●●●個であり,当該出荷に伴う売上は●●●●●●●●●●●円であるから,原告ら商品の1個当たりの販売価格は,以下の計算式のとおり●●●円となる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●イ 仕入価格前記(4)アのとおり,原告ピアスの原告イミュに対する原告ら商品の販売価格は●●●円であるから,この価格がそのまま原告イミュの仕入価格となる。
ウ 変動経費前記(2)のとおり,原告イミュが原告ら商品の運搬に関する手続を原告ピアスに一任していることを踏まえ,原告イミュは,「物流費」名目の費用を原告ピアスに支払っている。もっとも,この「物流費」は,ピアスグループ内における会計処理の関係上,原告ピアスが運送業者に対して支払った運搬費の実額ではなく,メーカー希望小売価格の●●●%という金額で固定されている。この点,原告ら商品の市場におけるメーカー希望小売価格は1500円であるから,原告イミュが原告ピアスに対して支払うべき原告ら商品1個当たりの物流費は●●●●円 となる。
利益額及び損害額以上のとおり,原告ら商品1個当たりの販売価格は●●●円,原告ら商品1個当たりの仕入価格は●●●円,物流費は●●●●円であるから,原告ら商品1個当たりの原告イミュの限界利益額は●●●●●円 となる。
したがって,本件譲渡数量(9万9358個)を前提とすると,原告イミュの損害額は,上記の限界利益額に被告各商品の譲渡数量を乗じた額である3452万6905円となる。
6 弁護士費用()原告らの上記損害額(合計6261万4417円)に照らせば,本件における弁護士費用は626万円を下らない。
7 原告らの損害賠償請求権の性質()以上より,被告の不正競争行為によって原告らが被った損害額は,総額で金6887万4417円となるところ,原告らは,かかる損害の一部である金6600万円について支払を求める。
なお,原告エルソルプロダクツ及び原告イミュは,原告ピアスを親会社とするいわゆる企業グループに属しているところ,原告ら商品については,原告イミュがその企画・開発を行い,原告ら商品の商品化が決定した後は,原告エルソルプロダクツが原告ら商品の製造を行った上で同商品を原告ピアスに販売し,原告ピアスが同商品を原告イミュに販売し,原告イミュが同商品を卸売代理店等に販売するという流れで事業が行われている。このように,著名ないし周知の商品表示としての原告ら容器及び原告ら包装を使用した原告ら商品は,企業グループたる原告ら3社が一体となって組織的に企画・製造・販売したものである。
そうすると,本件における商品表示は原告らに不可分に帰属しており,商品表示に対する原告らの各持分を観念することはできない。この点にかんがみれば,原告ら商品の商品表示に類似する容器及び包装を使用した被告各商品を販売したことにより生じた原告らの損害賠償請求権は,その性質上,原告らに不可分的に帰属するものと解すべきである(民法428条)。
したがって,原告らは,それぞれ,原告らに生じた損害額の合計額を被告に求めることができるものである。
【被告の主張】本件譲渡数量について,被告はワールドリンクスに譲渡も引渡しもしていないが,ワールドリンクスから送られてきた資材にマスカラを充填し,ワールドリンクスが引き上げた数量としては,原告らの主張を認める。
その余については否認ないし争う。
1 不正競争防止法5条1項の適用について()ア 原告ら商品も被告各商品も購買力の乏しい若年層を対象としているところ,原告ら商品の小売価格は1575円であるのに対し,被告各商品の小売価格は980円と極めて低廉であり,また本件では両商品において品質も異なるから両商品の需要者層が大きく異なっている。
よって,両商品の完全補完関係を認めることは困難である。
イ 原告らが販売する商品には原告ら商品の他に2種類の代替商品が市場に存在し,一方,ニッドブランドの商品も被告各商品の他に2種類存在していることから,両者に補完関係はない。
ウ よって,同条項の前提事実である両商品の補完関係がないのであるから,同条項の適用はない。
2 単位数量当たりの利益の額について()原告らが主張する単位数量当たりの利益の額については,そもそもその根拠が不明瞭かつ客観性・具体性に欠ける。
また,原告らは不正競争防止法5条1項の「利益の額」につき,その意義を「限界利益」と主張するが,製造業は販売業と異なり,開発費,工場・倉庫の家賃等の開発設備費を投下していることから,固定費は大きく利益は小さい。したがって,粗利益から変動費のみを控除するにすぎない限界利益による方法は利益を大きくするきらいがあり,製造業には妥当しない。よって,本件では,同条項にいう「利益の額」を「純利益」と解すべきである。
したがって,原告らは,原告ら商品の製造販売について多大な試験研究費,開発費,広告宣伝費等を投下しているというのであるから,これらの費用を必要経費として控除すべきである。また,その他にも工場倉庫の家賃等の固定費,電気,水道,光熱費,修繕費,消耗材料の期首・期末の仕掛品棚卸等の変動費なども控除すべきである。
【原告の反論】以下のとおり,原告ら商品と被告各商品には補完関係が存在する。
1 原告ら商品と被告各商品はともにマスカラであり,商品としての範疇は同()一である上,まつ毛を濃く見せるという効能も全く同一である。
よって,被告の主張する品質の相違は,商品としての範疇の同一性,効能の同一性といった事実を失わしめるほどのものではなく,少なくとも,品質を理由として,被告各商品が多数販売されたといえない。
2 また,原告ら商品は,比較的若い世代の女性を主要な需要層とする商品で()あるが,この点は被告各商品も全く同様である。さらに,両商品はともに,化粧品雑貨小売店やドラッグストア等,需要層による多数の来訪を期待できる場所で販売されている。
3 このように,両商品は,需要層及び販売場所が一致しており,市場におい()て完全に競合しているのである。この点,被告は両商品の価格の相違を強調するが,両商品間に存する程度の価格差をもって,被告商品の価格が原告ら商品に比して「極めて低廉」というのは余りに誇大である上,マスカラの購入を志向する女性客が500円程度の価格差をもって原告ら商品を購入しないことは想定し難く,両商品の価格差が市場競合性に影響を与えるとは評価し得ない。
当裁判所の判断
1 争点1-1(原告ら容器及び原告ら包装の周知性著名性)について1 原告らは,原告ら容器は不正競争防止法2条1項1号所定の「商品等表示()(商品の容器)」として周知であり,原告ら包装は同号所定の「商品等表示(商品の包装)」として周知であるとして,平成18年4月24日以降の被告各商品の製造・納入行為が同号所定の「不正競争」に該当すると主張するので,まず,平成18年4月時点において,原告ら容器及び原告ら包装が原告らの商品表示として周知性を獲得していたか否かについて検討する(なお,原告らの差止請求に係る周知性の有無の判断基準時は口頭弁論終結時(平成20年7月17日)であるが,一旦獲得した商品表示性は,当該商品の販売を取りやめるなどの事情がない限り失われることはないと考えられるところ,本件において,原告らが原告ら商品の販売を取りやめたというような事情は窺えないので,平成18年4月当時を基準として検討をすれは足りるものというべきである。)。
2 原告ら容器の特徴()ア 原告ら容器は別紙原告ら商品表示目録1記載のとおりであるところ,原告らは,原告ら容器の特徴として,容器本体が濃いワインレッドの色を有する点及び容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点を挙げるので,以下検討する。
イ 証拠(甲42)によれば,原告ら商品は,平成16年12月から平成18年3月までの16か月間に延べ17回にわたり,女性用ファッション雑誌において人気のあるマスカラとして掲載されたことが認められる。すなわち,「 」(平成16年12月号),「 」(平成17年2月 SCawaii! miniwith junie @cos 号),「 」(同月号),「美的」(同月号),「 」(同月号),「クチコミランキング2005年版」,「」(平成17年6月号), me ViVi「 」(同年9月号),「 」(同年8月号),「 」(同月号), CanCam ar SEDA「 」(平成18年1月号),「 」(同月号),「 」(同月 LUCI PINKY VOCEmini PS C 号),「 」(同年2月号),「 」(同月号),「美的」(同月号),「」(同月号),「 」(同月号)及び「 」(同 anCam COSMOPOLITAN JULLE年3月号)の各女性用ファッション雑誌において,原告ら商品が人気のあるマスカラとして掲載されたことが認められるところ,これらに掲載された他の人気マスカラのうち圧倒的多数のものは黒色や銀系の色を用いており,容器本体に赤系の色を用いているものは,「オペラ マイラッシュ」,「バルガントン マスカラ」(いずれも「」平成17年6月号に掲載), ViVi「クラランス マスカラ ワンダーヴォリューム」(「 」同年8月号に ar掲載)及び「伊勢半 キスミーヒロインメイク ロング&カールマスカラ」(「美的」平成18年2月号に掲載)の4点にすぎないことが認められる。また,赤系の色を用いた上記4点のうち3点(「オペラ マイラッシュ」,「バルガントン マスカラ」及び「伊勢半 キスミーヒロインメイク ロング&カールマスカラ」)は,いずれも容器本体のみならずキャップまで同じ赤系の色で塗られており,原告ら商品のようにキャップに容器本体の色と異なる色(銀色)を用いている商品は見受けられない(なお,「クラランス マスカラ ワンダーヴォリューム」のキャップの色は不明である。)。また,上記各雑誌に掲載された人気マスカラのうち,容器本体に目やまつ毛の絵柄が施されているものはない。
ウ 上記認定事実によれば,原告ら容器は,容器本体が濃いワインレッド色であり,キャップが銀色である点(以下「原告ら容器の特徴点A」という。),及び容器本体の正面視に目やまつ毛の絵柄が施され女性がウィンクしているようなまつ毛を強調した目の絵柄(以下「原告ら容器の絵柄」という。)が施されている点(以下「原告ら容器の特徴点B」という。)において,需要者の注意を引く他の商品とは異なる独自の特徴を有するものと認められる。
Ra エ この点,被告は,「エテュセ ウォータープルーフマスカラ」(「」平成12年3月号に掲載。乙17の1),「スティブル マスカラ」 y及び「ディグニータ マスカラビジュアリスト」(いずれも「 」平成 Ray12年4月号に掲載。乙17の2),「プライベートレーベル カラーマスカラ」(「 」平成12年8月号に掲載。乙17の3),「インウイ Rayザ マスカラ」(「 」平成12年11月号に掲載。乙17の4),「イ Rayプサ ドレッシーメイクアップキット マスカラ」(「 」平成12年 with12月号に掲載。乙17の5),「エテュセ スパークリングマスカラ」(平成17年7月22日発売。乙18の2),「クラランス ピュアカールマスカラ」(平成14年8月23日発売。乙18の3)並びに「アヴァンセスーパービューロングマスカラ」(平成17年6月中旬発売。乙18の4)を挙げ(なお,平成18年4月以降に発売されたもの及び発売日が証拠上不明なものは掲げていない。),原告ら容器の濃いワインレッド系の色の容器は,平成12年ころよりマスカラ容器に使用されていたと主張する。確かに,被告が主張するこれらマスカラは,いずれも広く捉えれば赤系の色をしているといえなくもない。しかし,「スティブル マスカラ」,「ディグニータ マスカラビジュアリスト」及び「プライベートレーベルカラーマスカラ」は,赤色というよりむしろ茶色に近いとみられること,また,「エテュセ ウォータープルーフマスカラ」,「プライベートレーベル マスカラ」及び「エテュセ スパークリングマスカラ」を除いて,いずれも容器本体とキャップが同色で塗られていること,上記いずれのマスカラも目やまつ毛の絵柄が一切施されていないこと,これらのマスカラがどの程度の人気を博したものであったか(売上高の多寡)が不明であること,以上に照らすと,被告の主張するこれらのマスカラの存在をもって,原告ら容器の各特徴点に係る前記認定,すなわち同各特徴点が需要者の注意を引く他の商品とは異なる独自の特徴であるとの上記認定を左右するものとはいえない。
3 原告ら包装の独自性()ア 原告ら包装は,別紙原告ら商品表示目録2記載のとおりであるところ,原告らは原告ら包装の特徴として,?@台紙の略中央部に「塗るつけまつげ」との文字が付されている点,?A包装台紙の色調がライトグリーン(緑系統)を基調としており,このこととブリスター方式で内包されている容器本体が濃いワインレッド色であることとが相まって,全体として特徴ある調和がとれている点,?B容器本体の正面視に2つの長いまつ毛模様を有する点,?C台紙の形状が全体として木の葉型である点及び?D台紙の形状と略長方形のプラスチック状包装との形状とが一致していない点において,需要者の注意を引く独特の際だった特徴を備えていると主張するので,以下検討する。
イ 原告ら主張の特徴点?@についてまず,「塗るつけまつげ」との文字が台紙の略中央部に付されている点について,「塗るつけまつげ」という表現は,「マスカラ」でありながら,「塗る」だけで「つけまつげ」をつけたかのような一見明瞭な効果が期待できるという商品コンセプトを比喩的に表現したものとして斬新であり原告ら包装の独自の特徴点と認められる(以下,この特徴点を「原告ら包装の特徴点A」という。)。
ウ 原告ら主張の特徴点?Aないし?Dについてマスカラの包装について,原告イミュの副事業部長であるPは,陳述書(甲66)において,「当社は,当社商品の包装にも独自性を出そうと考え,マスカラ包装としては他社が全く採用していなかったブリスター方式…を採用しました。」と陳述するが,平成18年4月以前のマスカラ包装が一般的にどのような形態であったかを認めるに足りる的確な証拠はない(なお,甲45の1ないし8は,平成18年4月以前の包装かどうか不明である。)。したがって,台紙のライトグリーンを基調とした色彩や木の葉型の形状,プラスチック包装におけるブリスター方式の採用とその形状については,これらをもって,他者の包装とは異なる独自の特徴であるとは認めるに足りない。
もっとも,前記のとおり,原告ら商品は,原告ら容器の特徴点A及び同Bにおいて,他の商品とは異なる独自の特徴を有していると認められるところ,原告ら包装では,原告ら容器を有姿のまま透視できるようにしているのであるから,独自の特徴を有する原告ら容器と台紙とが相まって,原告ら包装における他の商品包装には見られない特徴を有しているということができる。
そうすると,原告ら容器の特徴点A及び同B並びに原告ら包装の台紙の木の葉型の形状及びライトグリーンの色彩の全体をもって,原告ら包装の独自の特徴であると認められる(以下,この特徴点を「原告ら包装の特徴点B」という。)。
4 原告ら容器及び原告ら包装の周知性()ア 原告ら商品の売上高証拠(甲20)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら商品は,平成13年9月25日に販売が開始され,その後,平成18年3月までの売上額(原告イミュの販売数量及び販売額)は,別紙販売数量等一覧表のとおりと認められる。そして,この販売数量に小売店舗における小売販売価格(1500円 消費税別)を乗じた小売販売額合計を合わせ,各年度の合計額をまとめると以下の集計表のとおりとなる。
販売数量(個) 卸売販売額合計(円) 小売販売額合計(円)平成13年度 299,662 258,224,700 449,493,000平成14年度 1,784,425 1,520,086,119 2,676,637,500平成15年度 2,477,648 2,095,505,268 3,716,472,000平成16年度 2,681,541 2,197,961,980 4,022,311,500平成17年度 3,913,189 3,300,850,766 5,869,783,500合 計 11,156,465 9,372,628,833 16,734,697,500上記集計表のとおり,販売開始以降平成17年度末までの原告ら商品の販売数量の合計は1115万6465個,卸売販売額の合計は93億7262万8833円,小売販売額の合計は167億3469万7500円(いずれも消費税別)であることが認められる。
イ 原告ら商品の販売店舗数証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら商品の配荷店舗数は,平成13年度が約200店舗,平成14年度が約1800店舗,平成15年度以降が約4500店舗と増加し,地域的にも日本全国各地の百貨店,化粧品雑貨小売店(ソニープラザ,ロフト,東急ハンズなど),ドラッグストア及びスーパーマーケットで販売されたことが認められる。
ウ 原告ら商品の広告宣伝証拠(甲21〜41)及び弁論の全趣旨によれば,原告イミュによる原告ら商品の広告宣伝につき,以下の事実が認められる。
原告イミュは,別紙交通広告等一覧表のとおり,平成14年4月以降,(ア)東京,大阪,名古屋を始めとする全国各主要都市の交通機関(JR・私鉄・バス)の中吊り及び主要駅構内(付属施設も含む。)において,同一覧表記載のビジュアル1ないし同9の内容の広告をした。
原告イミュは,上記ビジュアル2,3及び7ないし9の内容の広告を,(イ)別紙交通広告等一覧表のとおり,平成14年9月以降,「 」「 」JJ with「 」「 ・ 」「 」「 」「 」「 」など Spring non no ViVi CanCam Heart H&Bの女性用ファッション雑誌(全国誌)に純広告を行った。
原告イミュは,平成14年8月から平成18年5月までの間,福岡放(ウ)送,RKB毎日,中京テレビ,朝日放送,読売テレビ,TBS,フジテレビ,日本テレビ,毎日放送,関西テレビ等により,原告ら商品のテレビCMを複数回放映した。
原告イミュは,平成18年5月までの間に,上記交通広告のために7(エ)億0513万3000円を,上記女性用ファッション雑誌への純広告のために3億9300万円を,上記テレビCM放映のために9億0213万円を,それぞれ支払った。
エ 雑誌等による紹介証拠(甲42)及び弁論の全趣旨によれば,別紙「イミュ2002〜2006掲載 ファイバーウィッグ 受賞リスト」記載のとおり,原告ら商品が「 」「 」「 」「美的」「 」「 」 Ray MORE Tokyo Walker CanCam ViVi等の雑誌において,マスカラの人気ランキング等の上位として,平成14年(4月発行以降)に延べ40回,平成15年に延べ89回,平成16年に延べ51回,平成17年に延べ43回,平成18年(6月発行まで)に延べ18回掲載されたことが認められる。
証拠(甲43)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら商品は,大手雑貨小売店であるソニープラザにおける「 人気商品 10」の Sony Plaza BEST「 10(全ジャンルの人気商品ベスト10)」において, TOTAL BEST平成14年9月から平成18年5月までの間,41回にわたって5位以上(そのうち1位が23回)にランクインしたことが認められる。
オ検討上記認定のとおり,原告ら商品につき,原告イミュは,平成14年4月以降,全国各地の主要都市の交通機関や主要駅構内において多数回にわたって広告を行ったこと,平成14年9月以降,全国誌である女性用ファッション雑誌においても多数回にわたって純広告を行ったこと,平成14年8月以降,全国各地の放送局においてテレビCMを放映したこと,これら広告のために,総額20億円余りの広告費を支出したことが認められ,平成13年9月から平成17年3月までの約4年半の間に1115万6465個もの原告ら商品が販売され,その卸売販売額合計は93億7262万円余り(小売販売額合計は167億3469万円余り)に上ったことが認められる。そして,上記広告のうち交通広告や雑誌広告における広告内容(ビジュアル1ないし同9)を見ると,いずれの広告内容においても原告ら容器の拡大写真が掲載されており,特にビジュアル1,同2,同7及び同9においては原告ら容器の拡大写真が広告の中心となっていること,いずれの広告内容においても原告ら容器本体の濃いワインレッドが基調とされており,特にビジュアル2,同5及び同6においては広告のほぼ全面が濃いワインレッドに覆われていること,いずれの広告内容においても原告ら容器の拡大写真が掲載されることにより原告ら容器の絵柄も大きく掲載されており,特にビジュアル5においては同絵柄のみが大きく取り上げられて描かれていること,以上の事実が認められる。これらの事実によれば,遅くとも平成18年4月までには,上記大量の広告及び極めて多数に及ぶ販売等により,原告ら容器は,その特徴点A及び同Bをもって,原告ら容器が,原告ら商品の出所を示すものとしてマスカラの需要者たる女性の間に広く認識されていたと認められる。
また,ビジュアル1ないし同9のいずれの広告内容においても,原告ら容器とともに原告ら包装の台紙も掲載されており,特にビジュアル1及び同2においては同台紙が広告の中に大きく掲載されることにより,台紙の木の葉型の形状及びライトグリーンの色彩も目を引くものとなっていること,いずれの広告内容においても同台紙の表示とは別に「塗るつけまつげ」との記載がされていること,以上の事実が認められ,これにより遅くとも平成18年4月までに,原告ら包装の特徴点A及び同Bをもって,原告ら包装も原告ら商品を示すものとして需要者たる女性の間に広く認識されていたと認められる(なお,原告らが原告ら包装の特徴点として主張するブリスター方式の包装(原告ら包装の特徴点?A)や,台紙の形状とプラスチック状包装との形状の不一致(原告ら包装の特徴点?D)については,上記各広告内容において,プラスチック状の包装自体が全く現れていない以上,周知性の点においても,これらをもって需要者の間に広く認識されているとは認め難い。)。
2 争点1-2(イ号各容器と原告ら容器の類否)について1 イ号1容器と原告ら容器との類否()ア 一致点原告ら容器は別紙原告ら商品表示目録1に,イ号1容器は別紙被告商品表示目録1に,それぞれ記載のとおりと認められる。
よって,イ号1容器と原告ら容器とは,容器本体が直径約16?o,高さ約80?oのプラスチック製の細長い円筒である点,容器本体の上部には直径約16?o,高さ約40?oの円筒形キャップが螺着されている点,容器本体が濃いワインレッド色である点において,いずれも一致する。
なお,被告は,容器本体の色について原告ら容器とイ号1容器とは異なると主張する。しかし,証拠(甲6,10,11)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも一見した限りでは両者の色の差異を容易に判別し得るものではなく,その差異は極めて微細なものであることが認められる。このように,両者の色は一般の需要者にとって見分けることが著しく困難なほど酷似しているというべきであるから,類否判断としては一致点と認めるのが相当である。
イ 相違点上記一致点に対し,イ号1容器と原告ら容器には以下の相違点が認められる。
キャップの色(ア)イ号1容器のキャップの色は艶消しの淡い金色であるのに対し,原告ら容器のそれは艶消しの銀色である。
原告ら容器の絵柄(イ)イ号1容器の容器本体に描かれた目とまつ毛の絵柄(以下「イ号1容器の絵柄」という。)では眉は描かれていないのに対し,原告ら容器の絵柄には細い眉が描かれており,絵柄自体も同じではない。
また,原告ら容器の絵柄は黒色であるのに対し,イ号1容器の絵柄はより薄くて灰色に近く,各絵柄の位置についても,イ号1容器の絵柄は容器本体下部に描かれているのに対し,原告ら容器の絵柄は容器本体上部に描かれている。
各容器本体に付されている文字(ウ)イ号1容器の容器本体に付されている文字は「 」であ Fiber mascaradejavu Fib るのに対し,原告ら容器の容器本体に付されている文字は「」である。erwigまた,文字色について,イ号1容器の文字は他の文字と同一の灰色で光っていないのに対し,原告ら容器の文字は他の文字とは異なって銀色であり,光っている。
ウ検討上記一致点のとおり,イ号1容器と原告ら容器とは,その大きさ及び容器本体とキャップの長さにおいて完全に一致しており,しかも容器本体の色も一致している。
相違点について検討すると,キャップの色についても,確かにイ号1容器は金色に分類される色ではあるが,かなり淡めの金色であり,原告ら容器の銀色(イ号1容器と同じく艶消しである。)との差異は必ずしも顕著とはいえず,むしろ他の色と比べると,金色と銀色はいずれも光沢感があり,かつ高級感を感じさせる同系統の色である上,いずれも艶消しであることからすると,キャップの色は類似しているといい得る。
容器本体に描かれている絵柄についても,原告ら商品も被告商品1もマスカラであるから,マスカラを塗ったことによってまつ毛が長くなるという点こそが重要であって,眉の有無は必ずしも重要なものではないところ,両者の絵柄を対比すると,いずれも右目を閉じてウィンクしているような絵柄であり,まつ毛の長さを強調し印象付ける絵柄になっているという点では似たような印象をもたらすものといえる。
そうすると,結局,イ号1容器は,原告ら容器の特徴点A及び同Bをいずれも具備していると認められる。他方,イ号1容器と原告ら容器には,前記イのとおり,容器本体の文字及びその色並びに絵柄の色及びその位置において相違点があるものの,イ号1容器の文字は他の文字と同色で灰色に近い暗めの色で控えめに付されているにすぎず,これによる識別力は高いものとはいえない。また,絵柄の位置や色に至っては微細な差異というほかないことからすれば,これらの相違点が需要者に対して前記一致点等による印象を打ち消すに足りるものとは到底いえない。
よって,イ号1容器は原告ら容器と類似すると認められる。
2 イ号2容器と原告ら容器との類否()ア 一致点イ号2容器は被告商品表示目録2に記載のとおりと認められる。
よって,イ号2容器と原告ら容器とは,容器本体が直径約16?o,高さ約80?oのプラスチック製の細長い円筒である点,容器本体の上部には,直径約16?o,高さ約40?oの円筒形キャップが螺着されている点,容器本体が濃いワインレッド色である点において,いずれも一致する。
なお,容器本体の色に係る被告の主張が失当であることは前記(1)アで判示したとおりである。
イ 相違点上記一致点に対し,イ号2容器と原告ら容器には以下の相違点が認められる。
キャップの色(ア)イ号2容器のキャップの色は艶消しの淡い金色であるのに対し,原告ら容器のそれは艶消しの銀色である。
原告ら容器の絵柄(イ)イ号2容器の容器本体に描かれた髪とまつ毛の絵柄(以下「イ号2容器の絵柄」という。)では髪が描かれており,両目が閉じられているのに対し,原告ら容器の絵柄には髪が描かれておらず,左目が開いており,絵柄自体も同じではない。
また,原告ら容器の絵柄は黒色であるのに対し,イ号2容器の絵柄は他の文字と同一ので灰色に近く,各絵柄の位置について,イ号2容器の絵柄は容器本体下部に描かれているのに対し,原告ら容器では容器本体上部に描かれている。
各容器本体に付されている文字(ウ)イ号2容器に付されている文字は「 」であるのに対し, fiber mascara原告ら容器では「 」である。 dejavu Fiberwigまた,文字色について,イ号2容器の文字は他の文字と同一の灰色で光っていないのに対し,原告ら容器の文字は他の文字と異なって銀色であり,光っている。
ウ検討上記一致点のとおり,イ号2容器と原告ら容器とは,その大きさ及び容器本体とキャップの長さにおいて完全に一致しており,しかも容器本体の色も一致している。
上記相違点について検討すると,キャップの色については,前記(1)ウで認定したとおり,両者の差異は必ずしも顕著とはいえず,むしろ類似しているといい得る。
容器本体に描かれている絵柄についても,原告ら商品も被告商品2もマスカラであるから,髪の有無は必ずしも重要なものではないし,たとえ両目が閉じられているとしても,全体として見た場合,目の絵柄が描かれることによりまつ毛を強調し印象付けているという点では似たような印象をもたらすものといえる。
そうすると,結局,イ号2容器は,原告ら容器の特徴点Aを具備し,原告ら容器の特徴点Bと類似する絵柄を具備していると認められる。そして,イ号2容器と原告ら容器には,前記イのとおり,容器本体の文字及びその色並びに絵柄の色及びその位置においてそれぞれ相違するものの,前記(1)ウにおいて判示したとおり,これらの相違点をもって上記一致点及び類似点による印象を打ち消すに足りるものとはいえない。
よって,イ号2容器は原告ら容器と類似していると認められる。
3 争点1-3(ロ号包装と原告ら包装の類否)について1一致点()原告ら包装は別紙原告ら商品表示目録2に,ロ号包装は別紙被告商品表示目録3に,それぞれ記載のとおりと認められる。
よって,ロ号包装と原告ら包装とは,プラスチック状の包装の大きさの点(ロ号包装は縦約180?o,横約100?oであるのに対し,原告ら包装は縦約185?o,横約105?oである。)においてほぼ一致する。また,いずれもマスカラ容器をブリスター方式により包容することにより,マスカラ容器を有姿のまま透視できるようにしている点において一致し,これにより包装状態でも透視して外部から視認し得るマスカラ容器に係る前記2(1)アにおいて認定した一致点が認められる。
2相違点()上記一致点に対し,ロ号包装と原告ら包装には,以下の相違点が認められる。
ア 台紙の形状についてロ号包装では,左上部,右上部及び左下部にそれぞれ丸みを帯びた角が設けられているのに対し,原告ら包装では左上部と下部にそれぞれ角が設けられている。
イ 台紙の色彩についてロ号包装では,右上部から右下部にかけて流線型に若草色を基調としつつ,まつ毛状の形に緑色を配し,楕円状の半球に肌色を配しているのに対し,原告ら包装では全体としてライトグリーンを基調とし,台紙の右上部から右下部にかけて流線型に黄緑色を配し,かつ台紙の縁取りは白色である。
ウ 台紙に付されている文字等についてロ号包装の台紙略中央部には「まるで」「つけまつげ」との文字が2段に分けて上から順に付されているのに対し,原告ら包装の台紙略中央部には「マスカラじゃない」「これは」「塗るつけまつげ」との文字が3段に分けて上から順に付されている。
ロ号包装の台紙上部には「 」「 」「エクステまつげ」と Fiber mascaraの文字が3段に分けて上から順に付されているのに対し,原告ら包装の台紙上部には「 」「 」との文字が2段に分けて上から順に付 dejavu Fiberwigされている。
ロ号包装の台紙下部には「ブラック」「 」との文字が2段に分け BlackPur て上から順に付されているのに対し,原告ら包装の台紙下部には「」「 」との文字が2段に分けて上から順に付されている。 e Blackロ号包装の台紙下部には黒のブラシの先端部分が左斜め45度に描かれているのに対し,原告ら包装の台紙略下部には黒のブラシ全体が水平に描かれている。
エ マスカラ容器についてロ号包装及び原告ら包装は,いずれもマスカラ容器を透視できるようにしていることから,マスカラ容器に係る前記(1)イ及び(2)イにおいて認定した相違点が認められる。
また,ブリスター方式によりマスカラ容器を包容する部分が,ロ号包装では正面視左側であるのに対し,原告ら包装では正面視右側である。
3検討 ()上記一致点のとおり,ロ号包装と原告ら包装とは,マスカラ容器を有姿のまま透視できるようにしている点において一致し,そのプラスチック状の包装の大きさにおいてほぼ一致する。
また,台紙についても,全く同じではないものの,全体として見れば,その色彩においていずれもライトグリーンを基調としていると認められる上,台紙の形状についても,ライトグリーンの色彩と併せ見れば,いずれも木の葉のような形状をしているといい得ることからすれば,全体として見た場合,その形状及び色彩において,両者は類似するものと認められる。
さらに,台紙に付された文字についても,その称呼及び外観において異なるものの,ロ号包装の「まるでつけまつげ」の文字色は赤で,ライトグリーンを基調とする背景との対比において目を引く部分であるといい得るところ,「塗るつけまつげ」との部分を見れば,いずれも原告ら包装の「塗るつけまつげ」と同様の表現手法,すなわちつけまつげと同様の一見明瞭な効果が期待できるかのような表現手法を用いている点において共通しており,両者は観念において類似するものといえる。
そうすると,結局,ロ号包装は原告ら包装の特徴点A及び同Bと類似する構成を具備するものと認められる。他方,ロ号包装と原告ら包装との間には,前記(2)認定のとおり,いくつかの相違点が認められるが,ロ号包装の台紙上部に付されている「 」「 」との文字については,確かに原 Fiber mascara告ら包装における「 」「 」との文字とは異なるものの,ロ号 dejavu Fiberwig包装の「 」「 」は特に大きいものではなく,またこれら文字 Fiber mascara自体は白色で,文字の縁取りは台紙の基調となっているライトグリーンで付されていることと相まって,特に目を引くものではなく,これによる識別力は高いものとはいい難い。その余の相違点については,被告が主張する相違点(前記第3の3【被告の主張】(2)のアないしウ)も含めて,いずれも微細な差異というべきであり,全体として見た場合,これらの相違点をもって前記類似点による印象を打ち消すに足りるものとは認められない。
よって,ロ号包装と原告ら包装とは類似していると認められる。
4 争点1-4(混同のおそれ)について1 被告商品1に係る混同のおそれ()原告ら商品と被告商品1は,いずれも同じ用法により同じ効果を奏するマスカラであるところ,前記1(2)及び(4)において判示したとおり,原告ら容器は,原告ら容器の特徴点A及び同Bにおいて他の商品とは異なる独自の特徴を有するものであり,またかかる特徴点において周知性を獲得していること,前記2(1)において判示したとおり,イ号1容器は原告ら容器の各特徴点をいずれも具備し,これと類似すること,原告ら商品は原告ら包装に包容されて販売されているところ,前記1(3)及び(4)において判示したとおり,原告ら包装は原告ら包装の特徴点A及び同Bにおいて他の商品包装とは異なる独自の特徴を有するものであり,またかかる特徴点において周知性を獲得していること,前記3において判示したとおり,被告商品1が包容されているロ号包装は,原告ら包装の各特徴点と類似する構成を具備し,これと類似すること,証拠(甲8)によれば,原告ら商品は薬局(ドラッグストア)においても販売されていると認められるところ,証拠(甲16の1・2,17の1〜4,18,47,48の1・2,49の1・2,50の1・2,51の1・2,66)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品1が薬局で販売されており,また原告ら商品と並べて販売されている店舗もあること,販売価格も原告ら商品の販売価格である1500円(原告ら商品表示目録2の台紙に記載。)と大きく異ならない980円であること,以上によれば,被告商品1に接した需要者は,これを原告ら商品と混同するおそれがあるというべきである。
2 被告商品2に係る混同のおそれ()原告ら商品と被告商品2は,いずれも同じ用法により同じ効果を奏するマスカラであるところ,原告ら容器は,前記1(2)及び(4)において判示したとおり,原告ら容器の特徴点A及び同Bにおいて他の商品とは異なる独自の特徴を有するものであり,またかかる特徴点において周知性を獲得していること,前記2(2)において判示したとおり,イ号2容器は原告ら容器の特徴点Aを具備し,原告ら容器の特徴点Bと類似する絵柄を具備していることが認められる。
他方で,前記争いのない事実等(3)において認定したとおり,被告商品2は件外包装(別紙件外包装写真参照)に包容されて販売されていたものであるところ,件外包装の台紙はオレンジ色を基調としており,ライトグリーンを基調とする原告ら包装の台紙とは色彩が異なる。しかし,件外包装についても,原告ら包装と同じようなブリスター方式を用いることにより,原告ら容器と類似するイ号2容器を有姿のまま透視できること,件外包装の台紙にはロ号包装と同様に「まるで」「つけまつげ」との文字が2段に分けて上から順に付されており,台紙の形状においてもロ号包装の台紙と同じ形状であって,かかる点においては,前記3(3)で判示したとおり原告ら包装の台紙と類似するということができることからすれば,混同のおそれは未だ払拭できないというべきである。
以上より,被告商品2に接した需要者である一般消費者たる女性は,これを原告ら商品と混同するおそれがあるというべきである。
3 なお,被告は,イ号各容器及びロ号包装には,商品の出所が記載されてい()るなどとして,一般需要者の注意力によれば,商品の出所や営業主体について識別は可能であると主張する。確かに,原告ら商品と被告各商品とを各商品の出所記載部分に特に着目して両者を対比すれば識別は可能ではあるが,不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる」か否かは,隔離的に観察して混同を生ぜしめるおそれがあるか否かによって判断すべきものであり,原告ら商品と被告各商品とを離隔的に観察すれば,被告各商品に接した需要者がこれらを原告ら商品と混同するおそれがあることは,前記のとおりである。
よって,両者が上記観点から識別可能であることをもって,混同のおそれが否定されるものではなく,被告の主張は採用できない。
5 争点1-5(被告の製造行為及び納入行為の不正競争行為該当性)証拠(甲52,60,乙25,26の1〜32)及び弁論の全趣旨によれば,被告はワールドリンクスとの間の製造委託契約(甲60)に基づき,ワールドリンクスから送られてきたイ号各容器にマスカラを充填して被告各商品を完成させた上,同じくワールドリンクスから送られてきたロ号包装及び件外包装に被告各商品を包容して,これをワールドリンクスに納入していたことが認められ,また,被告のかかる行為に対してワールドリンクスから金銭が支払われたことが認められる。
そうすると,被告によるマスカラの充填は,被告各商品を製造完成させる行為として原告ら商品の商品表示を使用したものというべきであり,また,ワールドリンクスへの納入行為は,所有権の移転としての譲渡に当たるかどうかはともかく(被告各商品に係る所有権の帰属は,その容器がワールドリンクスから提供されたものであることから,必ずしも明確とはいえない。),物に対する物理的支配としての占有の移転があったことは明らかであるから,少なくとも不正競争防止法2条1項1号の「引き渡し」に当たるものというべきである。
この点,被告は,ワールドリンクスからの依頼に基づき,ワールドリンクスが占有する資材(容器,キャップ,包装,台紙)に,マスカラを充填したにすぎず,いわゆるOEM製造を請け負ったものであって,被告各商品は株式会社ニッドのプライベートブランドである旨主張するが,仮にそうであったとしても,被告がワールドリンクスに被告各商品を納入したことをもって不正競争防止法2条1項1号にいう「引き渡し」をしたとの上記判断を妨げるものではない。
以上,前記1ないし5で検討したところにより,被告の被告各商品の製造・納入行為は不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると認められる。なお,原告らは,被告の行為が同項2号の不正競争に当たるとも主張するが,同主張は同項1号の不正競争による主張と選択的に主張されているものと認められ,かつ,いずれによっても損害額の認定等が異なることもないので,同項2号の不正競争の成否についての判断はしない。
6 争点2(営業上の利益侵害)について1 前記1ないし5のとおり,被告は,被告各商品を製造することにより,周()知な原告ら商品の商品表示を使用したものであり,また,これをワールドリンクスに引き渡した結果,原告らの営業上の利益侵害したものと認められる。
しかし,被告が平成18年8月以降に被告各商品を製造し,納入した事実を認めるに足りる証拠はなく,少なくとも本件口頭弁論終結の時点(平成20年7月17日)において,原告らの営業上の利益が現に侵害されているとは認められない。
2 また,前記5において認定したとおり,被告はワールドリンクスとの製造()委託契約に基づいて被告各商品を製造していたものであり,被告各商品の製造に当たってイ号各容器,ロ号包装及び件外包装を提供したのはワールドリンクスである。そうすると,被告は,単にワールドリンクスから提供を受けたイ号各容器にマスカラを充填してロ号包装又は件外包装に包容したものであり,原告らの商品表示の使用に関していえば,被告が積極的な役割を果たしたとは認め難い。
加えて,前記(1)のとおり,被告は,平成18年8月から本件口頭弁論終結時までの約2年間被告各商品を製造していないこと,弁論の全趣旨によれば,ワールドリンクスは平成20年3月25日に破産手続開始決定を受け,平成20年7月10日には破産手続廃止決定がなされたと認められること,証拠(乙16)によれば,本件仮処分事件において,被告が今後被告各商品を製造するつもりはない旨申述していることが認められること,これらの事実に照らすと,今後,被告が独自にイ号各容器,ロ号包装及び件外包装を製造又は調達して,被告各商品を製造するとはにわかに考え難い。
3 この点,原告らは,被告が被告各商品の製造を無断で行っていたことや,()本訴での応訴態度からして,被告が将来において被告各商品の製造販売を再開しない保証はないと主張する。確かに,被告の本訴における主張は当を得ないものが多く,その応訴態度等に照らせば,被告が被告各商品を独自に製造する可能性が皆無とまではいえないと考えられる。しかし,被告の上記応訴態度等を考慮しても,前記(2)の経緯等に照らすと,将来において被告が本件と同様の不正競争行為を行い,これにより原告らの営業上の利益侵害されるおそれがあるとまでは認められないというべきである。
したがって,原告らは被告に対し不正競争防止法3条1項,2項に基づく被告各商品の差止め及び廃棄請求権を有するものではない。
7 争点3(被告の故意・過失)について1 前記1(2)ないし(4)において判示したとおり,原告ら容器は,原告ら容器()の特徴点A及び同Bにおいて他の商品とは異なる独自の特徴を有するものであり,原告ら包装も原告ら包装の特徴点A及び同Bにおいて他の商品包装とは異なる独自の特徴を有するものであり,原告ら容器と原告ら包装は,平成18年4月当時,それぞれの特徴点において周知性を獲得していたことが認められる。
よって,マスカラ(内容物)の製造業者である被告も,原告ら容器及び原告ら包装の形態が原告らの商品表示として周知であることを知っていたものと推認され,少なくともこれを知り得べきであったと推認するのが相当である。
2 この点,被告は,製造を請け負ったにすぎないことから原告ら容器及び原 ()告ら包装の形態を知らなかったかのような主張をするが,前記1(4)のウ及びエで認定したとおり,原告ら商品の宣伝広告等は幅広いメディアを通じてなされており,いかに他者から製造を請け負ったにすぎないといえども,別紙交通広告等一覧表のとおり重点的に広告がなされた大阪市に所在し,かつ化粧品の製造・販売を目的とする被告がこれを知らなかったとはにわかに考え難く,少なくともこれを知り得べきであったことは,上記のとおりである。
3 よって,被告は,被告各商品を製造し,納入するに当たり,原告ら容器及()び原告ら包装を認識し,又は認識し得たものと認めるものが相当であり,そうであるとすれば,イ号各容器及びロ号包装がこれと類似することは当然に知り得るものというべきであるから,これらを用いて被告各商品をワールドリンクスに製造・納入することにより一般需要者において混同を生ぜしめることは当然に認識し,又は認識し得たことが明らかである。したがって,被告は,原告らに対する不正競争防止法4条に基づく損害賠償義務を免れない。
8 争点4(原告らの損害額等)について1 譲渡数量等()原告らは,不正競争防止法5条1項に基づく損害額を主張するところ,証拠(乙26の1〜32)及び弁論の全趣旨によれば,本件における「譲渡数量」(なお,同項にいう「譲渡」には「引渡し」も含まれるものと解される。)は,被告商品1につき8万3955個,被告商品2につき1万5403個,合計9万9358個(本件譲渡数量)であると認められる。
また,証拠(甲86)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら商品の製造から納品に至るまでの原告らそれぞれの役割は,前記第3の8【原告らの主張】(2)のとおりであり,原告ら商品は原告エルソルプロダクツが製造し,同原告が製造した原告ら商品は,同原告が原告ピアスに,同原告が原告イミュにそれぞれ販売し,同原告は卸売代理店等に販売していること,原告ら商品の製造過程及び物流の具体的流れは,原告エルソルプロダクツが容器本体,キャップ及び台紙等といった原告ら商品の原材料を取引先から仕入れ,掛川工場及び九州工場の2か所において,原告ら商品を製造し(なお,原告エルソルプロダクツは,平成19年10月31日に九州工場を閉鎖したため,同年11月1日以降の原告ら商品の製造場所は掛川工場のみである。)掛川工場で製造された原告ら商品は,同工場敷地内にあるピアス物流センターに搬入され,ピアス物流センター内で保管,管理され,他方,九州工場で製造された原告ら商品は,運送業者によって九州工場からピアス物流センターへと運送され,同じくピアス物流センター内で保管,管理され,ピアス物流センターにて保管,管理されている原告ら商品は,卸売代理店等からの原告イミュに対する発注を受けて,原告ピアスが運送業者に運送を委託し,同運送業者によって,ピアス物流センターから卸売代理店等に直接納品されているのであり,したがって,卸売代理店等に対する販売元である原告イミュには原告ら商品は納品されておらず,原告ら商品の保管,管理,納品は原告ピアスが担当していること,以上の事実が認められる。
そこで,以下,原告らそれぞれにおける原告ら商品1個当たりの利益額について具体的に検討する。なお,不正競争防止法5条1項にいう「利益の額」につき,被告は「純利益」と解し,開発費や広告宣伝費等を控除すべきと主張する。しかし,同項にいう「利益の額」は,「被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物単位数量当たりの利益の額」をいうのであり,その趣旨に照らせば,販売価額から控除すべき経費は,当該数量の被侵害者製品を追加して販売するために追加的に必要であったはずの経費を指すものと解すべきであり,かかる経費を控除した利益(限界利益)の額をもって,同項の「利益の額」とするのが相当であって,開発費や広告宣伝費等は控除の対象とならないというべきである。
2 原告エルソルプロダクツの1個当たりの利益額()原告エルソルプロダクツは,原告ら商品の製造者であるところ,証拠(甲86及び以下に掲記する各証拠)及び弁論の全趣旨によれば,原告ピアスに対する1個当たりの販売価格が●●●円であること(甲5,8,67〜69),1個当たりの原材料費が●●●●●●円であること(甲70の1・2,71〜78),1個当たりの人件費が●●●●●円であること(甲79の1・2)が認められる。
また,証拠(甲84,86)及び弁論の全趣旨によれば,掛川工場における平成18年4月1日から同年7月31日までの原告ら商品の製造個数が合計74万1937個であること,掛川工場1月当たりの製造可能個数が●●●個(1日当たりの製造可能個数:●●●●●●個,1月当たりの製造可能日数:●●日)であることが認められ,本件譲渡数量程度の個数であれば,掛川工場で十分製造することができたと認められる。よって,原告エルソルプロダクツの荷造運搬費を経費として考慮する必要はないものと考えられる。
そうすると,原告エルソルプロダクツの1個当たりの利益額は●●●●●●円●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と認められる。
3 原告ピアスの利益額()原告ピアスは,原告エルソルプロダクツから原告ら商品を購入し,これを原告イミュに転売しているところ,証拠(甲86及び以下に掲記する各証拠)及び弁論の全趣旨によれば,原告イミュに対する1個当たりの販売価格が●●●円であること(甲8,67〜68,80),原告ら商品1個当たりの仕入価格が●●●円であること(前記(2)),1個当たりの卸売代理店等への運搬費が●●●●●円であること(甲81,85)が認められる。
そうすると,原告ピアスの1個当たりの利益額は●●●●●円●●●●●●●●●●●●●●●●●●と認められる。
4 原告イミュの利益額()原告イミュは,原告ピアスから原告ら商品を購入し,これを卸売代理店等へ転売しているところ,証拠(甲86及び以下に掲記する各証拠)及び弁論の全趣旨によれば,卸売代理店等への1個当たりの販売価格は●●●円であること(甲82),原告イミュからの仕入価格は1個当たり●●●円であること(前記(3)),原告イミュは原告ピアスに対し物流費名目で1個当たり●●●●円を支払っていること(甲8,68,83)が認められる。
そうすると,原告イミュの1個当たりの利益額は●●●●●円●●●●●●●●●●●●●●●●●と認められる。
5 原告らの販売等の能力()前記(2)で認定したとおり,原告エルソルプロダクツの掛川工場において本件譲渡数量の原告ら商品を追加的に製造することは可能であったと認められ,前記1(4)アにおいて認定した原告ら商品の販売数量からして,流通販売において本件譲渡数量程度の原告ら商品を販売することは可能であったと認められることから,本件譲渡数量全部をもって,原告ら商品に係る販売その他の行為を行う能力の範囲内であると認めるのが相当である。
なお,被告は,原告ら商品が1575円(税込み)であるのに対し,被告各商品が980円であるからそれぞれの顧客層が異なるとか,原告ら商品には他に2種類の代替商品があるとして,両者には補完関係がないと主張する。
しかし,両商品の顧客層が異なることを認めるに足りる証拠はない(商品の内容,品質,価格差の程度等からして,原告ら商品と被告各商品の顧客層がそれぞれ異なるとは考え難く,むしろほぼ一致するものと推認される。)。
また,原告らが他の商品を販売しているとしても,被告各商品が原告ら商品と混同されるおそれがあり,被告の侵害行為がなければ原告ら商品を販売することができたことには変わりはない。
よって,被告の主張は採用できない。
6 原告らの各損害額()以上によれば,原告らそれぞれの損害額については,不正競争防止法5条1項により,原告エルソルプロダクツにつき1894万0615円●●●●●●●●●●●●●●●●,原告ピアスにつき914万6897円●●●●●●●●●●●●●●●●,原告イミュにつき3452万6905円●●●●●●●●●●●●●●●●と認めるのが相当である(いずれも1円未満切捨て)。
また,被告の不正競争行為により,原告らは本件訴訟を提起せざるを得なかったこと,その他本件事案の内容,認容額,本件訴訟の経緯等を総合考慮すると,弁護士費用相当損害金として,原告エルソルプロダクツにつき189万円を,原告ピアスにつき91万円を,原告イミュにつき345万円を,それぞれ被告の不正競争行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
7 原告らそれぞれの損害賠償請求権の関係()原告らは,原告ら商品は企業グループたる原告ら3社が一体となって組織的に企画・製造・販売したものであり,その商品表示は原告らに不可分的に帰属しており,商品表示に対する原告らの各持分を観念することはできないから,原告らの損害賠償請求権も,その性質上,原告らに不可分的に帰属すると主張する。
しかし,仮に原告ら商品の商品表示自体ないしその財産的な価値が原告らに不可分的に帰属するとしても,不正競争防止法4条所定の損害賠償請求権は,「営業上の利益」の侵害によって生じた損害の賠償を求めることをその内容とするものであるところ,その「営業上の利益」は,当然のことながら原告らそれぞれに別個のものとして独立して存すると観念し得るものであり,その侵害によって生じた「損害」も,原告らそれぞれに個別的に発生するのであって,原告らに不可分的に損害が発生しているものではない。
そうすると,原告らは,被告の不正競争によって,それぞれの営業上の利益を個別的に侵害された結果,それぞれ前記(6)の損害を被ったと認めるのが相当であり,それぞれ自らが被った損害の範囲において被告に対して損害賠償請求権を有するものと解するのが相当である。
よって,この点についての原告らの主張は採用できない。
9まとめ以上によれば,原告らの不正競争防止法5条1項に基づく損害額は,原告エルソルプロダクツが2083万0615円,原告ピアスが1005万6897円,原告イミュが3797万6905円である。ただし,原告らの同法4条に基づく本件損害賠償請求は総額6600万円を限度とする一部請求であるところ,原告らの上記認定の各損害額を合計すると6886万4417円となり,原告らの本件請求額を超えることになる。そこで,6600万円を限度とし,これを上記認定の各原告の損害額を基礎として原告らそれぞれに案分して割り付けると,原告エルソルプロダクツが1996万4165円,原告ピアスが963万8580円,原告イミュが3639万7255円となり,その限度で原告らの本件損害賠償請求を認容するのが相当である。
他方,原告らの不正競争防止法3条1項及び2項に基づく差止め及び廃棄請求は,本件口頭弁論終結時点において原告らの営業上の利益侵害されておらず,前示のとおり侵害されるおそれがあるとも認められないので,いずれも理由がない。
よって,上記限度で原告らの本件請求をそれぞれ認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。