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事件 平成 16年 (ワ) 5830号 損害賠償請求事件
原告 株式会社ヴェント・インターナショナル
同訴訟代理人弁護士 窪田 英一郎
同 柿内瑞絵
同 乾裕介
被告 株式会社ヤングファッション研究所 (以下「被告ヤングファッション研究 所」という。)
被告 株式会社プレポワ (以下「被告プレポワ」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 井上經敏
同 池田和司
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/09/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告プレポワは,原告に対し,金70万円及びこれに対する平成16年3月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告及び被告プレポワに生じた費用の3分の1及び被告ヤングファッション研究所に生じた費用を原告の負担とし,原告及び被告プレポワに生じたその余の費用を被告プレポワの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
被告らは,原告に対し,各自金340万円及びこれに対する被告ヤングファッション研究所については平成16年3月25日,被告プレポワについては同月26日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,衣料品の製造,販売等を行う原告が,自己の商品の形態模倣した商品が被告らによって製造,販売されたものであり,被告らの行為は,不正競争防止法2条1項3号に基づく不正競争行為に該当するとして,損害賠償を請求した事案である。
1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。) (1) 当事者 原告は,衣料品の販売を主たる目的とする株式会社であり,「LIZ LISA」等のブランドで,10代の女性を主たる顧客層にオリジナルデザインの衣服やアクセサリーを販売している。
被告ヤングファッション研究所は,婦人服の製造・企画・卸・販売等を主たる業務とする株式会社であり,被告プレポワは,紳士,婦人,子供服の製造,販売等を主たる業務とする株式会社である。
(2) 原告商品 原告は,原告代表者デザインし,企画した別紙1原告商品目録記載の衣服(以下「原告商品」という。)を平成15年10月14日ころにサンプルアップし,同月末ころには,1枚当たり3900円で全国で販売を開始した。
(3) 被告商品 被告プレポワは,「one*way」というブランドで,平成15年12月ころから,別紙2被告商品目録記載の衣服(以下「被告商品」という。)を製造し,1枚当たり2900円で販売した。
2 争点 (1) 被告商品は,原告商品の形態模倣した商品か。
(2) 原告商品の形態は同種の商品が通常有する形態か。
(3) 被告ヤングファッション研究所は,不正競争行為を行ったか。
(4) 不正競争行為による原告の損害はいくらか。
3 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(被告商品は,原告商品の形態模倣した商品か)について (原告の主張) ア 原告商品の特徴 原告商品の形態は,以下のとおりの特徴的な形状からなる。
A 襟ぐりを前後ともやや丸みを帯びたスクエアV字カットとし, B そのV字上の正面中央に生地と同色染の小さいリボンを付し, C その中央リボンの位置から両脇にかけて切替えを入れ, D その両胸の切替えの中央に複数のタックを入れ, E 両肩部分を渡すように3本の銀色のチェーンが付けられており, F そのうち2本がパールチェーンになっていて,チェーンは3本まとめて両肩部分で取り外し可能になっている, G ノースリーブ形のややモヘヤ様の生地からなるカットソー イ 被告商品の特徴 被告商品の形態は,以下のとおりの特徴的な形状からなる。
A’襟ぐりを前後ともやや丸みを帯びたスクエアV字カットとし, B’そのV字上の正面中央に生地と同色染の小さいリボンを付し, C’その中央リボンの位置から両脇にかけて切替えを入れ, D’その両胸の切替えの中央に複数のタックを入れ, E’両肩部分を渡すように3本の銀色のチェーンが付けられており, F’そのうち2本がパールチェーンになっていて,チェーンは3本まとめて両肩部分で取り外し可能になっている, G’ノースリーブ形のややモヘヤ様の生地からなるカットソー ウ 原告商品と被告商品との同一性 被告商品におけるA’ないしG’の各形状は,原告商品におけるAないしGの各形状と同一であり,両者の形態は全く同一である。
模倣 原告商品と被告商品との,前記のような形態の同一性が偶然に生じる余地はなく,被告らが,原告商品を模倣して被告商品を製造販売していることは明らかである。
(被告らの反論) ア 原告商品の形態についての原告の主張は認める。
イ 被告商品の形態について,原告の主張するB’,C’,E’,F’及びG’の各形状を有していることは認める。A’の形状について,被告商品はスクエアV字カットではなく,V字カットである。D’の形状について,被告商品に施されているのは,タックではなくギャザーである。
ウ 被告プレポワは,平成15年2月ころよりチェーン付商品を継続して販売してした。同被告は,同年9月に,例年どおり冬物の商品を企画することとなり,クリスマス,正月を迎えるに当たり華やかさを強調するためにチェーンにパールを使用し,生地は暖かさとふわふわした肌触りのあるシャギーを使用することを決定した。
デザインは,被告プレポワの企画部において,同月中旬頃に考案した。
その際,定番のタンクトップを基本にして,襟ぐりを前後V字としたノースリーブ形にすること,V字の正面中央から両脇にかけて切替えを入れること,切替えに複数のギャザーを入れること,正面中央にリボンを付すこと,チェーンを付すことについては,被告のいくつかの先行商品を参考にした。
被告商品製作過程で,原告商品に依拠したことは一切ない。
以上から,被告らには,模倣の意図はない。
(2) 争点(2)(原告商品の形態は同種の商品が通常有する形態か)について (被告らの主張) 原告商品の形態は,以下のとおり,同種の商品が通常有する形態である。
すなわち, ア 原告商品の7つの形状のうち,A,C,D,Gの各形状は,いずれも,タンクトップという商品に必要不可欠の形状である。したがって,これらの各形状は,特徴的な形状とはいえない。仮に,Cの形状の切替部とDの形状の複数のタックについては,タンクトップであることから直ちに必須の形状ではないとしても,C及びDの各形状は,衣服を着用した際の胸の張りや圧迫感を取り除くための機能あるいは効用を奏するために必要不可欠な技術的形態である。
イ その他の形状は,いずれも,きわめてありふれた形態である。すなわち,小リボンを付した形状(Bの形状)は,平成15年2月10日に被告ヤングファッション研究所が企画して加工出しを行った商品に既に採用されている。また,後ろ取り外しが可能な3本のチェーンの装飾的な部品を付した形状(E,Fの各形状)は,被告ヤングファッション研究所が同月21日及び同月27日に,被告プレポワが同年6月5日及び同年8月26日に,それぞれ企画,加工出しを実施した各商品に採用されている。先行商品は,原告商品がパールのチェーンを2本使用した点において相違するが,この点は,極めて微細な相違点にすぎない。
ウ 原告は,各特徴的な形状が組み合わせられたことによって,若い女性にセクシーさとキュートさを与える旨主張する。しかし,これらの性質は,元来タンクトップ自体が保有している形状そのものであって,原告商品のAないしGの形状が組み合わせられることによって,新たな個性が生ずるものではない。原告商品の全体的な特徴は,タンクトップを基調として,これに取り外し可能な3本チェーンの装飾品を付した形態ということに帰着する。
(原告の反論) 原告商品の形態は,以下のとおり,同種商品の通常有する形態に当たらない。すなわち, ア 不正競争防止法2条1項3号で保護の対象から除外されている同種の商品が通常有する形態とは,@同種の商品と比べてその特定の商品に何の個性をも与えない,何の特徴ももたらさない形態(没個性的形態),又は,Aその種類の商品に共通してその特有の機能及び効用を発揮するために一義的に決まるような形態,すなわち,必然的に採用せざるを得ない形態(技術的形態)をいう。
イ @の没個性的形態か否かについては,原告商品は,丸首で下着として着るようないわゆるランニングシャツのように単純かつ平凡なものではなく,その形状,模様,色彩,重量感において前記各特徴を有するものであり,これらがすべて結合して具備されることにより,特に若い女性にセクシーさとキュートさを与え得る特段の個性を有する。そして,各特徴の一部を切り取って細分化すれば,それぞれ個別に類似する商品があるとしても,その各デザインや装飾の結合の態様は,他の商品と異なり,同一の商品はない。よって,原告商品の形態は,同種の商品と比べてその特定の商品に何の個性も与えない,何の特徴ももたらさない形態とはいえない。
Aの技術的形態か否かについては,原告商品も単にランニングシャツのような形状で足りるのであって,原告商品の各形状は一義的に決まるものではなく,原告商品の形態は,その種類の商品に共通してその特有の機能及び効用を発揮するために一義的に決まる必然的な形態とはいえない。
ウ 被告らは,原告商品の特徴の1つであるV字カットの形状(Aの形状)やチェーンを付した形状(E,Fの各形状)は,被告らの先行商品にも見られると主張する。
しかし,被告らの主張は理由がない。すなわち,先行商品の形態は,V字の変形等の程度,襟ぐりの深さ,生地の縁の始末(ステッチを入れるかどうかなど)等の点で,原告商品とは相違する。また,被告らの先行商品に,チェーンを付した,類似の形状の商品はあるが,先行商品は,チェーンを3本渡したうちパールチェーンを2本入れた形状を具備していない点において,原告商品と相違する。
(3) 争点(3)(被告ヤングファッション研究所の行為)について (原告の主張) 被告ヤングファッション研究所は,インターネット上で,「one*way」のサイトを立ち上げていること,加工指示書の最下欄に「YFL」との名称が印刷された用紙を使用していることなどの事実に照らすならば,同被告は,被告プレポワが製造,販売する商品について企画,宣伝を行っているものと推認される。
そうすると,仮に,被告ヤングファッション研究所が,被告商品の製造,販売に直接関わっていないとしても,同被告が被告商品の企画,宣伝へ関与した一連の行為は,不正競争行為に該当すると評価すべきである。
したがって,同被告には,不正競争防止法上の責任がある。
(被告ヤングファッション研究所の反論) 被告ヤングファッション研究所は,被告商品の製造,販売に一切関わっていない。被告商品のブランドである「one*way」は,被告らの共通の代表者である加藤武司が有する登録商標であるが,被告ヤングファッション研究所は,この登録商標を使用して衣料品の製造,企画,卸,販売等に関与したことはない。
したがって,本件において,被告ヤングファッション研究所には,不正競争防止法上の責任はない。
(4) 争点(4)(不正競争行為による原告の損害はいくらか)について (原告の主張) ア 不正競争防止法5条所定の損害 (ア) 法5条1項 被告プレポアは,被告商品を少なくとも1000枚販売している。他方,原告は,原告商品1枚につき2400円以上の限界利益を有するから,不正競争防止法5条1項により,被告らの行為による原告の損害は240万円を下らない。
(イ) 法5条2項 被告らが被告商品を販売したことによって得る限界利益を原告の損害と推定すべきである。被告プレポワは被告商品を1000枚販売している。被告商品の販売によって被告らが得る限界利益は1枚当たり2000円を下らない。
(ウ) 法5条3項 原告は,被告商品の販売について受けるべきデザインの使用料は30パーセントを下るものではないから,同条3項により,1000枚の販売により87万円の損害を被った。
弁護士費用 原告は,本件訴訟の遂行のために原告代理人を選任せざるを得ず,弁護士費用として少なくとも100万円を負担する予定である。被告らの不正競争行為によって生じた原告の弁護士費用に係る損害額は,100万円である。
(被告ら) 原告の主張は争う。
被告商品の販売価額は2900円である。
被告プレポワは,被告商品を340枚仕入れ,そのうち95枚を単品で販売し,残りの245枚のうち227枚は福袋に入れて販売し,残り18枚は廃棄した。
争点に対する判断
1 争点(1)(被告商品は,原告商品の形態模倣した商品であるか)について (1) 原告商品及び被告商品の形態 争いのない事実,証拠(甲2,乙2ないし10の3,検甲1,2,検乙1ないし8)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告商品の形態 原告商品の形態は,以下のとおりである。
A 襟ぐりを前後ともやや丸みを帯びたV字カットとし, B そのV字上の正面中央に生地と同色染の小さいリボンを付し, C その中央リボンの位置から両脇にかけて切替えを入れ, D その両胸の切替えの中央に複数のタックを入れ, E 両肩部分を渡すように3本の銀色のチェーンが付けられており, F そのうち2本がパールチェーンになっていて,チェーンは3本まとめて両肩部分で取り外し可能になっている, G ノースリーブ形のややモヘヤ様の生地からなるカットソー イ 被告商品の形態 被告商品の形態は,以下のとおりである。
A’襟ぐりを前後ともやや丸みを帯びたV字カットとし, B’そのV字上の正面中央に生地と同色染の小さいリボンを付し, C’その中央リボンの位置から両脇にかけて切替えを入れ, D’その両胸の切替えの中央に複数のギャザーが施され, E’両肩部分を渡すように3本の銀色のチェーンが付けられており, F’そのうち2本がパールチェーンになっていて,チェーンは3本まとめて両肩部分で取り外し可能になっている, G’ノースリーブ形のややモヘヤ様の生地からなるカットソー (2) 原告商品と被告商品の形態の同一性の有無 原告商品及び被告商品は,いずれも,@ノースリーブ形のカットソーである点,A襟ぐりが前後ともV字カットである点,BV字上の正面中央に生地と同色染の小さいリボンを付している点,Cそのリボンの位置から両脇にかけて切替えを入れている点,D両肩を渡すように3本の銀色のチェーンが付けられている点,Eチェーンのうち2本がパールチェーンになっている点,Fチェーンは3本まとめて両肩部分で取り外し可能になっている点,Gややモヘヤ様の生地で作られている点において共通している。
原告商品と被告商品は,個々の特徴的形状の多くが共通し,全体の形状もほとんど同一であるので,両者の形態は実質的に同一であるというべきである。
確かに,原告商品は,襟ぐりがやや丸みを帯びたV字形状であり,両胸の切替えの中央部分に複数のタックが入っているのに対して,被告商品は,襟ぐりが直線的なV字形状で,両胸の切替えの中央部分にギャザーが施されている点で,若干の相違がある。しかし,襟ぐりのV字形状の相違は,ごくわずかなものであるし,タックとギャザーの相違も,柔らかい生地が使用されているため,外観の相違に影響を与えているほどのものとはいえない。したがって,上記の相違点は,両商品の形態が,実質的に同一であるとの判断に消長を来すものではない。
(3) 模倣の有無 以下の点に鑑みると,被告商品は,原告商品の形態模倣した商品であると認められる。すなわち,@原告商品と被告商品の形態が,細部の特徴まで酷似していること(特に,チェーンのうち2本がパールチェーンから構成されていること),A原告商品が平成15年10月から販売されたのに対し,被告商品は同年12月から販売され,被告商品は,原告商品の販売が開始された極めて近接した時期に販売されていること,B被告商品について製造の発注がされたのは,同商品が市場に出される直前の平成15年12月5日であること(乙12),C原告商品,被告商品ともに10代の女性を主たる顧客層として,市場が近接していることなどの事情を総合すると,被告商品は,原告商品を模倣して製造・販売されたものであると認められる。
この点について,被告らは,被告ヤングファッション研究所あるいは被告プレポワにおいて,原告商品の個々の形態と同様の形態を有する商品を製造,販売しており,それらの商品を参考にして被告商品のデザインを決定したこと,原告商品の販売開始前である同年9月に被告商品の企画を行っていることから,原告商品の形態模倣したものではない旨主張する。
しかし,被告プレポワが主張する被告らの先行商品(検乙1ないし6)は,いずれも,部分的には原告商品及び被告商品の形態類似するところがあるものの,その類似の程度,全体の印象を見ると,原告商品や被告商品とはかなり異なるのであって,被告らの先行商品の存在から,前記の認定判断が覆されるとはいえない。また,被告商品の企画時期についても,被告プレポワの企画部長作成の報告書(乙11)には,平成15年9月ころにパールチェーン付の商品の企画を決定した旨記載されているが,被告商品が実際に発注されたのは12月5日(乙12)であることに照らすと,被告商品のデザインを確定した時期が同年9月ころであると認定することは到底できない。
2 争点(2)(原告商品の形態は同種の商品が通常有する形態か)について 被告らは,原告商品の7つの形状のうち,A,C,D,Gの各形状は,@タンクトップという商品に必要不可欠の形状である,AC及びDの各形状は,衣服を着用した際の胸の張りや圧迫感を取り除くための機能あるいは効用を奏するために必要な技術的形態である,Bその他の形状もありふれた没個性的形態にすぎない,C7つ形状を組み合せた形態をみても,他の商品と比較して特徴的なものとはいえないとして,原告商品の形態は同種の商品が通常有する形態であると主張する。
しかし,1で認定した原告商品の形態については,ノースリーブ形のカットソーあるいはタンクトップであることから必然的に導かれる形態であるとはいえないし,両胸部分の切替えとその部分にタックを施すことも,身体の形状に合わせて衣服を立体的にするという意味では,必要な構成ではあるものの,その手段や形状には多様なものがあるのであって,原告商品の上記形状が一定の効果を奏するための必須の技術的形態であるということはできない。
確かに,原告商品における個々の形状に着目すれば,他の商品においても同一あるいは類似の形状が存在し,原告商品のみが有する形状であるということはできない。しかし,同種の商品が通常有する形態であるかどうかは,商品の形態を全体的に観察して判断すべきところ,原告商品の形態は,AからGまでの各形状の組合せで構成され,原告商品と同様の組合せを採用した他の同種商品が存在しないこと,原告商品の形状E,Fなどは特徴的な形状であるといえること等に照らすならば,原告商品の形態が,個性を有しない形態であるとはいえない。
よって,原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態であるとは認められない。
3 争点(3)(被告ヤングファッション研究所の行為)について 原告は,被告ヤングファッション研究所が,インターネット上で,「one*way」のサイトを立ち上げていること,「YFL」との名称が印刷されている用紙を被告商品の加工指示書として使用していることから,同被告は,被告商品について企画,宣伝行為を実施しているとして,同被告のこれらの一連の行為は,不正競争行為に該当する行為と評価されるべきであると主張する。
しかし,本件全証拠によるも,被告ヤングファッション研究所が,被告商品の販売をした事実を認めることはできないし,また,原告の主張する,被告ヤングファッション研究所の各行為から,同被告が,被告プレポアと共同で被告商品の販売を行ったと認定又は評価することもできない。
したがって,被告ヤングファッション研究所には,不正競争防止法上の責任はない。
4 争点(4)(不正競争行為による原告の損害はいくらか)について (1) 被告プレポワの被告商品の販売は,前記認定のとおり,不正競争行為を構成するところ,1で認定した事情に照らせば,被告プレポワにおいて当該不正競争行為について故意又は過失があったと認められるから,被告プレポワは,原告の損害を賠償する責任がある。
(2) 法5条1項損害額 ア 被告プレポワは,被告商品を340枚仕入れ,そのうち95枚を販売し,残り245枚のうち227枚は福袋に他の商品とともに袋詰めして販売し,残り18枚は廃棄した(乙10の1,12ないし14)。
原告は,原告商品を,1枚当たり,1430円で仕入れ,3900円で販売しており(甲2,3,弁論の全趣旨),販売金額から仕入金額を控除した金額は,1枚当たり2470円である。
イ 原告商品を販売することによって得た原告の利益の額の算定に当たっては,販売金額から,仕入金額のほかに,販売費(変動費相当分)等の経費を控除するのが相当であると考えられるところ,その割合は,本件に現れた事情を総合すると,販売金額の15パーセントとすることが相当であり,1枚当たりの当該経費は,585円となる。
ウ そうすると,1枚当たりの原告利益額1885円(2470円-585円)に,被告商品の販売数量322枚(95枚+227枚)を乗じた金額は,60万6970円となる。不正競争防止法5条1項により,原告が,本件における不正競争行為により受けた損害(逸失利益)は,この算定結果を考慮して60万円とするのが相当である。
なお,法5条2項,3項に沿って算定する額も,上記金額を超えるものではない。
(3) 弁護士費用 本件における一切の事情を考慮すると,被告プレポワの不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用としては,10万円が相当である。
(4) 合計 原告の損害額の合計は,70万円となる。
結論
以上のとおり,原告の請求は,被告プレポワに対する70万円及びこれに対する平成16年3月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 山田真紀