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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ23171損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
昭和60ワ4131秘密保持義務存在確認等請求事件 判例 不正競争防止法
平成15ネ1010損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成13ワ26301損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
平成13ワ2935営業秘密使用禁止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 信義則 /  類似性(類似) /  呼称 /  観念 /  記憶 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  過失 /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  秘密保持義務 /  有用性 /  営業上の情報 /  非公知性 /  営業秘密 /  2条1項7号 /  2条1項8号 /  保有者 /  不正開示行為 /  プログラム / 
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事件 平成 16年 (ワ) 25297号 営業行為差止請求事件
東京都渋谷区<以下略>
原告 平成電電株式会社
訴訟代理人弁護士 若林弘樹
同檜山聡
同浅井孝夫
同池添崇正 東京都中央区<以下略>
被告 ソフトバンク株式会社東京都中央区<以下略>
被告 日本テレコム株式会社
上記両名訴訟代理人弁護士 中村直人
同角田大憲
同松本真輔
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/03/30
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
1 被告ソフトバンク株式会社は,別紙営業秘密目録1ないし3,4@,5@,6及び7記載の各営業秘密を開示してはならない。
2 被告日本テレコム株式会社は 「おとくライン」と称する固定電話サービス ,を販売してはならない。
事案の概要
本件は,原告が,いわゆる回線交換方式による直収電話サービスに関する営業秘密を被告ソフトバンク株式会社ほか2社に開示したところ,同被告ほか2社が,同営業秘密を被告日本テレコム株式会社に不正に開示し,同被告がその営業秘密を不正に利用して原告と同様の電話サービスを提供しているとして,被告ソフトバンク株式会社に対しては,当該営業秘密の開示の差止めを,被告日本テレコム株式会社に対しては,原告の営業秘密を不正に使用した電話サービスの販売差止めをそれぞれ求めている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定され。,。 ) る事実 証拠により認定した事実については該当箇所末尾に証拠を掲げた()当事者1ア 原告は,電気通信事業等を目的とする株式会社である。
なお,原告は,平成17年10月3日,東京地方裁判所に対し,民事再生法に基づく再生手続開始の申立て(平成17年(再)第159号)を行い(甲67 ,同年10月17日,再生手続開始決定を受けた(甲68 。 ))イ 被告ソフトバンク株式会社(以下「被告ソフトバンク」という )は,。
電気通信事業等を営む会社の事業活動を支配及び管理することなどを目的とする株式会社である。
ウ 被告日本テレコム株式会社(以下「被告日本テレコム」という )は,。
電気通信事業等を目的とする株式会社である。被告日本テレコムは,被告ソフトバンクのいわゆる100%子会社である。
( ) 原告が提供している電話サービス 2ア 原告は,遅くとも平成15年11月ころから,加入者宅からの電話回線を,日本電信電話株式会社グループの地域会社である東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という )及び西日本電信電話株式会社(以 。
下 「NTT西日本」といい,NTT東日本とまとめて単に「NTT」と ,もいう )の交換機を通さずに,原告の交換設備に直接収容して利用者に 。
提供する固定電話サービスである回線交換方式による直収電話サービスを提供している(開始当初の名称は「平成電話」であり,現在の名称は「CHOKKA」である。以下「原告サービス」という 。。)イ 直収電話サービスとしては,現在,原告サービスと同様の回線交換方式のほか,@一部のCATV事業者が自社のCATVケーブルを利用して提供する回線交換方式による直収電話サービス,Aいわゆる新電電会社が自社またはNTTの専用線を利用して提供する回線交換方式による直収電話サービス,BいわゆるDSL事業者がNTT加入者線を利用して提供するIP電話(パケット交換)方式による直収電話サービスがある。
( ) 原告と被告ソフトバンクの資本提携交渉などについて 3ア 原告は,他社との資本提携を検討していたところ,平成16年3月30日,原告のアドバイザーであった大和証券エスエムビーシー株式会社の打診を受けた被告ソフトバンク代表取締役から原告の事業に強い関心がある旨の連絡を受けたことから,同被告との間で資本提携交渉を開始することになり,同年4月2日,資本提携交渉等の過程において相互に開示する情報の取扱いについて,同被告と秘密保持契約を締結した(以下「本件秘密保持契約」という 。同契約において,情報受領者は,情報開示者の事 。)前の書面による承諾なく,情報開示者から開示を受けた秘密情報を第三者(本件秘密保持契約当事者以外の一切の者)に開示又は漏洩してはならない旨が定められていた(3条1項。ただし,4条2項によりソフトバンク〔,「」。〕。)。 BB株式会社 以下 ソフトバンクBB という は除外されていたイ 原告は,資本提携交渉において,被告ソフトバンクに対し,原告の事業内容等を説明するなどした。また,被告ソフトバンクは,平成16年5月3日から同月20日ころまでの間,原告の福岡本部において原告に関する詳細な調査(デュー・デリジェンス。以下「本件調査」という )を行っ。
た。同調査において,原告の事業内容や財務内容が被告ソフトバンクに開示された(甲3,5,6 。原告は,同調査において,被告ソフトバンク )に対し,原告が主張する別紙営業秘密目録1ないし3,4@,5@,6,7記載の営業秘密(後記のとおり,同目録記載の各営業秘密が不正競争防止法上の営業秘密に該当するか否かについては当事者間に争いがある。以,,「」。 下 同目録記載の営業秘密を それぞれ本件営業秘密1 のようにいうまた,各秘密を総称して 「本件各営業秘密」という )の一部について ,。
開示した。
ウ 被告ソフトバンクは,平成16年5月25日,原告に対し,原告を買収しない旨の申入れをした。
( ) 被告日本テレコムによる同種サービスの提供 4被告ソフトバンクは,平成16年7月30日,直収電話サービスを提供するため,被告日本テレコムの全株式を取得し,被告日本テレコムは,被告ソフトバンクの100%子会社となった。被告日本テレコムは,その1か月後の同年8月30日 「おとくライン」との名称で回線交換方式による直収電 ,話サービス(以下「被告サービス」という )を同年12月1日から開始す 。
る旨発表し,実際に同サービスを提供している(甲8ないし10,12 。)2争点( ) 本件営業秘密1は営業秘密に当たるか(争点1 。 1 )ア 本件営業秘密1の有用性(争点1-1)イ 本件営業秘密1の非公知性(争点1-2)ウ 本件営業秘密1の秘密管理性(争点1-3)( ) 本件営業秘密2は営業秘密性に当たるか(争点2 。 2 )ア 本件営業秘密2の有用性(争点2-1)イ 本件営業秘密2の非公知性(争点2-2)ウ 本件営業秘密2の秘密管理性(争点2-3)( ) 本件営業秘密3は営業秘密に当たるか(争点3 。 3 )ア 本件営業秘密3の有用性(争点3-1)イ 本件営業秘密3の非公知性(争点3-2)ウ 本件営業秘密3の秘密管理性(争点3-3)( ) 本件営業秘密4は営業秘密に当たるか(争点4 。 4 )ア 本件営業秘密4の有用性及びその帰属主体(争点4-1)イ 本件営業秘密4の非公知性(争点4-2)ウ 本件営業秘密4の秘密管理性(争点4-3)( ) 本件営業秘密5は営業秘密に当たるか(争点5 。 5 )ア 本件営業秘密5の有用性及びその帰属主体(争点5-1)イ 本件営業秘密5の非公知性(争点5-2)ウ 本件営業秘密5の秘密管理性(争点5-3)( ) 本件営業秘密6は営業秘密に当たるか(争点6 。 6 )ア 本件営業秘密6の有用性(争点6-1)イ 本件営業秘密6の非公知性(争点6-2)ウ 本件営業秘密6の秘密管理性(争点6-3)( ) 本件営業秘密7は営業秘密に当たるか(争点7 。 7 )ア 本件営業秘密7の有用性(争点7-1)イ 本件営業秘密7の非公知性(争点7-2)ウ 本件営業秘密7の秘密管理性(争点7-3)( ) 本件営業秘密2,3,4@,5@,6及び7は,一体として営業秘密に当 8たるか(争点8 。)ア 一体としての営業秘密有用性(争点8-1)イ 一体としての営業秘密非公知性(争点8-2)ウ 一体としての営業秘密秘密管理性(争点8-3)( ) 本件各営業秘密不正開示行為及び不正使用の有無(争点9) 9ア 被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する不正開示行為の有無(争点9-1)イ 日本電気株式会社( 以下「NEC」という )及びルーセント・テク 「。
ノロジー社(以下「ルーセント」という)による被告日本テレコムに対 。
する不正開示行為の有無(争点9-2)ウ 被告日本テレコムによる不正使用行為の有無(争点9-3)( ) 本件各営業秘密不正開示行為及び被告サービスの各差止めの必要性 10(争点10)
争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件営業秘密1は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点1-1(本件営業秘密1の有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密1の内容は,別紙営業秘密目録1記載のとおりである。本件各営業秘密は,従来NTTが独占していた加入者線の回線交換方式による固定電話サービスを,NTT以外の事業者(以下「他事業者」ということがある )により提供可能とする原理(本件営業秘密1)と,当該サー 。
ビスを国内で初めて実施するに当たって必要な手段ないし方法(本件営業秘密2ないし7)により構成される。NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(電話回線網を構成する加入者回線のうち,未使用の回線であるいわゆるドライカッパーを借り受けることをその前提とする )の電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を含む全周 。
波数帯域をNTTから借り受け,同メタル(端末)回線において電話音声帯域を使用して回線交換方式による直収電話サービスを提供するには,制度上,技術上種々の制約があり,原告サービスが提供されるまで,ビジネスモデルとして検討した他事業者はなく,採算上の見通しもなかった。原告は,原告サービスを提供するため,独自に回線交換方式による直収電話サービスについて検討し,それらの制約を初めて克服した。現在においても,原告及び被告日本テレコム以外の他事業者は,回線交換方式による直収電話サービス提供における制約の克服方法(本件各営業秘密)を知らないのであるから,本件各営業秘密は極めて高いビジネス的価値を有している。だからこそ,被告らは,本件調査により入手した本件営業秘密1を用いて被告サービスを提供しているのである。
イ 本件営業秘密1の原理に基づく直収電話サービスを提供した場合の事業者のメリットは以下のとおりであって,本件営業秘密1には極めて高い有用性が認められる。
) 他事業者は,電話加入者から,NTTに代わって,独自に設定した基 a本料金の支払を受けることが可能となる(いわゆるADSL〔asymmetric digital subscriber line〕サービスと異なり,ドライカッパーはNTT以外の他事業者の交換設備に直接収容され,NTTの交換設備を通さないので,電話加入者は,NTTに対して基本料金を支払う必要がない 。原告サービスは,平成1 。)1年のドライカッパー開放後もNTTが維持していた電話サービスの独占を打破するという大きな意義を有していた。
) 原告サービス利用者同士の通話では,NTTに対する接続料の支払は b不要である。また,NTTの固定電話サービス利用者から原告サービス利用者に対して発信する場合,原告の交換設備を経由することから,接続料(着信料)収入を得ることができる。
) 既に敷設されているドライカッパーを借り受けるから,専用線による c電話サービスなどと比較して設備投資費用も低額である。また,CATVケーブルを利用しないため,サービス提供範囲も限定されない。
) NTTの従来からの固定電話サービスと同様の品質及び付加機能(発 d信番号通知,キャッチホンなど)が利用できるほか,番号ポータビリティ(従来使用していたNTT固定電話の電話番号を原告サービス加入後もそのまま使用すること)を提供することが可能である。したがって,通話品質が劣るパケット交換方式によるIP電話,音声の品質確保が困難であること等から0AB〜J番号(市外局番+市内局番+加入者番号で構成される通常の番号。電気通信番号規則9条参照 )が割り当てら。
れていないDSL回線を用いたIP電話より,競争上優位である。
) ドライカッパーの全周波数帯域を借り受けることにより,DSL回線 eIntegrated Services Digital を用いたIP電話では提供できないISDN()サービスも提供することができ,回線使用頻度の高い法人顧 Network客に対するサービス提供が可能となる。
ウ 被告らは,被告日本テレコムなどが提供してきた専用線電話サービス( リンクITJ 「クイックライン)と原告サービスは,ドライカッ 「」,」パーを利用するか専用線を利用するかの違いであって,その仕組みは基本的にはほとんど同じであるし,そのほかにもIP電話等の類似する電話サ,( , ) , ービスが存在していることや 各種文献 乙1ないし乙4 乙24など及び公開特許公報(乙25)などを例示して,本件営業秘密1が公知であって,有用性が存しないと主張する。しかし,専用線電話は 「専用線」,を用いることから,機器構成が本件営業秘密1により開示された原理とはまったく異なるし,NTTと利用者が契約関係に立つことからも明らかなとおり,専用線を利用したサービスと本件営業秘密1を用いた直収電話サービスは明らかに異質なサービスである。しかも,被告日本テレコムが提供しているクイックラインサービスは,同被告の加入者線収容装置から遠くても30キロメートル以内に事務所を構える大規模法人顧客のみを想定したサービスであるという点も異なる。専用線を借り受ける場合には,1回線当たり数万円が必要であるが,原告サービスにおいては,NTT局舎内においてNTTの回線収容装置を使用しないため,NTTがデータ通信や音声通話などの品質を確保する立場にはないから,1回線当たり1000円台程度で借り受けることが可能で,その点においても相違は明らかである。もちろん,回線交換方式とIP電話サービスは全く異なる方式であり,使用機器やネットワーク構成なども異なるから,IP電話サービスが存在することをもって,本件営業秘密1が公知であるともいえない。類似のサービスがいかに存在しようとも,原告サービスの独創性に及ぶものはないのである。さらに,被告らが指摘する各種文献の各記載は,いずれも概括的,表面的な記載が存在するにすぎないものであって,これらにより本件営業秘密1が公知となっているものではないことは,争点1-2において後に述べるとおりである。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密1は,内容自体が十分特定されているものではないし,特定の電話サービスの原理と呼べるものでもない。しかも,平成15年12月1日付け電気通信事業紛争処理委員会/IT時代の公正な紛争解決に向けて〔第4版 (乙1。以下「乙1文献」という ,日経コミュニケーシ 〕。 )ョンズ2003年5月12日号(乙2。以下「乙2文献」という ,同。)(。「 」 。), 1999年10月14日号 乙3 以下 乙3文献 という において遅くとも平成15年12月1日までには既に原告サービスの原理なるものは公開されていたのみならず,原告自身も,遅くとも平成15年6月30日までには,原告サービスに関するプレスリリースを自ら行っていた(乙4。以下「乙4文献」という 。。)したがって,本件営業秘密1は,遅くとも本件調査開始前において,既に公知であって,有用性も認められないものというべきである。
イ NTTが,他事業者に対しドライカッパーの提供を容認するようになった平成11年以前から,CATV事業者・新電電会社・DSL事業者などにより,直収電話サービス自体は多数提供されていたことは周知のとおりである。実際に,被告日本テレコムが平成9年10月1日に吸収合併した日本国際通信株式会社(以下「ITJ」という )は,既に平成3年11 。
月ころから直収電話サービス「リンクITJ」を提供しているし,被告日本テレコムも,既に平成8年10月ころから直収電話サービス「クイックライン」を提供しているのである。
また,平成11年以降は,国内において他事業者がNTT加入者線を借り受けて,データ通信サービス(DSL)とともにIP電話サービスを提供していることも周知のとおりである。被告ソフトバンクは,既に平成13年から,子会社(ソフトバンクBB)により,ADSLサービス(ヤフーBB)とともに,IP電話サービス(BBフォン)を提供している。しかも,被告ソフトバンクは,平成16年2月6日,総務省から,事業計画中の「局内収容BBフォンサービス」がアナログ電話サービスであるとの指摘を受けた以降,遅くとも平成16年2月19日時点では,ドライカッパーの電話音声帯域を利用した回線交換方式による直収電話サービスの検討を開始していたのである(乙18参照 。)ウ 被告日本テレコムは,十数年以上第1種電気通信事業者として電気通信事業を営んでおり,NTTのサービス,技術的条件を熟知しているのであるから,ドライカッパーをアナログ電話の回線として用いることができることも,当然,他の電気通信事業者同様に従前から知っていた。NTT技(。「 」。) 術ジャーナル1996年10月号 乙24 以下 乙24文献 というにも,他事業者が電話サービスを提供するためにドライカッパーに接続する形態が説明されており,原告サービスと同様の接続形態が図示されている。したがって,原告サービスの形態は,遅くとも平成8年10月当時には当業者に広く知られていたものというべきである。そのほか,公開特許(。),, 公報 特開平11-285035号乙25 にも ドライカッパーには@電話サービスのみに使用する,ADSLサービスのみに使用する,B電話サービスとDSLサービスに使用するという3とおりの使用方法があることが記載されており,遅くとも平成11年10月当時にはこれらの技術情報が公知であったことは,明らかである。さらに,アメリカ合衆国において,電話回線を所有する通信業者とは別の通信業者がドライカッパーを借り受けて電話サービス用に利用していたことは,日本においても広く知られていた(乙25参照 。),, ,「」,「」, エ 原告は さらに 原告サービスはリンクITJ クイックライン「IP電話サービス」とは根本的に異なるものであるなどとも主張する。
しかし,原告サービスと「リンクITJ 「クイックライン」は,ドラ 」,イカッパーを利用するか専用線を利用するかの違いしかなく,その仕組みは基本的にほとんど同じであるし 「リンクITJ 「クイックライン」 ,」,は専用線を利用したサービスであるとはいっても 「ラストワンマイル」 ,(顧客と最寄りの局舎との間の回線)はメタル回線を利用するのが主流であり,サービスを提供するために必要な技術もほとんど変わらないものである。原告は,専用線とドライカッパーの違いを強調するが,専用線とドライカッパーは,単に呼び方の差に過ぎず,電話回線自体は同じである。
ドライカッパーとは,加入者宅からNTT-GC局(Group Center。加入者線交換機〔以下「LS交換機」という 〕が設置されてい。
るセンターであり 「NTT局舎」ともいう )のMDF(主配電盤)ま ,。
での電話回線をいい,専用線とは,ある特定の2地点間を結ぶデータ通信専用の(主としてNTTから借りて利用する)回線のことをいうのであって,ドライカッパーが電話回線の引かれている場所に着目した呼称であるのに対し,専用線は,電話回線の用い方に着目した呼称ということもできる。したがって,原告サービス,被告サービス,クイックラインのいずれも,ドライカッパーの電話音声帯域をすべて借り受ける点,回線交換方式による直収電話サービスである点において共通しており,これらのサービスが既に提供されていることは,本件営業秘密1が公知であり,有用な情報ではないことを端的に示しているものである。また,原告サービスがIP電話サービスと比較して格段に優秀であるというわけでもない。
したがって,本件営業秘密1に記載された情報が,何ら有用な情報でないことは明らかである。
( ) 争点1-2(本件営業秘密1の非公知性)について 2(原告の主張)ア 原告は,本件営業秘密1を使用した原告サービスを,国内で初めて提供した通信事業者である。しかも,基本原理である本件営業秘密1自体を説明ないし記載した書面は,一般に一切公開ないし公刊されていない。したがって,本件営業秘密1は非公知性を有することは明らかである。なお,原告は,国による規制及びNTTからのドライカッパーの借入れの関係から,総務省やNTTに対して本件各営業秘密の一部を開示したことはあるが,それは極めて限定された範囲に対してであって,それにより非公知性が失われるものでもない。
イ 原告サービスは,@NTT加入者線であるドライカッパーを利用した,A回線交換方式の,B直収電話サービスである。専用線を利用したサービスは,@の点で,回線交換方式ではなく,IP網を利用しているサービスはAの点で,原告サービスとは異なる。被告らは,原告サービスを単なる直収電話サービスであるかのように歪曲して理解して,従来から存在していたかのように主張するが,その前提自体が誤りであって,原告サービスはNTTからのドライカッパーの借受け形態を含めて,独自性が高いサービスなのである。
そのほか,被告らは,本件営業秘密1は,乙1文献ないし乙4文献などにより公知であるなどとも主張する。しかし,これらはいずれも原告サービスとは異なる形態の電話サービスが記載されているにすぎなかったり,原告サービスについて概括的な紹介記事やプレスリリースにすぎないものであり,これらによって原告サービスの基本原理を推知することは不可能である。断片的な関連情報が公知であったとしても,その組合せが知られていなければ,それだけでは本件営業秘密1の非公知性が否定されるものではない。
被告らは,原告サービス開始後も,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスについて着想することはなかった。しかし,被告ソフトバンクは,本件調査において原告から本件営業秘密1の開示を受けた後に初めて被告サービスの提供を検討していることからすると,本件営業秘密1の非公知性は明らかである。
(被告らの主張)ア 争点1-1において述べたとおり,遅くとも平成15年6月30日までには,本件営業秘密1は公知となっていたものである。したがって,本件営業秘密1は,非公知性を有しない。原告は,乙1文献ないし乙4文献には概括的な情報しか記載されていないなどと主張する。しかし,これらの各文献には具体的な図面などにより詳細な情報が記載されており,電話サービスを営む他事業者からすれば,これらの情報から原告サービスと同様の電話サービスを構築することは容易である。
イ 原告は,原告サービスの借受け形態が,従前の形態と全く異なる形態であるかのようにも主張する。しかし,原告の借受け形態は,従前の形態におけるNTTの局内スプリッタを利用しない場合であるいわゆる「typeU」に属するものにすぎず,何ら新しい形態ではない。結局のところ,ドライカッパーを借り受ける形態の直収電話サービスという形態は,原告サービスの開始以前にも,技術上,NTTとの契約関係上など,些末な点での差異が存するとしても,従前から多数の他事業者により採用されていたのであるから,本件営業秘密1は,本件調査前において,公知であったというべきである。
( ) 争点1-3(本件営業秘密1の秘密管理性)について 3(原告の主張)ア 原告は,本件各営業秘密の管理を厳重に行っており,本件各営業秘密のいずれについても秘密管理性の要件を充足していることは明らかである。
,, 原告においては 営業秘密が記載された紙媒体の文書の管理方法として@同文書を施錠可能なキャビネットや書棚に収納し施錠の上,鍵を所轄部門長又はこれに準ずる者が管理し,同文書にアクセスできる者を所轄部の特定の従業員又はその所属する部門の担当部長の許可を得た従業員に限定し,A保管場所に部外者が立ち入ることを禁止し,B同文書を廃棄する場合には文書管理者立会いの下でシュレッダー(裁断機)にかけて廃棄した上で,文書管理台帳の廃棄欄に廃棄の日付と担当者名を記載させるなど,同文書へのアクセスを物理的かつ人的に制限している。また,営業秘密が含まれる電子文書や電子データの管理方法としても,@同文書や同データをアクセスするためにパスワードの入力が要求されるフォルダに保存した上で,当該パスワードを所轄部門の関係者以外には開示しない,A社内のコンピュータ・ネットワークにおいても,技術的に(かつ人的に)同文書や同データへのアクセスを制限しているほか,BCD等の媒体に記録されている場合には当該媒体を紙媒体の文書に準じて取り扱い,同媒体へのアクセスを物理的に(かつ人的に)制限している。そして,物理的かつ技術的なアクセス制限を施すことによって,対象情報が秘密であることが認識できるようにしているのである。
営業秘密が記載された紙媒体の文書には,さらに加えて「秘」又は「社外秘」の表示その他何らかの形で秘密である旨の表示を付して(文書管理規程17条。甲17 ,閲覧者又は保有者に同文書が営業秘密に該当す 。)る旨の警告をして同文書の取扱いに対する注意を喚起する場合もある。もっとも,営業秘密は,情報という無形の性質ゆえにすべてが文書や何らかの媒体に記載又は記録されているものではなく,当該営業秘密に接した担当者に記憶や知識として,技術や経験として残るものである。情報が物的媒体に固定されてしまうと,そのまま正確に第三者に漏洩し再現される危険性は高い。したがって,むしろ,機密性の高い情報であればあるほど,それを文書や媒体等に記録することなく,各担当者の記憶にとどめておくことで秘密管理している場合もある。加えて,原告は,就業規則において従業員の秘密保持義務を定めるとともに,入社する従業員からは秘密保持義務及び秘密情報の報告義務を明記した誓約書を,退社する従業員からは秘密保持義務及び競業避止義務を明記した誓約書を提出させるなど,秘密管理の徹底を図るとともに,役員・従業員に対して定期的に情報管理に関する教育を実施し,情報管理役員あるいは部門ごとに情報管理担当者を設置し,さらには,定期的に文書管理規程や情報管理方針の見直しを行うなど,労務ないしは社内組織の側面からも営業秘密に該当する情報の管理に細心の注意を払っている。例外的に取引先に営業秘密に該当する情報を開示しなければならない場合には,かかる取引先との間で秘密保持契約を締結し,同契約上に定められた手続を経るなど,法的・契約的な側面からも厳重に管理している。
イ 以上のとおり,通信事業者として情報管理には細心の注意を払っている原告においては,営業秘密に該当する情報の秘密管理も徹底していたのであるから,本件各営業秘密もこのような取扱いにより,秘密管理性が確保されているものである。
ウ 原告は,被告ソフトバンクから持ち掛けられた資本提携交渉に先立ち,本件調査をはじめ交渉の過程で被告ソフトバンクに開示する情報には原告の機密情報(不正競争防止法上の営業秘密に限られない )が含まれざる。
を得ないことから,被告ソフトバンクとの間で本件秘密保持契約を締結して,被告ソフトバンクに対し,原告から開示を受けた秘密情報を被告ソフトバンク及びソフトバンクBB以外の第三者に開示又は漏洩してはならないものと定めた。その上で,本件調査等を通じて原告から被告ソフトバンクに対し本件各営業秘密やその他の機密情報を含む各文書を開示し,又は口頭で開示する際には,同契約に基づいて「機密」である旨を告知した。
しかも,原告は,本件調査の開始に当たり,被告ソフトバンクに対し,包括的かつ事前に,同調査において被告ソフトバンクやソフトバンクBBに対して開示する情報は,いずれも秘密情報に該当する旨を口頭で告知したのみならず,原告から開示する各書類を備えた原告福岡本部内のデータルームには原告の担当者又は代理人が立ち会い,被告ソフトバンクの役員・従業員及び代理人がデータルームを入退室する際には入退室記録を取るなど,秘密管理には細心の注意を払い,物理的かつ人的に原告の本件各営業秘密を含む機密情報へのアクセスを制限していた。したがって,本件調査を含む被告ソフトバンクとの資本提携交渉においても,本件各営業秘密秘密管理は徹底されていたものというべきである。
エ 本件営業秘密1は,その一部が文書化されているが,その全体像は原告の代表取締役,技術担当役員及びNTTとの相互接続交渉を担当した上級管理職従業員が把握するのみであり,各人には機密に取り扱わなければならない旨の指示が出されていた。本件営業秘密1は,明確には物的媒体に固定されていないため,むしろ外部への漏洩が防止されており,かつ,本件営業秘密1を知る者も少人数に限定されていた。そのほか,紙媒体や電子データについては,秘密である旨の表示やパスワードによる厳重な管理がされていた。したがって,本件営業秘密1は,秘密管理性を有するというべきである。
よって,本件営業秘密1は,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)ア 原告は,文書管理規程を定めるなどして営業秘密の管理を徹底していたなどと主張する。しかし,文書管理規程等を定めていることと,本件営業秘密1が実際に秘密として管理されていたこととは別問題であって,本件営業秘密1が文書管理規程における機密文書ないし社外秘文書として取り扱われていて初めて秘密管理性があるといえるものである。原告の文書管理規程17条は,機密文書には「秘 ,社外秘文書には「社外秘」と表示 」すると定めてはいる。しかし,原告が本件営業秘密1に含まれるものと主張する各文書には,そのような表示はない。
イ 原告は,本件秘密保持契約が存在することをもって,本件営業秘密1が秘密管理性を有することの根拠とする。しかし,同契約は,M&Aにおけるデュー・デリジェンスを行う際に通常締結される類のものにすぎず,本件営業秘密1が特に他の営業秘密でない情報と区別されて秘密として厳重に管理されていたこともない。なお,被告ソフトバンクは,本件調査において,原告から開示される情報がいずれも原告の営業秘密に属する旨の伝達を受けていない。開示する情報のすべてが営業秘密に該当するというのであれば,あらかじめ本件秘密保持契約においてその旨を定めれば足りたのであって,事前に包括的に営業秘密である旨を伝達すればすべてが営業秘密となるものではない。
よって,本件営業秘密1に秘密管理性がないことも明らかである。
以上のとおり,本件営業秘密1は,有用性非公知性秘密管理性もなく,不正競争防止法に定める「営業秘密」とは認められない。
2 争点2(本件営業秘密2は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点2-1(本件営業秘密2の有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密2の内容は,別紙営業秘密目録2記載のとおりである。本件営業秘密2は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを現実に実現するために制度上必要な情報である。他事業者がドライカッパーを利用して電気通信サービスを提供する場合,NTT加入者線がNTTの第一種指定電気通信設備を構成していることから,電気通信事業法に基づき,NTTとの間でNTTの第一種指定電気通信設備と当該事業者の電気通信設備との接続に関する協定を締結する必要がある。原告は,原告サービスを開始するに当たり,NTTに対し,DSLサービスを前提としない新しいドライカッパー借用形態を申し入れたことから,NTTとの間で様々な事項について交渉し,確認する必要が生じた。DSL事業者が提供していたADSLサービス,IP電話方式による直収電話サービスは,NTTによる電話サービスと重畳して利用されていたため,NTT加入者線とNTTの電話交換機との接続を完全に切断するものではなかった。したがって,NTT加入者線とNTTの電話交換機との接続を完全に切断し,NTT加入者線と原告が設置する装置とを接続する原告サービスを実施するためには,新規開通に伴う事務処理・工事,番号ポータビリティの取扱い,切り戻し(原状復帰 ・契約解除・回線調整・情報提供に関する事務処理,費 )用分担,業務フロー,タイムフレーム等,NTTと交渉して調整すべき事項が数多く存在した。しかも,NTT自体が想定していなかった原告サービスが一般化すると,NTTが提供するサービスの利用者数が減少するおそれがあり,NTTが当該形態に関しては非常に難色を示したため,原告は,電気通信事業法に基づき,電気通信事業紛争処理委員会に対して,紛争あっせんを申請したほどであった。
イ 原告サービスの形態は,接続約款に規定されておらず,NTTに接続を許可してもらうための交渉とともに,原告サービスを提供することにより既存の公衆電話交換網やサービスに影響を与えないか否かを事前に調査する必要もあった。原告は,平成13年10月ころから実際の運用において生じ得る問題点や課題,あるいはあらかじめNTTとの間で確認すべき事,,。 項を抽出した上で NTTと交渉するなどにより 課題を解決していったこのような事前確認は,過去に前例がなく,多大な時間が必要となった。
また,原告は,原告の電気信号をドライカッパーに通すことにより,電気信号同士の緩衝や過電流により,NTTの既存の設備やサービスに技術的障害が発生しないかを慎重に検討した上で,社団法人情報通信技術委員会による確認も受けたのである。
このように,他事業者は,制度上,NTTからドライカッパーを借用して電話サービスを提供しようとする場合,様々な調査,交渉を経る必要があり,それらを経ることにより,ようやくサービスの提供が実現できるものである。NTTとの交渉においては,NTTから確認事項などについて具体的に提示されることはなかったから,原告が,あらゆる問題点及び解,,, 。 決方法を自ら考案し 交渉した上で 合意に達し 確認する必要があった原告は,このような困難な交渉を通じて,制度上の各問題を克服し,ようやく原告サービスを開始することができたのである。本件営業秘密2は,このような過程を経て,案出されたものである。
なお,本件営業秘密2においては,全く新しい形態である他事業者によるドライカッパーを用いた直収電話サービス事業をNTTが認めていると,。, いう事実自体が 既に有用性を有しているものというべきである さらに原告が案出した各交渉事項等は,新しいドライカッパーの形態に合わせて新たに創出された情報であって,前例としてのその有用性は極めて高いものである。しかも,各個別合意事項を知ることによって,他事業者は,NTTと具体的な交渉に臨む以前から,前もって,NTTと交渉して合意すべき事項を全部知ることができ,さらには,原告と他事業者との間における契約内容を知っていれば,当然NTTとの交渉を優位に進めることが可能となるのであるから,その有用性は極めて高いものである。
ウ 本件営業秘密2の具体的内容は以下のとおりである。
) 相互接続協定変更書(NTT東日本) a******************************************************************************) 相互接続協定変更書(NTT西日本) b*********************************************************) 受付等事務処理確認事項(NTT東日本,第2版) c*************************************************************************************************************************************) 受付等事務処理確認事項(NTT西日本,第0.0版) d*************************************************************************************************************************************) 料金事務処理確認事項(NTT東日本,第1版) e**********************************************) 受付等事務処理確認事項(NTT東日本,第1版) f*********) 保守確認事項(NTT東日本,第1版) g******************************************エ 被告らは,少なくとも他事業者により同様の接続が既に実施されている場合,法令上,NTTは各事業者に公平な取扱いをする義務があるから,NTTに対して接続を希望すれば,NTTから基本的に他事業者と同内容の提案があるのが通常であるし,実際,被告日本テレコムがNTTに対してドライカッパーを利用した直収電話サービスを提供したい旨を申し入れた際には,NTTから具体的な協定案等の必要情報が提示されたのであるから,原告とNTTとの協定等の実質的な内容は非公知などではないし,有用な情報でも何でもないなどと主張し,NTTからこれらの情報について開示を受けた証拠として,電子メール(乙42〜46)を提出する。
しかし,原告以外の他事業者が,NTTに対してドライカッパーを利用した直収電話サービスを提供したい旨申し入れたからといって,NTTから必要な情報が必ず提供されるものではない。確かに,被告らが書証として提出した電子メールには,これらの情報がNTTから開示される旨の記載があるが,当該メールはNTTと被告日本テレコムとの交渉過程におけ,, , るいずれの段階のものか明らかではなくむしろ 同被告がNTTに対し本件営業秘密2を提示しつつ交渉を行った結果として,最終的に,NTTがそれを踏まえて各案を提示したものと強く推測されるのであるから,他事業者からの申入れに対して,NTTが必要な情報を提供したことの根拠とはならない。また,電気通信事業法30条3項1号は 「他の電気通信,事業者の電気通信設備との接続の業務に関して知り得た当該他の電気通信事業者及びその利用者に関する情報を当該業務の用に供する目的以外の目的のために利用し,または提供すること」を禁止しており,NTTが被告らに対し,原告との合意内容をそのまま提供したり,原告との合意内容に基づいた必要情報を提供したとは想定し難い。
さらに,被告らは,相互接続協定変更書記載の各条件のほとんどは,公,, 表約款が準用されているか あるいは同約款に準拠しているのであるから本件営業秘密2のほとんどは公表されている情報であり,有用性は存しないなどと主張する。しかし,公表約款のどの規定を準用し,又はどの規定に準拠しているかは非公知であり,むしろ具体的な準用規定・準拠規定こそが重要な情報というべきである。したがって,被告らの主張は失当である。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密2も,その内容自体が不明確であるが,原告の主張を前提としても,既にNTTにおいて公開されている接続条件等に従った結果程度の内容にすぎず,他事業者でも同様に入手できた情報であるから,目新しいことでも原告が独自に積み上げたノウハウなどでもなく,有用性を有しない。そもそも,NTTがドライカッパーを用いた直収電話サービス事業を認めている事実自体は,乙2文献においてNTTとの合意に基づいてそのようなサービスを提供する業者が存在することが明らかにされている以上,既に公知の事実である。なお,被告ソフトバンクは,原告から相互接続協定書及び相互接続協定変更書については開示を受けていないし,口頭で説明を受けてもいない。
イ NTTは,法令(電気通信事業法)上,他事業者に対する不当な差別的取扱いを禁止されているため,平成11年11月30日以降,接続約款のほか接続に関する極めて詳細にわたる事項を公開している。結局,他事業者が,NTTに対し,直収電話サービスのみ又はISDNサービスの提供を前提にドライカッパーの借受けを申請すれば,当該他事業者が,原告との協定等の内容を知っているか否かにかかわらず,NTTは,原告と同じ条件の協定等を締結せざるを得ないのであり,そこに交渉の余地はない。
実際,被告日本テレコムが,NTTに対し,ドライカッパーを利用した直収電話サービスを提供したい旨申し出たところ,NTTから具体的な協定案等の必要情報が提示されている(乙42〜46参照 。NTTから提供)された情報には,原告に関する情報は一切記載されていない。仮に,原告との合意内容と同様の事項が記載されていたとしても,それはNTTが自ら有する情報を自ら利用したにすぎない。したがって,原告がどのような事項について交渉したかとか,どのような合意または確認をしたかという情報,原告とNTTとの間の相互接続協定書そのほか事務処理確認事項が何ら有用性を有しないことは明らかである。
ウ 本件営業秘密2の一内容である原告とNTTとの協定及び事務処理確認事項の条件のほとんどは,公表約款を準用ないし公表約款に準拠しているものであるから,いずれも公表されていると評価し得るものである。協定書と公表約款とが異なる条件を定めている事項のうち,重要な事項は1回線ごとの月額料金が1690円であること程度であるが,そのことは乙2文献にも明記されている。さらに,原告は,原告サービスが全く新しい形態の電話サービスであることを前提として,NTTとの交渉における困難性を強調し,協議事項自体が有用性のある情報であるなどと主張するが,協議が困難であったか否かは情報の有用性には全く関係のない事実であるし,争点1で述べたとおり,原告サービスの借受け形態はいわゆる「typeU」に属し,全く新しい借受け形態などではないから,原告の主張はその前提において既に誤りである。
( ) 争点2-2(本件営業秘密2の非公知性)について 2(原告の主張)ア 原告が,NTT東日本及びNTT西日本との間で各締結した相互接続協,() 定変更書は 改正前の電気通信事業法38条の2第7項33条10項に基づくものであるため,認可接続約款等とは異なり公表されていない。
また,受付等事務処理確認事項などは,いずれも公表されておらず,原告からの申入れに応じて,NTT東日本及びNTT西日本も,上記各書面の内容を原告以外の他事業者に開示しない旨了解している。なお,先に述べたとおり,NTTは,特定の電気通信事業者に対し,不当な差別的取扱いをすることを禁止されているものの,このような行政法上の義務が存するからといって,原告との協定の内容が公知となるものではない。したがって,本件営業秘密2は非公知性を有する。
イ 先に述べたとおり,電気通信事業法30条3項1号により,NTTが被告らに対し,原告との合意内容をそのまま提供したり,原告との合意内容,, に基づいた必要情報を提供したりしたとは考えにくいのであるから 仮に被告日本テレコムがNTTに対してドライカッパーを利用した直収電話サービスを提供したい旨申し入れた際にNTTが必要な情報を提供したとしても,それにより本件営業秘密2の非公知性が失われるものではない。
(被告らの主張)争点2-1において述べたとおり,本件営業秘密2は,公開されている接続条件にしたがった結果程度を意味するにすぎず,原告以外の他事業者でも容易に取得することが可能な情報であるから,非公知性を有しない。
( ) 争点2-3(本件営業秘密2の秘密管理性)について 3(原告の主張)ア 本件営業秘密2は,原告の代表取締役,一部の取締役,NTTとの相互接続に関する担当上級管理職従業員や交渉担当者が知るのみであり,各人には機密に取り扱わなければならない旨の指示が出されている。また,本件営業秘密2のすべてが物的媒体に固定されているわけではないため,むしろ外部への漏洩が防止されている。
イ 本件営業秘密2を含む相互接続協定変更書その他種々の相互接続協定書及び確認事項を記載した合意書,NTT東日本及びNTT西日本との交渉経過等の記録文書は,すべて原告福岡本部13階の企画推進部(現在は建設計画部)の施錠キャビネットにおいて管理されており,物理的なアクセス制限が施されている。したがって,本件営業秘密2は,秘密管理性を有するものというべきである。
よって,本件営業秘密2は,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)争点1-3において述べたとおり,原告がいかに秘密管理規程を定めていたとしても,それらが本件営業秘密2において実行されていなければ秘密管理性を認めることはできない。原告が本件営業秘密2に含まれると主張する文書には,秘密である旨の表示がされていない。したがって,本件営業秘密2は,秘密管理性を有しないというべきである。
よって,本件営業秘密2は,不正競争防止法における営業秘密に該当しない。
3 争点3(本件営業秘密3は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点3-1(本件営業秘密3の有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密3の内容は,別紙営業秘密目録3記載のとおりである。
本件営業秘密3は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおいて必要な機器の内容及びメーカーに関する情報である。
本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを実現するためには,@NTTの提供する電話サービスと競争力を有するのみならず,利用者の利用形態を満足する機能と品質を備え,A電気通信事業法その他の国内法規制に適合し,BNTTローカルの通信網の特性に合致し,既設の通信設備に誤作動を及ぼさない能力を有するLS交換機が必要である。原告サービスの提供開始までは,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを実施する通信事業者は存在しなかったから,当然,同サービスに適合するだけの処理能力と機能を有するLS交換機は存在しなかった。そこで,原告は,NECに秘密裏に打診し,NECと共同で,新たに,本件営業秘密1を使用した直収電話サービスに適合する処理能力と機能を有したLS交換機NEAX61ΣJを共同開発した(原告とNEC自体との通信設備取引基本契約〔「 」 。〕。,, 書 以下 本件NEC基本契約 という 14条参照 なお 同契約は本件訴訟提起後に締結されたものであるが,LS交換機の共同開発開始当初から,原告とNECは同契約と同様の内容において合意していたものである 。これまでにも,NEAX61ΣJという名称の機器は存在した 。)が,それは原告サービスに適合する能力を有するものではなく,また,その実績もなかったものである(以下,原告サービスにおいて導入されているLS交換機NEAX61ΣJを 「本件交換機」といい,従前存在して ,いた機種を総称して,NEAX61ΣJシリーズという 。。)したがって,国内において,NTT加入者線を利用した回線交換方式による直収電話サービスに対応したLS交換機を開発できるメーカーは,NEC以外にないのであり,原告がいかなる取引先と上記の各装置の開発に取り組んでいるかは,競業者にとっても有用な情報であることは明らかである。本件営業秘密3は,原告サービスを現実のビジネスとして実現するために必要不可欠な情報であり,有用性を有することは明らかである。
イ 被告らは,国内サービス向けのLS交換機と海外サービス向けのLS交換機は異ならないなどと主張するとともに,NEAX61ΣJシリーズについて,豊富な接続実績がある旨明記された文書(乙19。以下 「乙1,9文献」という )の存在を指摘する。しかし,乙19文献に記載されて 。
いる接続実績は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスに関するものではないし,国内向けと海外向けのLS交換機は全く異なる製品であるから,被告らの主張は失当である。
(被告らの主張)NECがNEAX61ΣJシリーズ(Σ」はバージョンを 「J」は国 「,内向けであることをそれぞれ表す )を製造していることは,既に公然と知 。
られており,事業活動に有用な情報ではない。NECは,古くから,他3社と並ぶ大手国内電話交換機メーカーであり,電話サービス用の各種交換機の国内シェアの約50ないし60%パーセントを占めるといわれていることも,周知の事実である。
NECは,LS交換機「NEAX61」を,昭和52年10月ころに発表している。ITJも,平成3年ころには,被告日本テレコムも,平成8年ころには,海外向けLS交換機「NEAX61」を導入している。さらに,被,, 告日本テレコムは 国内向けNEAX61ΣJシリーズを導入するに当たり平成12年8月11日には,NECから 「NEAX61ΣJ-LSは国内 ,複数のキャリアで採用され,現在稼働中の交換機です 」との説明を受けて。
おり,遅くとも平成12年8月11日までには,NEAX61ΣJシリーズは,国内複数のキャリアで採用され,稼働中であった。しかも,被告ソフトバンクは,平成16年2月19日時点で,被告日本テレコムの買収(同買収プロジェクトは,被告ソフトバンク及びソフトバンクBBにおいて 「スパ,イダープロジェクト」と呼ばれていた )を検討するに当たり,LS交換機 。
NEAX61ΣJシリーズを採用することを独自に検討していた。この時点では,被告ソフトバンクは,原告と接触していないばかりか,被告日本テレコムに対する本件調査も開始していなかった。被告ソフトバンクは,平成16年4月20日の時点で ユーティースターコムジャパン株式会社 以下 U ,(「Tスターコム」という )から,直収電話サービスに使用する機器等の紹介 。
を受けているが,その紹介書面には,LS交換機の接続例と「NEAX61Σ」が候補として掲げられ,接続実績があることが記載されていたから,UTスターコムも,独自にNEC製LS交換機NEAX61ΣJシリーズの採用を念頭に置いていたのである。原告は,海外向けLS交換機と国内向けLS交換機が全く異なるものであるかのように主張するが,両者には大きな相違点は存在しない。したがって,ドライカッパーを利用した直収電話サービスに使用できるLS交換機がNECから調達可能であることは公知の事実であり,何ら有用な情報ではなかったというべきである。
( ) 争点3-2(本件営業秘密3の非公知性)について 2(原告の主張)ア 先に述べたとおり,原告はNECと共同して秘密裏に本件交換機を開発,。 したものであるから 本件営業秘密3が非公知であることは明らかであるさらに,本件NEC基本契約21条において,原告及びNEC双方に秘密保持義務が課されていることからも非公知性は明白である。実際,被告らが提出する書証(乙13〜19)には,NECがLS交換機を販売している事実についての記載はあるが,本件営業秘密1を使用した直収電話サービスに適合するだけの処理能力と機能を有したLS交換機に関する記述は一切存在しない。公表されているのは,いずれも海外向け製品に関する情報であったり,特定の企業による限定的な利用形態のみに対応した専用線を利用した電話サービス用機種に関する情報にすぎない。
イ 被告らは,被告日本テレコムは,以前からNEAX61ΣJシリーズを使用していたと主張する。しかし,それは,LS交換機ではなく,あくまでも中継交換機として使用されていたにすぎず,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスに使用される本件交換機とは同一機種名の異質な交換機である。
(被告らの主張)ア 争点3-1で述べたとおり,本件営業秘密3は,遅くとも本件調査以前において公知であったというべきである。実際に,日本テレコムは,以前からNEAX61ΣJシリーズを使用していたのである。
イ NECが本件交換機を製造可能となった事実は,原告のみが保有する情報ではなく,NECも保有する情報である。本件NEC基本契約21条により守秘義務が課されるのは 「相手方」の情報であり,NECにおいて ,製造可能になったというNEC自身の情報にまで守秘義務が課されるものではない。
( ) 争点3-3(本件営業秘密3の秘密管理性)について 3(原告の主張)ア 本件営業秘密3は,原告の代表取締役,技術担当役員,技術系上級管理職従業員が知るのみであり,各人には機密に取り扱わなければならない旨の指示が出されていた。また,原告の代表取締役は,NECに対して,本件営業秘密3に該当する情報を他事業者に開示しないように依頼している。
イ 本件営業秘密3に関する各文書のうち,原告の秘密情報である旨が明記されているものもある(甲3 。また,そのほかの文書の中にも,原告福 )岡本部13階の経理部の施錠キャビネットにおいて管理しており,物理的。, , アクセス制限が施されているものもある したがって 本件営業秘密3は秘密管理性を有する。
よって,本件営業秘密3は,不正競争防止法における営業秘密に該当する。
(被告らの主張)争点1-3において述べたとおり,原告がいかに秘密管理規程を定めていたとしても,それらが本件営業秘密3において実行されていなければ秘密管理性を認めることはできない。原告が本件営業秘密3に含まれると主張する各文書には,秘密である旨の表示がされていない。したがって,本件営業秘密3は,秘密管理性をも有しない。
よって,本件営業秘密3は,不正競争防止法における営業秘密に該当しない。
4 争点4(本件営業秘密4は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点4-1(本件営業秘密4の有用性及びその帰属主体)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密4の内容と有用性本件営業秘密4の内容は,別紙営業秘密目録4記載のとおりである。すなわち,本件営業秘密4@は,原告サービスにおける本件交換機の位置付け及び機器構成であり,本件営業秘密4Aは,原告サービスに適合させるための本件交換機の仕様変更の内容(その前提である課題内容自体も含む )である。。
本件営業秘密4は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおいて必要な機器の内容,意義,機能,利点,他の機器との接続方法,機器構成及び仕様変更に関する情報であって,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを現実のビジネスとして実現するために技術上必要な情報であるから,極めて有用性の高い情報であることは明らかである。特に,本件交換機は,加入者宅からのドライカッパーを通った音声信号を,RT装置等を経由することによって直接収容するものであって,まさに本件営業秘密1を用いた直収電話サービスの根幹をなす装置である。本件営業秘密4によ,, って @本件交換機を具体的にどのように他の機器と接続すればよいのかソフトウェア等の機器構成はどのようなものか,A具体的に直収電話サービスに使用するために克服すべき課題はどのようなものか,また,その課題に対する対応結果である仕様変更の内容はどのようなものかなどについて現実に知ることができるものである。
イ 本件営業秘密4@の有用性) 本件営業秘密4@の本件交換機の位置付け及び機器構成は,本件営業 a秘密1を用いた直収電話サービスにおける同交換機の意義,機能,利点及び他の機器との接続に関する事項である。特に,原告サービスでは,比較的コストの安いRT装置を使用することにより,コストが高いLS交換機設置数を減少させることができるため,総設備投資額を抑えることが可能となるなどの利点がある。したがって,LS交換機とRT装置との接続に関する情報(基本的な接続原理のほか,具体的に,どこの拠点ないし局舎に各装置を設置するかという情報も含む )は,本件営業。
秘密4@の「位置付け」のうち,特に重要な情報といえる。
) 被告らは,本件営業秘密4@は,乙1文献,乙2文献などにより公知 bであるなどと主張する。しかし,本件営業秘密4@は,本件交換機が,NTT加入者線であるドライカッパーを利用した回線交換方式による直収電話サービスにおいて実際に運用されていることがその本質的要素である。乙1文献及び乙2文献には,NEAX61ΣJといった具体的な機器の名称が一切記載されていないなど,抽象的かつ概括的な記載にとどまっており,これらによっては本件交換機の位置付けが公知になっているとはいえない。
ウ 本件営業秘密4Aの有用性) 本件営業秘密4Aの仕様変更内容は,原告サービスに本件交換機を適 a合させる際の課題内容及びそれに対する対応結果である。従来,NTT加入者線を利用した回線交換方式直収電話サービスは,NTTが電電公社時代から独占していたため,他事業者は,当該サービスのノウハウを有していなかった。しかも,NTTは,ハードウェアこそメーカーから購入していたが,ソフトウェア(汎用ソフトウェアを除く)やその運用・保守については独占していたため,NTTに対して電話網構築に必要な装置・部品を納入しているメーカーも,電話網の構築・維持・管理に必要な技術又はノウハウを有していなかった。原告は,海外向けのLS交換機であったNEAX61ΣJシリーズを,国内対応させるように調整したのみならず,コンディショニング,通信ネットワークへの接続の同期調整といった技術上のノウハウも積み上げてきた。本件交換機の開発においても,原告の指示に基づいて,仕様の作成その他様々な機能の設定及び追加が行われ,全体的なアーキテクチャーを構築したのみならず,より上位かつ高性能のCPUを搭載するなどの改良を加えることにより,本件交換機をNECと共同開発し,原告サービスに導入したのである。
) 本件営業秘密4Aは,仕様変更結果だけではなく,その前提となる課 b題内容自体も含まれる。このような課題内容は,様々なシステム調整や接続試験などを重ねる過程において初めて発見されるものである上,様々な不具合のうち,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを実現するために必要な課題内容を特定して的確に把握する必要があり,誰でも簡単に把握できるものではないから,それだけで有用性を有するものである。いわゆるネガティブ・インフォメーションであっても,経済的に重要な価値を持つ情報である限りは営業秘密となり,法的に保護されるべき情報であるというべきである。これらには,CPU等の交換による能力強化及びそれに伴うソフトウェアの更新に関する情報も含まれる。
NECは,当初,原告サービスの実施においては,ハードウェアのバージョンが「V2M」のLS交換機を導入すれば能力的に十分であるとした。しかし,実際に原告サービス提供開始後に生じた様々な問題点に対応するためには 「V3M」へのバージョンアップが必要であることが ,判明し,原告及びNECは,提供中のサービスに対する影響を最小限にするための方策などについて,1年以上にもわたる検討を経て 「V3,M」化を実現した。なお,仕様変更内容は,同営業秘密目録4A記載のものに限らない。原告及びNECは,何度も協議を重ね,原告が具体的仕様を確定し,NECに対して実装を指示するなどして,仕様変更等を繰り返したのであって,特に項番5の付加機能に関する仕様変更は,極めて多岐にわたる。原告が通信事業者として有するノウハウを十分活用し,積極的かつ主体的にかかわっていたことは,原告とNECとの間の電子メール(甲57〜60)などからも明らかであり,被告らが主張するような,発注者として通常の指示を行っただけにとどまるものではない。本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを考案したのは原告であって,その原告がNECに対して,LS交換機についての改修・改善指示を技術的な観点から詳細に行い,原告の評価ノウハウ等をNECに提供するとともに,具体的な仕様開示ないし提示を原告からNECに対して行っていたのであるから,本件営業秘密4Aは,むしろ原告が保有する情報であるというべきである。
原告は,NECとの共同開発を通じて,これらの課題を一つ一つ発見し,解決していった。これらの情報は,本件NEC基本契約上,原告とNECが共有する「技術的成果 (14条1項)にほかならない。被告 」らは,当初から大容量のLS交換機を導入すればすむかのように主張するが,原告サービスに適合するようなLS交換機は,およそ市場に存在していなかったのであるから,被告らの主張は失当である。
) 被告らは,本件営業秘密4Aについて,これらの仕様変更は通常のイ cンテグレーション(統合)作業にすぎないし,NECが行った仕様変更等については,原告ではなくNECが有する情報であり,守秘義務を負わないなどと主張する。しかし,原告が,長時間かけて必要な接続試験等を繰り返し実施したことは先に述べたとおりであって,通常のインテグレーション作業にすぎないものではないし,原告とNECが共同で行った仕様変更等について,NECが秘密保持義務を負うことは明らかである。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密4@の有用性本件営業秘密4@の内容自体が,不明確ではあるが,いずれにせよ,既に公然と知られており,事業活動に有用な情報ではない。争点3において述べたとおり,そもそもNEAX61ΣJシリーズは,国内複数のキャリアで採用され,稼働中であったから,既に公然と知られており,その位置付け自体は事業活動に有用な情報などではない。乙1文献及び乙2文献には,機種名こそ明記されていないが,原告サービスにおけるLS交換機の「位置付け」自体も記載されていたし,UTスターコムからの紹介文書にも,LS交換機の位置付けは記載されていたのである。しかも,原告と被告日本テレコムでは,ネットワーク構成や顧客数,トラフィック量等が全く異なるのであるから,本件交換機の具体的な機器構成などは,全く参考にならないものであるし,通信事業者にとって,原告が本件交換機にいかなる機器を追加して使用しているかという情報には何ら有用性がないというほかない。
イ 本件営業秘密4Aの有用性) 本件営業秘密4Aのうち,CPUを改良(換装)した事実などは,単 aに,原告の購入したLS交換機の容量が少なかったために,当初登載されていたCPUが能力の低いものだったことを意味するにすぎず,最初からより大容量のLS交換機を購入すればよかったのであるから,およそ有用性を有しない。電気通信事業者は,LS交換機の製造委託をする場合,要求仕様書を提示し,メーカーがそれに基づいて製造し,接続試験において不具合が判明した場合には,メーカーとの協議により解決す,, るものであるから LS交換機の仕様変更を行い機能を追加したことは() , 通常のいわゆるインテグレーション 統合作業と呼ばれているものか製造委託者として当然にすべき指示というべきものにすぎず,原告の主張するような共同開発の実態などはない。また,被告日本テレコムは,「NTTと同様の機能を追加するための仕様を確定」したこともない。
同被告は,接続条件に関する詳細事項としてNTTによる情報開示によって公知となっていた情報に従っただけであるから,新たに仕様確定する必要があるものではない。したがって,これらまで「営業秘密」に含まれるものではないことも明らかである。
なお,原告は,ネガティブ・インフォメーションも有用な情報たり得ることを根拠に,本件営業秘密4Aの課題内容自体も有用性を有するなどと主張する。しかし,開発された製品の購入者にとって,開発過程の失敗に関する情報などは無用であるというほかなく,何ら有用性がないことは明らかである。
) 製造委託契約においては,対象物の運用・保守等に関して生じるノウ bハウを含む知的財産権は,製造・運用・保守を行う受託製造業者に帰属するのが通常であって,委託者に帰属するとされることは異例である。
本件NEC基本契約は,単なる製造委託契約であり,原告はNECに対してLS交換機の製造を委託し,NECがその委託にしたがって本件交換機を製造しただけであるから,原告がNECと本件交換機を共同開発したものではない。同契約14条は,単に原告及びNECが共同でした発明等があれば,その知的財産権は原告及びNECの共有であることを定めているにすぎず,当該条項の存在をもって,共同開発の合意がされたものと解することはできない。また,当該契約書自体も,本件訴訟提起後に作成されたものである。国内向けサービスへの対応も,NECが公表されている国内仕様に対応させる作業を行ったものにすぎないというべきである。海外向けの機器を国内向けサービスにおいて使用する場合,適合作業が行われることはむしろ当然であって,当然行われるべき作業を,製造メーカーであるNECが行ったことが,原告による開発と評価されるはずがない。元来,NEAX61ΣJシリーズは,限定的な利用を目的として製造されたものではなく,インターフェースを切り替えることにより,加入者用,国内長距離中継用,国際中継用等,一般家庭を含む多種多様な利用形態にも対応していた。本件交換機も,他のNEAX61ΣJシリーズも 「Generic」という基本ソフトウ ,。, , ェアを用いているという点においては同一である 仮に 本件交換機がNEAX61ΣJシリーズと全く異なるものであれば,別の製品名が付けられているはずである。もちろん,原告サービスに適合するように,周辺のソフトウェアは従来のものと異なる点もあるかもしれない。しかし,原告の主張からはその内容は不明であるし,被告サービスにおいて使用されているLS交換機は,周辺のソフトウェアには改変が加えられSynchronous ており,本件交換機とは異なり,いわゆる「STM (」」() , Tranceport Module乙38参照 にも対応可能であることからしても被告日本テレコムが採用したLS交換機は,本件交換機とは全く異なる機種というべきである。さらに,原告は,各種バージョンアップを行ったことが共同開発の内容であると主張するとともに,本件交換機が国内唯一であるとも主張するが,そもそも当初からバージョンアップされた製品を購入すれば,あえてバージョンアップを行う必要はなかったのであるし,本件交換機は,ヨーロッパの標準化団体が定める標準に準拠する一般的なインターフェースを搭載する機種であり,同様のインターフェースを搭載した流用可能な機種をNECが従前から海外向けに製造販売していたことは公知である。
) 原告は,本件NEC基本契約において,本件営業秘密4Aは「技術的 c成果 (14条1項)に該当すると主張する。しかし,単なる不具合の 」解消が仮に「技術的成果」に含まれるとしても,同契約上,当該「技術的成果」は,NECが被告日本テレコムを含む第三者に自由に使用許諾することができるものとされている(15条1項 。しかも,NECか)ら被告日本テレコムに原告とNECが共有する「技術的成果」が存在する旨の説明は一切なかったのであるから,少なくともNECは原告と共有する技術的成果が存在するという認識はなかったというほかない。
ウ 以上によると,本件営業秘密4@は,遅くとも本件調査開始時点においては既に有用性を有していなかったというべきであるし,本件営業秘密4Aは,NECに帰属するものであり,そもそも原告に帰属すべきものではない。
( ) 争点4-2(本件営業秘密4の非公知性)について 2(原告の主張)ア 本件営業秘密4@は,いまだに公知になっているとはいえず,当該情報が記載された書面が一般に公開ないし公刊されているという事実もない。
また,本件営業秘密4Aについて原告及びNECの双方に秘密保持義務が課されていることからも非公知性は明白である。
イ 原告及びNECは,秘密裏に本件交換機を共同開発したものであり,か,, つ このような具体的な機器に関する詳細な情報である本件営業秘密Aは高度な技術情報であり極めて価値が高いことから,原告とNECしか知らない情報であって,全く公開されていないものである。
(被告らの主張)争点4-1で述べたとおり,本件営業秘密4@は,遅くとも本件調査以前において公知であったというべきである。
( ) 争点4-3(本件営業秘密4の秘密管理性)について 3(原告の主張)ア 原告とNECは,共同して,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスに適合する処理能力及び機能を有する本件交換機を新たに開発したものであり,本件営業秘密4は,原告とNECとの共同開発による技術的成果である。これらの技術的成果は,本件NEC基本契約14条1項により,原告とNECの共有となる。
イ 本件営業秘密4は,原告の代表取締役,技術担当役員,技術系上級管理職従業員が知るのみであり,いずれも各人には機密に取り扱わなければならない旨の指示が出されていた。また,本件営業秘密4のすべてが物的媒体に固定されているわけではないことから,外部への漏洩が防止されている。また,本件営業秘密4に関する文書のうち,原告の秘密情報である旨が明記されていたり,電子データに対するアクセス制限が施されているものも存する。
,,, ,, 原告は NECとの間で 当初から本件交換機の位置付け 機器構成システム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題の内容及びそれに対する対応結果(仕様変更)の内容等に関し,原告及びNEC双方が秘密保持義務を負う旨の合意をしていた。
したがって,本件営業秘密4は秘密管理性を有するというべきである。
よって,本件営業秘密4は,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)ア 争点1-3で述べたとおり,原告がいかに秘密管理規程を定めていたとしても,それらが本件営業秘密4において実行されていなければ秘密管理性を認めることはできない。
イ 原告は,NECに対し,本件営業秘密4は原告だけが有する営業秘密である旨説明しているなどと主張する。しかし,仮に仕様変更等が原告だけが有する営業秘密であったならば,原告としては当然NECとの間で秘密保持契約を締結した上でこれを開示するはずである。原告は,当初,信義則上の秘密保持義務を根拠に本件営業秘密4が秘密管理性を有すると主張していたものの,その後,本訴提起後に締結された本件NEC基本契約に基づいて,NECが守秘義務を負担するなどと主張を変遷させた。主張の変遷に合理性が見られないことをさておくとしても,当該契約書においても,仕様変更等の「ノウハウ」について,NECが秘密保持義務を負担するような条項は存しない。
したがって,本件営業秘密4は,秘密管理性を有しないというべきである。
よって,本件営業秘密4は,不正競争防止法における営業秘密に該当しない。
5 争点5(本件営業秘密5は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点5-1(本件営業秘密5の有用性及びその帰属主体)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密5の内容と有用性本件営業秘密5の内容は,別紙営業秘密目録5記載のとおりである。すなわち,本件営業秘密5@は,原告サービスにおけるRT装置(遠隔多重加入者線伝送装置 「 (以下,原告サービスにより使用されて )」 Any Mediaいる同装置を 「本件RT装置」という。また,ルーセントが製造販売す ,る同種シリーズを総称して 「 シリーズ」という )の位置付け ,。 Any Media及び機器構成であり,本件営業秘密Aは,原告サービスに適合させるため(。 ) の本件RT装置の仕様変更の内容 その前提である課題内容自体も含むである。
本件営業秘密5は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおいて必要な機器の内容,意義,機能,利点,他の機器との接続方法,機器構成及び仕様変更(その前提である課題内容自体も含む )に関する情報であ。
って,本件営業秘密4と同様,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを現実のビジネスとして実現するために技術上必要な情報であるから,極めて有用性の高い情報であることは明らかである。しかも,原告による改,, , 良 仕様変更等がなければ 本件RT装置が完成しなかったのであるから本件営業秘密5は,特に有益な情報である。
イ 本件営業秘密5@の有用性) 本件営業秘密5@における本件RT装置の位置付けは,本件営業秘密 a1を用いた直収電話サービスにおける本件RT装置の意義,機能,利点。, 及び他の機器との接続に関する事項である本件RT装置の採用により設備投資額を抑えることができるのであるから,本件RT装置の意義,機能及び利点,LS交換機と本件RT装置との接続に関する情報(具体,。 ) 的に どこの拠点ないし局舎に各装置を設置するかという情報も含むは,特に重要な情報である。 シリーズは,本来,海外サービ Any Mediaス向けのRT装置であり,そのままでは国内の電話サービスに利用できなかったものの,国内向け仕様のRT装置と比較して格段に安価であった。もっとも,本件RT装置についても,LS交換機と同様に,NTTとの競争力を有する電話サービスを提供する能力を有し,国内法規制に適合し,さらに既存のネットワークの障害とはならない能力を確保する必要性があった。そこで,原告は,本件RT装置を国内でも利用できるように,その仕様変更等を含めルーセントに指示しながら改良を加えたのみならず,同装置と本件交換機との接続に関する調整(コンディショニング)を行った。特に,国内においては,諸外国には例のない細心導体通信網が構築されているため,国内通信網に適合する装置として機器構成を確立する必要性があったのである。乙1文献及び乙2文献における表面的な記載が,本件営業秘密5@の有用性を否定するものではないことは,本件営業秘密4@と同様である。
) 被告日本テレコムは,被告サービス開始時点においては,本件RT装 b置を使用しておらず,同装置は追加機器として平成17年2月5日にNTT局舎内に搬入したにすぎないと主張する。しかし,追加機器として設置した理由までは明らかにされていないし,同被告が当初設置した装(。「」。), 置であるというAGW 以下 AGW という が Access Gate Way被告らが主張するとおり本件RT装置より優れていたならば,本件RT装置を追加設置する必要はない。結局,被告らが当初採用したUTスターコム製のAGWは信頼性が低く,必要な機能を具備していないなどの理由により被告サービス開通に支障が生じたことから,これまでの十分な実績があり信頼性の高い装置である本件RT装置を追加ないし増設機器として設置せざるを得なくなったものと推測される。被告日本テレコムが本件RT装置を設置した事実は,同装置が本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを実現するための必要な機器であること,すなわち本件営業秘密5@の有用性を裏付けるものといえる。
ウ 本件営業秘密5Aの有用性) 本件営業秘密5Aの仕様変更内容は,原告サービスに本件RT装置を a適合させる際の課題内容及びそれに対する対応結果である。原告は,これまで電話通信事業者として有していたノウハウを活用して,ルーセントに対して具体的な仕様を開示し,改修・改良の指示を出し,本件RT装置を共同開発したものであるから,当該サービスに適合させるための仕様変更の内容(その前提である課題内容も含む )である本件営業秘。
密5Aは,原告が保有する情報である。また,原告は,試験,仕様変更等を繰り返し行っており,その内容も多岐にわたっている。これらはすべて,本件営業秘密5Aに該当するものである。なお,本件営業秘密4Aと同様に,仕様変更の前提となる課題内容自体も,それだけで有用性を有するものというべきである。
) 被告らは,ダイヤルパルス方式の追加変更指示は通常の指示にすぎな bいなどと主張し,本件営業秘密5Aはノウハウとは呼べないなどと主張する。しかし,ダイヤルパルス方式の追加変更は,原告による仕様変更において最も重要なものであって,通常の指示などといえるものではない。
) 被告らは,被告日本テレコムが採用したRT装置は,原告が採用した c本件RT装置とは異なるなどとも主張する。しかし,被告日本テレコムが採用したRT装置は,本件RT装置と実質的には同一であるから,むしろ本件営業秘密5Aの内容である仕様変更結果が,原告からルーセントを経由して被告日本テレコムに開示され,被告日本テレコムがそれを使用していることを端的に示しているといえる。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密5@の有用性) 本件営業秘密5の内容自体,不明確であるが,いずれにせよ,既に公 a,。,, 然と知られており 事業活動に有用な情報ではない しかも そもそも被告サービスにおいては,本件RT装置を使用していない。原告は,本件RT装置が,ドライカッパーを利用した直収電話サービスを実現する。, , ために必要な装置であるなどと主張するしかし 被告日本テレコムはAGWを使用して被告サービスを提供していることからしても,原告のAny 主張はその前提を欠くものである被告が追加設置したRT装置は 。,シリーズに属するものではあるが,本件RT装置とは異なるもの Mediaである。
) 乙1文献及び乙2文献により,原告サービスにおける本件RT装置の b位置付け,すなわち,RT装置を使用することによりLS交換機の設置を少なくでき,設備投資額を抑えることができるという情報や,RT装置をNTT-GC局に設置することも明らかとなっており,原告がRT装置の位置付けとして主張する情報は遅くとも平成15年12月には公知となっていたものであるから,有用な情報でもなかったことは明らかである。原告は,これらには表面的な記載しかされていないなどと主張する。しかし,乙2文献には,本件RT装置の位置付けに加え,写真や価格まで掲載されているのであるから,当業者からすれば,本件RT装置の位置付けは容易に判明する事実である。また,乙19文献にも,RT装置の接続例と,同装置の調達先候補としてルーセントが掲げられ,接続実績があることが記載されていた。そのほか,RT装置の機器構成などは,ルーセントのウェブページにおいて公開されている公知情報である。
イ 本件営業秘密5Aの有用性) 本件営業秘密5Aのうち,運用・保守に関するノウハウとされる事項 aも,ダイヤルパルス方式への変更指示などというおよそノウハウと呼べるようなものではないものや,通常行われる仕様変更にすぎない事項であるから,それらが営業秘密としての有用性を有しないことは明らかである。システム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題内容及びその対応結果等も,原告がNTTの技術参考資料等にしたがってNTT仕様に適合するように指示したものや,機器保守上の利便性確保のために機能を追加したものであったりするなど,当然解決しなければならない事項について,いずれも通常のインテグレーション試験の結果,判明した不具合をルーセントが解消したにすぎない。
) 争点4において述べたとおり,製造委託契約においては,対象物の運 b用・保守等に関して生じるノウハウを含む知的財産権が委託者に帰属するとされることは極めて稀である。原告は,原告とルーセントとの間において本件RT装置の運用・保守等に関して生じるノウハウを含む知的財産権が原告に帰属するとの合意がされた事実を何ら主張していない。また,被告らは,ルーセントから,RT装置について原告の営業秘密が関係する旨の指摘は一切されていない。これらがルーセントと原告との共同開発における技術的成果に該当しないことは,NECについて述べたとおりである。
ウ 以上のとおり,本件営業秘密5も,遅くとも本件調査開始時点では,既に,有用性を有しないというべきである。
( ) 争点5-2(本件営業秘密2の非公知性)について 2(原告の主張)ア 本件営業秘密5@に関する情報は,いまだに公知となっているものではなく,具体的に記載されている書面が一般に公開ないし公刊されているという事実もない。
イ 原告とルーセントは,秘密裏に本件営業秘密1を用いた直収電話サービスに適合する本件RT装置を共同開発したものであり,かつ,このような具体的機器に関する詳細な情報は,高度な技術情報であり極めて価値が高いことから,原告とルーセントしか知らない事実であって,全く公開されていないものである。
ウ 被告らは,乙1文献,乙2文献,乙19文献などにより,本件営業秘密5@は公知であるなどと主張する。しかし,本件営業秘密4について述べたとおり,抽象的かつ概括的なこれら各文献により,本件営業秘密5@の非公知性が失われるものではない。
(被告らの主張)争点5-1において述べたとおり,本件営業秘密5は,本件調査時点で,既に公知の情報であったものというべきである。
( ) 争点5-3(本件営業秘密5の秘密管理性)について 3(原告の主張)ア 本件営業秘密5は,原告の代表取締役,技術担当役員,技術系上級管理職従業員が知るのみであり,いずれも各人には機密に取り扱わなければならない旨の指示が出されていた。また,本件営業秘密5のすべてが物的媒体に固定されているわけではないことから,むしろ外部への漏洩が防止されている。本件営業秘密5に関する文書などのうち,秘密である旨が明示されていたり,アクセス制限がされていたものもあることは,本件営業秘密4において述べたとおりである。
イ 原告は,書面化はされていないが,ルーセントとの間で,当初から,本件RT装置の位置付け,機器構成,システム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題の内容及びそれらに対する対応結果(仕様変更)の内容等に関し,原告及びルーセント双方が秘密保持義務を負う旨。, の合意をしていた 原告とルーセントが共同開発した機器に関する情報が秘密保持義務の対象となることは明らかである。したがって,本件営業秘密5は,秘密管理性を有するものというべきである。
ウ 被告らは,原告からソフトバンクBBに対して送付された一部書類にパスワードによる保護が施されていなかったことをもって,原告における秘密管理は徹底していなかったなどと主張する。しかし,原告における秘密管理方法は,個別の電子ファイルごとに個別のパスワードを設定しているのではなく,データ保存場所に対するアクセスに対してパスワードを設定しているものであるから,個別の電子ファイルにパスワードが設定されていないのはむしろ当然である。原告は,被告ソフトバンクやソフトバンクBBが,本件秘密保持契約に基づく秘密保持を徹底するものと信頼して,パスワードを付さずに本件各営業秘密を開示したのである。
エ よって,本件営業秘密5は,秘密管理性を有し,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)ア 争点1-3で述べたとおり,原告がいかに秘密管理規程を定めていたとしても,それらが本件営業秘密5において実行されていなければ秘密管理性を認めることはできない。本件調査において,原告が本件営業秘密5に含まれるという情報が原告からソフトバンクBBに対して電子メールにより送信されたが,パスワードによる保護は施されていなかった。
イ 原告は,ルーセントに対し,本件営業秘密5は原告だけが有する営業秘密である旨説明しているなどと主張する。しかし,仮に仕様変更等が原告だけが有する営業秘密であったならば,原告としては当然ルーセントとの間で秘密保持契約を締結した上で開示するはずであるにもかかわらず,原告は,当初,信義則上の秘密保持義務を根拠とする主張をし,その後,ルーセントとの間にも,NECと同様の合意が成立していたなどと,不合理に主張を変遷させており,いずれにせよルーセントが秘密保持義務を負担していたものと解することはできない。また,仮に,NECと同様の合意がされていたとしても,ルーセントが秘密保持義務を負うのは相手方の情報であって,RT装置の仕様変更等のノウハウは含まれない。
したがって,本件営業秘密5は,秘密管理性を有しないというべきである。
6 争点6(本件営業秘密6は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点6-1(本件営業秘密6の有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密6の内容は,別紙営業秘密目録6記載のとおり,原告サービスの利用状況,収支状況,当該サービスを提供するために導入している設備,機器,装置及び備品等に関する設置状況及び費用情報,その他直収電話サービス事業の収益性・採算性の検討及び判断に有用な情報である。
従来,公衆電話交換網(PSTN: ) Public Switched Telephone Networkにおける回線交換方式による固定電話サービスやISDNサービスはNTTが独占して提供していたため,他事業者がこれらの分野に進出した場合,, の採算性や収益性は全く未知でありこれらの新事業を開始するためには採算性や収益性が重要な検討課題であった。特に,NTTによる独占状態において,新規顧客を獲得し,原告サービスを採算性のある事業として遂行するためには,NTTと同等又はそれ以上のサービスを,NTTよりも低額で提供することが不可欠であった。原告は,いかなる設備,機器や装置を導入し,利用するかについて試行錯誤を重ねた結果,原告サービスを実用化するに至ったのである。
イ 本件営業秘密6には,原告サービスを実施するために必要な電気通信設備をどのような機器構成にするかに関する情報も含まれる。どの商品をいくつ組み合わせてネットワークを構築するか,その場合の費用はどの程度かについては,決して公表されるものではなく,原告による試行錯誤の結果により明らかとなった重要な情報である。そのほか,NTTの電話局に他事業者が電気通信設備を設置するための設置場所の賃借料等(コロケーション・スペース費用 ,IP-VAN構築に必要な費用,電話網展開に )要する費用,電話網の各ケーブルの区間,種別,芯数,利用開始日及び賃借料等も,原告サービスと同様のサービスを提供していく上で極めて重要な情報である。さらに,本件営業秘密6には,原告がNTT局舎に設置している ,本件RT装置に,どのようなパッケージがそれぞれ何枚 Acemapずつ実装されているかを示す一覧表も含まれている。これらにより,全体のネットワークの中で,各局の位置付けに応じて各局舎に設置する設備機器をどのように構成すべきかが明らかになると共に,原告サービスのために各局舎に設置する設備機器の費用を見積もることができるのである。実際,被告らは,本件調査において, の実装図やその価格について Acemap詳細に問い合わせをしており,被告らが主張するとおり,これらがいずれも汎用品の価格にすぎないのであれば,あえて問い合わせをする必要性は存しない。このように,本件営業秘密6は,回線交換方式による直収電話サービスの採算性を検討する上で,電気通信事業者にとって極めて有用な情報である。
ウ 被告らは,本件調査前の段階で,既に被告ソフトバンクは被告サービス開始に必要な各種設備等を採用済みであったから,本件営業秘密6は同サービスを開始するために有用な情報でなかったなどと主張する。
しかし,本件調査前における被告らの電話サービス構想は,被告サービスとは全く異なるものであって,被告らの主張はその前提を欠くものである。被告らは,本件調査開始後,電話サービスの基本構想を回線交換方式による直収電話サービスへと大きく変更したのであるから,本件営業秘密6を利用して,新たに各種設備等の採用を決定したものと推認される。し,, たがって 被告日本テレコムが現在提供している被告サービスにとっても本件営業秘密6が有用な情報であったことは明らかである。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密6のうち,コロケーション・スペース費用やダークファイバなどに関する情報は,本件営業秘密2と同様,接続条件に関する詳細事項として,NTTよりウェブページなどにおいて情報開示されており,公知となっているものであるから,事業活動に有用な情報ではない。また,,, 被告ソフトバンクの子会社であるソフトバンクBB 被告日本テレコムは従前からADSLサービスを提供しており,NTT局舎(GC局)にDSLAM等の設備をコロケーション契約に基づき設置していたから,コロケーション・スペース費用,ダークファイバー費用等については熟知していた。さらに,電気通信事業者であれば,機器構成は独自に決定し得るのであり,どのような機器構成にするかという情報に何ら有用性はない。現に被告日本テレコムは,被告サービスの機器構成を独自に決定しており,原告サービスにおいて使用されているDSLAMや を使用していな AceMapい。
イ 原告サービスの収益性などに関する情報であると原告が主張する情報にしても,いわゆるマイラインと直収電話サービスをおおざっぱに比較した表にすぎないものであったり,各通信事業者によって異なる収益構造を前提としたものであるから,有用性を有しないことは明らかである。原告サービスにおける番号利用状況も,独自に「0ABJ番号」を取得している電気通信事業者にとっては何ら有用性がないものであるし,どの事業者がどの番号を取得しているかについては,総務省のホームページにより把握できる公知の情報にすぎない。
ウ 争点9において詳述するとおり,被告サービスは,本件各営業秘密に何ら依拠することなく,被告日本テレコムにおいて独自に開発したものである。本件調査において,被告ソフトバンクが各装置の仕入れ価格に関する,, 情報について開示を受けたのは 原告の固定資産台帳が不備であったため各装置の資産価値を把握する必要が生じたためにすぎないし,コロケーション等に関する情報について開示を受けたのは,買収価格の妥当性を評価するために実際に稼働している接続状況を把握する必要があったからにす。, , , ぎない そのほか 本件営業秘密6には DSLAMやAceMAPなど汎用品の仕入れ価格が含まれている。しかし,被告日本テレコムは,これらの機器を被告サービスにおいて使用していないし,また,そもそも容易に判明する汎用品の価格が営業秘密に該当するはずがない。
以上のとおり,本件営業秘密6の一部は既に公知であるし,いずれにせ,。 よ有用性がないのであるから 営業秘密に当たらないことは明らかである( ) 争点6-2(本件営業秘密6の非公知性)について 2(原告の主張)ア 原告以外に,原告サービスと同様のサービスを提供していた電気通信事業者はNTT以外には存在しなかったのであるから,原告が通信業界で初めて原告サービスの採算性,収益性などについて算出し,検討したものであって,本件営業秘密6が非公知であることは明らかである。
イ 被告らは,本件営業秘密6の一部は,NTTの情報開示により公知になっているなどと主張する。しかし,NTTのインターネットサイトなどにおいて,これらの情報は開示されていない。また,コロケーション・スペース費用等はNTTに対して所定の手続を経た上でなければ利用できない情報であって,公知ではない。
さらに,被告らは,汎用品の仕入れ価格はメーカーに問い合わせれば容易に知り得るものであるし,被告らは自前の光ファイバー網・基幹系ネットワークを有していたのであるから,ネットワーク構成などについては公知性を有しないなどと主張する。しかし,本件営業秘密6は,原告サービスと同様の直収電話サービスを提供するためにどの機器を採用し,どの程度のコストが生じるかについての情報であるから,汎用品の価格を意味するものではないし,原告サービスと同様の直収電話サービスを提供するためにどの程度のコストが生じるかについては被告らも知らなかったのであるから,汎用品の価格が公開されていたからといって,非公知性が失われるものでもない。
(被告らの主張)争点6-1で述べたとおり,本件営業秘密6は,汎用品の価格などに関する情報や,NTTから容易に入手できる情報などにすぎないのであるから,本件調査時点で既に公知であったというべきである。
( ) 争点6-3(本件営業秘密6の秘密管理性)について 3(原告の主張)本件営業秘密6に関する文書の多くは,原告福岡本部13階の建設部,企画推進部(現在は建設計画部 ,経理部において,それぞれパスワードや施 )錠キャビネットにより保護・管理されているのみならず,物理的なアクセス制限も施されていた。
また,原告の一従業員が本件調査のために新たに作成し,同従業員が使用するコンピュータ内にしか保存されていないものもある。保守運用のため全役員及び従業員が閲覧可能な情報もあるが,閲覧には認証を要し,個々人のアカウントごとの閲覧記録等が記録されるようになっているから,本件営業秘密6の秘密管理性は明らかである。
よって,本件営業秘密6は,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)争点1-3で述べたとおり,原告が秘密管理規程を定めていたからといって,本件営業秘密6の秘密管理性が認められるものではない。原告が本件営業秘密6に含まれると主張する各文書には,機密文書である旨の表示がされていない。本件秘密保持契約も,一般のM&Aにおけるデュー・ディリジェンスを行う際に通常締結される種類のものであり,本件営業秘密6が特に他の営業秘密ではない情報と区別して秘密として厳重に管理されていたものとは認められない。
したがって,本件営業秘密6に秘密管理性がないことも明らかである。
よって,本件営業秘密6は,不正競争防止法における営業秘密に該当しないというべきである。
7 争点7(本件営業秘密7は営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点7-1(本件営業秘密7の有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密7の内容は,別紙営業秘密目録7記載のとおり,原告のネットワークアーキテクチャーに関する情報である。
本件営業秘密7は,原告サービスの全国ネットワーク構成を示したものである。具体的に,どの局舎とどの局舎をどのようなルートで,どのようなファイバーを使って接続するのか,どの局舎にどのような機器を設置するのかなどのネットワーク構成や,各ケーブルの起点及び終点,種別,芯数,利用開始日並びに賃貸借料等を一覧表にしたものなども含まれる。
イ 本件営業秘密7は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおける具体的なネットワーク構成に関する情報であって,同サービスを現実のビジネスとして実現するために技術上必要な情報であるから,極めて有用性が高い。
,, 被告らは 自前の基幹系ネットワークを有している通信事業者にとって本件営業秘密7には有用性がないなどと主張する。しかし,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおけるネットワーク構成と,従来の中継電話サービスのネットワーク構成は異なるのであるから,他事業者が既存の基幹系ネットワークを有していることは,本件営業秘密7の有用性を失わせるものではない。もちろん,他事業者は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを検討するに当たって,本件営業秘密7を参考にしながら,自前のネットワーク構成を考案することになるから,その意味で,本件営,, 業秘密7と同一のネットワーク構成を採用しなくても 本件営業秘密7はなお有益な情報であるといえる。
(被告らの主張)ア 本件営業秘密7の内容自体も,不明確であるというほかないが,被告日本テレコムは,大手電信電話会社として,平成13年時点で,総延長約1万キロメートルに達する自前の国内光ファイバ網・基幹系ネットワークを有していたし,他の大手新電電会社等の電気通信事業者もそれぞれ自前の基幹系ネットワークを有しているのであるから,本件営業秘密7は,そもそも事業活動に有用な情報とはいえない。
イ 原告は,被告日本テレコムが有していたのは,直収電話サービスのネットワークとは異なる中継電話サービスのネットワークであるから,本件営業秘密7はなお有用性を有するなどと主張する。しかし,中継電話サービスか直収電話サービスかによりネットワークの構築方法に違いがあるわけではないことは先に述べたとおりであって,自前のネットワークを有する被告日本テレコムや他の電気通信事業者は,ネットワークの構築方法を熟知しているのであるから,それが何ら有用な情報ではないことは明らかである。また,自前のネットワークを有する被告日本テレコムや他の電気通信事業者のように,既に中継電話サービスを有している場合には,それを利用しつつ,拡張・延長することによって容易に直収電話サービスのネットワークを構築できるのであるから,原告のように一からネットワークを構築する場合とは全く事情が異なる。このことは,原告自ら 「バックボ,ーンや交換機は,従来の中継電話サービスと共用」していること(乙2文献参照)からも明らかである。
また,原告は,本件営業秘密7には,どの局舎とどの局舎をどのようなルートで,どのようなファイバーを使って接続するのか,また,どの局舎にどのような機器を設置するのかという情報が含まれる旨主張する。しかし,それらも乙2文献において平成15年5月12日ころには既に公知となっていた情報であり,有用性を有するものではない。
( ) 争点7-2(本件営業秘密7の非公知性)について 2(原告の主張)ア 本件営業秘密7は,原告サービスのネットワーク構成についての具体的かつ詳細な情報であって,当然のことながら,機密情報として,外部には一切公表されていない。したがって,本件営業秘密7が非公知であることは明白である。
イ 被告らは,乙2文献によって,本件営業秘密7は公知であると主張するが,同文献に記載されている図面や説明は表層的でごく簡単なものにとどまっているのであるから,これらの情報によって,極めて詳細なネットワーク構成を前提とする本件営業秘密7の非公知性が否定されるものではない。
(被告らの主張)本件営業秘密7は,乙2文献により既に公知となっている情報であるし,争点7-1において述べたとおり,自前の基幹系ネットワークを有する当業者にとって,本件営業秘密7程度の内容であれば容易に想到し得るものであるから,むしろ公知であるというべきである。
( ) 争点7-3(本件営業秘密7の秘密管理性)について 3(原告の主張)本件営業秘密7に関する文書は,ほとんどが物理的・技術的なアクセス制限が施されている。また,原告福岡本部13階の建設部において保管され,保守運用のため全役員及び従業員が閲覧可能なものもあるが,閲覧には認証を要し,個々人のアカウントごとの閲覧記録等が記録されるようになっている。したがって,本件営業秘密7には,秘密管理性が認められる。
よって,本件営業秘密7は,不正競争防止法における営業秘密に該当するというべきである。
(被告らの主張)争点1-3で述べたとおり,原告が秘密管理規程を定めていたからといって,本件営業秘密7の秘密管理性が認められるものではない。原告が本件営業秘密7に含まれると主張する各文書には,機密文書である旨の表示がされていない。本件秘密保持契約も,一般のM&Aにおけるデュー・ディリジェンスを行う際に通常締結される種類のものであり,本件営業秘密7が特に他の営業秘密でない情報と区別して秘密として厳重に管理されていたものとは認められない。
したがって,本件営業秘密7に秘密管理性がないことも明らかである。
よって,本件営業秘密7は,不正競争防止法における営業秘密に該当しないというべきである。
8 争点8(本件営業秘密2,3,4@,5@,6及び7は,一体として営業秘密に当たるか )について。
( ) 争点8-1(一体としての営業秘密有用性)について 1(原告の主張)ア 本件営業秘密2,3,4@,5@,6及び7は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを現実のビジネスとして実現させるために必要不可欠な情報であり,これらの情報がなければ,同サービスを現実のビジネスとして実施することは不可能である。したがって,これらの情報は,同サービスを現実のビジネスとして実現するための方法ないし手段として位置付けられる。具体的には,本件営業秘密2は,同サービスを制度上実現するために必要な情報であり,本件営業秘密3,4@,5@及び7は,技術上実現するために必要な情報であり,本件営業秘密6は,採算上実現可能性,, を判断するために必要な情報であってそれらが互いに有機的に結びつき有機的一体として1個の営業秘密を構成する(以下,上記各秘密を総称して 「本件一体的営業秘密」という 。原告は,本件調査において,被告 ,。 )ソフトバンクに対し,書面及び口頭により本件一体的営業秘密を一括して開示したものであり,被告ソフトバンクは,それにより,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを実現するための手段を,いわばワンセットとしてまとめて入手したのである。そしてさらに,被告ソフトバンクは,被告日本テレコムにそれらを不正開示して使用させることにより,被告サービスを開始させたのである。
イ 本件一体的営業秘密が極めて極めて高い有用性を有することは,現に,被告ソフトバンクは,本件調査を通じて,原告から,本件一体的営業秘密を一括して入手し,それをそのまま被告日本テレコムに開示したことにより,極めて短期間で本件営業秘密1を用いた直収電話サービスである被告サービスを実現させたことに端的に現れている。
(被告らの主張)本件一体的営業秘密を構成する各要素は,争点2ないし7において述べたとおり,いずれも有用性を有しないか,非公知性を有しないのであるから,有用性のない情報をいくら集めても,いずれにせよ有用性が高まるものではない。
( ) 争点8-2(一体としての営業秘密非公知性)について 2(原告の主張)ア 本件一体的営業秘密は,まとめて公開されたり,公知となっているわけではないから,その非公知性は明らかである。仮に,本件一体的営業秘密を構成する一部情報が公知になっていたとしても,各情報の組み合わせ自体が非公知である以上,一体としての営業秘密非公知性には何ら影響を与えることはない。本件一体的営業秘密を保有しているのは,原告,原告からその開示を受けた被告ソフトバンク,被告ソフトバンクから不正開示を受けて使用している被告日本テレコムの3社しか存在しない。
先に述べたとおり,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスは,極めて有用性が高く,ビジネスモデルとして高い価値を有しているにもかかわらず,原告以外に同電話サービスの提供を開始した電気通信事業者が存在しなかったという事実,現在においても,原告及び被告日本テレコム以外に同電話サービスの提供を開始した電気通信事業者は存在しない事実,被告らも,被告ソフトバンクが本件調査において原告から本件一体的営業秘密の開示を受けた後に初めて原告サービスと同じ直収電話サービスを検討,, し 被告日本テレコムを通じて提供するまでに至っているという各事実は本件一体的営業秘密が非公知であることを端的に示しているものである。
イ 被告らは,本件一体的営業秘密がまとめて公開されなくても,個別に公開されていれば非公知性は失われるなどと主張するが,公知情報の組み合わせでも,その組み合わせ自体が知られていなければ,非公知性の要件を満たすというべきであるから,本件において,仮に本件一体的営業秘密の一部が公知となっていたとしても,本件一体的営業秘密非公知性には何らの影響を与えないものというべきである。
(被告らの主張)ア 本件一体的営業秘密を構成する各情報がまとめて公開されていなくても,個別に公開されていることなどにより,既に公知となっているのであれば,それらが一体となってもいずれにせよ公知情報であるというほかない。
イ 原告は,現在においても,原告及び被告日本テレコム以外にドライカッパーを利用した回線交換方式による直収電話サービスの提供を開始した通信事業者が存在しない事実が,本件一体的営業秘密が非公知であることを示しているなどと主張する。しかし,先に述べたとおり,ドライカッパーを利用した直収電話サービスについては既に多数の通信事業者が参入している上,原告サービスと回線交換方式かIP方式かという違いしかないドライカッパーの電話音声帯域を利用した直収電話サービスについては,既(「 」 。)。 にKDDI株式会社 以下 KDDI という も提供を開始しているまた,他の通信事業者がドライカッパーを利用した回線交換方式による直収電話サービス事業に参入しない理由には,他に経営資源を投入すべき事業を行っている等,様々なものが考えられるのであって,本件一体的営業秘密なるものが非公知であるからではない。
また,原告は,被告らが本件調査前にはドライカッパーを利用した直収電話サービスを着想していなかった等と主張するが,被告ソフトバンクが本件調査前に当該サービスを着想していたことは先に述べたとおりであるし,被告日本テレコムも,本件調査以前から同様のサービスを着想していたのであるから,原告の主張は失当である。
( ) 争点8-3(一体としての営業秘密秘密管理性)について 3(原告の主張)本件各営業秘密が,それぞれ秘密管理性を有することは先に述べたとおりであって,本件一体的営業秘密秘密管理性を有することもまた明らかである。
(被告らの主張)本件一体的営業秘密を構成する各秘密が,秘密管理性を有しない以上,本件一体的営業秘密もまた,秘密管理性を有しないことは明らかである。
9 争点9(本件各営業秘密不正開示行為及び不正使用の有無)について( ) 争点9-1(被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する不正開示 1行為の有無)について(原告の主張),, ,, ア 原告は 本件調査において 被告ソフトバンクに対し 本件営業秘密12,3,4@,5@,6及び7を開示した(当然,本件一体的営業秘密もまた,開示したことになる 。。)) 原告は,本件調査において,別紙営業秘密目録記載の各書面のほか, a多数の文書をすべて被告ソフトバンクに対して開示したため,被告ソフトバンクは,本件調査を通じて,原告サービスに関する情報を網羅的かつ大量に入手した。その上,原告は,被告ソフトバンクに対し,原告の事業内容や財務内容の詳細をも開示した。原告としては,被告ソフトバンクとの買収交渉は平成16年4月30日には既におおむね合意に至っており,覚書案まで作成されていたから,本件調査に可能な限り協力したのである。
原告は,本件調査において,被告ソフトバンクに対し,原告の代表取締役,取締役や幹部職員が,被告ソフトバンクからの問い合わせに応じるなどして,口頭でも,本件各営業秘密について説明した。本件調査が,平成16年5月2日から20日にかけて,長期にわたり詳細に行われたのも,被告ソフトバンクからの要望に基づくものである。
また,原告は,被告ソフトバンクの社員を原告が設備を設置するNTT局舎を案内して見学させ,本件RT装置についての詳細な説明を行った。
) 被告らは,本件調査において,原告は非協力な態度に終始したなどと b主張する。しかし,先に述べたとおり,原告は,被告ソフトバンクに対して,多数の資料を開示すると共に,口頭で十分な説明を行ったのであるから,被告らの主張は事実に基づかないものである。原告としては,被告ソフトバンクの質問事項は,原告の財務状況,リスク,将来性を検討する上で必要性に乏しい事項が含まれていると思料したものの,買収を検討している被告ソフトバンクとの関係を悪化させることは相当ではなく,また,原告買収後の被告ソフトバンクにとって有益な情報であると考え,被告ソフトバンクに対しては回答を渋ることなくすべて開示したのである。
,, c) 被告ソフトバンクは 本件調査により本件各営業秘密が開示されると同秘密を不正に使用して原告サービスと同様の被告サービスを提供することを企て,被告ソフトバンクが原告を買収する合意がほぼ整っていたにもかかわらず,平成16年5月25日,突然原告との買収交渉を一方的に終了し,同年7月30日,被告日本テレコムを100%子会社とした上で,同被告に対し,本件各営業秘密を不正に開示し,同被告は,平成16年8月30日,被告サービスの開始を表明した。前記のとおり,本件調査により本件各営業秘密の開示を受けるまで,本件営業秘密1を使用した直収電話サービスについてまったく検討していなかった被告らが,被告サービスを極めて短期間に提供開始したこと自体,不自然であ,。 り 本件各営業秘密が不正に開示されたことを強く疑わせるものである被告ソフトバンクが,原告の買収を断念した理由として主張する各事情,。, , も 合理的なものではない しかも原告と被告ソフトバンクの間では平成16年7月ころから,被告ソフトバンクからの申し入れを受けて,原告サービスに関する業務提携交渉が開始され,被告サービスの開始が発表された後には,被告ソフトバンクが原告サービスを買い取るか,借り入れる案などが検討され,代表者間では2度にわたり合意に至っていた。しかし,合意後に被告ソフトバンクから提示された合意書案は,被告ソフトバンクに有利すぎるものであった上に,被告ソフトバンクは,社内稟議を通すためなどの理由により,原告に対し,原告サービスの開局状況や消防との接続状況など,およそ社内稟議とは無関係な事項について詳細な説明を求めるなどした。原告は,被告ソフトバンクが業務提携交渉を口実として,原告サービスに関する情報を被告サービスに利用しようとしているだけではないかと疑い,同年11月,被告ソフトバンクとの交渉を打ち切ったのである。
イ ) 被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対する本件各営業秘密の a不正開示があったことを裏付ける最大の根拠は,被告サービスが,原告サービスとその基本的仕組み及び機器構成において同一であり,サービスの特徴においてもほぼ同一であることである。すなわち,原告サービスも,被告サービスも,いずれもNTT加入者線であるドライカッパーを利用した回線交換方式による直収電話サービスであること,つまり,音声を@ユーザー宅から局内加入者線収容装置までの間は,ドライカッパーの概ね0〜4kHz程度の音声帯域を使用して伝送し,A自前のR,, T装置に集線した上で RT装置において64kデジタル信号に変換しBさらに,V5.2という回線制御方式で本件交換機へ伝送するという点で,全く同じ構造を有する電話サービス(本件営業秘密1の基本原理)。 ,, を用いた直収電話サービス なのである その結果として ユーザーはCNTTの電話加入権がなくとも,D0AB〜J番号を利用して音声電話サービスを受けることができ,さらにEユーザーが希望すればISDNサービスを受けることもできるのである。
) そのほか,本件各営業秘密が被告日本テレコムに対して不正開示され bたことを示す事情として,以下の各事情が挙げられる。
@ 被告らは,平成16年7月30日時点において,A,B,Cの3名が共通して取締役に就任しており,このうちAは,被告ソフトバンクの代表取締役として本件調査に深く関与していた。また,本件調査に先立つ秘密保持契約において秘密開示禁止の対象外とされたソフトバンクBBの本件調査当時の代表取締役であったDは,平成16年7月30日,被告日本テレコムの取締役に就任した。本件調査に深く関与した人物が被告サービスの開発,提供を主導している以上,原告から取得した本件各営業秘密が不正開示されていない方がむしろ不自然である。
A 被告日本テレコムは,当初,本件RT装置は使用していないと主張していながら,実際には被告サービス開始後の平成17年2月25日ころ,本件RT装置を導入した。これらの事実は,被告日本テレコムに対し,本件営業秘密5が不正に開示されたことを端的に示している。
B 本件調査において本件各営業秘密を入手した被告ソフトバンクが中心となって,被告サービスの発表を行っている。
ウ 被告らは,被告日本テレコムは,被告サービスを独自に開発したと主張し,その根拠として,@被告ソフトバンクにおいて,本件調査以前に「局内収容型BBフォン」サービスや「スパイダープロジェクト」を開発していたこと,A被告ソフトバンクは,同被告が開発中であった電話サービスが,総務省によりアナログ電話サービスであると指摘されたことから,回線交換方式による直収電話サービスの検討を開始したこと,B原告サービスと被告サービスには相違点が存することなどを主張する。
しかし,@被告ソフトバンク(実際は,ソフトバンクBBがその主体である )が検討していた各サービスは,具体的な機器構成,NTTとの協 。
議状況など,何も明らかにされておらず,いずれも実現可能性の不確かな計画段階において終了しているし 「局内収容型BBフォン 「スパイダ ,」 ,ープロジェクト」のいずれもIP電話を想定していたものと推測され,そもそも原告サービスとは全く異なるものである。被告らが独自開発の根拠として指摘するAGWは,少なくとも平成16年3月11日までは,IP電話サービス用の装置(VoIP装置)を前提としていたにすぎず,これを運用して回線交換方式の直収電話サービスを提供することは不可能であった。先に述べたとおり,被告サービスとIP電話サービスは,基本的原,, 理も使用装置もまったく異なるのであるから 独自開発を行うのであれば装置の開発,運用試験だけでも長期を要するはずである。被告サービスの開発,AGW(RT装置)の開発等の期間があまりにも短すぎることからすると,本件各営業秘密が不正開示された可能性は極めて高いものというほかない。また,A被告ソフトバンクに対する総務省見解は,被告ソフトバンクが検討していた「局内収容型BBフォン」サービスが制度上実現不可能であることを宣言されたものにすぎなかった。仮に,同見解により,公衆回線網(PSTN)迂回機能を有するIP電話サービスから回線交換方式による直収電話サービスに方針転換したのであれば,その後作成されたBBマイライン(仮)アクセスGW要求仕様書(乙33)において,公衆回線網(PSTN)迂回機能に関する記載があるはずがない。さらに,B原告サービスと被告サービスは,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスであるという基本的仕組みが同一であり,当該基本的仕組みとは無関係な些細な相違点が存在したとしても,原告サービスと被告サービスの同一性を否認する根拠とはならない。しかも,被告らは,被告サービスには本件RT装置が使用されておらず,AGWが使用されているなどと主張するが,両者は名称が異なるのみである。そもそも,本件調査以前においては,AGW(VoIP装置)のメーカー選定がされていた程度であって,AGW(RT装置)のメーカー選定がされていたわけではなかった。被告サービスの開発及び販売に際し,被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対する営業秘密の開示を容易とする環境があり,かつ本件各営業秘密の不正開示がされたことを示す複数の間接事実が存在することからすると,被告らの主張は失当である。
,, , エ 以上の経緯からすると 被告ソフトバンクが 被告日本テレコムに対し本件各営業秘密を不正開示したことは明らかである。したがって,被告ソフトバンクが本件各営業秘密を被告日本テレコムに対して開示した行為は,不正競争防止法2条1項7号が定める不正競争行為に該当するというべきである。
(被告らの主張)ア ) 被告ソフトバンクは,原告の買収や事業提携に必要不可欠な情報と a,,, , して 原告の財務状況 リスク 将来性に関する資料の提出を求めたがこれらは,被告ソフトバンクが原告の買収の可否・当否を判断するうえで必要なものであった。いずれも,原告買収の経済性を測定し,買収後の事業見通しを検討する上で必要な基礎情報であり,原告の買収を検討する上で必要不可欠の情報であった。原告サービスに関する各種情報を入手する目的によるものではない。
) 被告ソフトバンクは,原告買収の検討開始の約半年前である平成15 b年9月ころから,原告とは全く無関係に,直収電話サービス実施のため。, に被告日本テレコムを買収する検討を開始していた 先に述べたとおり被告ソフトバンクは,原告のアドバイザーからの働きかけにより原告との交渉を開始したのであり,原告サービスに関する情報を入手する目的で原告との接触を試みたものではない。被告ソフトバンクが原告買収の検討を開始した理由は,既に回線交換方式による直収電話サービスを開始し,必要設備を有している原告の買収により,被告日本テレコムにおいて企図していた直収電話サービスの開始をより早期化できるのではないかと考えたためである。
) 本件調査も,直収電話サービスの開始をより早期化できるか,原告の c希望する買収価格で原告の企業価値を評価できるかどうか等の確認を含め,公開会社たる被告ソフトバンクの当然の責務として,原告買収の可否・当否を判断するために行われたものであり,原告サービスに関する情報を入手して被告らにおいて使用するために行われたものではない。もっとも,本件調査において,原告サービスには,種々の不具合が存在し,原告の財務関係資料にも不備がみられたので,被告ソフトバンクは,原告の企業価値を原告の希望する買収価格で評価することは到底困難であると判断し,買収を断念したのである。
) 本件調査開始時点で,原告と被告ソフトバンクとの買収交渉が概ね合 d意の段階に至っていたものではない。原告は,覚書案(甲25)も作成されていたと主張するが,結局のところ覚書すら締結されないような状況であった。
) 本件調査において,原告は,M&Aにおけるデュー・デリジェンスで eは数か月間は開設されるのが通常であるデータルームをわずか約10日間しか開設せず,被告ソフトバンクが要求した資料もほとんど開示しなかった。また,原告の取締役などによる口頭の説明も,ごく簡潔な説明のみであり,書類で確認することもできなかった。NTT局舎見学も,原告には固定資産台帳すら整備されておらず,口頭による説明も食い違うような状況において,本件RT装置の確認のために実施されたが,まさに施設を見学しただけの意味しか有さず,口頭での説明を検証する機会は与えられなかった。さらに,原告は,被告ソフトバンクの問い合わせについて,電子メールにて回答することもあったが,それらはいずれも一部についての回答・資料提供があったのみで,原告の企業価値を算定する上で極めて重要な損益計算書や重要業績指数すら開示されないような状況であった。このように,原告は,本件調査において非協力な態度を取っていたのであって,原告が主張するように,本件各営業秘密を含めた詳細かつ具体的な営業秘密が開示されたものではなく,被告ソフトバンクとしては,表層的な情報が得られたにすぎなかったのである。
) なお,平成16年7月以降にも,被告ソフトバンクは,原告と業務提 f携交渉などを行った。しかし,それは,もっぱら原告から要請されたものであって,被告ソフトバンクから試みたものではない。2度にわたる合意を一方的に破棄したのは,むしろ原告である。
イ 原告は,原告サービスと被告サービスが同一のサービスであることが,被告ソフトバンクが被告日本テレコムに対して本件各営業秘密を不正開示した根拠であるように主張するが,被告サービスは,別紙基本サービス詳細記載のとおり,原告サービスとは異なるサービスである。以下,主要な相違点について詳述する。
) 原告サービスと被告サービスにおいては,00xyにかかる国際電話 aの取扱い,UUI(ユーザー間情報通知サービス ,任意チャネル着信)サービス,移転トーキ案内について相違している。
) 原告サービスにおける本件RT装置と,被告サービスにおいて当初か bら使用されたAGWは,加入者線を集線する装置である点では共通しているものの,本件RT装置は一種類のインターフェースしか有しないのに対し,AGWは,3種類のインターフェースを有する点で大きく異なる。すなわち,AGWは,IPネットワーク網や通常の電話回線を2016回線収容できるSTM-1回線との接続が可能で,本件RT装置と比較して,拡張性に優れている。被告ソフトバンクは,AGWを独自に開発し,平成15年4月ころにはその基本設計を終了し,原告との資本提携交渉を開始する前である平成16年3月11日には仕様書のまとめも終了していた。
) 原告サービスと被告サービスでは,ISDNサービスにおける伝送方 c式が根本的に異なる。原告サービスは,ISDNのBRI回線(Basic Rate Interface。乙39)の提供方式においてEC方式(海外仕様)を採用しているため,コンバータが必要となるが,被告サービスでは,コンバータは不要である。
ウ ) 被告ソフトバンクは,平成14年には 「局内収容型BBフォンサー a ,ビス」の開発を開始し,平成15年1月には,使用装置の試験などを行っていた。同サービスは,従来,ユーザー宅内にあったスプリッタ内蔵モデム及びBBフォンターミナルをNTT局社内に設置し,IP網及び公衆回線網(PSTN)の双方に接続できる装置(AGW,アクセスAG,ゲートウェイ,局内VoIP装置 )を設置して提供する 。
ものであり,被告サービスの原型となった。被告ソフトバンクは,平成15年4月ころには,AGWの基本設計などを完了しており,平成16年3月11日には,詳細な仕様書を完成させていた。原告は,AGW(VoIP装置)とAGW(RT装置)は全く異なるなどと主張する。しかし,被告サービスにおいて使用されているAGWにおいては,両者は異なるものではない。
) 被告ソフトバンクは,平成15年12月ころから,NTTに説明を行 bうなどしていたが,平成16年2月6日,総務省より,被告ソフトバンクが検討していたサービスが,IP網を使用した直収電話サービスではなく,アナログ電話サービスである旨の連絡を受けたことから,以後,アナログ方式のサービスを検討することとしたのである。そのため,被告ソフトバンクは,平成16年2月ころから,LS交換機の機種選定を開始したが,買収を検討していた被告日本テレコムがNECのNEAX61ΣJシリーズを採用していたため,同月19日には,同シリーズの採用をほぼ決定していた。RT装置については,遅くとも平成16年2月ころには,ルーセント以外のメーカーに発注することを決定していた。したがって,被告ソフトバンクは,本件調査開始前である平成16年2月までには,直収電話サービスの設備設計と機種選定を終了したものである。原告が主張するように,わずか1か月で被告サービスを開発したものではない。原告は 「局内収容型BBフ,ォン」も 「スパイダープロジェクト」も,IP電話電話サービスを検 ,討していたにすぎないなどとも主張するが,局内収容型BBフォンは,総務省見解を受けて回線交換方式の直収電話サービスに切り替えることとされたのであるし,スパイダープロジェクトは,まずドライカッパーを利用した回線交換方式の直収電話サービスとして開始し,順次IP電話サービスに移行する計画であった。このように,被告サービスは,本件各営業秘密とは無関係に,被告らが独自に開発したものである。被告日本テレコムが長年築き上げたノウハウをもってすれば,従来の直収電話サービスの接続形態を変更するだけで,容易にドライカッパーを利用した直収電話サービスを開始することが可能であったのである。原告サービスが独創的なものではないことは,原告に対して何ら接触をしていないことが明らかなKDDIも,被告日本テレコムが被告サービスの発表をした平成16年8月30日の直後である同年9月15日に,回線交換方式による直収電話サービスである「メタルプラス」の発表をしていることからも明らかである。
エ 被告ソフトバンク及び被告日本テレコムの間で,役員の兼任関係があるからといって,当然に被告ソフトバンクが被告日本テレコムに対して本件各営業秘密を不正に開示したことになるはずがない。そもそも,本件調査は,被告ソフトバンク及びソフトバンクBBの実務レベルの者が行ったのであるから,多忙を極める被告ソフトバンク代表取締役らが原告との交渉に参加したことがあるからといって,被告サービスの開発や提供に関する実務に直接携わることができないことは明らかである。
( ) 争点9-2(NEC及びルーセントによる被告日本テレコムに対する不正 2開示行為の有無)について(原告の主張)ア 原告は,NEC及びルーセントに対して,本件交換機及び本件RT装置について,それぞれ具体的仕様を開示して,その変更を指示しており,NEC及びルーセントに対して,本件営業秘密4及び5を開示したものというべきである。もちろん,原告は,その際,それらが原告の営業秘密である旨の説明をした(仮に,明確な説明をしていなかったとしても,NEC及びルーセントは,本件営業秘密4及び5が原告独自の直収電話サービスに関する情報であることについては当然知っていたのであるから,それらが原告の営業秘密であることを当然知り得たものである 。したがって,。)NEC及びルーセントは,少なくとも原告との間の製造委託契約に付随する信義則上の義務として,本件交換機や本件RT装置の製造過程において原告から示された本件営業秘密4及び5を第三者に開示してはならない義務を負っていたというべきである。
,,, , また 先に述べたとおり 原告とNECは 本件NEC基本契約により互いに秘密保持義務を負担していた。契約書が作成されていたわけではないが,ルーセントも,同様の合意に基づく秘密保持義務を負担していた。
NEC及びルーセントは,本件交換機及び本件RT装置を被告日本テレコムに供給したこと自体により,被告日本テレコムに対し,本件営業秘密4及び5を,それぞれ開示したか,又は各装置に付属している仕様書等の書面を通じて開示したものというべきである。なぜなら,本件交換機及び本件RT装置を入手することにより,本件交換機及び本件RT装置の原告サービスにおける位置付けが開示されたと評価することができると共に,被告らが本件営業秘密4A及び5Aの内容(仕様変更等の結果など)を受領し,その効果ないし利益を享受している以上,これらの営業秘密を取得したものと評価することができ,さらには,装置自体を分析することにより,課題内容の有無,課題内容の克服結果である仕様変更などの情報を入手することができるからである。したがって,NEC及びルーセントの被告日本テレコムに対する本件営業秘密4及び5の各開示は,上記各秘密保持義務違反行為であり,同秘密の不正開示行為に当たるものというべきである。
イ 被告らは,本件調査を通じて,原告がNEC及びルーセントと,本件交換機及び本件RT装置をそれぞれ共同開発した事実が営業秘密であることを知りながら,あえてNEC及びルーセントに対して商談を持ちかけているのであるから,被告日本テレコムが本件営業秘密4及び5の取得について悪意重過失であることは明らかである。
さらに,本件営業秘密4及び5は,NEC及びルーセントから被告ソフトバンク又はソフトバンクBBに対して不正開示され,さらに被告日本テレコムは,NEC及びルーセントの被告ソフトバンク又はソフトバンクBBに対する不正開示行為が介在したことについて悪意重過失で,被告ソフトバンク又はソフトバンクBBから取得したものというべきである。
(被告らの主張)ア 被告ソフトバンクは,NEC及びルーセントから,本件営業秘密4及び同5について,開示を受けていない。
また,被告日本テレコムも,NEC及びルーセントから本件交換機を原告との間で共同開発したとか,原告の営業秘密を利用して製造したなどという説明を受けたこともない。
そもそも機器メーカーが自社製品を販売する際,あえて過去の課題内容やその対応結果を購入者に開示することなどは通常あり得ないことであるから,NECが,NEAX61ΣJシリーズを被告日本テレコムに販売する際,本件営業秘密4Aを開示したはずがない。当然,仕様書にも,本件営業秘密4Aに記載されているような仕様変更等が明示的に記載されているものでもない。
また,原告は,NECが同シリーズの供給自体によって,本件営業秘密4Aを開示したか,又は各装置に付属している仕様書等の書面を通じて開。, , 示したものであるなどと主張する しかし製品の供給を受けただけでは仕様を変更したこと自体や変更前の仕様,さらにはその前提である課題内容に関する情報を取得したことになるものではない。機器メーカーがある会社に納入した製品に不具合が発見された場合,以後,当該製品を納入する場合にはそのような不具合を解消してから納入できることはむしろ当然であり,機器メーカーによる不具合の解消が発注者の営業秘密に当たり,機器メーカーが他社に不具合を解消した製品を製造・販売することが不正開示に当たるなどということは通常あり得ない。当然のことながら,製品の供給を受けた被告日本テレコムが,製品の供給自体が営業秘密の不正開示であることに悪意又は重過失と評価されるはずがないのである。
イ 被告日本テレコムは,単に,営業の顧客獲得予測から見て,AGWの供給が間に合わない可能性があったため,追加機器として シリAny Mediaーズを設置したが,現在も一部被告サービスの仕様に合致しない点があるため,試験導入に止まっている。本件交換機について先に述べたとおり,開発された製品の購入者にとっては開発過程における課題内容に関する情,。 , 報などは 不要であるというほかない 機器メーカーであるルーセントが顧客に自社製品の過去における課題内容などを開示することが通常あり得ないこと,製品の供給を受けたことが変更前の仕様や課題内容などについての情報を取得したことになるわけではないこと 「不正開示について悪 ,意又は重過失であることが観念できないこと」なども,NECについて先に述べたとおりである。
( ) 争点9-3(被告日本テレコムによる不正使用行為の有無)について 3(原告の主張)ア 先に述べたとおり,被告日本テレコムが本件各営業秘密を使用することなく被告サービスを開発したことはありえず,被告日本テレコムは,被告ソフトバンクが本件調査により入手した本件各営業秘密の開示を受け,また,NEC及びルーセントから本件営業秘密4及び5の開示を受け,初めて被告ソフトバンクが従来検討していた電話サービスの問題点を解消させる方法や,NTTとの競争力を有するビジネスモデルが存在することを知り,本件各営業秘密を不正に利用して,被告サービスを開発し,その販売を継続しているものというべきである。
したがって,被告日本テレコムは,被告サービスを実施するために必要不可欠である本件各営業秘密を不正に取得し,それらを利用して,被告サービスを極めて短期間で開発し,発表したものというべきである。本件各営業秘密は,いずれも被告サービスを提供するためには必要不可欠なものであるから,被告サービスを提供すること自体,本件各営業秘密の使用に当たるというべきである。被告日本テレコムは,被告ソフトバンクの100%子会社であるから,被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件各営業秘密の開示行為が,不正競争防止法2条1項7号不正開示行為であること又は本件秘密保持契約に違反する行為であることを当然知っていたし,仮に知らなかったとしても,知らなかったことについて重大な過失が認められる。
イ 被告日本テレコムは,先に述べたとおり被告ソフトバンクから入手した原告サービスに関する情報に基づいて,自ら,NEC及びルーセントに対して,本件交換機や本件RT装置の製造を働きかけたのであるから,NEC及びルーセントによる被告日本テレコムに対する本件営業秘密4及び5の各開示行為が,NECやルーセントと原告との間の秘密保持義務に違反することを知っていたか,又は重大な過失により知らなかったことは明らかである。したがって,被告日本テレコムによる本件各営業秘密の不正使用行為は,不正競争防止法2条1項8号に該当するというべきである。
(被告らの主張)本件各営業秘密は,そのほとんどが遅くとも本件調査開始前に既に公知であり,いずれにせよそのすべてが事業活動において有用な情報ではないところ,被告ソフトバンクは,被告サービスを開始するために必要な各種設備等を既に採用済みであったのであるから,本件各営業秘密は,被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対して開示する必要も,被告日本テレコムにおいて使用する必要性もない。実際,争点9-1及び9-2で述べたとおり,被告ソフトバンク,ルーセント及びNECは,被告日本テレコムに対し,本件各営業秘密を開示してもいないのであるから,被告日本テレコムが本件各営業秘密を使用することもあり得ないのである。
10 争点 (本件各営業秘密不正開示行為及び被告サービスの各差止めの 10必要性)について(原告の主張)( ) 被告日本テレコムは,平成16年12月1日から,本件各営業秘密を不正 1に利用して,被告サービスの提供を開始した。被告サービス開始後であっても,サービス提供に伴う障害を克服するために要する多大の時間と費用を節約し,同サービスを円滑に提供するために,被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対する不正開示行為が継続されるおそれがあることは否定できない。
なお,被告ソフトバンクは,原告買収交渉が合意に至らなかったことを受けて,秘密漏洩を防止する措置を講じており,これらを被告日本テレコムを含む第三者に開示・漏洩したことはないし,今後,開示・漏洩するおそれも全くないなどと主張する。しかし,被告ソフトバンク自身が意図的に本件各営業秘密を被告日本テレコムへ不正開示した以上,仮に被告ソフトバンクがこれらの措置を講じていたとしても,不正開示行為差止めの必要性が存することは明らかである。
( ) 被告による被告サービス提供により,原告は原告サービスに関するノウハ 2ウを含む本件各営業秘密を違法に使用され続け,被告サービスに顧客を奪われる可能性が高い。現に,被告日本テレコムが被告サービスを発表した平成16年8月以降,その前月までは毎月100件未満であった原告サービスの解約数が,毎月100件を超えている。
原告が,不本意にも,再生手続開始の申立てを余儀なくされた原因の一つには,原告が本件各営業秘密を用いて開始した原告サービスと同様の被告サ,。,, ービスが 被告日本テレコムにより提供されたことにある 特に 被告らは本件調査を経て,原告の本件各営業秘密を取得し,被告らが当初検討していた直収電話サービスの形態を変更してまで,原告サービスと同一形態の被告サービスを,本来必要になるはずの多大な時間と費用をかけることなく提供,, するようになった結果 原告サービスの顧客及び潜在的顧客を奪取したため原告サービスの既存顧客の解約の増加及び新規開通数の伸び悩みが生じたことが大きな要因である。そして,このまま,本件各営業秘密が使用された被告サービスが提供され続けるならば,原告サービスの顧客及び潜在的顧客がさらに被告らに奪取されることは確実である。
以上から,原告は,被告らの不正競争行為によって,現に営業上の利益侵害されており,かつ今後も侵害されるおそれが極めて高いことは明らかである。
したがって,被告ソフトバンクによる本件各営業秘密不正開示行為及び被告日本テレコムによる被告サービスの提供を差し止める必要性は高い。
(被告らの主張)先に述べたとおり,被告ソフトバンクなどによる不正開示行為,被告日本テレコムによる不正使用行為が認められない以上,差止めの必要性もまた存しないことは明らかである。
なお,被告ソフトバンクは,原告買収をうち切った平成16年5月31日,, , 以降 秘密漏洩を防止するために 本件調査において受領した資料について余分なコピーを廃棄するとともに,その他の資料についても,施錠された部屋において厳重に保管しており,これを被告日本テレコムを含む第三者に開示・漏洩したことはないし,今後,開示・漏洩するおそれも全くない。
また,被告日本テレコムは,少なくとも本件訴訟が提起されるまで,被告ソフトバンクが上記のとおり本件調査において受領した資料を保管していたことも知らなったし,同資料を取得・使用したこともない。
したがって,被告ソフトバンクによる本件各営業秘密不正開示行為及び被告日本テレコムによる被告サービスの提供を差し止める必要性は,その前提自体を欠くものであるというべきである。
当裁判所の判断
1 本件営業秘密1について( ) 本件営業秘密1の非公知性(争点1-2)について 1ア 原告が主張する本件営業秘密1は,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)の電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を含む全周波数帯域をNTTから借り受け,同メタル(端末)回線において電話音声帯域を使用して提供する回線交換方式による直収電話サービスに関する原理である。
イ ) 電気通信事業紛争処理委員会が,平成15年12月1日付けで作成 aした乙1文献(乙1)には,その別紙「平成電電株式会社の要望する接続形態」記載のとおり,原告がNTTに対して希望する接続形態が図示されており,同別紙図面には,原告がドライカッパーをNTTから借り受け,MDF(主配電盤)を介して原告が設置するRT装置(1台でいわゆるRT及びいわゆるDSLAM及びスプリッタの機能を有する設備)に音声信号を集約した上で,原告が設置するLS交換機に接続する直収電話の形態が記載されている。
() b) 平成15年5月12日ころ発行された雑誌記事である乙2文献 乙2には,次の記載がある。
「……NTT東西地域会社のメタル加入者線を利用した初の直加入電話『』。 , 。 」 平成電話 だ IP電話よりもやすい上に 緊急電話へも発信できる(41頁上段)「ADSL( )などのブロードバンド回線 asymmetric digital subscriber lineを使ったIP電話サービスが注目を集める中,NTT電話と同様の交換機を利用しながら,IP電話より安く機能制限も少ない新手の電話サービスが始まる。……NTT東西会社から電話用メタル加入者線を借り受けて,NTT加入者交換局に置いた集線装置に収容する『直加入電話サービス』である(写真1 (41頁左欄))。」「平成電話がこのような低料金を実現できる最大の理由は,加入者宅から電話局までの加入者線回路に,東西NTTから調達した『ドライ・カッパー (メタル回線を伝送媒体として使う形態のこと)を利用するか 』ら。ドライ・カッパーの仕組みは,xDSLサービスでも使用されているが,平成電話はこれを日本で初めて直加入電話に採用した。平成電話のユーザー間の通話は東西NTTの交換機を通らないため,NTTに支払う接続料が発生しない。……貸し出し料金が徐々に下がっていることも追い風だ。2000年度のドライ・カッパー料金は月額1905円だったが,総務省が認可した2002年度の料金は,NTT東日本で月額1690円,NTT西日本で同1803円。NTT電話の基本料と同様の水準に下がった (42頁)。」「交換機は東京・大阪の2台だけ平成電話は,NTT電話と同じ回線交換技術を使いながら,バックボーンの低コスト化を徹底した。加入者remote 交換局には交換機を一切置かず,1台200万円程度のRT()でドライ・カッパーを集線。その上で,東京と大阪にある2 terminal台の中間交換機のどちらかに直結する(図1。米ルーセント・テクノ )ロジーズ製のRT(写真1)は,ADSLに使うDSLAM(DSL)やISDN用終端装置なども収容でき,投資を抑え access multiplexerながらサービスを増やせる。交換機とRTを結ぶバックボーンも低コスト化を追求した。東西NTTや他の通信事業者などから借りたダーク・ファイバで構築を進めており,8月には全国規模の10Gビット/秒の光バックボーンが完成する。これらのバックボーンや交換機は,従来の中継電話サービスと共用する (42〜43頁)。」また,乙2文献の写真1には 「平成電話が使う加入者線集線装置 ,米ルーセント・テクノロジーズの装置『 。加入電話やIS Any Media』,, 。 。 」 DN ADSL 専用線などに対応自前の中継網へ電話を中継する(41頁)との説明文と共に,本件RT装置の写真が掲載されている。
さらに,図1には 「平成電話の加入者 「東西NTTのGC 「平 ,」,」,成電電の東京局(中継交換機 「大阪局 「GC 「NTT電話の加 )」,」,」,入者へ」などの接続関係が図示されていると共に,以下のとおりの説明文が記載されていた。
「『』。 」 ドライ・カッパーを使った初めての直加入電話 平成電話 の仕組み「網構成 ・交換機は東京・大阪に置いた2台だけ ・RTと交換機の間は,東西NTTや他事業者から借りたダーク・ファイバで結ぶ ・平成電電の電話網と,NTT電話網はZCや一部のGCで接続 ・携帯電話会社とも接続に着手」「アクセス回線 ・加入者線(ドライ・カッパー)はすべてGCに置いたRTで集線 」。
「」 ……GC:加入者交換局 ZC:中継交換局 RT:remote terminal(42頁)) 平成11年10月4日ころ発行された雑誌である乙3文献(乙3)に cは,次の記載がある。
「ドライ・カッパーとダーク・ファイバ 目を覚ます通信インフラの正体 新規事業者が注目する理由 なぜ高速でも安くできるのか (98」頁見出し)「NTTなどが敷設した通信ケーブルを,他の通信事業者が活用する手法が脚光を浴びている。ドライ・カッパーとダーク・ファイバだ (9。」8頁上段)「ドライ・カッパーとは,敷設済みでありながら使っていない銅線ケーブルのこと。……ドライ・カッパー/ダーク・ファイバの活用が本格化すれば,通信サービスの低料金化と高速化が一気に加速する可能性が高まる。……多額の投資と長い時間が必要なケーブル敷設工事を割愛でき。。」 () ること ……最新の伝送技術を利用できること …… 98〜99頁「ドライ・カッパーは12月にも実現 ドライ・カッパーおよびダーク・ファイバの対象となる第1の候補は,日本中に張り巡らされているNTT地域会社の加入者線だ。その大半は銅線ケーブルだが,約3割は途中の区間までが光ファイバに置き換えられている。これまでNTT地域,。 会社は ドライ・カッパーとダーク・ファイバの提供には消極的だったその理由は,@NTTのサービスのために敷設したケーブルを他社に貸,,, したくない A保守・管理ができないため電気通信設備とは言えないB接続したいという通信事業者がいない---の3点だった。だがこれらの指摘は,提供を拒絶する十分な根拠となるものではない。@につい,。 ては NTT地域会社は他社から要望があれば接続に応じる義務があるAの問題は,98年9月まで開催した郵政省の『接続料算定に関する研究会』で整理された。NTTは『電気通信設備でないものを提供するのは,制度的に問題ではないか』と反論したが,研究会は 『電気通信設,備と見なせる。制度的に問題はない』という判断を下した。Bについては,東京めたりっく通信が『ドライカッパーを使いたい』という要望を出した。こうして,99年7月まで,接続料算定に関する研究会の具体的な議論が交わされた。その後郵政省は,NTT地域会社にドライ・カッパーの提供を要請。NTT地域会社もこれを受け入れた (99〜。」100頁)「接続方法を巡り,意見が対立 ……MDF接続では,借り受ける通信事業者がxDSL回線として使う。xDSLには,ADSLのように1。, 本の銅線で電話音声と多重できる製品がある 二つの信号を分けるのが『』。 , , スプリッタ と呼ぶ装置 電話音声と多重するが スプリッタを誰がどこに置くか---などによって接続形態は複数ある (100頁)。」「……ドライカッパーが2000円以下で提供されれば,安いインターネット接続サービスが実現できそうだ。例えば日本テレコムは 『AD,SL機器の価格は1対向で1000ドル以下のレベルまで下がっている。ドライ・カッパー料金が月1631円程度なら,インターネット接続料を含めて月5000円のサービスも可能(経営企画本部経営企画 』部のE担当部長)と試算する(100〜101頁) 。」「ダーク・ファイバで瞬時に全国網を NTT地域会社以外の通信事業者が所有している敷設済み未使用ケーブルの利用はすでに始まっている。例えば,近畿日本鉄道がKDDとDDIにダーク・ファイバを提供中だ。関西電力CATV事業者に提供している(表1 。ほかにも,通)信事業者が大学などに,通信サービスではなく賃貸契約で提供している例がある (101〜102頁) 。」また,乙3文献の図1「MDF接続の形態」には 「・電話回線,x,DSL回線として利用」する形態が図示されており,欄外には 「電話,音声と多重できる=電話音声は4kHz以下,ADSL信号は30kHz〜1MHzと周波数帯を分けて伝送する 」と記載されている。 。
) 平成15年4月2日の原告による原告サービスのプレスリリースにつ d(。「 」 。) いて報道するインターネットニュース 甲1 以下 甲1文献 というには,次の記載がある。
「平成電電は4月2日,直収線の固定電話サービス『平成電話』を6月に開始すると発表した。ユーザーの回線を平成電電のインフラに直収するサービスで,通信料は……業界最安の水準。…… (1頁)」「このような『直収サービス』は,過去にあまり例がない。理由は,NTT局舎内の設備であるRTを,NTT東西が独占的におさえていたことにある。RTとは,加入者宅まで通じる,メタルケーブルを使用する電話線と,局舎から先の光ファイバーバックボーンを中継する装置。平成電電は今回,海外仕様のRTを と から調 Lucent Technology Samsung達しており,全国のNTT局舎内に随時,設置を進める予定。これによ,,,, り ユーザー宅で生じた音声データはメタル回線を通じて 全国10000Kmにわたって敷設された平成電電の光ファイバーバックボーンに入る(直収 。気をつけなくてはならないのは,このメタル線,およ )び光ファイバーを流れるのは“VoIPパケット”ではない点。あくまで,従来の加入者電話網で利用されてきた通信方式を採用する。……1局あたりのRT設置料は200万円程度。10月までに全国1,138カ所,年内には2,000カ所以上にRTを設置する予定で,これにより地域カバー率は9割に達する見込みだという (2〜3頁)。」) NTTコミュニケーション情報誌平成8年10月号 乙24 以下 乙 e (。「24文献」という )には,次の記載がある。 。
「加入者回線接続の取り組み……NTTは1995年9月に,加入者回線接続を含む,アクセス系のオープン化の考え方を発表し,1996年3月に電話の加入者回線接続のインターフェース開示を行いました 」.(24頁)「加入者線回線接続とは,加入者回線がNTTの交換機に入る手前で他事業社者向けに振り分け,他事業者の交換機によるサービスを受けられるようにするものです.……加入者回線接続では,NTTの持っている,. 加入者回線設備を 他の通信事業者の交換機に接続できるようにしますこれにより,新しい通信事業者はサービス開始当初からすべての加入者への回線設備を用意しておかなくてもサービスを開始することが可能となります (図1 (24頁) .).」「加入者回線接続の考え方 NTTの加入者回線を他事業者の通信網に接続する場合,現在加入しているお客様への影響や今後のネットワークの高度化計画との影響を考慮して,以下の条件を前提として相互接続する方法を考えています (1)試験・切分けなどのオペレーションが容 .易であること……(2)ネットワークハムを防止すること……(3)事業者間の振分けが容易であること……(4)伝送媒体により接続に影響を受けないこと (25頁)」「電話サービスにおける加入者回線接続の方法(図2) 電話サービスでは,加入者回線接続装置を介して加入者線回線接続を実現します.このインタフェースはNTTの代表的な加入者交換機であるD70向けにつくられているインタフェースです.相互接続は標準的なインタフェースで行うことが望ましいのですが,加入者回線と交換機との間のオープン化のための標準インタフェースは現在,存在していません.また,このインタフェースを標準化してからオープン化するのでは時間がかかってしまいます.早期実現するために,NTTが現在使用しているインタフェースを開示することとしました.将来的には標準化を行い,標準インタフェースで接続することを考えています.なお,加入者回線接続装置については,順次導入を進めており,数年で全国の主要ビルに設置される予定ですが,それ以外のビルで早期接続の要望がある場合には,加入者ケーブルの光化時にはインタフェースを変更していただくことを前提として,RT(遠隔多重化装置)から直接接続する形態にも対応していきます (25〜26頁).」「電話加入者回線接続のインタフェース 電話加入者回線接続のインタフェースでは,物理インタフェース,伝送フレーム構造,および加入者回線監視・制御インタフェースについて規定します(図3 .物理イン)タフェースは加入者回線接続装置と交換機の間のインタフェースとして156Mbit/sの光インタフェース仕様(図4)および伝送フレーム仕様(図5)を規定しています.電話サービスを実現するための基本である音声を運ぶ通話情報インタフェースとともに,加入者回線を制御する監視・制御インタフェースを規定します(図6 .監視制御インタ)フェースは,D70交換機固有のインタフェースを規定しています.また,伝送フレーム構造として通話情報と監視制御情報の割り当て方法も規定します.ここで監視信号とは,交換機が加入者回線のループの有無を監視するための信号のことであり,制御信号とは交換機から加入者回線に対する給電の状態を変化させたり,呼出信号音源の制御を行ったりするための信号をいいます (26〜27頁).」また,乙24文献の図1ないし6には,加入者回線接続におけるLS交換機,RT装置の設置位置などと共に,接続形態が紹介されている。
) 平成15年4月14日ころ発行された雑誌(乙22。以下「乙22文 f献」という )には,次の記載がある。 。
「この電話サービス『平成電話』は,一般家庭や企業にNTTが引いた電話回線を,平成電電が1回線当たり月額1400円程度で借りてサービスを行う。加入者はNTTと契約する代わりに,平成電電に月額基本料1800円(法人は2400円)を支払う。この結果,平成電話の加入者同士は,月額300〜500円を追加すれば通話が無料になった。
電話回線をNTTから借りる仕組みは,そもそもネット接続業者がADSL(非対称デジタル加入者線)サービスを提供できるように整備され。, たもの ……かつては地域電話局ごとに必要だった高価な電話交換機は東京と大阪に1台ずつ導入しただけ。音声データを光ファイバー経由でセンターに集めれば,少ない台数で処理できるからだ。音声と光信号を変換する装置は,1台200万円程度のものを海外メーカーから購入。
NTTの設備がある地域電話局のスペースを借り,全国1138カ所,年内に2000カ所に設置する。…… (13頁)」ウ ) 乙1文献には,ドライカッパーをNTTから借り受け,MDF(主 a配電盤)を介して他事業者が設置整備するRT装置に集約した上で,LS交換機に接続する直収電話サービスの構成が開示されている。
) 乙2文献には,NTTからドライカッパーを借り受け,NTT-GC b(NTT局舎)においてルーセント社製の シリーズ(1台 Any Media200万円程度)を設置し,これを東京局と大阪局に各設置した2台のLS交換機と結ぶ直収電話サービスの構成が,サービス加入者,NTTのGC(NTT局舎 ,サービス提供者の東京局(中継交換機)及び大 )阪局,GC,NTT交換網などの接続関係図と共に開示されている。
) 乙3文献には,NTTのドライカッパーを借り受けた直収電話サービ cスを開始することが可能となっており,同サービスにおける接続形態と,。 して 電話回線及びxDSL回線として利用する形態が開示されているなお,同文献には,xDSL回線と多重できる電話音声は4kHz以下であることも開示されている。
) 甲1文献には,原告が,加入者宅まで通じるメタルケーブルを使用す dる電話線と,局舎から先の光ファイバーバックボーンを中継するRT装置をルーセントなどから1台200万円程度で調達したことにより直収電話サービスを実現したことが開示されている。
,, , , e) 乙24文献には NTTが 平成7年9月に 加入者回線接続を含むアクセス系(ドライカッパーを含む)の自由化を発表し,平成8年3月に,電話の加入者回線接続のインターフェース開示を行ったこと,加入者線回線接続,すなわち,加入者回線がNTTの交換機に入る手前で他事業者向けに振り分け,他事業者の交換機による電話サービスを受けられるようになること,NTTとの相互接続条件としては (1)試験・,切分けなどのオペレーションが容易であること (2)ネットワークハ ,ムを防止すること (3)事業者間の振分けが容易であること (4) ,,伝送媒体により接続に影響を受けないことが挙げられることなどが開示されている。
) 乙22文献には,原告が,ドライカッパーを1回線当たり月額140 f0円程度でNTTから借り,音声データを光ファイバー経由でセンターに集めることにより地域電話局ごとに必要だった高価なLS交換機の設置数を東京と大阪の各1台のみで対応し,さらに,音声と光信号を変換する装置として1台200万円程度の海外メーカー製品を全国のNTTの地域電話局のスペースを借りて設置することにより,直収電話サービスを実現可能としたことが開示されている。
エ 甲1文献,乙1文献,乙2文献,乙3文献,乙22文献及び乙24文献により開示されている各事項を総合すると,NTT加入者宅からNTTの地域電話局との間に設置されたドライカッパーを,その電話音声帯域(4kHz以下)を含んでNTTから借り受け,NTTのGC(NTT局舎)にルーセント製のRT装置(1台200万円程度)を設置し,これを東京と大阪の2か所に設置したLS交換機と光ファイバー経由で接続するとのネットワーク構成を構築した上で,同回線において電話音声帯域を使用する回線交換方式による直収電話サービスを行うことができることは,これらの文献のうち,最も遅く発行された文献である乙1文献が発行された平成15年12月1日ころには当業者である電気通信事業者においては公知であったというべきである。原告が遅くとも平成15年11月ころから,国内において初めての回線交換方式による直収電話サービスを実施したものであるとしても,原告と被告が本件秘密保持契約を締結した平成16年4月2日には,本件営業秘密1は,上記各文献において,既に開示されていたものである。したがって,本件営業秘密1は,非公知性を欠くものであり,営業秘密として保護されるべきものではない。
原告は,本件営業秘密1は,従来全く存在しなかった原告独自の直収電話サービスの形態であり,乙1文献ないし乙4文献にはいずれも原告サービスとは異なる形態の電話サービスが記載されているにすぎなかったり,原告サービスについて概括的な紹介記事が記載されているにすぎないものであるから,これらに記載された断片的な情報からは,原告サービスの基本原理である本件営業秘密1を推知することは不可能であるなどと主張する。
しかし,先に述べたとおり,上記各文献においては,LS交換機及びRT装置など,本件訴訟において原告が原告サービスを構成する重要な機器であると主張する各機器について,その位置付けや本件RT装置の価格まで記載されており,ネットワーク構成についても,乙1文献及び乙2文献には,原告サービスを前提とした具体的な開示がされているものであるから,これらの文献の記載は概括的,断片的,表面的な記載とはいえず,当業者である電気通信事業者からすれば,原告が本件営業秘密1であると主張する直収電話サービスに関する原理を認識することができることは明らかである。原告の主張は採用することができない。
( ) よって,本件営業秘密1は,その余の点について判断するまでもなく,営 2業秘密に当たるものと認めることはできず,本件営業秘密1に基づく原告の請求は理由がない。
2 本件営業秘密2について( ) 本件営業秘密2の有用性非公知性(争点2-1,2-2)について 1ア 原告が主張する本件営業秘密2の内容は,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)において電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を使用して提供する回線交換方式による直収電話サービスに関して,原告がNTT東日本及びNTT西日本との間で交渉し,合意又は確認した事項である。
原告が本件営業秘密2に含まれると主張する別紙2-1「NTT東日本と平成電電間の相互接続に関する受付等事務処理確認事項 (第2版。平」成15年11月 ,別紙2-2「NTT西日本と平成電電間の相互接続に )関する受付等事務処理確認事項 (第0・0版。平成15年11月)は, 」*************************************************************************************************************************************************************************************************************また,原告が本件営業秘密2に含まれると主張する別紙2-3「相互接続協定変更書 (甲20。平成15年7月1日付け。原告とNTT東日本 」との間で締結されたもの)及び別紙2-4「相互接続協定変更書 (平成」15年7月1日付け。原告とNTT西日本との間で締結されたもの)に記載された内容は,**************************************************************************************************************************************************************************************************************************さらに,別紙2-5「東日本電信電話株式会社の音声帯域回線と平成電電株式会社の音声帯域回線収容装置との接続及びITU-T勧告G.991.2SHDSL方式のDSLサービス又は直収電話重畳しているDSLサービスを提供するDSL回線を利用した相互接続に関する事業者間確認事項 (平成」15年7月9日付け)に記載された内容は,****************************************************************************************************************イ 不正競争防止法における「営業秘密」とは,秘密管理性非公知性のほかに,有用性,すなわち 「生産方法,販売方法その他の事業活動に有用 ,な技術上又は営業上の情報 (平成17年法律第75号による改正後の同 」法2条6項)であることを要する。したがって,原告の事業活動に役に立つ技術上又は営業上の情報であるならば,それは,有用性の要件を充足することになるものである。原告が営業秘密2であると主張している上記各情報は,原告がNTTと交渉して確認した事項であるから,原告が原告サービスを遂行するに当たって,有用な情報であることは明らかである。また,上記情報の中には,公知である原告サービスの構成から当然に推認される内容や公表された接続約款をそのまま準用するものなどもあるものの,原告がNTTと交渉し,確認した上記の相互接続に関する受付等事務処理確認事項及び相互接続協定変更書並びに相互接続に関する事業者間確認事項の内容自体は,公表されていないものであり,その確認事項がどのようなものであるかは一般に知られているということはできず,その非公知性も一応認められる。したがって,原告が営業秘密2として主張する上記各情報は その秘密管理性が肯定されれば 不正競争防止法における 営 ,,「業秘密」として保護されるべきものである。
( ) 被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件営業秘密2の不正 2開示行為の有無(争点9-1)について原告が本件営業秘密2として主張する上記各情報は,その秘密管理性が肯定されれば,不正競争防止法における「営業秘密」として保護されるべきものであることは前記のとおりである。しかし,本件全証拠によっても,これらの情報を被告ソフトバンクが被告日本テレコムに開示したことを認めるに足りる証拠はない。その理由は次のとおりである。
ア NTTは,電気通信事業法上の第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者でもあるから,他事業者との接続条件について接続約款を定めて総務大臣の認可を受けなければならず,他事業者に対し不当な差別的取扱いをすることは,当該認可の不適合事由とされている(電気通信事業法33条4項4号 。そして,NTTは,電気通信市場における公正競争を )促進し,電気通信全体の均衡ある発展を図るという観点から,接続約款を,,, 公表し 相互接続を行う電気通信事業者に対し 相互接続上必要な情報を(,,, 法的保護義務等のあるものを除いて開示している 甲16 乙11 1227 。さらに,電気通信事業者であるNTTが,電気通信設備の接続等 )について他事業者に対し不当な差別的取扱いをすることは,総務大臣による業務改善命令等の対象とされている(電気通信事業法29条1項11号。)イ 原告が本件営業秘密2に含まれると主張する別紙2-1ないし2-5記載の上記各情報は,NTTと原告間における相互接続に関する受付等事務処理確認事項,相互接続協定変更書及びNTTの音声帯域回線と原告の音声帯域回線収容装置との接続及びDSL回線を利用した相互接続に関する事業者間確認事項である。これらの情報は,被告日本テレコムが被告サービスを実施しようとする場合には,必然的にNTTと協議しなければならない事項である。そして,NTTは,他事業者に対し不当な差別的取扱を禁止されているのであるから,公示されている接続約款等に基づき,原告サービスと基本的な構成を同じくする被告サービスを営む被告日本テレコムに対し,その協議の過程において,本件営業秘密2と基本的に同じ内容を確認事項案として開示する義務を負う。現に,被告日本テレコムとNTTとの交渉内容の経緯に関する電子メールには,NTTが格別交渉すべき事項を秘匿していたり,交渉に消極的であるかのような記載も見られないのである(乙42〜46 。したがって,被告ソフトバンクが本件秘密保 )持契約に反してまで本件営業秘密2を被告日本テレコムに開示する必要性はほとんどないのである。
ウ なお,原告は,回線交換方式の直収電話サービスのパイオニアであることは事実であり,NTTのドライカッパーを利用したこのような事業を成立させる過程において,NTTとのさまざまな困難な交渉を経て,ようやく別紙2-1ないし2-5の各確認事項及び相互接続協定変更書の締結に至り,その事業を実現するに至ったことは容易に推認することができると()。, , ころである 甲69 しかし 原告の事業がひとたび実施された以上はNTTは,原告に続く第2,第3の電気通信事業者に対し,その差別的取扱をすることを禁じられているのであり,被告日本テレコムやKDDIなどの他事業者を原告と平等に取り扱わなければならず,これらの他事業者が原告よりも短期間にNTTと交渉し,上記各確認事項及び相互接続協定変更書とほぼ同一ないし類似の内容を合意し,その事業を実現することになったとしても,特段異とすべきことではない。
( ) よって,本件営業秘密2に基づく原告の請求は,理由がない。 33 本件営業秘密3について( ) 本件営業秘密3の有用性,非公知性及び秘密管理性(争点3-1ないし3 1-3)についてア 原告が主張する本件営業秘密3の内容は,原告及びNECが協同して,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービス事業に不可欠なLS交換機を開発した結果,NECが,NTT交換機以外では国内唯一の当該直収電話サービス事業に適合するLS交換機を製造することが可能になった事実(NTT以外の通信事業者にとって,これまで事実上入手不可能であった当該直収電話サービスに適合するLS交換機が,NECから調達可能となった事実)である(このうち,原告とNECが共同して開発したかどうかは,後記のとおり,争いがあるところであるから,以下,原告サービスに適合するLS交換機をNECから調達したとの事実を本件営業秘密3として論じる 。。)イ 前記1において認定したとおり,本件営業秘密1すなわち原告サービスの基本的なシステム構成は,平成15年12月1日ころには当業者である電気通信事業者においては公知であったものであり,原告の回線交換方式による直収電話サービスにおいて,原告が設置するLS交換機を利用することは公知の事項であった。
,, , , また NECは 昭和62年9月16日ころにおいて 富士通株式会社株式会社日立製作所,沖電気工業株式会社と並ぶ通信機メーカー大手4社として知られており(乙13 ,昭和52年ころ,LS交換機「NEAX )61」を発表し(乙14 ,平成元年5月ころには,同機種の1号機が稼 )動し(乙15 ,同機種は,昭和61年11月15日ころには,受注累計 )が1000万回線を超え,開局数も1000局を上回り,北米を除く世界市場においては第2位の地位を占めるに至ったものである(乙16 。ま)た,被告日本テレコムは,平成12年8月11日ころ,NECより,NEAX61ΣJシリーズの1機種であるNEAX61ΣJ-LSについて,国内複数のキャリアで採用され,現在稼働中の交換機であると紹介されており,同時点において,同交換機が日本国内において既に複数機稼働していることを知っていた(乙17 。さらに,被告ソフトバンクの子会社で )あるソフトバンクBBも,平成16年2月19日ころに計画していた直収電話サービスであるスパイダープロジェクトにおいて,既にNECのNEAX61ΣJシリーズを採用することを独自に検討していた(乙18 。)また,UTスターコムは,平成16年4月20日,被告ソフトバンクに対し,RT装置に接続するLS交換機(加入者線交換機)として,NECのNEAX61Σシリーズに接続実績があることを他社の2機種と共に紹介していた(乙19。なお,RT装置として,ルーセント製品も紹介されている 。。)ウ 乙1文献,乙2文献,乙3文献及び乙24文献においては,本件交換機やNEAX61ΣJシリーズが利用されることまでは明記されてはいないものの,上記のとおり,NECが少なくとも海外仕様のLS交換機を昭和52年ころから製造販売し,海外において多くのシェアを獲得するに至っており,被告日本テレコムも,平成12年8月11日ころには,NEAX61ΣJシリーズが既に国内において交換機として採用されているとの情報を入手していたのであること,被告ソフトバンクの子会社であるソフトバンクBBも,平成16年2月19日ころ計画していた直収電話サービスにおいて,既にNECのNEAX61ΣJを採用することを独自に検討していたことからすれば,本件調査開始当時において,NECが回線交換方式による直収電話サービスに適合し得るLS交換機であるNEAX61ΣJを製造する能力を有すると考えられる有力な国内メーカーであることは既に業界内において知られていたことであるというべきである。しかし,原告サービスにおいて,実際にNECのNEAX61ΣJが実用化され,稼働しているとの事実と,NECが回線交換方式による直収電話サービスに適合し得るLS交換機であるNEAX61ΣJを製造することが可能な有力な国内メーカーであることとは,別なことであり,NECが原告サービスに適合するNEAX61ΣJを実際に納入し,これが実用化されているとの本件営業秘密3は,本件調査開始当時において少なくとも有用性を有する情報であるというべきであり,また,これが公知の情報であったことを認めるに足りる証拠はない。
エ しかし,NECが回線交換方式による直収電話サービスに用いるLS交換機として本件交換機を製造していたとの事実が本件調査当時に知られていなかったとしても,NECは,電気通信事業において用いられるLS交換機の製造能力を有する有力企業の一つであるから,電気通信事業者としては,回線交換方式による直収電話サービスを開始するに当たって,LS交換機のメーカーとして,国内大手4社の中からLS交換機として大きなシェアを有しているNEAX61ΣJシリーズを製造販売するNECに対し問い合わせをすることは極めて自然なことであり,その際に,NECが同直収電話サービスにおいて採用し得るLS交換機としてNEAX61ΣJシリーズを推奨することも当然である。そして,製造メーカーであるNECは,本件NEC基本契約(同契約の有効期間は,平成16年4月1日から同17年3月31日であり,また,その契約締結日は本訴提起後の平成17年3月11日であって(甲38,原告とNEC間の本件交換機の )取引基本契約の後に締結された契約であるものの,他に契約書が作成されていないこと及び同契約の内容と弁論の全趣旨から,原告とNECとの間では,本件交換機の開発譲渡については,口頭で同契約と同内容の合意がなされていたこと,及び,その口頭の合意の内容が同契約により書面で確認されたものと認める )の21条において 「個別契約の履行に関して 。,知り得た相手方の情報」については,守秘義務を負っているものの(甲3),, 8 NECにおいて原告サービスに適合するNEAX61ΣJを納入しこれが実用化されているとの情報は,NEC自身の業務実績に関する情報でもあり,NECが守秘義務を負うべき「個別契約の履行に関して知り得た相手方の情報」に当たるということはできないのであるから,NECが上記契約において守秘義務を課されるものではない。したがって,原告サービスに適合するLS交換機であるNEAX61ΣJをNECが納入し,これが実用化されているとの情報については,NECがその業務実績として電気通信事業者である顧客に開示することができる情報であるから,原告がこれを秘密として管理することができる情報であると認めることはできない。
原告は,原告の代表取締役は,NECに対して,本件営業秘密3に該当する情報を他事業者に開示しないように依頼している,と主張するが,同主張事実を認めるに足りる証拠はない。
オ 以上によれば,本件調査開始当時に,原告が原告サービスに適合するLS交換機(NEAX61ΣJ)をNECが製造販売していたことが非公知であったとしても,NECが原告サービスに適合しうるLS交換機をNEAX61ΣJシリーズの中から製造販売していたとの情報については,秘密管理性があると認めることはできない。
( ) よって,本件営業秘密3は,その余の点について判断するまでもなく,営 2業秘密に当たるものと認めることはできず,本件営業秘密3に基づく原告の請求は理由がない。
4 本件営業秘密4について( ) 本件営業秘密4の内容について 1原告が主張する本件営業秘密4@は,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスにおける当該サービスに適合する本件交換機の位置付け及び機器構成であり,本件営業秘密4Aは,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスに適合させるための本件交換機のシステム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題の内容及びそれに対する対応結果(仕様変更)の内容である。
( ) 本件営業秘密4@の有用性及び非公知性及びその帰属主体(争点4-1, 24-2)並びに被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件営業秘密4@の不正開示行為の有無(争点9-1)についてア 原告は,本件営業秘密4@の本件交換機の位置付け及び機器構成は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおける同交換機の意義,機能,利点及び他の機器との接続に関する事項であり,本件営業秘密4@に含ま,,, 。 れる営業秘密として 別紙1-1 3-1 4-1及び4-2を指摘する別紙1-1「 」には 「直収線サービス『平成電 Basic Information Package,話』の概要」として,ユーザー,RT装置,LS交換機の位置付けが記載されており,別紙3-1「Σ御見積書」には,本件交換機の見積が,別紙4-1「平成電電基幹網ルート図」には,原告における本件交換機の設置,「 」, 場所及びネットワーク構成が 別紙4-2 局舎ごと設備機器一覧 には全国のNTT局舎に配置される原告の設備機器などが記載されている。
イ 原告の回線交換方式による直収電話サービスの構成については,1において認定したとおり,乙2文献において,原告の基本的なシステム構成,すなわち,NTTからドライカッパーを借り受け,NTTの各地域局舎にルーセント製のRT装置を設置し,原告の東京局及び大阪局の2か所のみにLS交換機を設置するとの構成が開示されており,本件交換機の基本的な位置付け及び機器構成が開示されている(ただし,別紙4-1及び4-2に記載されているような,NTTのどの地域局舎に具体的にどのような機器を設置するかということまでは開示されていない 。よって,原告。)が主張する本件営業秘密4@における本件交換機の位置付け及びその機器構成のうち,その基本的な位置付け及び機器構成は既に公知となっていることから,その非公知性が認められないことは明らかである。
ウ 本件交換機の具体的な位置付け及びその機器構成(別紙4-1及び4-2に開示されているような,NTTのどの局舎に具体的にどのような機器を設置するということ)と別紙3-1の本件交換機とその機器構成の見積価格については,これが公知であることを認めるに足りる証拠はなく,その非公知性を肯定することができる。また,これらの具体的な本件交換機の位置付け及び機器構成とその見積価格は,原告の事業にとって役に立つ情報であるから,その有用性も肯定することができ,その秘密管理性を認めることができれば,これを不正競争防止法における営業秘密として保護すべきである。
しかし,前記1認定のとおり,乙2文献において,原告の基本的なシステム構成,すなわち,NTTからドライカッパーを借り受け,NTTの各地域局舎にルーセント製のRT装置を設置し,原告の東京局及び大阪局の2か所のみにLS交換機を設置するとの構成が開示されており,本件交換機と本件RT装置の基本的な位置付け及び機器構成が開示されていること,及び,前記3において認定したとおり,NECが回線交換方式による直収電話サービスに適合し得るLS交換機であるNEAX61ΣJを製造販売する能力を有すると考えられる有力な国内製造メーカーであることが,遅くとも本件調査開始前において,電気通信事業者間では十分に知られていた情報であったこと,並びに,NTTが接続約款などでNTTとの相互接続に関する情報を開示していることからすると,電気通信事業者にとって,回線交換方式による直収電話サービスにおけるLS交換機やRT装置等の具体的な機器構成については,NECやルーセント等の製造メーカーとの協議などによって具体的に決定し得る事項であり,また,その価格については,製造メーカーからの見積もりにより容易に判明する情報であるというべきである。また,回線交換方式による直収電話サービスにおけるLS交換機やRT装置等の具体的な機器構成及びその見積価格については,各事業者の基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量に従って,各事業者と各製造メーカーとの間で協議の上で決定されるべきことであるから,原告の基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量を前提とした具体的な機器構成やその見積価格が,他の事業者にとって,直接的に利用し得る有用な情報となるわけでもない。
したがって,これらの情報は,基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量などの前提となるものが異なる被告らにとっては,直接的に有用な情報であるということはできず,また,上記のとおり,製造メーカーとの協議や見積もりにより決定され,あるいは,判明する事柄であるから,被告ソフトバンクがこれを本件秘密保持契約に反し,被告日本テレコムに開示する必要性もないというべきである。本件営業秘密4@における本件交換機の具体的な位置付け及び具体的な機器構成に関する情報については,本件全証拠を検討しても,これを被告ソフトバンクが被告日本テレコムに開示したことを認めるに足りる証拠はない(なお,被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件一体的営業秘密ないしその一部の不正開示行為があったとは認められないことの詳細については,後記7認定のとおりである 。。)( ) 本件営業秘密4Aの有用性及びその帰属主体(争点4-1)並びにNEC 3による本件営業秘密4Aの不正開示行為の有無(争点9-2)についてア 本件営業秘密4Aは,原告が本件交換機のシステム調整,接続試験及び調整試験を行った過程で生じた課題の内容とその対応結果(仕様変更)の内容であり,本件交換機におけるCPU処理能力不足,ISDN回線における不具合,NTTにより提供されている交換機付加機能と同様のサービスが提供できないという問題点に対して,本件交換機のハードウェア及びソフトウェアを改良したことをその内容とするものであり,原告の事業にとって役に立つ情報であるから,その有用性を肯定することができる。
しかし,原告とNECとの本件NEC基本契約においては,原告とNECが共同でなした発明,ノウハウ等の技術的成果は,両者の共有とし,それぞれ,相手方の了承も,対価の支払いもなく自ら実施することができること,及び,単独でなした発明及びノウハウは,当該発明等をなした者に単独で帰属すること,並びに,コンピュータ・ソフトウエアに係る著作権は,原則として,NECに帰属することが定められている(甲38,同契)。, 約書14条ないし16条参照 本件NEC基本契約のこの条項によればNECが単独でなした発明及びノウハウはNECに単独で帰属するのであり,仮に,注文者である原告が本件交換機を導入後に試験を行い,その能力を評価,検証し,課題ないし解決方法について助言をしたとの貢献により当該ノウハウについてNECと共同発明者であると評価することができる場合があるとしても,上記契約によれば,NECは,単独でこのノウハウを実施することができるのである。また,コンピュータ・プログラムの著作権については,その権利はすべてNECに帰属する。
そして,原告が,共同開発の根拠として提出するNECが作成した各文書(甲47〜49 ,原告とNEC間の電子メール(甲57〜61)の中 )には,原告が不具合を指摘し,NECに対応を依頼している内容を含むものがあるものの,技術的な対応策については,いずれもNECにより提案されているものであるから(NECは,本件RT装置の機能追加,変更及び問題点の対処についても対応しているものである。甲49 ,注文者。)が自らが導入した機器について不具合が生じ,メーカーに対し対応を求めたことをもって,注文者である原告を本件交換機に関するノウハウ(本件営業秘密4A)について共同開発者とみることは原則として困難である。
NECが原告による課題の指摘に応じて,本件交換機のハードウエア及びソフトウエアに改良を加え,本件交換機に関して何らかの有益なノウハウ,, を得たとしても それは原則としてNECが自社で製造した製品について製造メーカーとして単独で発明したノウハウであると解すべきである。
以上によれば,NECが本件交換機の開発譲渡の際に,単独で,あるいは,原告と共同で何らかのノウハウを取得し,その一部ないし全部を被告日本テレコムに対し開発譲渡したLS交換機に利用したことがあったとし,, ても これはNECが原告の了承を得ずに単独でなし得ることであるから原告は,製造メーカーとしてのNECが顧客である被告日本テレコムに対しLS交換機(NEAX61ΣJ)を開発譲渡することを禁止する権利を何ら有しないものである。すなわち,本件営業秘密4Aは,原則として原告が有する営業秘密であるということができず,仮に,その一部に,原告とNECが共同で開発し保有する営業秘密が含まれるとしても,NECは製造メーカーとしてこれを単独で実施し得るのであり,NECからその開発されたLS交換機(NEAX61ΣJ)を譲り受けた被告日本テレコムに対し,原告が不正競争防止法に基づき,その固定電話サービスの営業の差止めを求める請求は理由がないことが明らかである。
イ 原告は,本件NEC基本契約に基づいて,原告がNECと本件交換機を共同開発したものであり(同契約14条参照 ,NECはそのノウハウに )ついて秘密保持義務(21条)を負担しているとも主張する。
しかし,原告がNECと本件交換機を共同開発したと認めるに足りる十分な証拠がないことは上記のとおりであるし,また,仮に,原告が NECと共同開発したとしても,NECがこれを単独で実施することができる。, ( ) ことも上記のとおりである また同契約における秘密保持条項 21条,() も 同契約及び個別の契約の履行に関して知り得た相手方 すなわち原告の情報であって,かつ,秘密である旨明示されたものを第三者に開示ないし漏洩してはならないことを定めた規定であり(甲38 ,本件交換機に)関する本件営業秘密4Aは,むしろこれを開発したNECが保有する情報であるということはできても,同契約において,原告からNECに対し秘密であると明示された情報に当たることを認めるに足りる証拠はないので,。 あるから 原告の上記主張を採用することができないことは明らかであるなお,原告は,本件交換機設置の際のシステム調整の過程において生じた課題の内容自体も本件営業秘密4Aに含まれると主張する。しかし,契約に特段の合意がない限り,製造メーカーであるNECが発注者である原告からの要求に応じて仕様を変更し,改修,改良した過程で取得したノウハウについては,製造メーカーであるNECがこれを取得すべきものであり,NECは,原告のシステムに関する秘密を保持する義務を負うとしても,本件交換機のハードウエア及びソフトウエアに関し,自己が開発したノウハウを単独で実施することができると解すべきことは,前述のとおりである。
( ) よって,本件営業秘密4に基づく原告の請求は,その余の争点について判 4断するまでもなく,理由がない。
5 本件営業秘密5について( ) 本件営業秘密5の内容について 1原告が主張する本件営業秘密5@は,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスにおける本件RT装置の位置付け及び機器構成であり,本件営業秘密5Aは,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスに適合させるための本件RT装置のシステム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題の内容及びそれに対する対応結果(仕様変更)の内容である。
( ) 本件営業秘密5@の有用性,非公知性及びその帰属主体(争点5-1,5 2-2)並びに被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する不正開示行為の有無(争点9-1)についてア 原告は,本件営業秘密5@における本件RT装置の位置付け及び機器構成は,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスにおける本件RT装置の意義,機能,利点及び他の機器との接続に関する事項であり,本件営業秘,「 」, 密5@に含まれる営業秘密として 別紙1-1Basic Information Package別紙1-2「平成電話 収容の考え方,別紙1-3「平成電話の交換機 」Any への収容方法 ,別紙4-2「局舎ごと設備機器一覧 ,別紙5-1「 」」別紙5-2 別紙5-3 実装状況 別紙5-4 発 Media AceMap 」,「」,「」,「注申請書等( 一式 ,別紙5-5「発注申請書等( 保 AnyMedia AnyMedia )」守予備品 」を指摘する。本件営業秘密4@と同様に,上記各別紙には, )原告サービスにおける本件RT装置の位置付け(別紙1-1ないし1-3 ,NTT局舎毎の具体的な機器構成とその設置場所(別紙4-2,5 )-3 ,本件RT装置の価格(発注価格)及び保守予備品(別紙5-1, )5-4,5-5 ,ネットワーク構成(別紙1-1 , の価格(別 )) Acemap紙5-2)などが記載されている。
イ 原告の回線交換方式による直収電話サービスの構成については,1において認定したとおり,乙2文献において,原告の基本的なシステム構成,すなわち,NTTからドライカッパーを借り受け,NTTの地域局舎にRT装置を設置し,原告の東京局及び大阪局の2か所のみにLS交換機を設置するとの構成のみならず,本件RT装置がルーセント製であり,1台約200万円程度であることを含めて,原告サービスにおける本件RT装置の位置付けと価格及び基本的なシステム構成は開示されている(ただし,別紙4-2,5-1ないし5-5に記載されているような,NTTのどの局舎に具体的にどのような機器を設置するということまで開示されていない 。よって,原告が主張する本件営業秘密5@における本件RT装置 。)の位置付け及び機器構成のうち,その基本的な位置付け及び機器構成は既に公知となっていることから,その非公知性が認められないことは明らかである。
ウ また,本件RT装置の具体的な位置付け及びその機器構成とその価格並びに保守予備品(別紙4-2,5-1ないし5-5に記載されているような,NTTのどの局舎に具体的にどのような機器を設置するということ)については,これが公知であることを認めるに足りる証拠はなく,その非公知性を肯定することができる。また,これらの具体的な本件RT装置の位置付け及びその機器構成とその価格は,原告の事業にとって役に立つ情報であるから,その有用性も肯定することができ,その秘密管理性を認めることができれば,これを不正競争防止法における営業秘密として保護すべきである。
しかし,前記1認定のとおり,乙2文献において,原告の基本的なシステム構成,すなわち,NTTからドライカッパーを借り受け,NTTの各地域局舎にルーセント製のRT装置を設置し,原告の東京局及び大阪局の2か所のみにLS交換機を設置するとの構成が開示されており,本件RT装置及びLS交換機の基本的な位置付け及び機器構成が開示されていること,及び,前記3において認定したとおり,NECが回線交換方式による直収電話サービスに適合し得るLS交換機であるNEAX61ΣJを製造販売する能力を有すると考えられる有力な国内製造メーカーであることが,遅くとも本件調査開始前において,電気通信事業者間では十分に知られていた情報であったこと,並びに,NTTが接続約款などでNTTとの相互接続に関する情報を開示していることからすると,電気通信事業者にとって,回線交換方式による直収電話サービスにおけるLS交換機やRT装置等の具体的な機器構成や保守予備品については,NECやルーセント等の製造メーカーとの協議などによって具体的に決定し得る事項であり,また,その価格については,製造メーカーからの見積もりにより容易に判明する情報であるというべきである。また,回線交換方式による直収電話サービスにおけるLS交換機やRT装置等の具体的な機器構成及びその見積価格については,各事業者の基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量に従って,各事業者と各製造メーカーとの間で協議の上で決定されるべきことであるから,原告の基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量を前提とした具体的な機器構成やその見積価格が,他の事業者にとって,直接的に利用し得る有用な情報となるわけでもない。
したがって,これらの情報は,基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量などの前提となるものが異なる被告らにとっては,直接的に有用な情報であるということはできず,また,上記のとおり,製造メーカーとの協議や見積もりにより決定され,あるいは,判明する事柄であるから,被告ソフトバンクがこれを本件秘密保持契約に反し,被告日本テレコムに開示する必要性もないというべきである。本件営業秘密5@における本件交換機の具体的な位置付け及び具体的な機器構成に関する情報については,本件全証拠を検討しても,これを被告ソフトバンクが被告日本テレコムに開示したことを認めるに足りる証拠はない(なお,被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件一体的営業秘密ないしその一部の不正開示行為があったとは認められないことの詳細については,後記7認定のとおりである 。。)( ) 本件営業秘密5Aの有用性及びその帰属主体(争点5-1)及びルーセン 3トによる本件営業秘密5Aの不正開示行為の有無(争点9-2)についてア 本件営業秘密5Aは,原告サービスに適合させるための本件RT装置( )のシステム調整,接続試験その他の調整試験等の過程にお AnyMediaいて生じた課題の内容及びそれに対する対応結果(仕様変更)の内容であり,具体的には, のダイヤルパルス信号読取方式が国内向けで AnyMediaはなかったことに伴う変更や,加入者宅内の避雷器誤作動に対応したことなどがその内容である。
しかし,新たな通信ネットワークにRT装置を導入した場合,当該機種と当該ネットワークの仕様が異なる場合,製造メーカーがそれに対応する,。, 仕様を設定することは むしろ当然に予定されていることである そして原告サービスのシステム構成を前提とした不具合について,発注者である原告の要求に応じ,製造メーカーであるルーセントがRT装置の譲渡契約上の義務としてなしたRT装置の仕様の変更や改良についてのノウハウ,,, は 原告とルーセント間の譲渡契約に特段の合意がない限り 原則として製造メーカーであるルーセントが,これを自社のノウハウとして保持することができるものであり,ルーセントが他事業者からの発注品について必要な限度でそのノウハウを実施することを禁止すべき契約上の義務を負っていたものと解すべき理由はない(このことは,ルーセントが取得したノウハウが,発注者の仕様変更や改良の注文に応じた結果なされたものであるとしても,それがルーセントにより開発されたものである限り,ルーセントに帰属すべきものと解すべきである 。上記特段の合意を認めるに 。)足りる証拠はない本件においては,ルーセントがRT装置を原告に譲渡した際に,発注者からの要望に応じた仕様変更又は改良により,何らかのノウハウを開発し取得し,被告日本テレコムに対し譲渡したRT装置にそのノウハウの一部ないし全部を実施したことがあったとしても,これは本来ルーセントが原告の了承を得ずになし得ることであると解すべきである。
以上によれば,原告は,ルーセントが被告日本テレコムに対し,上記ノウハウを必要な範囲で実施したRT装置を譲渡することを禁止する権利を何ら有しないものであり,ルーセントからRT装置を譲り受けた被告日本テレコムに対し,原告が不正競争防止法に基づき,その固定電話サービスの営業の差止めを求める請求は理由がないことが明らかである。
イ 原告は,ルーセントとの間でも,本件NEC基本契約と同様の合意がされており,自らルーセントに対して具体的な仕様を開示し,改修,改良の指示をしていたと主張する。しかし,製造メーカーであるルーセントから原告に対して,本件RT装置の各種仕様について種々の事項が記載された提案書が存在するものの(甲40。なお,同提案書は,NECに対しても交付されており,争点4において述べたとおり,NECは,本件RT装置,。 ), の仕様を前提として 本件交換機に対する仕様変更を行ったものである原告がルーセントに対し,仕様を開示し,改修,改良の指示をしていたことを認めるに足りる証拠はない。また,原告とルーセントとの間に本件NEC基本契約と同趣旨の契約が存在していたとしても,ルーセントが本件RT装置の仕様変更,改修,改良に関して,製造メーカーとして自ら開発し,取得したノウハウを,他事業者にRT装置を譲渡する際に,必要な範囲でこれを実施することができないとは認められないことは,前記4において認定したとおりである。
なお,原告は,本件RT装置設置の際のシステム調整の過程において生じた課題の内容自体も本件営業秘密5Aに含まれると主張する。しかし,契約に特段の合意がない限り,製造メーカーであるルーセントが発注者である原告からの要求に応じて仕様を変更し,改修,改良した過程で取得したノウハウについては,製造メーカーであるルーセントがこれを取得すべきものであり,ルーセントは,原告のシステムに関する秘密を保持する義務を負うとしても,RT装置のハードウエア及びソフトウエアに関し,自己が開発したノウハウを単独で実施することができると解すべきことは,前述のとおりである。
( ) よって,本件営業秘密5に基づく原告の請求は,その余の争点について判 4断するまでもなく,理由がない。
6 本件営業秘密6及び7について( ) 本件営業秘密6の有用性及び非公知性(争点6-1,6-2)について 1ア 原告が主張する本件営業秘密6の内容は,原告サービスの利用状況,収支状況,当該サービスを提供するために導入している設備,機器,装置及び備品等に関する設置状況及び費用情報,その他直収電話サービス事業の収益性・採算性の検討及び判断に有用な情報である。その例示としてあげAM32 DSLAM Any られているものとして 別紙6-1 ( ) 別紙5-1 ,「 」 ,「,別紙5-2「 ,別紙3-1「Σ御見積書 ,別紙6-2 Media AceMap 」」 」「コロケーション・スペース費用<東日本> ,別紙6-3「NTTコミ 」ュニケーションズ(コロケーション ,別紙6-4「IP-VPNフレ )」ームリレー ,別紙6-5「ギガウェイ ,別紙6-6「ダークファイバ 」」ーTOKAI・KDDI(TOKAI・KDDIが保有するダークファイバー ,別紙6-7「ダークファイバーNTT東日本(NTT東日本が )」保有するダークファイバー ,別紙6-8「ダークファイバーNTT西 )」日本(NTT西日本が保有するダークファイバー ,別紙4-1「平成 )」電電基幹網ルート図 ,別紙6-9「平成電電基幹網 ,別紙4-2「局 」」舎ごと設備機器一覧 ,別紙5-3「実装状況 ,別紙5-4「発注申請 」」書等( 一式 ,別紙5-5「発注申請書等( 保守予備 AnyMedia AnyMedia )」品 ,別紙6-10「マイラインと直収線の収益性の比較 ,別紙6-1 )」」1「CHOKKA 3月 ,別紙6-12「平成電電 番号利用状況 , 」」別紙6-13「 サービス申込承諾書(NTTコミュニケーショ Colocationンズ ,別紙6-14「自前保守に係るコロケーション・スペース利用 )」に関する個別契約書 ,別紙6-15「コロケーション・スペース費用< 」西日本> ,別紙6-16「光ファイバケーブル芯線に関するIRU設定 」個別契約書」がある。
イ 本件営業秘密6中の,別紙6-15のコロケーション・スペース費用に関する情報,別紙6-7及び6-8のダークファイバーに関する各種情報については,NTTは,NTTと守秘義務契約又は相互接続協定を締結した電気通信事業者に対してのみ,コロケーションやダークファイバーに関する情報の開示を行っているものであるから(甲64,乙11,12 ,)この情報については,守秘義務を負った特定の者についてのみ公開されているものとして,その非公知性を肯定することができ,また,原告の事業活動に役に立つものであるから,その有用性も肯定することができる。また,別紙6-5の「ギガウェイ」及び別紙6-16の「光ファイバケーブル芯線に関するIRU設定個別契約書」に記載された内容についても,NTTと交渉すれば自ずと明らかになる可能性のある情報であるものの,これが公知であると認めるに足りる証拠はない。
また,別紙3-1「Σ御見積書」のように,各種機器の見積もり金額など,製造メーカーなどに見積もりを依頼すれば容易に判明する情報については,具体的な機器構成が異なる他事業者にとっての有用性については疑問が残るところである。しかし,本件交換機や本件RT装置の付属品の種類及びその価格,原告サービスのネットワーク構成,原告サービスの収支,, ,, , に関する情報 すなわち 月間売上高 原価 粗利益に関する収支の比較特定月の売上高,割引適用による減額料,開通済み回線数,解約数,顧客別請求額一覧,回線数,課金開始日,利用料金額,実請求金額などの情報については,その有用性もあり,一般的に公開されているものでもないから,秘密管理性の要件を満たせば,営業秘密として保護されるべき情報が含まれているものと認められる。
( ) 本件営業秘密7の有用性及び非公知性(争点7-1,7-2)について 2ア 本件営業秘密7の内容は,原告のネットワークアーキテクチャーに関する情報であり,原告サービスの幹網ルート図,基幹網,基軸網(東京都内イメージ図 ,局舎ごと設備機器一覧などである。その例示として挙げら )れているものとして,別紙4-1「平成電電基幹網ルート図 ,別紙6-」9「平成電電基幹網 ,別紙7-1「基軸網(東京都内イメージ図 」及 」)び別紙4-2「局舎ごと設備機器一覧」がある。
イ このうち,別紙4-1「平成電電基幹網ルート図」については,平成16年6月25日現在の内容を基準に作成された原告サービスのパンフレット(甲2)において 「全国基幹網の構築 全国基幹網11,000Km ,以上 地域網20,000Kmのネットワーク完成 」との説明と共に,。
その概略が一般に公開されているところである。しかし,別紙4-1の2枚目,及び,別紙4-2「局舎ごと設備機器一覧 ,別紙6-9「平成電 」電基幹網」並びに別紙7-1「基軸網(東京都内イメージ図 」などにつ)いては,これらが公知であることを認めるに足りる証拠はなく,非公知であると認められ,その情報としての有用性も認められるから,秘密管理性の要件を満たせば,不正競争防止法における営業秘密として保護されるべきものということができる。
( ) 被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件営業秘密6及び7 3の不正開示行為の有無(争点9-1)について被告ソフトバンクが,本件調査において,本件営業秘密6及び7の一部を原告から開示を受けたことは,当事者間に争いがない。そして,本件営業秘密6及び7には,@原告サービスにおいて使用されている設備,機器及び費用情報,A原告サービスの収益性,採算性に関する情報,B原告サービスのネットワーク構成に関する情報が含まれる。
しかし,前記1認定のとおり,原告サービスの基本的なシステム構成,すなわち,NTTからドライカッパーを借り受け,NTTの各地域局舎にルーセント製のRT装置を設置し,原告の東京局及び大阪局の2か所のみにLS交換機を設置するとの構成が公知であったことからすれば,@原告サービスにおいて使用されている設備,機器及び費用情報,並びに,B原告サービスのネットワーク構成に関する情報については,被告日本テレコムは,これらの情報がなくとも,その基幹網ルート及び予想される音声データ等のトラフィック量を前提として,NECやルーセントなどの製造メーカーと具体的な機器構成を協議し,また,その費用を見積もらせることにより,被告日本テレコム独自の具体的な機器構成によるネットワークを構築することになることは,前記認定のとおりである。また,A原告サービスの収益性,採算性に関する情報についても,同種のサービスを営む予定の被告日本テレコムにとって参考となる有用な情報であるということができるものの,具体的な機器構成及び予想される音声データ等のトラフィック量などが異なる被告日本テレコムにとって,必ず必要な情報であるということもできない。
したがって,本件営業秘密6及び7の各情報は,基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量などの前提となるものが異なる被告らにとっては,直接的に有用な情報であるということはできず,また,上記のとおり,製造メーカーなどとの協議や見積もりにより決定され,あるいは,判明する事柄であるから,被告ソフトバンクがこれを本件秘密保持契約に反し,被告日本テレコムに開示する必要性もないというべきである。本件営業秘密6及び7における情報については,本件全証拠を検討しても,これを被告ソフトバンクが被告日本テレコムに開示したことを認めるに足りる証拠はない(なお,被告ソフトバンクによる被告日本テレコムに対する本件一体的営業秘密ないしその一部の不正開示行為があったとは認められないことの詳細については,後記7認定のとおりである 。。)7 本件一体的営業秘密ないしその一部の不正開示行為について( ) 本件一体的営業秘密非公知性及び有用性(争点8-1,8-2)につい 1て原告は,本件営業秘密2,3,4@,5@,6及び7(本件一体的営業秘密)は,これを一体としてみたときに,本件営業秘密1を用いた直収電話サービスを現実のビジネスとして実現させるために有用な情報である,具体的には,本件営業秘密2は,同サービスを制度上実現するために必要な情報であり,本件営業秘密3,4@,5@及び7は,技術上実現するために必要な情報であり,本件営業秘密6は,採算上実現可能性を判断するために必要な情報であって,それらが互いに有機的に結びつき,有機的一体として1個の営業秘密を構成する,と主張する。前記認定のとおり,本件営業秘密2,4@,5@,6及び7は,それら単独でも有用性及び非公知性の要件を充足するものを含むものであるから,本件一体的営業秘密は,全体として,有用性及び非公知性の要件を充足するものであることは明らかであり,秘密管理性の要件も充足すれば,これを営業秘密として保護すべきものであることは当然である。
( ) 本件一体的営業秘密ないしその一部の被告ソフトバンクによる被告日本 2テレコムに対する不正開示行為(争点9-1)について原告は,被告ソフトバンクは,本件調査を通じて,原告から,本件一体的営業秘密を一括して入手し,それをそのまま被告日本テレコムに開示したことにより,被告日本テレコムをして極めて短期間で本件営業秘密1を用いた直収電話サービスである被告サービスを実現させた,と主張し,また,被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対する本件各営業秘密不正開示行為があったことを裏付ける最大の根拠は,被告サービスが,原告サービスとその基本的仕組み及び機器構成において同一であり,サービスの特徴においてもほぼ同一であることである,とも主張する。
ア そこで,原告サービスと被告サービスの同一性について検討する。
) 原告サービスと被告サービスは,その基本的なシステム構成において a同一である。すなわち,原告サービスも,被告サービスも,いずれもNTT加入者線であるドライカッパーを利用した回線交換方式による直収電話サービスであること,つまり,音声を@ユーザー宅から局内加入者線収容装置までの間は,ドライカッパーの概ね0〜4kHz程度の音声帯域を使用して伝送し,AこれをNTTのGC(NTT局舎)に設置したRT装置に集線した上で,B回線制御方式でLS交換機へ伝送するという点で,全く同じ構造を有する電話サービス(本件営業秘密1の基本原理を用いた直収電話サービス)であることは,争いがない。
しかし,前記1認定のとおり,甲1文献,乙1文献,乙2文献,乙3文献,乙22文献及び乙24文献により開示されている各事項を総合すると,原告サービスのシステム構成が,NTT加入者宅からNTTの地域電話局との間に設置されたドライカッパーを,その電話音声帯域(4),() kHz以下 を含んでNTTから借り受け NTTのGC NTT局舎にルーセント製のRT装置(1台200万円程度)を設置し,これと東京と大阪の2か所に設置したLS交換機とを光ファイバー経由で接続するとのネットワーク構成を構築した上で,同回線において電話音声帯域を使用する回線交換方式による直収電話サービスを行うことであることは,遅くとも平成15年12月1日ころには当業者である電気通信事業者においては公知であったというべきであるから,原告サービスと被告サービスとが上記のような基本的システム構成において同一であっても,このことにより,被告ソフトバンクが本件一体的営業秘密ないしその一部(本判決において営業秘密性がないと判断されたものを除く。以下同じ )を被告日本テレコムに開示したものと認めることができない 。
ことは明らかである。
) NTTのどのGC(NTT局舎)にRT装置を設置するか,その他の b機器や保守用備品をどの程度備えるかなどの,具体的なネットワーク構成については,各電気通信事業者が,その基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量を前提として,製造メーカーとの協議などによって容易に具体化し得る構成であるとともに,平成13年時点で,既に中継電話サービスを実施しており,総延長約1万キロメートルに達(), する自前の光ファイバー網を有していた被告日本テレコムも 乙20具体的な機器構成としては原告とは異なる具体的な機器構成を独自に構築することになることは当然である。
) 原告サービスと被告サービスとにおいては,そのサービスや機器構成 cにおいてに次のような差異も存する。すなわち,@00xyにかかる国際電話の取扱い,UUI(ユーザー間情報通知サービス ,任意チャネ)ル着信サービス,移転トーキ案内について相違し,また,A原告サービスにおける本件RT装置と,被告サービスにおいて当初から使用されたAGWは,加入者線を集線する装置である点では共通しているものの,本件RT装置はE1用のインターフェースしか有しないのに対し,AGWは,IP及びSTM-1用のインターフェースも有する点で異なり,,, ( 。 さらに B原告サービスは ISDNのBRI回線Basic Rate Interface)(), 乙39 の提供方式においてEC方式 海外仕様 を採用しているためコンバータが必要となるが,被告サービスでは,コンバータは不要である点でも異なるものである(乙18,39,弁論の全趣旨 。)) 以上からすれば,原告サービスと被告サービスは,その基本的なシス dテム構成において同一であるものの,具体的な機器構成及びそのサービスの内容において差異があり,このような差異があることは,被告日本テレコムが独自にそのシステムの構築を行ったことを推認させるものである。
イ 次に,被告日本テレコムが極めて短期間で被告サービスの提供を開始したか否かにつき,検討する。
,, a) 被告ソフトバンクは 平成16年5月20日に本件調査を終了した後同月25日に原告との買収交渉を打ち切り,同年7月30日には,被告日本テレコムを買収して100%子会社としたこと,被告日本テレコムは,平成16年8月30日 「おとくライン」との名称で回線交換方式 ,による直収電話サービス(被告サービス)を同年12月1日から開始する旨発表し,実際に同サービスを提供していることは,前提事実において認定したとおりである。
,, , b) しかしながら 前記認定のとおり@原告サービスのシステム構成がNTT加入者宅からNTTの地域電話局との間に設置されたドライカッパーを,その電話音声帯域(4kHz以下)を含んでNTTから借り受け,NTTのGC(NTT局舎)にルーセント製のRT装置(1台200万円程度)を設置し,これを東京と大阪の2か所に設置したLS交換機と光ファイバー経由で接続するとのネットワーク構成を構築した上で,同回線において電話音声帯域を使用する回線交換方式による直収電話サービスを行うことであることは,遅くとも平成15年12月1日ころには当業者である電気通信事業者においては公知であったこと,A原告の事業がひとたび実施された以上は,NTTは,原告に続く第2,第3の電気通信事業者に対し,その差別的取扱をすることを禁じられているのであり,被告日本テレコムやKDDIなどの他事業者を原告と平等に取り扱わなければならず,その結果,これらの他事業者が原告よりも短期間にNTTと交渉し,NTTとの相互接続に関する確認事項及び相互接続協定変更書を合意し,その事業を実現することが容易となっていたこと,B被告日本テレコムは,平成12年8月11日には,NECから,NEAX61ΣJが国内複数のキャリアで採用され,現在稼働中の交換機であるとの説明を受けており,被告ソフトバンクの子会社であるソフトバンクBBも,平成16年2月19日ころ計画していた直収電話サービスにおいて,既にNECのNEAX61ΣJを採用することを独自に検討していたこと,及び,NECにおいて原告サービスに適合するNEAX61ΣJを納入し,実用化したとの情報は,NEC自身の業務実績に関する情報でもあり,NECが原告との本件NEC基本契約にお,, いて守秘義務を負うべき情報ではないことC電気通信事業者にとって回線交換方式による直収電話サービスにおけるLS交換機やRT装置等の具体的な機器構成については,その基幹網ルートや予想される音声データ等のトラフィック量を前提として,NECやルーセント等の製造メ,, ーカーとの協議などによって比較的容易に決定し得る事項であり またNECやルーセントが被告日本テレコムに納入したNEAX61ΣJやRT装置が,NECやルーセントが原告に対しNEAX61ΣJやRT装置を納入し,実用化したときの経験やノウハウを生かした装置であったとしても,NECやルーセントにおいて,自己の製品を自己のノウハウを実施して製造販売する限りにおいては,原告との関係で秘密保持義務違反に問われることはないこと,並びに,DKDDIが,被告日本テレコムに続き,平成16年9月15日に,回線交換方式による直収電話サービスである「メタルプラス」を同年12月から開始するとの発表をしていること(乙21)からすれば,電気通信事業者としてKDDIと同じような経験と技術力を有する被告日本テレコムが,KDDIと同じような時期に原告サービスを開始したとしても特に異とすべきことではないこと,以上からすれば,被告日本テレコムが,回線交換方式による直収電話サービスのパイオニアである原告と比べて短期間で被告サービスの提供を開始したとしても,パイオニアである原告とは上記のようにさまざまな状況が異なるのであるから,このことをもって,被告ソフトバンクが被告日本テレコムに本件一体的営業秘密ないしその一部を不正に開示したということはできない。
ウ 原告は,本件一体的営業秘密ないしその一部が被告日本テレコムに対して不正開示されたことを示す事情として,@平成16年7月30日時点に,,, おいて 本件調査に関与していた被告ソフトバンクの取締役であるA BCの3名が共通して被告日本テレコムの取締役に就任していること,A被告日本テレコムは,被告サービス開始後の平成17年2月25日ころ,本件RT装置を導入したこと,B本件調査において本件各営業秘密を入手した被告ソフトバンクが中心となって,被告サービスの発表を行っていることを挙げる。
しかし,被告らの取締役が共通であるから直ちに被告ソフトバンクから被告日本テレコムに対し,本件秘密保持契約に反し,本件各営業秘密不正開示行為があったと認めることができないことは当然であり,また,被告サービスにおいて,当初,ルーセントのRT装置ではなく,AGWが使用されていたことは,むしろ,本件各営業秘密不正開示行為がなかったことを推認させる要素であり,さらに,被告日本テレコムによる被告サービスの発表をその親会社である被告ソフトバンクがなしたとしても,これをもって本件各営業秘密不正開示行為の根拠とすることは到底できないところである。
エ 以上によれば,被告ソフトバンクは,原告の買収や事業提携に必要不可欠な情報として,本件調査により,原告の財務状況,業務内容,リスク,将来性に関する資料の提出を求めたのであり,本件調査の結果,原告の企業価値を原告が希望する買収価格で評価することは困難なことであると判断したため,原告の買収を断念したものと推認することができ,被告ソフトバンクが本件各営業秘密を被告日本テレコムに不正開示するために,本。, , 件調査を行ったものとみることはできない そして 被告ソフトバンクがその当時において,被告日本テレコムに対し,本件一体的営業秘密ないし,, その一部を不正に開示したと認めることができない以上 将来においても被告日本テレコムその他の第三者に対し,本件一体的営業秘密ないしその一部を開示するおそれがあると認めることはできない。
結論
以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
追加
営業秘密目録1NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル端末回線ド()(ライカッパー)の電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を含む全周波数帯域をNTTから借り受け,同メタル(端末)回線において電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を使用して提供する回線交換方式による直収電話サービスに関する原理上記秘密が記載されている書面(原告から被告ソフトバンクに対して開示したもの)としては,例えば別紙1ないし3がある。
BasicInformationPackage・別紙1-1・別紙1-2平成電話収容の考え方・別紙1-3平成電話の交換機への収容方法2NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル端末回線ド()(ライカッパー)において電話音声帯域(概ね0〜4kHz程度)を使用して提供する回線交換方式による直収電話サービスに関して,原告がNTT東日本及びNTT西日本との間で交渉,合意または確認した事項(次で掲げるものを含むが,これらに限られない)。
・別紙2-1NTT東日本と平成電電間の相互接続に関する受付等事務処理確認事項(第2版。平成15年11月)・別紙2-2NTT西日本と平成電電間の相互接続に関する受付等事務処理確認事項(第0・0版。平成15年11月)・別紙2-3相互接続協定変更書(平成15年7月1日付け。原告と東日本電信電話株式会社との間で締結されたもの)・別紙2-4相互接続協定変更書(平成15年7月1日付け。原告と西日本電信電話株式会社との間で締結されたもの)・別紙2-5東日本電信電話株式会社の音声帯域回線と平成電電株式会社の音声帯域回線収容装置との接続及びITU-T勧告G.991.2SHDSL方式のDSLサービス又は直収電話重畳しているDSLサービスを提供するDSL回線を利用した相互接続に関する事業者間確認事項(平成15年7月9日付け)3原告及びNECが協同して,NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービス事業に不可欠なLS交換機を開発した結果,NECが,NTT交換機以外では国内唯一の当該直収電話サービス事業に適合するLS交換機を製造することが可能になった事実(NTT以外の通信事業者にとって,これまで事実上入手不可能であった当該直収電話サービスに適合するLS交換機が,NECから調達可能となった事実)上記秘密が記載されている書面(原告から被告ソフトバンクに対して開示したもの)としては,例えば,次のものがある。
BasicInformationPackage・別紙1-1・別紙3-1Σ御見積書4@NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスにおける当該サービスに適合する「Σ」交換機の位置付け及び機器構成(次に掲げるものを含むが,これらに限られない)。
BasicInformationPackage・別紙1-1・別紙3-1Σ御見積書・別紙4-1平成電電基幹網ルート図・別紙4-2局舎ごと設備機器一覧ANTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスに適合させるための本件交換機のシステム調整,接続試験その他調整試験等の過程において生じた課題の内容及びそれに対する対応結果仕様変更の内容次()(に掲げるものを含むが,これらに限られない)。
主な仕様変更等項番課題内容結果大量の回線開通が発生し,加入者NEAX61ΣJのハードウェア及1データを投入し登録状況の検索をびソフトウェアを改良し,固定電話行うタスクにおいてCPU処理能通信網用プログラムの運用に耐えう力が不足しコマンドに対して応答るか否か,評価,検証を行った不能となり,交換機運転(制御)が困難になるCPU処理能力が不足し過負荷状NEAX61ΣJのハードウェア及2態が継続するため,基盤ソフトウびソフトウェアを改良し,固定電話ェア(OS)と応用(交換)プログ通信網用プログラムの運用に耐えうラムとの間で状態不一致が顕在化るか否か,評価,検証を行ったし,異常状態に陥るISDN回線を大量に収容するこNEAX61ΣJのハードウェア及3ととなり,一定の収容量を超えるびソフトウェアを改良し,固定電話ため,「呼制御チャネル制御装置(L通信網用プログラムの運用に耐えうAPDC)」の割り付け規則に不具るか否か,評価,検証を行った合を生じ,利用可能と利用不可能の中間状態に陥るISDN(BRI)の加入者回線NEAX61ΣJのハードウェア及4が,「時々断」を繰り返し,自然回びソフトウェアを改良し,固定電話復しても,利用可能状態に自律復通信網用プログラムの運用に耐えう旧しないるか否か,評価,検証を行った「ダイヤルインサービス」「INS原告がNTTと同様の機能を追加す5,ナンバーディスプレイ」「ナンバるための仕様を確定し,NEAX6,i-ー」「着信転送機能(INS「代1ΣJのプログラムに実装した,)」,表番号通知機能」等,NTTにより提供されている交換機付加機能を提供することができない5@NTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスにおけるRT(遠隔多重加入者線伝送装置)「」の位置付け及び機器構成AnyMedia(次に掲げるものを含むが,これらに限られない)。
BasicInformationPackage・別紙1-1AnyMedia・別紙5-1AceMap・別紙5-2・別紙1-2平成電話収容の考え方・別紙1-3平成電話の交換機への収容方法・別紙4-2局舎ごと設備機器一覧・別紙5-3実装状況・別紙5-4発注申請書等(一式)AnyMedia・別紙5-5発注申請書等(保守予備品)AnyMediaANTT加入者宅からNTT電話局との間に設置されたメタル(端末)回線(ドライカッパー)を利用した回線交換方式による直収電話サービスに適合させるための「」のシステム調整,接続試験その他調整試験等のAnyMedia過程において生じた課題の内容及びそれに対する対応結果(仕様変更)の内容(次で掲げるものを含むが,これらに限られない)。
項番課題内容結果のダイヤルパルス信号読取原告から仕様を提示することによ1AnyMedia方式(10PPSのみ)が,国内仕様って,仕様追加を行ったの同読取方式(10PPSと20PPSがある)と異なるため,接続した。
電話機によっては発信不能となるが送出する呼出信号が,加呼出信号の伝送に用いる加入者回2AnyMedia入者回線において直流電流と重畳する線での呼出信号と直流電流との重ことによって,加入者宅内の避雷器を畳方式を特殊なものに変更誤作動させるケースが生じる6原告の直収電話サービス(「CHOKKA)の利用状況,収支状況,当該サ」ービスを提供するために導入している設備,機器,装置及び備品等に関する設置状況及び費用情報,その他直収電話サービス事業の収益性・採算性の検討及び判断に有用な情報(次に掲げるものを含むが,これらに限られない)。
・別紙6-1()AM32DSLAMAnyMedia・別紙5-1AceMap・別紙5-2・別紙3-1Σ御見積書・別紙6-2コロケーション・スペース費用<東日本>・別紙6-3NTTコミュニケーションズ(コロケーション)・別紙6-4IP-VPNフレームリレー・別紙6-5ギガウェイ・別紙6-6ダークファイバーTOKAI・KDDI(TOKAI・KDDIが保有するダークファイバー)・別紙6-7ダークファイバーNTT東日本(NTT東日本が保有するダークファイバー)・別紙6-8ダークファイバーNTT西日本(NTT西日本が保有するダークファイバー)・別紙4-1平成電電基幹網ルート図・別紙6-9平成電電基幹網・別紙4-2局舎ごと設備機器一覧・別紙5-3実装状況・別紙5-4発注申請書等(一式)AnyMedia・別紙5-5発注申請書等(保守予備品)AnyMediaなお,発注申請書等はこれらに限られず,各種機器やその保守予備品等に関するものなど,多数存在する。
・別紙6-10マイラインと直収線の収益性の比較・別紙6-11CHOKKA3月・別紙6-12平成電電番号利用状況・別紙6-13サービス申込承諾書(NTTコミュニケーショColocationンズ)なお,コロケーションサービス申込承諾書はこれに限られず,他にもコロケーション契約の数だけ多数存在する。
・別紙6-14自前保守に係るコロケーション・スペース利用に関する個別契約書(NTT東日本)なお,コロケーション・スペース利用に関する個別契約書はこれに限られず,NTT西日本との間のものも含め,他にもコロケーション契約の数だけ多数存在する。
・別紙6-15コロケーション・スペース費用<西日本>・別紙6-16光ファイバケーブル芯線に関するIRU設定個別契約書なお,光ファイバケーブル芯線に関する契約書はこれに限られず,他にも多数存在する。
7原告のネットワークアーキテクチャーに関する情報(次に掲げるものを含むが,これらに限られない)。
・別紙4-1平成電電基幹網ルート図・別紙6-9平成電電基幹網・別紙7-1基軸網(東京都内イメージ図)・別紙4-2局舎ごと設備機器一覧
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 鈴木千帆
裁判官 荒井章光