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関連ワード 混同行為 /  他人の商品 /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  模倣 /  差止請求(差止) /  侵害 /  混同のおそれ(混同) /  損害賠償 / 
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事件 昭和 55年 (ネ) 689号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1982/04/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴をいずれも棄却する。
当審における控訴人らの新請求をいずれも棄却する。
控訴費用及び当審における新請求の訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
当事者の求める裁判
(控訴人ら)1 原判決を取消す。
2 被控訴人は、別紙目録(原判決添付の「別紙目録」を引用する。)第二記載の表示を使用して、活字及び母型を製造してはならず、また、右表示を使用した活字及び母型を販売してはならない。
3 被控訴人は、右表示を使用した活字及び母型を廃棄せよ。
4 (当審における新請求)(@)右2、3項と同旨、
(A)被控訴人は、控訴人らに対し各金二五万円を支払え。
5 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
との判決を求める。
(被控訴人)主文と同旨の判決を求める。
当事者の主張
当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次に記載するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。
(控訴人ら)一 不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく差止請求について1 控訴人らは、写植用文字盤なる商品の「商品主体」に当る。
不競法第1条第1項第1号にかかる立法趣旨は、商品主体の混同を防止することによつて、いわゆる周知表示に化体された商品主体の信用の冒用、毀損を規制すると共に、併せて公正な競業秩序を維持、形成しようとするところにあり、この法条によつて保護されうるものは、信用の保持者たる商品主体であると解される。
右のような立法趣旨に照らすと、ここにいう「商品主体」とはかなり広く解すべきであり、これを狭く「商品の製造、加工あるいは販売等のいわゆる商品取扱業務に従事する者」に限定すべきではなく、控訴人らのように、写植用文字盤(商品)の基礎となつた書体を創作した者で、その旨が購買者に了知されており、かつ、混同行為によつて信用又は経済的利益が害される者をも包含すべきである。
仮に、一歩を譲つて、右の「商品主体」が、「商品の製造、加工あるいは販売等のいわゆる商品取扱業務に従事する者」に限定して解釈すべきであるとしても、控訴人らは「商品主体」に該当する。何故ならば、控訴人らは、写植用文字盤(商品)の基本であるタイポス書体を創作した者で、「商品の製造」の極めて重要な部門に関与しているのであり、そのことは、宣伝用パンフレツトやタイポス保証書等によつて購買者に周知されていたからである。
2 本件の「タイポス書体」は「商品」に当る。
不競法第1条第1項第1号にいう「商品」とは、前記の同条項の立法趣旨に照して、必ずしも有体物のみに限られるものではなく、たとえ無体物であつても、それが商取引の対象となつていれば「商品」というに妨げないと解すべきである。
そして、控訴人らの創作した本件「タイポス書体」は、現に商取引の対象となつているのであるから、「商品」というに十分である。
3 もし、原判決のように、「タイポス書体」を商品とする主張に対しては「書体」は無体物であるから保護されないとし、「写植用文字盤」を商品とする主張に対しては控訴人らは商品主体でないとしてその保護を拒否すれば、控訴人らのような書体デザイナーは、「書体」の創作者に止まり、有体物である「写植用文字盤」等の所有者になることは実際上不可能であるから、不競法による保護を受けることはありえないこととなる。しかも、著作権法に依る保護もないとすれば、知的生産物である「書体」の創作は、全く法的保護を受けられないこととなるのであつて、
その結論は極めて不当である。
二 不法行為を原因とする差止請求及び損害賠償請求について 仮に、不競法に基づく差止請求が認められないとすれば、控訴人らは、不法行為を原因として、同旨の内容の差止請求と、それに加えて損害賠償の請求をする。その原因事実は、次のとおりである。
1 控訴人らは、法律上保護されるべき利益を有している。
すなわち、控訴人らは書体の創作者であるが、書体創作者は、永年の努力を積重ねて書体を創作するのであり、かくして創作された書体については、現に書体の売買が行なわれ、あるいは、その使用許可料として一定の対価を受領している。また、書体の盗用や模倣は認めないという慣行が、書体デザイナーや印刷・出版業界に広くゆきわたつているのである。したがつて、控訴人らは、右書体について法律上保護されるべき利益を有している。
2 被控訴人の行為は極めて違法性が強い。
被控訴人の本件「キツド書体」による活字及び母型の製造、販売行為は、次の諸点からみて極めて違法性の強いものである。
(一) 控訴人らは、「タイポス書体」の創作に伴なう収入によつて生活を維持しており、かつ、右書体の商品価値は極めて大きい。
(二) 控訴人らのような書体創作者は、著作権法、意匠法によつても保護されておらず、不法行為法による以外、現行法制上、他に保護されうべき方法がない。
(三) 侵害行為の態様をみると、「キツド書体」と「タイポス書体」との類似の程度は極めて大きく、被控訴人の「キツド書体」販売は営利を目的とするものであり、しかも、被控訴人は、既に「タイポス書体」の存在や評判を知つていた。
(四) 一般に、書体取引業界では、書体売買や書体の使用許諾に伴ない一定の対価が支払われ、他方、他人の創作した書体を盗用したり、模倣しないという慣行が存在している。また、近時、書体創作者を何らかの形で保護すべきであるとする気運が急激に高まつている。
3 差止の必要が特にある。
控訴人らが、被控訴人の侵害行為によつて被つた損害を回復するためには、被控訴人の「キツド書体」による活字及び母型の製造、販売行為を差止める必要がある。本件のように、侵害行為が継続的な場合には、金銭賠償のみでは問題が解決せず、基本的に、差止めを必要とするからである。
4 損害の内容 被控訴人の「キツド書体」による活字や母型の販売数は不明であるから、現在までの、様々な訴訟外、訴訟上の経緯、控訴人らの被つた社会的評価の低下を考慮した慰謝料として、被控訴人らに対し各金二五万円の金員を支払うよう求める。
(被控訴人)控訴人らの前記主張は争う。
一 不競法に基づく差止請求について1 不競法第1条第1項第1号にかかる立法趣旨は、周知表示に化体された商品主体の信用の冒用、毀損を規制し(換言すれば、商品が誰によつて製造、販売等されているかに対する信用を保護し)、公正な競業秩序を維持、形成することにある。
したがつて、この条項の規定によつて保護されるものは、商品を直接に製造、販売等するいわゆる商品取扱業務に従事する者に限定される。
このことは、不競法第1条第1項第1号の規定の文理解釈からも導かれるし、また、このように解さなければ、商標法、意匠法等において、差止又は損害賠償の請求をなしうる者が商標権者(意匠権者)、専用使用権者(専用実施権者)に限定されていることと比較して、均衡を失する結果となる。
また、控訴人らは、不競法第1条第1項第1号の規定が右のように解さるべきものとしても、控訴人らは、書体を創作し、商品製造の重要な部門に関与しているから「商品主体」に該ると主張するけれども、前述のとおり、右法条の規定が保護するのは、商品が何人により製造、販売されたかについての信頼であり、創作性ないし商品の製造に何人が参画、関与したかについての信頼ではないから、その主張は失当である。
2 控訴人らは、不競法第1条第1項第1号にいう「商品」とは有体物であることを要しないと主張する。
しかしながら、右の規定は、他人の商品との混同を規制するものであるから、差止請求をする者の商品も「販売、拡布、輸出」等の行為が予想されるものでなければ、混同の生ずる余地がないこととなるのであつて、当然、有体物でなければならないのである。
二 不法行為を原因とする差止請求及び損害賠償の請求について1 本件について不競法第1条第1項第1号の規定が適用されない場合に、不法行為の成立を認めるべきではない。
すなわち、現行法制は、営業の自由ないし取引における自由競争を前提としている。しかし、これらは無制限に認められるものではなく、競業秩序を破壊しない限度においてのみ許されるという制約を受けている。
この競業秩序については種々の立法がされており(たとえば、特許法、意匠法、
商標法、著作権法の各該当規定)、それぞれ一定の要件のもとに権利性が認められて、これに対する侵害から保護されている。また、不競法は、行為の態様から、一定の競業行為を不正なものとして、これに対する差止等を認めている。
このように、競業秩序についての現行法制は、充分に整備されているというべきものであるから、これとは別個に不法行為の成立を認める余地は存しない。
そればかりでなく、競業に関する法制は、自由競争の限界を画し、営業者間の対立する利害の調整を図つているのであるから、右法制により禁止されていない行為は公正な競争行為として許されているものというべきであり、これに対して不法行為の成立を認めるのは不当である。
2 書体は、不法行為法における保護の対象にならない。
文字の書体は、本来、一定の配列により、特定の音又は意味内容を伝達するものであるから、宿命的に一定の形態をとることになる。したがつて、そのような形態を法律的に保護し、独占権を認めるならば、無限の書体の私有化が可能となり、国民共有の文化遺産たる文字は、いつの間にか、国民の全く知らない間に、僅かな者の独占使用を認めてしまう結果となり、文字の自由使用は不可能になつてしまう。
このようなことは到底許されない。
3 「タイポス書体」は控訴人らの創作ではない。
わが国における活字書体の発展変化については、一定の傾向があり、当初の肉筆文字に近い形から幾何学的な単純な形に変つてきている。
「タイポス書体」は、右のような変化の過程で案出されたものであり、右書体の特徴として主張されている点は、いずれもゴシツク体で試みられ採用された特徴を引継いだものであつて、控訴人らの創作というべきものではない。
4 「キツド書体」と「タイポス書体」とは類似するものではない。
両書体の相違点は、原審において主張したとおりで、個々の文字に極めて多くの相違点がある。
5 以上のとおり、本件については不法行為法の適用される余地がないので、控訴人らの請求は失当である。
証拠関係(省略)
理 由
不正競争防止法第一条第一項第一号の規定に基づく差止請求について
一 成立に争いのない甲第一号証ないし第三号証、原審における控訴人A尋問の結果によつてそれぞれ真正に成立したものと認める甲第四号証ないし第八号証、第一一号証の三・四並びに右尋問の結果によれば、次の事実が認められる。
控訴人らは、現在、いずれもグラフイツクデザイナーとして、書体の研究、制作等に従事するものである。
昭和三四年、当時、武蔵野美術学校(現在の武蔵野美術大学)に在学していた控訴人Aと同Bは、共同して、明朝体の漢字と調和し、かつ、読み易さを旨とする平仮名及び片仮名の新しい書体を研究、開発することを企画してこれに着手し、昭和三六年には、明朝体、ゴシツク体、その中間体の三種類の書体の長所を取り入れた混合体ともいうべき新書体を作るようになつた。この書体が後に完成した「タイポス書体」の原形となつた。
昭和三七年には、この研究、開発の事業に控訴人C、同Dが参加して、以後は控訴人ら四名(以下、単に「控訴人ら」という。)が共同して新書体の研究、開発を進め、同年中に「タイポス37」及び「タイポス411」と称する二書体を創作したのを手初めとして、昭和四二年には原判決別紙目録第一記載の「タイポス45」を、次いで昭和四三年には「タイポス35」をそれぞれ創作、完成し、その後もこれら四書体と同一の、いわゆるフアミリーに属する「タイポス44」、「タイポス66」「タイポス88」「タイポス1212」等を創作して今日に至つている。
控訴人らが創作した右の書体は、一般に「タイポス書体」又は単に「タイポス」と総称されているが、各々の名称に付された数字(例えば、「タイポス45」の「45」の数字)は、文字枠の一辺の長さを一〇〇とした場合の、当該文字の横線及び縦線の太さを示す数字を、横―縦の順に並記したものである(例えば、「45」は、横線が枠の長さを一〇〇として四の太さ、縦線が五の太さの書体となる。)。
二 控訴人らの請求は、第一次的に、「タイポス45」が不競法第1条第1項第1号の規定にいう「商品」に該当すること、第二次的に、タイポス45による「写植用文字盤」が右にいう「商品」に該当することを前提とするものである。
1 そこで、まず、「タイポス45」が不競法第1条第1項第1号の規定にいう「商品」に該当するか否かの点について検討する。
この点についての控訴人らの主張の要点は、右法条にいう「商品」とは、必ずしも有体物に限られるものではなく、無体物であつても、それが現実に商取引の対象となつているものであれば右にいう「商品」に該当すると解すべきであるというのである。
思うに、不競法は、「商品」の概念について定義する規定を設けていないので、
右「商品」の意義内容はこれを解釈によつて確定するほかはない。
不競法第1条の規定は、取引秩序を破壊する不正競争行為は公衆の社会協同生活上許すべからざるものであつて、これに対し、損害賠償による間接的な抑制のみでなく、直接的にその差止めをすることができることを定めたものと解されるが、いかなる行為をもつて不正競争行為とするかは、同条第一項の第一号から第六号までに明文をもつて限定されている。
そこで、右第一号ないし第六号の規定についてみると、「商品」については、その「容器包装」(第一号)、「原産地」(第三号)及び「品質、内容、製造方法、
用途、数量」(第五号)等の語が用いられており、「商品」は、「販売、拡布、輸出」(第一号、第三号ないし第五号)あるいは「産出、製造、加工」(第四号)の対象となるべきものであることが明定されているのであつて、これらの用語法や行為の態様からすると、ここにいう「商品」とは、有体物をいい、無体物はこれに含まれないと解するのが自然であり、かつ、合理的である。(なお、ここにいう「有体物」には、酸素、水素、天然ガス、液化石油ガス等のように、それ自体は無定形のものであつても、自然界に存在し、容器に収めて取引の対象とされるものを含む。) また、一般に、「商品」の語は、取引市場における流通に置かれるべきものとして生産、加工され、それ自身経済的価値を有すべき前記のような有体の動産ないし物件をいうものと解するのが、社会通念に合致する。
さらに、右第一号の規定は、「商品」に、他人の商品たることを示す表示(他人の商品表示)と同一又は類似のものを使用するなどして、他人の商品との混同を生ぜしめる行為を禁圧しようとするものであるが、無体物については、それ自体に、
商品表示をすることがもともと不可能と考えられる。
以上の諸点を考え合せると、不競法第1条第1項第1号の規定にいう「商品」とは、少なくとも有体物(容器に収めて取引される無定形物を含む。)であることを必要とし、無体物はこれに含まれないと解するのが相当である。
控訴人らは、もし右の「商品」に無体物が含まれないとすれば、控訴人らのような書体デザイナーや書体創作は法的保護を全く受けられないことになり、その結果は不当である旨主張するが、いまだ、前記解釈ないし判断を左右するに足りない。
控訴人らの主張するタイポス45(原判決別紙目録第一に記載の書体)が無体物であることは控訴人らの自認するところである。
そうすれば、右「タイポス45」が不競法第1条第1項第1号の規定にいう「商品」に該当しないことは明らかであるから、これを前提とする控訴人らの請求は理由がない。
2 次に、タイポス45による「写植用文字盤」が不競法第1条第1項第1号の規定にいう「商品」に当ることを前提とする請求について検討する。
タイポス45による写植用文字盤が右法条にいう「商品」に該当することは弁論の全趣旨に徴して明らかである。
ところで、不競法第1条第1項第1号の規定は、他人の商品との混同を生ぜしめる行為を防止することによつて、いわゆる周知表示に化体された商品主体の信用の冒用、毀損を防止し、もつて、公正な競業秩序の維持、形成を図ろうとするものであると解されるから、この規定によつて保護されるべきものは、信用の保持者たる商品主体、すなわち、商品の製造、加工、販売、輸出入等の商品取扱業務に従事する業務主体に限られるものと解される。
控訴人らは、前記「写植用文字盤」の商品主体であると主張する。
原審における控訴人D尋問の結果とこれによつて真正な成立を認めうる甲第一七号証、第一八号証によれば、右写植用文字盤に関して次の事実が認められる。
控訴人らは、株式会社写真植字機研究所(後に、商号を「株式会社写研」と変更した。)との間で、昭和四四年三月一〇日にはタイポス35、タイポス37、タイポス45及びタイポス411の四書体につき、次いで昭和四六年一一月八日にはタイポス44、タイポス66、タイポス88及びタイポス1212の四書体につき、
それぞれ控訴人ら主張のような内容(原判決、請求の原因のうちの2の(一)の項)の独占的使用許諾契約(ただし、写植用文字盤への使用に限る。)を締結し、
株式会社写真植字機研究所が前記各書体による文字を複製して写植用文字盤を製作し、該文字盤を使用、販売することを許諾すると共に、右独占的使用許諾の対価として、同会社は、控訴人らに対し、@昭和四四年三月一〇日の契約においては、金五〇万円と同会社が販売する文字盤各一枚につき金二〇〇〇円(ただし、標準規格以外の文字盤については、タイポス書体のうち「平がな」「片かな」の各一書体につき金一〇〇〇円)、A昭和四六年一一月八日の契約においては、金一〇〇万円と同会社の販売する文字盤各一枚につき金二〇〇〇円(ただし、標準規格以外の文字盤についてはタイポス書体のうちの「平がな」「片かな」の各一書体につき金一〇〇〇円)、を支払うことを約した。以来、同会社は、この契約に基いて、前記八種類のタイポス書体による写植用文字盤を製作、販売しているが、その量は昭和五三年一〇月二七日の時点までで約二万五〇〇〇枚、そのうちタイポス45によるものが約二五〇〇枚であり、前記文字盤各一枚につき金二〇〇〇円の金額は右の時点までに金二三〇〇円に改訂されている。
右認定の事実によれば、タイポス45による写植用文字盤なる商品を製造し、販売しているのは株式会社写真植字機研究所であつて(現商号株式会社写研)、控訴人らは、同会社にタイポス書体の独占的使用許諾を与えた対価として契約に定められた一定額の金員の支払を同会社から受領しているにすぎず、右商品の商品主体に該らないことが明らかである。
なお、原審における控訴人D尋問の結果とこれにより真正な成立を認めうる甲第一二号証の一・二によれば、株式会社写真植字機研究所(株式会社写研)が前記写植用文字盤を販売する際には、これに「タイポス保証書」(もしくは「タイポス書体保証書」)と題する書面が添付されており、この書面には、当該文字盤がグループ・タイポにより創作された純正タイポスであることを保証し、かつ、「タイポスの原字著作権又は原字創作の権利がグループ・タイポにあ」る旨の記載があることが認められるけれども、このような事実は前記の認定を妨げるものではないから、
右各証拠をもつて前記認定を左右することはできない。
他にこれを覆すに足りる証拠はない。
そうすれば、控訴人らはタイポス45による写植用文字盤の商品主体に該らないのであるから、これを前提とする控訴人らの請求もまた理由がない。
不法行為を原因とする差止請求及び損害賠償の請求について
控訴人らは、「キツド書体」(原判決別紙目録第二に記載の書体)と「タイポス書体」との類似の程度は極めて大きく、被控訴人のした「キツド書体」による活字及び母型の製造、販売行為は不法行為を構成すると主張する。
しかしながら、もともと、文字の書体は、線の一定の配列により特定の音又は意味内容を伝達するものであるから、当然一定の形態をとることになる。したがつて、そのような一定の形態をとる一つ一つの文字自体における個々の形態ないしその創作も保護しなければならず、法律上の保護に値する利益があるものとすれば、
無限に存する書体自体の私有化を認めるに等しい結果となり、本来国民共有の財産たるべきはずの文字は、僅かな者の独占的使用に委ねられ、国民による文字の自由使用は不可能になつてしまうのであつて、帰結するところは明らかに不当である。
そうすれば、前認定のとおりの構成態様にかかる原判決別紙目録第一記載のタイポス45について、これが控訴人らの創作にかかる書体であり、被控訴人の製造、
販売している活字及び母型の「キツド書体」がこのタイポス45の書体に類似し、
その他控訴人ら主張のような事実関係が存するとしても、被控訴人の右行為が不法行為を構成するということはできない。
控訴人らの差止請求及び損害賠償の請求は、その前提たる不法行為の成立の点において、既に失当というべく、理由がない。
結語
以上のとおりであり、控訴人らの不競法第1条第1項第1号の規定に基づく差止請求は、理由がなく失当として棄却すべきものであり、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべく、また、控訴人らが当審において新たにした不法行為を原因とする差止請求及び損害賠償の請求も、理由がないので、失当として棄却すべきものである。
よつて、訴訟費用の負担については民事訴訟法第95条第89条第93条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 荒木秀一
裁判官 藤井俊彦
裁判官 清野寛甫
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