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事件 昭和 46年 (ワ) 5813号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1973/03/09
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 被告大平眼鏡株式会社は、別紙第二目録および同目録説明書記載の眼鏡枠を製造販売してはならない。
被告株式会社オプ・アートは、右眼鏡枠を販売してはならない。
被告大平眼鏡株式会社は、原告に対し、金一、一九三万七、〇八八円およびこれに対する昭和四六年七月一七日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
被告株式会社オプ・アートは、原告に対し、金二一三万七、八八六円およびこれに対する昭和四六年七月一七日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
原告の被告大平眼鏡株式会社に対するその余の請求を棄却する。
訴訟費用は、これを三分し、その一を原告、その余を被告らの負担とする。
この判決は、第三、第四項に限り、原告において、被告大平眼鏡株式会社に対し金四〇〇万円、被告株式会社オプ・アートに対し金七〇万円の担保を供するときは、
当該被告に対し仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告の申立1 主文第一、第二、第四項同旨2 被告大平眼鏡株式会社は、原告に対し、金二、八〇二万八、七二八円および内金一、三一八万八、七二八円に対する昭和四六年七月一七日以降、内金一、四八四万円に対する昭和四七年二月二二日以降各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決ならびに金員支払部分につき仮執行の宣言を求める。
二 被告の申立1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
との判決を求める。
請求原因
一 不正競争防止法第1条に基づく請求1 原告の営業およびその商品 原告は、眼鏡枠メーカーとして、世界的に著名なフランスの会社であり、昭和三〇年以降、別紙第一目録および同目録説明書記載の眼鏡枠(以下「原告製品」という。)を製造販売し、昭和四四年一月以降、これを日本に輸出販売している。
2 原告製品の構成 原告製品は、別紙第一目録および同目録説明書記載のとおり、レンズを保持するナイロン糸(1)(番号は、以下、
原告製品については、別紙第一目録および同目録説明書の、被告製品については、
別紙第二目録および同目録説明書の各表示による)。およびレンズを固定させる金属枠(2)に埋め込まれたナイロンクツシヨンを有することを特徴として(そのためにレンズの形状を自由に選択できるとともに眼鏡全体を軽量化できる。)、つる(3)と金属枠(番号を付さない金属枠は、右金属枠(2)と異なり、前枠(4)と金属枠(2)とに挟まれた金属部分を指す。以下同じ。)を蝶番(5)で止め、
折りたたみ自在とし、左右の前枠(4)をブリツジ(6)と一連になつている金属枠にねじ止めして結合させ、更に、金属枠(2)の下方にパツド(7)を有してなる眼鏡枠である。
3 原告製品の形態の周知性 原告製品は、市販価格が一本約一万二〇〇〇円で、いわゆる舶来高級品に属し、
訴外株式会社保谷レンズ(以下「保谷レンズ」という。)が、日本国内に専属的に輸入し、株式会社保谷硝子(以下「保谷硝子」という。)が、日本国内における販売を担当し、「NYLOR」の商標(出願昭和四四年六月二五日、公告昭和四五年一二月三日、登録昭和四六年一一月二七日、登録番号第九三八、二四四号、指定商品第二三類眼鏡わく等)の下に、その販売のため、多大の費用をかけて宣伝したこと、昭和四六年当初ころまでに、日本国内において、約二二万本の販売実績を挙げたこと、これらに原告会社の既存の世界的著名性、原告製品の形態の特異性などが相まつて、原告製品の形態は、原告製品の販売について、原告の商品であることを示す表示として、昭和四六年当初には、日本全国にわたつて、取引者および需要者間に広く認識されるに至つた。
4 被告らの営業およびその商品 被告大平眼鏡株式会社(以下「被告大平」という。)は、眼鏡枠の製造販売を業とする会社であり、被告株式会社オプ・アート(以下「被告オプ・アート」という。)は、眼鏡枠の卸商であり、被告大平は、昭和四六年三月以降、別紙第二目録および同目録説明書記載の眼鏡被(以下「被告製品」という。)を製造販売し、被告オプ・アートは、右日時以降、被告大平から被告製品を購入し、これを小売店等に販売している。
5 被告製品の構成 被告製品は、別紙第二目録および同目録説明書記載のとおり、レンズを保持するナイロン糸(1)およびレンズを固定させる金属枠(2)に埋め込まれたナイロンクツシヨンを有することを特徴とし、つる(3)と金属枠を蝶番(5)で止め、折りたたみ自在とし、左右の前枠(4)をブリツジ(6)と一連になつている金属枠にねじ止めして結合させ、更に、金属枠(2)の下方にパツド(7)を有してなる眼鏡枠である。
6 原告製品と被告製品の混同(一) 被告製品は、原告製品の特徴であるレンズ保持用ナイロン糸(1)およびナイロンクツシヨンを有する点で原告製品と同一であり、そのほか、つる(3)、
金属枠(2)、前枠(4)、ブリツジ(6)、バツド(7)等の形状、つる(3)、および前枠(4)のねじ止めの方式までも原告製品と共通であり、商品全体の形態において、原告製品とほぼ同一である。
(二) 普通一般の眼鏡枠は、枠自体に溝が設けられており、レンズを枠に合わせるため、レンズの周囲を切削して、レンズを枠にはめ込む構造になつている。ところが、原告製品は、この既存の眼鏡枠の観念を一新し、全く別の構成としたものであつて、枠には溝を作らず、レンズに溝を設け、レンズの上部と接する金属枠(2)の部分に、ナイロンクツシヨン、すなわち、ナイロン糸を平たくして半分程金属枠(2)にはめ込んで固定した凸部を作り、この外部に突出しているナイロン糸の凸部にレンズの溝を合わせてレンズを固定し、レンズの他の周囲の溝は、別のナイロン糸(1)で保持する構造である。
被告製品は、原告製品の右構造と一致するものである。これに対し、既存のドイツのマルヴイツツ社製眼鏡枠は、ナイロン糸をレンズ保持用として使用する点では、原告製品と同一であるが、レンズと枠との結合は、従来の一般的方法をそのまま採用し、枠に溝を設けて、それにレンズをはめ込むものであるから、原告製品、
被告製品とは、明らかに構成を異にし、しかも、この種マルヴイツツ社製のものは、昭和三六年ころ、約五、〇〇〇本ほど日本国内に輸入されただけである。また、国産品でナイロン糸を用いた眼鏡枠として、石井製作所製のものがあるが、その構成は、右マルヴイツツ社製のものと全く同じであるから、原告製品とは、構成を異にするものであり、そして販売本数にしても、微微たるものであつた。更に、
右マルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠は、つるの部分その他各部の形状が、
原告製品と相違し、全体的形態において、相違する。そのほか、原告製品と形態において類似する眼鏡枠は存しない。
(三) 被告製品は、問屋、小売店で、「OPナイロール」、「オプ・アートナイロール」と称呼、表示されて販売されており、このことは、被告製品が、「ナイロール」の商標の下に、その形態において周知である原告製品の代替品として、販売されていることを示している。
(四) 右(一)ないし(三)のとおりであつて、被告らによる被告製品の製造販売行為は、被告製品を原告製品であるかのように、取引者および需要者誤認混同を生じさせている。
7 営業上の利益侵害 原告製品と被告製品とは、市場において、ほぼ完全な競合関係にあり、被告製品が原告製品と混同されることにより原告はその営業上の利益を現に害され、また、
今後継続して害されるおそれがある。
3 差止請求 よつて原告は、不正競争防止法第1条第1項第1号に基づき、被告大平に対し被告製品の製造販売の、被告オプ・アートに対しその販売の各行為の差止を求める。
なお、原告は、第一次的には、原告製品のレンズ保持用ナイロン糸およびナイロンクツシヨンを有する点の特徴(前記請求原因一2前段参照)をもつて原告の商品形態とし、第二次的に原告製品全体の形態(同後段参照)をもつて原告製品の形態と主張する。
二 不正競争防止法第1条の2に基づく請求1 侵害行為 被告大平は、被告製品の製造販売が、被告オプ・アートは、被告製品の販売が、
前記一に述べる不正の競業になることを知り、または、知りえたのに過失により知らないで、昭和四六年三月以降、右各行為をして、原告の営業上の利益を害したものであるから、被告らは、原告に対し、右各行為によつて原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。
2 損害 原、被告は、市場において原、被告製品の販売につき、完全なる競業関係にあり、被告製品は、原告製品の代替品として販売されているから、少くとも、被告らが、被告製品の販売により挙げた利益が、原告が被告らの行為により被つた損害というべきである。そして、被告らが、被告製品の販売によつて挙げた利益は、次のとおりである。
(一) 被告大平が、被告製品の販売によつて挙げた利益(1) 被告大平は、被告オプ・アートに対し、昭和四六年三月一日から昭和四六年六月三〇日までの間に、被告製品を四、七〇九本販売したが、一本当りの製造原価が金七五二円(材料費金二六二円、加工人件費金三四〇円、一般管理費右合計額金六〇二円の二五パーセントに当る金一五〇円の合算額)、販売価格が金一、八一二円であるから、利益額が一本当り右販売価格から右製造原価を控除した金一、〇六〇円となり、これに前記販売本数四、七〇九を乗じた金四九九万一、五四〇円が、被告大平が、被告オプ・アートに対し、右期間、被告製品を販売して挙げた利益額である。
(2) 被告大平は、被告オプ・アート以外の者に対し、昭和四六年三月一日から昭和四六年六月三〇日までの間に、被告製品を六、〇八一本販売したが、一本当りの製造原価が前記のとおり金七五二円、販売価格が金二、一〇〇円であるから、一本当りの利益が、右販売価格から右製造原価を控除した金一、三四八円となり、これに前記販売本数六、〇八一を乗じた金八一九万八、一八八円が、被告大平が、被告オプ・アート以外の者に対し、右期間、被告製品を販売して挙げた利益額である。
(3) 被告大平は、被告オプ・アートその他の者に対し、昭和四六年七月一日から昭和四七年一月三一日までの間に、少くとも、月平均二、〇〇〇本、合計一万四、〇〇〇本の被告製品を販売したが、一本当りの製造原価が前記のとおり金七五二円、販売価格は少くとも金一、八一二円を下らないから、利益は少くとも右販売価格から右製造原価を控除した金一、〇六〇円となり、これに前記販売本数一万四、〇〇〇を乗じた金一、四八四万円が、被告大平が、被告オプ・アートその他の者に対し、右期間、被告製品を販売したことによつて挙げた利益額である。
(4) 右(1)ないし(3)のとおりであるから、結局、被告大平が、被告製品の販売によつて挙げた利益は、総額金二、八〇二万八、七二八円である。
(二) 被告オプ・アートが、被告製品の販売によつて挙げた利益は、次のとおりである。すなわち、被告オプ・アートは、被告大平から、昭和四六年三月一日から昭和四六年六月三〇日までの間に、被告製品を一本当り金一、八一二円で、四、七〇九本購入し、これを金二、三八〇円で販売したから、売買差益は、金五六八円となるが、これからその二〇パーセントに当る人件費、一般管理費計金一一四円を控除した金四五四円が一本当りの利益額となり、これに前記販売本数四、七〇九を乗じた金二一三万七、八八六円が、利益額となる。
3 損害賠償請求 よつて、原告は、不正競争防止法第1条の2第1項に基づき、被告大平に対し、
金二、八〇二万八、七二八円および内金一、三一八万八、七二八円(前記2、
(一)、(1)、(2)の合算額)に対する訴状送達の日の翌日である昭和四六年七月一七日以降、内金一、四八四万円(前記2、(一)、(3)の金額)に対する請求拡張の申立書が被告大平に到達した日の翌日である昭和四七年二月二二日以降各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、被告オプ・アートに対し、金二一三万七、八八六円およびこれに対する訴状送達の日の後である昭和四六年七月一七日以降支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める。
請求原因に対する被告らの答弁および主張
一1 請求原因一、1のうち、原告が、原告製品を製造販売する会社であり、昭和四六年ころから、日本国内において、これを販売していることは認めるが、その余の事実は知らない。
2 同一、2のうち、原告製品の構成が、別紙第一目録および同目録説明書記載のとおりであり、レンズの形状を自由に選択できるものであることは認めるが、原告製品に、原告主張のような特徴があるとの点は否認する。
3 同一、3のうち、原告製品が、舶来品で、その市価が一本当り金一万二、〇〇〇円であること、原告製品について、「NYLOR」の表示が用いられていることは認めるが、保谷レンズ、保谷硝子が原告主張のような輸入、宣伝等をしたことは知らないし、その余の事実は否認する。
4 同一、4のうち、被告オプ・アートが被告製品を小売店に販売していることは否認する。その余の事実は、認める。
5 同一、5は認める。
6(一) 同一、6、(一)のうち、被告製品が、レンズ保持用ナイロン糸(1)およびナイロンクツシヨンを有する点で、原告製品と同一であることは認めるが、
その余の事実は否認する。前枠、金属枠、ブリツジ・パツドの形状等は、被告製品にかぎらず、おおむねの眼鏡枠に共通のものであり、原告製品の形態が特有のものではない。
(二) 同一、6、(二)のうち、原告製品、被告製品、マルヴイツツ社製品、石井製作所製品の構造が、原告主張のとおりであることは認めるが、その余の事実は否認する。
(三) 同一、6、(三)、(四)は否認する。
7 同一、7は否認する。
8 同二、は1否認する。
9 同二、2のうち、昭和四六年三月一日から同年六月三〇日まで被告大平が製造販売した数量、被告オプ・アートが販売した数量が原告主張のとおりであることは認めるが、その余の事実は否認する。被告大平が製造販売した被告製品の販売価格は、一本当り金一、五〇〇円で、被告製品のうちオプ・アート一〇一の製造原価は一本当り金一、四一七円、販売利益は金八三円、オプ・アート一〇二の製造原価は一本当り金一、三一七円、販売利益は金一八三円である。
二1 眼鏡枠は、眼鏡としての機能上、限られた形態を有するものであつて、眼鏡枠の形態自体は、原告の商品たることを示す表示とはなりえない。
仮に、原告製品の形態の特徴が、レンズを保持する縁の部分にナイロン糸を用いる点にあるとしても、そのような構造の眼鏡枠は、マルヴイツツ社製、石井製作所製のものに見られ、それらは、日本国内において、一〇年位前から市販されているのであつて、右形態は、原告製品のみの特徴ではない。したがつて、原告製品の右特徴から、原告製品の形態が、原告製品の主体を表示するとはいえない。
2 仮に、レンズに溝を設け、これに眼鏡枠をはめ込むところに、原告製品の特徴があるとしても、レンズに溝を設け、これに金属環をはめ込む形式のものが、戦前から存したものであり、戦後ナイロンを金属環に代えて使用するようになつたに過ぎない。ただ、従前のものは眼鏡枠のレンズ上部に対応する部分に溝を設けてレンズをはめ込んでいたのが、原告製品では、右部分を凸部として、溝を設けたレンズをこれにはめ込むようにしたものであつて、マルヴイツツ社製、石井製作所製のものと原告製品との相違は、眼鏡枠の上部が、レンズをはめ込む溝となつているか、
凸部となつているかの点のみである。ところが、この点の相違は、外形上覚知されるものではないから、形態上の相違とはいえない。したがつて、原告製品とマルヴイツツ社製、石井製作所製のものとの形態上の異同は、眼鏡枠のレンズの上部に対応する部分を除くその他の縁の部分に求めるほかはなく、そうすると、右各製品は、形態上類似していることになり、原告製品は、原告の商品であることを特徴付ける形態を有するとはいえず、その形態に、原告製品を表示するものとしての周知性が生ずる筈がない。
3 「NYLOR」という商標にも周知性はない。また、被告らにおいて、被告製品に「ナイロール」という商標を用いたことはないし、取引の実際においても、被告製品を「ナイロール」と称呼したこともない。その他、原告製品と被告製品とが混同するような表示を用いたこともない。
仮に、一部問屋筋で、被告製品について「OPナイロール」と表示したとしても、眼鏡枠の縁の部分について、ナイロールという呼名が使用されたに過ぎない。
ナイロンは、ポリアミド系合成樹脂を意味する普通名称で「ナイロール」は、ナイロンと末尾の一字が違うのみで、類似し、語呂のよさから、一部業者が、ナイロンを眼鏡枠の縁に用いる種類の眼鏡一般に用いた名称であつて、被告製品に限つたことではない。「ナイロール」には、商標としての特別顕著性がない。
4 原告製品と被告製品とは、高級舶来品と国産品の相違があつて、需要者において、混同する事実はない。
被告らの主張に対する原告の反論
商品の形態は、本来、その商品の有する機能を発揮させるのに適した形状をとるものであるが、当該商品が、多量に相当期間販売され、当該商品の形態が、商品の出所表示機能を果しているものであるときは、その形態は不正競争防止法第1条第1項第1号にいう「表示」に当るものというべきである。
二 被告らは、眼鏡枠に金属環を設け、これにレンズの周囲に溝を設けてはめ込むものが、戦前からあつた旨主張するが、これは、注文により極く限られた少数が、
手工業的に製造されたのみで、製造元も特定しておらず、製造日時も必ずしも明らかではないし、また、今日入手することは、非常に困難で、商品としての価値はほとんどない。右眼鏡枠に、商品性が肯定されているとしても、レンズの外周に溝を彫る点が似ている以外は、ナイロン糸、ナイロンクツシヨンを有しない点で相違し、その全形態においても、原告製品とは全く相違する。
三 被告らは、原告製品とマルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠との相違点は、ナイロンクツシヨンの有無のみで、この点の相違は、外形上覚知されないから、形態上の相違を来さない旨主張するが、仮に、ナイロンクツシヨンの有無が外見上明瞭な差異として現われないとしても、認識しうる範囲で、形態上の表示機能を果しているものであるところ、ナイロンクツシヨンの有無も右認識の範囲に入るから、ナイロンクツシヨンの有無は、眼鏡枠の形態上の特徴といえる。
四 「ナイロール」の称呼ないし表示は、マルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠に使用されたことはなく、原、被告製品にのみ使用されている。「ナイロール」は、登録商標で、原告に専用権があつて、他では使用できないものであり、仮に、
被告ら自身は、「ナイロール」の表示を用いていないとしても、問屋等の使用に対しては、製造者、販売者として、その使用を差止めて商品の混同を防止すべき責任があるのに、被告らは、右責任を怠つている。
五 被告製品は、原告製品と競合し、同等の代替品として販売されているのであつて、舶来品と国産品との相違があるからといつて、両者に誤認混同が生じないとはいえない。
証拠関係(省略)
理 由
不正競争防止法第一条に基づく請求について
一 原告製品の形態およびその周知性 原告が、原告製品を製造販売する会社であること、原告製品の構成が、別紙第一目録および同目録説明書記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。
ところで、原告は、右構成をもつ原告製品の形態が、不正競争防止法第1条第1項第1号所定の「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当する旨主張するから、まずこの点について判断する。
不正競争防止第1条第1項第1号の規定の趣旨は、広く認識された「他人ノ氏名、商号、商標、商品の容器包装其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」と同一または類似のものを使用するなどして、他人の商品混同を生ぜしめる行為を防止し、もつて右混同により営業上の利益を害されるおそれのある者を保護するにある。したがつて、「其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」とは、右法条に例示された氏名、商号、商標、商品の容器包装などと同様に、商品の出所表示の機能を有するものを指すと解すべきである。ところで、商品の形態は、もともと、その商品の目的とする機能を十分に発揮させるように選択されるものであつて、商品の形態の選択には自ずから右目的からくる一定の制約が存する。しかし商品の種類によつては、右制約の範囲内で需要者の嗜好の考慮、構成材料の選択などにより同種商品の中にあつて、形態上の特異性を取得する場合があるし、それに宣伝などが加わつて、商品の形態自体が、取引上、出所表示の機能を有する場合がある。そして、そのような場合には、前記不正競争防止法第一項第一号の規定の趣旨に照し、商品の形態自体、同法条にいう「其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するものといえることは明らかである。
そこで、原告製品の形態が、右法条にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するか否かについて、検討する。
前記認定事実にその成立について争いがない甲第六号証ないし第三〇号証、第三二号証、証人【A】の証言によりその成立を認める甲第三一号証、証人【B】、同【C】、同【D】、同【E】、同【F】、同【G】同【H】、同【A】、同【I】の各証言、被告オプ・アート代表者【J】本人尋問の結果、原告主張のとおりのものであることに争いがない検甲第一、第二号証、被告ら主張のとおりのものであることに争いがない検乙第一号証ないし第五号証、第六号証の一ないし四、第七号証を総合すると、次の事実が認められる。
1 原告製品は、レンズを保持するナイロン糸(1)、ナイロンクツシヨン、レンズの溝に合わせてレンズを保持する金属枠(2)、およびつる(3)、前枠(4)、蝶番(5)、ブリツジ(6)パツド(7)から構成され、ナイロン糸(1)と金属枠(2)とを連結し、つる(3)と左右の前枠(4)とを蝶番(5)で止め、折りたたみ自在とし、前枠(4)とブリツジ(6)とを一連にし、前枠(4)と金属枠(2)とをねじ止めにして結合し、金属枠(2)の下方に延びた金属棒にパツド(7)を付けた構造となつている。また、レンズを眼鏡枠に取り付ける際には、レンズの全周囲に溝を設けて、ナイロン糸(1)と、金属枠(2)にはめ込まれた凸部をなすナイロンクツシヨンとをレンズの溝にはめ込んで固定する。
2 ナイロン糸を使用した眼鏡枠は、原告製品の日本国内における販売前、次のものがあつた。
(一) 昭和三六年ころ日本国内に輸入販売されたマルヴイツツ社製の眼鏡枠。これは、金属枠にナイロンクツシヨン(凸部)がなく、金属枠が溝になつていて、レンズを眼鏡枠に取り付ける際には、ナイロン糸で固定される部分は、レンズに溝を設け、金属枠で固定される部分は、レンズに凸部を形成する。
(二) 昭和三五、六年ころ石井製作所で製造され、「サンライト」の商品名で販売された眼鏡枠。この眼鏡枠の構成は、右マルヴイツツ社製のものと同一である。
しかして、右マルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠は、ナイロン糸を使用している点で、原告製品と同一であるが、ナイロンクツシヨンがなく、かつ、日本国内における販売量も僅かであつた。
3 一〇数年前から、「溝安全」と称する眼鏡枠があり、これは、レンズの周囲に溝を設けたものであるが、レンズを固定するものが、針金状の金属環で構成されており、全体的形状において、原告製品と著しく相違するし、その製造販売者も明らかでなく、販売数も僅かであつた。
4 原告製品は、昭和三六、七年ころ、太陽眼鏡が、日本国内に輸入し、販売したが、販売数量も僅かで、一部業者に知られるに過ぎなかつた。
その後昭和四四年二月になつて、保谷レンズが、原告製品を独占的に日本国内に輸入し、保谷硝子が、独占的にこれを小売店に直接販売するようになり、右輸入数量は昭和四四年が六万八、四八五本、昭和四五年が一〇万一、五二四本、昭和四六年(六か月間)が一二万六、二〇一本となり、そして、保谷硝子が、その販売のため、テレビ、新聞、雑誌等で継続的に宣伝した(ただし新聞、雑誌による宣伝には原告製品が原告の製品である旨の表示はない)。
原告製品を販売する場合、それにはめ込むレンズは、その周囲に溝を彫る必要があるが、従来は、砥石を用いて溝を彫る方法が採られ、技術的にかなりの困難が伴つたが、原告が、溝彫機(グルービングマシン)を小売店に相当数量頒布したため、レンズの溝彫が容易となり、原告製品の販売数量の増大をもたらした。
また、原告は、「NYLOR」という商標(日本においては、昭和四四年六月二五日出願、昭和四五年一二月三日公告、昭和四六年一一月二七日登録である)。を原告製品の販売に使用してきたが、保谷硝子において、原告から、右商標の使用権の設定を設け、昭和四六年秋ころから、保谷レンズが製造した原告製品とは別形態のナイロン糸を用いた眼鏡枠とともに、原告製品に、「ナイロール」の表示を用いてこれを販売し、原告製品は、「ナイロール」の表示によつても知られるようになつた。
右「ナイロール」の表示の使用により、原告製品、保谷レンズ製品以外のナイロン糸を用いた眼鏡枠についても、「国産のナイロール」、「OPナイロール」(被告製品を指す)。
あるいは「べっ甲ナイロール」などと一部業者間に用いられるようになつた。
5 眼鏡枠の形態にも、流行があり、従前からある「ヘビーライン」と称される硬い、重い感じのものから、「ソフトライン」といわれる原告製品を含む柔かい、軽い感じのものが、漸次注目されるようになつた。
6 原告製品は、前記1のような形態を有するところ、ナイロン糸を使用した眼鏡枠は、前記2のとおり、他にも存したけれども、その販売数量が僅かであつたこと、全体的形態、重さ、手ざわり等が原告製品と相違することなどから、原告製品の形態の特異性が害なわれることもなく、原告製品は、ナイロンクツシヨンを有することを含むその形態の特異性に、その輸出販売数量、宣伝などが加わつて、遅くとも、昭和四六年三月ころには、日本全国にわたつて、眼鏡問屋、小売業者などにおいて、その形態は、原告の商品を示すものとして、広く知られるようになった。
以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。右事実によると、原告製品の形態自体不正競争防止法第1条第1項第1号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル・・・・・・他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するものというべきである。
7 被告らは、原告製品のナイロンクツシヨン部は、外見上覚知できないから、原告製品の形態上の特徴とはいえず、そうすると、原告製品とマルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠とは、形態上類似することになるので、原告製品の形態が、原告製品を表示するものとして周知となる筈がない旨主張するけれども、不正競争防止法第1条第1項第1号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に商品の形態が含まれる理由に関する前説示に照すと、商品の取引において、商品のある構成部分が、その商品の特徴の一つとして、取引者または需要者に認識されるものであれば、その構成部分をもつて、その商品の形態を構成するものと解すべきところ、前記認定によると、原告製品は、ナイロンクツシヨン部を有するところにも形態上の特徴があるとして、問屋、小売業者に認識されているのであるから、ナイロンクツシヨン部を原告製品の形態の一構成要素とみることを妨げないし、それに、前記マルヴイツツ社製、石井製作所製の眼鏡枠は、全体的形状において原告製品に類似するところがあるが、前認定のようにこれらの製品はわが国において僅かしか販売されなかつたのであるから、右両者の製品が過去において販売されたからといつて、
右事実は原告製品がその全体的形態において、原告製品の形態を示すものとしてわが国において著名であつたという前認定を覆すものではない。被告らの主張は理由がない。
また、被告らは「NYLOR」の商標にも周知性がなく、右商標が原告製品の形態の周知性取得に資するところがない旨の主張をするが、前記認定によると、「ナイロール」の表示も、原告製品が周知となつた一因であることが明らかであり、かえつて、そのために、他製品にも、「ナイロール」の表示が用いられたことも、前記の認定のとおりであるから、被告らの右主張も、採用することができない。
二 原告製品と被告製品との混同 前記一の認定に供した証人の証言、本人尋問の結果、検甲第一、二号証(証人【F】の証言中後記措信しない部分を除く)。ならびに証人【I】の証言によりその成立を認めうる甲第三五号証を総合すると、次の事実が認められる。
1 被告大平は、眼鏡枠の製造販売を業とする会社であり被告オプ・アートは、眼鏡枠の卸商であり、被告大平は被告製品を製造販売し、被告オプ・アートは、被告製品を販売しているところ、被告製品は、レンズを保持するナイロン糸(1)、ナイロンクツシヨンを設け、レンズの溝に合わせてレンズを保持する金属枠(2)、
つる(3)、前枠(4)、蝶番(5)、ブリツジ(6)およびパツド(7)からなる点で、原告製品と、その構成において同一であり(以上の事実は、当事者間に争いがない)。そして、ナイロン糸(1)と金属枠(2)とを連結し、つる(3)と左右の前枠とを蝶番(5)で止め、折りたたみ自在とし、前枠(4)とブリツジ(6)とを一連にし、前枠(4)と金属枠(2)とをねじ止めにして結合し、金属枠(2)の下方に延びる金属棒にパツド(7)を付けた構造である点も同一であり、相違点は、眼鏡のつるに付された表示が、原告製品では、「ESSEL ARC 86」となつているのに対し、被告製品では「Opart 101」(ただし、番号は一定していない。)となつていること、パツドの部分が、原告製品では、ナイロンで取り付けられているのに対し、被告製品では、金属でねじ止めされていること、つるの材質が異なることくらいで、その他つるの形状、前枠の形状、
ブリツジの形状、パツドの形状、(原告製品の方がやや長い)。などほとんど同一である。
2 眼鏡業者は、原、被告製品を手にとつて見れば、マーク、つるの材質、つるの復元力、手ざわりなどの相違から、両者を識別することができるが、眼鏡業者でも、やや離して見ると、その識別は困難なほどであつて、一般需要者においては、
両製品を手にとつて見ても、マークが別製品を示すものであることを知らない限り、その識別は全く困難であり、現に、被告製品を原告の商品として購入した例もある。
3 原告製品が、舶来品で、その市価が一本当り金一万二〇〇〇円である(この事実は、当事者間に争いがない。)のに対し被告製品は一本当り金八、五〇〇円ないし八、七〇〇円ていどで小売されていること、国産品の眼鏡枠と舶来品の眼鏡枠を同時に取り扱う小売店では、舶来品と国産品とは、別場所に区別して陳列されるのが一般であり、また、国産品の眼鏡枠は舶来品のそれに比べて価格が安いのが通常であるが、なかには大差ないもの、あるいは逆に高いものも存すること、小売店では、顧客に製品の特徴などの説明をして販売することもあるが、顧客は自分の気に入つた品物でさえあれば、それが国産品であるか舶来品であるかを問題にすることなく、したがつて小売店の方でも品物が国産品か舶来品かの説明などしない場合も多い。
以上の事実が認められ、右認定に反する証人【F】の証言部分は他の証拠に照したやすく信用することができないし、他に右認定を左右するにたる証拠はない。
右事実によると、被告らは、原告製品の形態ときわめて類似する形態を被告製品に使用して、これを販売し、もつて被告らの商品であるかのように、一般需要者をして混同を生ぜしめ、また、将来にわたつて生ぜしめるおそれを有するものというべきである。
被告らは、原、被告製品には、高級舶来品と国産品という相違があつて、需要者はこれを混同することはない旨主張し、証人【F】の供述中には被告らの右主張に沿う部分があるが、右部分は前記認定事実に徴して措信することができず、被告らの右主張は採用することができない。そもそも形態において周知性を獲得した他人の商品と同一または類似の形態を有する商品を製造販売することは、それ自体で他人の周知商品との混同を生ぜしめる行為であるといえるのであつて、価格の開きが極端であるとか、一見して模造品であることが分るような粗悪品であるとかいうような特別の事情のないかぎり、僅かの価格の違いや、国産品と舶来品との相違とかいうようなものは、両者の間の混同を生じさせないものということはできないのである。
営業上の利益を害されるおそれ 前記のとおり、被告製品と原告製品は一般需要者に、混同されるおそれがあり、
現に、混同した事実もあるから、右混同により原告はその営業上の利益を害されるおそれがあることは、明らかである。
差止請求 以上のとおりであるから、原告の被告らに対する不正競争防止法第1条第1号に基づく差止請求は、その理由がある。
不正競争防止法第一条の二に基づく請求について
侵害行為 被告らが、不正競争防止法第1条第1項第1号該当の商品混同行為をなしたことは、前記第一の判断のとおりである。
そして、被告オプ・アート代表【J】本人尋問の結果によると、被告らは、太陽眼鏡が昭和三六、七年ころ原告製品を日本国内に輸入し販売したころから、原告製品の形態を認識していたこと、そのうえで、被告大平において昭和四五年九月ころから被告製品を製造販売し、被告オプ・アートにおいてそのころからこれを販売してきたことが認められるところ(他に右認定を履すにたる証拠はない。)前記のとおり、被告らは、被告製品に、原告製品の形態ときわめて類似した形態を使用したのであるから、被告らの右商品混同行為は、少くとも、被告らの過失によるものというべきである。
次に、原告が、被告らの右混同行為により営業上の利益を害されたことは、前記第一の判断から明らかである。
そうすると、被告らは、原告に対し、右行為により原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。
二 損害 原告は、原、被告らが、市場において、原、被告製品の販売について、完全なる競業関係にあり、被告製品は、原告製品の代表品として販売されているから、少くとも、被告らが、被告製品の販売により挙げた利益が、原告が被告らの行為により被つた損害というべきである旨主張するので、この点について以下判断する。
不正競争防止法には、不正競争行為によつて受けた損害の額の算定に関し、特許法第102条、実用新案法第29条、意匠法第39条、商標法第38条、著作権法第114条のような規定はない。そこで、形式的には、損害賠償を請求するものの方で、民法の一般不法行為理論により、自己の被つた損害の額を立証しなければならないことになる。しかしながら、営業上の利益および損失はあらゆる経済的、社会的要因が複雑にからみ合つて発生して来るものであつて、ある事実からこれだけの利益または損失が発生したというようなことは確定しうるものではない。このことは、他人の不正競争行為によつて被つた損害についても同じように言えることである。そうであるとすれば、民法の一般不法行為理論に立脚するかぎり、不正競争防止法による損害賠償請求は、事実上立証困難の故に、常に棄却を免れないことになる。
前記特許法等の条文は、営業関係におけるこのような不公平な事態を避けるために設けられたものであつて、この趣旨は、立法技術等の関係から設けられなかつたとも推測できる不正競争防止法にも類推適用すべきものであると考える。
そうではなく、損害の算定、立証についても民法の不法行為の一般原則で行くということであれば、なんのために不正競争防止法に第1条の2のような規定を設けたのか理解できなくなる。
以上のとおりであるとすれば、他人の不正競争によつて被つた損害の算定については、原告が主張するような侵害者の不正競争行為によつて得た利益を基準とすることも、そうすることが特に背理であるような特段の事情が認められないかぎり、
採用可能な方法の一つであり(商標法第38条第1項、著作権法第114条第1項等参照)、この場合、侵害者の利益が侵害行為と無関係であることその他特段の事情についての反証は、侵害者の方で提出すべきものであると考える。
そこで、次に、右特段の事情の存否について検討する。
原、被告製品と類似する眼鏡枠として、マルヴイツツ社製、石井製作所製のものがあることは、前記第一、一の認定のとおりであるところ、証人【B】、同【D】の各証言、被告オプ・アート代表者【J】本人尋問の結果によると、石井製作所製の眼鏡枠については、僅少ではあるが、現在でも市場に出ていることが認められるけれども、その販売数量、販売額等を認めるにたる証拠はない。
そうすると、石井製作所製の眼鏡枠が存在するからといつて直ちに、被告らが本件不正競争行為によつて得た利益が原告の損害でないとする特段の事情についての反証があつたものとすることはできず、その他の特段の事情の存在については被告らの主張立証しないところである。
そうすると、本件においては、被告らの得た利益をもつて原告の被つた損害であると推認することができる。
そこで、進んで、被告らの利益について判断する。
1 被告大平が、被告製品の販売によつて挙げた利益について(一) 被告大平が、被告オプ・アートに対し、昭和四六年三月一日から同年六月三〇日までの間に、被告製品を四、七〇九本販売したことは、当事者間に争いがない。
そして、前記甲第一、第二号証、第三五号証ならびに証人【I】の証言を総合すると、被告製品の一本当りの製造原価は金八六八円、被告オプ・アートに対する販売価格が金一、八一二円であることが認められ、右認定に反する被告オプ・アート代表者【J】の供述部分は、前掲証拠に照したやすく信用することができないし、
他に右認定を左右するにたる証拠はない。
そうすると、利益額が、一本当り右販売価格から右製造原価を控除した金九四四円となり、これに前記販売本数四、七〇九を乗じた金四四四万五、二九六円が、被告大平が、被告オプ・アートに対し、右期間、被告製品を販売して挙げた利益である。
(二) 被告大平が、被告オプ・アート以外の者に対し、昭和四六年三月一日から同年六月三〇日までの間に、被告製品を六、〇八一本販売したことは、当事者間に争いがない。
そして、製造原価が一本当り金八六八円であることは、右認定のとおりであり、
かつ、右認定に供した証拠によると、販売価格が一本当り金二、一〇〇円であることが認められるから、一本当りの利益が、右販売価格から右製造原価を控除した金一、二三二円となり、これに前記販売本数六、〇八一を乗じた金七四九万一、七九二円が、被告大平が、被告オプ・アート以外の者に対し、右期間、被告製品を販売して挙げた利益額である。
(三) 原告は、被告大平が、被告オプ・アートその他の者に対し、昭和四六年七月一日から昭和四七年一月三一日までの間に、少くとも、月平均二、〇〇〇本合計一万二、〇〇〇本の被告製品を販売した旨主張するところ、被告大平の眼鏡枠の月産数量が一万二、〇〇〇本であるとの証人【I】の供述部分が存するけれども、右供述部分のみからは、被告製品の月産本数が平均二、〇〇〇本であると認めるに由ない。
また、前記(一)、(二)の判断によると、被告大平は、昭和四六年三月一日から同年六月三〇日までの間には、月間ほぼ二、〇〇〇本の被告製品を販売したことが明らかであるが、そのことから直ちに、昭和四六年七月一日から昭和四七年一月三一日までの間においても、月平均二、〇〇〇本の被告製品を販売したと推認することは困難である。その他月産本数を認めるにたる証拠はない。
そうすると、原告の右主張は、理由がないことに帰する。
(四) 右(一)ないし(三)のとおりであるから、被告大平が、被告製品の販売によつて挙げた利益は、総額金一、一九三万七、〇八八円となる。
2 被告オプ・アートが、被告製品によつて挙げた利益について 被告オプ・アートが、昭和四六年三月一日から同年六月三〇日までの間に、被告製品を四、七〇九本販売したことは、当事者間に争いがない。
前記1の認定に供した証拠によると、被告オプ・アートは、被告大平から、被告製品を一本当り金一、八一二円で購入し、これを金二、三八〇円で販売したこと、
一般管理費が金一一四円であることが認められ、右認定に反する被告オプ・アート代表者【J】の供述部分は、前掲証拠に照したやすく信用することができないし、
他に右認定を覆するにたる証拠はない。
右事実によると、右販売価格金二、三八〇円から右仕入価格金一、八一二円と一般管理費金一一四円の合計額金一、九二六円を控除した金四五四円が、一本当りの利益額となり、これに前記販売本数四、七〇九を乗じた金二一三万七、八八六円が、利益総額となる。
損害賠償請求 よつて、原告の不正競争防止法第1条の2に基づく損害賠償請求は、被告大平に対しては、金一、一九三万七、〇八八円およびこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和四六年七月一七日以降支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損金の支払いを求める限度において理由があるので、これを認容し、その余を棄却することとし、被告オプ・アートに対しては、請求全部について理由があるので、これを認容することとする。
結論
以上のとおりであるから、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第89条第92条本文、第93条第1項本文、仮執行の宣言について、同法第196条第1項を各適用し、主文のとおり判決する。
裁判官 高林克已
裁判官 野沢明
裁判官 清永利亮