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関連ワード 周知性 /  広く認識 /  需要者 /  混同行為 /  信義則 /  慣用表示 /  他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  呼称 /  印象 /  記憶 /  連想 /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  意匠登録 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  侵害 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  販売数量 / 
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事件 昭和 55年 (ラ) 34号
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裁判所 札幌高等裁判所
判決言渡日 1981/01/31
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事仮処分
主文 本件抗告をいずれも棄却する。
抗告費用は抗告人らの負担とする。
事実及び理由
全容
一 本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
二 当裁判所の判断1 本件資料によれば次の事実が疎明される。
(一) 北誉製菓株式会社(以下北誉という)は、昭和四七年四月から、別図(一)及び(二)表示のステンレス製牛乳缶型容器(以下本件容器という)にバター飴を入れて、ラベル、包装箱を使用し、「北海道名産バター飴」の名称を付したものを北誉の商品(上記容器、包装等を使用してバター飴を入れた北誉の商品を以下単に北誉の商品という。)として販売し、以来昭和五一年三月頃までの間にその販売数量は計三七万余缶、卸総額計二億三三八〇万余円に達し、それは北誉の中心的商品となつていた。そして北誉の商品は、昭和五〇年三月優良道産品推奨協議会から優良道産品として推奨を受けたほか、雑誌等に北海道の代表的土産品として写真付で掲載されたり、北海道内のほとんどの土産品店で販売されるようになつていた。
(二) そのため、債権者北誉、債務者北海道観光名産株式会社(以下北海道観光という)外一名間の札幌地方裁判所昭和五〇年(ヨ)第二七九号不正競争行為差止仮処分事件において、同裁判所は、北誉の商品につき債権者北誉の右仮処分債務者らに対する差止請求を認め、更に同裁判所同年(モ)第九二〇号同仮処分異議事件(異議申立人は北海道観光)において、同裁判所は、前記(一)の事実を認定したうえで、同事実に基づき、北誉の商品は容器としてステンレス製牛乳缶型を使用している特徴を有していたため少くとも問屋段階では、北誉の商品として広く認識されていたことが認められるし、一般観光客、小売店層においても北誉の商品が特定の出所より出たものであるとの認識はかなりの程度まで広まつていたものと推認できるから、北誉の商品は少くとも北海道地方では周知性を有する商品表示を有していた旨の判断をし、前記仮処分決定を認可した。
そして、その後、右仮処分事件の本案訴訟(同裁判所昭和五〇年(ワ)第五七九号事件ほか)において、前記当事者(原告北誉、被告北海道観光)間に、右北海道観光は現有している容器以外にステンレス製牛乳缶型容器によるバター飴の販売をしないこと、同北海道観光に対し北誉が和解金一〇〇万円を支払うことを骨子とす
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(三)その後、北誉は、本件容器を使用した北誉の商品の販売をしてきたが、昭和五四年七月一七日、札幌地方裁判所において、北誉を破産者とする旨の決定(同裁判所昭和五四年(フ)第七号破産申立事件)がなされた。そこで、従前から北誉に対しバター飴を納入してきた本件抗告人ロマンス製菓株式会社(以下抗告人ロマンス製菓という)及び同年五月過ぎ頃から北誉に対しバター飴を納入し始めた本件抗告人浜塚製菓株式会社(以下抗告人浜塚製菓という)は、右破産会社北誉の破産管財人【A】に対し、「北誉の保有していた『ステンレス製集乳缶型バター飴缶』の意匠」を譲受けたい旨申出をし、昭和五四年七月二七日、札幌地方裁判所の許可を得て、抗告人両名は各二五〇万円計五〇〇万円の代金でこれを譲受けた。なお、
抗告人ロマンス製菓は、同日、右破産管財人から、前記「意匠」のほか七四七万円相当の製品、資材なども買受けている。
そして、抗告人両名は、同年同月、連名で、前記「意匠権」を北誉から承継した旨の広告を業界紙及び新聞紙上に掲載するとともに、北誉の取引先にその旨を連絡し、かつ同年八月右広告とほぼ同趣旨の記事が業界紙に掲載された。
(四)抗告人両名は、右譲渡を受けた昭和五四年七月から、本件容器にバター飴を入れ、ラベル、包装箱を使用し「北海道名産バター飴」の名称を付した商品の販売を開始し、同年一〇月までの間に左記数量、金額の商品を卸販売した。
記(1)抗告人ロマンス製菓販売年月販売数量販売金額昭和五四年七月五、八三二缶二、七五一、八四〇円同年八月一一、一八四缶五、〇三八、二〇〇円同年九月六、一六八缶二、六四一、〇八〇円同年一〇月三、五七六缶一、四八九、八〇〇円(2)抗告人浜塚製菓販売年月販売数量販売金額昭和五四年七月二、〇四〇缶九四九、
三八〇円同年八月一八、九七二缶一二、二五五、〇〇〇円同年九月二六、六三八缶一六、五〇三、二〇〇円同年一〇月五、七七七缶二、九〇六、〇四一円同年一一月五、四九四缶一、九二八、四四〇円同年一二月六〇六缶三九四、六〇〇円(五)ところが、昭和五四年一二月初め頃から、相手方が別図(三)及び(四)表示のステンレス製容器(以下相手方容器という)にバター飴を入れ、ラベル、包装箱を使用し「北海道銘菓バター飴」の名称を付した商品を主に道東及び道央方面に販売するに至つた。
そのため、抗告人両名の取引先から同抗告人らに対し、北誉から権利を譲受けたというのは嘘なのかなどの問合わせや苦情が寄せられている。
(六)牛乳缶型菓子容器の形状は、昭和三〇年及び昭和三一年に、旭川市の【B】なる者が意匠権者となり意匠登録されていたが、すでに意匠権の存続期間である一五年を経過しているし、北誉も本件抗告人両名及び相手方も、いずれも牛乳缶型菓子容器の形状に関する意匠の登録をしてはいない。
2ところで、抗告人両名は、不正競争防止法1条1項1号に基づき、相手方が、
相手方容器をバター飴の容器として使用すること及び同容器を使用したバター飴製品の製造、販売、頒布をすることの差止等を求めているところ、同条同項同号による差止めは、本邦内に広く認識されている、すなわち周知の他人の商品表示と同一もしくは類似のものを使用したり、これを使用した商品を取扱うことによつて他人の商品混同を生じさせるいわゆる商品の主体を混同させる行為によつて営業上の利益を害されるおそれのある者が、右混同行為を阻止するために求めうるのであるから、右の差止めが認められるためには、まず右差止申立人の商品表示であることが本邦内に広く認識され、いわゆる周知性を有していることを必要とする。そして、右の周知性は、全国に広く認識されることまでも要するものではなく、一地方においてその取引者又は需要者の間に広く認識されることで足りるものと解すべきである。
そこで、本件において、本件容器が抗告人両名の商品表示としての周知性を有しているか否かにつき検討するに(商品主体の混同行為差止めを求める本件仮処分においては、本件容器が北誉の商品表示として周知性を有していたか否か、更に抗告人両名が北誉の破産管財人から「北誉の保有していた『ステンレス製集乳缶型バター飴缶』の意匠」又は本件容器を使用して北誉の商品を製造販売するという事実状態若しくはグツドウイルなるものを譲受けたか否かということはいずれも意味をもたないというべく、本件容器が抗告人両名の商品として周知性を取得しているか否かが問題なのである)、前説示の通り、抗告人両名は、本件容器が抗告人両名の商品であることにつき、新聞広告をしたり、北誉の元の取引先に連絡をとるなどして本件容器を使用した商品売込みのための営業上の努力をし、取引先である問屋段階ではある程度の認識を得つつあることはうかがわれるものの、抗告人両名が本件容器を使用した商品販売を開始してからその期間はそれほど長期に亘つているとはいい難いのであり、本件全資料によつても、未だ、少くとも北海道地方においてもその取引先である問屋、小売店又は一般観光客のいずれにも、本件容器が抗告人両名の商品であると広く認識されるに至つているとの疎明があつたということはできない。
そして、他に抗告人両名の被保全権利を認めるに足りる疎明はなく、この点について保証をもつて疎明に代えることは相当でないから、抗告人両名の本件仮処分申請は、その余の点につき検討を加えるまでもなくいずれも失当としてこれを却下すべきものである。
三よつて、抗告人両名の仮処分申請を却下した原決定は結局相当であり、本件抗告はいずれも理由がないから、民事訴訟法414条384条1項によりこれを棄却することとし、抗告費用の負担につき同法95条89条93条を適用して、
主文のとおり決定する。
(裁判官安達昌彦澁川滿大藤敏)抗告の趣旨原決定を取消す。
別紙記載内容の仮処分決定を求める。
抗告の理由第一裁判所は抗告人らの仮処分申請を理由なしとして却下したが抗告人らの申請は法律上の理由からも疎明の点からも理由があるにもかかわらず、これを理由なしとして却下した原決定には明らかに判断の誤りがある。
第二被保全権利について一申請外北誉製菓株式会社(以下単に北誉という)はかねてから、別紙(一)(二)表示のステンレス製牛乳缶型容器(以下債権者容器という)を使用して同容器にバター飴を入れて「北海道名産バター飴」(以下債権者商品という)として、
北誉の主力製品として大々的に売り出した。
二債権者商品はその特徴ある債権者容器を使用しているため、酪農業の盛んな北海道のイメージと合致し北海道の観光土産品として爆発的な売れ行きを示し、優良道産品としても認定され、北海道の代表的な観光土産品となつた。
三そして、北誉の債権者商品は昭和五〇年当時には債権者容器を使用していたため問屋・小売店、及び一般消費者間において北誉の商品として広く認識されており、債権者容器は北誉の商品を表示するものとして、いわゆる周知性を有していた。
四従つて、昭和五〇年当時には北誉が債権者容器を使用して同容器にバター飴を入れて債権者商品として販売していたという営業上の事実状態は、北誉と問屋・小売店、及び一般消費者間の取引上において第三者が北誉の右営業上の事実状態を侵害しえないという、いわゆる信用状態を形成していたというべく、右信用状態は当然法による保護の対象となりうるものである。
五そして、不正競争防止法(以下法という)は正に取引上において保護すべき信用状態を形成した営業上の事実状態を権利として認め、右営業上の事実状態を侵害された者は右営業上の事実状態を侵害する行為をした者に対して、その差止等を求めることができるとしているのである。
六札幌地方裁判所も以上の趣旨から、かつて北誉と申請外北海道観光名産株式会社間の不正競争行為差止仮処分事件について、差止を認める仮処分決定をしたのである。
七ちなみに北誉の債権者商品が北誉の製造販売する全商品の販売総額に占める割合は約三〇パーセントであり、
債権者商品が売れることにより北誉の名が業界において周知になり、北誉の業界・金融界等における信用状態が増進され、ひいては北誉の売上げが増加する等のいわゆる営業面を考えた場合、債権者商品が北誉の営業面に占める割合は約九〇パーセントにも達していた。
八従つて北誉が債権者容器を使用して債権者商品を製造販売しているという事実状態は、北誉の営業そのもの、少なくとも北誉の営業の主要な一部であるということができる。
九北誉が債権者商品を製造販売していた方法は北誉が債権者ロマンスにバター飴の製造を発注し、申請外洞口製缶所(以下洞口という)、申請外有限会社富士野金属(以下富士野という)に債権者容器の製造を発注し、申請外野崎印刷(以下野崎という)に包装箱・ラベルの製造を発注し、北誉は債権者容器にバター飴を入れ、
ラベルを貼り包装箱に入れて各問屋・小売店に卸すという方法をとつていた。
一〇北誉が破産宣告を受けた後、北誉とかねてから取引のあつた債権者らは、それぞれ破産管財人から北誉が債権者容器を使用し、同容器にバター飴を入れて債権者商品を製造販売していた営業上の事実状態を意匠として買受け、それとともに北誉が在庫している債権者容器・バター飴・包装箱・ラベル等の仕掛品の全てを債権者らが買受けさらに既に北誉が販売した債権者商品のうちクレームとして返品される商品は全て債権者らの責任において処理することを約し販売先である全ての問屋・小売店名の提示を受けた。
一一そして債権者らは直ちに北海道新聞及び業界紙上に北誉がかねて製造販売していた債権者容器を使用した債権者商品の意匠は債権者らが譲受けた旨の広告を掲載するとともに債権者商品を使用して同容器にバター飴を入れて「北海道名産バター飴」(以下同様に債権者商品という)として、その製造販売を開始した。
一二さらに、債権者らは北誉が債権者容器を使用し同容器にバター飴を入れて債権者商品を製造販売していた営業上の事実状態を債権者らが引継いだことを明確にするため、債権者商品の包装箱・ラベルには製造者として北誉とともに債権者の名を並記して、債権者商品を製造販売した。
そしてその販売先は債務者を除いては北誉がかねて取引をしていた問屋小売店と全く同一である。
一三現在では問屋小売店等の業界において、北誉が債権者容器を使用して同容器にバター飴を入れて債権者商品として製造販売していた営業上の事実状態は債権者らに引継がれ、債権者らが同容器を使用して債権者商品を製造販売しているということが認識されており、従つて債権者容器は問屋小売店等の業界においては債権者らの商品を表示するものとして広く認識されており、いわゆる周知性を有している。
一四もし仮に債権者容器が債権者らの商品を表示するものとして未だ広く認識されるに至つてないとしても、債権者らは破産管財人から北誉が債権者容器にバター飴を入れて債権者商品を製造販売していた営業上の事実状態を意匠として譲受けるとともに、北誉が在庫している仕掛品を譲受け、北誉が既に販売した債権者商品のうちクレームとして返品される商品を処理することを約し、販売先である全ての問屋小売店名の掲示を受けたから債権者容器という商品表示によつて表象される北誉のグツトウイルを正当に承継している。
一五従つて債権者らは債務者に対して法第1条第1項第1号により債務者の行為の差止を求める権利がある。
一六債務者は債権者容器の形状は公知のものであり、その意匠権についても存続期間満了により公有財産に帰しているから北誉の商品表示としての周知性を取得しないと主張する。
(一)債務者の主張を善解すれば債権者容器は慣用表示であるから法第1条第1項第1号の適用はないという趣旨と思われる。しかし、法にいう慣用表示か否かは商品表示の形状自体が一般的に知られているか否かということをいうのではなく、
特定の商品との関連においてその商品について一般的にその商品表示が使用されているか否かを問題とするものである。
(二)従つて本件の場合には債権者容器が慣用表示であるというためには債権者容器がバター飴という商品について一般的に使用されているといえなければならない。
債権者容器はその形状において牛乳缶型ではあるが、その材質はステンレスであり、北誉以外にステンレス製牛乳缶型容器をバター飴に使用している業社は一社もない。
(三)もつともバター飴について牛乳缶型容器を使用している業社は数社あるが、そのいずれもが材質はステンレスではなくブリキでありしかもブリキの上に色彩をほどこしてあり、他の業社はほとんど布袋かブリキ缶にバター飴を入れている。
北誉の債権者商品が他社の商品とは異なり観光土産品として爆発的な売れ行きをましたのは本来の牛乳缶と同じ風合をもつ何ら色彩をほどこしていないステンレスを材質として用いたことにある。
以上の通り、債権者容器はバター飴について慣用表示ではない。
(四)法にいう周知商品表示か否かはその商品表示によつて表象される特定の商品主体の信用状態が取引上保護すべき状態になつているか否かという事実状態により決するものであり、その商品表示の意匠権者は誰かあるいは意匠権が存続期間中か否かという意匠法上の問題とは全く次元の異なる問題である。
又、そもそも債権者が公有財産に帰したと主張する意匠と債権者容器の意匠とは同一のものではなく、債権者容器の意匠は北誉がその創意工夫により創作をした意匠である。
さらに債務者が公有財産に帰したと主張する意匠につき、その意匠権者が意匠登録後その意匠をバター飴の容器として使用したこともない。
(五)債権者容器が北誉の商品を示す周知商品表示であることは前述の通りである。
一七債務者は債権者らが北誉の破産管財人から譲受けた「営業上の事実状態」とはその対象が明らかでないから債権者らには被保全権利はないと主張する。
(一)しかし債権者らは第一次的に債権者容器が債権者らの商品を示す周知商品表示であることを理由に債務者の行為の差止を求めているのである。そして第二次的に債権者らが北誉の破産管財人から北誉が債権者容器を使用し同容器にバター飴を入れて債権者商品として製造販売していた事実状態を意匠として譲受けたことにより、債権者容器という商品表示によつて表象される北誉のグツドウイルを正当に承継して債権者容器を使用していることを理由に債務者の行為の差止を求めているのである。
(二)債権者容器が債権者らの商品を表示するものとして周知性を有することは前述した通りであるが、もし仮に債権者容器が債権者らの商品を表示するものとして周知性を有しないとして、北誉のグツドウイルを承継しているか否か問題となる。
(三)北誉が債権者容器を使用し、同容器にバター飴を入れて債権者商品を製造販売していたという営業内容の主要な部分は、前述した通り正に『債権者容器にバター飴を入れる』というアイデアに基づいた事実状態である。
債権者らは右営業の事実状態を意匠として買受けたのである。
(四)そして債権者らは、右営業の事実状態とともに北誉が在庫している仕掛品を譲受け、北誉が既に販売した債権者商品のうちクレームとして返品される商品を処理することを約し、北誉の販売先である問屋・小売店等の提示を受けた。
従つて債権者らは破産管財人から右営業の事実状態等を譲受けたことにより、北誉が従前行なつていた営業活動を間断なく継続することができることとなつたから、債権者容器という商品表示によつて表象される北誉のグツドウイルを正当に承継しているということができる。
(五)さらに翻つて考えた場合、債権者らに差止請求権がないという理由はあるだろうか。
法が保護しようとしている対象は、民法上の規定にもとづく権利や意匠法にもとづく権利ではなく、あくまで取引上形成された信用状態という事実状態であり、この信用状態とは特定商品の製造販売業者が取引界において形成した名声・信用であるとともに、消費者の側からする特定商品の品質に対する信頼、製造販売業者に対する安心感・信頼感なのである。
そしてこの信用状態を取引上の信義則にもとる方法で破壊された者はその破壊した者に対してその行為の差止を求めることができるというのが法の趣旨なのである。この保護されるべき信用状態が正にグツドウイルである。
(六)債権者容器という商品表示によつて表象される北誉のグツドウイルを、債権者らが正当に承継しているというのは業界において既に公知の事実である。
(七)従前北誉が債権者容器を使用して債権者商品を製造販売して形成した業界における信用状態が北誉が破産することにより突然消滅し、それ以降は他の業者は北誉が業界において形成した信用状態にタダ乗りしても勝手であり、自由であるというのは何んとしても納得のいかないことである。
第三債権者商品と債務者商品との混同について一原決定は債権者商品と債務者商品との間には誤認混同を生ずる虞れがあるとはいえないという。
二しかしこれは明らかに法の解釈を誤つている。法のいう誤認混同とは、A商品とB商品との間に誤認混同を生ずるか否かではなく、A商品の商品主体であるXとB商品の商品主体であるYとの間に誤認混同の虞れがあるか否かをいうのである。
三具体的にいえばXからYに対する差止請求の場合、B商品がXの商品であると思われる、あるいは少なくともXと何らかの関係がある商品であると思われる場合には、法のいう誤認混同の虞れがあるということになる。
四そして誤認混同の虞れがあるか否かについても、商品表示が細部まで完全に一致する必要があるわけではなく商品表示のイメージを構成する主要な部分が共通のものであればよく、又商品に表示された表示の外観呼称によつて取引者に与える印象記憶連想を総合して具体的な取引事情を勘案して決すべきである。
五そこで本件についてこれを見ると債権者らの商品も債務者の商品もともにその商品のイメージを構成する主要な部分は、バター飴の容器としてステンレス製牛乳缶容器を使用していることであり、
しかも債権者容器と債務者容器とが異なつている点は、債務者容器の方が債権者容器よりも高さが低いこと、債務者容器は蓋の上部が平で花びらの様に波状になり、
更につまみのついた小さな蓋がついてその蓋の下は穴があいており取手の部分が段々になつて胴部分に牛の打出しがあるのに対し、債権者容器は蓋の部分が逆円すい状に広がつており取手の部分が平になつて胴部分には牛の打出しがないが、それ以外の点は債権者容器と債務者容器とは全く同一である。
そして右の違いは債権者容器と債務者容器とを比較した場合、ごく細部の違いであるに過ぎず全体的にみれば債権者容器と債務者容器は全く同一と考えることができる。
六なお、債権者商品と債務者商品のラベル・包装箱には若干の相違点があるが、
そもそもステンレス製牛乳缶型容器入りバター飴を購入しようとする問屋・小売店・消費者等はその包装箱・ラベルによつてではなく包装箱から取り出されて陳列されている債権者容器そのもので商品を選択すると見るのが相当であるから、債権者商品と債務者商品の包装箱・ラベルに若干の相違点があるとしても直ちに債権者商品と債務者商品との間に混同が生じなくなるわけではない。
七債権者商品と債務者商品がともにバター飴であること、観光土産品であること、商品を求める消費者が観光客であること、両商品がともに観光土産店で販売され同一系統の取引者によつて取り扱われる等々を前提にしてステンレス製牛乳缶型容器・包装箱・ラベルを全体的に見て債権者商品と債務者商品とを比較した場合、
両者の間には商品表示の類似が存しその出所については同一又は何らかの関係があるのではないかと思わしめる混同のおそれがあるといわなければならない。
八なお原決定は債権者容器と債務者容器の前記差異をとらえて債権者商品と債務者商品との間には誤認混同の虞れは生じないとしているが、これは前述した通り法の解釈を誤つたことからくる誤つた判断である。さらに原決定のように法の趣旨が商品主体混同行為を規制するのではなく、商品混同行為を規制するのだとしても前述した通り債権者商品と債務者商品は類似性があると判断するのが常識的である。
九さらに原決定が債権者商品と債務者商品との間に誤認混同の虞れがないと判断した理由の一つに、債務者容器の蓋の部分に工夫が加えられタバコの吸殻入れとなつていることをあげている。しかしこれも明らかに法の解釈の誤りである。
すなわち法のいう誤認混同の虞れを判断するには、商品表示の第一義的な意味において判断すべきであり商品表示のもつ第二義的な意味は問題とならない。
債権者容器も債務者容器も第一義的にはあくまでバター飴の容器として機能するものであり、バター飴を除いた後にその容器を何に使用するかは第二義的にしかすぎず、問屋・小売店、及び一般消費者は債権者容器・債務者容器をバター飴の容器として考えて商品を購入するのであり、容器を花びんに使用するかタバコの吸殻入れとして使用するかを考えて商品を購入するのではない。
一〇又原決定は債務者容器の蓋の部分は債務者が創意工夫してタバコの吸殻入れにしたと判断しているが、債務者と同じく蓋の部分がタバコの吸殻入れになつた容器は既に北誉が同容器にバター飴を入れて「クリーンセブン」として製造販売しているもので、債務者の創意工夫によるものではない。
一一いずれにしても債権者商品と債務者商品との間には誤認混同の虞れがあることは明らかである。
第四以上の理由により抗告の趣旨記載の通り決定を求める。
仮処分決定一相手方は本命令送達の日から別紙(三)(四)表示のステンレス製牛乳缶型容器をバター飴の容器として使用し、同容器を使用したバター飴製品の製造・販売・頒布してはならない。
二相手方にある別紙(三)(四)表示のステンレス製牛乳缶型容器、及び同容器を使用したバター飴製品に対する相手方の占有を解いて抗告人の申立てた執行官にその保管を命ずる。
この場合において執行官はその保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。
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