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事件 平成 21年 (ワ) 2948号 不正競争行為差止等請求事件
大阪市<以下略>
原告特定非営利活動法人日本拳法会 大阪市<以下略>
原告日 本拳法全国連盟
原告ら訴訟代理人弁護士本渡諒一 仲元紹 黒田厚志 郷原さや香 長崎県<以下略>
被告A 福岡市<以下略>
被告公益財団法人全日本拳法連盟
被告ら訴訟代理人弁護士坂口孝治
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/06/17
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告Aは,拳法の教授,普及,競技大会の開催及び段級位允許その他これに, 。 関連する一切の事業活動において 「日本拳法」の名称を使用してはならない2被告公益財団法人全日本拳法連盟は,法人名として全日本拳法連盟という名称を使用してはならない。
3被告公益財団法人全日本拳法連盟は,福岡法務局平成21年2月4日付けをもってなされた設立登記につき,平成21年10月16日付けで名称変更登記された「公益財団法人全日本拳法連盟」の名称の抹消登記手続をせよ。
4被告公益財団法人全日本拳法連盟は,拳法の教授,普及,競技大会の開催及び段級位允許その他これに関連する一切の事業活動において 「日本拳法」の,名称を使用してはならない。
5被告Aは,原告日本拳法全国連盟に対し,36万円及びこれに対する平成21年3月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6被告らは 「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙,パンフレットその他 ,の文書及び印刷物を廃棄せよ。
7被告Aは,別紙記載の通知文を,同被告が「日本拳法」の名称を使用して段級位を允許した者全員に対し送付せよ。
第2事案の概要本件は,?拳法の普及等の活動をしている原告らが 「日本拳法」との名称 ,が原告らの営業を表示するものとして 「日本拳法会」との名称が原告特定非 ,営利活動法人日本拳法会の営業表示として 「日本拳法全国連盟」との名称が ,原告日本拳法全国連盟の営業表示としてそれぞれ周知性を獲得しているから,「日本拳法」の名称を使用して拳法の普及活動等を行う被告らの行為及び被告公益財団法人全日本拳法連盟が「全日本拳法連盟」との名称を使用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するとして,被告らに対し,同法3条に基づき,拳法の普及活動等において「日本拳法」の名称を使用することの差止め及び「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙等の廃棄を求め,被告公益財団法人全日本拳法連盟に対し,同法3条に基づき 「全日本,拳法連盟」の名称の使用の差止め及び同名称の登記の抹消登記手続を求め,被告Aに対し,同法14条に基づき,信用回復の措置として,別紙記載の通知文の送付を求め,?原告日本拳法全国連盟が,被告Aが「日本拳法」の名称を使用して允許活動をしたことによって損害を受けたとして,被告Aに対し,同法4条に基づき,損害金36万円及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成21年3月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1前提事実(末尾に証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない )。
( )日本拳法1日本拳法とは,防具(面,胴及び胴当,股当,グローブ)を装着して,手と足による打撃,組打,絞め技,逆手(関節技)の行使を可能とした拳法であり,B(その後,SBと号した。以下「B」という )が昭和7年に創始。
したものである。
( )当事者2ア原告特定非営利活動法人日本拳法会(以下「原告日本拳法会」という )は,日本拳法の普及活動等を行う法人である。 。
イ原告日本拳法全国連盟は,原告日本拳法会,日本拳法中部本部及び日本拳法連盟によって構成される日本拳法の普及活動等を行う権利能力なき社団である (弁論の全趣旨)。
ウ被告公益財団法人全日本拳法連盟(以下「被告全日本拳法連盟」という )は,平成21年2月4日に設立された日本拳法の大会の開催等を行 。
う公益財団法人である。なお,被告全日本拳法連盟の設立当初の名称は「一般財団法人全日本拳法連盟」であったが,平成21年10月13日,組織変更により現在の名称に変更した。
エ被告Aは,被告全日本拳法連盟の代表理事である。
2争点( )?「日本拳法」の名称は原告らの営業を表示するものとして周知性を獲得1しているか,?「日本拳法会」の名称は原告日本拳法会の営業を表示するものとして周知性を獲得しているか,?「日本拳法全国連盟」の名称は原告日本拳法全国連盟の営業を表示するものとして周知性を獲得しているか(争点1)( )被告らの不正競争行為の有無(争点2)2( )原告日本拳法全国連盟の損害額(争点3) 3( )信用回復措置の要否(争点4)4第3争点に関する当事者の主張1争点1( 日本拳法 「日本拳法会 「日本拳法全国連盟」との各表示(以下, 「」」併せて「原告各表示」という )は,それぞれ原告らの営業,原告日本拳法会 。
の営業及び原告日本拳法全国連盟の営業を表示するものとして周知性を獲得しているか)について【原告らの主張】( )Bによる日本拳法の普及1Bは,日本拳法を指導・普及するために昭和7年に大日本拳法会(昭和22年には改称して日本拳法会となり,平成16年に法人成り(特定非営利法人)して原告日本拳法会となる。以下,大日本拳法会,法人成りする前の日本拳法会及び法人成りした後の原告日本拳法会を区別せずに単に「原告日本拳法会」と称することがある )を設立し,原告日本拳法会の会長に日本拳 。
法の允許権を承継させることとした。
そして,原告日本拳法会が日本拳法の普及・指導に努めたことにより,日本拳法という武道の名称は,遅くとも昭和30年代には,日本拳法を指導・普及する団体の名称として,武道愛好家の間で周知性を獲得した。
( )「日本拳法」がグループとしての営業表示であること2「日本拳法」の名称は,日本拳法の創始者であるBから許諾された者だけが使用することができるものである。
Bは,原告日本拳法会,日本拳法中部本部及びCが設立した日本拳法協会に「日本拳法」の名称の使用を許諾するとともに,これらの団体が日本拳法の普及のためにその傘下組織に「日本拳法」の名称を使用させることも許諾した。
そして,原告日本拳法会は,日本拳法連盟及び原告日本拳法全国連盟に「日本拳法」との名称の使用を許諾している。
したがって,原告日本拳法全国連盟,その傘下組織(原告日本拳法会,日本拳法中部本部,日本拳法連盟及びこれら3団体の傘下組織 ,日本拳法協)会及びその傘下組織は,Bを頂点とする日本拳法グループであり(これらの組織に属する者は原告日本拳法会,原告日本拳法全国連盟又は日本拳法協会から段位を得ており,このことからグループに属しているといえる「日。),本拳法」との名称はこの日本拳法グループの営業表示である。
( )原告らの活動3ア原告日本拳法会の活動原告日本拳法会は,昭和7年からBが日本拳法の指導団体・競技主催団体として普及活動に努め,Bが日本拳法の研究に専念するために原告日本拳法会の会長職を昭和29年に禅譲した後は,Dが2代目会長となり,その後3代目会長E(平成4年〜12年)と代わり,現在はFが4代目会長として日本拳法の指導普及に努めている。
原告日本拳法会は,全日本学生日本拳法選手権大会,全関西学生日本拳法選手権大会,全国高校日本拳法選手権大会及び全関西高校日本拳法選手権大会を主催し,大学生や高校生を連合する組織体として学生連盟や高等学校連盟を組織した後はこれらの連盟に大会を主催させて自らは後援者として大会の運営を支援し,全日本の日本拳法個人選手権大会を主催してきた。
イ原告日本拳法全国連盟の活動原告日本拳法全国連盟は,原告日本拳法会の当時の会長であったDの奔走と努力により日本拳法中部本部並びに日本拳法連盟を統合した統一組織として平成2年に設立された団体であり,これはBの遺志に沿うものであった。
原告日本拳法全国連盟は,日本拳法の段位允許権者である原告日本拳法会から允許状発行の委嘱を受けて,原告日本拳法会,日本拳法中部本部並びに日本拳法連盟のいずれかを帰属団体とする修行者への段位允許状を発行して,日本拳法協会を除き,日本拳法の指導,支援の統一事業を行っている。
そして,原告日本拳法全国連盟は,それまで原告日本拳法会が昭和36年から平成12年まで主催してきた全・日本拳法個人選手権大会を平成13年から承継して主催し,その他の原告日本拳法全国連盟の傘下である多くの連盟主催の大会の後援者として事業を行なっている。
ウ原告らの傘下組織の存在・活動現在,原告らの傘下組織として,次の各連盟・団体が結成されており,その所属人数は約2万5000人にのぼる。そして,原告らは,各連盟に対して日本拳法の大会を開催するよう指示しており,原告ら及び原告ら傘下の連盟組織が1年間に開催する大会は平成21年度で73回に及ぶ。
社会人連盟所属97団体学生連盟所属66大学高等学校連盟所属37校少年連盟所属76団体実業団連盟所属25団体各都道府県連盟所属268団体( )日本拳法協会について4Cが設立した日本拳法協会は,原告日本拳法全国連盟の傘下組織ではないが,Bを頂点とする日本拳法の指導・普及活動において互いに切磋琢磨するグループとして周知である。
( )まとめ5以上によれば 「日本拳法」との名称は,原告らと日本拳法協会を含むグ ,ループの営業表示として周知である。
, , また 「日本拳法会」との名称は原告日本拳法会の営業を指すものとして「日本拳法全国連盟」との名称は原告日本拳法全国連盟の名称を指すものとして,それぞれ周知性を獲得している。
【被告らの主張】( )「日本拳法」とは,武道の一種であり,同武道に携わる者が比較的自由に1使用しているものであり,原告らを積極的に表示するものではない。
( )原告らは 「日本拳法」との名称は,Bを頂点とする原告らと日本拳法協2 ,会を含むグループの営業表示として周知性を獲得していると主張する。
しかし,日本拳法協会から日本拳法連盟が分裂・脱退し,原告日本拳法全国連盟に加入しているが,日本拳法協会は,日本拳法連盟が分裂・脱退した後,さらに分裂してNPO日本拳法協会と士道日本拳法協会として存在している。このNPO日本拳法協会と士道日本拳法協会は,町道場を中心として日本拳法の発展に寄与して独自に認定証を発行している。また,日本拳法連合講武会館など,独自に日本拳法の普及・発展に寄与している団体もある。
このようなことからすれば,原告らが主張するグループをもって 「日本,拳法」の営業主体と需要者が認識することができないことは明らかである。
2争点2(被告らの不正競争行為の有無)について【原告らの主張】( )被告Aの不正競争行為1日本拳法の允許権は,Bが昭和52年に原告日本拳法会に譲り,その後,原告日本拳法会が原告日本拳法全国連盟に允許行為を付託し,この付託に基づき原告日本拳法全国連盟が允許を行っている。
被告Aは,平成20年9月から,同被告の門下生に「日本拳法九州連盟」と記載された允許状を発行しているが,かかる被告Aの行為は,原告らの特定名称である日本拳法と被告Aの日本拳法とが同一の武道であると誤認混同させるものである。
( )被告全日本拳法連盟の不正競争行為2上記のとおり 「日本拳法会」との名称は原告日本拳法会の営業を指すも ,のとして 「日本拳法全国連盟」との名称は原告日本拳法全国連盟の名称を ,指すものとして,それぞれ周知性を獲得しているが,原告らの名称に接した者は,日本拳法についての組織であると理解するから,看者に強い印象を与える部分は「日本拳法」という文字であり,これが原告らの名称の要部である。
そして,被告全日本拳法連盟の名称である「全日本拳法連盟」は,要部が「日本拳法」という文字であることは明らかであり,原告らの名称と要部を共通にするから類似する。
そして,被告全日本拳法連盟は,日本拳法の大会主催,日本拳法の昇段級の審査及び認定事業を事業目的としているから,同被告が日本拳法の審査及び認定を行うことにより,武道関係者に対し,被告全日本拳法連盟の日本拳法と原告らの日本拳法とが同一であると誤認させることになる。
【被告らの主張】争う。
3争点3(原告日本拳法全国連盟の損害)について【原告日本拳法全国連盟の主張】被告Aは,平成20年から少なくとも300名以上の者に允許し,36万円以上の允許料を得ている。
そして,原告日本拳法全国連盟の允許料金は1名につき1200円であるから,原告日本拳法全国連盟は,允許料として36万円の得べかりし利益を失った。
【被告Aの主張】争う。
4争点4(信用回復措置の要否)について【原告らの主張】日本拳法の允許行為については,原告日本拳法全国連盟のみがなし得るものであり,被告Aもそのことを当然に知っていたから,被告Aの不正競争行為は故意によるものである。そして,原告らの営業上の損害を回復するのためには,被告Aに別紙記載の通知文を送付させる必要がある。
【被告Aの主張】争う。
第4当裁判所の判断1争点1(原告各表示の営業表示性及び周知性の有無)について( )事実関係1前記前提事実並びに証拠(甲1,13,14,乙25及び各項末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア日本拳法の創始(ア)Bは,昭和7年,防具(面,胴及び胴当,股当,グローブ)を装着して,手と足による打撃,組打,絞め技,逆手(関節技)の行使を可能とした拳法を考案し,同拳法を表す名称を「大日本拳法」とした。
そして,Bは,大阪において,大日本拳法の指導・普及のために100人ほどのメンバーで「大日本拳法会」と称する団体を設立し,その会長に就任した。大日本拳法会は,昭和22年には名称を日本拳法会と改め,そのころには「大日本拳法」も「日本拳法」と称されるようになっていった(この日本拳法会が平成16年に法人成りして原告日本拳法会になったものであるが,以下,法人成りの前の「日本拳法会」と称する団体と特に区別せず,その前後を通じて「原告日本拳法会」という。。)(甲1,8,9)(イ)原告日本拳法会は,日本拳法の普及・指導に努め,昭和20年代の後半には,関西地区の多数の大学・高校に日本拳法を行う拳法部が設立されるようになり,その後も,大学生,高校生,社会人等に日本拳法が普及していった (乙25)。
イ日本拳法中部本部の設立原告日本拳法会は,中部地方での日本拳法の普及の拠点とするため,昭和23年に日本拳法中部本部を設立した。
ウ原告日本拳法会の東京進出,日本拳法協会の設立(ア)昭和27年11月,東京の中央大学で開催された全日本学生応援団連盟結成大会において関西大学が日本拳法を紹介したことを契機として,Bは,日本拳法を東京に普及させることとし,Bのもとで日本拳法を修業していたC(当時5段)を東京に派遣し,昭和28年には原告日本拳法会の東京支部が設立された。
そして,Cの普及活動などにより,立正大学に拳法部が設立されるなどして,日本拳法は東京においても徐々に普及していった (乙25)。
(イ)昭和29年ころ,東京における日本拳法の普及活動に関して,Cと原告日本拳法会とが衝突し,Cが原告日本拳法会から除名処分を受けるという事態が生じた。
その後,原告日本拳法会は,Cに対する除名処分を撤回し,引き続き東京で日本拳法の指導を継続するよう要請したが,Cは,原告日本拳法会から上記除名処分を受けるという仕打ちを受けたこともあって,原告日本拳法会の上記要請を拒否した。
そのような中,Bは,昭和29年11月,Cに対し,東京において日本拳法を普及する団体を設立することや,Cが日本拳法の昇段級の允許をすることを許諾した。
(ウ)Cは,Bの上記許諾を受け,昭和30年5月,日本拳法協会なる団体を設立し,その師範の地位に就任し,日本拳法の普及・指導活動,修行者への昇段級審査・允許活動をしていった。日本拳法協会の設立時には,立正大学や中央大学といった東京の大学や,Cの出身地にある徳島大学等がその傘下の加盟団体となり,昭和30年11月には日本拳法協会の加盟大学により関東学生拳法リーグ戦が開催された (乙25)。
エ原告日本拳法会と日本拳法協会の活動,交流原告日本拳法会と日本拳法協会は,それぞれ別の組織として活動していたが,原告日本拳法会に加盟する学生連盟が昭和31年から開催した日本学生拳法選手権大会には,日本拳法協会に加盟する大学の学生も参加した(ただし,昭和42年から48年までの間,日本拳法協会側の学生の参加は中断した。。)関西地区においては,原告日本拳法会が中心となって日本拳法の指導・普及活動を行い,関東地区においては日本拳法協会が中心となって指導・普及活動を行い,日本拳法なる格闘技は,その名称とともに全国的に広く普及するようになった。
オ原告日本拳法会と日本拳法協会との関係の悪化昭和59年ころから,原告日本拳法会と日本拳法協会の間で,原告日本拳法会と日本拳法協会を統率するための連合設立に向けた協議がされるようになったが,原告日本拳法会と日本拳法協会との間で意見が対立し,連合設立の調整には難航した。
そのような中,昭和62年には,日本拳法協会に加盟していた立正大学,慶応大学,青山学院大学等が日本拳法協会を脱退して日本拳法連盟を結成し,原告日本拳法会と協調するようになった。
また,原告日本拳法会側で全日本学生拳法選手権大会を主催していた全日本学生拳法連盟は,日本拳法協会から脱会しないと全日本学生拳法選手権大会への出場を認めないという方針を打ち出したため,日本拳法協会に加盟する大学の多くが日本拳法協会から脱退した。
そして,原告日本拳法会は,昭和63年11月,日本拳法協会に対し,連合設立協議を破棄する旨の通知をした (乙25)。
カ原告日本拳法全国連盟の設立平成元年,原告日本拳法会,日本拳法連盟及び日本拳法中部本部によって構成される原告日本拳法全国連盟が設立された。
従前は,原告日本拳法会の会長が,原告日本拳法会,日本拳法連盟及び日本拳法中部本部に所属する修業者に対して允許を行っていたが,原告日本拳法全国連盟が設立された後は,原告日本拳法会,日本拳法連盟及び日本拳法中部本部がそれぞれ修業者を審査した後に原告日本拳法全国連盟に昇段級申請を行い,同原告において修業者に対し允許状を発行するようになった (乙24)。
キ原告日本拳法会等の活動(ア)原告日本拳法会は日本拳法世界選手権大会及び全日本拳法個人選手権大会を,原告日本拳法全国連盟は全・日本拳法総合選手権大会を,日本拳法連盟は日本拳法国際選抜個人選手権大会及び日本拳法全国選抜社会人選手権大会を,日本拳法中部本部は日本拳法東海高校大会をそれぞれ開催している。昭和51年開催の日本拳法世界選手権大会は大阪府,サンケイスポーツ等が,平成20年開催の全・日本拳法総合選手権大会は大阪府,NHK大阪放送局,産經新聞等が,平成19年度の日本拳法東海高校大会は中日新聞社等がそれぞれ後援者となった (甲15,1。
9,32,54,55,56,57の1・2)(イ)日本拳法についての著作としては,Bの著作によるものとして,昭和14年に「大日本拳法教書」と題する書籍が,昭和39年に「日本拳法」と題する書籍がそれぞれ発行された。
また,B以外の著作によるものとしては,平成13年に,日本拳法の形について開設する「図説日本拳法 (編者原告日本拳法会,著者: 」土谷秀雄)と題する図書が出版された (甲1,8,13,14) 。
(ウ)原告日本拳法会では,大学,高等学校,実業団等に連携組織(連盟)を設立するよう指示し,昭和25年には大学連盟が,昭和28年には高等学校連盟が,昭和32年には都道府県連盟として和歌山県連盟が,昭和43年には社会人連盟が,平成2年には実業団連盟がそれぞれ設立され,また,少年連盟及び女子連盟も設立された。
そして,現在,学生連盟(大学)に所属する大学は66大学,高等学校連盟に所属する高等学校は37校,都道府県連盟に所属する団体は268団体,社会人連盟に所属する団体は97団体,実業団連盟に所属する団体は25団体,少年連盟に所属する団体は76団体あり,各団体に所属する修業者の人数は約2万5000人に及ぶ。
(エ)原告日本拳法会傘下の各連盟は,それぞれ以下のとおり日本拳法の大会を開催している。原告らは,これらの大会に審判員を派遣するなどの協力をしており,各大会のパンフレットには後援者として原告らの名称が表示されている。
a社会人連盟全日本拳法社会人個人選手権大会(日本拳法社会人連盟主催。平成20年10月時点で通算41回開催。第41回大会は大阪府,スポーツニッポン新聞大阪本社等が後援(甲17,18)。)b学生連盟全日本学生拳法選手権大会(全日本学生拳法連盟主催。平成20年11月時点で通算53回開催。第53回大会は大阪府,サンケイスポーツ,NHK大阪放送局等が後援(甲20の1,2)。)全国大学選抜選手権大会(全日本学生拳法連盟主催。平成20年6月時点で通算21回開催 (甲21))西日本学生拳法個人選手権大会(西日本学生拳法連盟主催。平成20年6月時点で通算9回開催。第9回大会は大阪府,NHK大阪放送局等が後援(甲22)。)中部日本学生拳法選手権大会(中部日本学生拳法連盟主催。平成19年6月時点で通算47回開催。第47回大会は愛知県,中日新聞社,東海テレビ放送等が後援(甲23)。)東日本大学選手権大会(東日本学生拳法連盟主催。平成20年10月時点で通算19回開催(甲24)。)東日本大学リーグ戦(東日本学生拳法連盟主催。平成20年5月時点で通算21回開催(甲25)。)東日本学生個人選手権大会(東日本学生拳法連盟主催。平成20年6月時点で通算21回開催(甲26)。)西日本学生拳法選手権大会(全日本学生拳法連盟主催。従前に全関西学生拳法選手権大会の名称で開催していた大会を含めて平成20年4月時点で通算53回開催。第53回大会は大阪府,サンケイスポーツ新聞,NHK大阪放送局等が後援(甲12)。)全日本学生拳法個人選手権大会(平成20年10月時点で通算24回開催。第24回大会は愛知県,中日新聞社,東海テレビ放送等が後援(甲27)。)全国国公立大学日本拳法選手権大会(平成20年9月時点で通算40回開催。第40回大会は毎日新聞社等が後援(甲28)。)京都学生拳法リーグ戦(平成20年5月時点で通算41回開催)(甲29)日本拳法東北大会(岩手医科大学日本拳法部主催。平成20年3月時点で通算9回開催(甲50)。)c高等学校連盟全国高等学校日本拳法選抜大会(全国高等学校日本拳法連盟主催。
平成21年3月時点で通算13回開催。第13回大会は大阪府,読売新聞大阪支社,NHK大阪放送局等が後援(甲30)。)全国高等学校日本拳法選手権大会(全国高等学校日本拳法連盟主催。
平成20年7月時点で通算53回開催。第53回大会は兵庫県,読売新聞大阪本社等が後援(甲31)。)西日本高等学校日本拳法選手権大会(西日本高等学校日本拳法連盟主催。従前に関西高校日本拳法選手権大会の名称で開催していた大会を含め,平成20年6月時点で通算53回開催(甲33)。)各都道府県における高等学校日本拳法選手権大会(甲34)大阪私立高等学校体育大会(日本拳法の部 (甲78))d少年連盟日本拳法全国少年大会・団体戦(日本拳法全国少年連盟主催。平成20年11月時点で通算9回開催。第9回大会は大阪府,吹田市教育委員会等が後援(甲35,36)。)日本拳法西日本少年大会(日本拳法少年連盟主催。平成20年4月時点で通算5回開催。第5回大会は大阪府,守口市等が後援(甲。)37)e実業団連盟日本拳法全日本実業団矢野文雄杯大会(日本拳法全日本実業団連盟主催。平成20年11月時点で通算19回開催。第19回大会は大阪府,毎日新聞社等が後援(甲38)。)f都道府県連盟日本拳法愛知県民大会(愛知県日本拳法連盟主催。平成19年5月時点で通算21回開催。第21回大会は愛知県,中日新聞社等が後援(甲39)。)日本拳法三重県総合大会(平成19年5月時点で通算28回開催)(甲40)日本拳法和歌山大会(和歌山県日本拳法連盟主催。平成20年3月時点で通算24回開催。第24回大会は和歌山県体育協会,毎日新聞社等が後援(甲41)。)兵庫県日本拳法選手権大会(日本拳法兵庫県連盟等主催。平成20年5月時点で通算28回開催。第28回大会は神戸新聞社等が後援(甲42)。)日本拳法大阪府民大会(日本拳法大阪府連盟等主催。平成20年5月時点で通算15回開催。第15回大会は大阪府,大阪日日新聞等が後援(甲43)。)大阪市長杯日本拳法大阪市民大会(日本拳法大阪市連盟主催。平成20年5月時点で通算11回開催。第11回大会は大阪市,大阪市教育委員会等が後援(甲44)。)豊中市日本拳法連盟杯(豊中市日本拳法連盟主催。平成20年11時点で通算22回開催。第22回大会は豊中市教育委員会が後援 )。
(甲46)日本拳法奈良県選手権大会(平成20年時点で通算5回開催 (甲)47)日本拳法名古屋大会(名古屋市日本拳法連盟主催。平成20年7月時点で通算20回開催。第20回大会は名古屋市,中日新聞本社等が後援(甲48)。)日本拳法岡山県総合選手権大会(日本拳法岡山県連盟主催。平成20年2月時点で通算8回開催。第8回大会は岡山県,山陽新聞社,NHK岡山放送局等が後援(甲49)。)日本拳法近畿ブロック大会(平成20年10月時点で通算14回開催 (甲52))日本拳法名古屋大会(名古屋市日本拳法連盟主催。平成19年7月時点で通算19回開催。第19回大会は名古屋市,中日新聞社等が後援(甲53)。)日本拳法福岡県大会(日本拳法福岡県連盟主催。平成20年4月時点で通算2回開催(甲58)。)日本拳法龍峰杯優勝大会(吹田市日本拳法連盟等主催。平成20年10月時点で通算34回開催。第34回大会は吹田市教育委員会等が後援(甲64)。)日本拳法孝徳会選手権大会(日本拳法孝徳会主催。平成20年11月時点で通算50回開催。第50回大会は尼崎市,スポーツニッポン新聞社等が後援(甲65)。)(オ)大阪府枚方市等は,原告日本拳法会の後援により,枚方市民秋季日本拳法大会を開催している(平成20年11月時点で通算38回開催(甲45)。)。
徳島県石井町体育協会は,原告らの後援により,石井町藤花杯日本拳法大会(平成20年11月時点で通算1回開催)を開催している (甲。
51)ク日本拳法協会の近年の活動状況(ア)日本拳法協会は,上記のとおり,原告日本拳法会との関係が悪化したころから,加盟大学の脱退等が続き,その後,特定非営利活動法人日本拳法協会と士道日本拳法協会に分かれるという経緯を辿ったが,現在もなお活動を継続している。
(イ)特定非営利活動法人日本拳法協会は,現在も,日本拳法の技術指導,昇段級審査会,各種大会等を開催している。同協会が平成18年から平成21年にかけて開催した大会としては,全日本拳法選手権大会,全日本拳法学生選手権大会,全日本拳法団体選手権大会,全日本拳法体重別選手権大会・錬成大会,全日本拳法高校生/小中学生選手権大会がある。
特定非営利法人日本拳法協会の現在の加盟団体・加盟道場等には,幸心館,静岡中部支部,東京本部,阿南拳法道場,拳武会,誠心館,闘翔館,裾野拳友会,国際桜美会,日大国際拳法部,清水町体育協会,静岡大学,札幌学院大学,堅志会,町田道場,ニッケンスク-ル高典塾,日本拳法美瑛クラブ,丸亀拳法クラブ,国立道場,北海道静内農業高校日本拳法部等がある (乙22,27)。
(ウ)士道日本拳法協会は,平成16年から平成20年にかけて有段者錬成大会,有級者錬成大会,少年,高校生錬成大会,日本拳法優勝大会を開催している。士道日本拳法協会の加盟団体・加盟道場等には,桐生道場,笠懸道場,府中道場,あすなろ塾,草莽塾,日本拳法和歌山クラブ,館林道場,若洲クラブ,日本拳法拳遊館道場等がある (乙21)。
ケ日本拳法九州連合会,日本拳法九州連盟(ア)日本拳法協会のもとで,日本拳法の修行者で九州に居住する者が中心となり,昭和59年,日本拳法九州連合会を設立し,日本拳法九州選手権大会を開催するようになった。当初は,日本拳法協会に加盟する団体のみが同選手権に出場していたが,昭和63年ころから,原告日本拳法会に加盟する九州同志会が参加するようになった。
(イ)その後,上記オのとおり原告日本拳法会と日本拳法協会の関係が悪化し,日本拳法九州連合会においても日本拳法協会との関係を解消するか否かの協議がされるようになり,役員の間で意見の対立が生じるようになった。
その結果,日本拳法九州連合会は,平成10年1月に解散し,解散と同時に日本拳法九州連合会の従前の役員の多くが中心となって日本拳法九州連盟を設立した。日本拳法九州連盟の会長には被告Aが就任した。
そして,日本拳法九州連盟は,平成10年5月に,原告日本拳法全国連盟の後援のもと日本拳法九州選手権大会を開催し,平成18年の第9回大会まで継続して大会を開催した。
(ウ)日本拳法九州連盟では,おそくとも平成10年ころから,日本拳法の段級位の允許状を発行している (甲92,乙6,8,13) 。
コ日本拳法に関するその他の団体の活動世界日本拳法連合総本部講武会館という団体は,現在,各種大会を開催するなどして,日本拳法の指導・普及活動を行っている。同団体は,原告ら及び日本拳法協会に加盟する団体ではない (乙12)。
サ被告全日本拳法連盟設立の経緯日本拳法九州連盟は,平成18年12月16日に開催した理事会において,?原告日本拳法全国連盟の西日本ブロックに原告日本拳法会と同等の立場で独自に参入する,?昇段級審査を日本拳法九州連盟が独自に行い,原告日本拳法全国連盟に允許代は上納しない,?技術については現状を維持するが新たに九州の形を構築していく,という内容の決議をしたが,原告日本拳法全国連盟は,日本拳法九州連盟の上記決議を拒否した。
日本拳法九州連盟は,原告日本拳法全国連盟の上記対応を受け,平成19年3月,原告日本拳法全国連盟に対し,会長である被告A及び理事長のGが辞任するとともに,日本拳法九州連盟の組織を解消する旨の回答をした。
しかし,日本拳法九州連盟が上記回答内容を履行しなかったため,原告日本拳法全国連盟は,平成19年10月20日付けで日本拳法九州連盟の会長である被告A,理事長及び理事3名(以下「被告Aら」という )並。
びに被告Aらが指導する練習生に対し,公式試合,公式大会,昇段級試験への参加を無期限で禁止する旨の戒告処分をした。
そこで,被告Aらは,平成21年2月4日,被告全日本拳法連盟を設立し(設立当初は一般財団法人であったが,平成21年10月13日に公益財団法人に組織変更した,日本拳法九州連盟を被告全日本拳法連盟の 。)九州本部の中に組み入れた (甲5ないし7,乙26) 。
( )「日本拳法」の名称が原告らの営業を表示するものとして周知性を獲得し2ているか(争点1?)ア「日本拳法」の名称の周知性上記のとおり,Bは,昭和7年自ら考案した拳法に「大日本拳法」との名称を付して指導・普及活動を開始したところ,昭和22年ころには「大日本拳法」は「日本拳法」と称されるようになり,昭和20年代の後半には関西地区の多数の大学・高校に日本拳法を行う拳法部が設立されたこと,昭和30年代には関西地区では原告日本拳法会が中心となり,関東地区では日本拳法協会が中心となって,それぞれ日本拳法の指導・普及活動をしたことにより,日本拳法が関西地区及び関東地区で広く普及したことが認められる。
したがって,日本拳法との名称は,遅くとも昭和30年代には,武道・拳法に携わる者の間で,Bが考案した格闘技を指すものとして周知となったものと認められる(ただし,その名称が特定の団体ないしグループの営業表示として周知となったか否かについては後に説示する。。)イ「日本拳法」との名称が原告ら及び日本拳法協会を含むグループの営業表示として周知性を獲得しているか上記のとおり,日本拳法との名称が周知性を獲得するに至る経緯を見ると,原告日本拳法会の指導・普及活動だけでなく,日本拳法協会が中心となって行った指導・普及活動が寄与しているものと認められるが,この日本拳法協会は,原告日本拳法会に所属して東京において日本拳法の普及活動を行っていたCが,原告日本拳法会と対立したことから,同原告と袂を分かったものの,独自に東京における日本拳法の普及活動を行うべく,Bの許諾を受けて設立した団体であり,日本拳法の指導・普及活動だけでなく,修業者の昇段級審査・允許行為も独自に行っていたものである。原告日本拳法会傘下の学生連盟が昭和31年から開催した日本拳法学生選手権大会に日本拳法協会に加盟する大学も参加するなど,日本拳法協会が原告日本拳法会と一定の交流をしていたことは認められるものの,それ以上に原告日本拳法会と日本拳法協会とが相協力し,結束して日本拳法の指導・普及活動を行っていたことを裏付ける事情はうかがえない。そして,上記のとおり,昭和59年ころになって,原告日本拳法会と日本拳法協会の間で,両団体を統率するための連合設立に向けた協議がされるようになったが,意見が対立するなどしてその調整に難航し,最終的には,日本拳法協会に加盟していた大学が日本拳法協会を脱退して原告日本拳法会側につき,原告日本拳法会の加盟団体が開催する大会に日本拳法協会の加盟団体が参加することができないという事態に至り,昭和63年には原告日本拳法会が日本拳法協会に連合設立協議を破棄する旨の通知までしているのであって,昭和63年以降は原告日本拳法会と日本拳法協会の交流はなく,むしろ対立する状況にあるといえる。そうすると,上記のように両者間の交流が途絶え,むしろ対立状態に立ち至って久しい現時点はもとより,交流が途絶える昭和63年より前の時点においても,原告日本拳法会と日本拳法協会とを1つのグループとしてとらえることはできず 「日本拳法」との,名称が同グループの営業を表示するものとして周知性を獲得していたとは認めることはできない。
原告らは,日本拳法協会がBから日本拳法の名称の使用を許諾されていたことをもって,日本拳法協会と原告らがグループの関係にあり 「日本,拳法」との名称が同グループの営業表示であると主張する。しかし,上記に指摘した原告日本拳法会と日本拳法協会との関係,とりわけ,武道・拳法において特に重要と思われる昇段級審査・允許についても,原告日本拳法会と日本拳法協会とがそれぞれ独自に行っていたことからすれば(原告らも段位の允許をもってグループ関係を基礎付ける事実として主張している,両者が日本拳法の指導・普及を目的として結束して活動する1つ 。)のグループであると認めることはできず,原告ら及び日本拳法協会の双方がBから日本拳法の名称の使用を許諾されたということだけを根拠として,「日本拳法」との名称が原告らと日本拳法協会を含むグループの表示であると認めることはできない。原告らの上記主張は採用できない。
ウ「日本拳法」との名称は原告らの営業表示として周知性を獲得しているか上記1で認定したとおり,原告日本拳法会は,昭和22年には名称を「大日本拳法会」から「日本拳法会」に変更し,現在まで同名称を継続的に使用して日本拳法の指導・普及活動を行い,日本拳法世界選手権大会及び全日本拳法個人選手権大会を主催し,現時点では,傘下に大学連盟,高等学校連盟,都道府県連盟,社会人連盟等の連盟組織を有し,各連盟に所属する団体・大学等は500を超え,修業者の人数も約2万5000人にのぼること,原告日本拳法会に加盟する連盟(その所属団体も含む )も。
日本拳法の多数の大会を開催しており,これらの大会の中には新聞社や地方自治体が後援している大会も多数あること,原告日本拳法会もこれら連盟が開催する大会に審判員を派遣するなどの協力をし,大会パンレットには後援者として原告日本拳法会の名称が記載されていること,原告日本拳法全国連盟は,原告日本拳法会,日本拳法連盟及び日本拳法中部本部によって構成される団体であり,平成元年に設立されてから「日本拳法全国連盟」との名称を使用して日本拳法の指導・普及活動を行ってきたこと,原告日本拳法全国連盟は,原告日本拳法会から允許権の付託を受けて傘下の団体に所属する修業者に允許状を発行し,原告日本拳法会と同様,原告日本拳法会に加盟する連盟(その所属団体も含む )の開催する多数の大会 。
に審判員を派遣し,大会パンレットには後援者として原告日本拳法全国連盟の名称が記載されていることが認められる。
このような原告らの活動状況にかんがみれば,武道・拳法に携わる者の間で,原告らが日本拳法の指導・普及活動を行う団体として広く認識されるに至っているものといえるから 「日本拳法」との名称が原告らの営業 ,表示として周知性を獲得しているものと考えられなくもない。
しかしながら,上記のとおり,日本拳法との名称が周知性を獲得する前から,関東においては日本拳法協会が中心となって日本拳法の指導・普及活動を行っていたこと,日本拳法協会は,原告日本拳法会との関係が悪化した昭和63年ころから,加盟大学の脱退等が続き,その後,特定非営利活動法人日本拳法協会と士道日本拳法協会に分かれるという状況になったが,両団体は,現在も,日本拳法の昇段級審査・允許を含めた指導・普及活動を行っており,多数の加盟団体・道場を有する上,日本拳法の大会を多数開催していること,原告ら又は特定非営利活動法人日本拳法協会と士道日本拳法協会のいずれにも所属しないものの,日本拳法の指導・普及活動を行っている団体として,世界日本拳法連合総本部講武会館があることが認められる。
加えて,上記のとおり,日本拳法九州連盟は,原告日本拳法全国連盟の後援により日本拳法九州大会を開催していた団体であるが,おそくとも平成10年ころから,原告日本拳法全国連盟の許諾を得ずに日本拳法の段級位の允許状を発行していたことが認められ,また,証拠(乙10,11)及び弁論の全趣旨によれば,原告日本拳法会に加盟する日本拳法東北連盟も,平成20年ころ,原告らの許諾を得ずに日本拳法の段位を認定する允許状や師範任命の証書を発行していたことが認められる。上記のとおり,武道・拳法において允許は組織の統率をはかるために重要な手段と考えられるから,原告らの許諾を得ずに日本拳法の名称を使用して段級位の允許状等を発行していた日本拳法九州連盟及び日本拳法東北連盟も,原告らと結束して活動をする1つのグループに属すると認めることはできない。
以上によれば 「日本拳法」との名称は,日本拳法の指導・普及活動を ,行うグループ関係にはない複数の団体が使用していたというのが実態であり,とりわけ,原告ら以外に日本拳法協会が関東地方を中心として広く日本拳法の指導・普及活動をしていたという点を考慮すれば,武道・拳法に携わる者の間で 「日本拳法」の名称が特定の団体すなわち原告ら及びそ ,の属するグループの営業表示として認識されていたと認めることはできないというべきである。
したがって,いまだ「日本拳法」との名称が原告らの営業表示として周知性を獲得しているとは認められない。
( )「日本拳法会」及び「日本拳法全国連盟」の各名称の周知性3もっとも,上記で認定した原告らによる日本拳法の指導・普及活動の内容にかんがみれば,武道・拳法に携わる者の間において,原告らが日本拳法の指導・普及活動を行う主要な団体として広く認識されていると認められるから 「日本拳法会」との名称は原告日本拳法会の営業表示として 「日本拳 , ,法全国連盟」との名称は原告日本拳法全国連盟の営業表示として,それぞれ周知性を獲得しているものと認められる。
ただし,上記のとおり 「日本拳法」との名称は特定の団体の営業表示と ,して認識されているものではなく 「日本拳法会」の「会」の部分及び「日 ,本拳法全国連盟」の「全国連盟」の部分は特段の識別力を有するものでもない上,日本拳法連盟や日本拳法協会など 「日本拳法」に団体や組織を普通 ,に表す表現を付加した名称を使用している団体が複数あるという実情も併せて考慮すれば 「日本拳法会」及び「日本拳法全国連盟」との原告らの名称 ,は,全体が不可分のものとして使用されることにより識別力を有し,周知性を獲得するに至ったというべきであって,その名称のうち「日本拳法」の部分を識別性のある部分すなわち要部ということはできない。
( )小括4, , 以上によれば 「日本拳法会」の名称は原告日本拳法会の営業表示として「日本拳法全国連盟」の名称は原告日本拳法全国連盟の営業表示として,それぞれ周知性を獲得していると認められるが 「日本拳法」との名称は原告 ,らの営業表示として周知性を獲得していると認めることはできない。
2争点2(被告らの不正競争行為の有無)について( )被告A及び被告全日本拳法連盟が「日本拳法」の名称を使用する行為につ1いて原告らは,被告らが「日本拳法」との名称を用いて允許行為や大会の開催等を行うことが不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当する旨主張するが,上記1のとおり 「日本拳法」との名称は原告らの営業を表 ,示するものとして周知性を獲得しているとは認められないから,原告らの主張は採用できない。
( )被告全日本拳法連盟が「全日本拳法連盟」との名称を使用する行為につい2てア上記のとおり 「日本拳法会」との名称は原告日本拳法会の営業を指す ,ものとして 「日本拳法全国連盟」との名称は原告日本拳法全国連盟の名 ,称を指すものとして,それぞれ周知性を獲得しているところ,原告らは,これらの名称と被告全日本拳法連盟の「全日本拳法連盟」との名称は要部である「日本拳法」という部分を共通にするから 「日本拳法会」及び,「日本拳法全国連盟」と「全日本拳法連盟」とは類似すると主張する。
しかし,上記のとおり 「日本拳法」との名称が原告らの営業を表示す ,るものとして周知性を獲得しているとは認められず,原告らの各名称のうち「日本拳法」との部分に識別力(要部)があるとはいえないことは,前記1( )に説示したとおりである。被告全日本拳法連盟の名称である「全3日本拳法連盟」は,原告らの上記各名称( 日本拳法会 「日本拳法全国 「」連盟 )を全体として不可分のものとして把握する限り,外観及び称呼に 」おいて相違するというべきであり 「日本拳法」との部分において共通す ,るからといって,類似すると認めることはできない。
イよって,被告全日本拳法連盟が「全日本拳法連盟」との名称を使用する行為が不正競争行為に該当すると認めることはできない。
第5結語以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人